JP4139592B2 - 断熱工法選択支援システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物を構成する各部位に採用される断熱仕様の組み合わせをより合理的にかつ簡単に求められるようにした断熱工法選択支援システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物を建設する際の基準として、建築物の温熱環境の向上と暖冷房に係るエネルギー消費量の低減を目的とする、建築物の断熱・気密に関する基準(例えば、住宅性能表示制度や住宅に係るエネルギー使用の合理化に関する建築主の判断の基準)が設けられている。この基準を満たすことにより、その建築物は断熱性能に優れた建築物とみなされ、購入する際のインセンティブとなり得る。
【0003】
従って、建築物を建設しようとする場合、この基準を満たした断熱・気密工事を安価でしかも効率よく行えるようにすることで、建設コストの低減を実現することが出来る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、断熱・気密工事は建築物の構造、使用する断熱材の種類、施工方法、施工する部位の組み合せ等により、数多くの選択肢を有する。
【0005】
すなわち、1)建築物の構造としては、在来工法、2×4、パネル工法、スチールハウス等があり、2)使用する断熱材の種類としては、プラスチック系、無機繊維系、防湿層の有無、塊粒状等があり、3)施工方法としては、充填、外張り、吹込み等があり、4)施工する部位の組み合せとしては、屋根か天井か、壁の充填か外張りか、床か基礎か等がある。
【0006】
これら中から、基準を満足するための効率的な組み合せを選択することは容易ではなく、各基準解説図書等に記載されている仕様を参考にし、自己の経験に基づき使い慣れた材料や施工方法を採用して、断熱・気密工事を行なう場合が多く、必ずしも最良の組み合わせが選択されるとは限らない。
【0007】
一方、建築物の省エネルギー対策は、建築物の工法と各部位により様々な手法、及び組み合せがある。
【0008】
例えば、木造在来工法の建築物の場合は、
1)外壁に関して
1-1)断熱材を柱間に充填する充填断熱
1-2)柱の外側に断熱材を張る外張り断熱
があり、1-1)の場合であっても、
1-3)断熱材に防湿層が付与された断熱材を用いる場合
1-4)断熱材を充填施工した後、その室内側に防湿層を施工する場合
とに区分することができ、
更に、1-1)と1-2)とを組合わせた手法も考えられる。
2)天井・屋根部分に関して
2-1)天井板の上にマット状の断熱材を敷き込む方法
2-2)屋根の垂木間に断熱材を充填する方法
2-3)桁の上に板を張りその上にマット・板状の断熱材を敷き込む方法
2-4)天井の上に吹き込み用繊維質断熱材を吹き込む方法
2-5)屋根の垂木間に吹き込み用断熱材を充填する方法
等がある。なお、床や基礎においても同様に複数の工法が存在している。
【0009】
この場合、冷暖房エネルギーを考慮すると、建築物を構成する各部位の断熱だけでなく、換気による熱損失や日射による熱取得も見逃すことが出来ない。
【0010】
日射による熱取得は、壁に開口する窓等の開口部に取付けるサッシやガラスの性能に依存するところが大きい。
【0011】
又、換気による熱損失を少なくするには、換気量をできるだけ少なくすれば良く、そのためには、汚染空気を効率良く排出する換気経路の計画が必要であり、計画した空気の流れを作るためには、建物の気密化が重要となる。
【0012】
気密化を実現するには、気密層を施工する必要があるが、気密層は多くの場合防湿層を兼ねているため、その設置する位置に注意が必要となる。更に、床と壁、壁と天井、壁と屋根の各取り合い部分で気密層の連続性を保持するためには、建築構造とも深く関係してくる。
【0013】
