JP4134610B2 - 車線逸脱防止方法、及び車線逸脱防止装置 - Google Patents

車線逸脱防止方法、及び車線逸脱防止装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行中の自車両が走行車線から逸脱しそうになったときに、その逸脱を回避する方向に自車両を制御する車線逸脱防止方法及び車線逸脱防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の車線逸脱防止装置としては、例えば特開平10−157645号公報に記載されているものがある。
この装置では、前輪の操舵制御量が所定値を越えるのを防止しつつ、逸脱しそうな自車両を走行車線上の目標位置まで移動するのに必要な前輪操舵制御量と後輪操舵制御量とを算出し、当該算出した制御量となるように前輪及び後輪の操舵を制御する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の車線逸脱防止装置の場合には、運転者の許容できる前輪操舵角以上の操舵角が逸脱回避に必要な場合には、後輪操舵の操舵方向を前輪に対し逆位相としての車両の回頭性を高めることが可能となるものの、車線逸脱回避の際の車両の進行方向が、走行車線の中央ではなく、走行車線の逸脱を防止する側と反対側の走路区分線(白線など)側に向かっているという違和感を運転者に与えるおそれがあるといった問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、車線の逸脱を防止する側と反対側に向けて自車両が向かっているという違和感を与えることなく車線逸脱を防止可能な車線逸脱防止方法及び車線逸脱防止装置装置を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、自車両が走行車線から逸脱する可能性があると判定すると、自車両の進行方向が目標進行方向と平行となるまで若しくは上記自車両の進行方向と上記目標進行方向との交角が所定角度以下となるまで、前輪操舵と後輪操舵の操舵方向を逆相で走行した後に、走行車線内の自車両の道幅方向位置と走行車線内の目標点の道幅方向位置との偏差が小さくなるように、前輪操舵と後輪操舵の操舵方向を同相で走行することを特徴とする。
【0006】
【発明の効果】
本発明によれば、自車両の車線逸脱を防止する際に、後輪操舵と前輪操舵の操舵方向を逆位相とする時間を自車両の進行方向が目標進行方向若しくはその近傍の方向に向くまでに制限することで、運転者に、車線の逸脱を防止する側と反対側へ自車両が向かっているという違和感を与えることが防止可能となる。
【0007】
さらに、自車両の進行方向が目標進行方向に一致若しくは近づいた後、自車両が走行中の車線内の道幅方向の位置が目標点の道幅方向の位置に近づくように、後輪操舵と前輪操舵の操舵方向を同一位相とすることで、自車両を確実に目標点に一致若しくは近づけることが可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る車線逸脱防止装置を説明するための構成図である。また、図2〜図4は、各走行車線における車両23が逸脱する状態を示した図である。
本実施形態では、前輪1の操舵が前輪操舵アクチュエータ2によって駆動制御可能となっていると共に後輪3の操舵が後輪操舵アクチュエータ4によって駆動制御可能となっていて、前後輪1,3が独立して操舵可能な車両23を例にして説明する。ここで各車輪1,3を所定の操舵角に転舵させる操舵アクチュエータ2,4は、例えば電動モータやステアリングギヤなどから構成される装置構成など、周知の装置構成を採用することができる。
【0009】
前輪操舵アクチュエータ2は、車線逸脱回避の制御中では、逸脱回避コントローラ5から前輪操舵角指令値が入力され、また、非車線逸脱回避制御状態では、運転者が操作するステアリングホイール(不図示)の転舵角に応じた前輪操舵角指令値が入力され、入力された前輪操舵角指令値に応じた操舵角となるように、前輪1の操舵を調整する。
【0010】
