JP4132364B2 - 断熱構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は,断熱性を向上させた断熱構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
地球温暖化の原因の一つとされている二酸化炭素の発生量を削減するため,熱エネルギを利用する各種設備や装置においては,熱の高効率利用が進められている。そのため,かかる設備や装置における高温部と低温部との境界に配設される断熱構造の高性能化は,熱を高効率で利用する上で重要な技術の一つとされている。従来,セラミックファイバ,グラスファイバ,多孔体等の固体を用いる高性能な断熱構造は,可能な限り低熱伝導率の固体を充填すると共に,遮熱層を形成することが望ましいとされている。
【0003】
従来,密閉された気体透過性のない包囲体内に,形状保持材と低熱伝導率ガスを封入した断熱構造体が提案されている(例えば,特開平7−156313号公報参照)。該断熱構造体は,形状保持材と低熱伝導率ガスとの封入については,包囲体内に発泡性樹脂の原料を注入し,発泡硬化させた後に,包囲体内を大気圧以下に減圧し,次いで低熱伝導率ガスを封入して包囲体を密閉することによって作製されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,上記のような低熱伝導性物質を包囲体等に充填することが必ずしも十分な遮熱度を確保できるものではない。即ち,包囲体内の密閉空間に低熱伝導性物質を充填したとしても,或いは該密閉空間を真空に近い状態にしたとはいえ,密閉空間それ自体において温度差が発生して内部熱対流が発生し,熱移動が生じ,遮熱度を低下させる原因となる。
【0005】
そこで,本発明者は,ケース等の包囲体内にグラスファイバ,セラミックファイバ等の遮熱繊維材料を充填すると共に,遮熱繊維材料内に有効熱伝導率の高いヒートパイプを単層又は多層に配設した断熱構造を試験研究段階で開発した。該断熱構造は,熱流方向と直交する方向に延びる包囲体内の密閉空間を等温にすることによって,包囲体内の密閉空間における熱対流の発生を抑制し,それによって断熱性能を向上させることが分かった。
【0006】
しかしながら,上記の断熱構造は,包囲体内にグラスファイバ,セラミックファイバ等の遮熱繊維材料を充填すると共に,該遮熱繊維材料内に有効熱伝導率の高いヒートパイプを配設するものであり,高価な遮熱繊維材料を用いる以上,断熱構造のコストを上昇させることになると共に,包囲体内の密閉空間にグラスファイバ,セラミックファイバ等の遮熱繊維材料を充填するということが,包囲体内の成層における等温性を確保して内部熱対流を抑制するという技術的思想には貢献せず,場合によっては,内部熱対流を発生させて遮熱度を低下させる現象があることが判った。
【0007】
そこで,本発明者は,ヒートパイプを包囲体内の密閉空間に指向配置して熱流方向と直交する方向(水平方向)における成層での等温性を高めて包囲体内の密閉空間での内部熱対流の発生を抑制して断熱性能を向上させることに着目し,遮熱繊維材料等の低熱伝導性固体を包囲体内に充填することによる断熱技術とは全く異なり,密閉空間に低熱伝導性固体を配置することなく,高熱伝導性固体のみを包囲体内の密閉空間に熱流方向に直交する方向に拡げて指向配置することによって成層での等温性を確保し,断熱効果を向上させることが有効であると考えた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明の目的は,ケース等の包囲体内の密閉空間に高熱伝導性固体を熱流方向に対して実質的に直交する方向に指向配置し,密閉空間での成層間における内部熱対流の発生を抑制し,熱流方向に対して垂直断熱層,水平断熱層,環状断熱層又は球状断熱層,或いは鉛直断熱層に対して断熱性能を高めると共に,製造コストを安価にし,しかも,住宅,ビル等の建造物,構造物,或いは電子機器,機械装置等の固体,ガスや液体の流体等を収容するケース,ハウジング,セル等に容易に適用して省エネルギへ貢献すると共に,低温度や高温度等の極限環境においても容易に適用できる断熱構造を提供することである。
