JP4131016B2 - 光学素子成形装置および光学素子の製造方法 - Google Patents

光学素子成形装置および光学素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、光学素子成形装置、特に対向する一対の成形型の間で光学素子材料を押圧し光学素子を成形する光学素子成形装置およびその装置を用いた光学素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガラスレンズ等の光学素子は、光学素子素材(プリフォーム)を加熱・軟化し、これを一対の成形型で加圧することにより製造されている。
【0003】
このような製造方法の場合、通常、光学素子の径方向については何ら規制されておらず、プリフォームは、その供給量、型の押圧力如何により無秩序に拡がり、成形される光学素子の外径にバラツキが生じていた。このため、光学素子材料を加圧成形した後に研削により、芯取り作業を必要としていたため、煩雑で製造効率が悪く、コストが高くなるという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、成形面の外周面に衝面を形成する胴型等により、光学素子の径方向への拡がりを制限することにより光学素子の外径を規制し、高精度成形を行う方法が提案されている。
【0005】
しかし、成形部が閉空間を形成するため、光学素子の形状を一定にするためには光学素子材料の厳密な体積管理が必要となる。したがって、プリフォームの供給量を精密に制御する手段等を必要とし、製造工程が煩雑となりコスト高になるという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、成形後の芯取り作業を必要とせず、簡易な方法でレンズの外径が高精度に規制された光学素子を製造することができる光学素子成形装置および光学素子の製造方法を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(16)の本発明により達成される。
【0008】
(1) 加熱軟化した光学素子材料を加圧成形する成形面を有する一対の成形型と、
少なくとも一方の前記成形型の外周に装着される環状の外径型とを備える光学素子成形装置において、
前記外径型は成形される光学素子の外径を規制する外径規制部と、前記光学素子の外径を規制しない外径非規制部とを有し、
前記外径規制部と前記外径非規制部とが前記外径型の周方向に沿って交互に設けられ、
前記外径非規制部は1つの大きさが前記外径型内周の全周360°に対し中心角が90°以下となるように形成されていることを特徴とする光学素子成形装置。
(2) 前記外径規制部は、前記1対の成形型のうちに少なくとも一方の成型面の径とほぼ等しい内径を有し、前記外径非規制部は、前記1対の成形型のうちに少なくとも一方の成型面の径よりも大きい内径を有する上記(1)に記載の光学素子成形装置。
【0009】
) 前記外径規制部および前記外径非規制部は各々前記外径型の内周面に周設されている上記(1)または(2)に記載の光学素子成形装置。
【0010】
) 前記外径非規制部は前記外径型の内周面に形成された少なくとも1つの切り欠きにより設けられている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光学素子成形装置。
【0012】
(5) 前記外径規制部および前記外径非規制部のうち少なくとも一方は前記外径型の周方向に等間隔に設けられている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の光学素子成形装置。
【0013】
(6) 少なくとも前記外径規制部の内周面は前記成形面の中心軸と平行な面となるよう形成されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光学素子成形装置。
【0014】
(7) 少なくとも前記外径規制部の内周面に前記外径型の上面から前記成形面に向けて内径が漸減するテーパ部が形成されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光学素子成形装置。
【0015】
(8) 前記テーパ部のテーパ面の傾斜がすべて等しくなるよう設けられている上記(7)に記載の光学素子成形装置。
【0016】
