JP4137549B2 - 基材防水工法および該工法による構造体、ならびに該工法に用いる接着剤層用プライマー - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、基材防水工法および該基材防水工法に用いられるプライマー、ならびに該基材防水工法により得られる複合構造体に関する。さらに詳しくは改良された長期耐久性を有する自動車道路に供される床版防水工法および該床版防水工法により形成される自動車道路に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
基材防水工法は、塗膜系床版防水工法など従来から種々の技術が提案されている。
たとえば、特開平3−93904号公報には、コンクリート床版面の表面に施された塗膜防水層の上に熱可塑性樹脂粒子を散布した後アスファルト舗装を施す技術、
特公平6−4961号公報には、アスファルトコンクリートとコンクリート等の床版とをホットメルト型の接着材からなる接着層を介して一体化する技術、
特公平8−9851号公報には、コンクリート床版面に防水層を形成するための常温硬化型合成樹脂を塗付し該合成樹脂の硬化前に熱溶融型樹脂のペレットを散布し該合成樹脂が硬化した後に舗装層を形成する技術、
特開2000−170111号公報には、コンクリート等の床版に湿潤面接着性に優れた常温硬化型液状樹脂を塗付し直ちに硅砂等を散布した後、2液混合可撓性速硬化型のウレタン樹脂またはウレア樹脂またはウレアウレタン樹脂を塗付し直ちに硅砂等を散布、2液混合可撓性速硬化型一次防水樹脂を硬化させた後、アスファルト乳剤またはゴム改質アスファルト乳剤に顆粒状または粉末の熱溶融接着材を混合分散した防水接着材を散布してアスファルト舗装材を舗設する技術
などが記載されている。
【0003】
しかし、四季を通した温度変化や雨水による負荷、車輌走行による繰り返し荷重負荷、基材の撓み負荷を受けることにより、基材と防水層、あるいは防水層とアスファルト舗装材(合材)との接着が不充分となったり、また、ひび割れ追従性が十分に満足できるものではないという問題点がある。さらに、施工時に防水層の反応性が低下するために、防水層とアスファルト舗装材との接着が不十分となり、これを防ぐために迅速な施工作業が要求されるなど作業性が悪いという問題点もある。このため、防水性能および接着性能に優れ、良好な作業性を有する基材防水工法の開発が要求されている。特に、ウレタン、ウレタンウレア、ウレアからなる防水材はアスファルトと骨材からなる合材層との接着性の改良が望まれている。
【0004】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、ひび割れ追従性に優れるウレタン、ウレタンウレア、ウレアからなる防水材を用いて、基材およびアスファルト舗装材との接着がさらに改良された複合構造体およびその製法を提供することを目的としている。さらに、防水材の反応性の低下を抑制して、作業性などの施工自由度を向上させることを目的とする。
【0005】
【発明の概要】
本発明に係る複合構造体は、少なくとも基材、防水材およびアスファルト舗装材からなる複合構造体であって、防水材とアスファルト舗装材とが、水硬性アルミナ粉体および/または水硬性アウイン系鉱物粉末を硬化性樹脂100重量部に対し10〜500重量部含有させた硬化性プライマー、および接着剤層により接合されていることを特徴としている。
【0006】
前記硬化性プライマーは、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液硬化型ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種のウレタン樹脂からなるプライマーであることが好ましい。
また、前記接着剤層は、接着剤塗膜または接着用シートからなることが好ましく、それらはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物および/またはそのカルボキシル変性体を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体からなることが好ましい。
【0007】
さらに、前記防水材は、硬化性ウレタン樹脂、硬化性ウレア樹脂、硬化性ウレタンウレア樹脂から選ばれる少なくとも1種の硬化性樹脂であることが好ましい。
また、本発明に係る基材防水工法は、少なくとも基材、防水材およびアスファルト舗装材からなる複合構造体の施工方法であって、
基材上に防水材を施工し、
該防水材の表面に、水硬性アルミナ粉体および/または水硬性アウイン系鉱物粉末を硬化性樹脂100重量部に対し10〜500重量部含有させた硬化性プライマーを塗付量100〜1000(g/m2)で塗付し、
該硬化性プライマーが指触乾燥(JIS K-5400)状態になるまで固化した後、接着剤層を形成させ、
該接着剤層表面に熱アスファルト舗装材を敷設し転圧することを特徴としている。
【0008】
前記硬化性プライマーとして、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液硬化型ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種のウレタン樹脂からなるプライマーを用いることが好ましい。
前記接着剤層は、接着用シートを用いて施工しても、接着剤を塗工してもよい。また、前記接着用シートおよび接着剤は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物および/またはそのカルボキシル変性体を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体からなることが好ましい。
【0009】
さらに前記防水材は、硬化性ウレタン樹脂、硬化性ウレア樹脂、硬化性ウレタンウレア樹脂から選ばれる少なくとも1種の硬化性樹脂であることが好ましい。またさらに、本発明に係る接着剤層用プライマーは、基材上に施工される防水材とその防水材上に施工されるアスファルト舗装材とを接合するための接着剤層用プライであって、水硬性アルミナ粉体および/または水硬性アウイン系鉱物粉末を硬化性樹脂100重量部に対し10〜500重量部含有させた硬化性プライマーからなることを特徴としている。
【0010】
前記硬化性プライマーは、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液硬化型ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種のウレタン樹脂からなるプライマーであることが好ましい。
【0011】
【発明の具体的説明】
