JP4138988B2 - 人造石板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の内装および/または外装に用いられる人造石板に関し、詳しくは、防火性能を向上させた人造石板構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
建物の内外壁における装飾効果を向上させる一つの方策は、天然石の重厚な風合いを建物の壁面に付与することである。しかし、天然石そのものを単に板状に加工して建物(躯体)の壁面に取り付ける場合、天然石ゆえの品質のばらつき、コスト高等の問題があった。
そこで、近年、建築用天然石材の代用品として、建物の内外壁面(天井面、床面を包含する。以下同じ。)に張り付けるだけで簡単に施工できる人造石板が普及している。この人造石板は、一般的には建物の内外装用建築材として広く利用され得るように所定のパネル形状に成形されると共に、典型的にはエマルジョンタイプのアクリル樹脂やポリエステル樹脂等の合成樹脂を結合材とし、これに天然石、陶磁器等を粉砕してなる細粒状の骨材を混合して調製した混合材を主要原材料とする天然石調の表面層(以下「擬石層」という。)が形成されている。また、このときに色調の異なる混合材を複数種併用することによって、これら混合材が入り混じって構成される模様(色分け)が人造石板の表面部(擬石層)に形成される。このことによって、種々の天然石に似た外観を人造石板表面に醸し出すことができる。
このように、工業的に生産・加工される人造石板は、品質のばらつきも少なく低コストで生産し得るため、内装または外装材として好ましい。なお、合成樹脂を上記混合材の結合材として使用したパネル形状人造石板(いわゆる樹脂系人造石板)の製造技術については、例えば特開平6−304935号公報に詳しく記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、内外装材としての人造石板の適用範囲をさらに拡大させようとする場合においてネックとなるものが、当該人造石板の防火性能である。すなわち、従来の人造石板においては、典型的にはアクリル樹脂等の合成樹脂を結合材としている結果、防火特性がコンクリート等の材料よりも劣っていたためである。
従って、防火性能が要求される建物にも適用し得る、天然石の風合いと防火性能の向上とを両立させた人造石板が提供されることが建築業界において強く要望されている。
【0004】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みて創出されたものであり、その目的とするところは、天然石の風合いを醸し出すとともに、特に躯体側からの延焼防止に対して有効な防火性能を有する内装用・外装用人造石板を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、請求項1に記載のとおりの建物の内外装用人造石板を提供する。すなわち、本発明の人造石板の表層部には、結合材と粉砕された骨材とからなる擬石層が形成されている。また、前記擬石層の裏面の周縁部分には、前記擬石層と結合される合成樹脂からなる硬質のフレーム部が形成されている。さらに、前記擬石層の裏面側であって当該フレーム部の内方には難燃性材からなる難燃層が形成されている。
ここで「難燃性材」とは、燃焼しない又は燃え難い性質の建築材料一般をいい、例えば建築基準法および同法施行令に基づく不燃材料、準不燃材料、難燃材料、準難燃材料に相当し得るものをいう。また、「硬質のフレーム部」とは、石板裏面側(建物壁面に張り付ける側をいう。以下同じ。)からみて、石板の縁に沿って形成された枠状の固体形成部分をいい、典型的には部分的な剥離や崩れを起こさない硬質(典型的にはねじ孔等を普通に刳り抜いて形成した際にその周囲がひび割れて崩壊しない程度の硬さ)の一体または複合成形部分をいう。
【0006】
本発明の人造石板では、その表面(化粧面)側に擬石層が形成される一方で、その裏面側にはより硬質のフレーム部が形成されている結果、当該擬石層の裏面側であって当該フレーム部の内方(当該フレーム部で仕切られる人造石板の中央部分)において一定のスペースが生じる。而して、そのスペースに難燃性材からなる難燃層が形成されており、フレーム部の内方において擬石層と難燃層との二層構造が形成されている。このため、本発明の人造石板では、当該二層構造において、火災時等における躯体側からの高熱に擬石層が直接曝されるのを当該難燃層によって遮断することができる。このことによって、本発明の人造石板では、躯体から人造石板への延焼を高いレベルでくい止めることができる。