【0009】
この発明は,密閉空間を形成する包囲体,該包囲体内の前記密閉空間に熱流方向に対して実質的に直交する方向の全域に指向配置された高熱伝導性固体,及び前記密閉空間に封入された低熱伝導性気体から成り,前記高熱伝導性固体は前記包囲体内に収容されている枠体に支持されており,前記密閉空間での成層間における内部熱対流の発生を抑制して熱流方向に対して断熱性能を高め,前記内部熱対流による熱の移動を遮断することを特徴とする断熱構造に関する。
【0010】
この断熱構造において,前記包囲体は,建造物,構造物,移動体等の壁体,ケース,セル,板体,或いはフィルム体を構成する薄肉部材である。
【0011】
前記低熱伝導性気体は,負圧又は正圧の状態で前記包囲体内の前記密閉空間に封入されている。例えば,密閉空間に低熱伝導性気体をポンプ等で充填して正圧状態に充填することができるが,場合によっては,前記包囲体内の密閉空間の真空度を高めて遮熱性をアップすることができる。前記包囲体内の真空度を高めた場合には,構造上の強度が問題になるので,若干の低熱伝導性気体を密閉空間に存在させ,それによる内部熱対流を防止するため,高熱伝導性固体を指向配置し,各層の高熱伝導性固体を最小限の低熱伝導性部材で支持することによって遮熱性と強度上の問題を解決できる。
【0012】
前記高熱伝導性固体は,銅,銀,アルミニウム,それらの合金の金属から成る線材や繊維,マイクロヒートパイプ,又はAlN,SiC,Si3 4 セラミック線材や繊維,或いはこれらの複合材から成る高熱伝導材から構成されている。更に,前記高熱伝導性固体を構成する前記金属線材,前記セラミック線材,マイクロヒートパイプ及びこれらの複合材は,並列状又は互いに交差する格子状に指向配置された網体で構成されている。又は,前記高熱伝導性固体を構成する前記金属繊維,前記セラミック繊維及びこれらの複合材から成る繊維層は,該繊維を構成する繊維線が前記熱流方向に対して実質的に直交する水平方向に指向配置して延びる1又は複数の繊維層に形成されている。
【0013】
この断熱構造において,前記熱流方向に対して実質的に直交する方向に拡がる前記包囲体の内面は,アルミニウム箔等の低熱放射材で被覆されている。また,前記低熱伝導性気体は,空気,窒素,二酸化炭素,不活性ガスの気体から構成されている。更に,前記高熱伝導性固体を支持する前記枠体における前記熱流方向に延びる部分には低熱伝導性材が設けられている。
【0014】
この断熱構造は,上記のように,熱流方向に対して直角方向に包囲体内の密閉空間の全域に延びるように高熱伝導性固体が指向配置されているので,たとえ密閉空間内に鉛直方向,言い換えれば,熱流方向における成層間において温度差が生じたとしても熱流方向に直角な方向の1成層での等温性を確保でき,密閉空間内の1成層において内部熱対流の発生を防止し,熱流方向に対して内部熱対流による熱の移動を遮断することができ,更に,包囲体内の密閉空間には低熱伝導性気体が充填されているので,熱伝導による熱の移動も遮断でき,高効率の遮熱度を得ることができる。
【0015】
即ち,包囲体内の密閉空間に指向配置された高熱伝導性固体に近在する低熱伝導性気体に温度の不均一が生じた場合に,高熱伝導性材料が直ちにその高い熱伝導性によって密閉空間内の熱流方向に直交する水平方向における成層を等温化し,高熱伝導性固体に近在する低熱伝導性気体の温度が均一化し,その結果,低熱伝導性気体の内部熱対流が防止され,熱流方向の熱の流れが抑制され,遮熱性が向上する。例えば,包囲体内の密閉空間における鉛直方向では,上方が高温で下方が低温であっても,その温度差が許容できる範囲内であれば,その領域には内部熱対流が発生せず,密閉空間内での熱の移動が抑制される。即ち,高熱伝導性固体の存在によって密閉空間に,低熱伝導性気体の温度分布として安定した成層を形成することができる。そこで,熱流方向に対して所定の成層で高熱伝導性固体によって常に等温性を確保しておけば,そこには内部熱対流が発生せず,熱対流による熱移動がなく,遮熱性が保たれることになる。