(9) 前記外径型の外径規制部の高さが0.1mm以上である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の光学素子成形装置。
【0017】
(10) 加熱軟化した光学素子材料を加圧成形する成形面を有する一対の成形型と、
少なくとも一方の前記成形型の外周に装着され、光学素子の外径を規制する外径規制部と、前記光学素子の外径を規制しない外径非規制部とを有する環状の外径型とを備える光学素子成形装置において、
前記光学素子の成形時に余剰の前記光学素子材料を収容可能な空間を有し、
前記外径規制部と前記外径非規制部とが前記外径型の周方向に沿って交互に設けられ、
前記外径非規制部は1つの大きさが前記外径型内周の全周360°に対し中心角が90°以下となるように形成されていることを特徴とする光学素子成形装置。
【0018】
(11) 前記空間は前記成形面の外周部に設けられている上記(10)に記載の光学素子成形装置。
【0019】
(12) 前記空間は前記外径型の内周面に形成された少なくとも1つの切り欠きにより設けられている上記(10)または(11)に記載の光学素子成形装置。
【0020】
(13) 前記空間は1つの大きさが前記外径型内周面の全周360°に対し中心角が90°以下となるように形成されている上記(10)ないし(12)のいずれかに記載の光学素子成形装置。
【0021】
(14) 前記外径非規制部は前記空間を備える上記(10)ないし(13)のいずれかに記載の光学素子成形装置。
【0022】
(15) 上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の光学素子成形装置を用いる光学素子の製造方法であって、
余剰の前記光学素子材料を前記成形面の外周部に設けられた空間に収容することを特徴とする光学素子の製造方法。
【0023】
(16) 前記光学素子材料はガラスを主成分とするものである上記(15)に記載の光学素子の製造方法。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光学素子成形装置を添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の光学素子成形装置の一例を示す概略断面図、図2は、図1に示す光学素子成形装置のA−A線断面図、図8は図1に示す光学素子成形装置に用いられる外径型の立体斜視図、図9ないし図11は図1に示す光学素子成形装置に用いられる下型の作製工程を示す断面図である。
【0026】
図1に示すように、本発明の光学素子成形装置1は、加熱軟化した光学素子材料を加圧成形する成形面21b、21aを有する上下1対の成形型(上型2b、下型2a)とを有する。
【0027】
上型2bと下型2aとは成形面21b、21aが対向するよう配設され、上型2bおよび下型2aの中心軸が一致するよう後述する胴型6a、6bによって調整されている。
【0028】
下型2aは、図1に示すように断面形状が略凸状であって、成形面21aの中心軸を中心に同心円状に段差部22およびフランジ24とが形成されている。
【0029】
成形面21aは、光学素子の光学機能面を形成する面を構成し、所望の光学素子の反転形状に形成されている。
【0030】
段差部22は、下型2aの外周面に設けられた切り欠きからなり、かかる段差部22には光学素子の外径を規制する外径型3が装着される。
【0031】
嵌合用外周部212は、その中心軸と成形面21aの中心軸とが一致するように形成されている。
【0032】
フランジ24は、胴型6aの凹部61と嵌合可能な形状をなしており、これにより下型2aは胴型6aに固定される。
【0033】
段差部22とフランジ24との間に設けられた外周縁部213は、成形面21aの中心線を定める基準であって、成形面21aの中心線と外周縁部213の中心線とは一致するよう形成されている。
【0034】
下型2a(上型2b)は、例えば図9ないし図11に示すような工程により作製される。以下、下型2aを例に説明する。
【0035】
まず、下型2aを構成する母材に、上述した成形面21a、段差部22、フランジ24、嵌合用外周部212および外周縁部213を形成する。
【0036】
次に、成形面21aの周縁部や段差部22の欠損、変形、ダレ等を防止するために、図10に示すような超硬合金(WC)製の加工ヤトイ4を装着する。
【0037】
