JP4138161B2 - 空冷式熱交換器のフィンチューブ防振方法 - Google Patents

空冷式熱交換器のフィンチューブ防振方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空冷式熱交換器の使用時に管束のフィンチューブに発生する振動を抑制するために適用される空冷式熱交換器のフィンチューブ防振方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、発電所や化学プラント等では、例えば、圧縮機からガスタービンに供給される圧縮流体を冷却するために空冷式熱交換器が用いられている。この種の空冷式熱交換器は、互いに対向するヘッダ間に複数のフィンチューブを配設させてなる管束を備える。また、互いに対向するヘッダ間には、各フィンチューブを支持する管支持部が所定間隔をおいて複数設けられている。更に、管束の上方又は下方には、押込み通風方式又は吸込み通風方式の冷却ファンが配置されている。このような構成を有する空冷式熱交換器を運転する場合、何れか一方のヘッダから各フィンチューブ内に高温流体を流通させると共に、冷却ファンを作動させる。これにより、管束に対しては、冷却ファンによって押込まれ、又は、吸込まれた空気(冷却エア)が供給され、管束を通過する冷却エアによって、各フィンチューブ内を流通する高温流体の熱が奪われることになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この種の空冷式熱交換器を所定の設置箇所に据え付け、実際に運転した場合、次のような問題が生じてしまうことがある。すなわち、管束に対して供給された冷却エアの流速分布は、管束の周囲で不均一となり、また、管束周囲の温度や湿度等も常時変化する。この結果、各フィンチューブに振動(流体によって誘起される振動)が発生してしまい、発生した振動が共振によって増幅されてしまうと、フィンチューブの損傷や騒音の問題を招くおそれがある。また、実際に空冷式熱交換器を稼働させた後、冷却能力が不足していることが判明した場合や、運用条件の変更によって冷却ファンの風量を増大させたような場合、当初見られなかった振動の問題が、冷却ファンの風量を変更した後に生じてしまうことも起こり得る。
【0004】
そこで、本発明は、空冷式熱交換器の運転中、管束のフィンチューブに発生する振動を簡易かつ確実に抑制することが可能な空冷式熱交換器のフィンチューブ防振方法の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明による空冷式熱交換器のフィンチューブ防振方法は、互いに対向するヘッダ間に複数のフィンチューブを配設すると共に各ヘッダ間に所定間隔をおいて各フィンチューブを支持する管支持部を設けてなる管束と、管束に対して冷却エアを供給する冷却ファンとを含む空冷式熱交換器を使用する際に、管束のフィンチューブに発生する振動を抑制するために適用される空冷式熱交換器のフィンチューブ防振方法であって、ヘッダと管支持部との間、及び、管支持部同士の間のうち、少なくとも1箇所で、各フィンチューブの移動を規制する防振工程を含むものである。
【0006】
この種の空冷式熱交換器を運転する場合、何れか一方のヘッダから各フィンチューブ内に高温流体を流通させると共に、冷却ファンを作動させる。この際、冷却ファンによって供給される冷却エアが管束の周囲を流通することに起因して、各フィンチューブに振動(流体によって誘起される振動)が発生することがある。このような場合に、本発明によるフィンチューブ防振方法のように、ヘッダと管支持部との間、及び、管支持部同士の間のうち、少なくとも1箇所で、各フィンチューブの移動を規制すれば、ヘッダ間における各フィンチューブの支持ピッチが実質的に変更されることになる。従って、各フィンチューブの固有振動数(共振振動数)を変化させることが可能となり、空冷式熱交換器を作動させた際にフィンチューブに振動が発生してしまった場合であっても、容易かつ確実に振動を抑制することができる。
【0007】
この場合、各フィンチューブの移動を規制するための防振工程として、次のような手法を採用すると好ましい。
【0008】
すなわち、防振工程では、管束に対して一対のフレームを互いに対向するように配置すると共に、一対のフレームに対して複数のワイヤを張設して、前記各フィンチューブを支持すると好ましい。
【0009】
また、防振工程では、各フィンチューブ同士の隙間に防振部材を配置して、各フィンチューブを支持すると好ましい。
【0010】
