JP4138801B2 - 摩擦材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車や産業機械用のブレーキ及びクラッチとして用いられる摩擦材及びその製造方法に関するものである。詳細には、本発明は、摩擦係数の変化がほとんどなく、特に新品ブレーキの使用初期における摩擦係数の安定性が確保される摩擦材及びその製造方法に関するものである。
近年、自動車の高性能化、高出力化に伴い、自動車のドラムブレーキ、ディスクブレーキ等に使用されているブレーキライニングなどの摩擦材にも熱に対する安定性が求められている。具体的には、耐熱強度、耐熱摩耗性が要求されるとともに、温度変化に対する摩擦係数の変化が少ない安定した摩擦特性が要求される。
一般的に、摩擦材は複合材料によって構成されている。即ち、ガラス繊維、アラミド繊維等の基材繊維、黒鉛、二硫化モリブデン等の充填材、フェノール樹脂等の結合材などを複合化した材料より構成されている。
また、充填材としては、前記黒鉛、二硫化モリブデン等の潤滑材の他、有機ダスト、金属粉末、無機配合材など摩擦調整材が使用されている。他の充填材として、摩擦材の摩擦係数を確保するための所謂、研削材としてアルミナ等のモース硬さが7以上の材料が使用されている。
前記研削材の他に、摩擦材の摩擦係数を顕著に向上させる研削材として、単斜晶のジルコニアがあり、例えば、特許文献1には、0.5〜10体積%の酸化ジルコニウム粉末を含有しているブレーキライニング用摩擦材組成物が開示され、特許文献2には充填剤の少なくとも1種に酸化ジルコニウムを含ませた非石綿系摩擦材が開示されている。さらに、高温での摩擦特性を向上させる研削材として、安定化ジルコニアがあり、例えば、特許文献3には、酸化ジルコニウムを含有する摩擦材において、前記酸化ジルコニウムが、カルシア(CaO)、イットリア(Y)及びマグネシア(MgO)のうち1種で安定化された安定化酸化ジルコニウムであるものが、また特許文献4には、全組成物中にモース硬度が7以上で、平均粒径が0.2〜70μmの部分安定化又は安定化酸化ジルコニウムを1〜20重量%含有してなる摩擦材組成物が開示されている。前者には、安定化ジルコニアの使用により、単斜晶のジルコニアを使用することで引き起こされる摩耗量の増加を防ぐことができることが開示され、後者では、グー音と呼ばれる異音を防止できることが開示されている。いずれも、単斜晶のジルコニアが高温(800〜1200℃)で単斜晶から正方晶へ転移することに起因する問題を、高温で相転移がなく立方晶を維持する安定化ジルコニアを使用する事により解決している。
特開昭62−20581号公報 特開平3−185030号公報 特開平09−31440号公報 特開2000−160135号公報
ところが、従来の安定化ジルコニアを使用した摩擦材では、新品の摩擦材を使用する際、フェード時またはフェードと同様な高負荷でブレーキを使用すると摩擦係数が大きく変化してしまい、その結果、例えばノイズが発生する等の問題点があった。しかし、従来から試みられていたように、安定化ジルコニアの添加量、粒径あるいは安定化率の検討をしたが、この問題を解決することはできなかった。
上記に鑑み、本発明は、新品の摩擦材使用時に、フェードなどの過酷な条件でのブレーキ使用でも摩擦係数の変化が少ない安定した摩擦特性を有する摩擦材を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記目的を達成するために、特許文献1〜4においても検討されておらず、値が解明されていなかった摩擦材に含まれる安定化ジルコニアの格子定数に着目し、種々の検討を行った結果、新品の摩擦材に含まれる安定化ジルコニアの格子定数は、摩擦材の使用前と後では大きく変化していることを見出した。そして、特定の範囲の格子定数を有する安定化ジルコニアを含む摩擦材では、初期の摩擦係数を安定化できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、基材繊維と、結合材と、充填材とからなる摩擦材であって、安定化ジルコニア単結晶と比較して99.93〜99.95%の大きさの格子定数を有する安定化ジルコニアを含む摩擦材に関する。