JP4131589B2 - 建築用タイル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、壁面、床面、又は天井面の装飾などに利用される建築用タイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、合成樹脂又はセラミックなどからなる板状の種々の建築用タイルが用いられる。用途によって、強度、耐摩耗性、耐薬品性、柔軟性などの点でそれぞれ特色を有する。
【0003】
また、ファッション的な要素を加味するために、板状の基材層の表面に写真層を設け、さらにはその表面に凹凸の模様を有したレリーフ層を設けたものが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の建築用タイルは、種々の模様や装飾が施され、それなりに見て楽しめるものが多いが、しばらく見ていると徐々に飽きてしまうという欠点がある。つまり、どのように装飾を施したものであっても、それが芸術的な価値の観点から見て高度なものでない限り、日常的に何度も見ているうちに飽きることとなり、これはある程度仕方のないことである。
【0005】
本願の発明者はその原因について追求した結果、どのような模様又は装飾が施されていた場合であっても、それが当初は新鮮であったとしても、そのような模様又は装飾が固定されている限りは時間の経過とともにその新鮮さが徐々に失われ、やがて飽きてくるものであるという考えに至った。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、模様又は装飾が施されるとともに、観察者の位置に応じてその模様又は装飾の内容が変化し、新鮮さが長く持続して長期にわたって飽きのくることのない建築用タイルを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る建築用タイルは、透明のガラス材料からなり、表面にレンチキュラーレンズ群が形成された板状の基材層と、前記基材層の前記レンチキュラーレンズ群が形成された面と反対側の面において、顔料が塗布され焼き付けられることによって仕上がりが半透明となるように形成された、前記レンチキュラーレンズ群を介して観察するための、1つのレンチキュラーレンズに対して複数個の帯状の画像からなる画像層と、を有し、前記画像層は、顔料を、希釈オイル、アルコール、又はシンナーなどで薄めて仕上がりが半透明となるように粘度を調整されたものであり、かつ、混入ガスを排出させて発泡現象が生じるのを防止するために、印刷後に150度C程度で乾燥させたものである。
【0008】
好ましくは、前記画像層の表面に、チタンを含む白バンが塗布されてなる。画像層の画像として、互いに異なる色の一色のカラー画像(圧縮画像)、ある動物の画像で特定の部分の色が互いに異なるカラー画像、異なる種類の動物のカラー画像、異なる風景のカラー画像、互いに色又は模様の異なる抽象画像、互いに視差を有する複数の画像の圧縮画像などが用いられる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る建築用タイル1の正面図、図2は建築用タイル1の下方からみた端面図、図3は図2の一部を拡大して示す図である。
【0010】
これらの図において、建築用タイル1は、基材層11及び画像層12からなる。
基材層11は、透明のガラス材料からなり、表面には多数のレンチキュラーレンズ22,22…からなるレンチキュラーレンズ群21が形成される。基材層11は、例えば1辺の長さが数センチメートル乃至数十センチメートル程度の正方形又は長方形、具体的には例えば18×18センチメートルの正方形であり、厚さが数ミリメートル乃至数センチメートル程度の板状のものである。なお、基材層11は、例えばガラス材料を型に流し込むことにより製作される。
【0011】
画像層12は、基材層11の裏面に顔料が塗布され焼き付けられて形成されたものである。画像層12は、複数の帯状の圧縮画像31−1,31−2,31−3…からなる。これら圧縮画像31−1,2,3…は互いに異なる色の一色のカラー画像である。例えば、それぞれ、黄、緑、青、紺、シアンなどの各色である。図の例では、1つのレンチキュラーレンズ22の下に7つの圧縮画像31が形成されているが、これは、2つ、3つ、4つなどとしてもよく、それらの色の選択も任意である。
【0012】