更に、防振工程では、冷却エアの流れ方向における上流側及び下流側の少なくとも一方に冷却エア遮断部材を配置して、管束に対する冷却エアの流入流速分布を規制すると好ましい。
【0011】
これらの方法は、いずれも、既設の空冷式熱交換器に対して簡易に適用可能なものである。従って、空冷式熱交換器の常用条件下で振動の問題が生じたような場合や、冷却能力の不足を補うべく冷却ファンの風量を増大させた後に、振動の問題が生じたような場合であっても、管束のフィンチューブに発生する振動を簡易かつ確実に抑制することができる。また、設計時に各フィンチューブを支持する管支持部の数を予め減らしておいて、運転条件に応じて、適宜、防振工程を施すことも可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明による空冷式熱交換器のフィンチューブ防振方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明によるフィンチューブ防振方法を適用可能な空冷式熱交換器を示す模式図である。同図に示す空冷式熱交換器1は、互いに対向し合うヘッダ2を含み、各ヘッダ2には、それぞれ管板3が取り付けられている。管板3には、図2に示すように、多数の孔部3aがマトリックス状に配設されており、各孔部3aには、フィンチューブ4が、いわゆる拡管法等によって取り付けられている。このように互いに対向するヘッダ2同士の間に複数のフィンチューブ4を配設することにより、管束5が構成される。また、互いに対向するヘッダ2間には、各フィンチューブ4を支持する所定の管支持部6が所定間隔をおいて複数(この場合、3個所)設けられている。更に、管束5の下方には、吸込み通風方式の冷却ファン7が配置されている。なお、本発明は、押込み通風方式の冷却ファンをもった空冷式熱交換器に対しても適用可能である。
【0014】
この空冷式熱交換器1を運転する場合、図1における左側のヘッダ2から各フィンチューブ4内に冷却対象となる高温流体を流通させると共に、冷却ファン7を作動させる。これにより、管束5に対しては、冷却ファン7によって吸込まれた空気(冷却エア)が供給され、管束5を通過する冷却エアによって、各フィンチューブ4内を流通する高温流体の熱が奪われることになる。この際、管束5の周囲における冷却エアの流速変化、温度変化、湿度変化等に起因して、各フィンチューブ4に振動(流体によって誘起される振動)が発生することがある。
【0015】
本発明によるフィンチューブ防振方法では、ヘッダ2と管支持部6との間、及び、管支持部6同士の間のうち、少なくとも1箇所(例えば、図1において白抜き矢印にて示す箇所)で、各フィンチューブ4の移動を規制する(防振工程)。これにより、ヘッダ2同士の間における各フィンチューブ4の支持ピッチが実質的に変更されることになるので、各フィンチューブ4の固有振動数(共振振動数)を変化させることが可能となり、空冷式熱交換器1を作動させた際にフィンチューブ4に振動が発生してしまった場合であっても、容易かつ確実に振動を抑制することができる。この場合、冷却エアの流れ方向における各フィンチューブ4の移動を規制するための防振工程としては、次のような具体的手法を採用することが可能である。
【0016】
〔第1の手法〕
この場合は、図3及び4に示すように、管束5に一対のフレームfを互いに対向するように配置する。すなわち、冷却エアの流れ方向における最上流側(図1における上側)の段に位置する各フィンチューブ4と、冷却エアの流れ方向における最下流側(図1における下側、すなわち、冷却ファン7側)の段に位置する各フィンチューブ4とに対して、それぞれフレームfを配置する。また、各フレームfには、ワイヤWを挿通させるための孔部を所定数だけ穿設しておく。
【0017】
そして、管束5に対して配置された一対のフレームfに対して、複数のワイヤWを張設する。すなわち、図3に示すように、各ワイヤWは、一対のフレームfの間を往復するように斜めに張設され、何れか1本のフィンチューブ4の母管4aが2本のワイヤWと接触する状態とする。これにより、各フィンチューブ4は、各ワイヤWによって冷却エアの流れ方向における下流側から支持されることになり、各フィンチューブ4の移動を規制することが可能となる。なお、ワイヤWには、図3に示すように、適宜ターンバックルTを装着するとよい。これにより、時間の経過によって張設されたワイヤWが緩んでも、ターンバックルTを締め付けることにより、再度ワイヤWを引張ることが可能となる。
【0018】
〔第2の手法〕