従って、本発明の人造石板によれば、躯体(建物)の壁面に天然石の風合と実用的な防火性とを共に実現することができる。また、本発明の人造石板では、フレーム部に仕切られることによって、石板を張り付けた際に難燃層が外部(すなわち躯体に張り付けた状態における側面)に露出するのを防止することができる。このため、難燃層の露出に伴う外観悪化を回避し得ると共に、そのような露出部分からの難燃性材の剥離・落下を未然に防止することができる。
【0007】
好ましい本発明の人造石板は、上記フレーム部の内方に相当する部位の擬石層が上記周縁部分よりも表面側に隆起しており、その隆起した部分の裏面側に上記難燃性材が充填されている人造石板である。
かかる構成の本発明の人造石板によれば、擬石層の表面側への隆起形態によって、天然石調の三次元的雰囲気を醸し出すことを実現し得るとともに、その裏面側においては難燃性材を充填し得るまとまったスペースを確保することができる。このため、かかる構成の本発明の人造石板によれば、難燃層のいっそうの充実によって、防火性の向上を図ることができる。
【0008】
また、上記問題点を解決する本発明の人造石板として好ましい他のものは、上記フレーム部の底面(躯体に接する面をいう。以下同じ。)が平坦に形成されている人造石板である。
かかる構成の本発明の人造石板によれば、当該平坦な底面を建物(躯体)の平坦な壁面に密着させることができる。このため、当該平坦なフレーム部の底面を躯体に固着させることによって、当該石板の張り付けを果たすことが可能となり、張り付け時に難燃層に物理的影響(例えば難燃層部分へボルト等を直接打ち抜くことによる衝撃や損傷)を与えることがない。さらに、フレーム部の壁面への密着が実現される結果、その内方に存在する難燃層の密閉性を高度に維持することができる。
従って、かかる構成の人造石板によれば、外界からの影響を受けることなく難燃性材の緻密性延いては防火性能を長期間維持することができる。
【0009】
また、上記課題を解決する本発明の他の側面は、上記平坦な底面のフレーム部を有する人造石板を使用すると共に、そのフレーム部底面を建物表面に固着させることによって当該人造石板の張り付けを実現することを特徴とする、建築物の内外装用人造石板の建築物表面への張り付け方法を提供することである。かかる本発明の石板取り付け方法によれば、外界からの影響を受けることなく難燃性材の緻密性延いては防火性能を長期間維持し得る状態で人造石板の張り付けを行うことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の人造石板およびその製造方法の好適な一実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0011】
本発明の人造石板を製造するにあたって、擬石層の形成に好適に使用される材料は、天然石を粉砕して細粒(好ましくは微粉粒)とした骨材と、合成樹脂系(典型的にはアクリルエマルジョン系樹脂)の結合材とを主成分とする混合材である。なお、結合材は合成樹脂系に限らず、例えば白色セメント等の無機系結合材も使用し得る。また、使用する混合材に種々の顔料(典型的にはベンガラ、チタン白、カーボン黒等の無機顔料)を添加することによって、人造石板表面(即ち擬石層)の色調を調整することができる。また、このような色調の異なる混合材を複数種類使用することによって多彩な配色の擬石層を形成することも可能である。
また、混合材に使用される骨材は天然由来のものに限られず、例えば粘土類を焼成および必要に応じて着色して得たセラミックス(陶磁器質材料)等からなる細粒状の人工骨材も本発明の実施に好適であり、良好な天然石調の雰囲気を醸し出すことができる。
【0012】
また、本発明の人造石板において、上記硬質のフレーム部として好適なものは、所定の硬度を有すると共に部分的な剥離や崩れを起こし難い単一物から構成されるものが望ましく、上記擬石層との接着相性が良いものがさらに好ましい。上記結合材の種類によって異なり得るが、一般にこのような単一物としては、ポリエチレン樹脂等の有機(樹脂)系材料がよい。樹脂系のものが厚みを容易に増し得るので好ましい。本発明の実施にあたって好ましいものは補強材料で補強された無機質体である。そのような無機質体に添加され得る補強材料としてはガラス繊維等の無機繊維あるいはアラミド繊維等の有機繊維が好適である。かかる無機系の硬質フレーム部形成材料を採用することにより、本発明の人造石板の防火性を向上させ得る。
【0013】