また、後輪操舵アクチュエータ4は、逸脱回避コントローラ5からの後輪操舵角指令値に応じた操舵角となるように後輪3の操舵を調整する。
また、車両23には、車両23の前方の走路を撮像して、白線などからなる走路区分線20,21を検出したり、走行車線22内の自車両23の位置を検出するための外界認識手段として、CCDカメラ6及び画像処理部5Aを備えている。このCCDカメラ6及び画像処理部5Aは、走行状態検出手段を構成する。また、画像処理部5Aは、後述の逸脱回避コントローラ5の一部を構成する。
【0011】
画像処理部5Aでは、CCDカメラ6で捉えた自車両23前方の撮像画像から、例えば白線等の走路区分線20,21を検出して走行車線22を検出すると共に、その走行車線22に対する自車両23の進行方向VLの向きθV(ヨー角)、自車両23の走行車線22での横位置(道幅方向の位置)、走行車線22の曲率、走行車線22の幅等を算出することができるように構成されている。
【0012】
符号7は、ウインカSWであって、運転者によるウインカの操作、つまり運転者の車線変更の意思の有無を検出し、その検出信号を逸脱回避コントローラ5に出力する。
符号8は、舵角センサであって、前輪1の操舵角を検出して、逸脱回避コントローラ5に出力する。
【0013】
符号9は、車速センサであって、車両23の走行速度を検出して、逸脱回避コントローラ5に出力する。
また、符号10は、警報ブザーや警報ランプなどからなる、車線逸脱を運転者に通報する逸脱通報部であって、逸脱回避コントローラ5から警報信号を入力すると、音や光などによって車線逸脱の可能性がある旨を運転者に通報する。
【0014】
上記逸脱回避コントローラ5は、上記画像処理部5A、逸脱判定部5B、目標設定部5C、及び操舵制御部5Dを備える。
画像処理部5Aは、上述のように、定期的にCCDカメラ6が撮像した画像を入力し、入力した画像について画像処理を行うことで、走路区分線20,21及び、自車両23の位置を検出して、逸脱判定部5B及び操舵制御部5Dに出力する。
【0015】
自車両23の位置検出は、例えば、得られた走路区分線20,21の位置座標を画像→走路座標変換することで、実際の走路区分線20,21の車両23に対する位置座標を算出する。算出された実際の走路区分線20,21の位置座標を補間することで、自車両23の位置での走路区分線20,21の位置座標を求め、その位置座標が自車両23の横位置LV(近い側の走路区分線20との距離)となる。また、算出された実際の走路区分線20,21の位置座標の傾きから自車両23の進行方向VLの向き(走行車線22に対する自車両23のヨー角)θVを求める。
【0016】
また、逸脱判定部5Bは、逸脱判定手段を構成し、画像処理部5Aから走路区分線20,21などの情報を入力するたびに、図5に示す様な処理を実行する。すなわち、まず、ステップS90にて、逸脱フラグE−FLGに基づき、逸脱回避の処理中か否かを判定し、逸脱フラグE−FLGがONつまり逸脱回避の処理中と判定した場合には、処理を終了して復帰する。一方、逸脱フラグE−FLGがOFFの場合には、ステップS100に移行する。
【0017】
ステップS100では、上記画像処理部5Aが求めた走路区分線20,21及び、自車両23の位置、車速センサ9からの走行速度などの自車両23の走行状態の情報に基づき、現在の走行状態で車線逸脱の可能性があるか否かを判定し、車線逸脱の可能性が無いと判定した場合には、処理を終了して復帰する。一方、車線逸脱の可能性があると判定した場合には、ステップS110に移行する。
【0018】
車線逸脱の可能性の判定は、例えば、自車両23の横位置LVが設定閾値δLVよりも小さいか否かで判定する。設定閾値δLVは、例えば、TTLCが0.5秒程度の距離とする。なお、TTLCとは、TIME TO LINE CROSSINGの略で走路区分線20,21を逸脱する時間である。もちろん、車線逸脱の可能性を自車両23の進行方向VLの向き(ヨー角)θVや走行速度等を加味して判定しても良い。
【0019】
