JP4136524B2 - 粘着型光学フィルムおよび画像表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学フィルムの片面または両面に粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムに関する。さらには、前記粘着型光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、その画像形成方式から液晶パネルの最表面を形成するガラス基板の両側に偏光素子を配置することが必要不可欠であり、一般的には偏光板が液晶パネルの最表面に貼着されている。また液晶パネルの最表面には、偏光板の他に、表示品位を向上させるために様々な光学素子が用いられることが非常に多くなってきている。例えば、着色防止としての位相差板、視野角を改善するための視野角拡大フィルム、さらには、コントラストを高めるための輝度向上フィルム等が用いられる。このようなフィルムは総称して光学フィルムと呼ばれる。
【0003】
前記光学フィルムを液晶パネルに貼着する際には、界面での光の反射による損失を抑えるため、通常、粘着剤が使用される。また、光学フィルムを液晶パネルに瞬時に固定できること、光学フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、粘着剤は光学フィルムの片面または両面にあらかじめ粘着剤層として設けられている。すなわち、液晶パネルへの光学フィルムの貼着には粘着型光学フィルムが一般的に用いられる。
【0004】
前記粘着型光学フィルムは、例えば液晶パネルに密着して貼り合わせる際に、前記粘着型光学フィルムの液晶パネルへの貼り合わせ位置を誤ったり、貼り合わせ面に異物、泡等が噛みこんだりしたような場合、光学フィルムを液晶パネル表面から剥離し、液晶パネルを再利用する(リワーク)。このとき、必要以上に接着力が強い(剥離が重い)とパネルにセルギャップが生じるなどの損傷を与えることがある反面、接着力が弱すぎると剥がれが生じてしまうため、適度な接着力が要求される。また、粘着剤と光学フィルムとの密着性(投錨性)が低い場合、リワーク時に粘着剤が液晶パネル表面に残ってしまう糊残りが生じる場合もある。糊残りが生じると著しく作業性を損なうため、投錨力を上げることが要求される。さらに、液晶ディスプレイを作成する各工程間において高温、高湿の条件下にさらされる場合もあり、粘着型光学フィルムは必ずしも温度や湿度が一定の場所に置かれているわけではない。そのため、高温、高湿下でも剥がれや発泡、糊残り等の不具合を生じない粘着型光学フィルムが要求される。
【0005】
従来、特開2000−109771号公報にあるように、重量平均分子量60万〜200万の高分子量ポリマーと重量平均分子量50万以下の低分子量ポリマーとを含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成することにより、リワーク性の向上をはかっている。しかしながら、近年、大型パネルの薄層化により、さらに容易にパネルから光学フィルムを剥離できることが求められている。したがって、本公報に記載の粘着剤では、ある程度リワーク性は向上しても、今後要求されるリワーク性を満足できない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、光学フィルムの片面または両面に粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムに関するものであり、リワークしやすい適度な接着力をもつとともに加熱、加湿条件下でも不具合の生じない粘着型光学フィルムを提供することを目的とする。さらにはこの粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を検討すべく、鋭意研究したところ、以下に示す粘着型光学フィルムの製造方法により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、光学フィルムの片面または両面に粘着剤層が設けられている粘着型光学フィルムにおいて、前記粘着剤層を形成する粘着剤組成物が、重量平均分子量70万以上のアクリル系ポリマー100重量部に対して、重量平均分子量800〜5万のアクリルオリゴマ1重量部以上70重量部以下、シランカップリング剤0.01〜5.0重量部、およびトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート0.1〜6重量部からなり、かつ、前記アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート100重量部に対して、カルボキシル基を有するモノマー0.1〜12重量部のモノマーユニットの割合により構成されており、この粘着型光学フィルムをガラスと貼着し、剥離した際に、貼着前後におけるESCA測定によるガラス表面のカーボン比率の変化量が10%以上50%未満であることを特徴とする粘着型光学フィルムに関するものである。
【0010】
また、本発明は上記粘着剤層を有する粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明における粘着型光学フィルムは、光学フィルムの片面または両面にアクリル系ポリマーを含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層を形成したものであり、これらの粘着型光学フィルムは2層以上積層して用いることもできる。また、空気界面と接する粘着剤層には使用までの保護を目的として、離型フィルム層を設けることができる。
【0012】
本発明の粘着型光学フィルムの粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーに、アクリルオリゴマおよびシランカップリング剤を配合することにより得られる。
【0013】
前記アクリル系ポリマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとし、これに多官能性化合物と反応する官能基を有するモノマーを共重合させることにより得られる。また、アクリル系ポリマー中にカルボキシル基を導入することもできる。また、アクリル系ポリマーの重量平均分子量は70万以上であり、好ましくは100万〜200万である。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0014】
アクリル系ポリマーの主骨格を構成するアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の平均炭素数は1〜12程度のものであり、アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート等を例示でき、これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0015】
前記アクリル系ポリマーと共重合する多官能性化合物と反応する官能基を有するモノマーユニットとしては、カルボキシル基を含有するモノマーを用いる。カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸があげられる。
【0016】
また前記アクリル系ポリマーには、N元素を有するモノマーユニットを導入することができる。N元素含有モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アセトニトリル、ビニルピロリドン、N−シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等があげられる。その他、アクリル系ポリマーには、粘着剤の性能を損なわない範囲で、酢酸ビニル、スチレン等を用いることもできる。これらモノマーは1種または2種以上を組み合わせることができる。
【0017】
アクリル系ポリマー中の前記カルボキシル基を有するモノマーユニットの割合は、アルキル(メタ)アクリレート100重量部に対して、モノマー0.1〜12重量部程度、さらには0.5〜10重量部とするのが、耐久性の点で好ましい。
【0018】
前記アクリル系ポリマーの製造は、各種公知の方法により製造でき、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用でき、反応温度は通常50〜85℃程度、反応時間は1〜10時間程度とされる。また、前記製造法の中でも溶液重合法が好ましく、アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等の極性溶剤が用いられる。溶液濃度は通常20〜80重量%程度とされる。
【0019】
本発明では、アクリル系ポリマーとして、重量平均分子量70万以上のアクリル系ポリマーを用いるとともに、アクリル系ポリマーと相溶性の良い重量平均分子量800〜5万、より好ましくは1000〜1万のアクリルオリゴマが用いられる。アクリルオリゴマの使用量はアクリル系ポリマー100重量部に対して1〜70重量部であり、さらに1〜40重量部が好ましく、5〜30重量部がより好ましい。アクリルオリゴマの使用量が1重量部未満の場合、接着力が強すぎるために良好なリワーク性が得られず、一方、70重量部より多い場合は高温、高湿条件下での不具合(発泡、剥がれ)が生じやすくなる。アクリルオリゴマのガラス転移温度は−5℃〜−100℃であり、好ましくは−15℃〜−70℃である。重量平均分子量が800より小さい場合、被着体であるガラス基板表面への汚染や低分子量成分のブリードによって粘着特性が変化するため好ましくない。また、ガラス転移温度が−5℃より高いかまたは重量平均分子量が5万より大きい場合には、接着力が強く、良好なリワーク性が得られない。さらに、本発明においては、アクリルオリゴマの分子量分布が1〜2であることが好ましく、特に1〜1.7であることがより好ましい。分子量分布が2より大きいと、被着体であるガラス基板表面への汚染や低分子量成分のブリードによって粘着特性が変化するため、好ましくない。
【0020】
アクリルオリゴマは、前期アクリル系ポリマーと同様のアルキル(メタ)アクリレートのモノマーユニットを主骨格とするものを用いることができ、同様の共重合モノマーを共重合したものを用いることもできる。
【0021】
アクリルオリゴマは、各種公知の方法により製造できるが、本発明においては、特定の重合活性化剤と重合開始剤を用いてリビングラジカル重合により製造することが好ましい。この方法を用いることにより、無溶剤または少量の溶剤の存在下、重合熱の制御などの問題を生じることなく、分子量分布の狭いアクリルオリゴマを容易に製造できる。
【0022】
前記重合開始剤としては、遷移金属とその配位子を使用する。遷移金属としては、Cu、Ru、Fe、Rh、VまたはNiなどがあり、通常これら金属のハロゲン化物(塩化物、臭化物など)が用いられる。また、配位子は、遷移金属を中心に配位して錯体を形成するものであって、ビピリジン誘導体、メルカプタン誘導体、トリフルオレート誘導体などが好ましく用いられる。遷移金属とその配位子の組み合わせのなかでも、Cu+1−ビピリジン錯体が重合の安定性や重合速度の面から最も好ましい。
【0023】
前記重合開始剤としては、α−位にハロゲンを含有するエステル系またはスチレン系誘導体が好ましく、特に2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸誘導体、塩化(または臭化)1−フェニル誘導体が好ましく用いられる。具体的には、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸メチル、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸エチル、2−ブロモ(またはクロロ)メチルプロピオン酸メチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸エチル、塩化(または臭化)1−フェニルエチルなどがあげられる。
【0024】
リビングラジカル重合において、重合開始剤は、重合成分に対し通常0.01〜5モル%程度の割合で用いられる。また、遷移金属の使用量は、ハロゲン化物の形態として、上記重合開始剤1モルに対して、通常0.01〜1モル程度の割合で用いられる。さらに、その配位子は、上記の遷移金属(ハロゲン化物などの形態)1モルに対して、通常1〜3モル程度の割合で用いられる。重合開始剤と重合活性化剤とをこのような使用割合にすると、リビングラジカル重合の反応性、生成オリゴマの重量平均分子量などに好結果が得られる。
【0025】
このようなリビングラジカル重合は、無溶剤中でも進行させることができるし、酢酸ブチル、トルエン、キシレンなどの溶剤の存在下で進行させてもよい。溶剤を用いる場合には、重合速度の低下を防ぐため、重合終了後の溶剤濃度が50重量%以下となるように使用量を調整することが好ましい。また、重合条件としては、重合速度や触媒の失活の点より、重合温度は50〜130℃程度、重合時間は1〜24時間程度である。
【0026】
このようにして形成されるアクリルオリゴマは、単独重合体、ランダム共重合体、またはブロック共重合体からなり、狭い分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)を有する重合体である。なお、ランダム共重合体は、2種以上のモノマーを逐次的にリビングラジカル重合することにより形成できる。
【0027】
前記数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算にて用いられる値である。また、オリゴマの数平均分子量(Mn)は、Mn(計算値)=〔(モノマーの分子量)×(モノマーのモル比)〕/(重合開始剤のモル比)にて与えられるため、モノマーと重合開始剤の仕込み比率を調節することで、オリゴマの数平均分子量を制御することができ、目的とするオリゴマを容易に得ることができる。
【0028】
前記粘着剤組成物には多官能性化合物としてイソシアネート系架橋剤を用いる。
【0029】