本発明の目的は、このような事情に鑑み、建築物を構成する各部位の断熱・気密或いは断熱・防湿・気密に係る工事を効率良く安価に行なうための具体的な工法の選択を支援する断熱工法選択支援システムを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明による断熱工法選択支援システムは、建築物を構成する各部位に採用される断熱仕様と、各断熱仕様の熱的特性と、各断熱仕様を採用したときの工事費用と、各断熱仕様が適用できる建築物の構造の種類とを少なくとも記憶する記憶手段と、対象となる建築物の構造情報と、希望条件とを入力する入力手段と、前記入力手段によって入力された構造情報及び希望条件に基づいて、前記記憶手段に記憶されている断熱仕様の中から、少なくとも熱損失係数及び日射取得係数がそれぞれ基準値以下となる組み合わせを求める演算手段とを備え、前記演算手段は、前記入力手段から入力された構造情報に基づき熱貫流率と工事費とを乗算した値が最も低い仕様を選択し、選択した該仕様に基づきコストを算出し、該コストに対して予算に余裕がある場合は該予算の余裕度の範囲内で前記記憶手段に記憶されている断熱仕様の中から最も断熱性能が高くなる組み合わせを求めることを特徴とする。
【0015】
本発明の断熱工法選択支援システムによれば、対象となる建築物の構造情報と希望条件とを入力することにより、記憶手段に記憶されている断熱仕様の中から、少なくとも熱損失係数及び日射取得係数がそれぞれ基準値以下となる組み合わせが直ちに求められるので、断熱・防湿・気密に係る工事を効率よく、安価に行うことが可能となる。
【0019】
又、入力手段から入力された構造情報に基づき熱貫流率と工事費とを乗算した値が最も低い仕様を選択し、選択した該仕様に基づきコストを算出し、該コストに対して予算に余裕がある場合は該予算の余裕度の範囲内で記憶手段に記憶されている断熱仕様の中から最も断熱性能が高くなる構造の組合せを求めることができるので、予算の余裕度の範囲内でできるだけ断熱性能を高めた建築物を提供することが可能となる。
又、本発明の断熱工法選択支援システムの他の好ましい態様においては、前記日射取得係数が前記基準値を越えている場合は、窓ガラスの表面に配設される日射遮蔽物の種類と該窓ガラスの仕様との少なくとも一方を変更して、前記日射取得係数を前記基準値以下とすることを特徴とする。
この態様によれば、窓ガラスの表面に配設される日射遮蔽物、或いは日射遮蔽物の種類を変更し、又は、ガラスの仕様を変更することで、日射侵入率をより小さな値に設定して、日射取得係数を基準値以下とすることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明において、断熱仕様とは、建築物の各部位における断熱・防湿・気密に係る工事のし方を意味し、例えば、屋根、天井、外壁、床、サッシ、ドア等の断熱・防湿・気密に係る工事における材料や、施工方法等を意味する。
【0021】
また、各断熱仕様の熱的特性としては、例えば、熱貫流率、温度差係数、相当隙間面積などが挙げられる。ここで熱貫流率とは、表裏の温度差が1Kのとき1m2当りの移動熱量(w)の値を意味し、相当隙間面積とは、建物の単位床面積当りの漏気の原因となる隙間を規準化した隙間に換算したもので気密性を表わす値を意味する。温度差係数とは、住宅において廊下、浴室、便所等の非居室では居室に比べて室温が低いことを考慮して、それらに接する部位から熱流出を居室部の70%とする係数であり、建物の断熱・気密に関する基準に定められた値である。
【0022】
各断熱仕様を採用したときの工事費用は、例えば材料費や人件費を合わせた単位面積当りの施工費用(円/m2)などが挙げられる。
【0023】
また、対象となる建築物の構造情報としては、例えば、建設地域、天井面積、床面積、外壁や窓やドアの面積、天井高さ、建物の各部位の方角、気積、構造、柱寸法などが挙げられる。
【0024】