本発明は、基材、防水材、アスファルト舗装材からなる複合構造体において、防水材とアスファルト舗装材とを、接着剤層と接着剤層用プライマーとにより接合した複合構造体およびその施工方法、ならびに該施工方法に用いられる接着剤層用プライマーに関するものである。
【0012】
以下では、まずこの構造体を形成する材料について説明する。
[基材]
本発明に用いられる基材は、駐車場、道路等の基礎、橋梁、高架道路、高架鉄道等の高架橋等の舗装用に用いられる床版、家屋、ビル等の建築物の屋根、屋上等に用いられるスラブ、地下鉄、地下道、地下駐車場、地下室等の地下構造物に用いられる擁壁や天井部などが挙げられる。これら基材は、一般的には鉄板、コンクリート等が挙げられる。
[基材用プライマー]
本発明の構造体は、必要に応じて、基材と防水材の間に基材用プライマーを塗付してもよい。
【0013】
基材用プライマーとしては、駐車場、道路、橋梁、高架道路等、建築物の屋根や屋上等、地下鉄、地下道、地下駐車場、地下室等の地下構造物の舗装に用いられる基材用プライマーとして用いることができるものであればいずれでもよいが、硬化性エポキシ樹脂プライマー、硬化性ウレタン樹脂プライマー、硬化性ビニルエステル樹脂プライマー、硬化性アクリル樹脂プライマー等が挙げられる。基材への接着性と低温速硬化性の点で硬化性エポキシ樹脂プライマー、硬化性ウレタン樹脂プライマーが好適である。
【0014】
<硬化性エポキシ樹脂プライマー>
硬化性エポキシ樹脂プライマーとしては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールAD型ジグリシジルエーテルから選ばれる少なくとも1種を主成分に1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、アクリロイル基を有するアクリルオリゴマー等の反応性希釈剤、ベンジルアルコール等の非反応性希釈剤で変性した粘度5(Pa・s/25℃)以下の主剤と、
エチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン、m−キシリレンジアミン、水添m−キシリレンジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環式ポリアミン等のポリアミンのエポキシ樹脂アダクト型ポリアミン、脂肪族ポリアミンとダイマー酸からなるポリアミドアミン、変性イミダゾリンから選ばれる少なくとも1種のポリアミンを、必要に応じてベンジルアルコール等の非反応性希釈剤で変性した粘度5(Pa・s/25℃)以下の硬化剤が用いられる。
【0015】
<硬化性ウレタン樹脂プライマー>
硬化性ウレタン樹脂プライマーとしては、湿気硬化型一液ウレタン樹脂、二液硬化型ウレタン樹脂からなるプライマーが挙げられる。
湿気硬化型一液ウレタン樹脂は、有機ポリイソシアネートと活性水素基含有化合物との反応によって一分子中に1個以上の遊離イソシアネート基を有するプレポリマーとして調製される。具体的には、窒素ガス雰囲気下、有機ポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)1個に対して、活性水素基含有化合物中の活性水素基が0.1〜0.8の比率で、該活性水素基含有化合物を用いて、攪拌下、温度40〜120℃で4〜8時間反応することで調製される。このようにして得られるプレポリマーは、イソシアネート基含有量が1〜15%、好ましくは2.5〜12%であることが望ましい。
【0016】
この反応時、または、反応後、必要に応じ従来公知の触媒や安定剤、消泡剤、溶剤等の添加剤を用いることができる。
有機ポリイソシアネートとしては特に制限はないが、
2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、
イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート体)等の脂環式ポリイソシアネート、
m−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香環含有脂肪族ポリイソシアネート、
ヘキサメレンジイソシアンート等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられ、これらは単独でもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0017】
好ましくは芳香族ポリイソシアネート、さらに好ましくは2,4−トリレンジイソシアネートまたは2,6−トリレンジイソシアネートまたはそれらの混合物、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが挙げられる。
【0018】
活性水素基含有化合物としては、特に制限はないが、たとえば、多価アルコール、高分子量ポリオール、ポリアミン等が挙げられる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
【0019】
高分子量ポリオールとしては、
前記多価アルコールあるいはポリアミンにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の低分子量アルキレンオキシドを付加重合して得られるポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、
ビスフェノール類にエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の低分子量アルキレンオキシドを付加重合して得られるビスフェノール系ポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリブチレンカーボネートポリオール、ポリプロピレンアジペートグリコール、ひまし油ポリオール等が挙げられる。
【0020】
ポリアミンとしては、
エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン等の脂肪族ポリアミン、
イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、水添キシリレンジアミン等の脂環式ポリアミン、
キシリレンジアミン等の芳香環含有脂肪族ポリアミン、
3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、1,1'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、1,1',2,2'−テトラクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,3',5,5'−テトラエチル−4,4'−ジアミノジフェニル−メタン、N,N'−ビス(t−ブチル)−4,4'−ジアミノジフェニル−メタン、ジ(メチルチオ)トルエンジアミン等の芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0021】