この場合は、図6に示すような防振部材10を用いる。防振部材10は、細幅かつ肉薄に形成された2枚の板材11を平行に並べると共に、連結棒12によって連結したものである。防振部材10(板材11)の幅dは、冷却エアの流れ方向におけるフィンチューブ4の配設間隔と略同一に設定されている。そして、図7及び8に示すように、管束5の側方から、上段側のフィンチューブ4の下部と、下段側のフィンチューブの上部とに当接するように防振部材10を挿入する。これにより、各フィンチューブ4は、各防振部材10によって冷却エアの流れ方向における下流側から支持されることになる。この結果、冷却エアの流れ方向における各フィンチューブ4の移動を規制することが可能となる。なお、防振部材10を配置する箇所では、図7に示すように、フィンチューブ4からフィン4fを適宜除去しておくとよい。
【0019】
図9及び10に、防振部材の他の態様を示す。これらの図面に示す防振部材10Aは、細幅かつ肉薄に形成された平板材14と、平板材14と係合する段部をもった段付板材15とからなる。平板材14及び段付板材15の厚さは、フィンチューブ4のフィン4fの配設間隔よりも薄く設定されている。また、平板材14の下縁部には、各フィンチューブ4の母管4aと係合する切欠き部14aが所定ピッチを隔てて形成されており、段付板材15の上縁部には、各フィンチューブ4の母管4aと係合する切欠き部15aが所定ピッチを隔てて形成されている。
【0020】
防振部材10Aを用いる場合、まず、管束5の側方から平板材14を挿入すると共に、下段側に位置する各フィンチューブ4の上部と各切欠き部14aとを係合させる。続いて、管束5の側方から段付板材15を挿入し、上段側に位置する各フィンチューブ4の下部と各切欠き部15aとを係合させると共に、平板材14と係合させる。平板材14と段付板材15とは、管束5の両側部に設けられている側部フレームsfにボルト等を介して固定する。これにより、各フィンチューブ4は、各防振部材10Aによって冷却エアの流れ方向における下流側から支持されることになる。この結果、冷却エアの流れ方向における各フィンチューブ4の移動を規制することが可能となる。
【0021】
図11に、防振部材の更に他の態様を示す。同図に示す防振部材10Bは、一対の挟持板16と、各挟持板16を互いに固定するための連結板17とからなる。各挟持板16の一縁部には、耐熱ゴム材16aが固定されている。この防振部材10Bを用いる場合、管束5に対して、水平に並んでいる各フィンチューブ4を挟むように、かつ、耐熱ゴム材16aと母管4aとが当接するように各挟持板16を配置する。そして、両挟持板16aを連結板17によって互いに固定する。これにより、各フィンチューブ4は、少なくとも、各防振部材10Aによって冷却エアの流れ方向における下流側から支持されることになり、冷却エアの流れ方向における各フィンチューブ4の移動を規制することが可能となる。この場合、防振部材10Bは、少なくとも、冷却エアの流れ方向における最上流側の段に位置する各フィンチューブ4に対して設ければよい。
【0022】
〔第3の手法〕
この場合は、図12に示すように、管束5よりも冷却エアの流れ方向における上流側に冷却エア遮断部材18を配置する。また、管束5を挟んで、冷却エア遮断部材18と対向する位置に第2冷却エア遮断部材19を配置する。これにより、冷却エア遮断部材18によって、管束5に対する冷却エアの流入が規制され、冷却エア遮断部材18よりも冷却エアの流れ方向における下流側に位置する各フィンチューブ4には、冷却ファン7によって供給される冷却エアが流れ込まない(当たらない)ことになる。また、管束5と冷却ファン7との間に第2冷却エア遮断部材19を配置することにより、冷却ファン7によって第2冷却エア遮断部材19の上流側から空気が吸引されることが抑制される。このような手法によっても、各フィンチューブ4の移動を規制することが可能となる。
【0023】
以上説明した第1〜第3の手法は、いずれも、既設の空冷式熱交換器1に対して簡易に適用可能なものである。従って、空冷式熱交換器1の常用条件下で振動の問題が生じたような場合や、冷却能力の不足を補うべく冷却ファン7の風量を増大させた後に、振動の問題が生じたような場合であっても、管束5のフィンチューブ4に発生する振動を簡易かつ確実に抑制することができる。また、設計時に各フィンチューブ4を支持する管支持部6の数を予め減らしておいて、運転条件に応じて、適宜、これらの防振工程を施すことも可能である。
【0024】
〔他の手法〕