ステップS110では、ウインカSWからの信号に基づき、ウインカの有無を判定し、ウインカが出ている場合には、車線逸脱の処理が不要と判定し処理を終了して復帰する。一方、ウインカが出ていない場合には、車線逸脱の可能性があると判定してステップS120に移行する。
ステップS120では、警報ブザー等の逸脱通報部10に対して、警報信号を出力し、ステップS130にて、逸脱フラグE−FLGをONにし、続けてステップS140にて目標設定部5Cに作動信号を出力した後、処理を終了する。なお、逸脱フラグE−FLGの初期値はOFFである。
【0020】
目標設定部5Cでは、運転者が運転時に目標としていると推定される前方走路位置及び目標の進路方向(目標点MP及び目標点MPにおける目標進行方向ML)を算出した後に、操舵制御部5Dに作動信号を出力する。
ここで、上記目標の進路方向は、例えば、運転者は2秒前方の走路を目標にして走行していると仮定すると、自車両23の走行速度から、2秒前方の距離Lmを算出し、距離Lmだけ前方の走行車線22位置における走路区分線20,21の方向(走行車線方向)を目標進行方向MLの向きθTとする。また、目標点MPの位置LTは、距離Lmにおける検出した走路区分線20,21の位置座標に想定道幅の半分を加えた値、つまり距離Lmだけ前方の走行車線22位置における道幅中央位置(車線中央位置)とする。
【0021】
操舵制御部5Dは、操舵制御手段を構成し、図6に示すように、進行方向制御部5Da、横方向制御部5Db、及び回避終了処理部5Dcを備えて、進行方向制御部5Da→横方向制御部5Db→回避終了処理部5Dcの順に処理を行う。
進行方向制御部5Daは、目標設定部5Cから作動信号を入力すると、図7に示すような処理を行う。
【0022】
すなわち、まず、ステップS200にて、目標進行方向MLと自車両23の進行方向VLとの偏差Δθを求める。このΔθは、(目標進行方向MLの向きθT)−(自車両23の進行方向VLの向きθV)であって、目標進行方向MLと自車両23の進行方向VLとの交角に相当する値である。なお、上記向きθT及びθVは、同一の基準方向に対する傾きで示されており、図2〜図4では、自車両23の位置における走行車線方向(自車両位置における走路区分線の接線方向)を基準方向としたもので、図2では、θT=0となる。
【0023】
続けてステップS210にて、偏差Δθが設定値以下δθか否かを判定する。設定値δθ以下と判定した場合には、処理を終了して復帰する。一方、設定値δθより大きい場合には、ステップS220に移行する。上記設定値δθとは、例えば5度である。
ステップS220では、上記偏差Δθを小さくする方向(車線逸脱を回避する方向)への前輪操舵角及び後輪操舵角を求め、続けてステップS230にて、求めた前輪操舵角及び後輪操舵角に対応する前輪操舵角指令値及び後輪操舵角指令値を、それぞれ前輪操舵アクチュエータ2及び後輪操舵アクチュエータ4に出力して、ステップS240に移行する。ここで、上記前輪1の操舵と後輪3の操舵とが逆位相となるように各操舵角を算出する。
【0024】
上記操舵角の算出は、例えば、想定される偏差Δθに応じた、前輪1と後輪3が逆位相となるような操舵の出力パターンをマップ等の形式で予め記憶しておき、算出された偏差Δθ及び上記出力パターンから各操舵角を算出する。
ステップS240では、画像処理部5Aからの情報に基づき現在の自車両23の進行方向VLの向き(ヨー角)θVを求め、ステップS200に移行する。なお、ステップS230で、改めて現在の自車両23の進行方向VLの向き(ヨー角)θVを求めることなく、走行速度などから上記偏差Δθが所定値δθ以下となる走行時間を推定し、当該走行時間だけ経過したら、上記偏差Δθが所定値δθ以下となったと判定して、進行方向制御部5Daの処理を終了するようにしても良い。
【0025】
次に、横方向制御部5Dbでは、図8に示すような処理を行う。
すなわち、まず、ステップS300にて、画像処理部5Aからの情報に基づき走行車線22内における自車両23の横方向位置(道幅方向位置)LVを求めステップS310に移行する。
ステップS310では、自車両23の横方向位置LVと目標点MPの横方向位置LTとの偏差LDを算出してステップS320に移行する。
【0026】