この状態で、成形面21aを研削加工により所望の形状(非球面または球面)に形成する。その後、ダイヤモンド研磨材を用いて表面を研磨し、例えば最大表面粗さ(Rmax )=0.02μm以下とする。
【0038】
次に、加工ヤトイ4を除去し、成形面21aにスパッタリング等により、図11に示すように例えばPtからなる薄膜211を積層し、下型2aが作製される。
【0039】
このように薄膜211を積層することによって、成形面21aの耐熱性、耐酸化性、耐濡れ性等をより向上させることができる。薄膜211としては、Ptの他、Au等の貴金属およびこれらの金属を主とする合金、セラミックス等からなる薄膜が好ましい。
【0040】
薄膜211の成膜方法は、特に限定されず、スパッタリングの他に例えばイオンプレーティング等の方法が挙げられる。薄膜211の膜厚としては0.1〜5μm程度が好ましい。
【0041】
成形型の構成材料としては、高硬度材料からなるものが好ましく、例えば炭化珪素、窒化珪素、炭化チタン、窒化チタン、炭化タングステン等の炭化物、タングステンカーバイド系の超硬合金、モリブデン、タングステン、タンタル等の金属等やアルミナ、ジルコニア等の酸化物系セラミックス、窒化物セラミックス等を用いることができる。これにより、光学素子成形装置1の耐久性、耐熱性、耐食性等を大幅に向上させることができる。また、光学素子の成形時に成形型の摺動部において生じる、かじり、片当り、噛みつき等を防止することができる。
【0042】
下型2aの段差部22には外径型3が装着される。これにより外径型3は成形面21aの外周部に位置し、内周面で光学素子の外径を規制することができる。
【0043】
外径型3は、図8に示すように断面形状が円形の環状体であって、その内周面は、下型2aの段差部22に嵌合する嵌合部38と、下型2aに嵌合させた状態で成形面21aの外周部に位置する成形部39とから構成されている。
【0044】
嵌合部38の内径は嵌合用外周部212とほぼ等しく構成されており、外径型3を下型2aに固定することができる。
【0045】
成形部39には成形される光学素子の外径を規制する外径規制部35と、光学素子の外径を規制しない外径非規制部37とが周設されている。
【0046】
外径非規制部37は、図8に示すように成形部39に形成された少なくとも1つの切り欠きにより設けられている。したがって、外径非規制部37において光学素子材料5の余剰分を収容可能な空間33が形成される。
【0047】
光学素子材料の供給量のばらつき等を考慮すると、外径非規制部37の内径は、成形面21aの外径に比べ約3〜15%程度大きく設けられていることが好ましい。外径非規制部37の内径があまりに大き過ぎると、外径型3全体が大径化する等の無駄を生じ、一方、外径非規制部37の内径を成形面21aの外径とあまりに近似させると空間33が十分な大きさをもつことができず余剰の光学素子材料を収容できなくなるおそれがある。
【0048】
外径規制部35の内径は、図1等に示すように成形面21aの径とほぼ等しくなるように構成されている。これにより、成形面21aの周縁に外径規制部35の内周面によって衝面が形成され、かかる衝面で光学素子は所定の外径に規制される。
【0049】
このように、本発明の光学素子成形装置は、外径型3が外径規制部35と外径非規制部37とを有し、余剰の光学素子材料5を収容可能な空間33を有することにより、外径規制部35により光学素子の外径が規制されるとともに、外径非規制部37から光学素子材料の余剰分が径方向に逃がされ、空間33に収容される。したがって、常に形状精度に優れた光学素子を形成することができ、後工程において光学素子の芯取り作業を不要とすることができる。また、光学機能面の形状精度の維持・向上を図ることができる。
【0050】
本実施形態の外径型3は、中心角が30°に相当する大きさの3つの外径規制部35と、中心角が90°に相当する大きさの3つの外径非規制部37とから構成されており、外径規制部35と外径非規制部37とは各々等間隔に配置されている。
【0051】
このように、外径規制部35および外径非規制部37のうち少なくとも一方を等間隔に設けることにより、成形部39における外径非規制部37の占める割合をより大きくすることができ、光学素子の偏肉の程度を抑制することができる。
【0052】
1つの外径非規制部37は、外径型内周の全周360°に対し中心角が90°以下となるように形成されていることが好ましい。