これら上記の活性水素基含有化合物は、単独で用いてもよく、また2種以上併用してもよい。好ましくは、活性水素基2〜4であり平均分子量200〜6000のポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ビスフェノール系ポリオール、ひまし油ポリオールが挙げられる。
【0022】
添加剤としては、
アセトン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等の溶剤、
トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N−メチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリン酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、オクチル酸コバルト等の触媒、
フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル、燐酸トリクレジル、燐酸トリオクチル、エポキシ化大豆油等の可塑剤、
炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、コロイダルシリカ、亜鉛華等の体質顔料、
二酸化チタン、カーボンブラック、弁柄、酸価クロム、ウルトラマリン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等の着色剤、その他市販の消泡剤、レベリング剤、色別れ防止剤、安定剤等が挙げられる。
【0023】
湿気硬化型一液ウレタン樹脂は、前記した溶剤で希釈して用いることができ、該粘度が1000mPa・s(25℃)以下、好ましくは500mPa・s(25℃)以下となるように調整される。
二液硬化型ウレタン樹脂は、有機ポリイソシアネートを含むA液と活性水素基含有化合物を含むB液とからなり、使用の直前に所定の比率に計量、混合して用いられる。
【0024】
A液としては、前記の有機ポリイソシアネートおよび/またはウレタンプレポリマーが挙げられ、好ましくは芳香族ポリイソシアネート、さらに好ましくは 2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの有機イソシアネート化合物あるいはこれらと前記の活性水素基含有化合物からなるプレポリマーが挙げられる。A液には必要により、前記の添加剤から選ばれた化合物が含まれてもよい。
【0025】
B液としては、前記活性水素基含有化合物が含まれており、さらに必要により前記の添加剤が含まれてもよい。
活性水素基含有化合物としては、前記のうち単独で用いてもよく、また2種以上併用してもよい。好ましくは、活性水素基2〜4であり平均分子量200〜6000のポリエチレンポリオール、ポリエチレンプロピレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、ビスフェノール系ポリオール、ひまし油ポリオールが挙げられる。
【0026】
二液硬化型ウレタン樹脂において、A液とB液の混合比率は、A液中のイソシアネート基とB液中の活性水素基の比率に基づいて決められ、イソシアネート基1個に対し活性水素基0.5〜2個、好ましくは0.8〜1.2個の範囲である。
また、A液およびB液は、必要により前記した溶剤で希釈することができ、該粘度が1000mPa・s(25℃)以下、好ましくは500mPa・s(25℃)以下となるように調整される。
【0027】
<水硬性粉末>
特に基材が水分を含有している場合は、当該基材用プライマーは、水硬性粉末を含有しているものを用いることが好ましい。当該水硬性粉末は、当該プライマーの硬化性樹脂100重量部に対して10〜500部含有させることができる。このような水硬性粉末としては、鉱物粉末が好ましく、水硬性アルミナまたは水硬性アウイン系セメントが特に好ましい。
【0028】
水硬性アルミナはρアルミナを含有するものが好適であり、平均粒子径300μm以下、好ましくは150μm以下のものが好適である。
本発明に用いられる水硬性アウイン系セメントは、エトリンナイトの形成に適した鉱物からなり、平均粒子径150μm以下、好ましくは100μm以下とすることにより水吸収性能が向上し、基材の含水量が多くとも強固に接着することができ好ましい。アウイン系セメントは、普通ポルトランドセメントより速硬化性であり基材面の水分を急速に吸収、水和に消費すること、アルカリ性が低いため、湿潤面、水滴が付着した基材に対しての接着力が向上するとともに、基材用プライマーの耐久性特に接着耐久性に優れることから好ましい。
【0029】
水硬性アルミナまたは水硬性アウイン系セメントは、硬化性ウレタン樹脂100重量部に対し10〜500重量部の量で添加されるが、該添加量が硬化性樹脂100重量部に対し10重量部以上とすることで吸水状態のコンクリート面への接着性を高く保つことができる。また、500重量部以下とすることで接着強度と固化物の強度を維持し、また作業性がより向上させることができる。
【0030】
なお、水硬性アルミナまたは水硬性アウイン系セメントには、酸価カルシウム、酸化マグネシウム、ポルトランドセメント、アルミナセメント等の水と反応する化合物、硬化遅延剤等を併用してもよい。
本発明に用いる基材用プライマーとしては硬化性樹脂プライマーが用いられ、湿気硬化型一液ウレタン樹脂にあっては水硬性アルミナまたは水硬性アウイン系セメントを予めウレタンプレポリマーに添加混合し調製、また、使用時に所定の量をウレタンプレポリマーあるいはウレタンプレポリマー溶液に添加混合して得られる。二液硬化型エポキシ樹脂またはウレタン樹脂にあっては、水硬性アルミナまたは水硬性アウイン系セメントを予めB液に添加混合して調製することもでき、また使用時に所定の量をA液、B液あるいはA液とB液の混合物に添加混合して得られる。
[防水材]
本発明に用いられる防水材とは道路、橋梁、高架道路等、建築物の屋根、屋上等、地下鉄、地下駐車場等の地下構造物の舗装に用いられる防水材であればいずれでも用いることができる。本発明には、硬化性ウレタン樹脂、硬化性ウレタンウレア樹脂、硬化性ウレア樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、2液硬化型であることが更に好ましい。
【0031】
<二液硬化型ウレタン>
二液硬化型ウレタンは、有機ポリイソシアネートを含むA液と活性水素基含有化合物を含むB液とからなり、使用の直前に所定の比率に計量、混合して用いられる。
