JP4137150B2 - 溶融紡糸方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアミド、ポリエステル等の溶融紡糸装置に関するものであり、特に1)フィラメント数の多いマルチフィラメント、さらには、2)異型糸、3)単糸デニールの細い物を紡糸する際に好適な溶融紡糸方法に関するものである。
ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性の高分子を溶融紡糸するに際し、紡糸口金孔から吐出されるポリマーの流動挙動は、紡糸工程の安定性、及び得られた繊維の品質に重大な影響を及ぼす事が知られている。溶融紡糸では、通常紡糸口金面の温度は270〜310℃の高温下にあるため、ポリマー吐出口近傍において付着したポリマー、オリゴマーが酸化劣化により炭化し、堆積するため、経時的にポリマーの流動状態が不安定になる。すなわち、吐出したポリマー流が曲ったり、振動したりする現象が生じるようになり、糸に太さ斑が発生し、最終的には糸切れに至って紡糸不可能となる。従って紡糸口金面を頻繁に清掃することが必要となり生産性が低下する。特にナイロン66のポリマーは、溶融紡糸で利用されるポリマーの中でも酸化劣化速度が最も速いために、ナイロン66繊維を製造する際にこのことは非常に重要な問題となりうる。
従来、上記口金面の炭化物の堆積を抑制する方法として紡糸口金面直下を不活性ガス、例えば、スチーム等でシールする方法が効果的である事が知られている。
不活性ガスを用いて紡糸口金面直下をシールする方法については様々な装置改良がなされてきており、例えば特開昭50−64512号公報においては、噴出されたスチーム流による糸揺れを防止するため、水蒸気噴出ノズルから噴出されたスチーム流の流速を緩衝装置にて低下させ、この緩衝装置の外周壁および保温筒の内周壁に沿って水蒸気が紡糸口金面に向けて流れるように設計した水蒸気供給装置が提案されている。
しかしながら、この提案は噴出したスチーム流を緩衝板に当てた後、上向きにゆっくり流して紡糸口金面全体を覆うように供給する装置であり、紡糸口金面直下の酸素濃度を低下させようとすると、必然的に紡糸口金面直下の凹部を深くすることで不活性ガスの滞留を確実にする必要を生じる。そのために、吐出されたポリマーは雰囲気温度の高い空間を通過する時間が長くなり、例えばフィラメント数の多いマルチフィラメントを紡糸しようとした場合、糸条の冷却遅れに起因する単糸の密着で糸切れが多発したり、あるいは異型糸を紡糸する際、異型度が小さくなるという問題が生じてくる。また、得られる繊維が衣料用途である場合には使用するポリマーの重合度がそれほど高くないため、単糸デニールの細い物を紡糸しようとすると、冷却速度が低下することに伴い糸径の変動が大きくなるという問題が生じてくる。さらに、紡糸口金面を凹部に配置することから、口金面清掃作業が著しく困難になるという問題を生じる。
また、特開昭52―15613号公報には、不活性ガスにて紡糸口金面を完全にシールすべく、紡糸孔を複数個有する紡糸口金の下方に、各紡糸孔に対応した位置に単糸通過孔が設けられている仕切部材を、該仕切部材と溶融紡糸口金下面とで実質的に閉鎖された空間が形成されるように設け、不活性ガスを該空間内に充満するようにした溶融紡糸装置が開示されている。この提案によると、雰囲気温度の高い空間をできるだけ短くすることが可能となるが、清掃作業性が著しく低下してしまう。