前記粘着剤組成物中に用いるイソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、4−4′−ジフエニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフエニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等があるが、これらのなかでも、本発明ではトリメチロールプロパントリレンジイソシアネートを使用する。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品工業(株)製:タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエルウレタン(株)製:デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL等がある。アクリル系ポリマーとトリメチロールプロパントリレンジイソシアネートの配合割合は、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート0.1〜6重量部、好ましくは0.1〜3重量部程度である。
【0030】
さらには、前記粘着剤組成物には、接着力の調整を目的として、シランカップリング剤を添加する。
【0031】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどがあり、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。本発明におけるシランカップリング剤の添加量は、前記アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対し通常0.01〜5.0重量部添加する必要があり、0.03〜2.0重量部添加することが好ましい。
【0032】
粘着剤層の形成方法としては特に限定されるものではなく、光学フィルムの片面または両面に粘着剤組成物(溶液)を塗布し、乾燥する方法、粘着剤層を設けた離型フィルムにより転写する方法等があげられる。粘着剤層の厚さ(乾燥後膜厚)は特に制限されるものではないが、10〜40μm程度とするのが好ましい。
【0033】
粘着剤層の形成は、粘着剤組成物の架橋物中の架橋に作用しない架橋剤の割合(残存架橋剤量)が70%以上となるように、架橋条件を制御しながら行う。一般的には、架橋温度を低く、また架橋時間を短く設定することにより好適に制御可能である。架橋温度は粘着剤組成物の種類に応じて適宜に調整されるが、一般的には70〜150℃が好ましい。また、架橋時間は、1〜5分程度とするのが好ましい。
【0034】
離型フィルムの構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シート、金属箔およびそれらのラミネート体といった適宜な薄層体を用いることができる。また、離型フィルムの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の処理が施されていてもよい。
【0035】
なお、本発明における光学フィルムや粘着剤層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する等の方法により紫外線吸収能を持たせたものであってもよい。
【0036】
前記粘着剤層を用いて、ガラス表面への貼着前および剥離後におけるガラス表面のカーボン比率の変化量をESCAによる元素分析結果から求める。
このカーボン比率の変化量は10%以上50%未満であることが必要であり、13%以上40%未満であることが好ましい。カーボン比率の変化量が50%以上の場合、ガラス表面のくもり、低分子量成分のブリードによる耐久性の低下が生じる。一方、10%未満では、粘着剤とガラス界面との結合力が弱く、特に加湿時の剥がれが発生しやすくなる。
【0037】
光学フィルムとしては画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に限定されるものではないが、例えば、偏光板、位相差板、楕円偏光板、視角補償フィルム、輝度向上フィルムが挙げられる。
【0038】
偏光板としては、液晶表示装置に用いられ、偏光子の片面または両面に透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0039】
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0040】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよく、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0041】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや方向族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。これらの中でもイソシアネート架橋剤との反応性を有する水酸基を有するものが好ましく、特にセルロース系ポリマーが好ましい。透明保護フィルムの厚さは特に制限されないが、一般には500μm以下であり、1〜300μmが好ましい。特に5〜200μmとするのが好ましい。
【0042】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面(前記塗布層を設けない面)には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0043】
ハードコート処理は偏光板表面の傷つき防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は変更板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0044】
また、アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して、偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えば、サンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋または未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)をかねるものであってもよい。
【0045】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0046】
前記偏光子と透明保護フィルムとの接着処理は特に限定されるものではないが、例えば、ビニルポリマーからなる接着剤、あるいは、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などのビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤から少なくともなる接着剤などを介して行うことができる。この接着層は、水溶液の塗布乾燥層などとして形成しうるが、その水溶液の調製に際しては、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合することができる。
