JP4135279B2 - 内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の空燃比制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関のリーン空燃比における燃焼状態を検出し、内燃機関を失火限界(安定限界)で動作させる方法として、特公平6−100128号公報に開示された「内燃機関の空燃比制御装置」が知られている。同公報の装置では、空燃比を一時的に制御すべき空燃比よりリーンに変更し、その変更の前後における燃焼状態を検出する。また、空燃比変更の前後の燃焼状態を比較し、リーン化に起因する燃焼状態の変化がどの程度であるかを検出する。そして、その燃焼状態の差が所定値以上であれば、失火限界まで空燃比がリーン化されたとみなして空燃比を幾分リッチ化する。一方、燃焼状態の差が所定値未満であれば、現在の空燃比は失火限界まで余裕があるとみなし、より失火限界に近いリーン空燃比で内燃機関を運転させるべく、比較的小さな値で空燃比をリーン化する。これにより、失火限界から僅かにリッチ側で空燃比を制御するようにしていた。
【0003】
内燃機関の燃焼状態を検出する手法としては、燃焼室内の燃焼圧力や燃焼光量を検出して直接検出するもの、或いは内燃機関の出力変動や回転変動を測定して間接的に検出するもの等が適用できるとしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、燃焼状態は、空燃比と一意な関係にあるわけではなく、燃焼ばらつきや燃焼状態の検出方法に起因する誤差が存在し、燃焼状態が不安定なほど、空燃比との関係を定量化することが困難になる。特に、回転変動から燃焼状態を判定する場合、燃焼状態と空燃比との間のばらつきが大きくなり易く、上記問題が顕著になる。
【0005】
従って、燃焼状態と空燃比とのばらつきが大きいものに対して空燃比を所定時間リーンに固定し、その間に燃焼状態を検出する場合には、燃焼状態のばらつきが原因でドライバビリティが悪化するといった問題が生じる。また、空燃比を所定量リーンにする方法では、1回のリーン化で失火限界かどうかを判定できる燃焼状態になるとは限らず、空燃比のリーン設定を複数回変更し、その度に失火限界かどうかを繰り返し判定して最適なリーン度合を決定する必要が生じる。空燃比のリーン化を繰り返すよう失火限界近くでの空燃比制御を実施するために、多大な制御回数と制御時間とを要するという問題を招く。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたものであって、その目的とするところは、燃焼状態と空燃比との関係を速やかに定量化し、ひいては空燃比の制御精度を向上させることができる内燃機関の空燃比制御装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の空燃比制御装置において、燃焼状態制御手段は、内燃機関の燃焼状態を示すパラメータとしての燃焼ラフネス値を所定期間、空燃比のリーン域に相当する領域で制御する。代表空燃比算出手段は、前記燃焼状態制御手段による燃焼状態制御が実施される所定期間での空燃比センサの検出値(実空燃比)に基づき、当該期間内の空燃比の代表値を算出する。また、空燃比補正手段は、前記所定期間の燃焼状態制御が終了した後、前記算出した空燃比の代表値を基に内燃機関への燃料供給量を補正する。
【0008】
上記構成によれば、空燃比のリーン域に相当する領域で燃焼ラフネス値(燃焼状態)が制御されるため、その制御の期間内では燃焼状態がばらつくことなく所定の状態で固定される。それ故、空燃比が予期せずに失火限界を越えてしまいその結果として燃焼状態がドライバビリティの許容範囲から外れるといった問題が解消される。また、空燃比のリーン域では、燃焼ラフネス値と空燃比との関係がほぼ1対1となるため、リーン相当の領域で燃焼状態制御が実施される所定期間にて空燃比の代表値が求められれば、その代表値により燃焼ラフネス値(燃焼状態)と空燃比との関係が定量化できる。この場合、定量化に必要な空燃比代表値の計測は1回のみ実施すればよいため、上記両者の関係が速やかに定量化され、制御時間を大幅に短縮することができる。