また、本発明は、安定化ジルコニア単結晶と比較して99.93〜99.95%の大きさの格子定数を有する安定化ジルコニアが、5.1253〜5.1263Å(注)の格子定数を有するカルシア安定化ジルコニアである摩擦材に関する。また、本発明は、基材繊維と、結合材と、充填材とからなる摩擦材において、前記充填材の一部として、安定化ジルコニア単結晶と比較して99.95〜99.97%の大きさの格子定数を有する安定化ジルコニアを配合し、加熱・加圧成形したことを特徴とする摩擦材に関する。また、本発明は、前記安定化ジルコニアが、5.1263〜5.1275Åの格子定数を有するカルシア安定化ジルコニアである摩擦材に関する。また、本発明は、基材繊維と、結合材と、充填材を均一に混合し、加熱・加圧成形して摩擦材を製造する方法において、安定化ジルコニア単結晶と比較して99.95〜99.97%の大きさの格子定数を有する安定化ジルコニアを充填材の一種に配合することを特徴とする摩擦材の製造方法に関する。また、本発明は、前記安定化ジルコニアが、5.1263〜5.1275Åの格子定数を有するカルシア安定化ジルコニアである摩擦材の製造方法に関する。
(注)Å:オングストローム(10−1nm)は、SI単位ではないが、本願発明が関係する結晶学の分野では未だ慣用的に使用することが多いので、本願においても、明細書全体を通して格子定数の単位として用いる。
このように、安定化ジルコニアの格子定数の変化と摩擦係数の変化は密接な関係があり、高負荷摩擦でもほとんど変化しない格子定数に制御された安定化ジルコニアを含む摩擦材は、摩擦係数の変化がほとんどなく、本発明の摩擦材を使用すれば、新品ブレーキの使用初期における摩擦係数の安定性が確保される。
本発明は、基材繊維、結合材、及び充填材からなり、充填材の一部に研削材として安定化ジルコニアを含む摩擦材である。本摩擦材は、その中に含まれる安定化ジルコニアが安定化ジルコニア単結晶と比較して99.93〜99.95%の大きさの格子定数をもつものである。この範囲の格子定数の安定化ジルコニアを含む摩擦材では、高負荷履歴前後でも摩擦係数の変化を抑えることができる。
本摩擦材は、安定化ジルコニア単結晶と比較して99.93〜99.95%の大きさの格子定数をもつ安定化ジルコニアを含むものであれば、摩擦材の使用初期における格子定数の変化が小さく、したがって、摩擦係数も安定している。しかし、安定化ジルコニアの格子定数の大きさが安定化ジルコニア単結晶と比較して99.93%未満であると、結晶の歪みが大きすぎて部分的にアモルファスとなり摩擦材中の研削材として機能しなくなる。また、格子定数の大きさが99.95%を超えると高負荷制動の前後で格子定数が大き
く変化してしまい、摩擦係数が安定しなくなる。
一般に金属結晶の場合、歪が入ると格子定数が小さくなり、それに伴って硬度が高くなることが知られている。安定化ジルコニアはセラミックス材料であるが、この場合も格子定数が小さくなると硬度が大きくなると考えられる。このことから類推すると、新品ブレーキの使用初期に摩擦係数が安定しないのは、高負荷での摩擦によって安定化ジルコニアに歪が入ったために格子定数が小さくなり、それに伴い安定化ジルコニアの硬度が高くなっていると思われる。つまり、高負荷での摩擦によって摩擦材中の安定化ジルコニアに歪が入り、その硬度が高くなったことで、摩擦係数が大きくなり、初期使用時の摩擦係数が安定しなくなるものと推測される。我々の実験においても、摩擦材の使用前より使用後の方が、安定化ジルコニアの格子定数が小さくなることが確認された。
本発明において、安定化ジルコニア単結晶とは、歪が入っていない結晶を意味する。その格子定数は、例えばカルシア安定化ジルコニアの場合、5.1289Åである(インオーガニック クリスタル ストラクチャー データベース[Inorganic Crystal Structure
