JP4134660B2 - 車両用舵角検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のステアリングホイール等の操舵角や転舵輪の転舵角を検出する車両用舵角検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、舵角センサの中立点を予め設定し、この中立点に前記舵角センサにより検出した回転量を加算して実際の舵角を得る車両用操舵角検出装置がある。このような車両用操舵角検出装置に対応し、車両が直進走行状態になったときに中立点を設定する方法が特許文献1に提案されている。
【0003】
この特許文献1の技術では、車両が直進走行状態にあるか否かの判定として、左右輪の車輪速度差が所定値内にあるか否かを判定し、左右輪の車輪速度差が所定値内にある場合に、相対舵角センサの中立点を設定していた。その一方で、この特許文献1の技術では、車輪加速度が発生している場合に、車両の直進走行状態についての判定を禁止していた。
【0004】
【特許文献1】
特許第2708021号明細書及び図面
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述したような中立点を基準として実際の舵角を得る舵角センサを利用するシステムに、例えば、VDC(Vehicle Dynamics Control)や4WSなどがある。このVDCや4WSでは、車両のイグニッション(IGN)をオンにしてから発進した後、直ぐにそれらのシステムを作動させたい場合もあり、このような場合には、イグニッションをオン後なるべく早くシステムを作動開始できるように相対舵角センサを利用可能な状態、すなわち中立点を設定する必要がある。
【0006】
しかし、前記特許文献1の技術では、前述したように車輪加速度が発生していると直進走行状態の判定を禁止している。よって、直進走行状態の判定を禁止した時点で中立点の設定がなされていない場合には、車輪加速度が発生している期間中、中立点の設定ができないので、舵角センサを利用することができなくなり、その結果、舵角センサを利用するVDC(Vehicle Dynamics Control)や4WSなどが必要なタイミングに作動できなくなってしまうおそれがある。
【0007】
例えば、VDCを直ぐに作動させたい低摩擦係数路面のような場所では、イグニッションのオン後の発進が、加速スリップをしながらの走行になり、すなわち車輪加速度が発生し、これにより直進走行状態の判定が禁止されるため、相対舵角センサの中立点を設定できなくなる。このように、低摩擦係数路面では、イグニッションのオン後にすみやかに舵角センサの中立点を設定できなくなり、車両の挙動が悪化方向に変化しているのにも関わらずVDCを作動させることが不可能になるおそれがある。
【0008】
一方、前述したような車両が同時にTCS(トラクションコントロールシステム)を備えているのであれば、TCSが加速スリップを抑制することで、車輪加速度の発生を防止できれば、直進走行状態の判定を禁止してしまうことを防止できる。そして、この結果、加速スリップが発生した場合でも早期に中立点を設定して、舵角センサを利用するVDCや4WSなどが必要がタイミングに作動させることもできると考えられる。
【0009】
しかし、TCSでは、加速スリップが所定の加速スリップ量を超えてから作動するような構成になっているので、所定の加速スリップ量に達しない加速スリップでは不感帯となる。このようなことから、そのようなTCSの不感帯の領域では、加速スリップを抑制することができないことから、車輪加速度の発生を防止することができなく、これによりやはり直進走行状態の判定を禁止してしまい、舵角センサの中立点を設定できず、結局、舵角センサを利用するVDCや4WSなどが必要がタイミングに作動できなくなってしまうおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みてなされたものであり、舵角センサの中立点を早期に設定することで、舵角センサを利用するシステムが必要なタイミングで作動することを可能にする車両用操舵角検出装置の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前述の問題を解決するために、本発明では、車輪速に基づいて車両直進走行と判断したときに舵角センサの中立点を設定し、この中立点に前記舵角センサにより検出した回転量を加算して絶対的な舵角を得る車両用舵角検出装置において、加速スリップ量が所定値以上になったときに、加速スリップを抑制制御する加速スリップ抑制手段を備え、変更手段により、前記中立点を設定するまでの期間内は前記所定値を小さな値に変更する。
【0012】
加速スリップの作動タイミングのしきい値となる前記所定値を小さくすれば、加速スリップ抑制手段による加速スリップの抑制制御の不感帯を少なくすることができる、すなわち加速スリップの抑制制御を敏感にすることができる。
本発明では、加速スリップの抑制制御の不感帯を少なくすることで、加速スリップ抑制手段による加速スリップの抑制制御を早期に介入させて、その結果として、左右輪の速度差を抑制して車両直進走行の判断を早めることで、舵角センサの中立点の設定の早期実施を実現している。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、早期に舵角センサの中立点の設定を行うことができ、そのような舵角センサを利用するシステムを必要なタイミングで作動させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す概略構成図であって、図中、1FL,1FRは前輪、1RL,1RRは後輪であって、後輪1RL,1RRはエンジン2の駆動力が自動変速機3、プロペラシャフト4、最終減速装置5及び車軸6を介して伝達されて回転駆動される。
【0015】
前輪1FL,1FR及び後輪1RL,1RRには、それぞれ制動力を発生するディスクブレーキ7が設けられていると共に、これらディスクブレーキ7に供給される制動油圧が制動制御装置8によって制御される。
ここで、制動制御装置8は図示しないブレーキペダルの踏込みに応じて制動油圧を発生すると共に、走行状態制御用コントローラ20からの制動圧指令値に応じて制動油圧を発生するように構成されている。
【0016】