さらに、不活性ガスで紡糸口金面直下をシールする場合において、紡糸口金直下に囲われた空間を設け、その中に単に不活性ガスを吹き込むだけの構造としたのでは、ポリマー流から揮発する、低分子量物を含んだガスもまた紡糸口金面直下に滞留し、紡糸口金面に炭化物として付着して糸切れの原因となる。従って、このガスを吸引、排気する設備が必要となる。さらにまた、特開昭52―34016号公報には、紡口直下にオリゴマー吸引装置を設け、低分子量物を含んだガスを吸引するという紡糸装置が開示されているが、この装置では、紡糸口金面の定期ワイピングの作業性が著しく低下すると共に、紡糸口金面の孔配列等に制約も生じてくる。
特開昭50−64512号公報 特開昭52−15613号公報 特開昭52−34016号公報
本発明の課題は、既提案の溶融紡糸装置がかかえる前記未解決の諸問題を解消し得る溶融紡糸装置を提供することである。すなわち、本発明は、ポリアミド,ポリエステル等の溶融紡糸において、1)フィラメントの多いマルチフィラメント、さらには2)異型糸、3)単糸デニールの細い糸を溶融紡糸する際に、特に好適に用い得る紡糸装置及び溶融紡糸方法を提供するものであって、本発明の課題は、不活性ガスで紡糸口金面をシールするに際し、シール環厚みを厚くすることなく、かつ、清掃作業性を低下させることなく紡糸口金面直下域の酸素濃度を効果的に低下せしめ、低重合度物を含む高温の揮発性ガスを効果的に除去せしめて、紡糸口金面における吐出ポリマー, 揮発オリゴマーの酸化劣化による炭化物の堆積を抑制することによって、紡糸口金面清掃の周期を著しく延長させた長時間安定紡糸を可能とし得る溶融紡糸装置及び溶融紡糸方法を提供することである。
本発明者等は、上記目的を達成すべく、特に紡糸口金直下の酸素濃度と糸曲がり時間の関係に着目し、詳細な検討を加え、次いで、シール環厚みをできるだけ薄くした状態で、紡糸口金面直下の酸素濃度を効果的に低下させうる不活性ガスシール方法について鋭意検討した結果本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、環状部材から成るシール環を紡糸口金ホルダーの下端部に密着せしめて、または一体化せしめて設け、紡糸口金直下域を不活性ガスでシールするようにした溶融紡糸装置であって、該シール環が
0.1≦L1(シール環厚み)/ D1(シール環内径)≦0.4
の関係を満足し、その内壁面に孔間距離15mm以下に配列させた不活性ガス噴出口を有し、シール環内壁との間に上方が開口された巾0.5mm〜5mmの環状空隙部が形成されるように設けたスリット板を具備して成ることを特徴とする溶融紡糸装置である。
また、本発明は、上記の溶融紡糸装置を用いて、スチーム, ヘリウム, 窒素, 二酸化炭素の群から選ばれた一種以上からなる不活性ガス流を、巾0.5mm〜5mmの帯状均圧流となし、これを紡糸口金下方より吹き上げ、紡糸口金面に沿って紡糸口金面外周方向から紡糸口金面中央に向けて流しながら溶融紡糸することを特徴とする溶融紡糸方法である。
本発明によると、シール環厚みを厚くする事無く、効果的に紡糸口金面の汚れを抑制することが可能となり、フィラメントの冷却が遅れること無く長時間安定な溶融紡糸が可能となる。特に、フィラメント数の多いマルチフィラメント、さらには、異型糸、単糸デニールの細い物の長時間安定生産が可能となる。
以下において、本発明を更に詳細に説明する。
本発明は、紡糸口金直下域を不活性ガスシールするよう改良された溶融紡糸装置及び溶融紡糸方法であり、本発明では紡糸口金下端部に密着せしめて設けたシール環から不活性ガスを紡糸口金直下域へ導く。本発明によるシール環は環状部材から成る。シール環は紡糸口金下端部に実質的に密着せしめて設けられる。または、本発明では紡糸口金ホルダーの下端部と一体化せしめて設けられる。