Database]、ICSD#60609)が、我々は以下のような実験からカルシア安定化ジルコニアの格子定数は5.1289Åであることを確認している。
歪が入っているカルシア安定化ジルコニアを1300℃でアニールし、アニール時間と格子定数の関係を調べた。その結果を図1に記す。アニール時間が長くなるにつれ、格子定数が5.1289Åに次第に近づいてくる。一般に、アニールによって結晶に熱エネルギーが与えられると、格子歪エネルギーが開放され格子歪が緩和される。すなわち、結晶格子中のカルシウムイオン、ジルコニウムイオン、酸素イオンのイオンが結晶格子内で移動し、カルシア安定化ジルコニア結晶の内部エネルギーが減少する。さらにアニール時間が長くなると、この内部エネルギーが最小の状態となり、内部エネルギーの変化はほとんどなくなる。つまり、この状態が歪の入っていない(完全)結晶であり、その格子定数が単結晶の格子定数である。カルシア安定化ジルコニアの場合、その格子定数は、本測定結果からも5.1289Åであるといえる。
安定化ジルコニアとは、カルシア(CaO)、イットリア(Y)やマグネシア(MgO)等の安定化剤と呼ばれる物質をジルコニア結晶中に固溶させて、室温で単斜晶であるジルコニアを立方晶にして、結晶相を転移し難くした物質として知られている。
安定化度合いを示す安定化率は、ジルコニア結晶のX線回折によって求められ、回折角が28.90°〜30.90°に現れる立方晶111ピーク強度の積算値(I)と、回折角が27.40°〜28.90°に現れる単斜晶−111ピーク強度及び30.90°〜32.00°に現れる単斜晶111ピーク強度の合計積算値(S)とから、次式によって計算される。
安定化率(%)=I/(I+S)×100
また、立方晶と単斜晶或いは正方晶が共存するジルコニアが部分安定化ジルコニアと呼ばれるが、本発明では、例えば、特開平09−31440号公報に開示されているように安定化率の違いによる効果の差は見られず、安定化率に関係なくブレーキ使用初期での摩擦係数の変化が少ない安定した摩擦特性が得られるので、部分安定化ジルコニアを含めて安定化ジルコニアと呼ぶ。
一般的に格子定数の算出には、まず各ピークの回折角2θを測定しBraggの式λ=2d・sinθから面間隔dを算出する。安定化ジルコニアのような立方晶の場合には、得られた各ピークの面間隔dから格子定数と各面間隔との関係式「格子定数(Å)=λ/(2×
sinθ)×(h+k+l0.5」を用いて格子定数を求めることができる。特に高角度から得た回折線のd値は精度が高いので、精度の良い格子定数を求めるため高角度の回折線を使用する。例えば、Cu−Kα1線(波長λ=1.540562Å)を使ってカルシア安定化ジルコニアの格子定数を測定する場合、回折角(2×θ)が59.50°〜60.00°に現れる311ピーク、62.50°〜63.00°に現れる222ピーク、73.50°〜74.00°に現れる400ピーク等のピーク角度を使い次の理論式によって計算される。
311ピークから計算する場合、格子定数(Å)=λ/(2×sinθ)×110.5・・(1)
222ピークから計算する場合、格子定数(Å)=λ/(2×sinθ)×120.5・・(2)
400ピークから計算する場合、格子定数(Å)=λ/(2×sinθ)×160.5・・(4)
331ピークから計算する場合、格子定数(Å)=λ/(2×sinθ)×190.5・・(5)
420ピークから計算する場合、格子定数(Å)=λ/(2×sinθ)×200.5・・(6)
422ピークから計算する場合、格子定数(Å)=λ/(2×sinθ)×240.5・・(7)
333ピークから計算する場合、格子定数(Å)=λ/(2×sinθ)×270.5・・(8)
440ピークから計算する場合、格子定数(Å)=λ/(2×sinθ)×320.5・・(9)
531ピークから計算する場合、格子定数(Å)=λ/(2×sinθ)×350.5・・・(10)
442ピークから計算する場合、格子定数(Å)=λ/(2×sinθ)×360.5・・・(11)
620ピークから計算する場合、格子定数(Å)=λ/(2×sinθ)×400.5・・・(12)