特に限定しないが、後述する製造方法に好適に使用され得る樹脂系のフレーム部形成材料は、上記混合材と同等かそれよりも優れた速硬性を有するものが好ましく、硬化した際の硬度および耐熱性等が高いものが特に好ましい。典型的には、熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、PBT,PET等のポリエステル樹脂が使用され得る。熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂等が使用され得る。熱硬化性樹脂のなかではメラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が成形加工が容易という点で好ましい。また、複合物としては、FRP(繊維強化プラスチック)も好適である。例えば、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維材料で補強された不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂またはビニルエステル樹脂が好ましい。繊維量を多くしたもの(例えば52wt%以上のガラス繊維を含有する不飽和ポリエステル樹脂やフェノール樹脂)は耐熱性が向上し得るため好ましい。これらの他、メタクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を主体としたものも使用し得る。特にポリカーボネート樹脂、高密度ポリエチレン樹脂のような硬化された際に強靱性を発揮し得るものがよい。硼酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、酸化アンチモン、塩化パラフィン等の防火剤(難燃剤)を含有するものが特に好ましい。
【0014】
また、難燃層を形成する難燃性材としては、種々の無機系材料が好適に使用され得る。本発明の実施にあたって、グラスウール、ロックウール、石綿、石こう、漆喰、モルタル、セメント、パーライト等が使用し得る。人造石板としての適用上、軽量なものがよい。例えば、軽量気泡コンクリート、軽量モルタル、セラミックファイバー、グラスウール、ロックウール、準不燃材料として認定され得るようなパルプ含有(但し15wt%以下)セメント等である。また、グラスウール等の繊維性材料では、種々の防火剤を加えた合成樹脂等のバインダーで固定したものも風化防止の観点から好ましい。例えば、グラスウールからなる不織布、マット等に防火剤(難燃剤)を添加したビニル樹脂をコーティングしたものが使用し得る。
【0015】
あるいは、一般的に無機系材料よりも難燃性が劣るプラスチック等の有機系材料についても、無機系材料との複合化や防火剤の配合等によって本発明の難燃製材として使用し得る。例えば、薬品処理したセルロースファイバー、硬質ウレタンフォーム、フェノール樹脂フォームが使用し得る。あるいは、繊維量が52wt%以上であり難燃剤を1wt%以上含有するFRP(不飽和ポリエステル樹脂)も難燃性材として好ましい。フェノール樹脂等の難燃性の高い樹脂をマトリックスとしたFRPが特に好ましい。
なお、難燃性その他難燃層形成に関与する性能に深刻な影響を及ぼさない限り、上述の無機系、有機系材料には各種の混和材(例えば粒粉状の骨材や岩石粉末等の充填材、各種の硬化促進剤、顔料、防腐・防かび剤、消泡剤)を含有させることができる。
【0016】
以下、本発明の人造石板およびその製造方法の好適な実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、図1、図2および図3は、それぞれ、本実施形態に係る人造石板1を模式的に示す側面図、斜視図および裏面図である。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る人造石板1は、典型的には一辺が100cm又はそれ以下の方形又は矩形状のパネル状の内外装用建材である。この人造石板1の側面方向からみて、その表面部には擬石層2が形成されている。この擬石層2は後述する結合材と骨材とから構成されており、御影調こぶ出し石に近似した風合いを有するやや起伏形状のある厚さに成形されている。図2および図3に示すように、この擬石層2の裏面側には、途切れのない枠状にフレーム部3が形成されている。このフレーム部は、硬質の合成樹脂(高密度ポリエチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、臭素系難燃剤を添加したABS等)成形物であり、その底面は平坦に加工されている。