A液としては、前記の有機ポリイソシアネートまたはウレタンプレポリマーが挙げられ、好ましくは芳香族ポリイソシアネート、さらに好ましくは4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの少なくとも1種あるいはこれらと前記の活性水素基含有化合物からなるプレポリマーの混合物であり、遊離イソシアネート基含有量8〜15%のものが挙げられる。A液には必要により、前記の添加剤から選ばれた化合物が含まれてもよいが、溶剤は残留する恐れがあり好ましくない。
【0032】
B液としては、前記活性水素基含有化合物とウレタン化触媒の混合物が挙げられる。活性水素基含有化合物としては、活性水素基2〜4の多価アルコール類、ポリオール類から選ばれる2種以上を併用したものが好適である。多価アルコールとしては1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられ、ポリオール類としてはヒドロキシル価18〜280mg/gのポリオキシアルキレンポリオール、好ましくポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、ビスフェノール系ポリオール、ひまし油ポリオールが挙げられる。
【0033】
さらに必要により前記の添加剤が含まれてもよいが、溶剤は残留する恐れがあり好ましくない。
二液硬化型ウレタンにおいて、A液とB液の混合比率はA液中のイソシアネート基とB液中の活性水素基の比率に基づいて決められ、イソシアネート基1個に対し活性水素基0.5〜2個、好ましくは0.8〜1.2個の範囲である。
【0034】
<二液硬化型ウレタンウレア>
二液硬化型ウレタンウレアは、有機ポリイソシアネートを含むA液と活性水素基含有化合物を含むB液とからなり、使用の直前に所定の比率に計量、混合して用いられる。
A液としては、前記の有機ポリイソシアネートまたはウレタンプレポリマーが挙げられ、好ましくは芳香族ポリイソシアネート、さらに好ましくは4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの少なくとも1種あるいはこれらと前記の活性水素基含有化合物からなるプレポリマーの混合物であり、遊離イソシアネート基含有量8〜15%のものが挙げられる。A液には必要により、前記の添加剤から選ばれた化合物が含まれてもよいが、溶剤は残留する恐れがあり好ましくない。
【0035】
B液としては、前記活性水素基含有化合物とウレタン化触媒の混合物が挙げられる。活性水素基含有化合物としては、活性水素基2〜4の多価アルコール類、またはポリオール類と、アミン類とを2種以上を併用したものが好適である。
多価アルコールとしては1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられ、ポリオール類としてはヒドロキシル価18〜280mg/gのポリオキシアルキレンポリオール、好ましくポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、ビスフェノール系ポリオール、ひまし油ポリオールが挙げられる。
【0036】
アミン類としてはアミン価180〜700の芳香族ポリアミン、好ましくは3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエン、1,1'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、1,1',2,2'−テトラクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,3',5,5'−テトラエチル−4,4'−ジアミノジフェニル−メタン、N,N'−ビス(t−ブチル)−4,4'−ジアミノジフェニル−メタン、ジ(メチルチオ)トルエンジアミンが挙げられる。さらに必要により前記の添加剤が含まれてもよいが、溶剤は残留する恐れがあり好ましくない。
【0037】
二液硬化型ウレタンウレアにおいて、A液とB液の混合比率はA液中のイソシアネート基とB液中の活性水素基の比率に基づいて決められ、イソシアネート基1個に対し活性水素基0.5〜2個、好ましくは0.8〜1.2個の範囲である。
<二液硬化型ウレア>
二液硬化型ウレアは、有機ポリイソシアネートを含むA液と活性水素基含有化合物を含むB液とからなり、使用の直前に所定の比率に計量、混合して用いられる。
【0038】
A液としては、前記の有機ポリイソシアネートまたはウレタンプレポリマーが挙げられ、好ましくは芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香環含有脂肪族ポリイソシアネート、さらに好ましくは4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート体)、m−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートの少なくとも1種あるいはこれらと前記の活性水素基含有化合物からなるプレポリマーの混合物であり、遊離イソシアネート基含有量8〜15%のものが挙げられる。A液には必要により、前記の添加剤から選ばれた化合物が含まれてもよいが、溶剤は残留する恐れがあり好ましくない。
【0039】
B液としては、前記活性水素基含有化合物の混合物が挙げられる。活性水素基含有化合物としては、活性水素基2〜4のアミン類から選ばれる2種以上を併用したものが好適である。アミン類としては平均分子量200〜6000のポリオキシアルキレンジアミン、ポリオキシアルキレントリアミンが挙げられ、より具体的にはポリプロピレングリコール鎖の末端ヒドロキシル基のアミノ化されたジアミン、トリアミンが好適である。また、これと併用されるアミン類としては、アミン価180〜700の芳香族ポリアミン、好ましくは3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエン、1,1'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、1,1',2,2'−テトラクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,3',5,5'−テトラエチル−4,4'−ジアミノジフェニル−メタン、N,N'−ビス(t−ブチル)−4,4'−ジアミノジフェニル−メタン、ジ(メチルチオ)トルエンジアミン等が挙げられ、これらから選ばれる少なくとも1種である。さらに必要により前記の添加剤が含まれてもよいが、溶剤は残留する恐れがあり好ましくない。
【0040】
二液硬化型ウレアにおいて、A液とB液の混合比率はA液中のイソシアネート基とB液中のアミノ基の比率に基づいて決められ、イソシアネート基1個に対しアミノ基0.5〜1.5個、好ましくは0.8〜1.2個の範囲である。