533ピークから計算する場合、格子定数(Å)=λ/(2×sinθ)×430.5・・・(13)
さらに、より精度の高い格子定数を算出するには、系統誤差を考慮しなければならない。系統誤差とは、X線ビームの広がりやX線の試料への浸入等に起因して生じる回折角の測定値と理論値との差であり、これはX線回折計の光学系や被測定試料等に依存する。一般的に系統誤差補正には、格子定数が予め分かっている標準物質を被測定試料に混ぜて測定し、その標準試料の回折角のずれから系統誤差を見積もる内部標準法、標準物質と被測定試料とを別々に測定し系統誤差を見積もる外部標準法等がある。摩擦材中に含まれる安定化ジルコニアの格子定数は内部標準法を使用するために粉砕すると歪が入って格子定数が変化する場合がある。したがって固体のまま摩擦材を測定する必要があるため、外部標準法が適している。原材料単体の安定化ジルコニアの格子定数を測定するのにも同様の外部標準法を用いるのが好ましい。標準試料には、格子定数が変化し難く、測定試料のX線回折ピークと重ならない物質が選ばれ、カルシア安定化ジルコニアの格子定数測定の場合、標準試料はケイ素(Si)が好ましい。図2〜24に補正方法の例を示す。図2は、カルシア安定化ジルコニアのX線回折測定結果であり、図3はケイ素(Si)のX線回折測定結果である。図3のうち、ケイ素の111、220、311、・・・・ピーク角度付近を拡大したものが、それぞれ図4、5、6・・・である。その実験値(横軸)と理論値(縦軸)の関係を図12に表す。図12中の回帰式が系統誤差の補正式である。この数式のXにカルシア安定化ジルコニアの311、222、400・・・のピーク角度の実験値を代入すれば、図13〜24に示すような補正値が得られる。この補正値を式(1)〜(13)に代入することで格子定数が得られる。このような方法であれば、安定化ジルコニアの
格子定数を0.0001Åオーダーの精度で求めることができる。
ただし、摩擦材中に含まれる安定化ジルコニアの格子定数を決定する際には、摩擦材中には安定化ジルコニア以外の結晶相が十種類程度含まれているので、安定化ジルコニアとそれ以外の結晶相の回折ピークが重なる部分がある。このピークの重なり部分では、安定化ジルコニアの回折角2θを正確に測定することができない。このため、ピークが重ならない部分で安定化ジルコニアの回折角2θを測定する必要がある。本摩擦材中の安定化ジルコニアの場合、ピーク間隔の狭い低角度ではピークが重なりやすいが、高角度の331、420、333、531の安定化ジルコニアの各ピークを使用すれば、摩擦材中に含まれる安定化ジルコニアであっても格子定数を精度良く求めることが出来る。
次に、本発明の摩擦材の製造について説明する。本発明の摩擦材は、ガラス繊維、アラミド繊維等の基材繊維、黒鉛、二硫化モリブデン等の潤滑材、有機ダスト、金属粉末、無機配合材等の摩擦調整材、フェノール樹脂等の結合材などと、以下のような安定化ジルコニアを均一に混合し、加熱・加圧成形することにより製造することができる。
前述のように、本発明の摩擦材は、安定化ジルコニア単結晶と比較して99.93〜99.95%の大きさの格子定数をもつ安定化ジルコニアを含む摩擦材である。したがって、原料に用いる安定化ジルコニアは摩擦材中で前記格子定数をもつものであればどのようなものを用いてもよいが、原料として、安定化ジルコニア単結晶と比較して99.95〜99.97%の大きさの格子定数を有する安定化ジルコニアを使用することが好ましい。これは、摩擦材を成形する際、安定化ジルコニアの格子定数が小さくなる傾向が見られるからであり、成形の際に格子定数が小さくなるのは、成形の際のプレスによって格子歪みが大きくなるためであると考えられる。