而して、図3に示すように、擬石層2の裏側であってこの硬質フレーム部3の内方(石板中央部)には、本実施形態に係る難燃層4が形成されている。この難燃層4は、難燃性材としてグラスウールに少量の難燃性バインダー(フェノール樹脂等)を添加して固めたものを圧縮積層することによって形成している。このことによって、本実施形態に係る人造石板1によれば、火災時等における躯体側からの高熱に擬石層2が直接曝されるのを当該難燃層4によって遮断することができる。このため、本実施形態に係る人造石板1によれば、天然石調の風合いと防火性能の向上とを共に実現することができる。さらに、本実施形態に係る難燃層4は極めて低比重(容積重)であり、石板全体の軽量化に寄与している。また、かかる無機系繊維質材料は熱伝導率が小さいため、本実施形態に係る人造石板1の保温性(断熱性)の向上にも寄与している。
【0018】
次に、本実施形態に係る人造石板1の製造方法の一典型例を説明する。ここでは、本発明の特徴を端的に表現するために、図1〜3に示したものよりもフレーム部3に包囲された中央部分を表面側に大きく隆起させたものについて説明する(その他の材質等に変更はない)。なお、図4は本実施形態に係る製造方法の一過程を模式的に示す断面図である。
【0019】
まず、天然の岩肌に近似した形状の型面9aを有する成形型9を製造する。図4に示すように、この成形型9の型面9a形成部分は、周縁部が浅く中央部分が深くなるように形成されている。これにより、周縁部と中央部とで型面9a上に積載し得る材料の厚みが異なる結果、後述するように、周縁部よりも中央部が表面に隆起した形状の人造石板1を調製することができる。
次いで、この成形型9の型面9aに人造石板1の表層部を構成する上記擬石層2の原料となる混合材(ここでは、天然石を粉砕して得た骨材とアクリルエマルジョン系結合材とを主成分とし、所望する無機顔料等を混合して調製した混合材)を型面9aの全域にほぼ均等に吹き付ける。すなわち、予め調製しておいた混合材を所定の噴出ノズル(図示せず)から型面9a上に吹き付ける。このとき、噴出ノズルおよび/または成形型9を適宜移動させることによって、型面9aの起伏形状に沿ってほぼ均等に混合材を粒状に吹き付ける。このようにして、ほぼ全域に亘って均等な厚さの擬石層2を形成することができる。
【0020】
次に、フレーム部3を形成するための原材料を型面9aの周縁部に注入する。すなわち、上記吹き付けた混合材が完全に硬化する前に、溶融状態の上記フレーム部形成材料(ここでは臭素系難燃剤を添加したABS)を型面9aの周縁部に注入する。このとき、図4に示すように、注入したフレーム部形成材料の表面を硬化前または硬化後に平坦化しておくとよい。なお、図4に示すように、溶融状態の上記フレーム部形成材料を成形型9に注入前に、人造石板1の内部補強を目的として当該型内に補強用シート部材5(典型的にはガラス繊維等からなるメッシュ部材)を埋設(好ましくはコテ、ローラ等で押圧する)しておくとよい。これにより、起伏状態の擬石層2であってもその強度を保持し得、擬石層2の部分的な剥離・崩れを未然に防止することができる。
【0021】
このように、型面9aの比較的浅い周縁部にフレーム部形成材料を注入した結果、その内方に難燃性材を充填し得るまとまったスペース(即ち成形型9内の中央の窪み部分)を確保することができる。而して、当該スペースには上記バインダー処理されたグラスウール材を充填する。充填後、好ましくは充填層(難燃層4)の表面を樹脂系または無機系の接着剤若しくは塗材で被覆して固めておくとよい。
そして、好ましくは高温乾燥室で所定時間養生等することによって混合材および硬質フレーム部形成材料を硬化させる。而して、硬化過程終了後、人造石板1を成形型9から取り出す。以上の工程によって、擬石層2とその裏面側に形成されたフレーム部3および難燃層4とから構成される本実施形態に係る人造石板1が得られる。
このように本実施形態に係る人造石板1ではフレーム部3によって難燃層4の外縁が外部から仕切られており、当該石板1を躯体に張り付けた際、当該難燃層4が外部(すなわち躯体に張り付けた状態における側面)に露出するのを防止することができる。このため、難燃層4の露出に伴う外観悪化を回避し得ると共に、そのような露出部分からの難燃性材4(ここではグラスウール)の剥離や落下を未然に防ぐことができる。
【0022】
なお、上記実施形態は本発明を特徴付ける工程のみを説明したものであり、従来の人造石板で普通に行われているような他の製造工程を付加することができる。従って、そのような付加工程に基づく付帯的性状を伴うものや一部の性状が改変されたものも本発明の人造石板に包含される。例えば、擬石層2表面における艶出しあるいは保護膜形成等の目的に応じて、変成シリコン樹脂等からなるクリヤ層を形成したものも本発明の人造石板として好ましい。あるいは、上記擬石層2をさらに多層化したもの(例えば、アクリルエマルジョン系結合材と体質顔料とから成るベース層と、同アクリルエマルジョン系結合材と着色骨材とから成る模様層との二層構成としたもの)であってもよい。
【0023】