本発明においては、シール環厚みを厚くすることなく、紡糸口金面直下酸素濃度を低下させるために、不活性ガスを紡糸口金面に沿って紡糸口金面の円周方向から紡糸口金面中央に向けて外気の巻き込みがないように均一な状態で流すようにする。もし、シール環厚みを薄くして不活性ガスを紡糸口金面に沿わないように流したとすれば、シール環厚みが薄いがために外気を巻き込み、紡糸口金面直下の酸素濃度が所望する値まで下がらないばかりか、ポリマーから放出された低重合度物を含んだガスが紡糸口金直下に滞留し紡糸口金下面の汚れにつながる。
また、本発明においては、上述のように前記不活性ガス流を円周方向から均一に流すようにする。もし、不活性ガス流を流れに斑が生じるような不均一な状態で流した場合には、紡糸口金面直下の酸素濃度に斑が生じることとなり望ましくない。
不活性ガスを上記のように流すようにする方法としては、たとえば紡糸口金面と同じ高さに不活性ガス噴出用ノズル、もしくはスリットノズルを設け、不活性ガス噴出口から直接紡糸口金面中央に向けて紡糸口金面に沿わせて不活性ガスを流す方法が考えられるが、この方法ではかなりの数のノズルを設ける必要があるばかりか、ノズル加工精度が各々のノズルにおいて微妙に異なるという問題から、噴出不活性ガス流量に斑が生じることは避けられず、特に使用する不活性ガスがスチームの場合は、得られる糸条に染色バラツキ等の問題を生じる恐れがある。また、紡糸口金面ワイピング時に汚れによるノズル詰まりが発生する可能性も高い。
これに対し、本発明においては噴出した不活性ガス流を一旦スリット板外周壁に吹き付け、それをシール環内壁面とスリット板外周壁面とで形成された上方が開口された環状空隙部(以下スリットという)から上向きに吹き出すのであり、このようにすることで噴出した不活性ガス流がスリット内で直ちに均圧化され、流速を大きく低下させることなく紡糸口金面外周部に向け均一に吹き付けられるので、不活性ガスを紡糸口金面に添って外周部から中央に向け均一に斑なく導入することができるのである。従って本発明によれば、シール環厚みを厚くすることなく、紡糸口金面直下の酸素濃度を所望する濃度域まで低下させることが可能となるのである。
本発明に用いる不活性ガスは、スチーム, ヘリウム, 窒素, 二酸化炭素の中から選ばれた不活性ガスであれば、いずれを用いてもよい。また、混合ガスとして用いてもよい。これらの不活性ガスの中では、酸素ガス遮断性及び経済性により優れるために、スチームが特に好ましく用いられる。
また本発明は、用いるポリマーの種類によって制限されることはなく、溶融紡糸し得るポリマーであればいずれを用いても差し支えない。本発明を適用するのにより好ましいポリマーは溶融紡糸温度近辺において熱的安定性、及び対酸素安定性に欠く恐れのあるポリマーである。このような面から本発明を特に好ましく適用し得るポリマーはナイロン66系ポリマー、あるいはナイロン66系共重合体である。
次に、ナイロン66ポリマーを紡糸する場合を例にとって本発明をさらに説明する。ナイロン66ポリマーを溶融紡糸する際に、本発明では、スチームを使用して、まず紡糸口金直下の酸素濃度を1.5%以下にすることが好ましい。紡糸口金直下の酸素濃度が2%を越える領域では、紡糸口金面の汚れ遅延効果がほとんど認められず、2%以下の領域から指数関数的に紡糸口金面の汚れが遅延されてくる。特に、使用するポリマーのアミノ末端基濃度がカルボキシル末端基濃度に対比してより高くなると、紡糸口金面の汚れがひどくなり、紡糸口金面直下酸素濃度が2%を越えると紡糸口金ワイピング周期が10時間程度と極端に短くなって実用性にかける。従って本発明では、顕著な汚れ遅延効果を認め得る酸素濃度として1.5%以下が好ましいのである。
より具体的に説明すると、例えばカルボキシル末端基濃度がアミノ基末端基濃度より高いポリマーであって、その糸条断面が丸型の場合、紡糸口金面定期ワイピング周期を72時間以上にするためには、紡糸口金直下酸素濃度を1.5%以下にしたらよい。特に好ましくは1%以下である。この酸素濃度領域にすると100時間以上の紡糸口金面定期ワイピング時間の設定が可能となる。