ステップS320では、偏差LDが設定値δD以下か否かを判定し、設定値δLD以下であれば、処理を終了して復帰する。一方設定値δLDよりも大きい場合には、ステップS330に移行する。上記設定値δLDは例えば20cmである。
ステップS330では、上記偏差LDを小さくする、前輪操舵角及び後輪操舵角を求め、続けてステップS340にて、求めた前輪操舵角及び後輪操舵角に対応する前輪操舵角指令値及び後輪操舵角指令値を、それぞれ前輪操舵アクチュエータ2及び後輪操舵アクチュエータ4に出力して、ステップS300に移行する。ここで、上記前輪1及び後輪3が同位相となるように操舵角を算出する。
【0027】
上記操舵角の算出は、例えば、想定されるLDに応じた前輪1と後輪3が同位相となるような操舵の出力パターンを予め記憶しておき、算出されたLD及び上記出力パターンから算出する。
また、回避終了処理部5Dcでは、車線逸脱回避の終了として、逸脱フラグE−FLGをOFFにすると共に、後輪操舵アクチュエータ4に操舵角がゼロとなる後輪操舵角指令値を出力した後に処理を終了する。なお、自車両23の道幅方向の位置が目標点MPの道幅方向の位置に近づくにつれて、後輪操舵角は小さくなると想定されるので、上記後輪操舵角をゼロに復帰する処理は必ずしも必要ではない。
【0028】
ここで、走路区分線20,21の検出方法の例について、図9を参照しつつ補足説明する。
まず、ステップS400で、検出された白線等の走路区分線20,21の位置のX座標値x及びY座標値yに初期値を入力する。
初期値の決定方法は、カメラ6と走路のパラメータが図10の場合(走路形状が直線で道幅がMW(例えば3.6m)、カメラ6位置が走路の中央でカメラ6の向きが走路と平行でカメラ6高さH(例えば1.25m)、ウインドウの設定位置をカメラ6から前方L(例えば10m)に左1個所に設定するとすると、
左のLのウインドウ座標のX座標は、x=−f×(MW/2)/L1
Y座標は、y=−f×(H/2)/L1
となる。なお、XY座標の原点は画像中央である。
【0029】
また、走路区分線20,21が検出できていない状態を示すフラグfNGに0を代入する。
ステップS410では、上記座標xとyを使って走路区分線20,21検出ウインドウ位置を設定する。ウインドウの幅WW(例えば20画素)、ウインドウの高さWH(例えば10画素)とすると、ウインドウの位置は、図11に示すように設定される。
【0030】
ステップS420では、ステップS410で設定したウインドウ内のエッジを検出するために、Sobel演算子での縦エッジ検出を行う。
ステップS430では、ステップS420で検出した縦エッジ画像に対して、ハフ変換を行う。ハフ変換とは、XY座標のエッジ点を、曲座標系ρθ座標の線分に変換する処理であり、全エッジ点を変換した後のρθ座標での最大値をとる[ρ、θ]がウインドウ内の曲座標直線式を示す。また、最大値max−hが検出した直線に乗っているエッジ点数を示す(図12参照)。
【0031】
ステップS440では、検出されたmax−hが予め設定してある閾値THOより大きい場合、検出した直線が道路の走路区分線20,21を示していると判断する。THOの決め方としては、直線がY座標に平行な場合が直線に乗るエッジ数が一番少なくWHであるため、WHの何割か(例えば5割)の値をTHOとして置く。
max−hがTHOよりも大きい場合、ステップS450に移行する。小さい場合はステップS460に移行する。
【0032】
ステップS450では、ステップS430で算出された曲座標の直線式から、ウインドウ内での走路区分線20,21位置を算出する。
走路区分線20,21の関数をy=a×x+bとすると、
a=θ−π、b=ρ×cos(a)
となる。
上記式で、y=Yの場合のx座標値をx−STとし、
上記式で、y=Y+WHの場合のx座標値をx−EDとし、
走路区分線20,21の位置座標1(x−ST、Y)、走路区分線20,21の位置座標2(x−ED、Y+20)として記憶する。
【0033】
ステップS460では、走路区分線20,21が検出できていない状態を示すフラグfNGに1を代入する。