これら圧縮画像31の形成に当たっては、各色の顔料を用いて基材層11にスクリーン印刷を行う。その際に、顔料を、希釈オイル、アルコール、又はシンナーなどで適当に薄め、仕上がりが半透明となるように粘度を調整しておく。スクリーン印刷を行った後、150度C程度で乾燥させ、混入ガスを排出させて発泡現象が生じるのを防止する。次に、乾燥した圧縮画像31を、600度C程度以上の温度で焼成し、基材層11に焼き付けて画像層12とする。これで建築用タイル1が出来上がる。
【0013】
このようにして出来上がった建築用タイル1は、図1の左右方向に沿って異なる位置から観察することによって、つまり見る位置によって、建築用タイル1の全体が互いに異なる色に観察される。
【0014】
つまり、図4(A)(B)は2つの異なった位置から観察した画像FG1,2を示すが、観察者の位置に応じて、互いに異なった色の画像FG1,2が観察される。
【0015】
このように、本実施形態の建築用タイル1によると、見る位置が異なる場合に異なった画像が観察される。したがって、建築用タイル1を日常的に観察する場合であっても、新鮮さが長く持続して長期にわたって飽きがこない。
【0016】
しかも、画像層12が半透明であり、したがって建築用タイル1の全体が光透過性を有するので、観察者の側からの反射光のみでなく、後方からの透過光によっても観察され、画像FG1,2が明るく鮮明である。そのため、建築用タイル1を壁面や窓に用いた場合に、外方からの自然光又は照明光によって鮮やかな画像FG1,2が観察され、しかも建築用タイル1の設置された部屋の内部が明るくなる。したがって、採光を必要とする場合の仕切り用の建築材料として好適である。
【0017】
そして、本実施形態の建築用タイル1では、画像層12が基材層11に焼付けられているので、温度変化によってもレンチキュラーレンズ22と圧縮画像31との位置がずれることなく、常に鮮明な画像が観察される。しかも、基材層11がガラス材料からなるので膨張率が小さく、温度変化によって寸法形状がほとんど変化しない。また、これらの材料は不燃性であるので、建築材料として極めて好ましい。しかも、画像層12を低コストで形成でき、建築用タイル1の量産が容易であり、低コストで製作できる。
【0018】
上に述べた実施形態では、圧縮画像31として互いに異なる単一色のカラー画像を用いたが、これ以外に、例えば次の画像が用いられる。また、それぞれの画像が用いられる場合において、異なった位置からは次に述べるように観察される。
▲1▼ 圧縮画像31は、視差を有する複数の画像についての帯状の圧縮画像からなる。各圧縮画像31は、それぞれ、例えば原画像を縦方向の帯状となるように分割した画像を横方向(幅方向)に圧縮することによって得られる画像である。このような圧縮画像31それ自体の作成のためには、特開平2−293733号、特開平6−309431号、特開平9−236875号、特願平8−219615号などに開示された種々の方法が適用される。
【0019】
この場合には、圧縮画像31によって立体画像が観察される。
▲2▼ 圧縮画像31は鳥のカラー画像であり、他の圧縮画像31は同じ鳥の同じ状態の画像であるが、それぞれ特定の部分の色が異なる。この場合には、見る位置によって、同じ鳥の特定の部分の色が異なって観察される。
▲3▼ 圧縮画像31は鳥のカラー画像であり、他の圧縮画像31は同じ鳥の異なる姿態、つまり羽根を窄めている状態、羽根を広げている状態、鳴いている状態などの画像である。この場合には、見る位置によって、同じ鳥の異なる姿態が観察される。
▲4▼ 圧縮画像31は鳥のカラー画像であり、他の圧縮画像31は種類の異なる他の鳥のカラー画像である。この場合には、見る位置によって、種類の異なる鳥が観察される。
▲5▼ 圧縮画像31は鳥のカラー画像であり、他の圧縮画像31は他の動物のカラー画像である。この場合には、見る位置によって、種類の異なる動物が観察される。
▲6▼ 圧縮画像31はある風景のカラー画像であり、他の圧縮画像31は同じ風景の時刻又は季節の異なる状態の画像であり、それぞれ特定の部分の色などが異なる。この場合には、見る位置によって、同じ風景の異なる時刻又は季節の画像が観察される。
▲7▼ 圧縮画像31は互いに異なる風景の画像である。この場合には、見る位置によって、異なる風景が観察される。
【0020】
このように、立体画像が観察され、又は、観察者の位置に応じて観察される2つの画像FG1,2が、形状、色、雰囲気などにおいて互いに異なるものとなる。
【0021】
次に、他の実施形態の建築用タイル1Aについて説明する。
図5は他の実施形態の建築用タイル1Aの一部を拡大して示す図である。