二液硬化型ウレタン、二液硬化型ウレタンウレア、二液硬化型ウレアにおいて、混合物の反応性はJISK5400に規定される指触乾燥時間として2〜3600秒、好ましくは2〜1800秒であり、該反応性の調整は、二液硬化型ウレタン、二液硬化型ウレタンウレアにあっては、たとえば、前記の触媒、好ましくは酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリン酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、オクチル酸コバルト等より選ばれる少なくとも1種の触媒、有機酸により行うことができる。二液硬化型ウレアにあっては、たとえば、電子吸引性基を有する1,1'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、1,1',2,2'−テトラクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタンまたはジ(メチルチオ)トルエンジアミン等を併用または多用することによりできる。
【0041】
また、二液硬化型ウレタン、二液硬化型ウレタンウレア、二液硬化型ウレアからなる防水材の破断伸び率と引張強度はひび割れ負荷耐性、ずり耐性にとって重要であり、本発明の防水材は、破断伸び率450〜800%と引張強度5〜25MPaの物性を有するものである。
二液硬化型ウレタン、二液硬化型ウレタンウレア、二液硬化型ウレアから選ばれる防水材の塗付量は、新設基材にあっては300〜3000(g/m2)、改修基材面にあっては1000〜4000(g/m2)である。
[接着剤層用プライマー]
本発明に係る接着剤層用プライマーは、水硬性アルミナ粉体および/または水硬性アウイン系鉱物粉末を硬化性樹脂100重量部に対し10〜500重量部含有させた硬化性プライマーからなる。
【0042】
<水硬性粉体>
接着剤層用プライマーに用いられる水硬性アルミナ粉体は、ρアルミナを含有するものが好ましく、平均粒子径300μm以下、好ましくは150μm以下のものが好適である。
接着剤層用プライマーに用いられる水硬性アウイン系鉱物粉末は、エトリンナイトの形成に適した鉱物からなり、平均粒子径150μm以下、好ましくは100μm以下のものが好適である。
【0043】
これら水硬性粉体を用いることにより、防水材のイソシアネート基と水との反応を防ぎ、残存するイソシアネート基が多くなるため、防水材とアスファルト舗装材との接着強度が向上する。また、イソシアネート基と水との反応性を低下させることから、接着剤層の施工時間を長くすることができ、施工自由度が向上する。
【0044】
水硬性アルミナまたは水硬性アウイン系セメントは、硬化性樹脂100重量部に対し10〜500重量部の量で添加されるが、該添加量が硬化性樹脂100重量部に対し10重量部以上とすることで防水材表面への接着性を高く保つことができる。また、500重量部以下とすることで接着強度と固化物の強度を維持し、また作業性がより向上させることができる。
【0045】
なお、水硬性アルミナまたは水硬性アウイン系セメントには、酸価カルシウム、酸化マグネシウム、ポルトランドセメント、アルミナセメント等の水と反応する化合物、硬化遅延剤等を併用してもよい。
<硬化性プライマー>
接着剤層用プライマーに用いられる硬化性プライマーは、硬化性エポキシ樹脂プライマー、硬化性ウレタン樹脂プライマー、硬化性ビニルエステル樹脂プライマー、硬化性アクリル樹脂プライマー等が挙げられるが、硬化性ウレタン樹脂プライマーが好適に用いられる。
【0046】
(硬化性ウレタン樹脂プライマー)
硬化性ウレタン樹脂プライマーは、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液硬化型ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種のウレタン樹脂からなるプライマーであることが好ましい。
接着剤層用プライマーに用いられる湿気硬化型ウレタン樹脂は、前記基材用プライマーに用いられる湿気硬化型ウレタン樹脂を用いることができる。また、接着剤層用プライマーに用いられる二液硬化型ウレタン樹脂は、前記基材用プライマーに用いられる二液硬化型ウレタン樹脂を用いることができる。
【0047】
本発明に用いる接着剤層用プライマーとしては、水硬性アルミナ粉体および/または水硬性アウイン系鉱物粉末を含有させた硬化性ウレタン樹脂プライマーが好適に用いられる。湿気硬化型一液ウレタン樹脂にあっては水硬性アルミナまたは水硬性アウイン系セメントを予めウレタンプレポリマーに添加混合し調製、また、使用時に所定の量をウレタンプレポリマーあるいはウレタンプレポリマー溶液に添加混合して得られる。二液硬化型エポキシ樹脂またはウレタン樹脂にあっては、水硬性アルミナまたは水硬性アウイン系セメントを予めB液に添加混合して調製することもでき、また使用時に所定の量をA液、B液あるいはA液とB液の混合物に添加混合して得られる。
[接着剤層]
本発明では、接着剤または接着用シートが防水材とアスファルト舗装材とを一体化させるために用いられる。
【0048】
<接着剤>
接着剤としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物および/またはそのカルボキシル変性体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を部分ケン化したもの、または、該ケン化物をさらに酸によって変性したカルボキシル変性物、さらには、これらの混合物を5〜80重量%、好ましくは10〜80重量%含有することが望ましく、その他の成分として、アスファルトを20〜95重量%、好ましくは20〜90重量%含有することが望ましい。
【0049】
また、粘着性の付与、軟化点調節あるいは舗装用アスファルトとの溶融性調節の目的で、必要に応じてタッキファイヤー、ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体等の一種以上を50重量%以内の範囲で添加することができる。
さらに、ロジン等の樹脂酸等を含有していてもよい。ロジン等を含有することにより、接着強度を向上させることができる。
【0050】
(エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物およびそのカルボキシル変性物)