希望条件としては、例えば目標とする断熱性能、予算、特定の部位に対する材料の限定などが挙げられる。
断熱性能は、例えば熱損失係数、日射取得係数、相当隙間面積などで判断される。
【0025】
本発明においては、入力手段によって構造情報及び希望条件が入力されると、演算手段によって、記憶手段に記憶されている断熱仕様の中から最適な組み合わせが求められる。
【0026】
上記最適な組み合わせの例としては、例えば希望条件が目標とする断熱性能である場合には、記憶手段に記憶されている断熱仕様の中から最も工事費用の安い組み合わせを求めることができるようにしたり、また、希望条件が予算である場合には、その予算内で記憶手段に記憶されている断熱仕様の中から最も断熱性能の高い組み合わせを求めることができようにするなどが挙げられる。
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。図1〜図18に本発明の第1実施の形態を示す。図1には本実施の形態で採用する建築構造物の一例である戸建て住宅の概略図が示されている。なお、この戸建て住宅の仕様は、表1の通りである。
【0028】
【表1】
【0029】
本実施の形態では、このような構成の戸建て住宅を、表2の仕様で建設する。なお、表2中の等級レベルについては、後述する。
【0030】
【表2】
【0031】
又、図2に断熱工法選択支援システムの概略構成図を示す。この断熱工法選択支援システム1は、入力された住宅の仕様に基づき、最適な組み合わせとなる断熱仕様を各部位ごと設定する。この断熱工法選択支援システム1は、CPU、RAM、ROM等を備える演算処理装置2と、ハードディスク、光磁気ディスク等からなる記憶装置3と、CRT、LCD等からなる表示装置4と、キーボード等からなる入力装置5、マウス等のポインティングデバイス6、プリンタ等の出力装置7とを有している。
【0032】
記憶装置3には、住宅を構成する各部位に採用される断熱仕様と、各断熱仕様の熱的特性と、この断熱仕様の中で断熱・防湿・気密に係る工事費用と、その断熱仕様を採用可能な住宅構造等の種類がデータベース化されて記憶されている。
【0033】
演算処理装置2では、記憶装置3に記憶されている各データを用いて、予め設定されたプログラムに従い、特定の住宅に適用する最適な断熱仕様、及び施工方法の選択を支援する。
【0034】
ところで、住宅性能表示制度に示されている等級4のレベルを満足するためには、熱損失係数、日射取得係数、相当隙間面積の3つを基準値以下とする必要があり、演算処理装置2では、図3、図4に示すフローチャートに従い、熱損失係数、日射取得係数、相当隙間面積の3つを基準値以下とするために採用可能な断熱仕様、及びその施工方法を設定する。
【0035】
図3に示す断熱構造選択ルーチンでは、熱損失係数を算出して、熱損失係数を満足し、且つ安価な断熱仕様を選択する。
【0036】
先ず、ステップS1〜S4、及びステップS6で条件を入力する。ステップS1では、住宅構造を入力する。住宅構造としては、在来木造構造、木造新在来構造、2×4、2×6、パネル構造、スチールハウス等がある。本実施の形態で採用する住宅は、表2に示すように、在来木造構造であるため、その旨を入力し、或いは表示装置4に表示されている住宅構造を選択する画面から在来木造構造を選択する。
【0037】
ステップS2では、柱寸法を入力する。柱寸法としては、3,3.5,4寸等がある。本実施の形態で採用する住宅は、表2に示すように、柱寸法を3.5に設定しているため、その旨を入力し、或いは表示装置4に表示されている柱寸法を選択する画面から3.5寸を選択する。なお、木造以外は、柱寸法を入力することなく、ステップS3へ進むようにしてもよい。
【0038】
ステップS3では、建設地域を、表示装置4に表示されている建設地域一覧から選択し、或いは入力装置5を介して直接入力する。この建設地域表の一例を、表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