【0053】
1つの外径非規制部37が中心角90°を超える大きさである場合、成形された光学素子を例えば鏡筒内に挿着した場合、光学素子の外径(形状)と鏡筒の内径とのクリアランスにより生じる最大軸ずれ量が大きくなり、光学的精度が低下する場合がある。これについて図12を用いて説明する。
【0054】
図12は、光学素子の外径と最大軸ずれ量との関係を示す図である。光学素子100および鏡筒103の断面形状が円形の場合を例にとって説明する。
【0055】
光学素子100は、中心点O’から中心角90°(<PO’Q)相当する外周部分は直線PQで構成されている。したがって光学素子100の外周の直線PQ部分は外径が規定されておらず、その他の外周部は外径が規定されている。なお、点線は鏡筒103の中心点と光学素子100との中心点が一致する場合の光学素子103の位置を示す。
【0056】
この場合、光学素子100の鏡筒103内での最大軸ずれ量Sは、鏡筒103の中心点Oと、実線で示された光学素子100の中心点O’との距離で表される。
【0057】
したがって、光学素子100の最大軸ずれ量Sは、△PO’Oについて余弦定理から下記式(I)で計算される。
【0058】
S=1/2 ×(φ1cosθ+(φ1 2cos2θ−φ1 2+φ2 21/2)・・・(I)
(φ1 は光学素子100の外径、φ2 は鏡筒103の内径、θは<PO’Oの角度を表す。なお、φ1 =2r1 、φ2 =2r2 であり、r1 は光学素子100の半径、r2 は鏡筒103の半径を表す。)
【0059】
光学素子100の外径φ1 が規定されていない部分(直線PQ部分)が、中心角90°に相当する場合、<PO’Q=90°であるから、
θ=1/2×(360°−90°)=135°となる。
【0060】
例えば、φ1 =12.00mm、φ2 =12.01mmとすると、上記式(I)から、最大軸ずれ量Sは0.007mmとなる。
【0061】
一方、上記の場合、全外周が外径φ1 で規定された光学素子では最大軸ずれ量Sは、
S=1/2 ×(φ2 −φ1 )=0.005mmとなる。
【0062】
このことから、1つの外径非規制部37が中心角90°以下となるように形成されていれば、鏡筒に取付けた状態でも十分な光軸精度を維持し得るものといえる。すなわち、1つの外径非規制部37は、中心角が小さいほど最大軸ずれ量Sは小さくなり、全外周にわたって外径を規制する場合のずれ量に近づく。
【0063】
また、外径非規制部の1つが中心角90°以下であれば、成形部39の内周面に複数設けられていてもよい。
【0064】
一方、1つの外径非規制部37が外径型内周の全周360°に対し中心角90°を超えると、最大軸ずれ量Sが大きくなり、光学素子の光軸精度を十分に満足することができなくなるおそれがある。
【0065】
このことから、外径非規制部37の1つの大きさは、外径型内周面の全周360°に対し中心角が90°以下になるように形成されていることが好ましい。
【0066】
これにともない、空間33の1つの大きさは外径型内周面の全周360°に対し中心角が90°以下になるように形成されていることが好ましい。
【0067】
外径型3は、下型2aと段差部22において装着した状態で、成形面21aの中心軸と外径型3との中心軸(外径軸)とが一致するように構成されていることが好ましい。これにより成形される光学素子の光軸精度の向上を図ることができ、後工程での芯取り加工を不要とすることができる。
【0068】
外径規制部35の内周面は、前記成形面21aの中心軸と平行な面となるように形成されている。外径規制部35は、成形面21aおよび21bとともに光学素子材料を所定の形状に成形するキャビティーの一部を構成するため、光学素子の取出し方向(成形面21aから上面34)に対して、内径が等しく形成されていることにより、光学素子の取出しを容易に行うことができる。
【0069】
外径型3の外径規制部35の高さは0.1mm以上であることが好ましく、0.1mm〜2mm程度であることがより好ましい。外径規制部35の高さとは、例えば図5に示すように、成形面21aの周縁から外径型3の上面34までの内周面側の高さhを意味する。
【0070】
外径規制部35の高さが0.1mm未満であると、例えば、図5に示すように成形された光学素子を外径が規制された部分のみで鏡筒内に嵌着する場合、固定が不十分でガタツキを生じるおそれがある。一方、外径規制部35の高さがあまりに大き過ぎる場合、光学素子の型からの取出しが困難になるおそれがある。