次に、上記車線逸脱防止装置を備えた車両23の動作や効果などについて説明する。
自車両23が何らかの理由で一方の走路区分線20に寄りすぎて、自車両23が一方の走路区分線20側に車線逸脱の可能性があると判定すると、上記一方の走路区分線20から離れる方向に自車両23の進行方向VLが向くように前後輪1,3の操舵方向を制御する。このとき、前後輪1,3の操舵方向を逆相とすることで車両23の回頭性を高めている。さらに、後輪操舵と前輪操舵の操舵方向を逆位相に制御する時間を自車両23の進行方向VLが目標進行方向ML(本実施形態では目標点MP位置における走行車線22の方向(走路区分線20,21と平行な方向))に一致するまでに制限することで、走行車線22の中央ではなく、上記一方の走路区分線20とは反対側の走路区分線21に自車両23が向かっているという違和感を運転者に与えることが防止される。
【0034】
さらに、自車両23の進行方向VLが目標進行方向MLに一致、若しくはも目標進行方向MLに近づいた後、自車両23の走行車線22内の道幅方向の位置が目標点MPの道幅方向の位置(本実施形態では道幅方向中央位置)に一致若しくは近づくまでは、後輪操舵と前輪操舵の操舵方向を同一位相とすることで、自車両23を確実に走行車線22の中央付近に戻すことが可能となる。
【0035】
ここで、現在の走行車線22がカーブ状の場合に、図3に示すように、自車両23がカーブ外側に車線逸脱しそうになった場合には、逸脱防止制御の際に、自車両23の進行方向VLが、たとえ走行車線22の方向によりもカーブ内側に向くように制御されても、逸脱防止制御終了後の車両23の向きが、走行車線22の方向に近いので、運転者に与える上述の違和感はさほど大きくない。
【0036】
しかしながら、図4に示すように、カーブ内側に車線逸脱しそうになった場合には、逸脱防止制御の際に、自車両23の進行方向VLが、走行車線22の方向によりもカーブ外側に向くように制御すると、逸脱防止制御終了後の車両23の好ましい向き(走行車線22に沿った方向)とは反対側となるので、運転者に大きな違和感を与えることとなる。この点、本実施形態では、車両23前方の目標点MPにおける走行車線22の方向に向くように制御することで上記のような違和感を運転者に与えることがないと共に、車両23の進行方向VLが走行車線22の方向に近い状態で、逸脱回避の制御を終了させることができる。
【0037】
このような点から、現在の走行車線22がカーブ状の場合であって、車線逸脱方向がカーブ内側の場合にのみ、上記逸脱回避制御を行い、その他の場合には、従来例のような他の公知の逸脱回避制御を採用しても良い。
また、本実施形態では、自車両23の進行方向VLが目標進行方向MLに一致、若しくはも目標進行方向MLに近づいた後に、後輪操舵と前輪操舵の操舵方向を同一位相とすることで、自車両23が走行中の車線内の道幅方向の位置が目標点MPの道幅方向の位置(本実施形態では道幅方向中央位置)に一致若しくは近づくにつれて、少なくとも後輪3の操舵角はゼロに近づくので、必ずしも、逸脱防止制御が終了したときに、別途、後輪操舵角をゼロに復帰させる必要はない。
【0038】
ここで、上記実施形態では、目標進行方向MLを、目標点MPにおける走行車線22の方向(目標点MP位置での走路区分に対する接線方向)としているが、これに限定されない。例えば、上記目標進行方向MLを、目標点MPにおける走行車線22の方向から、自車両23の逸脱方向とは反対側に少しだけ傾けた方向などに設定しても良い。
【0039】
また、本実施形態では、目標点MPの走行車線22内における道幅位置を走行車線22中央位置となる場合で例示しているが、これに限定されない。例えば、走行車線22中央位置よりも車線逸脱側に若干オフセットさせて設定しても良い。
また、目標点MPの位置を、運転者が運転時に目標としていると推定される前方走路位置としているが、これに限定されない。たとえば、逸脱回避制御に通常掛かる時間だけ前方の走路位置に設定しても良い。
【0040】
また、本実施形態では、逸脱回避の制御の際に前後輪1,3の両方の操舵を自動制御、つまり、前輪操舵も自動制御されるため、運転者のハンドル操作による操舵量が不充分であったり、遅れても安定した車線逸脱防止制御ができる。