【0009】
更に、かかる制御によれば、空燃比センサの検出値(実空燃比)に基づき空燃比の代表値を算出するので、空燃比センサの出力誤差分を見込んで燃焼ラフネス値と空燃比との関係が定量化できる。従って、同センサの出力誤差が空燃比制御に反映できる。こうして燃焼状態(燃焼ラフネス値)と空燃比との関係を適切に定量化しそれに従い空燃比補正を実施することにより、空燃比の制御精度が向上する。
【0010】
上記請求項1の発明では、請求項2に記載したように、前記所定期間の燃焼状態制御が終了した後、前記算出した空燃比の代表値を基に目標空燃比を補正するとよい。この場合、燃焼ラフネス値(燃焼状態)と空燃比との関係を適正に定量化し且つ空燃比センサの出力誤差分を反映しつつ目標空燃比が補正されることにより高精度な空燃比制御が実現できる。
【0011】
また、請求項3に記載したように、前記所定期間の燃焼状態制御が終了する時、前記算出した空燃比の代表値を所定量リッチ側に変更し、該変更した値により目標空燃比を設定すると良く、特に、請求項4に記載したように、前記空燃比の代表値をリッチ側に変更する所定量は、目標空燃比を燃料消費量の最良点に設定するものであるのが望ましい。かかる場合、燃焼消費率の最良点で空燃比制御を実施するなど、望み通りに空燃比制御を実施することができ、当該制御の最適化を図ることができる。
【0012】
請求項5に記載の発明では、前記空燃比の代表値により補正した目標空燃比に基づき、目標空燃比の基本データを学習するための学習処理を実施する。こうして目標空燃比が学習されることにより、目標空燃比の設定が好適に行われ、空燃比センサの出力誤差や経時変化等を反映した高精度な空燃比フィードバック制御が実現できる。
【0013】
ここで、空燃比の代表値を算出する手法としては、請求項6に記載したように、燃焼状態制御が実施される所定期間において空燃比の積算値を求め、その平均値を空燃比の代表値とするとよい。この場合、所定期間内における平均値を空燃比の代表値とすることで、燃焼状態に対する空燃比のばらつきを小さくすることができる。その結果、当該代表値の信頼性が増し、空燃比の制御精度が向上する。
【0014】
また、空燃比の代表値はその信頼度が平均時間に依存するので、請求項7に記載したように、所望とする空燃比の制御精度に応じて空燃比の平均化の時間を設定すると良い。
【0015】
空燃比を積算し平均化する演算処理は、なまし演算にて代替えできる。そこで、請求項8に記載の発明では、燃焼状態制御が実施される所定期間において空燃比をなまし演算し、そのなまし値を空燃比の代表値とする。なまし演算を使うことにより制御ソフト上の負荷が低減できるので、本発明は、平均化の時間が長く設定される場合に効果的である。
【0016】
請求項9に記載の発明では、実際の燃焼ラフネス値を検出する燃焼状態検出手段を備え、前記燃焼状態制御手段は、その時々の機関運転状態に応じて燃焼ラフネス値の目標値を設定し、前記検出した実際の燃焼ラフネス値が目標値になるよう内燃機関への燃料供給量を制御する。つまり、燃焼状態制御に際し、実際の燃焼ラフネス値がその目標値になるよう燃料供給量が増減されるので、燃焼状態を所望の状態に確実に制御することが可能となる。
【0017】
請求項10に記載の発明では、前記燃焼状態制御手段は、失火限界近傍のドライバビリティ許容域内にて燃焼ラフネス値の目標値を設定する。この場合、燃焼状態制御を実施する際に内燃機関が安定して運転され、ドライバビリティ悪化を防止することができる。
【0018】
請求項11に記載したように、内燃機関の1燃焼毎の回転変動量に応じて燃焼ラフネス値を検出する場合、従来装置では燃焼ラフネス値と空燃比との関係のばらつきが顕著になったが、本発明ではこうした従来の問題が解消され、良好な空燃比制御を実現することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態では、自動車用内燃機関に供給する混合気の空燃比を目標値にフィードバック(F/B)制御する空燃比制御システムとして本発明を具体化し、特に内燃機関の燃焼状態を所定の状態に固定し、その燃焼状態固定の状態における空燃比F/B状態に応じて空燃比制御量を変更する。