【0071】
外径型3の構成材料としては特に限定されず、下型2a(上型2b)と同様の高硬度材料を挙げることができるが、なかでも熱膨張係数が下型2aと近似するものであることがより好ましい。これにより、成形工程において成形型の加熱、冷却を繰り返し行った場合でも外径型3と下型2aとの嵌合状態を維持することができ、軸ずれ等を生じるおそれがない。
【0072】
下型2aは、円筒状の下部胴型6aに挿入され、フランジ24を下部胴型6aの凹部61に嵌合させることにより固定されている。下部胴型6aの内径部の中心軸と成形面21aの中心軸とは一致するよう予め調整されている。
【0073】
上型2bは、下型2aと同様にフランジ24を上部胴型6bの凹部61に嵌合させることにより上部胴型6bに固定されている。そして、両者の中心軸は一致するよう調整されている。
【0074】
さらに、下部胴型6aおよび上部胴型6bは、各々の中心軸が一致するよう配置されている。これにより成形面21aと成形面21bの中心軸が一致し、成形される光学素子の面相互の軸ずれや傾きの発生を抑制することができる。
【0075】
下部胴型6aおよび上部胴型6bを構成する材料としては特に限定されず、例えばWC等が挙げられるが、加熱時に熱膨張等によるガタつきの発生を防止するために、各々下型2a、上型2bとほぼ等しい熱膨張係数を有する材料が好ましい。
【0076】
下部胴型6aおよび上部胴型6bは、図示しないボルト等の固定手段により、各々固定した型支持部材7、可動上型支持部材8に脱着可能に固定されている。
【0077】
可動上型支持部材8は、駆動機構(図示せず)により中心軸に沿って上下方向に駆動される。
【0078】
なお、1つの成形装置で複数の光学素子を成形する場合には、例えば下型2aと固定下型支持部材7との間に光学素子の肉厚を調整するためのスペーサ71を介在させることがより好ましい。
【0079】
次に、本発明の光学素子成形装置を用いた光学素子の成形方法の一例を図1ないし図5にしたがって説明する。
【0080】
光学素子成形装置1に図示しない光学素子材料搬送手段により光学素子材料5が搬送され、下型2aの成形面21a上に供給される。
【0081】
光学素子材料5は、ガラス材料、樹脂材料のいずれでもよいが、ガラスを主成分とするものがより好ましい。これにより、より高精度かつ耐熱性の良好な光学素子を成形することができる。
【0082】
光学素子材料5が供給されたら可動上型支持部材8が移動し、成形面21bが光学素子材料5に接触しない程度に接近する。
【0083】
可動上型支持部材8の付近には、昇降可能な石英管10が配設されており、この石英管10は、図3に示す押圧成形時には下降して成形面21a、21bの周囲に閉空間を形成する。
【0084】
この状態で、石英管10の周囲に配設されたヒータ11に通電し、成形型全体を加熱する。
【0085】
このとき、石英管10の閉空間内に不活性ガスを導入することが好ましい。これにより、光学素子材料、型材料の酸化反応等を抑制することができる。導入される不活性ガスとは、例えば希ガスや窒素ガス、およびこれらの混合ガス等が挙げられる。
【0086】
熱電対12が所定の温度に達した段階で、さらに可動上型支持部材8が下降し、図3に示すように外径型3の上面34が上型2bに当接するまで上型2bを移動させる。このとき、上型2b、下型2aおよび外径型3とでキャビティーが形成される。
【0087】
光学素子材料5の加熱温度は、400〜800℃程度とすることが好ましい。また、成形時のプレス圧は成形する光学素子の大きさや個数等により適宜設定されるが、50〜2000kgf/cm2 程度とすることが好ましい。
【0088】
このように加熱・加圧されると、図3および図4に示すように光学素子材料5は成形面の径方向に圧延される。圧延された光学素子材料5は、外径規制部35の内周面に圧接し光学素子の外径が規制される。余剰の光学素子材料が供給された場合には、外径非規制部37から外周方向にはみ出し、空間33内へ押し出される。
【0089】
このように、外径規制部35で光学素子の外径を規制する一方で外径非規制部37で余剰の光学素子材料(余肉51)を空間33内へ逃がすことにより、光学素子成形装置1に供給される光学素子材料の容量に多少バラツキがあっても、成形される光学素子外径の寸法精度を維持することが可能である。