もっとも、逸脱回避コントローラ5で、後輪3の操舵制御だけを行い、前輪1の操舵は運転者のハンドル操作で行うようにしても良い。この場合には、車線逸脱の可能性があることが警報ブザーなどの逸脱通報部10で運転者に通報すると、運転者は、接近した走路区分線20から離れる方向にハンドル操作を行うことを想定し、当該前輪1の操舵角を舵角センサで検出し、上記ステップS220において、現在の前輪操舵角及び偏差Δθに基づき後輪3の操舵角量(逆相)を演算する。また、ステップS320においても現在の前輪操舵角及び偏差LDに基づき後輪3の操舵角量(同相)を演算する。
【0041】
なお、上記車線逸脱するおそれある旨の通報後に運転者がウインカを出すことを想定し、通報後にもウインカSW7がONに切り替わったら上記逸脱回避の制御をしない若しくは中止するようにしても良い。
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記第1実施形態と同様な部品については、同一の符号を使用し説明を省略する。
【0042】
本実施形態の基本構成は、上記第1実施形態と同様である。ただし、逸脱回避コントローラ5の構成ブロックのうち、目標設定部5C及び操舵制御部5Dの処理の一部が異なる。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
本実施形態の目標設定部5Cでは、運転者が運転時に目標としている目標点MPの設定だけを行う。本実施形態では、走行車線22の道幅方向中央位置(車線中央位置)と固定的に予め設定する。なお、本実施形態の目標点MPは、走行車線22の道幅方向での相対位置だけの情報でも良いし、運転者が運転時に目標としていると推定される前方位置の走行車線22における目標点MPでも良い。
【0043】
次に、本実施形態の操舵制御部5Dの処理について説明する。
本操舵制御部5Dは、進行方向変更制御部5Dd、横方向制御部5Db、及び回避終了処理部5Dcを備えて、進行方向変更制御部→横方向制御部5Db→回避終了処理部5Dcの順に処理を行う。上記横方向制御部5Db、及び回避終了処理部5Dcの処理は、上記第1実施形態で説明した処理と同様である。
【0044】
進行方向変更制御部5Ddは、図13に示すような処理を行う。
すなわち、まず、ステップS500にて、現在の自車両23の位置における走行車線22の方向(自車両23の横位置における当該自車両23に近い側の走路区分線20の接線方向:これを、以下の説明では、現行目標方向θSと呼ぶ)を算出して、ステップS510に移行する。
【0045】
ステップS510では、現行目標方向θSと自車両23の進行方向VLとの偏差Δθ(現行目標方向θSと進行方向LVとの交角、−θVに相当)を求め、続けてステップS520にて、偏差Δθが設定値δθ以下か否かを判定する。設定値δθ以下と判定した場合には、処理を終了して復帰する。一方、設定値δθより大きい場合には、ステップS530に移行する。
【0046】
ステップS530では、上記偏差Δθを小さくする方向(車線逸脱を回避する方向)への前輪操舵角及び後輪操舵角を求め、続けてステップS540にて、求めた前輪操舵角及び後輪操舵角に対応する前輪操舵角指令値及び後輪操舵角指令値を、それぞれ前輪操舵アクチュエータ2及び後輪操舵アクチュエータ4に出力して、ステップS550に移行する。ここで、上記前輪1の操舵と後輪3の操舵とが逆位相となるように各操舵角を算出する。
【0047】
上記操舵角の算出は、例えば、想定される偏差Δθに応じた、前輪1と後輪3が逆位相となるような操舵の出力パターンをマップ等の形式で予め記憶しておき、算出された偏差Δθ及び上記出力パターンから各操舵角を算出する。
ステップS550では、画像処理部5Aからの情報に基づき現在の自車両23の進行方向VLの向き(ヨー角)θVを求め、ステップS500に移行する。なお、ステップS550で、改めて現在の自車両23の進行方向VLの向きθVを求めることなく、走行速度などから上記偏差Δθが設定値δθ以下となる走行時間を推定し、当該走行時間だけ経過したら、上記偏差Δθが設定値δθ以下となったと判定して、進行方向制御部5Daの処理を終了するようにしても良い。