【0016】
また,この断熱構造は,前記網体及び繊維層の数は,要求されている遮熱度で決定される熱流方向の厚さに応じて決定することができるものである。例えば,包囲体の厚さが薄い場合には1層で形成し,厚い場合には複数層で形成することができる。更に,この断熱構造は,種々の適用方法として,包囲体を1つのセル構造として形成することができ,その場合には,適用する領域の広さや形状に応じて使用するセルの個数を適正に決定すればよい。例えば,遮熱領域が広い場合には複数のセルを並列して敷きつめて適用し,高い遮熱度を要求される場合には,セルを積層した状態で適用することができ,また狭い場合には1個のセルで十分であり,形状が複雑な曲面等であれば,複数のセルを組み合わせて適用すればよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下,図面を参照して,この発明による断熱構造の実施例を説明する。図1はこの発明のよる断熱構造の一実施例を一部を破断して示す斜視図,及び図2は図1の断熱構造における包囲体に収容される枠体に支持された高熱伝導性固体の多層組立体の斜視図である。
【0018】
図1に示すように,この断熱構造は,内部に密閉空間1Aを形成する包囲体2,包囲体2内に収容され且つ小断面の高熱伝導性固体から形成された多層組立体10,包囲体2内の密閉空間1A内に封入された低熱伝導性気体2Gから構成されるモジュールの形態を有している。
【0019】
この実施例では,断熱構造1を構成する包囲体2は,上壁3,下壁4及び周囲の4つの側壁5を有する正方形又は直方体の形状を有しており,側壁5,或いは必要な場合には上壁3又は下壁4において,断熱構造1と同様の構造を有する別の断熱モジュールをシール状態に接続させることにより,任意の広さやレイアウトに広げられた断熱体を構成することができる。断熱構造1は,取り付ける場所によって,熱流方向Qに対して垂直断熱層や水平断熱層,又は環状断熱層や球状断熱層,或いは鉛直断熱層の断熱層即ち遮熱層を形成することができる。
【0020】
包囲体2の材質は,適用場所や使用環境に応じて決定できるものであり,包囲体2を合成樹脂又は金属製とすることもできるが,高温環境下で使用されるときには,耐熱性を考慮して,セラミック製パネル或いはセラミックで表面処理した耐熱パネルを適用することができる。断熱構造1は,通常,可能な限り薄く構成することが好ましいので,上壁3と下壁4との面方向を,熱が流れようとする熱流方向Qに直交する方向とするように配置される。側壁5の面を通って上下の壁3,4間に生じる熱流によって断熱構造1の断熱性を損なわないように,包囲体2を低熱伝導性の素材で製作するのが好ましい。断熱構造1の外部と内部との間における熱伝導を少なくするため,熱流方向と直交する上壁3及び下壁4の内面側は低熱放射構造に構成することができる。低熱放射構造は,例えば,上壁3及び下壁4の内面に,鏡面部材やアルミニウム箔6を貼り付けることによって構成されている。
【0021】
包囲体2内の密閉空間1Aに高熱伝導性固体から形成された多層組立体10を収容するには,適宜の方式を採用することができる。例えば,図3に示すように,4つの側壁5のうちいずれか1つの側壁5を,一般の箱が有しているように,拡開可能なフラップ8に構成し,拡開状態のフラップ8で形成された開口部9を通して,多層組立体10を包囲体2内の密閉空間1Aとなる内部に装填することができる。フラップ8は,多層組立体10の周囲を包囲体2の上壁3,下壁4及び側壁5で覆い,各壁の継目をシールすることにより,包囲体2全体を密閉状態の構造に構成することができる。
【0022】
多層組立体10を収容した包囲体2内の密閉空間1Aには,高温環境下でも安定した断熱作用を有するため,空気,二酸化炭素(CO2 ),窒素(N2 ),或いはアルゴン(Ar),クリプトン(Kr),キセノン(Xe)のような不活性ガスからなる低熱伝導性気体2Gを充填して封入する。低熱伝導性気体2Gの包囲体2内への充填のため,包囲体2の一つの側壁5には,低熱伝導性気体2Gを供給する供給管30が接続可能であり,且つ供給管30を取り外したときには閉鎖可能な取入れ口7が形成されている。