また、アミノ末端基濃度がカルボキシル末端基濃度より高いナイロン66ポリマーであって、その糸条断面がY型の場合、定期ワイピング周期時間は最も短くなるが、紡糸口金面直下酸素濃度を1.5%以下にすると24時間、さらに1%以下にすると48時間の紡糸口金面定期ワイピング時間設定が可能となり、従って本発明によれば、深染性を追求した繊維の工業的生産が可能となる。
以下、本発明の紡糸装置を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施態様を示す溶融紡糸装置の断面を示す模式図である。図1において1はパック蓋、2は濾材、3はフィルター、4はポリマー分配板、5は紡糸口金、6は紡糸口金ホルダー、7は不活性ガス導入部、8は不活性ガス供給部、9は不活性ガス噴出孔、10はスリット板、11はシール環、12は糸条、13は冷風筒、14は紡糸口金加熱ヒーター、15はスピンブロックである。また、L1はシール環厚み、D1はシール環内径を示す。
図2は、本発明にかかる溶融紡糸装置の紡糸口金直下部分の断面を拡大して示す模式図である。図2において、16は紡糸口金面、17は不活性ガス吹き付け面、18は不活性ガス吹き付け面エッジ部、19は不活性ガス流である。また20は、スリット板と紡糸口金外周部の不活性ガス流吹き付け面との角度位置を示すものであり、L3はスリット板とシール環内壁とのスリット幅を、L4はスリット板上端面と紡糸口金面との距離を、L5は不活性ガス噴出口上端とスリット板上端面の距離を示すものである。
本発明においては、シール環は紡糸口金直下に紡糸口金ホルダーに密着せしめて、または一体化せしめて設けなければならない。もしシール環が紡糸口金ホルダー下端部に密着していなければ、噴出された不活性ガスがシール環外に飛散しシール効果を低下させるのみならず、外気を巻き込み紡糸口金面直下の酸素濃度を低下させることができない。さらに、紡糸口金面からの電熱効果が低下するためにシール環が冷え、シール環にオリゴマーが付着し、これが経時的に成長して糸条に接触するようになり、糸質・操業性に悪影響を与える可能性が出てくる。
また、本発明によるシール環は0.1≦L1(シール環厚み)/ D1(シール環内径)≦0.4の関係を満足する必要がる。L1/D1が0.1未満であると、紡糸口金面直下への外気の巻き込みが抑えられず、酸素濃度を1.5%以下に制御することができなくなる。一方L1/D1が0.4を越えると、フィラメント数の多いマルチフィラメントを溶融紡糸する際に、吐出ポリマーの揺れによる単糸密着が頻繁に発生する可能性が高まり糸切れが多発するようになる。また、異型糸においては、目的とする異型度が得られにくくなるという問題が生じてくる。L1/ D1のより好ましい範囲は、0.15≦L1/ D1≦0.3である。
シール環内径は、紡糸口金面直下の不活性ガスシールを効率的に行うため、定期紡糸口金面ワイピング作業の操作性を損なわない範囲で、できるだけ小さくするほうがよい。
以下、紡糸口金面直下のシール方法を図1、図2に沿って説明する。
不活性ガスは流量コントロールされた後、11のシール環に7の不活性ガス導入孔を介して導入され、8の不活性ガス供給管を流れて、紡糸口金円周域に均一に導入される。この不活性ガス流量の設定は、紡糸口金面直下の酸素濃度が最も低くくなるように導入気体圧力を調整することによって行う。その後、孔間距離(L2)15mm以下の間隔で望ましくは均一に配列された9の不活性ガス噴出孔を介して、不活性ガス温度260℃から300で外気に放出させる。この不活性ガス噴出孔のオリフィスの径は0.5mm〜2mmが望ましい。