そしてこれにより、空燃比を失火限界近傍で好適にF/B制御することとしている。以下に、図面を用いてその詳細な構成を説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態における空燃比制御システムの概要を示す全体構成図である。図1において、エンジン10は6気筒火花点火式内燃機関からなり、エアクリーナ11から吸入される吸入空気は、吸気管12及びスロットル弁13を通過して、気筒毎に吸気ポートに配設されたインジェクタ14による噴射燃料と混合された後、エンジン10の各気筒に供給される。また、燃焼後に各気筒から排出される排ガスは、排気マニホールド15、排気管16等を経て大気に放出される。
【0021】
吸気管12には、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ17と、吸入空気の量を検出するエアフロメータ18とが配設され、スロットル弁13には同弁13の開度を検出するスロットルセンサ19が配設されている。また、排気管16には、排ガス中の酸素濃度から空燃比(A/F)を検出するA/Fセンサ20が配設されている。その他本システムで採用されるセンサとして、水温センサ21はシリンダブロックに設けられ、エンジン冷却水の温度を検出する。クランク角センサ22は、例えばクランク軸に設けられ、所定クランク角毎(本実施の形態では10°CA毎)にNeパルス信号を出力する。
【0022】
ECU30は、CPU31、ROM32、RAM33、バックアップRAM34等を有する周知のマイクロコンピュータからなり、前述した吸気温センサ17、エアフロメータ18、スロットルセンサ19、A/Fセンサ20、水温センサ21、クランク角センサ22等、各種センサの検出信号を取り込んでインジェクタ14による燃料噴射量を調整して空燃比を望み通りに制御する。ここで、CPU31は、ROM32内に予め格納される制御プログラムに従い、後述する各制御ルーチンを順次実行する。バックアップRAM34は、図示しない車載バッテリからの給電により記憶内容を保持するメモリであり、同バックアップRAM34には、例えばエンジン回転数Ne及び吸気量Qaに応じて目標空燃比を設定するための目標空燃比マップが格納されている。
【0023】
次に、上記の如く構成される空燃比制御システムの作用を説明する。
図2は、CPU31により実行されるメインルーチンの概略を示すフローチャートである。
【0024】
さて、図示しないイグニッションスイッチがオンされエンジン10が始動すると、図2の処理が起動され、ステップ110では初期化を行う。ステップ120では、クランク角センサ22の検出結果から算出されるエンジン回転数Neと、エアフロメータ18の検出結果から算出される吸気量Qaとを取り込み、続くステップ130では、図示しないマップを用い、前記取り込んだNe、Qaに基づいて基本噴射量Tpを演算する。
【0025】
その後、ステップ140では、水温センサ21の検出結果から算出される冷却水温Thw、吸気温センサ17の検出結果から算出される吸気温Ta、同一気筒で前後する燃焼サイクルの吸気量の変化量ΔQa(720°CA間のQaの変化量)を取り込み、ステップ150では、前記取り込んだThw、Ta、ΔQaに基づいて補正量K1を演算する。補正量K1は、冷間時や過渡運転時に燃料の増減量制御を行うための公知の燃料量補正量である。
【0026】
次に、図3は、クランク角センサ22からのNeパルス信号に基づき20°CA毎に割り込み起動される処理を示すフローチャートであり、同処理はNe割り込みに際しメインルーチンの処理に優先して実行される。
【0027】
ステップ201では、図示しないクランク角カウンタを用い、20°CA離れたNeパルス信号の間で計数を行う。続いてステップ202では、所定クランク角度(20°CA)の所要時間Tneを演算し、ステップ203では、その所要時間Tneに基づいて1燃焼毎の回転変動量ΔNeを演算する。ここで、6気筒エンジンの場合、所要時間Tneは図9の如く120°CAを1燃焼のサイクルとして変化し、その最大値Tmaxと最小値Tmaxとの差により回転変動量ΔNeが演算される。このΔNe値のデータは、気筒毎にRAM33に記憶される。