また、車両は、前輪1FL,1FR及び後輪1RL,1RRの車輪速度を検出する車輪速度センサ13FL,13FR及び13RL,13RRが配設されていると共に、車両に生じるヨーレイトψを検出するヨーレイトセンサ14、車両に生じる横加速度Gyを検出する横加速度センサ15、ステアリングホイール(図示せず)の操舵角を検出する操舵角センサ16及び制動時のマスタシリンダ圧を検出する制動圧センサ17を備えている。
【0017】
ここで、操舵角センサ16は、図2に示すように、ステアリングホイールSWに連結されたステアリングシャフト16aに固定された大歯車16bと、この大歯車16bに噛合する大歯車16bに対して例えば1/4の歯数に設定された小歯車16cと、この小歯車16cの回転軸に連結されて回転駆動される永久磁石16dと、この永久磁石16dの回りに配設された例えば22.5°の位相差を有する交流電圧信号を発生する2相コイル16e,16fとで構成され、ステアリングシャフト16aが一回転する間に小歯車16cが4回転即ちステアリングシャフトが90°回転する毎に小歯車16cが1回転して、1サイクルの2相交流電圧信号を操舵角検出信号として出力する。
【0018】
そして、車速センサ13FL〜13RR、ヨーレートセンサ14、横加速度センサ15、操舵角センサ16及び制動圧センサ17の各出力信号が走行状態制御用コントローラ20に入力され、この走行状態制御用コントローラ20では、各輪速度センサ13FL〜13RRで検出した車輪速度VwFL〜VwRRに基づいて車体速度Vcを算出する。
【0019】
走行状態制御用コントローラ20は、車両を構成する各部を制御するように構成されている。この走行状態制御用コントローラ20は、メモリ領域20aに各種データやプログラムを記憶している。
この走行状態制御用コントローラ20の処理内容を以下に説明する。図3乃至図6は、その処理手順を示す。例えば、図3乃至図6に示す処理手順は、プログラムとしてメモリ領域20aに記憶されている。
【0020】
先ず、図3に示すステップS1において、TCSスリップ目標値Ttcsを設定する。TCSスリップ目標値Ttcsは、TCSの作動開始タイミングのしきい値である。なお、このTCSスリップ目標値Ttcsの設定手順については後で詳述する。
ここで、車輪の加減速度が発生している場合で、その加減速度の発生が加速スリップによるものである場合には、この加速スリップを抑制するためにTCS(ステップS3)が介入することになる。そして、TCSは、このステップS1の処理で得たTCSスリップ目標値Ttcsをしきい値として、実際の加速スリップ量がこのTCSスリップ目標値Ttcsを超えたときに介入する。
【0021】
なお、TCSは、加速スリップ量が所定値以上になったときに、加速スリップを抑制制御する加速スリップ抑制手段を構成しており、具体的には、ブレーキ制御(制動制御)によりTCSを実現するブレーキTCSでもよく、或いはエンジン制御(出力制御)によりTCSを実現するエンジンTCSでもよく、又はそのようなブレーキTCSとエンジンTCSとの組み合わせにより実現されるものでもよい。
【0022】
ステップS2では中立点設定を行う。中立点設定では、先ず中立点の設定可否の処理を行い、中立点が設定可である場合に実際の中立点の設定を行う。図4は、その処理手順を示す。
先ず、ステップS11において、中立点設定タイミングが否かを判定する。
例えば、中立点設定タイミングが否かの判定として、イグニッション(IGN)がオンされているか否かを判定する。なお、この中立点設定タイミングが否かの判定は、このような条件で行うことに限定されるものではなく、他の条件で行ってもよい。すなわちイグニッションがオンされた後でも、中立点の設定が必要になる場合があり、そのような場合に応じて中立点設定タイミングが否かを判定してもよい。
【0023】
ここで、中立点設定タイミングである場合、ステップS12に進み、中立点設定タイミングでない場合、当該図4に示す処理を終了する。
ステップS12では、左右輪の各車輪速度を読み込み、続く、ステップS13において、それら左右輪の車輪速度の差から車両の直進走行状態を判定する。ここでは、左右輪の車輪速度の差の絶対値が所定値以下が否かを判定する。つまり、左右輪の車輪速度の差の絶対値が所定値以下である場合、車両が直進走行状態にあると判定し、左右輪の車輪速度の差の絶対値が所定値よりも大きい場合、車両が直進走行状態にないと判定する。
【0024】
このステップS12で、左右輪の車輪速度の差の絶対値が所定値以下である場合、ステップS14に進み、左右輪の車輪速度の差の絶対値が所定値よりも大きい場合、当該図4に示す処理を終了する。
ステップS14では中立点設定処理を行う。中立点設定処理は次のようになる。
【0025】
先ず、操舵角センサ16は、ステアリングシャフト16aの回転角を小歯車16cのギヤ回転角φとして得るように構成されており、小歯車16cのギヤ回転角φは、下記(1)式により算出される。
φ=(γ−γ0)+90×i ……(1)
ここで、γは小歯車16cのギヤ角であり、γ0は基準ギヤ角であり、iは現在周期位置である。
【0026】
また、ギヤ角γは小歯車16cそのものの回転角であり、次のようにして得ることができる。
図7は、操舵角センサ15(2相コイル16e,16f)による2相交流電圧信号の出力形態を示す。
前述したように、操舵角センサ15は、前記小歯車16cの回転軸に連結されて回転駆動される永久磁石16dの回りに22.5°の位相差を有する交流電圧信号を発生する2相コイル16e,16fを配置して、ステアリングシャフト16aが一回転する間に小歯車16cが4回転即ちステアリングシャフト16aが90°回転する毎に小歯車16cが1回転して、1サイクルの2相交流電圧信号を出力するようになっている。
【0027】
これにより、ステアリングシャフト16aが一回転すると小歯車16cが4回転し、操舵角センサ15は、図7中(a)に示すように22.5°の位相差を有したままの、4周期の2相交流電圧VO1,VO2を出力する。
このように得られる2相交流電圧VO1,VO2において、第1の交流電圧VO1が“0”で、第2の交流電圧VO2が正のピーク値であるときにギヤ角γは0°になり、交流電圧VO1が“0”で交流電圧VO2が負のピーク値にあるときにギヤ角γは45°になり、この状態から交流電圧VO1が“0”で交流電圧VO2が正のピーク値となるときにギヤ角γは90°になる。
【0028】
このような関係は下記(2)式として示すことができる。
γ=arctan(VO1/VO2) ……(2)
また、現在周期位置iは下記(3)式により算出される。
−45°<(γ−γ0)+90×i<+45° ……(3)