本発明に用いる安定化ジルコニアの調製は、例えばバッデライトやジルコサンドをカルシア(CaO)、イットリア(Y)、またはマグネシア(MgO)の安定化剤により電融・安定化処理することにより調整される。この処理により、単斜晶系のジルコニアは立方晶系となって熱的に安定化される。そして、その安定化率、即ち、ジルコニア結晶中の立方晶系の割合は、前述のように初期の摩擦係数の安定化に影響しないので任意でよいが、安定化率50%未満の部分安定化ジルコニアの場合は、特許文献3にも記載されているように、相手材であるロータの摩耗量が著しく増加することが知られており、安定化率50%未満の場合、相手材の硬度によっては相手材の摩耗量が大きくなるため安定化率50%以上のものが望ましい。しかし、相手材の摩耗量があまり大きくならない場合は、安定化率50%未満でも差し支えない。なお、安定化剤が固溶した立方晶のみで構成される100%安定化ジルコニアを得るために必要な安定化剤の添加量は、例えば、次のとおりである。
カルシア(CaO):4〜8質量%
イットリア(Y):6〜10質量%
マグネシア(MgO):4〜8質量%
安定化ジルコニアの格子定数を安定化ジルコニア単結晶の格子定数に対して99.95〜99.97%の大きさにするには、種々の方法があるが、例えば粉砕が挙げられる。一般に、結晶は粉砕等の過程において、歪みが入り、格子定数が小さくなることが知られている。安定化ジルコニアも粉砕により格子定数を小さくすることができる。なお、上記以外の方法であっても、格子定数が安定化ジルコニア単結晶に比べて99.95〜99.97%に出来る方法であれば本発明に使用できる。安定化ジルコニアの粒子形状は、実施例に示したように本発明の目的とする摩擦特性、すなわち初期の摩擦係数の安定性には、安定化ジルコニウム粒径、形状に依存しないことが判明している。しかしながら、他の摩擦特性、例えば耐摩耗性や、本発明の目的である初期の摩擦係数の安定性だけでなく、その
後の平均摩擦係数も考慮すると、平均粒径は数μm〜数10μm、形状は表面積/体積のできるだけ大きい鋭角状のものが好ましい。
安定化ジルコニアの含有量は、他の充填材料や要求される摩擦係数に応じて決定されるが、多すぎると相手材であるロータに対する攻撃性が大きくなるので好ましくない。また少なすぎると研削材として機能しないため好ましくない。そのため、摩擦材料総量に対し、0.5〜25重量%の範囲とするのがよい。
本発明にかかる摩擦材に使用される研削材成分としては、この安定化ジルコニアに加えて、従来使用される研削材、例えばシリカ、アルミナ等を併用する事ができる。
研削成分以外の成分は従来と同様でもよく、結合材としては、例えばフェノール樹脂又はメラミン樹脂をベースとした樹脂、或いはそれらの変性品が使用できる。
繊維基材としては、例えば銅、ステンレス鋼、真ちゅう、アラミド、カーボン、ガラス、チタン酸カリウム、ロックウール、セラミック等の無機又は有機繊維が使用できる。
研削材以外の充填材としては、例えば硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の体積充填材、グラファイト、二硫化モリブデン等の固体潤滑材、カシューダスト、ゴムダスト等の有機ダスト、鉄、銅、アルミニウム等の金属粉が使用できる。
以上の配合組成物を充分に攪拌、混合し、例えば、面圧100〜500Kgf/cm(9.8〜49.0MPa)でタブレット状に予備成形した後、これをプレッシャプレートとともに熱プレスに投入して温度130〜180℃及び面圧200〜1000Kgf/cm(19.6〜98.0MPa)で3〜15分間程度、熱成形して、次に、この成形品を温度150〜300℃、1〜15時間程度の熱処理し、更に形状加工を行うことにより、本発明の摩擦剤を得ることができる。
以下にカルシア安定化ジルコニアを用いた場合の実施例によって説明するが、イットリア、マグネシアで安定化された安定化ジルコニアでも同様であり、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。第1表に本発明の実施例で使用した摩擦材の配合割合(重量%)、使用した安定化ジルコニアの格子定数(原材料単体)、安定化率、アニール時間を示す。使用したカルシア安定化ジルコニアの平均粒径は、数μmから数10μmであった。
実施例1〜6
<カルシア安定化ジルコニアの製造>