【0048】
次に、上記車線逸脱防止装置を備えた車両23の動作や効果などについて説明する。
図14のように、自車両23が何らかの理由で一方の走路区分線20に寄りすぎて、自車両23が一方の走路区分線20側に車線逸脱の可能性があると判定すると、まず、上記一方の走路区分線20の延在方向に自車両23の進行方向VLが向くように前後輪1,3の操舵方向を制御する。このとき、前後輪1,3の操舵方向を逆相に制御することで車両23の回頭性を高めている。さらに、後輪操舵と前輪操舵の操舵方向を逆位相とする時間を自車両23の進行方向VLが走行車線22の方向に一致するまでに制限することで、上記一方の走路区分線20とは反対側の走路区分線21に自車両23が向かっているという違和感を運転者に与えることが防止される。
【0049】
さらに、自車両23の進行方向VLが走行車線22の方向に一致、若しくは走行車線22の方向に近づいた後、自車両23の走行車線22内の道幅方向の位置が目標点MPの道幅方向の位置(本実施形態では道幅方向中央位置)に一致若しくは近づくまでは、後輪操舵と前輪操舵の操舵方向を同一位相とすることで、自車両23を確実に走行車線22の中央付近に戻すことが可能となる。
【0050】
ここで、上記進行方向変更制御部の処理において、自車両23の進行方向VLの目標とする現行目標方向θSは、自車両23の走行位置に応じて現在位置での走行車線22の方向を採用しても良いし、制御開始時における走行車線22の方向に上記現行目標方向θSを固定しても良い。また、第1実施形態と同様に、走路前方の特定位置に目標点MPを設定し、当該目標点MP位置における走行車線22の方向を上記現行目標方向θSとしても良い。
その他の構成及び効果は、上記第1実施形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づく第1実施形態に係る装置構成を説明する図である。
【図2】本発明に基づく第1実施形態に係る車線逸脱状態の一例を示す図である。
【図3】本発明に基づく第1実施形態に係る車線逸脱状態の一例を示す図である。
【図4】本発明に基づく第1実施形態に係る車線逸脱状態の一例を示す図である。
【図5】本発明に基づく第1実施形態に係る逸脱判定部の処理を示す図である。
【図6】本発明に基づく第1実施形態に係る操舵制御部の構成を示す図である。
【図7】本発明に基づく第1実施形態に係る進行方向制御部の処理を示す図である。
【図8】本発明に基づく第1実施形態に係る横位置制御部の処理を示す図である。
【図9】走路区分線の検出方法例を説明する図である。
【図10】走路区分線の検出方法例を説明するための図である。
【図11】ウインドウの状態を示す図である。
【図12】ハフ変換を説明する図である。
【図13】本発明に基づく第2実施形態に係る進行方向変更制御部の処理を説明する図である。
【図14】本発明に基づく第2実施形態に係る車線逸脱状態例を示す図である。
【符号の説明】
1 前輪
2 前輪操舵アクチュエータ
3 後輪
4 後輪操舵アクチュエータ
5 逸脱回避コントローラ
5A 画像処理部
5B 逸脱判定部
5C 目標設定部
5D 操舵制御部
5Da 進行方向制御部
5Db 横位置制御部
5Dc 回避終了処理部
6 カメラ
7 ウインカSW
8 舵角センサ
9 車速センサ
10 逸脱通報部
20,21 走路区分線
22 走行車線
23 車両
VL 進行方向
MP 目標点
ML 目標進行方向
θV 進行方向の向き
θT 目標進行方向の向き
Δθ 偏差(交角)
LV 車両の横位置
LT 目標点の横位置
Lm 目標点までの距離
LD 偏差(道幅方向での)
θS 現行目標方向

Claims (4)

  1. 後輪の操舵状態を制御可能な後輪操舵アクチュエータを備えた車両に対する車線逸脱防止装置であって、