【0090】
さらに、余肉51は光学素子の形状精度を維持する必要のない部分へ押出されるため、光学機能面の精度には影響を与えることはない。
【0091】
成形終了後および冷却過程においても、光学素子材料の熱収縮により生じるヒケを防止し、光学素子の光学機能面の面精度を保持するために、加圧状態を維持しておく。
【0092】
成形終了後、石英管10を上昇させ閉空間を開放し、成形された光学素子を取出す。
【0093】
図5は、外径が規定された部分のみで光学素子を鏡筒に固定する場合の光学素子の製造方法を示す断面図である。
【0094】
この場合、外径規制部35の高さhに相当する部分で光学素子の外径が規制され、かかる部分は光学素子の鏡筒取付け基準面52を構成する。
【0095】
余剰の光学素子材料5が供給された場合には、上記と同様、余剰分は成形面21aの外周部に設けられた空間33に収容されるため、成形される光学素子の外径の寸法精度を維持することが可能である。
【0096】
また、光学素子の外径を規制し、鏡筒取付け基準面52を設けることにより、レンズ等の曲率のついた外径(鏡筒取付け基準面)に対する偏芯精度が向上する。
【0097】
図6および図7は、本発明の光学素子成形装置の他の実施形態を示す断面図である。図1〜図5および図8に示した第1実施形態の光学素子成形装置と同一構成および同一部材には同一符号を付し、説明を省略する。
【0098】
本実施形態の光学素子成形装置1では、外径型3は2つの外径規制部35と2つの外径非規制部37とを備えている。
【0099】
2つの外径非規制部37は、各々成形面21bの外径型内周の全周360°に対し中心角90°に相当する大きさに設けられている。一方、外径規制部35は、1つが中心角160°、他方が中心角20°に相当する大きさに設けられている。
【0100】
外径規制部35の内周面には、図6に示すように外径型3の上面34から成形面21aに向けて内径が漸減するテーパ部351が設けられている。これにより、光学素子の離型性が向上し、取出しを容易にすることができる。また、成形面の曲率が大きな場合であっても光学素子は容易に取出すことができる。
【0101】
また、テーパ部351を鏡筒の取付け部に設けられたテーパ部と嵌合可能に形成することにより、光学素子の組立て上の操作性がより向上する。
【0102】
さらに、テーパ部351は、テーパ面の傾斜がすべて等しくなるよう設けられていることが好ましい。これによって光学素子外径の規定精度の維持・向上を図ることができる。
【0103】
以上、本発明の光学素子成形装置およびこの装置を用いた光学素子の製造方法を図示の各実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各手段の構成は同様の機能を有する任意の構成に置換することができる。
【0104】
例えば、本発明の外径型は下型に装着される場合に限定されるものではなく、上型のみまたは上型、下型の両方に装着するものであってもよい。また、上下型を構成する成形型および成形面は任意の構成とすることができ、例えば、成形面を備える別部材が成形型の一部に取付けられた構成としてもよい。
【0105】
また、余剰の光学素子材料を収容する空間は、外径型の外径非規制部に設けられている場合に限られるものではなく、その他の部分に設けられているものでもよい。
【0106】
さらに、本発明の光学素子成形装置により成形される光学素子は、凸レンズに限られず、凹面レンズ、非球面レンズ、シリンドリカルレンズ等、種々の光学素子を成形することができる。
【0107】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0108】
(実施例1)
図1に示す光学素子成形装置1を用いて光学素子を成形した。
【0109】
まず、下型2aを成形面21a側から下部胴型6aに挿入し、フランジ24で下部胴型6aの凹部61と嵌合させて装着し、固定下型支持部材7に取り付けた。このとき、下型2aの底面と固定下型支持部材7との間にスペーサ71を介在させた。
【0110】
次に、下型2aの段差部22と下部胴型6aの内周面とで形成された凹部に外径型3を嵌入した。なお、外径型3の外径規制部35の高さは0.5mmとした。
【0111】
上型2bを成形面21b側から上部胴型6bに挿入し、フランジ24で凹部61と嵌合させて装着し、可動上型支持部材8に取り付けた。
【0112】