実施例1〜6で使用するカルシア安定化ジルコニアは電融法で製造した。バッデライトとカルシアを混合し、電気的に加熱してその混合物を溶融し、冷却・固化して製造した。前記カルシア安定化ジルコニアを一定時間粉砕してX線回折の測定をしたところ、格子定数は5.1260Åであった。次にそれぞれ第1表に示す時間だけアニールすることで、それぞれの格子定数の安定化ジルコニアを得ることが出来た(図1参照)。
<摩擦材の製造>
以上のようにして調整したカルシア安定化ジルコニアを第1表に示した配合割合で他の原材料と均一に充分に攪拌、混合し、これを面圧200Kgf/cm(19.6MPa)でタブレット状に予備成形した後、この予備成形物をプレッシャプレートとともに熱プレスに投入し、温度150℃、面圧400Kgf/cm(39.2MPa)で10分間で熱成形した。次にこの成型品を温度250℃で8時間の熱処理し、更に形状加工を行ってブレーキパッドを作製した。
比較例1〜4
<カルシア安定化ジルコニアの製造>
比較例1〜4のカルシア安定化ジルコニアも実施例と同様の手法で製造した。使用したカルシア安定化ジルコニアの粒径は、実施例と同様である。
<摩擦材の製造>
上記のようにして調整したカルシア安定化ジルコニアを、第1表に示した配合割合で他の原料と均一に混合・攪拌した後、実施例と同様に摩擦材を製造した。
Figure 0004138801
Figure 0004138801
上記摩擦材中に含まれるカルシア安定化ジルコニアの格子定数を前記した格子定数の算出手段に示した方法で測定した。ブレーキパッドから縦35×横35×厚み20mmを加工したものをサンプルとし、測定条件は、X線源:Cuターゲット、X線波長:Cu−K
α1線:540562Å(単色化X線)、電圧―電流:40kV―40mA、スリット:DS1°SS1°RS0.15mm、ステップスキャン、2θステップ幅:0.02°、測定角度:2θ80°から130°、計数時間10秒、サンプル面内回転有、である。角度補正用標準試料には高純度化学製、純度98%upのケイ素(Si)を使用した。その結果を、第2表及び図25に示す。
Figure 0004138801
実施例、比較例ともに摩擦材に成形することで0.02%程度格子定数が小さくなった。
<摩擦試験>
実施例及び比較例の摩擦材に対して、高負荷な熱履歴前後の摩擦係数の変化を測定するため、ブレーキダイナモメータで次のような条件にて試験を行った。
ブレーキキャリパはホイルシリンダ径57.15mmの1potタイプ、タイヤ有効半径は306mm、ロータサイズはφ255mm、ロータ材質はFC200、パッド摩擦面積は43cmのブレーキ諸元にて、JASO C 406−2000に準ずる条件で評価試験を行った。高負荷の熱履歴前の摩擦係数は、第2効力試験のうち、ブレーキ初速度V=100km/h、減速度α=2.94m/sの制動における摩擦係数を代表値とした。また熱履歴後の摩擦係数は、第1及び第2フェード試験後の最終効力試験のV=100km/h、α=2.94m/sの制動における摩擦係数を代表値とした。試験結果を第3表及び図26に示す。
Figure 0004138801
<摩擦試験前後の格子定数測定>
実施例1〜6及び比較例1〜4の摩擦材について、摩擦試験前後における摩擦材中のカルシア安定化ジルコニアの格子定数を、X線回折計を用いて前記の格子定数の算出方法に示した方法で、第2表に示す試験と同一条件で測定した。
第4表及び図27に測定結果を示す。
Figure 0004138801
本発明である実施例1〜6の摩擦材では、高負荷の熱履歴前後でほとんど摩擦係数の変化がなく、また、格子定数もほとんど変化しなかった。
一方、比較例1〜4の摩擦材は、高負荷の熱履歴前後で摩擦係数が大きく上昇した。また高負荷の熱履歴前後で格子定数が減少した。また、格子定数5.1253Å未満の安定化ジルコニアを含む摩擦材は、ブレーキとしての通常の使用に耐えられるものではなかった。
本発明によれば、ブレーキ使用初期の摩擦係数の安定性を確保した摩擦材が得られるので、本発明の摩擦材及びその製造方法は、摩擦材の製造分野で有用である。