前記(3)式により、ギヤ角γ、基準ギヤ角γ0、及び現在周期位置iとの関係は次のようになる。
【0029】
基準ギヤ角γ0が例えば図7中(b)に示すように45°近傍にある場合には、ギヤ角γが0°〜90°の全ての範囲内で前記(3)式を満足する。また、基準ギヤ角γ0が0°近傍である場合に、ギヤ角γが45°を超える例えば80°であるときには現在周期位置iを“0”とすると、(γ−γ0)+90×iの値が80°となり、前記(3)式を満足しないので、この場合には現在周期位置iは“−1”になる。
【0030】
また、基準ギヤ角γ0が90°近傍の例えば89°である場合に、ギヤ角γが45°未満の例えば10°であるときには現在周期位置iを“0”とすると、(γ−γ0)+90×iの値が−79°となり、前記(3)式を満足することができず、この場合には現在周期位置iは“+1”になる。
このように、基準ギヤ角γ0の属する周期内のギヤ回転角領域を、現在周期位置iを0とおき、この現在周期位置iが0である周期外である周期を、現在周期位置iを1や−1といった値に設定している。
【0031】
前述したように、ステアリングシャフト16aが一回転する間に小歯車16cが4回転するようになっており、これにより、ステアリングシャフト16aが0〜90°回転する場合、ステアリングシャフト16aが90°〜180°回転する場合、ステアリングシャフト16aが180°〜270°回転する場合、ステアリングシャフト16aが270°〜360°回転する場合、これらの各回転角度内では、小歯車16cのギヤ角γは同一値を示すのであり、小歯車16cのギヤ角γだけでは、ステアリングシャフト16aの回転(ギヤ回転角φ)を特定することはできない。このようなことから、回転数を特定するものとして現在周期位置iを設定している。
【0032】
また、基準ギヤ角γ0については、工場出荷時に前輪1FL,1FRを直進走行状態に調整したときのギヤ角γの値にしている。このような基準ギヤ角γ0のデータは前記メモリ領域20aに記憶される。
以上のような関係として小歯車16cのギヤ回転角φを得ており、中立点の設定では、車両が直進走行状態になっているときのギヤ角γの属する周期を現在周期位置iで0に設定し、このときのギヤ角γを基準ギヤ角γ0に設定している。そして、このような設定データを、中立点に関する情報として、メモリ領域20aに記憶している。
【0033】
次に、前記図3のステップS1のTCSスリップ目標値Ttcsの設定手順を説明する。
図5は、TCSスリップ目標値Ttcs設定の処理手順を示す。
先ず、ステップS21において、TCSスリップ目標値Ttcsを算出する。ここでは、TCSスリップ目標値Ttcsを従来の手法により算出する。
【0034】
続くステップS22において、中立点が算出済みであるか否かを判定する。ここで、中立点が算出済みである場合、当該図5に示す処理を終了し、中立点をまだ算出していない場合、ステップS23に進む。
ステップS23では、TCSスリップ低減係数kを算出する。図6を用いて、TCSスリップ低減係数kの算出処理について説明する。
【0035】
TCSスリップ低減係数kの算出処理では、先ず、ステップS31において、第1の係数k1をクリア(初期化)する。
続いて、ステップS32において、ヨーレイトセンサ14からのヨーレイトψを読み込む。そして、続くステップS33において、読み込んだヨーレイトψを用いて、ヨーレイト修正係数k1yを算出する。
【0036】
具体的には、ヨーレイトψが大きくなるほど、その値が小さくなるようなヨーレイト修正係数k1yを得る。例えば、テーブルを用いてヨーレイトψからヨーレイト修正係数k1yを得る。
図8はそのようなテーブルの例を示す。このテーブルは、ヨーレイトψが0のときにヨーレイト修正係数k1yが10となり、ヨーレイトψが0から増加するに従ってヨーレイト修正係数k1yが減少し、ヨーレイトψが所定値Yc以降でヨーレイト修正係数k1yが0となる特性を有している。
【0037】
このようなテーブルに基づいて、ヨーレイトψからヨーレイト修正係数k1yを得る。
続いて、ステップS34において、水平方向の加速度検出手段である横加速度センサ15からの横加速度Gyを読み込む。そして、続くステップS35において、読み込んだ横加速度Gyを用いて、横加速度修正係数k1gを算出する。
【0038】
具体的には、横加速度Gyが大きくなるほど、その値が小さくなるような横加速度修正係数k1gを得る。例えば、テーブルを用いて横加速度Gyから横加速度修正係数k1gを得る。
図9はそのようなテーブルの例を示す。このテーブルは、横加速度Gyが0のときに横加速度修正係数k1gが3となり、横加速度Gyが0から増加するに従って横加速度修正係数k1gが減少し、横加速度Gyが所定値Gc以降で横加速度修正係数k1gが0となる特性を有している。
【0039】
このようなテーブルに基づいて、横加速度Gyから横加速度修正係数k1gを得る。
続いて、ステップS36において、車輪速度センサ13FL,13FR及び13RL,13RRから左右前輪の各車輪速度を読み込み、そして、続くステップS37において、左右前輪の車輪速度センサ13FL,13FRからの各車輪速度を用いて、下記(4)式により左右前輪速度差ΔVwfを算出する。
【0040】
ΔVwf=VwFL−VwFR ……(4)
ここで、VwFLは左前輪の車輪速度であり、VwFRは右前輪の車輪速度である。
そして、ステップS38において、この左右前輪速度差ΔVwfを用いて、左右前輪速度差修正係数k1vfを算出する。
【0041】
具体的には、左右前輪速度差ΔVwfが大きくなるほど、その値が小さくなるような左右前輪速度差修正係数k1vfを得る。例えば、テーブルを用いて左右前輪速度差ΔVwfから左右前輪速度差修正係数k1vfを得る。
図10はそのようなテーブルの例を示す。このテーブルは、左右前輪速度差ΔVwfが0のときに左右前輪速度差修正係数k1vfが6となり、左右前輪速度差ΔVwfが0から増加するに従って左右前輪速度差修正係数k1vfが減少し、左右前輪速度差ΔVwfが所定値Vwfc以降で左右前輪速度差修正係数k1vfが0となる特性を有している。
【0042】
このようなテーブルに基づいて、左右前輪速度差ΔVwfから左右輪速度差修正係数k1vfを得る。
続いて、ステップS39において、前記ステップS37で読み込んだ車輪速度センサ13RL,13RRからの左右後輪の各車輪速度を用いて、下記(5)式により左右後輪速度差ΔVwrを算出する。
【0043】
ΔVwr=VwRL−VwRR ……(5)