成形面21b上に光学ガラスVC78(住田光学ガラス社製)からなる光学素子材料5(プリフォーム)を載置した。
【0113】
次に、上型2bの成形面21bと光学素子材料5との距離が0.5mmになるよう可動上型支持部材8を降下させた後、石英管10を降下させて成形面21bを覆い、石英管10内をN2 ガス雰囲気とした。
ヒータ11に通電することにより加熱し、型温度は熱電対12により測定した。
【0114】
型温度(光学素子材料の加熱温度)が580℃に達した時点で、可動上型支持部材8をさらに下降させて光学素子材料5の加圧成形を開始した。成形時の加圧力は200kgf/cm2 とした。
【0115】
光学素子材料5は加熱により軟化し、上下の型による押圧にしたがって成形面21a、21bに沿って径方向に拡がった。
【0116】
外径規制部35では、光学素子材料5はその内周面に接触し、径方向への拡がりが規制された。余剰のプリフォームは外径非規制部37から空間33に流入し、余肉51として収容された。
【0117】
(実施例2)
図6および図7に示すように、外径規制部35にテーパ部351および外径非規制部37にテーパ部371(図示せず)が設けられた外径型3を使用した以外は、実施例1と同様にして光学素子を成形した。
【0118】
(比較例)
外径型として外径規制部のみが形成され、外径非規制部が形成されていないものを使用した以外は、実施例1と同様にして光学素子を成形した。
【0119】
実施例1および実施例2で製造された各光学素子は、いずれも所望の形状に成形され外径の寸法精度にも優れ、後工程での芯取りが不要であった。また、光学機能面も良好に転写されていた。
【0120】
また、各光学素子の光軸と外径軸とが偏芯することなく、容易かつ精密に鏡筒への組み込みを行うことができた。
【0121】
さらに実施例2では、外径型にテーパ部が設けられているため、光学素子の取出しが非常に容易であった。
【0122】
一方、比較例の光学素子成形装置では、余剰の光学素子材料の収容部が設けられていないため、光学素子材料の供給量のばらつきが成形される光学素子の肉厚のばらつきとなり、形状精度に劣るものとなった。
【0123】
また、外径型内に成形品全体が収まるために接触面積が大きく、取出しが非常に困難であった。
【0124】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の光学素子成形装置によれば、光学素子の外径を規制するとともに光学素子材料(プリフォーム)の余剰分を収容することができるため、プリフォームの厳密な体積管理が不要となるだけでなく、光学素子の外径を厳密に確保することができ、高精度の光学機能面を有する光学素子を成形することができる。
また、後工程での芯取りが不要となり、製造コストの低減を図ることができる。
【0125】
さらに、本発明の方法で製造された光学素子は外径精度に優れ、後工程で芯取りを行う場合よりも偏芯精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学素子成形装置の一実施形態の成形部を示す断面図である。
【図2】図1に示す光学素子成形装置のA−A線断面図である。
【図3】図1に示す光学素子成形装置において成形過程を示す断面図である。
【図4】図3に示す光学素子成形装置のB−B線断面図である。
【図5】図1に示す光学素子成形装置において他の成形過程を示す断面図である。
【図6】本発明の光学素子成形装置の他の実施形態の要部を示す断面図である。
【図7】図6に示す光学素子成形装置のC−C線断面図である。
【図8】図1に示す光学素子成形装置の外径型を示す斜視図である。
【図9】本発明の光学素子成形装置の要部の製造工程を示す断面図である。
【図10】本発明の光学素子成形装置の要部の製造工程を示す断面図である。
【図11】本発明の光学素子成形装置の要部の製造工程を示す断面図である。
【図12】光学素子の外径と、鏡筒の中心軸と光学素子と光軸のずれとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 光学素子成形装置
2a 下型
2b 上型
21a、21b 成形面
22 段差部
24 フランジ
211 薄膜
212 嵌合用外周部
213 外周縁部
3 外径型
31 成形面内周面
32 外周面
33 空間
34 上面
35 外径規制部
351 テーパ部
37 外径非規制部
371 テーパ部