【0047】
本発明の光学フィルムは、主に前記偏光板に、実用に際して他の光学層を積層して用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に偏光板に、さらに反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板にさらに位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板にさらに視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板にさらに輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0048】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内臓を省略できて、液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0049】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じ、マット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また、前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光およびその反射光がそれを透過する際に拡散されて、明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で、金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0050】
反射板は、前記偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお、反射層は通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設回避の点などにより好ましい。
【0051】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内臓光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的明るい雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0052】
偏光板にさらに位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変えたりする位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板ともいう)が用いられる。1/2波長板(λ/2板ともいう)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0053】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青または黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。さらに、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0054】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。延伸処理は、例えばロール延伸法、長間隙沿延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法などにより行うことができる。延伸倍率は、一軸延伸の場合には1.1〜3倍程度が一般的である。位相差板の厚さも特に制限されないが、一般的には10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
【0055】
高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これら高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0056】
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどがあげられる。主鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートまたはポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これら液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0057】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0058】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板または反射型偏光板と位相差板を適宜な組み合わせで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組み合わせとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記のごとくあらかじめ楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて、液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0059】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明に見えるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差板、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され、厚さ方向にも延伸された、厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理または/および収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0060】
また、良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0061】
偏光板と輝度向上フィルムを貼りあわせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得るとともに、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光をさらにその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部または全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図るとともに、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して、液晶画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに、輝度向上フィルムでいったん反射させ、さらにその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光市を通過しうるような偏光方向になった偏光のみを透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0062】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態とする。すなわち元の自然光状態にもどす。この非偏光状態すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射して、拡散板を再び通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。元の自然光状態に戻す拡散板を設けることにより、表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのムラを少なくし、均一の明るい画面を提供することができる。元の自然光状態に戻す拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能とあいまって均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0063】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回りまたは右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0064】
したがって、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸をそろえて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ、効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0065】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの単色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。したがって、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層または2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0066】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層または3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0067】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層または3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。したがって、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0068】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、あらかじめ積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着剤層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0069】
本発明の粘着型光学フィルムは液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置の形成に好ましく用いることができる。
【0070】
本発明の粘着型光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち、液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着型光学フィルム、および必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に軸立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0071】
液晶セルの片側または両側に粘着型光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側または両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
【0072】
次いで、有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせを持った構成が知られている。
【0073】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性に伴う強い非線形性を示す。
【0074】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を用胃にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0075】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度と極めて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0076】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差フィルムを設けることができる。
【0077】
位相差フィルムおよび偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差フィルムを1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差フィルムとの偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0078】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差フィルムにより一般に楕円偏光となるが、特に位相差フィルムが1/4波長板でしかも偏光板と位相差フィルムとの偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0079】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差フィルムで再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0080】