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物およびそのカルボキシル変性物は、たとえば、特公平5−26802号公報等に準拠して製造され、該エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のケン化度は20〜90%であり、さらに、該カルボキシル変性物の酸価が2〜150(KOHmg/g)、好ましくは3〜100(KOHmg/g)であり、該水酸基化が0〜250(KOHmg/g)、好ましくは0〜160(KOHmg/g)である。原料のエチレン−酢酸ビニル共重合体は、原料組成として、酢酸ビニル含有量20〜50重量%、好ましくは25〜45重量%である。
【0051】
<接着用シート>
接着用シートは、ヒドロキシル基またはカルボキシル基のいずれかまたは双方が単位重量当たり0.03mmol/g以上含有するものであればいずれでもよいが、軟化点が50℃以上である熱可塑性樹脂からなることが好ましい。
本発明の接着用シートは、上記樹脂で形成されるものであればいずれでもよいが、接着用シートは穴を有することが好ましい。
【0052】
接着用シートに穴が存在する場合には、シート張り付け時の空気等ガス溜りを逃がすことができ、シートの接着不良等が回避できる。
前記接着用シートが1m2あたり100個以上の穴を有することが好ましく、1m2あたり500個以上の穴を有することがより好ましく1m2あたり1000個以上の穴を有することが特に好ましい。穴についてはシートに均等に空けることが好ましいが、空気抜きの目的のためにその穴の開孔密度をシートの各部において適宜変更してもよい。
【0053】
穴の形状としては、円状、楕円状、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形等いずれの形状でもよい。
穴のサイズとしてはガス抜きが実施できるものであればいずれでもよいが、通常その孔は1ヶあたりの面積は0.01mm2〜10mm2であり、好ましくは0.05mm2〜8mm2、より好ましくは0.1mm2〜5mm2である。
【0054】
前記接着用シートが厚さに特に限定はないが、0.01〜1mmのフィルム状またはシート状であることが好ましく、0.1〜0.5mmが更に好ましい。
接着剤シートに用いる樹脂としては、たとえばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂)等のポリビニルアルコールをアセタール化したポリビニルアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−HEMA3元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物、エチレン−アクリロニトリル共重合体の部分ケン化物、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を酸によって変性したカルボキシル変性体が挙げられる。これらのうちエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物であり、分子中にカルボキシル基を1ケ以上有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のカルボキシル変性物、分子中にヒドロキシル基とカルボキシル基をそれぞれ1ケ以上有するエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物の群から選ばれる少なくとも1種が好適である。
【0055】
接着用シートには、粘着性の付与、軟化点調節あるいは舗装用アスファルトとの溶融性調節の目的で、必要に応じてタッキファイヤー、ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体等の一種以上を50重量%以内の範囲で添加することができる。[施工方法]
次に、前記複合構造体の施工方法、すなわち基材防水方法について説明する。
【0056】
本発明に係る基材防水方法は、少なくとも基材、防水材およびアスファルト舗装材からなる複合構造体の施工方法であって、
基材上に、必要に応じて基材用プライマーを塗付した後、防水材を施工し、
該防水材の表面に、水硬性アルミナ粉体および/または水硬性アウイン系鉱物粉末を硬化性樹脂100重量部に対し10〜500重量部含有させた硬化性プライマーを塗付量100〜1000(g/m2)で塗付し、
該硬化性プライマーが少なくとも指触乾燥(JIS K-5400)状態になるまで固化した後、接着剤層を形成させ、
該接着剤層表面に熱アスファルト舗装材を敷設し転圧する施工方法である。
<基材用プライマーの塗付工程>
上記施工方法において、基材用プライマーの塗付方法は特に限定はないが、鏝、ローラー刷毛、ゴムベラ、スプレーガン等を用いる公知の方法で行うことができる。該塗付量は特に限定はないが、通常100〜1000(g/m2)、好ましくは、100〜300(g/m2)で塗装し、下地への浸透が多く該面が粉状になるようなときは樹脂による光沢が発現するまで、この塗付量で重ね塗りをする。また、ピンホールのあるときは、同様にしてその部位をこの塗付量で重ね塗りし、ピンホールの無いようにすることが重要である。
【0057】
前記硬化性プライマーは、歩行可能な状態まで乾燥させた後に接着剤層を形成させることが好ましい。この時間は、JIS K−5400で求められる指触乾燥状態になるまでを指標とする(本明細書において同じ意味である)。乾燥条件は、通常、25℃で30〜60分であり、この時間が経過すれば、次工程に移行することは可能である。
<防水材の塗付工程>
上記プライマーの乾燥後、防水材を塗付することができる。防水材として二液硬化型を用いる場合には、使用の直前に所定の比率に計量、混合して用いられる。該塗装方法は特に制限は無いが、たとえば、ガスマー社製プロポーショナーH−2000による計量、調圧、調温の下、ホットホースを介して、スタティックミキサーを装着したガスマー社製GAPガン等によるによる混合吐出、或はガスマー社製GX−7ガン、グラスクラフト社製プロブラーガン等によるスプレー塗装方法が好適である。
【0058】
該防水材の塗付量は、特に限定はないが、通常0.3〜4(kg/m2)、好ましくは0.3〜3(kg/m2)であることが望ましく、下地基材のひび割れや車輌通行による基材の繰り返し撓み負荷に対する耐性の点で、新設基材にあっては0.3〜3(kg/m2)、好ましくは0.3〜2.5(kg/m2)、さらに好ましくは1.5〜2.5(kg/m2)であり、改修基材にあっては下地の荒れているのを被覆するに十分な1〜4(kg/m2)、好ましくは1.5〜3.5(kg/m2)であることが望ましい。
【0059】
本発明に用いられる防水剤としては、JISK5400に規定される指触乾燥時間として2〜3600秒、好ましくは2〜1800秒であり、歩行可能な迄の時間は、5秒〜120分である。この時間が経過すれば、次工程に移行することは可能である。
<接着剤層用プライマーの塗付工程>