アニール時間と格子定数の関係を表したグラフである。 カルシア安定化ジルコニアのX線回折測定結果を表したグラフである。 ケイ素(Si)のX線回折測定結果を表したグラフである。 図3のうち、Siの311ピーク付近を拡大して実験値と理論値ピークを表したグラフである。 図3のうち、Siの400ピーク付近を拡大して実験値と理論値ピークを表したグラフである。 図3のうち、Siの331ピーク付近を拡大して実験値と理論値ピークを表したグラフである。 図3のうち、Siの422ピーク付近を拡大して実験値と理論値ピークを表したグラフである。 図3のうち、Siの511ピーク付近を拡大して実験値と理論値ピークを表したグラフである。 図3のうち、Siの440ピーク付近を拡大して実験値と理論値ピークを表したグラフである。 図3のうち、Siの531ピーク付近を拡大して実験値と理論値ピークを表したグラフである。 図3のうち、Siの620ピーク付近を拡大して実験値と理論値ピークを表したグラフである。 図4〜11の8つのピークにおける実験値と理論値の関係と系統誤差の補正式を表したグラフである。 図2のうち、カルシア安定化ジルコニアの311ピークを拡大して実験値と角度補正値を表したグラフである。 図2のうち、カルシア安定化ジルコニアの222ピークを拡大して実験値と角度補正値を表したグラフである。 図2のうち、カルシア安定化ジルコニアの400ピークを拡大して実験値と角度補正値を表したグラフである。 図2のうち、カルシア安定化ジルコニアの331ピークを拡大して実験値と角度補正値を表したグラフである。 図2のうち、カルシア安定化ジルコニアの420ピークを拡大して実験値と角度補正値を表したグラフである。 図2のうち、カルシア安定化ジルコニアの422ピークを拡大して実験値と角度補正値を表したグラフである。 図2のうち、カルシア安定化ジルコニアの333ピークを拡大して実験値と角度補正値を表したグラフである。 図2のうち、カルシア安定化ジルコニアの440ピークを拡大して実験値と角度補正値を表したグラフである。 図2のうち、カルシア安定化ジルコニアの531ピークを拡大して実験値と角度補正値を表したグラフである。 図2のうち、カルシア安定化ジルコニアの442ピークを拡大して実験値と角度補正値を表したグラフである。 図2のうち、カルシア安定化ジルコニアの620ピークを拡大して実験値と角度補正値を表したグラフである。 図2のうち、カルシア安定化ジルコニアの533ピークを拡大して実験値と角度補正値を表したグラフである。 格子定数の変化を表したグラフである。 高負荷の熱履歴前後の摩擦係数変化を表したグラフである。 格子定数の変化を表したグラフである。

Claims (6)

  1. 基材繊維と、結合材と、充填材とからなる摩擦材であって、安定化ジルコニア単結晶と比較して99.93〜99.95%の大きさの格子定数を有する安定化ジルコニアを含むことを特徴とする摩擦材。
  2. 前記安定化ジルコニアが、5.1253〜5.1263Åの格子定数を有するカルシア安定化ジルコニアである請求項1記載の摩擦材。
  3. 基材繊維と、結合材と、充填材とからなる摩擦材において、前記充填材の一部として、安定化ジルコニア単結晶と比較して99.95〜99.97%の大きさの格子定数を有する安定化ジルコニアを配合し、加熱・加圧成形したことを特徴とする摩擦材。
  4. 前記安定化ジルコニアが、5.1263〜5.1275Åの格子定数を有するカルシア安定化ジルコニアである請求項3記載の摩擦材。
  5. 基材繊維と、結合材と、充填材を均一に混合し、加熱・加圧成形して摩擦材を製造する方法において、安定化ジルコニア単結晶と比較して99.95〜99.97%の大きさの格子定数を有する安定化ジルコニアを充填材の一種に配合することを特徴とする摩擦材の製造方法。
  6. 前記安定化ジルコニアが、5.1263〜5.1275Åの格子定数を有するカルシア安定化ジルコニアである請求項5記載の摩擦材の製造方法。
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