38 嵌合部
39 成形部
4 加工ヤトイ
5 光学素子材料
51 余肉
52 鏡筒取付け基準面
6a 下部胴型
6b 上部胴型
61 凹部
7 固定下型支持部材
71 スペーサ
8 可動上型支持部材
10 石英管
11 ヒータ
12 熱電対
100 光学素子
103 鏡筒

Claims (16)

  1. 加熱軟化した光学素子材料を加圧成形する成形面を有する一対の成形型と、
    少なくとも一方の前記成形型の外周に装着される環状の外径型とを備える光学素子成形装置において、
    前記外径型は成形される光学素子の外径を規制する外径規制部と、前記光学素子の外径を規制しない外径非規制部とを有し、
    前記外径規制部と前記外径非規制部とが前記外径型の周方向に沿って交互に設けられ、
    前記外径非規制部は1つの大きさが前記外径型内周の全周360°に対し中心角が90°以下となるように形成されていることを特徴とする光学素子成形装置。
  2. 前記外径規制部は、前記1対の成形型のうちに少なくとも一方の成型面の径とほぼ等しい内径を有し、前記外径非規制部は、前記1対の成形型のうちに少なくとも一方の成型面の径よりも大きい内径を有する請求項1に記載の光学素子成形装置。
  3. 前記外径規制部および前記外径非規制部は各々前記外径型の内周面に周設されている請求項1または2に記載の光学素子成形装置。
  4. 前記外径非規制部は前記外径型の内周面に形成された少なくとも1つの切り欠きにより設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の光学素子成形装置。
  5. 前記外径規制部および前記外径非規制部のうち少なくとも一方は前記外径型の周方向に等間隔に設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載の光学素子成形装置。
  6. 少なくとも前記外径規制部の内周面は前記成形面の中心軸と平行な面となるよう形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の光学素子成形装置。
  7. 少なくとも前記外径規制部の内周面に前記外径型の上面から前記成形面に向けて内径が漸減するテーパ部が形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の光学素子成形装置。
  8. 前記テーパ部のテーパ面の傾斜がすべて等しくなるよう設けられている請求項7に記載の光学素子成形装置。
  9. 前記外径型の外径規制部の高さが0.1mm以上である請求項1ないし8のいずれかに記載の光学素子成形装置。
  10. 加熱軟化した光学素子材料を加圧成形する成形面を有する一対の成形型と、
    少なくとも一方の前記成形型の外周に装着され、光学素子の外径を規制する外径規制部と、前記光学素子の外径を規制しない外径非規制部とを有する環状の外径型とを備える光学素子成形装置において、
    前記光学素子の成形時に余剰の前記光学素子材料を収容可能な空間を有し、
    前記外径規制部と前記外径非規制部とが前記外径型の周方向に沿って交互に設けられ、
    前記外径非規制部は1つの大きさが前記外径型内周の全周360°に対し中心角が90°以下となるように形成されていることを特徴とする光学素子成形装置。
  11. 前記空間は前記成形面の外周部に設けられている請求項10に記載の光学素子成形装置。
  12. 前記空間は前記外径型の内周面に形成された少なくとも1つの切り欠きにより設けられている請求項10または11に記載の光学素子成形装置。
  13. 前記空間は1つの大きさが前記外径型内周面の全周360°に対し中心角が90°以下となるように形成されている請求項10ないし12のいずれかに記載の光学素子成形装置。
  14. 前記外径非規制部は前記空間を備える請求項10ないし13のいずれかに記載の光学素子成形装置。
  15. 請求項1ないし14のいずれかに記載の光学素子成形装置を用いる光学素子の製造方法であって、余剰の前記光学素子材料を前記成形面の外周部に設けられた空間に収容することを特徴とする光学素子の製造方法。
  16. 前記光学素子材料はガラスを主成分とするものである請求項15に記載の光学素子の製造方法。
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