上記施工方法において用いられる接着剤層用プライマーは、水硬性アルミナ粉体および/または水硬性アウイン系鉱物粉末を硬化性樹脂100重量部に対し10〜500重量部含有させた硬化性プライマーである。この水硬性粉体を含有する硬化性プライマーを用いることにより、防水材のイソシアネート基と水との反応を防ぎ、残存するイソシアネート基が多くなるため、防水材とアスファルト舗装材との接着強度が向上するとともに、イソシアネート基と水との反応性を低下させることから、下記に示す接着剤層の施工時間を長くすることができ、施工自由度が向上する。
【0060】
該硬化性プライマーの塗付方法は、特に限定はないが、鏝、ローラー刷毛、ゴムベラ、スプレーガン等を用いる公知の方法で行うことができる。該塗付量は、100〜1000(g/m2)であり、好ましくは、100〜300(g/m2)で塗装し、下地への浸透が多く該面が粉状になるようなときは樹脂による光沢が発現するまで、この塗付量で重ね塗りをする。また、ピンホールのあるときは、同様にしてその部位をこの塗付量で重ね塗りし、ピンホールの無いようにすることが重要である。
【0061】
前記硬化性プライマーは、歩行可能な状態まで乾燥させた後に接着剤層を形成させることが好ましい。この時間は、JIS K−5400で求められる指触乾燥状態になるまでを指標とする(本明細書において同じ意味である)。乾燥条件は、通常、25℃で30〜60分であり、この時間が経過すれば、次工程に移行することは可能である。
<接着剤層の形成工程>
前記硬化性プライマーの乾燥後、接着剤層を形成させる。該接着剤層は、接着剤を塗付して形成させてもよく、接着用シートを貼り付けて形成させてもよい。
【0062】
(接着剤の塗付工程)
本発明に用いられる接着剤は、溶融下、上記硬化性プライマーの表面に塗工される。該塗工方法は、特に限定されないが、たとえば、溶融状態の接着剤を柄杓で汲み取り目的の面に排出し、金鏝で流し延べる方法、ラインマーカ等専用機械で溶融状態とし塗工する等従来公知の方法で行うことができる。該塗付量は特に限定はないが、通常0.3〜2(kg/m2)、好ましくは0.5〜1.5(kg/m2)である。この接着剤は、冷えると固化し歩行可能な状態となるが、特に夏季などの気温の高い環境では合材運搬車輌等による損傷を防ぐため6号硅砂等の砂を必要に応じ散布する。砂の散布量は、好ましくは100〜300(g/m2)であることが望ましい。
【0063】
(接着剤シートの貼付工程)
本発明で用いられる接着用シートは、上記硬化性プライマーの表面に貼り付けられる。接着用シートの貼り付け方法は特に限定なく、通常の防水方法で用いられる接着用シートの貼り付け方法を用いることができる。接着用シートの貼り付けはいずれのタイミングで実施してもよいが、接着剤層用プライマーの指触乾燥時間到達後は、該接着用シートを貼り付ける際に、加熱圧着する必要がある。このため、該接着剤層用プライマーの指触乾燥時間到達前に該接着用シートを貼り付けることにより、加熱することなく接着することができる。また、防水剤とアスファルト舗装剤との接着強度を向上させるために、前記接着用シートを貼り付けた後、該接着用シートを防水剤に熱融着させてもよい。
<アスファルト敷設工程>
上記接着剤層の形成完了後、舗装用熱アスファルトコンクリートを敷設し転圧する。具体的には、施主指定の合材(アスファルト舗装材)を該合材に適した160〜185℃の温度で該防水材面にアスファルトフィニッシャーにより敷きならし、鉄輪ローラー、タイヤローラーで転圧することで合材の熱が防水材まで伝わり、接着剤のアスファルトが溶融して合材と防水材、さらには基材まで強固に一体化される。
【0064】
また、上記した基材防水工法により、基材から合材まで強固に一体化した複合構造体を得ることができ、たとえば自動車道路が提供される。
【0065】
【実施例】
更に本発明を具体的な実施例で詳細に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されない。
[硬化性プライマーの調製]
硬化性プライマー▲1▼:
アミン系触媒を添加したウレタン樹脂分約35%のポリウエイP−2080(サンテクノケミカル社製)100重量部に対し、アウイン系セメント(チチブコンクリート社製)120重量部を添加し、攪拌混合して湿気硬化型一液ウレタン樹脂プライマーを調製した。
硬化性プライマー▲2▼:
ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート100重量部に対し、キシレン125重量部、酢酸エチル28重量部を添加し、これをA液とした。
【0066】
3官能性ポリプロピレングリコール(平均分子量1000)100重量部、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物(BA−P3、日本乳化剤社製)64重量部に炭酸カルシウム40重量部を添加して混合し、これをB液とした。
前記A液100重量部、前記B液140重量部からなる混合液に水硬性アルミナ(BK−112、住友化学工業社製)60重量部を添加して混合し、二液硬化型ウレタン樹脂プライマーを調製した。
硬化性プライマー▲3▼:
アミン系触媒を添加したウレタン樹脂分約35%のポリウエイP−2080(サンテクノケミカル社製)100重量部に対し、アウイン系セメント(チチブコンクリート社製)50重量部を添加し、攪拌混合して湿気硬化型一液ウレタン樹脂プライマーを調製した。
[防水材]
防水剤▲1▼:
二液硬化型ウレタンウレア防水材として、リムスプレーF−1000(三井化学産資社製)を用いた。
防水剤▲2▼:
二液硬化型ウレア防水材として、ポリウエイAR−400(サン テクノケミカル社製)を用いた。
[接着剤層用原料の調製]
接着剤▲1▼:
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物および/または該カルボキシル変性物(デュミランC−2271、三井武田ケミカル社製)100重量部に対し、ストレートアスファルト(昭和シェル石油製)67重量部を200℃に加熱しながら混合し接着剤を調製した。
接着用シート▲1▼:
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物および/または該カルボキシル変性物(デュミランC−2271、三井武田ケミカル社製)を130℃に加熱溶融下、T−ダイで厚さ0.3mm、幅1000mmに加工、冷却して接着用シートを得た。該接着用シートには、1cm2当り1個の割合で1mmφの穴を細工した。[アスファルト舗装材の調製]
改質II型アスファルト、骨材を185℃に調節、ミキサーで混合して熱アスファルトをバインダーとするアスファルト舗装材を調製した。
【0067】
【実施例1】