次に、本実施形態に係る人造石板1の躯体10壁面に張り付ける方法として好ましい一典型例を説明する。なお、図5は、上述の図4において説明した人造石板1の躯体10の平坦な壁面(ここではモルタル塗り仕上げのフラット面)に張り付けた状態を模式的に示した部分断面図である。
【0024】
図5に示すように、本実施形態においては、人造石板1のフレーム部3の平坦な底面を躯体10のフラット面に密着状態で固着させることによって、本人造石板1の躯体10への張り付けを行っている。すなわち、フレーム部3の平坦な底面と躯体10表面とを接着相性のよい種々の接着剤6(ここではエポキシ樹脂系接着剤)を使用して接着させる。また、特にサイズの大きな人造石板および/または比較的重量のある石板を張り付ける場合には、図5に示すように、難燃層4の底面の一部にも同様の樹脂系接着剤6を塗布するとよい。このことによって、人造石板1と躯体10との接着強度を高めることができる。
好ましくは、図5に示すように、接着剤6を塗布している周縁部の数カ所において、ねじ釘やボルト等の接合具vを用いることによって人造石板1を躯体10表面に強固に固定する。この場合、接合具v装着部分の表面には、装着した際の孔が生じることとなるが、擬石層2と同様の上記混合材2aを充填することによって、補修することができる(図5)。図示されるように、かかる接合具vは、難燃層4に関与しておらず、このことによって難燃層4が物理的影響を受けることはない。
而して、上記のように張り付けることによって、フレーム部3の壁面への高密着が実現される結果、難燃層4の外部からの密閉性を高度に維持することができる。このため、外界からの影響を受けることなく難燃性材(ここではグラスウール)の緻密性および防火性能を長期間維持することができる。
【0025】
以上、本発明の人造石板の好適な実施形態を説明したが、本発明においては、上記擬石層が形成されるとともに裏面側の周縁部分に硬質のフレーム部が形成されており、その擬石層の裏面側であって当該フレーム部の内方に難燃層が形成されておればよく、かかる実施形態に示したものに限定されない。
例えば、天然石調の豪快な三次元的雰囲気を醸し出すために、図6に示すような、擬石層12の表面形状を凹凸に富む高度な起伏形状としたことを特徴とする人造石板11でもよい。以下、かかる特徴を有する人造石板11について説明する。
【0026】
図6に示すように、本実施形態に係る人造石板11は、上述の人造石板1と異なり、硬質のフレーム部13が石板(擬石層12)裏面側の周縁部分に形成されているのみならず、擬石層12裏面に沿って石板全面に亘って形成されている。このことによって、凹凸に富む起伏形状の擬石層12であっても、上記補強用シート部材5(図4)を埋設することなく人造石板11の強度を保持し、当該擬石層12の部分的剥離や崩れを防止することができる。以下、かかる構造の人造石板11の製造法について説明する。
【0027】
本実施形態における擬石層12を形成する混合材は上記実施形態におけるものと同様である。而して、上記図4に示すのと同様に、対応する起伏形状に形成された成形型の型面に当該混合材をほぼ均等に吹き付け、型面の起伏形状に沿って所定の厚さに堆積した擬石層12が形成される。
次いで、本実施形態においては、硬質のフレーム部形成材料として、難燃材料に相当するFRPとしてガラス繊維強化不飽和ポリエステル樹脂(即ち含有繊維量が52wt%以上、難燃剤の含有量が1wt%以上)を使用する。すなわち、上記吹き付けた混合材が硬化する前に、当該FRP材料を擬石層の表面に沿って塗布する。例えば、当該FRP材料の主成分たる溶融樹脂を所定の吐出ノズル(図示せず)から吐出し、予め混合材上に吹き付けたガラス繊維を含浸させつつ均等に当該擬石層12上に塗布すればよい。このとき、上記実施形態と同様、吐出ノズルおよび/または成形型を適宜移動させることによってあるいは刷毛やへら若しくはローラーを適宜用いることによって、擬石層12の起伏形状に沿ってほぼ均等にガラス繊維含浸樹脂材料(FRP材料)を塗布することができる。これにより、図6に示すように、型面の起伏形状に沿って起伏形状を維持した当該硬質フレーム部(ここではいわば硬質プレート層を形成している)が形成される。なお、特に限定するものではないが、擬石層12を構成する混合材と硬質フレーム部13(硬質プレート層)との結合力をより向上させるため、当該混合材を吹き付けた後、硬質フレーム部形成材料を塗布する前に所定のプライマー(接着付与剤)を当該混合材上に塗布してもよい。プライマーの種類は、硬質フレーム部形成材料に応じて適宜変更され得る。
【0028】