【0028】
その後、ステップ204では、燃焼状態検出が許可されているか否かを判別する。燃焼状態検出の条件としては、例えば暖機条件と定常運転状態とがあり、より具体的には暖機条件として冷却水温Thwが80℃以上であること、定常運転条件として180°CA内のエンジン回転数Neの変動が所定値以下であることを含む。
【0029】
燃焼状態検出が許可されていればステップ205に進む。ステップ205では、前記演算した気筒毎の回転変動量ΔNeを使い、その標準偏差によりその時々の実際の燃焼状態を表すパラメータとして実ラフネス値Rreを算出する。具体的には、気筒毎の回転変動量の今回値をΔNe(i)、平均値をΔNeav、サンプリング母数をnとし、次の(1)式を用いて実ラフネス値Rreを算出する。
【0030】
【数1】
その後、ステップ206では、今現在が何れかの気筒の噴射タイミングであるか否かを判別し、噴射タイミングでなければそのまま本処理を一旦終了する。また、噴射タイミングであれば、ステップ207でA/Fセンサ20により検出された空燃比(実空燃比λre)を取り込み、続くステップ300で目標空燃比λtgを演算する。ステップ300では図4及び図5の処理が実施されるが、その詳細は後述する。
【0031】
その後、ステップ208では、前記ステップ207で取り込んだ実空燃比λreと、前記ステップ300で算出した目標空燃比λtgとを用い、その空燃比の偏差に基づいて空燃比補正量K2を演算する。なお、空燃比補正量K2は、空燃比の偏差量に応じて算出される周知のフィードバック補正値である。
【0032】
最後に、ステップ209では、前記算出した基本噴射量Tp、補正量K1,K2等を用いて最終噴射量TAUを演算し、本処理を終了する(TAU=Tp・K1・K2)。
【0033】
ここで、前記図3のステップ300における目標空燃比λtgの演算処理を、図4及び図5に示すフローチャートに従い説明する。
先ず図4のステップ301では、リーン制御実行条件が成立するかどうかを判別する。リーン制御実行条件としては、例えば冷却水温Thwが60℃以上であること、高回転・高負荷状態でないこと、アイドル状態でないことを含む。仮にリーン制御実行条件が不成立であればステップ302に進み、目標空燃比λtgをλ=1としてストイキ制御を実行する。
【0034】
リーン制御実行条件が成立すればステップ303に進み、燃焼状態検出が許可され且つ、その燃焼状態検出の許可から所定時間T1が経過したか否かを判別する。この所定時間T1は、燃焼状態検出の開始から定常状態の安定を待つ時間であり、本実施の形態ではT1=2秒とする。そして、YESであれば、燃焼状態F/Bの実行を許可し、実ラフネス値Rreを目標ラフネス値Rtgに一致させるよう燃焼状態を所望の状態に制御することとし、ステップ304で燃焼状態F/B実行フラグをオンする。
【0035】
ステップ305では、燃焼状態F/B実行フラグがオンであるか否かを判別し、燃焼状態F/B実行フラグがオフであれば、ステップ306〜308の処理を実施する。つまり、燃焼状態F/Bが実施されない場合において、ステップ306では、Ne、Qa、Thw等、各種エンジン運転状態を取り込み、続くステップ307では、バックアップRAM34内に格納されている目標空燃比マップを用い、その時々のNe、Qaに基づいて基本目標空燃比λbseを演算する。ステップ308では、前記算出した基本目標空燃比λbseに対して水温補正した値を目標空燃比λtgとし、その後元の図3の処理に戻る。
【0036】
また、ステップ305がYESの場合(燃焼状態F/B実行フラグがオンの場合)、図5のステップ320では燃焼状態F/Bを実行し、続くステップ330では、燃焼状態F/B中の空燃比を代表する代表空燃比λrepを算出する。
【0037】