【0023】
図2を参照して,多層組立体10について説明する。多層組立体10を構成する高熱伝導性固体を支持する枠体13は,高熱伝導性固体を支持するため熱流方向Qに沿って延びる支柱14と,隣接する支柱14間に渡って配設された複数のヒートパイプ15とから構 成されている。多層組立体10は,銅,銀,アルミニウム,それらの合金等の金属から成る線材や繊維,マイクロヒートパイプ,又はAlN,SiC,Si3 4 等のセラミック繊維から成り,これらから選定された材料から形成されている細線11を格子状に組むことで網状部材12が形成されている。網状部材12は周囲を枠体13によって囲まれており,各網状部材12を枠体13に対して順次僅かな間隔で隔置して取り付けることにより,複数の網状部材12がそれぞれ層状に配置された多層組立体10が構成されている。枠体13は,図に示すように,網状部材12の四隅に対応した各隅部において熱流方向Qに沿って延びるように立設されている支柱14と,隣接する支柱14間に渡って配設された複数のヒートパイプ15とから構成されている。支柱13は,支柱13自身の固体内熱伝導及び上壁3と下壁4との間における接触熱伝導を抑制するため,ジルコニア等のセラミックス,多孔質セラミックス等の低熱伝導性の材料から形成されている。
【0024】
ヒートパイプ15は,上壁3と下壁4とに対して実質的に平行に,即ち,熱流方向Qに対して直交する方向に延びるように配置され,且つ対応する側壁5にも実質的に平行に配設されている。したがって,ヒートパイプ15は,それらの軸線が上壁3と下壁4とを結ぶ熱流の方向と直交する方向に延びる姿勢で支柱14に支持されている。ヒートパイプ15は,各網状部材12に対応して個別に設けたり,或いは,各網状部材12を隔置した状態で低熱伝導性材料でそれぞれ固定されている。各網状部材12は,高い熱伝導性を備えていると共に対応したヒートパイプ15に区別して接続されているので,対応したヒートパイプ15の温度に速やかに均一化される。なお,各網状部材12は面内において温度が速やかに均一化されるように包囲体2に支持されればよく,周囲の支柱14やヒートパイプ15から成る形態の枠体13に限ることはない。
【0025】
網状部材12については,銅から成る細線11を組んで形成された例を説明したが,多層組立体の各層は,格子状に組む以外に,平行な直線又は曲線状に並べた構造であってもよい。また,銅の細線11に代えて,熱流の方向と実質的に直交する方向に延びる他の高熱伝導性の金属細線,繊維質,或いはマイクロヒートパイプを用いることができる。繊維質,或いはマイクロヒートパイプであっても,網状部材12の面内の温度に差が生じると速やかに熱伝導が行われ,網状部材12の面内温度を速やかに均一化し,密閉空間1A内を等温化し,内部熱対流の発生を防止することができる。
【0026】
断熱構造1の使用状態として,上壁3側を高温側とし,下壁4側を低温側とするのが好ましい。このような配置により,包囲体2の上壁3側に存在する低熱伝導性気体が,包囲体2の下壁4側に存在する低熱伝導性気体2Gよりも高温となることがあっても,包囲体2内において,低熱伝導性気体2Gが対流を生じ難くなり,断熱構造1の断熱性をより一層高めることが可能となる。
【0027】
図3には,図1に示す断熱構造1の組立手順が示されている。図2に示した多層組立体10が,フラップ8を開いた状態の包囲体2の開口部9から包囲体2の内部に装填される。多層組立体10が装填された包囲体2は,フラップ8を閉じて適宜シールを施して密封状態に閉鎖される。空気以外の低熱伝導性気体2Gを包囲体2内に充填するには,包囲体2の一つの側壁5に設けられている取入れ口7に気体供給管30を接続し,バルブ31を開いて低熱伝導性気体2Gを包囲体2内に送り込む。なお,包囲体2に当初に存在していた空気を排出するため,別途の排出口を側壁5に設けてもよく,気体供給管30を利用してもよい。包囲体2内への低熱伝導性気体2Gの充填が終了した段階で,気体供給管30を取り外し,取入れ口7を封止することで,モジュールの形態としての断熱構造1が得られる。