而して、上述の実施形態と同様、フレーム部13に包囲された中央の窪みには、上記実施形態と同様の難燃性材(ここでは同様のバインダー含有グラスウール)を充填し、難燃層14を形成する。次いで、好ましくは高温乾燥室で所定時間養生等することによって混合材および上記FRP材料を硬化させ、脱型することによって、図6に示す本実施形態に係る人造石板11を得ることができる。而して、かかる構造の人造石板11についても、上述の方法(図5)に従って、その周縁部分におけるフレーム部13底面を密着させつつ躯体10の表面に張り付けることができる。
【0029】
このようにして得られた人造石板11は、その表層部にある擬石層12が、恰も天然石の外観のようにごつごつした凹凸に富む三次元的起伏形状を有しているとともにその裏面側においてフレーム部13(硬質プレート層)によって保持されている。このため、本実施形態に係る人造石板11では、石板自体を重くすることなく凹凸に富み且つ脱型時の平滑な表面(化粧面)の形成が実現されている。そして、上記実施形態に係る人造石板1と同様、擬石層12の裏面側に難燃層14を形成している結果、火災時等における躯体側からの高熱に擬石層12が直接曝されるのを当該難燃層14によって遮断することができる。このため、本実施形態に係る人造石板11によっても天然石調の風合いと防火性能の向上とを共に実現することができる。
【0030】
以上、本発明の人造石板およびその製造方法の好適ないくつかの実施形態を説明したが、本発明を上記実施形態に限定することを意図したものではない。本発明の人造石板製造方法においては、その製造工程において、(a).上記混合材を吹き付けその他の手段によって型面へ注入する工程、(b).型面の周縁部分に硬質のフレーム部を形成するための材料を注入する工程、および(c).当該フレーム部形成材料の内方に難燃性材を充填する工程が適切に実施されればよく、その他の工程(型材料の選択を含む成型用型の調製工程、各種成分の混合比の決定を含む混合材や硬質フレーム部形成材料の調製工程、等)については、建築・建材分野における従来手段をそのまま適用することができる。
【0031】
また、本発明の人造石板を製造するにあたっては、上述の人造石板1,11以外にも様々な種類の天然石調の人造石板を作製することができる。例えば、材料(混合材に含まれる骨材、顔料等)を適宜選択し、色調の異なる複数の混合材を複数のノズルから型面に吹き付けることによって多彩な色調の花崗岩(御影調こぶ出し石)タイプの凹凸に富む起伏形状人造石板を作製することもできる。このような変更例は本明細書および図面に開示された情報に基づいて当業者が実施し得る設計事項であり、本願特許請求の範囲から逸脱するものではない。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、上記擬石層と難燃層との二層構造を有し、裏面側の周縁部分に上記硬質のフレーム部が形成された人造石板が提供される。
本発明の人造石板によれば、火災時等における躯体側からの高熱に擬石層が直接曝されるのを当該難燃層によって遮断することができる。このことによって、本発明の人造石板によれば、躯体から人造石板への延焼を高いレベルでくい止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態に係る本発明の人造石板を模式的に示す側面図である。
【図2】一実施形態に係る本発明の人造石板を模式的に示す斜視図である。
【図3】一実施形態に係る本発明の人造石板を模式的に示す裏面図である。
【図4】本発明の人造石板製造法によって得られる人造石板の構造を脱型前の状態で模式的に示す断面図である。
【図5】一実施形態に係る本発明の人造石板を躯体に張り付けた状態で模式的に示す部分断面図である。
【図6】一実施形態に係る本発明の人造石板を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1,11 人造石板
2,12 擬石層
3,13 フレーム部
4,14 難燃層
5 補強用シート部材

Claims (3)

  1. 建物の内外装用人造石板であって、
    その表層部には、結合材と粉砕された骨材とからなる擬石層が形成されており、
    前記擬石層の裏面の周縁部分には、前記擬石層と結合される合成樹脂からなる硬質のフレーム部が形成されており、
    前記擬石層の裏面側であって該フレーム部の内方には、難燃性材からなる難燃層が形成されている人造石板。
  2. 前記フレーム部の内方に相当する部位の擬石層は、前記周縁部分よりも表面側に隆起しており、
    その隆起した部分の裏面側に前記難燃性材が充填されている、請求項1に記載の人造石板。
  3. 前記フレーム部の底面が平坦に形成されている、請求項1または2に記載の人造石板。
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