本実施の形態で採用する住宅は、表2に示すように、建設地域が東京都区内であるため、対応する建設地域IVを入力し、或いは表示装置4に表示されている建設地域を選択する画面から、東京を選択する。
【0041】
ステップS4では、断熱の基準レベルを入力する。この断熱の基準レベルは、住宅性能表示制度(国土交通省告示第1347号)中の「5−1 省エネルギー等級」に記載されている性能規定であり、等級1〜4のレベルに区分されており、例えばレベル3では日射は不要であるが、レベル4では日射を取り入れた状態での断熱損失を計算する。本実施の形態では、表2に示すように、等級をレベル4としているため、その旨を入力し、或いは表示装置4に表示されている等級からレベル4を選択する。又、基準レベルを何れの等級に設定するかは、施主或いは工務店、設計者等において決定する。
【0042】
そして、ステップS5へ進むと、入力された建設地域データと基準レベルデータとに基づき、図5に示す基準レベル仕様を参照して、熱損失係数Qの目標値Qa(本実施の形態では、Qa=2.7)が設定される。なお、この基準レベル仕様データは、記憶装置3に固定値として予め記憶されている。
【0043】
次いで、ステップS6へ進み、建物データを入力する。この建物データは、熱損失係数Qを割り出すために必要な住宅のデータを入力するもので、具体的には、住宅を構成する屋根、天井、外壁などの各部位毎の総面積と気積を入力する。すなわち、表1、及び図6に示すように、屋根、外壁、1階床、サッシ、ドア等の各部位の総面積を個々に入力する。
【0044】
その後、ステップS7へ進むと、入力された住宅構造に基づき、記憶装置3に格納されている各部位の登録コスト表と、開口部に装着されるサッシとドアの登録コスト表とが参照されて、図7、図8に示すように、指定された木造建物の屋根、天井、外壁に適用可能な断熱仕様、及び窓やドアなどの開口部に適用可能な断熱仕様がリストアップされる。
【0045】
なお、図7、図8に示されている仕様CDは、図9に示した1〜9の住宅構造について、それぞれ適用可能かどうかを表す記号であり、仕様CDの上桁側から図9に示した1〜9の住宅構造を順番に表している。例えば、図9の1,2の住宅構造に対しては、図8に示されている全てのサッシ、及びドアD3,D4が対応し、又、図9の3,4の住宅構造に対しては、全てのサッシが対応するが、ドアはD3が3の住宅構造に対応するだけである。図7にリストアップされている部材も、住宅構造に対して同様の関係を有している。
【0046】
そして、リストアップされた断熱仕様に基づき、採用可能な断熱仕様群が選択され、その中から工事単価の最も安価な仕様を第一候補として採用する。この場合、図10に示すように、相当隙間面積の基準は、5cm2/m2であるが、図8にリストアップされたコスト表に示されているように、在来木造構造の断熱仕様として採用可能なものは、全て相当隙間面積5cm2/m2を満足するもばかりであるため、これらの仕様の組み合わせを採用することで、相当隙間面積の基準を満たすことが可能となる。
【0047】
そして、ステップS8へ進み、住宅を構成する天井、壁、床、屋根、開口部等の各部位の面積(A)、室内の気積(B)を入力された住宅構造データに基づいて算出し、又、候補として採用された断熱仕様の熱貫流率κ(図6参照)に基づき熱損失係数Qを下記数式1から算出する。
【0048】
【数1】
Q=〔ΣAiKiHi +Σ(LFiKLiHi + AFiKFi)+0.35nB〕/S
ここで、Qは熱損失係数(W/mK)、Aiは外皮(熱的境界)における第i番目の部位の面積(m2)、Kiは外皮における第i番目の部位の熱貫流率(W/m2K)、Hiは外皮における第i番目の部位の温度差係数、nは換気回数(回/h)、Bは住宅の気積(m3)、Sは述べ床面積(m2)である。LFiは第i番目の土間床等における外周の長さ(m)、KLiは第i番目の土間床等における外周の熱貫流率(W/mK)、AFiは第i番目の土間床等における中央部の面積(m2)、KFiは第i番目の土間床等における中央部の熱貫流率(W/m2K)である。