【0028】
断熱構造1は,上記のように構成されているので,例えば,上壁3側を高温側とし,下壁4側を低温側として配置することが好ましい。熱は上方から下方へ流れようとする傾向を持つので,断熱構造1で伝導を防止する熱流方向Qは,図1において矢印で示す方向となる。多層組立体10を構成する高熱伝導性材料から成る各網状部材12は,隣接する網状部材12と熱的に絶縁されており,熱流方向Qと直交する各網状部材12の面内即ち成層において温度の不均一が存在すると網状部材12自身の高熱伝導性に起因して直ちに層内熱伝導がスムーズに進む。従って,各網状部材12には温度場の均一化が生じ,各網状部材12に近在する低熱伝導性気体はどの領域においても等温化される。即ち,低熱伝導性気体の温度分布は,熱流方向Qには一様である必要はなく実際にも非均一であるが,熱流方向Qに直交する方向において強い等方性を示し,その結果,熱流方向Qの熱伝導に対して高い伝導抵抗を示す。その結果,低熱伝導性気体の対流に対する抑制が生じ,熱流方向Qの熱伝導に対する高性能な断熱性が得られる。多層組立体10を構成する網状部材12は,細線等の断面積の小さい線材から構成されるので,断熱構造1において占める体積が小さく,低熱伝導性気体の断熱作用を充分に引き出すことができる。
【0029】
次に,図4を参照して,この発明による断熱構造の別の実施例を説明する。図4はこの発明による断熱構造を環状又は球状構造に構成した別の実施例を示す一部破断の断面図である。
【0030】
図4に示す断熱構造20は,筒形や球形に形成された断熱構造である。断熱構造20として,包囲体21を筒形に構成した場合には,環状に隔置して配置された内側筒体22と外側筒体23とを有する包囲体21と,内側筒体22と外側筒体23との間の密閉空間を構成する環状空間20Aに収容された多層組立体24とを備えている。密閉された環状空間20Aには,上記実施例と同様の低熱伝導性気体2Gが封入される。内側筒体22と外側筒体23との両端においては,端壁28によって封鎖されており,断熱構造20の環状空間20Aは外部に対して気密に形成されている。多層組立体24は,内側筒体22と外側筒体23とに対して,互いに径方向に隔置して配置された複数の網状筒部材25から構成される。断熱構造20は,内側筒体22の内側と外側筒体23の外側とを高熱側又は低熱側として,筒形内外間の断熱構造として適用される。各網状筒部材25は,銅細線等の高熱伝導性材料から形成され,筒の軸方向に平行に延びる細線26を両端部で支持した筒部材として構成しても,或いは,筒の軸方向に延びる細線26と周方向に延びる細線27を格子状に組んだ格子状筒部材として構成してもよい。断熱構造20の筒形は,円筒形に形成することが,包囲体21内に形成される遮熱空間29の容積に対する表面積を小さく構成する点,製作上及びコストの観点から好ましい。
【0031】
この発明による断熱構造は,図4に類似するが,球形に形成された断熱構造に構成することもできる。球形断熱構造の場合は,内側球体と外側球体とから成る包囲体と,内側球体と外側球体との間の球殻状空間に配設された高熱伝導性固体から成り,球の径方向に層状となった1層又は多層の組立体を備えている。球殻状空間には,低熱伝導性気体2Gが封入される。更に,胴部を上記の筒形を有する断熱構造とし,筒形の断熱構造の両端を球形断熱構造の半分,即ち,半球の断熱構造とすることもできる。
【0032】
【発明の効果】
この発明による断熱構造は,上記のように,包囲体内の密閉空間に,ファイバ等の低熱伝導率固体を充填せずに,熱流方向に対して直交して高熱伝導性固体のみを指向配置したので,包囲体内の密閉空間に熱流方向と直交する方向の等温性を維持し,包囲体内に封入された低熱伝導性気体に対流が生じるのが抑制され,断熱性能を向上させることができる。従って,この断熱構造は,住宅,ビル等の建造物,構造物の壁体として適用して断熱性能を高め,省エネルギへ貢献すると共に,電子機器,機械装置,気体や液体の流体等を収容するケース,ハウジング等に適用してそれらを温度影響から保護し,或いは,低温度や高温度等の極限環境,例えば,工場,深海等の潜水艇や水中作業船,或いは航空機や宇宙飛行体の外壁に適用して極めて好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のよる断熱構造の一実施例を一部を破断して示す斜視図である。