図5に示すように、建築用タイル1Aでは、画像層12Aは、圧縮画像32及び白バン層33からなる。圧縮画像32の形成方法は上に述べたのと同様である。但し、圧縮画像32の焼成は白バン層33と同時に行われる。白バン層33は、圧縮画像32を乾燥させた後、その表面に、チタンを含む白バンを塗布することによって形成する。白バンは、ほう硅酸鉛ガラスを主成分とし、チタン(TiO2 )を含むホワイト顔料、高級アルコール、及びセルロース系樹脂などを含む。その後、600度C程度以上の温度で焼成し、基材層11に焼き付けて画像層12Aとする。これで建築用タイル1Aが出来上がる。なお、圧縮画像32及び白バン層33をそれぞれ別個に焼成してもよい。
【0022】
この建築用タイル1Aは、白バン層33があるので不透明である。しかし、白バン層33によって圧縮画像32が保護されているので、耐久性、耐候性、耐薬品性などに優れる。
【0023】
図6は建築用タイル1を用いて製作された壁WLを示す図である。
図6において、壁WLは、上述の建築用タイル1が多数用いられ、各レンチキュラーレンズ22の長手方向が鉛直方向に沿うような状態で、マトリクス状に配置されて取り付けられてなっている。
【0024】
これらの建築用タイル1の画像層12には、それぞれ異なったカラー画像又は同じカラー画像が形成される。壁WLの全体として1つの纏まった画像となるように、それぞれの建築用タイル1のカラー画像を形成してもよい。
【0025】
壁WLを見る観察者は、図の左右方向の位置に応じて、異なる画像を観察することになる。
上述の実施形態において、建築用タイル1を基材層11と画像層12とから構成したが、基材層11及び画像層12を、コンクリート、合成樹脂、木材、又は金属などからなるフレームに納め、全体としてブロック体の建築用タイルとなるように構成してもよい。
【0026】
上述の実施形態において、建築用タイル1の形状を正方形としたが、長方形、円形、多角形、任意の形状などとすることができる。その他、基材層11、画像層12、又は建築用タイル1の全体又は各部の構造、形状、材質、寸法、個数などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【0027】
【発明の効果】
本発明によると、模様又は装飾が施されるとともに、観察者の位置に応じてその模様又は装飾の内容が変化し、新鮮さが長く持続して長期にわたって飽きのくることのない建築用タイルを提供することができる。
【0028】
しかも、画像層は顔料が塗布され焼き付けられて形成されているので、温度変化によってもレンチキュラーレンズと画像層との位置がずれることなく、常に鮮明な画像が観察される。しかも、基材層がガラス材料からなるので膨張率が小さく、温度変化によって寸法形状がほとんど変化しない。また、これらの材料は不燃性であるので、建築材料として極めて好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る建築用タイルの正面図である。
【図2】建築用タイルの下方からみた端面図である。
【図3】図2の一部を拡大して示す図である。
【図4】2つの異なった位置から観察した画像を示す図である。
【図5】他の実施形態の建築用タイルの一部を拡大して示す図である。
【図6】建築用タイルを用いて製作された壁を示す図である。
【符号の説明】
1,1A 建築用タイル
11 基材層
12 画像層
21 レンチキュラーレンズ群
22 レンチキュラーレンズ
31,32 圧縮画像
33 白バン層
Claims (3)
- 透明のガラス材料からなり、表面にレンチキュラーレンズ群が形成された板状の基材層と、
前記基材層の前記レンチキュラーレンズ群が形成された面と反対側の面において、顔料が塗布され焼き付けられることによって仕上がりが半透明となるように形成された、前記レンチキュラーレンズ群を介して観察するための、1つのレンチキュラーレンズに対して複数個の帯状の画像からなる画像層を有し、
前記画像層は、顔料を、希釈オイル、アルコール、又はシンナーなどで薄めて仕上がりが半透明となるように粘度を調整されたものであり、かつ、混入ガスを排出させて発泡現象が生じるのを防止するために、印刷後に150度C程度で乾燥させたものである、
ことを特徴とする建築用タイル。 - 前記画像層の表面に、チタンを含む白バンが塗布されて焼成されることによって白バン層が形成されてなる、
請求項1記載の建築用タイル。 - 前記白バン層は、前記画像層と同時に、600度C程度以上の温度で焼成されて形成されている、
請求項2記載の建築用タイル。
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