【0049】
その後、ステップS9で、熱損失係数Qと目標値Qaとを比較し、Q≦Qaのときは、住宅の熱損失係数Qが等級4レベルの熱損失係数である目標値Qaを下回っているため、ステップS14へ進み、各部位の仕様を確定し、ルーチンを抜ける。
【0050】
一方、Q>Qaのときは、住宅の熱損失係数Qが目標値Qaよりも高いため、ステップS10へ進む。
【0051】
ところで、図6に示すように、本実施の形態では、算出した熱損失係数(Q)が、Q=2.96であり、目標値Qa(Qa=2.7)を上回っているため、ステップS10へ進む。
【0052】
ステップS10へ進むと、図7、図8に示すコスト表にリストアップされた部位のなから、部位毎に第一候補で採用された部位の熱貫流率Kよりも小さい熱貫流率Kを有する部位を、第二候補として各々1つ採用する(図11参照)。
【0053】
そして、ステップS11へ進み、図11に示す第二候補中から、その部位を採用した場合の熱損失量の減分(ΔK)と費用の増分(ΔC)とを算出し、ΔC/ΔKを算出して、ΔC/ΔKが最小値を示す部位を変更候補として採用し、ステップS12へ進み、再度、熱損失係数Qを、上述した数式1に従って計算する。
【0054】
なお、図11に示す第二候補では、床のΔC/ΔKが最小値を示しているため、図6に示す第一候補に示されている床を第二候補のものに置き換えて再計算する。
【0055】
そして、ステップS13へ進み、熱損失係数Qと目標値Qaとを比較し、Q≦Qaのときは、住宅の熱損失係数Qが等級4レベルの熱損失係数である目標値Qaを下回っているため、ステップS14へ進み、各部位を確定し、ルーチンを抜ける。
【0056】
一方、Q>Qaのときは、住宅の熱損失係数Qが目標値Qaよりも高いため、ステップS10へ戻り、ΔC/ΔKが二番目に小さい値を示す部位を変更候補として採用し、再度、熱損失係数Qを計算し、Q≦Qaとなるまで、繰り返し実行する。
【0057】
又、図12に示すように、本実施の形態では、床を第二候補とすることで、熱損失係数QがQ=2.55となり基準を満足することが確認された。
【0058】
このように、本実施の形態によれば、住宅構造、建設地域、断熱の基準レベル、建物データを入力するだけで、住宅の熱損失係数Q、及びその目標値が自動的に算出され、又、算出された熱損失係数Qが目標値を上回っている場合には、第二候補中の熱損失量の減分(ΔK)と費用の増分(ΔC)との比が最も小さい値を示す部位から順に、第一候補の部位と交換して、Q≦Qaとなるまで、繰り返し実行するようにしたので、各部位の断熱仕様を設定する場合に、施主の負担を極力抑え、住宅を構成する各部位の断熱仕様の中で断熱・防湿・気密に係る工事を効率良く、しかも安価に行なうことが可能となる。
【0059】
このようにして、住宅構造に採用する部位が決定されると、図4に示す日射取得係数算出ルーチンが起動されて、当該住宅の日射取得係数が算出される。
【0060】
このルーチンでは、先ず、ステップS21で、設計図に基づき、各窓を方位毎にまとめ、方位毎の窓数、面積Ai、幅x、高さY2等の窓データを入力する。なお、窓にひさしがある場合には、それらに関するデータも入力する。
【0061】
次いで、ステップS23で、同様に、設計図に基づき、各壁を構成する部位を方位、及び種別毎にまとめ、各方位毎、種別毎の部位の面積Ai等の壁体データを入力する。
【0062】
その後、ステップS23で、先ず、入力した窓データに基づき、方位係数υi、日射侵入率ηiを設定する。方位係数υiは、方位と建設地域とをパラメータとして、記憶装置3に格納されている方位係数ファイル(図13参照)を検索して設定する。