オリフィス径が0.5mmより小さくなると、不活性ガス噴出孔が汚物により閉塞し易くなり不活性ガス流に斑が生じる。一方、オリフィス径が2mmより大きくなると、不活性ガス噴出孔より噴出される不活性ガスの流速が低下するために、不活性ガスを紡糸口金面外周部に向けて吹き上げ、かつ紡糸口金面中央部に向けて流そうとすると必要以上のスチーム量が必要となる。また、孔間距離(L2)は15mm以下でなければならない。孔間距離(L2)が15mmを越えると、シール環内壁に設けられたスリット板で均圧化しても、紡糸口金面直下の不活性ガス濃度に斑が生じる可能性が高まるからである。より好ましくは、10mm以下である。
放出された不活性ガスは、シール環内壁に設けた10のスリット板の外周壁に当たり上向きに環帯状に吹き上げられ、紡糸口金面に密着した紡糸口金ホルダーに向けて吹き付けられる。スリット板は、不活性ガスを障害物なくNo.17の不活性ガス吹き付け面、さらにはNo.16の紡糸口金面外周部に吹き付けるように設ける。スリット幅(L3)は、0.5mmから5mmの範囲に設定する必要がある。スリット幅が0.5mmより狭くなると、スリットが汚物により閉塞されスチーム流に斑が生じる可能性が高くなるからである。一方、スリット幅が5mmり広くなると、紡糸口金面外周部に吹き上がる帯状のスチーム流が不均質になり紡糸口金面直下の不活性ガス濃度に斑が生じる可能性が高まるためである。より好ましいスリット幅は、1mmから3mmである。
本発明においては、上端スリット幅が下端スリット幅より大きくならないようにスリット板を設けることが好ましい。このようになすことで、スリットから吹き上げる不活性ガス流をより均圧な流れに制御し得る。スリット板上端面と紡糸口金面との距離(L4)は、紡糸口金面外周部に向け不活性ガスが吹き付けられるよう調整すればよいが、通常10mm以下とすることが望ましい。さらに、シール環内壁に設けた不活性ガス噴出孔上端の位置(L5)は、噴出された不活性ガスの一部がスリット板に突き当たることなくシール環内に噴出されてしまうことがないように設けなければならない。噴出された不活性ガスの一部が、スリット板に突き当たることなくシール環内に噴出される状態になると、紡糸口金面外周部に向け吹き上げようとする不活性ガス流までも乱され、紡糸口金外周部に向けて不活性ガスが吹き上がらなくなってしまう。不活性ガス噴出孔上端の位置(L5)は、スリット板上端面より3mm以上下部に位置させることが望ましい。紡糸口金ホルダーに当たった不活性ガスは、再び向きを変え紡糸口金面外周部から均一に紡糸口金面を沿って中央に向けて流れていく。
ここで、不活性ガス流が16の紡糸口金面に密着した紡糸口金ホルダーに当たる際に、不活性ガス流と17の不活性ガス流の当たる面の角度(20)は90度であっても特に問題無いが、より効率的に不活性ガスを紡糸口金面に向けて流すためには30度から80度の範囲にするのがより望ましい。
また、16の紡糸口金面と18の紡糸口金に密着した紡糸口金ホルダーの不活性ガス吹き付け面エッジ部との高さは、不活性ガス流がスムーズに紡糸口金面に導入されるようにするために同じ高さにするのが望ましいが、ワイピングの作業性を考えて紡糸口金面を不活性ガス吹き付け面エッジ部より突出させる場合、2mm以下にする方がより好ましい。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例記載に先立ち、まず紡糸口金直下の酸素濃度の測定方法について説明する。
紡糸口金直下酸素濃度は、北川式酸素濃度測定用ガス検知管 SC型を使用し、ガス吸引ポンプで60秒間に50ccの紡糸口金面直下のガスを吸引し、その時の検知管内の試薬の変色量で読み取った。また、酸素濃度が3%以下の場合は、90秒間に100ccの紡糸口金面直下のガスを吸引し、検知管内の試薬の変色量を0.5倍した値を読み取った。また、測定位置は紡糸口金中央部であり、検知管の先端を紡糸口金面につけ、紡糸口金面直下のガスを吸引するようにした。