ここで、VwRLは左後輪の車輪速度であり、VwRRは右後輪の車輪速度である。
続いて、ステップS40において、この左右後輪速度差ΔVwrを用いて、左右輪速度差修正係数k1vrを算出する。
【0044】
具体的には、左右後輪速度差ΔVwrが大きくなるほど、その値が小さくなるような左右後輪速度差修正係数k1vrを得る。例えば、テーブルを用いて左右後輪速度差ΔVwrから左右後輪速度差修正係数k1vrを得る。
図11はそのようなテーブルの例を示す。このテーブルは、左右後輪速度差ΔVwrが0のときに左右後輪速度差修正係数k1vrが6となり、左右後輪速度差ΔVwrが0から増加するに従って左右後輪速度差修正係数k1vrが減少し、左右後輪速度差ΔVwrが所定値Vwrc以降で左右後輪速度差修正係数k1vrが0となる特性を有している。
【0045】
このようなテーブルに基づいて、左右後輪速度差ΔVwrから左右後輪速度差修正係数k1vrを得る。
続いて、ステップS41において、前述のステップで得た値を用いて下記(6)式により第1の係数k1を算出する。
k1=k1y+k1g+k1vf+k1vr ……(6)
続いて、ステップS42において、第2の係数k2をクリア(初期化)する。
【0046】
続いて、ステップS43において、前述のステップS41で算出した第1の係数k1が10以上(k1≧10)であるか否かを判定する。
なお、後述するが、第1の係数k1は直進走行の可能性を推定する値であり、よって、ステップS43の判定は、第1の係数k1の値により直進走行の可能性を推定している。
【0047】
ここで、第1の係数k1が10以上である場合には直進走行の可能性が高いとして、ステップS44に進み、第1の係数k1が10未満である場合には直進走行の可能性が低いとして、ステップS52に進む。
ステップS44では、TCS作動積算時間Ttcを算出する。TCS作動積算時間Ttcは、TCS作動時間(TCS作動履歴から得た作動時間)を積算した値であり、よって、TCS作動積算時間Ttcが長い場合、TCS作動頻度が多いことを示し、TCS作動積算時間Ttcが短い場合、TCS作動頻度が少ないことを示す。
【0048】
続いて、ステップS45において、前記ステップS44で算出したTCS作動積算時間Ttcを用いて、作動時間修正係数k2tを算出する。
具体的には、TCS作動積算時間Ttcが大きくなるほど、その値が大きくなるような作動時間修正係数k2tを得る。例えば、テーブルを用いてTCS作動積算時間Ttcから作動時間修正係数k2tを得る。
【0049】
図12はそのようなテーブルの例を示す。このテーブルは、TCS作動積算時間Ttcが0から増加するに従って作動時間修正係数k2tも増加し、TCS作動積算時間Ttcが3以降で作動時間修正係数k2tが5となる特性を有している。
このようなテーブルに基づいて、TCS作動積算時間Ttcから作動時間修正係数k2tを得る。
【0050】
続いて、ステップS46において、前後加速度Glを読み込み、続くステップS47において、前後加速度Glを用いて、前後加速度修正係数k2gを算出する。
具体的には、前後加速度Glが大きくなるほど、その値が大きくなるような前後加速度修正係数k2gを得る。例えば、テーブルを用いて前後加速度Glから前後加速度修正係数k2gを得る。
【0051】
図13はそのようなテーブルの例を示す。このテーブルは、前後加速度Glが0から増加するに従って前後加速度修正係数k2gも増加し、前後加速度Glが0.4以降で前後加速度修正係数k2gが5となる特性を有している。
このようなテーブルに基づいて、前後加速度Glから前後加速度修正係数k2gを得る。
【0052】
続いて、ステップS48において、舵角中立点の算出しないで未完了のまま走行している積算時間(以下、中立点算出未完了積算時間という。)を算出し、この中立点算出未完了積算時間を用いて、中立点算出未完了積算時間修正係数k2pを算出する。
具体的には、中立点算出未完了積算時間が長くなるほど、その値が大きくなるような中立点算出未完了積算時間修正係数k2pを得る。例えば、テーブルを用いて中立点算出未完了積算時間から中立点算出未完了積算時間修正係数k2pを得る。
【0053】
図14はそのようなテーブルの例を示す。このテーブルは、中立点算出未完了積算時間が0から増加するに従って中立点算出未完了積算時間修正係数k2pも増加し、中立点算出未完了積算時間が15(分)以降で中立点算出未完了積算時間修正係数k2pが5となる特性を有している。
このようなテーブルに基づいて、中立点算出未完了積算時間から中立点算出未完了積算時間修正係数k2pを得る。
【0054】
続いて、ステップS50において、前述のステップで得た値を用いて下記(7)式により第2の係数k2を算出する。
k2=k2t+k2g+k2p ……(7)
続いて、ステップS51において、前記ステップS41で得た第1の係数k1と前記ステップS50で得た第2の係数k2とに基づいてTCSスリップ低減係数kを算出する。具体的には、下記(8)式に示すように、第1の係数k1と第2の係数k2との加算値として、TCSスリップ低減係数kを得る。
【0055】
k=k1+k2 ……(8)
一方、前記ステップS43で直進走行でないような場合に進むステップS52では、第2の係数を0にして(k2=0)、ステップS51に進む。この場合、ステップS51では、0であるk2を用いて、TCSスリップ低減係数kを得る。
【0056】
以上のような処理手順により、TCSスリップ低減係数kを得て(前記図5のステップS23)、続くステップS24において、このTCSスリップ低減係数kを用いて下記(9)式によりTCSスリップ目標値Ttcsを算出して、当該図5に示す処理を終了する。
Ttcs=Ttcs×(1−k/50) ……(9)
ここで、右辺のTCSスリップ目標値Ttcsは前記ステップS1で得た値である。
【0057】
以上、走行状態制御用コントローラ20の処理手順である。
なお、以上の処理内容において、前記ステップS22、ステップS23(前記図6に示す処理)及びステップS24の処理は、中立点を設定するまでの期間内は所定値を小さな値に変更する変更手段を実現している。
次に動作を説明する。
【0058】
先ず、TCSスリップ目標値Ttcsを算出する(前記ステップS1)。
すなわち、従来の手法によりTCSスリップ目標値Ttcsを算出し(前記ステップS21)、続いて中立点を算出済みであるか否かを確認し(前記ステップS22)、中立点を算出済みである場合、当該TCSスリップ目標値Ttcsの算出処理を終了する。
【0059】