【図2】 図1の断熱構造における包囲体に収容される枠体に支持された高熱伝導性固体の多層組立体の斜視図である。
【図3】 図1の断熱構造を組み立てる製造工程を示す説明図である。
【図4】 この発明による断熱構造の別の実施例を示す一部破断の断面図である。
【符号の説明】
1,20 断熱構造
1A 密閉空間
2,21 包囲体
2G 低熱伝導性気体
6 アルミニウム箔
7 取入れ口
10,24 多層組立体
12 網状部材
13 枠体
14 支柱
15 ヒートパイプ
20A 環状空間(密閉空間)
25 網状筒部材
Q 熱流方向

Claims (9)

  1. 密閉空間を形成する包囲体,該包囲体内の前記密閉空間に熱流方向に対して実質的に直交する方向の全域に指向配置された高熱伝導性固体,及び前記密閉空間に封入された低熱伝導性気体から成り,前記高熱伝導性固体は前記包囲体内に収容されている枠体に支持されており,前記密閉空間での成層間における内部熱対流の発生を抑制して熱流方向に対して断熱性能を高め,前記内部熱対流による熱の移動を遮断することを特徴とする断熱構造。
  2. 前記包囲体は,建造物,構造物,移動体等の壁体,ケース,セル,板体,或いはフィルム体を構成する薄肉部材であることを特徴とする請求項1に記載の断熱構造。
  3. 前記低熱伝導性気体は,負圧又は正圧の状態で前記包囲体内の前記密閉空間に封入されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱構造。
  4. 前記高熱伝導性固体は,銅,銀,アルミニウム,それらの合金の金属から成る線材や繊維,マイクロヒートパイプ,又はAlN,SiC,Si3 4 セラミック線材や繊維,或いはこれらの複合材から成る高熱伝導材から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱構造。
  5. 前記高熱伝導性固体を構成する前記金属線材,前記セラミック線材,マイクロヒートパイプ及びこれらの複合材は,並列状又は互いに交差する格子状に指向配置された網体で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の断熱構造。
  6. 前記高熱伝導性固体を構成する前記金属繊維,前記セラミック繊維及びこれらの複合材から成る繊維層は,該繊維を構成する繊維線が前記熱流方向に対して実質的に直交する水平方向に指向配置して延びる1又は複数の繊維層に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の断熱構造。
  7. 前記熱流方向に対して実質的に直交する方向に拡がる前記包囲体の内面は,アルミニウム箔等の低熱放射材で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱構造。
  8. 前記低熱伝導性気体は,空気,窒素,二酸化炭素,不活性ガスの気体から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱構造。
  9. 前記高熱伝導性固体を支持する前記枠体における前記熱流方向に延びる部分には低熱伝導性材が設けられていることを特徴とする請求項に記載の断熱構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR20190081362A (ko) * 2017-12-29 2019-07-09 한국원자력연구원 기능성 전도체 및 기능성 전도체의 제조방법

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