ここで、燃料消費率(燃費)と燃焼ラフネス値と空燃比とは図10に示す関係にあり、理論空燃比を含む弱リーンまでの図のA領域では、比較的安定した状態で燃焼が行われるため燃焼ラフネス値が小さく、また、空燃比に対する燃焼ラフネス値の変化が一定とならない。これに対し、図のB領域では空燃比のリーン化に伴い燃焼が不安定になり、ほぼ1対1で対応しながら空燃比のリーン化に対してラフネス値が増大する。そこで、このB領域で燃焼状態F/Bを実施し、その燃焼状態F/Bの下で燃焼ラフネス値と空燃比との関係を定量化する。そして、この定量化した関係を用いて空燃比補正を行う。次に、図6及び図7を用い、燃焼状態F/Bの実施手順と代表空燃比λrepの算出手順とを説明する。
【0038】
図6において、ステップ321では、その時々のエンジン回転数Neと吸気量Qaとから目標ラフネス値Rtgを算出する。目標ラフネス値Rtgは、例えば図11のマップを用い、エンジン10の失火限界近傍のドライバビリティ許容域内に設定される。図11によれば、高回転で且つ低負荷ほど(高Neで且つ少Qaほど)、目標ラフネス値Rtgが小さい値に設定され、逆に低回転で且つ高負荷ほど(低Neで且つ多Qaほど)、目標ラフネス値Rtgが大きい値に設定される。
【0039】
ステップ322では、前記ステップ321で算出した目標ラフネス値Rtgと、前記図3のステップ205で算出した実ラフネス値Rreとの偏差ΔR(=Rtg−Rre)を算出し、続くステップ323では、図12の関係を用い、ラフネス値の偏差ΔRに基づいて目標空燃比補正量Fを算出する。図12によれば、ΔR>0(Rtg>Rre)であれば、そのΔRに応じて正の目標空燃比補正量Fが設定され、ΔR<0(Rtg<Rre)であれば、そのΔRに応じて負の目標空燃比補正量Fが設定される。但し、目標空燃比補正量Fは、ラフネス値の偏差ΔRの絶対値が所定量を越えた時にガードされる。
【0040】
その後、ステップ324では、目標空燃比λtgの前回値に目標空燃比補正量Fを加算し、その値を新たな目標空燃比λtgとする。このとき、ΔR>0(Rtg>Rre)であれば、目標空燃比λtgがリーン側に補正され、ΔR<0(Rtg<Rre)であれば、目標空燃比λtgがリッチ側に補正されることとなる。かかる目標空燃比λtgの補正により、燃焼状態が所望の状態に維持される。
【0041】
一方、図7において、ステップ331では、燃焼状態F/Bの開始から所定時間T2が経過したか否かを判別する。この所定時間T2は、燃焼状態F/Bの開始後、実ラフネス値Rreの安定を待つ時間であり、本実施の形態ではT2=0.5秒とする。そして、ステップ331がYESであることを条件にステップ332に進み、実空燃比λre(A/Fセンサ20の検出値)の積算値Tλを算出する(Tλ=Tλ+λre)。
【0042】
その後、ステップ333では、実空燃比λreの積算開始から所定時間T3が経過し、所定のサンプリング数の積算が終了したか否かを判別する。所定時間T3は実空燃比λreのサンプリング時間であり、本実施の形態ではT3=10秒とする。そして、ステップ333がYESであることを条件に、ステップ334では、実空燃比の積算値Tλの平均値を算出してその値を代表空燃比λrepとし、その後図5の処理に戻る。実際には、積算値λTをT3期間内の噴射回数ncで割り、その値をλrepとする(λrep=Tλ/nc)。
【0043】
なお、代表空燃比λrepはその信頼度がサンプリング時間(平均時間)に依存するので、所望とする空燃比の制御精度に応じて所定時間T3を可変に設定するようにしても良い。
【0044】
図5の説明に戻り、燃焼状態F/Bや代表空燃比の算出(ステップ320,330)を実施した後、ステップ309では、代表空燃比λrepの算出が完了したか否かを判別する。前述の図7の処理において、実空燃比λreの積算開始から所定時間T3が経過していない場合(ステップ333がNO)、ステップ309が否定判別される。
【0045】
また、実空燃比λreの積算開始から所定時間T3が経過して代表空燃比λrepが算出された場合、ステップ310に進む。ステップ310では、例えば図13のマップを用い、その時々のエンジン回転数Neと吸気量Qaとからリッチ変更量Δrichを算出する。図13によれば、高回転で且つ低負荷ほど(高Neで且つ少Qaほど)、リッチ変更量Δrichが大きい値に設定され、逆に低回転で且つ高負荷ほど(低Neで且つ多Qaほど)、リッチ変更量Δrichが小さい値に設定される。
【0046】