【0063】
そして、これらに基づいて、窓の日射取得係数μ1を、数式2から方位毎に算出する。なお、日射侵入率ηiは、サッシが普通単板ガラスで、しかも窓がカーテンでふさがれていることを想定し、ηi=0.55に固定されている。又、補正係数fcは1に固定されている。
【0064】
【数2】
μ1=方位係数(νi)×夏期日射侵入率(ηi)×面積(Ai)
【0065】
そして、方位毎に算出した窓の日射取得係数μ1を加算して、全窓の総日射取得係数Σμ1を算出する。
【0066】
次いで、ステップS24で、入力した壁体データに基づき、上述と同様の手順で方位係数υi、夏期日射侵入率ηiをそれぞれ設定し、これらに基づいて、窓以外の外壁、ドア、天井等の壁体の日射取得係数μ2を、上述した数式2から、方位毎で且つ種類毎に算出する。なお、日射侵入率ηiは、0.04×熱貫流率Kiで算出し、方位毎に算出した壁体の日射取得係数μ2を加算して、全壁体の総日射取得係数Σμ2を算出する。
その後、ステップS25へ進み、日射取得係数μを数式3から算出する。
【0067】
【数3】
μ=(Σμ1+Σμ2)/S
【0068】
その後、ステップS26へ進み、日射取得係数μと基準値μoとを比較する。この基準値μoは、図17に示すように、等級と建設地域とをパラメータとして決定される。
【0069】
そして、μ≦μoのときは、日射取得係数μが基準値μoを下回っているため、ステップS27へ進み、今回の住宅構造の組み合わせを確定して、ルーチンを抜ける。
【0070】
一方、μ>μoのときは、ステップS21へ戻り、図18に示すように、カーテン、ブラインド、障子等、窓ガラスの表面に日射遮蔽物を配設し、或いは日射遮蔽物の種類を変更し、又は、ガラスの仕様を変更することで、日射侵入率ηをより小さな値にして再度計算を行う。但し、ガラスの種類を変更した場合には熱損失係数Qの再計算が必要となる。
【0071】
又、これらの手段を用いても日射取得係数μが基準値μoを上回る場合には、何れかの窓にひさしを設けて、補正係数fcの低減を行うことで改善することも可能である。
【0072】
ところで、本実施の形態では、図14、図15に示すように、Σμ1=1.64、Σμ2=4.82となり、図16に示すように、それらを加算して求めた日射取得係数μは、μ=0.05となる。一方、基準値μoは、μo=0.07であり、従って、μ<μoであるため、基準を満たしている。
【0073】
又、相当隙間面積について規定がある等級の場合は、各部位の仕様の相当隙間面積の項目で規定以下の相当隙間面積となる仕様を第一候補となるように設定されているので、建設地域と等級とを選択した時点で自動的に満足させることができる。
【0074】
このように、本実施の形態によれば、住宅構造、建設地域、断熱の基準レベル、建物データを入力するだけで、省エネルギー性能の等級4を満足する仕様を、様々な組み合わせの中から、費用が最も安価で、最適な組み合わせで構築することができるため、設計者の負担を大幅に軽減することができる。
【0075】
又、図19〜図25に本発明の第2実施の形態を示す。本実施の形態ではコストを優先させて各部位の仕様を設定するようにしたものである。
【0076】
図19、図20には各部位の仕様をコスト優先で決定するルーチンが示されている。このルーチンでは、先ず、ステップS31で、住宅構造を入力し、ステップS32で柱寸法を入力し、ステップS33で建設地域を入力する。ここまでは、第1実施の形態と同様である。従って、本実施の形態では、住宅構造として在来木造構造を入力し、柱寸法として3.5寸を入力し、建設地域として東京都区内(地域IV)を入力する。
【0077】
そして、ステップS34へ進み、設計図面を参照して、建物の断熱構造とする各部位(屋根、天井、外壁、床)及び、壁、窓、ドアの面積Sを入力する。
【0078】