上記のように、本発明における粘着型光学フィルムの好ましい態様は、アルキル(メタ)アクリレートにカルボキシル基含有モノマーを共重合させることにより得られたアクリル系ポリマー(重量平均分子量70万以上)と、アクリルオリゴマ(重量平均分子量800〜5万)およびシランカップリング剤を含有する粘着剤組成物を、前記光学フィルムの片面または両面に塗工し粘着剤層を形成したものである。
【0081】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中、部および%は重量基準である。
【0082】
実施例1
(アクリル系ポリマーの調製)
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、ブチルアクリレート97部、アクリル酸3部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部および酢酸エチルを固形分が30%になるように投入した後、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。60℃にフラスコを加熱し、反応を開始し、7時間反応し重量平均分子量(Mw)110万のアクリル系ポリマーを得た。
【0083】
(粘着剤組成物の調製)
上記アクリル系ポリマー溶液(固形分100部)に、ブチルアクリレート(BA)オリゴマ(Mw=3000)10部、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製「コロネートL」)0.8部、シランカップリング剤(信越化学(株)製「KBM−403」)0.1部を加えて粘着剤組成物(溶液)を調製した。
【0084】
(粘着型光学フィルムの作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で5倍に延伸したのち乾燥させ、両側にトリアセチルセルロースフィルムを、接着剤を介して接着し偏光板を得た。上記により作製された粘着剤溶液を、35μmの厚みを有するポリエチレンテレフタレート系離型フィルム上に、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布した後、100℃で4分間乾燥して粘着剤層を形成した。これを上記偏光板に転写して粘着型偏光板を得た。
【0085】
実施例2
実施例1(粘着剤組成物の調製)において、BAオリゴマを30部用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着型光学フィルムを得た。
【0086】
実施例3
実施例1(粘着剤組成物の調製)において、BAオリゴマを60部用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着型光学フィルムを得た。
【0087】
比較例1
実施例1(粘着剤組成物の調製)において、BAオリゴマを80部用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着型光学フィルムを得た。
【0088】
比較例2
実施例1(粘着剤組成物の調製)において、BAオリゴマおよびシランカップリング剤を加えないこと以外は、実施例1と同様にして粘着型光学フィルムを得た。
【0089】
[評価]
(ガラス表面のカーボン比率の変化量)
上記により作成された粘着型偏光板を25mm×150mmの大きさに切断した後、これの粘着剤層面をアルカリガラス板に貼り合わせ、オートクレーブ処理(50℃×0.5MPa)を15分間行う。その後、60℃雰囲気下に12時間投入し、室温雰囲気(25℃)において手剥離した後、ESCA測定によりガラス表面のカーボン比率(A[%])を測定した。この結果と、前もって測定しておいた貼着前のガラス表面におけるカーボン比率(B[%])との変化量(ΔC[%])を下記式により求めた。
(式)ΔC[%]=A[%]−B[%]
【0090】
(対ガラス接着力)
上記により作製された粘着型偏光板を25mm×150mmの大きさに切断した後、これの粘着剤層面を無アルカリガラス板(コーニング社製:#1737)に貼り合わせ、オートクレーブ処理(50℃×0.5MPa)を15分間行う。その後、引張り試験機を用いて90°剥離、引っ張り速度300mm/minで室温雰囲気(25℃)にて測定を行い、これを初期接着力とする。また、オートクレーブ処理後、60℃雰囲気下に17時間投入した後、室温雰囲気(25℃)にて測定を行った。
【0091】
(加熱耐久性)
上記により作成された粘着型偏光板を12インチサイズに切断し、これの粘着剤層面をアルカリガラス板に貼りあわせ、オートクレーブ処理(50℃×0.5MPa)を15分間行う。その後、90℃雰囲気下に500時間投入し、発泡、剥がれ等の不具合の発生を目視で確認した。
○:不具合あり ×:不具合なし
【0092】
(加湿耐久性)
上記により作成された粘着型偏光板を12インチサイズに切断し、これの粘着剤層面をアルカリガラス板に貼りあわせ、オートクレーブ処理(50℃×0.5MPa)を15分間行う。その後、60℃×90%雰囲気下に500時間投入し、発泡、剥がれ等の不具合の発生を目視で確認した。
○:不具合あり ×:不具合なし
【0093】
前記の結果を表1に示した。
【0094】
【表1】
【0095】
表1の結果から明らかなように、カーボン比率の変化量が10%以上50%未満の範囲内にある実施例1〜3の粘着型光学フィルムでは、対ガラス接着力も小さく、リワーク性が良好であり、加熱/加湿耐久性についても問題ないことが確認された。しかし、カーボン比率の変化量が範囲外である比較例1,2では、リワーク性および加熱/加湿耐久性で劣るものとなっている。
【0096】
【発明の効果】
以上のように本発明では、粘着型光学フィルムをガラス表面に貼り付ける前と、ガラスと貼りあわせた後で剥離した際のガラス表面におけるカーボン比率の変化量が10%以上50%未満の範囲内にある粘着型光学フィルムを提供することにより、リワーク性と加熱/加湿耐久性を良好にした。
Claims (2)
- 光学フィルムの片面または両面に粘着剤層が設けられている粘着型光学フィルムにおいて、
前記粘着剤層を形成する粘着剤組成物が、重量平均分子量70万以上のアクリル系ポリマー100重量部に対して、重量平均分子量800〜5万のアクリルオリゴマ1重量部以上70重量部以下、シランカップリング剤0.01〜5.0重量部、およびトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート0.1〜6重量部からなり、かつ、
前記アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート100重量部に対して、カルボキシル基を有するモノマー0.1〜12重量部のモノマーユニットの割合により構成されており、
この粘着型光学フィルムをガラスと貼着し、剥離した際に、貼着前後におけるESCA測定によるガラス表面のカーボン比率の変化量が10%以上50%未満であることを特徴とする粘着型光学フィルム。 - 請求項1記載の粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置。
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