ここで、中立点が算出済みであることによりTCSスリップ目標値Ttcsの算出処理を終了すると、従来の手法により得たTCSスリップ目標値Ttcsが最終的なTCSスリップ目標値Ttcsになる。
一方、中立点が算出済みでない場合、TCSスリップ低減係数kを算出する(前記ステップS23)。
【0060】
TCSスリップ低減係数kの算出では、第1の係数k1をクリアするとともに(前記ステップS31)、ヨーレイトψからヨーレイト修正係数k1yを得て(前記ステップS32及びステップS33)、さらに、横加速度Gyから横加速度修正係数k1gを得て(前記ステップS34及びステップS35)、そして、車輪速度センサ13FL,13FR及び13RL,13RRの各車輪速度から左右前輪速度差修正係数k1vf及び左右後輪速度差修正係数k1vrを得て(前記ステップS36〜ステップS40)、このようにして得たヨーレイト修正係数k1y、横加速度修正係数k1g、左右前輪速度差修正係数k1vf及び左右後輪速度差修正係数k1vrから第1の係数k1を算出する(前記ステップS41)。
【0061】
さらに、第2の係数k2をクリアして(前記ステップS42)、その後、直進走行の可能性を推定する(前記ステップS43)。
直進走行の可能性が高い場合には、TCS作動積算時間Ttcから作動時間修正係数k2tを得て(前記ステップS44及びステップS45)、また、前後加速度Glから前後加速度修正係数k2gを得て(前記ステップS46及びステップS47)、さらに、中立点算出未完了積算時間から中立点算出未完了積算時間修正係数k2pを得て(前記ステップS48及びステップS49)、このようにして得た作動時間修正係数k2t、前後加速度修正係数k2g及び中立点算出未完了積算時間修正係数k2pから第2の係数k2を算出する(前記ステップS50)。
【0062】
一方、直進走行の可能性が低い場合、第2の係数k2を0にする(前記ステップS52)。
そして、第1の係数k1及び第2の係数k2からTCSスリップ低減係数kを算出し(前記ステップS51)、このTCSスリップ低減係数kに基づいて最終的なTCSスリップ目標値Ttcsを得る(前記ステップS24)。
【0063】
TCSでは、このようにして得たTCSスリップ目標値Ttcsを基準に作動する。すなわち、TCSスリップ目標値Ttcsよりもスリップ量が多くなった場合、TCSは作動する。
ここで、TCSの作動タイミングとTCSスリップ低減係数kとの関係について説明する。
【0064】
前述したように、TCSスリップ低減係数kを、第1の係数k1と第2の係数k2との加算値として算出している。
そして、第1の係数k1については、ヨーレイトψから得たヨーレイト修正係数k1y、横加速度Gyから得た横加速度修正係数k1g、輪速度差から得た左右前輪速度差修正係数k1vf及び左右後輪速度差修正係数k1vrの加算値として得ている。
【0065】
ここで、ヨーレイトψが小さい場合にはヨーレイト修正係数k1yは大きな値をとる(例として示す図8のテーブルを参照)。よって、ヨーレイトψが小さい場合には直進走行している可能性が高いといえるので、ヨーレイト修正係数k1yは、その値が大きいほど、直進走行している可能性が高いことを示す。
また、横加速度Gyが小さい場合には横加速度修正係数k1gは大きな値をとる(例として示す図9のテーブルを参照)。よって、横加速度Gyが小さい場合には直進走行している可能性が高いといえるので、横加速度修正係数k1gは、その値が大きいほど、直進走行している可能性が高いことを示す。
【0066】
また、車輪速度差が小さい場合には左右前輪速度差修正係数k1vfや左右後輪速度差修正係数k1vrは大きな値をとる(例として示す図10及び図11のテーブルを参照)。よって、車輪速度差が小さい場合には直進走行している可能性が高いといえるので、左右前輪速度差修正係数k1vfや左右後輪速度差修正係数k1vrは、その値が大きいほど、直進走行している可能性が高いことを示す。
【0067】
このように、ヨーレイト修正係数k1y、横加速度修正係数k1g、左右前輪速度差修正係数k1vf及び左右後輪速度差修正係数k1は直進走行の可能性(直進走行らしさ)を推定する値をなし、よって、このような係数の総和である第1の係数k1は、直進走行の可能性(直進走行らしさ)を総評するものとなり、その値が大きいほど、直進走行の可能性が高いこと(直進走行らしいこと)を示す値となる。
【0068】
なお、第1の係数k1は、そのように直進走行の可能性を示す値であり、このようなことから、この第1の係数k1は、車両の直進走行可能性を検出する直進走行可能性検出手段を実現しているといえる。
一方、第2の係数k2については、TCS作動積算時間Ttcから得た作動時間修正係数k2t、前後加速度Glから得た前後加速度修正係数k2g、及び中立点算出未完了積算時間から得た中立点算出未完了積算時間修正係数k2pの加算値として得ている。
【0069】
ここで、TCS作動積算時間Ttcが長い場合には作動時間修正係数k2tは大きな値をとる(例として示す図12のテーブルを参照)。
例えば、路面が滑りやすいときや運転が荒いときには、TCSの作動頻度は多く、結果として、TCS作動積算時間Ttcが長くなる。このようにTCS作動積算時間Ttcが長くなるのはTCS作動頻度が多い場合であり、このような場合、以後の走行環境でも、TCSの介入の必要性があるといえる。
【0070】
このようなことから、TCS作動積算時間Ttcが長い場合にはTCSを積極的に介入させる必要性が高いことを意味し、これにより、作動時間修正係数k2tは、その大きいほど、TCSを積極的に介入させる必要性が高いことを意味するものとなる。
また、前後加速度Glが大きい場合には前後加速度修正係数k2gは大きな値をとる(例として示す図13のテーブルを参照)。
【0071】
例えば、前後加速度Glが大きい場合には車輪オーバスピンが発生する可能性が高いといえ、この場合、TCSの感度を挙げるなどして、TCSを積極的に介入させる必要性があるといえる。このようなことから、前後加速度修正係数k2gは、その値が大きいほど、TCSを積極的に介入させる必要性が高いことを意味するものとなる。
【0072】
また、中立点算出未完了積算時間が長い場合には中立点算出未完了積算時間修正係数k2pは大きな値をとる(例として示す図14のテーブルを参照)。