次いで、ステップS35へ進み、等級と建設地域とに基づいて設定される相当隙間面積(図10参照)を選択する。本実施の形態では、相当隙間面積は5となる。
【0079】
そして、ステップS36において、入力された仕様条件に基づき、木造に使用可能な仕様の部位、及び開口部に取付けられる部位を仕様表から、仕様CD(図7〜図9参照)を用いて、採用可能な仕様Tiを選択する。
【0080】
その後、ステップS37へ進み、選択した仕様Tiについて、熱貫流率(Ki)×工事費(@i)を算出し、続く、ステップS38で、最小値の仕様を選択し、当該仕様を採用候補として設定する。
【0081】
図21に、採用可能な仕様Tiの部位として天井を仕様表から選択した場合を示す。天井では、Ti=3が、K×@=608と最小値を示しているため、Ti=3の天井を採用候補として選択する。
【0082】
次いで、ステップS39へ進み、ドア、窓等の開口部Wの中から最もKw×@wの安い品質Hiを選択し、採用候補として設定する。例えば、図22に示すように、窓ではHi=W1が、Kw×@w=60450と最小値を示しているため、これを採用候補とする。
【0083】
そして、ステップS40へ進み、候補の仕様を採用したときのコスト¥を、数式4から算出する。
【0084】
【数4】
¥=Σ(@i×Si)+Σ(@wi×Si)
【0085】
その後、ステップS41で、算出されたコストと予算との差分である余裕度Δ¥(Δ¥=¥(予算)−¥)を求め、予算内か否かを調べる。そして、Δ¥≦0の予算オーバのときは、そのままルーチンを抜け、プログラムを終了する。
【0086】
一方、Δ¥>0の予算に余裕があるときは、ステップS42へ進み、ステップS42以下で、各部位の断熱性能に関するグレードアップを検討する。すなわち、例えば、図23に示すように、コストを算出した結果、予算に約3万7千円ほど余裕がある場合は、資金内に収まる範囲で、断熱性能のグレードアップを検討する。
【0087】
先ず、ステップS42では、各部位、又は開口部毎に、熱貫流率(Ki)>Ki’となる代替仕様Ti’と、開口部Wi’とを調べ、部位毎に断熱性能のより高い仕様を第二候補として選択する。図24に、第二候補として採用された部位のリストを例示する。
【0088】
次いで、ステップS43へ進み、各部位の単価差(ΔC)/改善貫流率(ΔK)を算出し、最小の値を示す部位を一番として、1〜m番目までランク付けする。
続いてステップS44で、順位1番目の部位を定める。
又、ステップS45で、順位1番目の単価差(ΔC)・面積(S)を算出する。
【0089】
そして、ステップS46で、予算余裕度(Δ¥)とΔC・Sとを比較し、Δ¥≧ΔC・Sの予算内のときは、ステップS47へ分岐し、当該部位を今回の仕様に変更し、資金余裕度Δ¥を修正し(Δ¥=Δ¥−ΔC・S)、ステップS48へ進み、順位Nをインクリメントした後、ステップS45へ戻り、予算に余裕があるまで、再計算を行なう。
【0090】
そして、予算オーバとなったときは(Δ¥<ΔC・S)、ステップS49へ進み、第二候補として掲げられている部位の全ての仕様について、検討したか否かを調べ、まだ未検討の仕様がある場合は(N<m)、ステップS48へ戻り、再度検討する。
【0091】
そして、第二候補として掲げられている部位の全ての仕様について、検討が終了したとき(N=m)、ステップS50へ進み、仕様を決定する。例えば、図24に示す第二候補では、床のΔC/ΔKが1818と最小値を示しているが、資金余裕度Δ¥が約3万7千円しかないため、予算内に収まるサッシの仕様を変更することになる。
【0092】
又、ステップS50では、変更した部位の仕様に基づき熱損失係数Qを再計算する。そして、ステップS51で熱損失係数Qがどの基準レベル(等級)に属するかを調べる(図25参照)。
【0093】
そして、ステップS52で、熱損失係数Qが等級3.4に属すると判断した場合は、コンピュータを手動操作して、日照障害物選択し、日射取得係数μを算出して、ルーチンを抜け、プログラムを終了する。