水中に24時間浸漬した形状60×300×300mmのJISマーク入りコンクリート板(市販品)を水中から取出し、表面の水膜をペーパータオルで除去、直ちに基材用プライマーとして硬化性プライマー▲2▼を中毛ローラー刷毛で塗付した。15分でこのプライマーは指触乾燥状態となったが、塗付してから1時間後、温度60℃、吐出圧力10.5MPaで防水剤▲1▼を2.2(kg/m2)、プロブラーガンで吹きつけた。スプレーしてから3時間後、接着剤層用プライマーとして硬化性プライマー▲1▼を短毛ローラー刷毛によって0.15(kg/m2)塗付、指触乾燥の後、200℃で溶融した接着剤▲1▼を金ゴテで厚さ約0.7mmになるよう流し延べ塗工し、接着剤層を形成させた。翌日、予め185℃で混合したアスファルット舗装材を厚さ4cmになるように敷設、転圧して試験体1を作製した。
【0068】
作製した試験体を約20℃の水中に24時間浸漬、次いで60℃、湿度80%に調整した恒温恒湿庫内で24時間処理した。該処理した試験体は、一方はそのまま試験体を約10cm角の試験片に切り出し加工し、他方は新床版防水規格(案)(日本道路公団編)に基づき、ホイールトラッキング負荷試験を行った後、約10cm角の試験片に切り出し加工し、共に引張り接着試験に供した。結果を表1に示す。
【0069】
【実施例2】
実施例1において基材用プライマーとして用いた硬化性プライマー▲2▼の代わりに硬化性プライマー▲1▼を、防水材▲1▼の代わりに防水材▲2▼を、さらに接着剤層用プライマーとして用いた硬化性プライマー▲1▼の代わりに硬化性プライマー▲3▼を用いた以外、実施例1と同様にして試験体2を作製した。
【0070】
作製した試験体を実施例1と同様に処理、試験片を作製して、引張り接着試験に供した。結果を表1に示す。
【0071】
【実施例3】
実施例1において基材用プライマーとして用いた硬化性プライマー▲2▼の代わりに硬化性プライマー▲1▼を、防水材▲1▼の代わりに防水材▲2▼を、さらに接着剤層用プライマーとして用いた硬化性プライマー▲1▼の代わりに硬化性プライマー▲3▼を用い、接着剤▲1▼を塗付して接着剤層を形成した代わりに接着用シート▲1▼貼り付けて接着剤層を形成し、直ちに、予め185℃で混合したアスファルット舗装材を厚さ4cmになるように敷設、転圧した以外は、実施例1と同様にして試験体3を作製した。
【0072】
作製した試験体を実施例1と同様に処理、試験片を作製して、引張り接着試験に供した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【発明の効果】
少なくとも基材、防水材およびアスファルト舗装材からなる複合構造体において、防水材とアスファルト舗装材とを、水硬性アルミナ粉体および/または水硬性アウイン系鉱物粉末を硬化性樹脂100重量部に対し10〜500重量部含有させた硬化性プライマーと接着剤層とにより接合することにより、防水材とアスファルト舗装材との接着強度を向上させることができる。また、防水剤の水との反応性を抑制することができるため、接着剤層の施工時間を長くすることができ、施工自由度が向上する。
Claims (3)
- 少なくとも基材、防水材およびアスファルト舗装材からなる複合構造体であって、
防水材とアスファルト舗装材とが、水硬性アルミナ粉体および/または水硬性アウイン系鉱物粉末を硬化性樹脂100重量部に対し10〜500重量部含有させた硬化性プライマー、および接着剤層により接合されており、かつ、
該硬化性プライマーが、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液硬化型ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種のウレタン樹脂からなるプライマーであり、かつ、
該防水材が、硬化性ウレタン樹脂、硬化性ウレア樹脂、硬化性ウレタンウレア樹脂から選ばれる少なくとも1種の硬化性樹脂であり、
該接着剤層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物および/またはそのカルボキシル変性体を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる接着剤、あるいは、ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を含有する接着用シートである
ことを特徴とする複合構造体。 - 少なくとも基材、防水材およびアスファルト舗装材からなる複合構造体の施工方法であって、
基材上に防水材を施工し、かつ、
該防水材が、硬化性ウレタン樹脂、硬化性ウレア樹脂、硬化性ウレタンウレア樹脂から選ばれる少なくとも1種の硬化性樹脂であり、
該防水材の表面に、水硬性アルミナ粉体および/または水硬性アウイン系鉱物粉末を硬化性樹脂100重量部に対し10〜500重量部含有させた硬化性プライマーを塗付量100〜1000(g/m2)で塗付し、かつ、
該硬化性プライマーが、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液硬化型ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種のウレタン樹脂からなるプライマーであり、
該硬化性プライマーが少なくとも指触乾燥(JIS K−5400)状態になるまで固化した後、接着剤層を形成させ、かつ、
該接着剤層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物および/またはそのカルボキシル変性体を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる接着剤、あるいは、ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を含有する接着用シートであり、
該接着剤層表面に熱アスファルト舗装材を敷設し転圧することを特徴とする複合構造体の施工方法。 - 基材上に施工される、硬化性ウレタン樹脂、硬化性ウレア樹脂、硬化性ウレタンウレア樹脂から選ばれる少なくとも1種の硬化性樹脂である防水材とその防水材上に施工されるアスファルト舗装材とを接合するための接着剤層用プライマーであって、
水硬性アルミナ粉体および/または水硬性アウイン系鉱物粉末を硬化性樹脂100重量部に対し10〜500重量部含有させた硬化性プライマーからなり、かつ、
該硬化性プライマーが、湿気硬化型ウレタン樹脂、二液硬化型ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種のウレタン樹脂からなるプライマーである
ことを特徴とする接着剤層用プライマー。
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