例えば、VDCや4WSのシステムは中立点が設定された舵角センサを利用することを前提とするので、中立点が設定されないとそれらシステムが起動できないことになる。そして、中立点が設定されない期間が長ければ、システムを起動させる必要があるのにも関わらず起動できない期間も長くなってしまうこともあり、このようなことから、中立点が設定されない期間が長い場合には、TCSを積極的に介入させる必要性があるといえる。
【0073】
このように、中立点が設定されない期間(中立点算出未完了積算時間)が長いほど、TCSを積極的に介入させる必要性が高いことを意味し、このようなことから、中立点算出未完了積算時間修正係数k2pは、その値が大きいほど、TCSを積極的に介入させる必要性が高いことを意味するものとなる。
このように、作動時間修正係数k2t、前後加速度修正係数k2g及び中立点算出未完了積算時間修正係数k2pはTCSを積極的に介入させる必要性が高いことを示す値をなし、よって、このような係数の総和である第2の係数k2は、TCSを積極的に介入させる必要性を総評するものとなり、その値が大きいほど、TCSを積極的に介入させる必要性が高いことを示す値となる。
【0074】
以上より、第1の係数K1と第2の係数k2との加算値であるTCSスリップ低減係数kは、直進走行の可能性とTCSを積極的に介入させる必要性とを考量した値をなし、直進走行の可能性が高い場合やTCSを積極的に介入させる必要性がある場合には大きい値を示し、直進走行の可能性が低い場合やTCSを積極的に介入させる必要性がない場合には小さい値を示すものとなる。
【0075】
なお、直進走行の可能性が低い場合(k1<10)には、第2の係数k2を0にしており(前記ステップS52)、すなわちTCSを積極的に介入させる必要性は少ないとしており、TCSスリップ低減係数kは第1の係数k1(k1<10)のみを考慮した値となる。また、前述した各係数の算出に前記図8〜図14に示したテーブルを用いた場合には、TCSスリップ低減係数kは最大で40になる。
【0076】
よって、TCSの作動タイミングとTCSスリップ低減係数kとの関係についていうと、前記(9)式から、TCSスリップ低減係数kが大きいほど、すなわち直進走行の可能性が高い場合やTCSを積極的に介入させる必要性がある場合、TCSスリップ目標値Ttcsは小さい値をとるようになり、その結果、少ないスリップ量で介入することになる。すなわち、不感帯が少なくなり、感度が上がり、TCSは介入しやすくなる。これにより、車輪が加速スリップを生じた早い時期からTCSが作動するようになり車輪加減速度を低減することができるようになる。
【0077】
その一方で、中立点の設定では、中立点設定タイミングにあるときに、左右輪の車輪速度に基づいて車両の直進走行状態を判定し(前記ステップS11〜ステップS13)、中立点設定処理を開始する(前記ステップS14)。
中立点設定処理では、小歯車16cのギヤ角γの属する周期を現在周期位置iで0におき、このときのギヤ角γを基準ギヤ角γ0にする。そして、中立点を示す情報である現在周期位置i及び基準ギヤ角γ0をメモリ領域20aに記憶する。
【0078】
このように中立点を設定することで、その後、操舵角センサ16を利用してVDCや4WSを実行することができるようになる。例えば、VDCについていえば、次のように実行することができる。
先ず、走行状態制御用コントローラ20は、メモリ領域20aに記憶した中立点の情報としての現在周期位置i及び基準ギヤ角γ0を読み出し、これら値と、実時間で検出しているギヤ角γに基づいて、前記(1)式の演算を行うことで、ギヤ回転角φを算出し、このギヤ回転角φに0.25を乗算して操舵角δ(=0.25φ)を算出する。そして、算出した操舵角δと、他の必要な情報、すなわちヨーレートψや横加速度Gyに基づいて目標横滑り量を算出し、実際の横滑り量を目標横滑り量に一致させる走行制御を実行する。
【0079】
なお、中立点設定タイミングにない場合(前記ステップS11)や、左右輪の車輪速度の差の絶対値が所定値よりも大きい場合、すなわち車両が直進走行状態にないと判定した場合には(前記ステップS13)、中立点の設定をしないで処理を終了する。この場合には、中立点を設定することができないので、従来と同様に、VDCや4WSを実行することはできない。
【0080】
次に本発明の効果を説明する。
前述したように、中立点をまだ設定していない場合には、TCSスリップ目標値Ttcsを小さな値に変更している。これにより、車輪が加速スリップを生じた早い時期に、TCSを作動させ、通常のTCSの不感帯で生じる加速スリップを抑えることができるようになる。これにより、車輪の加減速度を抑制することができるようになり、左右輪の速度差を抑制して直進走行の判断を早めることがきる。そして、直進走行状態であれば、すみやかに操舵角センサ16の中立点を設定することができるようなる。その結果、操舵角センサ16の利用が前提となるVDCや4WSなどのシステムを必要なタイミングで作動させることができるようになる。
【0081】
また、前述したように、直進走行の可能性が高い場合に第1の係数k1を大きな値にして、結果的に、TCSスリップ目標値Ttcsを小さな値にしている。通常、TCSの作動開始しきい値(TCSスリップ目標値Ttcs)に不感帯があるのは、旋回時の前後輪速差や路面の荒れによる車輪速度のバラツキに対し、不要にTCSが作動してしまうことを防いだり、それによる騒音となる作動音の発生を防止したり、或いは早期作動により加速不足が発生してしまうことを防止するためである。
【0082】
このようなことから、TCSの作動開始しきい値(TCSスリップ目標値Ttcs)を何ら理由なく小さな値に設定してしまうと、旋回時の前後輪速度差や路面の荒れによる車輪速度のバラツキによって、不要にTCSが作動してしまったり、早期作動により加速不足が発生したりしてしまう。
このようなことから、直進走行の可能性が高い場合に、すなわち必要な時のみTCSスリップ目標値Ttcsを小さな値にすることで、直進走行の可能性が高い場合にはTCSが作動しやすくすることで、不要にTCSが作動してしまうことを防止し、直進状態の可能性の大きくないときにTCSが早期に作動してしまうことなどを防止することができる。
【0083】
また、直進走行の可能性が高い場合に、TCSを作動しやすくすることで、より確実に左右輪の動きが一致するようになり、これにより直進走行状態を容易に判定することができるようになる。例えば、氷結路等の低摩擦係数路面では車輪オーバスピンが発生してしまうが、車輪オーバスピンが発生してしまうと、車両がそのような低摩擦係数路面を直進走行しているにも関わらず車輪加速度の発生により直進走行状態の判定を阻害してしまうことになる。このような場合でも、TCSを作動しやすくすることで、車輪オーバスピンの抑えることができるようになり、中立点設定のための直進走行状態の判定を確実に実行できるようになる。この結果、中立点の設定の機会も増えることになる。