続くステップ311では、代表空燃比λrepからリッチ変更量Δrichを減算し、その値を新たに目標空燃比λtgとする(λtg=λrep−Δrich)。
【0047】
その後、ステップ312では、その時の目標空燃比λtgを基本目標空燃比λbseとしてバックアップRAM34内の目標空燃比マップを更新(学習)する。すなわち、その時のエンジン運転領域に合わせ、前記算出した目標空燃比λtgによりそれまでのマップデータを書き換える。最後にステップ313では、燃焼状態F/B実行フラグをオフにし、本処理を終了する。
【0048】
なおこのとき、目標空燃比マップが全気筒共通であれば全気筒の平均値によりマップデータが学習される。また、例えばV型エンジンのようにバンク毎にマップを有する場合、バンク毎の平均値によりマップデータが学習される。
【0049】
次に、上述した各処理に対応する実際の動作を図8のタイムチャートを用いて説明する。図8では、基本動作としてリーン空燃比での空燃比F/B制御が実施されており、例えば時刻t11以前においては、エンジン運転状態に基づき所定のリーン領域で目標空燃比が設定され、その目標空燃比に応じて実空燃比λreが推移している。
【0050】
さて、時刻t10は、燃焼状態検出が許可される時刻を示し、t10以降、実ラフネス値Rreが算出される。そして、時刻t10から所定時間T1が経過する時刻t11では、燃焼状態F/B実行フラグがオンに転じる。所定時間T1は、燃焼状態検出が許可された後に、実ラフネス値Rreが適正に算出できるようになるまで待つための時間である。
【0051】
時刻t11以降、エンジン10の失火限界近傍にて目標ラフネス値Rtgが設定されると共に、実ラフネス値Rreが目標ラフネス値Rtgに収束するよう燃焼状態F/Bが実施される。つまり、ラフネス値の偏差ΔRに応じて目標空燃比λtgが適宜補正され、その目標空燃比λtgにより空燃比がF/B制御される。
【0052】
時刻t11から所定時間T2が経過する時刻t12では、実空燃比λreの積算が開始される。そして、実空燃比λreの積算が開始されてから所定時間T3が経過する時刻t13では、実空燃比の積算値Tλの平均をとって代表空燃比λrepが求められると共に、その代表空燃比λrepからリッチ変更量Δrichを減算して目標空燃比λtgが算出され、その目標空燃比λtgにより空燃比F/B制御が実施される。
【0053】
また、時刻t13では、その時の目標空燃比λtg(=λrep−Δrich)によりそれまでの基本目標空燃比λbseが更新されると共に、燃焼状態F/B実行フラグがオフされる。
【0054】
図10で説明すれば、失火限界近傍のL1点で燃焼状態F/B制御が実施され、そのL1点の空燃比が代表空燃比λrepとして算出される。そして、その代表空燃比λrepをΔrichだけリッチ化したL2点で目標空燃比λtgが学習される。このとき、L2点の空燃比は燃費最良点に対応しており、目標空燃比λtgは燃費最良点に学習されることとなる。
【0055】
なお本実施の形態では、図3のステップ205が燃焼状態検出手段に該当し、図5のステップ320(図6の処理)が燃焼状態制御手段に該当する。また、図5のステップ330(図7の処理)が代表空燃比算出手段に該当し、図5のステップ311,312が空燃比補正手段に該当する。
【0056】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下に示す効果が得られる。
目標空燃比λtgの学習処理に際し、リーン空燃比域での燃焼状態F/B制御が実施されるため、その制御の期間内では燃焼状態がばらつくことなく所定の状態で固定される。それ故、空燃比が予期せずに失火限界を越えてしまいその結果として燃焼状態がドライバビリティの許容範囲から外れるといった問題が解消される。このとき、失火限界近傍のドライバビリティ許容域内にて目標ラフネス値Rtgを設定したので、燃焼状態F/B制御を実施する際にエンジンが安定して運転され、ドライバビリティ悪化が防止できる。
【0057】