以下に示す実施例は、溶融紡糸用ポリマーの中で最も酸化劣化速度が速いナイロン66について示すものであるが、本発明は勿論他のポリマーを用いる溶融紡糸に適用しても優れた効果を期待し得る。また、以下の実施例, 比較例の全てにおいて、紡糸口金面直下をシールする不活性ガスとしてスチームを使用した。なお、スチームは加熱装置で一旦300℃に加熱したものを15のスピンブロックを通してシール環に導き、最終的に270℃の温度で9の不活性ガス噴出口より吹き出した。
紡糸口金面直下をシールする不活性ガスとしてスチームを使用する場合、吸引したスチームが検知管内に凝集することを考慮し、以下の方法にて紡糸口金面直下の酸素濃度を算出した。
(1)吸引スチーム重量:吸引したスチームは検知管内に凝集水としてトラップされるため、酸素濃度測定前後の検知管重量差を測定することで吸引スチーム重量(WS)を求めた。
(2)吸引酸素重量:検知管に表示される酸素濃度から吸引された酸素のモル数を算出し、吸引酸素重量(WO)に換算した。
(3)スチームを除く吸引ガス重量:スチームを除く吸引ガス中の23重量%が酸素であるとして、スチームを除く吸引ガス重量(WC)を算出した。
(4)紡糸口金面直下酸素濃度(重量%)を次式によって算出した。
紡糸口金面直下酸素濃度={WO /(WS+WC)}×100
(実施例1〜4)
紡糸口金80mmに対し、シール環内径(D1) ,シール環厚さ(L1), 不活性ガス噴出孔孔間距離(L2), スリット幅(L3)が表1の寸法を持つ図1記載のシール環を紡糸口金ホルダー下端部に密着させ、90%ぎ酸相対粘度45、アミノ末端基数がポリマー1kgあたり40ミリ当量、カルボキシル末端基数70ミリ当量を有するナイロン66ポリマーを、押し出し機にて溶融し、紡糸温度300℃で96ホールの丸型断面を有する紡糸口金から吐出後、全繊度50デニールの繊維を巻き取り速度5500m/minで巻き取った。この際の、紡糸口金直下の酸素濃度、紡糸口金面での糸曲がりが原因で糸が切れた時間、デニール斑(U%)、及び単糸密着の有無を表1に示す。
なお、単糸密着の有無は冷却ゾーンで単糸間の密着の有無を目視により判定した結果である。また、U%はウースター1/Bを用い、測定感度12.5% 糸送り速度100m/minの条件下で測定した。
その結果、糸曲がりが原因で糸が切れ始めるまでの時間はすべての実施例において80時間以上であり、紡糸口金直下酸素濃度が1%以下になると100時間以上に延長できることが明らかとなった。U%も1.0レベルであり、紡糸状況もすべての実施例において単糸密着等の問題もなく安定紡糸が可能であった。
(比較例1〜5)
紡糸口金80mmに対し、シール環内径(D1) ,シール環厚さ(L1), 不活性ガス噴出孔孔間距離(L2),スリット幅(L3)が表1の寸法を持つ図1記載のスチームシール環を紡糸口金ホルダー下端部に密着させ、実施例と同様な方法で96ホールの丸型断面を有する紡糸口金からナイロン66ポリマーを吐出した後、全繊度50デニールの繊維を巻き取り速度5500m/minで巻き取った。
なお、比較例4に示すシール環は、その内壁にスリット板は無く、スチーム流が紡糸口金面を沿って流れるように紡糸口金面横に不活性ガス噴出ノズルを設けた。
この際の、紡糸口金直下の酸素濃度、紡糸口金面での糸曲がりが原因で糸が切れた時間、U%、及び単糸密着の有無を表1に示す。