    自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、走行状態検出手段で検出された走行状態から自車両が走行車線から逸脱する可能性があることを検出する逸脱判定手段と、走行方向前方に自車両の到達が目標となる目標点及び該目標点での自車両の目標進行方向を設定する目標設定手段と、逸脱判定手段で自車両が走行車線から逸脱する可能性があることを検出すると、少なくとも上記後輪操舵アクチュエータを介して後輪の操舵状態を制御して走行車線からの逸脱を回避する方向に自車両を制御する操舵制御手段とを備え、
    上記操舵制御手段は、逸脱判定手段で自車両が走行車線から逸脱する可能性があることを検出すると、自車両の進行方向が上記目標進行方向と平行となる方向に若しくは上記自車両の進行方向と上記目標進行方向との交角が所定角度以下となる方向に、前輪操舵と後輪操舵の操舵方向を逆相に制御し、自車両の進行方向が上記目標進行方向と平行若しくは上記自車両の進行方向と上記目標進行方向との交角が所定角度以下になったと判定すると、走行車線内の自車両の道幅方向位置と走行車線内の上記目標点の道幅方向位置との偏差が小さくなる方向に、前輪操舵と後輪操舵の操舵方向を同相に制御することを特徴とする車線逸脱防止装置。
  2. 前輪及び後輪の操舵状態を個別に制御可能な前後輪操舵アクチュエータを備えた車両に対する車線逸脱防止装置であって、
    自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、走行状態検出手段で検出された走行状態から自車両が走行車線から逸脱する可能性があることを検出する逸脱判定手段と、走行方向前方に自車両の到達が目標となる目標点及び該目標点での自車両の目標進行方向を設定する目標設定手段と、逸脱判定手段で自車両が走行車線から逸脱する可能性があることを検出すると、上記前後輪操舵アクチュエータを介して前輪及び後輪の操舵状態を制御して走行車線からの逸脱を回避する方向に自車両を制御する操舵制御手段とを備え、
    上記操舵制御手段は、逸脱判定手段で自車両が走行車線から逸脱する可能性があることを検出すると、自車両の進行方向が上記目標進行方向と平行となる方向に若しくは上記自車両の進行方向と上記目標進行方向との交角が所定角度以下となる方向に、前輪操舵と後輪操舵の操舵方向を逆相に制御し、自車両の進行方向が上記目標進行方向と平行若しくは上記自車両の進行方向と上記目標進行方向との交角が所定角度以下になったと判定すると、走行車線内の自車両の道幅方向位置と走行車線内の上記目標点の道幅方向位置との偏差が小さくなる方向に、前輪操舵と後輪操舵の操舵方向を同相に制御することを特徴とする車線逸脱防止装置。
  3. 自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、走行状態検出手段で検出された走行状態から自車両が走行車線から逸脱する可能性があることを検出する逸脱判定手段と、自車両の到達が目標となる目標点を設定する目標設定手段と、逸脱判定手段で自車両が走行車線から逸脱する可能性があることを検出すると、前輪及び後輪の少なくとも一方の操舵状態を制御して走行車線からの逸脱を回避する方向に自車両を制御する操舵制御手段とを備え、
    上記操舵制御手段は、逸脱判定手段で自車両が走行車線から逸脱する可能性があることを検出すると、自車両の進行方向が走路区分線と平行となる方向に若しくは上記自車両の進行方向と上記走路区分線との交角が所定角度以下となる方向に、前輪操舵と後輪操舵の操舵方向を逆相に制御し、自車両の進行方向が走路区分線と平行若しくは上記自車両の進行方向と上記走路区分線との交角が所定角度以下になったと判定すると、走行車線内の自車両の道幅方向位置と走行車線内の上記目標点の道幅方向位置との偏差が小さくなる方向に、前輪操舵と後輪操舵の操舵方向を同相に制御することを特徴とする車線逸脱防止装置。
  4. 上記逸脱判定手段は、自車両の走行車線がカーブ状態であり、且つ自車両がカーブ内側方向に走行車線から逸脱する可能性があることを検出することを特徴とする請求項〜請求項のいずれか1項に記載した車線逸脱防止装置。
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