上述した各手法は、既設の空冷式熱交換器1に対して適用するのに好適なものであるが、空冷式熱交換器を製造する際に、次にような対策を予め講じておいてもよい。すなわち、図13に示す空冷式熱交換器1Aは、ヘッダ2に取り付けられた管板3の側方に配置されると共に各フィンチューブ4を支持する補助防振板20を備える。補助防振板20は、マトリックス状に配設された多数の孔部20aを有し、各孔部20aには、フィンチューブ4が、いわゆる拡管法等によって固定されている。これにより、各フィンチューブ4の取付剛性が高まるので、管束5のフィンチューブ4に発生する振動を未然に防止することが可能となる。なお、空冷式式熱交換器1Aの他の構成は、図1等に示した空冷式熱交換器1と同一である。
【0025】
【発明の効果】
以上説明した本発明に係る空冷式熱交換器のフィンチューブ防振方法によれば、ヘッダ間の少なくとも1箇所で、各フィンチューブの移動を規制することにより、管束のフィンチューブに発生する振動を簡易かつ確実に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるフィンチューブ防振方法を適用可能な空冷式熱交換器を示す模式図である。
【図2】図1の空冷式熱交換器に含まれる管板を示す模式図である。
【図3】本発明による第1のフィンチューブ防振方法を説明するための模式図である。
【図4】本発明による第1のフィンチューブ防振方法を説明するための模式図である。
【図5】本発明による第1のフィンチューブ防振方法を説明するための模式図である。
【図6】本発明による第2のフィンチューブ防振方法において用いる防振部材を示す斜視図である。
【図7】本発明による第2のフィンチューブ防振方法を説明するための模式図である。
【図8】本発明による第2のフィンチューブ防振方法を説明するための模式図である。
【図9】本発明による第2のフィンチューブ防振方法の他の態様を説明するための模式図である。
【図10】図9のX方向矢視図である。
【図11】本発明による第2のフィンチューブ防振方法の更に他の態様を説明するための模式図である。
【図12】本発明による第3のフィンチューブ防振方法を説明するための模式図である。
【図13】空冷式熱交換器に講じることが可能な防振対策を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1,1A…空冷式熱交換器、2…ヘッダ、3…管板、4…フィンチューブ、4a…母管、4f…フィン、5…管束、6…管支持部、7…冷却ファン、10,10A,10B…防振部材、18…冷却エア遮断部材、19…第2冷却エア遮断部材、20…補助防振板、W…ワイヤ、f…フレーム。

Claims (2)

  1. 互いに対向するヘッダ間に複数のフィンチューブを配設すると共に前記各ヘッダ間に所定間隔をおいて前記各フィンチューブを支持する管支持部を設けてなる管束と、前記管束に対して冷却エアを供給する冷却ファンとを含む空冷式熱交換器を使用する際に、前記管束の前記フィンチューブに発生する振動を抑制するために適用される空冷式熱交換器のフィンチューブ防振方法であって、
    前記ヘッダと前記管支持部との間、及び、前記管支持部同士の間のうち、少なくとも1箇所で、前記各フィンチューブの移動を規制する防振工程を含み、
    前記防振工程では、前記管束に対して一対のフレームを互いに対向するように配置すると共に、前記一対のフレームに対して複数のワイヤを前記フレームの間を往復するように前記フレームに対して斜めに張設して、前記各フィンチューブを支持することを特徴とする空冷式熱交換器のフィンチューブ防振方法。
  2. 互いに対向するヘッダ間に複数のフィンチューブを配設すると共に前記各ヘッダ間に所定間隔をおいて前記各フィンチューブを支持する管支持部を設けてなる管束と、前記管束に対して冷却エアを供給する冷却ファンとを含む空冷式熱交換器を使用する際に、前記管束の前記フィンチューブに発生する振動を抑制するために適用される空冷式熱交換器のフィンチューブ防振方法であって、
    前記ヘッダと前記管支持部との間、及び、前記管支持部同士の間のうち、少なくとも1箇所で、前記各フィンチューブの移動を規制する防振工程を含み、
    前記防振工程では、前記各フィンチューブ同士の隙間に防振部材を配置し、前記防振部材は、前記管束に対して互いに対向するように配置される一対のフレームに固定されて、前記各フィンチューブを支持することを特徴とする空冷式熱交換器のフィンチューブ防振方法。
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