表1から明らかなように、比較例2を除いて紡糸口金直下酸素濃度は1.5%を越えており、糸曲がりが原因で糸が切れる時間は48時間を満足するものではなかった。また、比較例2については紡糸口金直下酸素濃度は0.5%を下回るものの、単糸密着が頻発し、U%も非常に悪いレベルであった。
(実施例5、6、7、比較例6、7、8)
紡糸口金100mmに対し、シール環内径(D1) ,シール環厚さ(L1),不活性ガス噴出孔孔間距離(L2),スリット幅(L3)が表2の寸法を持つ図1記載のシール環を紡糸口金ホルダーの下端部に密着させ、90%ぎ酸相対粘度45、アミノ末端基数がポリマー1kgあたり70ミリ当量、カルボキシル末端基数が40ミリ当量を有するナイロン66ポリマーを、押し出し機にて溶融し、紡糸温度300℃で34ホールのY型断面を有する紡糸口金から吐出後、全繊度70デニールの繊維を引き取り速度1000m/minで引き取った後、そのまま2対のペアロールからなる延伸装置にて延伸した。この際の、紡糸口金直下の酸素濃度、紡糸口金面での糸曲がりが原因で糸が切れた時間、及び異型度を表2に示す。
表2より明らかなように、紡糸口金面直下酸素濃度が1%以下に下がっており、糸曲がりが原因で糸が切れる時間も50時間以上のレベルである。また、異型度についても1.5以上のレベルであった。
これに対して、比較例6,7及び8の結果は、比較例7を除き紡糸口金面直下酸素濃度が1.5%を越えるレベルであり、糸曲がりが原因で糸が切れる時間も20時間未満のレベルであった。比較例7については、紡糸口金面直下酸素濃度は0.5%以下になるものの、異型度が大きく低下した。
ここで異型度は、紡糸して得られるY型フィラメント断面の(外接円の直径)/(内接円の直径)である。
Figure 0004137150
Figure 0004137150
本発明によると、シール環厚みを厚くする事無く、効果的に紡糸口金面の汚れを抑制することが可能となり、フィラメントの冷却が遅れること無く長時間安定な溶融紡糸が可能となる。従って、産業上、極めて有用である。
本発明の一実施態様を示す溶融紡糸装置の断面を示す模式図である。 本発明の溶融紡糸装置の紡糸口金直下部分の断面を示す模式図である。
符号の説明
5 紡糸口金
6 紡糸口金ホルダー
7 不活性ガス導入部
8 不活性ガス供給部
9 不活性ガス噴出孔
10 スリット板
11 シール環
16 紡糸口金面
17 不活性ガス吹き付け面
18 不活性ガス吹き付け面エッジ部
19 不活性ガス流
20 スリット板と紡糸口金外周部の不活性ガス流吹き付け面との角度位置
D1 シール環内径
L1 シール環厚み
L3 スリット板とシール環内壁とのスリット幅
L4 スリット板上端面と紡糸口金面との距離
L5 不活性ガス噴出口上端とスリット板上端面の距離

Claims (1)

  1. 環状部材から成るシール環を紡糸口金ホルダーの下端部に密着せしめて、または一体化せしめて設け、紡糸口金直下域を不活性ガスでシールするようにした溶融紡糸装置を用いるに際し、該シール環が
    0.1≦L1(シール環厚み)/ D1(シール環内径)≦0.4
    の関係を満足し、その内壁面に孔間距離15mm以下に配列させた不活性ガス噴出孔を有し、該シール環内壁との間に上方が開口された巾0.5mm〜5mmの環状空隙部が形成されるように設けたスリット板を具備して成り、スチーム、ヘリウム、窒素および二酸化炭素からなる群から選ばれた一種以上からなる不活性ガス流を巾0.5mm〜5mmの帯状均圧流となし、これを紡糸口金下方より吹き上げ、該紡糸口金面に沿って紡糸口金面外周方向から紡糸口金面中央に向けて流すことで、紡糸口金直下の酸素濃度を1.5%以下となして溶融紡糸することを特徴とするナイロン66ポリマーの溶融紡糸方法。
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