【0084】
また、直進走行の可能性が低い場合には、第1の係数k1を小さな値にして、結果的に、TCSスリップ目標値Ttcsが大きくなるようにしている。これにより、直進走行の可能性が低い場合にはTCSが作動しにくくなる。
例えば、直進走行の可能性が低い場合、車両が旋廻中の可能性が高いといえる。よって、直進走行の可能性が低い場合にはTCSが作動しにくくすることで、車両が旋廻中に不要にTCSが作動してしまうことを防止することもできる。
【0085】
また、そのような直進走行状態を横加速度やヨーレートから得ることで、直進走行状態の推定の推定を簡単な構成で実現することができる。
また、前述したように、TCSを積極的に介入させる必要性が高い場合、具体的には、路面が滑りやすい場合や運転が荒い場合、車輪オーバスピンが発生する可能性が高い場合、或いは中立点が設定されない期間が長い場合等に、第2の係数k2を大きな値して、結果的に、TCSスリップ目標値Ttcsを小さな値にしている。この結果、TCSを積極的に介入させる必要性を反映させて、TCSを作動しやすくしている。
【0086】
例えば、TCSが頻繁に作動する運転や、急加速といったような乱暴な運転を行っている場合にはVDCの実施が必要であると考えられるが、このような場面に対応してTCSが作動しやすくなり、中立点設定のための直進走行状態の判定がすみやかに実施されるようになる。そして、中立点を設定することができれば、VDCが作動するようになる。すなわち、VDCの作動の必要性或いはVDCの作動が可能となる中立点の設定の必要性についてTCSの作動頻度等に着目することで、TCSが頻繁に作動する運転や、急加速といったような乱暴な運転を行っている場合などにTCSを作動しやすくして、結果的に、VDCの実施が必要な運転環境であるほど、VDCが作動可能な状態にすみやかに移行できるようにしている。
【0087】
また、中立点が設定されない期間が長い場合にもTCSを作動しやすくすることで、何らかに理由により中立点が定まらないような場合でも、中立点の設定をすみやかにできるようにすることで、VDCの禁止が長期間作動できない不都合を防止することができる。
なお、このような意味で、第2の係数k2は、中立点の設定の必要性或いはVDCの作動の必要性を示す値であり、よって、この第2の係数k2は、前記中立点の早期設定の必要性を検出する中立点設定必要性検出手段、或いは前記車両の走行状態から車両走行制御装置の早期作動の必要性がある場合、その必要性を中立点の早期設定の必要性として検出する中立点設定必要性検出手段を実現しているといえる。ここで、VDCは、車両の走行状態に応じて車両の挙動を制御する車両走行制御装置を構成している。
【0088】
また、直進走行状態である可能性が高く、さらにTCSを積極的に介入させる必要性が高いときには、TCSスリップ目標値Ttcsはより小さな値になる。すなわち、直進走行状態である可能性及び中立点の早期設定の必要性を加味してTCSスリップ目標値Ttcsを小さな値にしている。これにより、TCSがさらに作動しやすくなる。
【0089】
また、前述したように、直進走行の可能性が低い場合(k1<10)には、第2の係数k2を0にしており、すなわちTCSを積極的に介入させる必要性は少ないとしており、TCSスリップ低減係数kを第1の係数k1(k1<10)のみを考慮した値にしている。つまり、たとえTCSの積極介入の必要性がある場合でも、車両が旋廻状態にあると推定されるような場合には、第2の係数k2によるTCSスリップ低減係数kの低減を行わないようにしている。
【0090】
TCSでは車両が旋廻状態にあるときには中立点の設定ができないので、TCSの感度をむやみに上げても効果は薄い。このようなことから、直進走行状態にあることが推定できる場合にのみ、TCSスリップ低減係数kに第2の係数k2を加算、すなわちTCSの積極介入の必要性を反映することで、TCSの不要な作動を減らしている。
【0091】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施の形態として実現されることに限定されるものではない。
すなわち、前述の実施の形態では、中立点の設定処理或いは算出手順を具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、他の設定処理或いは算出手順により、中立点を設定或いは算出するようにしてもよい。
【0092】
また、前述の実施の形態では、操舵角センサを具体的に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち例えば、小歯車16cの回転角を2相交流を出力する交流発電機構成で検出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、エンコーダで22.5°位相が異なる2相パルス信号を出力するようにしてもよい。さらに、大歯車16bと小歯車16cとの歯数比は4:1に限らず2:1、3:1等の任意の歯数比に設定することがてきる。さらに、操舵角センサ16が大歯車16bに噛合する小歯車16cの回転角から操舵角を検出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ステアリングシャフトの回転角を直接エンコーダで検出する場合には、現在周期位置iを設定する必要はなく、直進走行状態を判断したときに、そのときの回転角を直接操舵中立点として設定すればよい。
【0093】
また、前述の実施の形態では、車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサに本発明を適用した場合を説明したが、これに限定されるものではなく、他のセンサ、例えば転舵輪の転舵角を検出する転舵角センサに本発明を適用することもできる。
また、前述の実施の形態では、加速スリップの抑制制御としてのTCSの過去の作動量として、TCS作動積算時間Ttcといったよう作動時間を挙げているが、これに限定されるものではない。例えば、作動量が、作動回数、TCSの制御量であってもよい。
【0094】
さらに、そのような作動量を検出するための過去の期間については、一定期間であってもよい。例えば、イグニッションがオンになってから現時点までの作動量を検出するといったようにである。また、車両購入時から現時点までの作動量を検出するようにしてもよい。この場合、例えば車両の所有者の運転の荒さなどの癖を作動量に反映させることができるようになる。