【0094】
このように、本実施の形態では、コストを優先して部位の仕様を検討し、資金に余裕がある場合は、その余裕度に応じて、各部品の断熱性能をアップさせるようしたので、無理なく、各部位の仕様を検討することが出来る。
【0095】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、建築物を構成する各部位の断熱仕様の中で断熱・気密或いは断熱・防湿・気密に係る工事を効率良く安価に行なうための具体的な工法の選択を支援し、更に、断熱、気密、防湿、日射の複数の要素を考慮して、冷暖房エネルギーを目標値以下にするための各部位の断熱仕様を決定し、更にその中から最も安価な費用で行なえる仕様、及び組み合せを容易に選択し、検討することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施の形態による戸建て住宅の概略図
【図2】同、断熱工法選択支援システムの概略構成図
【図3】同、断熱構造選択ルーチンを示すフローチャート
【図4】同、日射取得係数算出ルーチン
【図5】同、熱損失係数の基準レベル仕様を示す説明図
【図6】同、第一候補として選択された部位の一覧を示す説明図
【図7】同、部位が登録されているコスト表の説明図
【図8】同、開口部が登録されているコスト表の説明図
【図9】同、住宅構造の種別を示す説明図
【図10】同、相当隙間面積の基準を示す説明図
【図11】同、第二候補として選択された部位の一覧を示す説明図
【図12】同、変更部位の仕様を示す説明図
【図13】同、方位係数ファイルの説明図
【図14】同、住宅の全窓の総日射取得係数を示す説明図
【図15】同、住宅の全壁体の総日射取得係数を示す説明図
【図16】同、住宅の日射取得係数を示す説明図
【図17】同、日照取得係数の基準値を示す説明図
【図18】同、窓の日照取得係数を示す説明図
【図19】第2実施の形態によるコスト優先による断熱構造選択ルーチンを示すフローチャート(その1)
【図20】同、コスト優先による断熱構造選択ルーチンを示すフローチャート(その2)
【図21】同、天井の仕様を示す説明図
【図22】同、窓の仕様を示す説明図
【図23】同、第一候補として選択された部位の一覧を示す説明図
【図24】同、第一候補として選択された部位の一覧を示す説明図
【図25】同、部位を変更した後の仕様を示す説明図
【符号の説明】
1 断熱工法選択支援システム
2 演算処理装置
3 記憶装置
5 入力装置
Claims (2)
- 建築物を構成する各部位に採用される断熱仕様と、各断熱仕様の熱的特性と、各断熱仕様を採用したときの工事費用と、各断熱仕様が適用できる建築物の構造の種類とを少なくとも記憶する記憶手段と、
対象となる建築物の構造情報と、希望条件とを入力する入力手段と、
前記入力手段によって入力された構造情報及び希望条件に基づいて、前記記憶手段に記憶されている断熱仕様の中から、少なくとも熱損失係数及び日射取得係数がそれぞれ基準値以下となる組み合わせを求める演算手段と
を備え、
前記演算手段は、前記入力手段から入力された構造情報に基づき熱貫流率と工事費とを乗算した値が最も低い仕様を選択し、選択した該仕様に基づきコストを算出し、該コストに対して予算に余裕がある場合は該予算の余裕度の範囲内で前記記憶手段に記憶されている断熱仕様の中から最も断熱性能が高くなる組み合わせを求める
ことを特徴とする断熱工法選択支援システム。 - 前記日射取得係数が前記基準値を超えている場合は、窓ガラスの表面に配設される日射遮蔽物の種類と該窓ガラスの仕様との少なくとも一方を変更して、前記日射取得係数を前記基準値以下とすることを特徴とする請求項1記載の断熱工法選択支援システム。
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