また、リーン空燃比域では、燃焼ラフネス値と空燃比との関係がほぼ1対1となるため、リーン相当の領域で燃焼状態F/B制御が実施される所定期間にて代表空燃比λrepが求められれば、その代表値により燃焼ラフネス値(燃焼状態)と空燃比との関係が正しく定量化できる。この場合、定量化に必要な代表空燃比λrepの計測は1回のみ実施すればよいため、上記両者の関係が速やかに定量化され、制御時間を大幅に短縮することができる。特に、回転変動量ΔNeに応じて燃焼ラフネス値を検出する場合、従来装置では燃焼ラフネス値と空燃比との関係のばらつきが顕著になったが、本実施の形態ではこうした従来の問題が解消され、良好な空燃比制御を実現することができる。
【0058】
A/Fセンサ20の検出値(実空燃比λre)に基づき代表空燃比λrepを算出するので、A/Fセンサ20の出力誤差分を見込んでラフネス値と空燃比との関係が定量化できる。従って、同センサ20の出力誤差を反映しながら空燃比制御が実施できる。こうして燃焼状態(燃焼ラフネス値)と空燃比との関係を適切に定量しそれに従い空燃比制御を実施することにより、その制御精度が向上する。
【0059】
代表空燃比λrepを所定量リッチ側に変更して目標空燃比λtgを補正し、更にその補正した結果により目標空燃比λtgの基本データを学習することとした。それ故、燃焼ラフネス値(燃焼状態)と空燃比との関係を定量化し且つA/Fセンサ20の出力誤差分を反映しながら高精度な空燃比制御が実現できる。また、燃費最良点で空燃比制御を実施するなど、望み通りに空燃比制御を実施することができる。
【0060】
燃焼状態F/B制御の所定期間内において実空燃比λreの積算値Tλを求め、その平均値を代表空燃比λrepとしたので、燃焼状態に対する空燃比のばらつきを小さくすることができる。その結果、当該代表空燃比λrepの信頼性が増し、空燃比の制御精度がより一層向上する。
【0061】
なお本発明は、上記以外に次の形態にて具体化できる。
上記実施の形態では、燃焼状態F/Bが終了した時点で代表空燃比λrepに基づき目標空燃比λtgを学習したが(図5のステップ312)、目標空燃比λtgを学習する代わりに、代表空燃比λrepに基づき空燃比補正量K2を変更するよう構成してもよい。また、代表空燃比λrepに基づき空燃比学習値を設定し、その空燃比学習値により燃料噴射量を補正して空燃比F/B制御を実施するよう構成しても良い。
【0062】
上記実施の形態では、所定のサンプリング期間中における実空燃比λreの平均値により代表空燃比λrepを算出したが、これを変更し、同期間中における実空燃比λreのなまし値により代表空燃比λrepを算出する。具体的には、実空燃比λreを積算し平均化する演算処理(図7のステップ332〜334)を、なまし演算にて代替えする。このとき、燃焼状態F/B制御が実施される所定期間において実空燃比λreをなまし演算し、そのなまし値を代表空燃比λrepとする。なまし演算を使うことにより制御ソフト上の負荷が低減できるので、本形態は、平均化の時間が長く設定される場合に効果的である。
【0063】
上記実施の形態では、回転変動量の標準偏差により燃焼ラフネス値を算出したが、これに代えて、不偏分散や平均偏差等、他の統計処理を用いて燃焼ラフネス値を算出しても良い。
【0064】
燃焼状態(ラフネス値)の検出手段として、上述の回転変動量により算出する手段の他、1燃焼毎の燃焼圧力により算出する手段や、燃焼光により算出する手段等が適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態における内燃機関の空燃比制御システムの概要を示す構成図。
【図2】メインルーチンを示すフローチャート。
【図3】Ne割り込み処理を示すフローチャート。
【図4】目標空燃比の演算処理を示すフローチャート。
【図5】図4に続き、目標空燃比の演算処理を示すフローチャート。
【図6】燃焼状態F/Bの実行処理を示すフローチャート。
【図7】代表空燃比の算出処理を示すフローチャート。
【図8】動作説明のためのタイムチャート。
【図9】1燃焼毎の回転変動の状態を示すタイムチャート。
【図10】燃費と燃焼ラフネス値と空燃比との関係を示す図。
【図11】目標ラフネス値を設定するためのマップ。
【図12】目標空燃比補正量を設定するための図。
【図13】リッチ変更量を設定するためのマップ。
【符号の説明】