【0095】
また、前述の実施の形態では、操舵角センサを利用するシステムとしてVDCや4WSを挙げて説明したが、このようなシステムに限定されるものではない。また、前述の実施の形態では、エンジン2を搭載した車両について説明したが、これに限定されるものではなく、エンジン2と電動機とを搭載したハイブリッド車両や、電気自動車にも本発明を適用することができ、また自動変速機3を搭載した車両に限らず手動変速機を搭載した車両においても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の車両の構成を示す概略構成図である。
【図2】前記車両が搭載する操舵角センサの具体例を示す説明図である。
【図3】前記車両の走行状態制御用コントローラによる処理内容であって、TCSスリップ目標値Ttcsの設定と中立点の設定との処理手順を示すフローチャートである。
【図4】中立点の設定の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】TCSスリップ目標値Ttcsの設定の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】TCSスリップ低減係数kの設定の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】前記操舵角センサの出力信号からギヤ回転角φを求めるときの手順の説明に使用した図である。
【図8】ヨーレイトψからヨーレイト修正係数k1yを得るためのテーブルを示す図である。
【図9】横加速度Gyから横加速度修正係数k1gを得るためのテーブルを示す図である。
【図10】左右前輪速度差ΔVwfから左右前輪速度差修正係数k1vfを得るためのテーブルを示す図である。
【図11】左右後輪速度差ΔVwrから左右後輪速度差修正係数k1vrを得るためのテーブルを示す図である。
【図12】TCS作動積算時間Ttcから作動時間修正係数k2tを得るためのテーブルを示す図である。
【図13】前後加速度Glから前後加速度修正係数k2gを得るためのテーブルを示す図である。
【図14】中立点算出未完了積算時間から中立点算出未完了積算時間修正係数k2pを得るためのテーブルを示す図である。
【符号の説明】
1FL,1FR 前輪
1RL,1RR 後輪
2 エンジン
3 自動変速機
7 ディスクブレーキ
8 制動制御装置
13FL〜13RR 車輪速度センサ
14 ヨーレートセンサ
15 横加速度センサ
16 操舵角センサ
16a ステアリングシャフト
16b 大歯車
16c 小歯車
16d 永久磁石
16e,16f 2相コイル
20 走行状態制御用コントローラ
Claims (11)
- 車輪速に基づいて車両直進走行と判断したときに舵角センサの中立点を設定し、この中立点に前記舵角センサにより検出した回転量を加算して絶対的な舵角を得る車両用舵角検出装置において、
加速スリップ量が所定値以上になったときに、加速スリップを抑制制御する加速スリップ抑制手段と、
前記中立点を設定するまでの期間内は前記所定値を小さな値に変更する変更手段と、
を備えたことを特徴とする車両用舵角検出装置。 - 車輪速以外の情報に基づいて車両の直進走行可能性を検出する直進走行可能性検出手段を備え、
前記変更手段は、前記直進走行可能性検出手段が検出した車両の直進走行可能性が高いときに、前記所定値を小さな値に変更することを特徴とする請求項1記載の車両用舵角検出装置。 - 前記直進走行可能性検出手段は、横加速度が小さいほど前記直進走行可能性が高いと検出することを特徴とする請求項2記載の車両用舵角検出装置。
- 前記直進走行可能性検出手段は、ヨーレートが小さいほど前記直進走行可能性が高いと検出することを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用舵角検出装置。
- 前記中立点の早期設定の必要性を検出する中立点設定必要性検出手段を備え、
前記変更手段は、前記中立点設定必要性検出手段が検出した前記中立点の早期設定の必要性が大きいときに、前記所定値を小さな値に変更することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用舵角検出装置。 - 前記中立点の早期設定の必要性を検出する中立点設定必要性検出手段を備え、
前記変更手段は、前記直進走行可能性検出手段が車両の直進走行可能性が高いことを検出し、且つ前記中立点設定必要性検出手段が前記中立点の早期設定の必要性を検出した場合、前記所定値を小さな値に変更することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の車両用舵角検出装置。 - 前記変更手段は、車両の直進走行可能性及び前記中立点の早期設定の必要性を加味して前記所定値を小さな値に変更することを特徴とする請求項6記載の車両用舵角検出装置。
- 車両の走行状態に応じて車両の挙動を制御する車両走行制御装置を車両が搭載し、前記車両走行制御装置は前記中立点に基づいて作動するものであり、
前記中立点設定必要性検出手段は、前記車両走行制御装置の早期作動の必要性がある場合、その必要性を前記中立点の早期設定の必要性として検出することを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の車両用舵角検出装置。 - 前記中立点設定必要性検出手段は、前記加速スリップの抑制制御の過去の作動量に応じて、前記中立点の早期設定の必要性を検出することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の車両用舵角検出装置。
- 車両の水平方向の加速度を検出する加速度検出手段を備え、
前記中立点設定必要性検出手段は、前記加速度検出手段が検出した前記加速度に応じて、前記中立点の早期設定の必要性を検出することを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の車両用舵角検出装置。 - 前記中立点設定必要性検出手段は、前記中立点が未設定の期間の長さに応じて、前記中立点の早期設定の必要性を検出することを特徴とする請求項5乃至10のいずれかに記載の車両用舵角検出装置。
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