10…エンジン(内燃機関)、14…インジェクタ、20…A/Fセンサ(空燃比センサ)、30…ECU、31…燃焼状態検出手段,燃焼状態制御手段,代表空燃比算出手段,空燃比補正手段としてのCPU、34…バックアップRAM。
Claims (11)
- 内燃機関の運転状態に応じて内燃機関へ供給する燃料量を調整し、所望の空燃比に制御する内燃機関の空燃比制御装置において、
内燃機関の空燃比を検出する空燃比センサと、
内燃機関の燃焼状態を示すパラメータとしての燃焼ラフネス値を所定期間、空燃比のリーン域に相当する領域で制御する燃焼状態制御手段と、
前記燃焼状態制御手段による燃焼状態制御が実施される所定期間での前記空燃比センサの検出値に基づき、当該期間内の空燃比の代表値を算出する代表空燃比算出手段と、
前記所定期間の燃焼状態制御が終了した後、前記算出した空燃比の代表値を基に内燃機関への燃料供給量を補正する空燃比補正手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。 - 前記空燃比補正手段は、前記所定期間の燃焼状態制御が終了した後、前記算出した空燃比の代表値を基に目標空燃比を補正する請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 請求項2に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記空燃比補正手段は、前記所定期間の燃焼状態制御が終了する時、前記算出した空燃比の代表値を所定量リッチ側に変更し、該変更した値により目標空燃比を設定する内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項3に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記空燃比の代表値をリッチ側に変更する所定量は、目標空燃比を燃料消費量の最良点に設定するものである内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項2〜4の何れかに記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記空燃比の代表値により補正した目標空燃比に基づき、目標空燃比の基本データを学習するための学習処理を実施する内燃機関の空燃比制御装置。 - 前記代表空燃比算出手段は、前記燃焼状態制御が実施される所定期間において空燃比の積算値を求め、その平均値を空燃比の代表値とする請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 請求項6に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
所望とする空燃比の制御精度に応じて空燃比の平均化の時間を設定する内燃機関の空燃比制御装置。 - 前記代表空燃比算出手段は、前記燃焼状態制御が実施される所定期間において空燃比をなまし演算し、そのなまし値を空燃比の代表値とする請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 実際の燃焼ラフネス値を検出する燃焼状態検出手段を備え、
前記燃焼状態制御手段は、その時々の機関運転状態に応じて燃焼ラフネス値の目標値を設定し、前記検出した実際の燃焼ラフネス値が目標値になるよう内燃機関への燃料供給量を制御する請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項9に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記燃焼状態制御手段は、失火限界近傍のドライバビリティ許容域内にて燃焼ラフネス値の目標値を設定する内燃機関の空燃比制御装置。 - 請求項9又は10に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記燃焼状態検出手段は、内燃機関の1燃焼毎の回転変動量に応じて燃焼ラフネス値を検出する内燃機関の空燃比制御装置。
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