JP4129947B2 - 毛管凝縮効果を利用した接着方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微小構造体〔以下、マイクロ(μ)構造体あるいはミクロ構造体ということがある。〕を構成する要素(部材、部品)同士を接着する場合に、特に有用な新規な接着方法を提供しようとするものである。
【0002】
更に詳しくは、本発明は、ディメンションがますます小さくなりつつある要素(部材、部品)を用いて微小構造体を製造、製作する上で重要なこれら微小な要素(部材、部品)の間の接着方法として、微小な要素(部材、部品)の接合点(当接点)に毛管凝縮により安定的に接着剤のメニスカスを発生させ、これにより接着するという全く新しい接着方法を提供しようとするものである。
【0003】
【従来の技術】
最近、マイクロマシンという用語が示すように機械あるいはその構成要素の微小化(マイクロ化)が進展している。
例えば、半導体装置プロセスを応用した一括製作方式によるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により、直径が0.1mm以下のマイクロモータ、マイクロタービン、ギヤトレーンなどが製作されている。これら微小な要素(部材、部品)を組立ててマイクロマシンが構成されることはいうまでもないことである。
【0004】
また、PC(パーソナルコンピュータ)のモバイル化、CPU(中央演算処理装置)の高性能化に伴うファイルの大容量化、などにより、軽小かつ大容量の磁気記憶装置などが開発されて来ており、その構成要素(部材、部品)も微小化されている。
【0005】
マイクロマシンをはじめマイクロ(μ)構造体を利用する分野において、マイクロ(μ)サイズの構造体(部材、部品)の固着は、ワイヤーボンディングをはじめとするはんだ付け、シリコン系材料のものにおいては高温真空下での拡散接合、などの方法が採用されている。
【0006】
しかしながら、マイクロ(μ)構造体の大きさ(ディメンション)がより微小化されたものにおいて、二つの固着対象物の間の固着点(接合点)をミクロ的に考察してみると、その表面は微細な凹凸構造のものであり、これらミクロ構造が真実に接触する面(あるいは点)での固着(接合)、別言すれば真実接着面あるいは真実接着点のみでの選択的な固着(接合)、が問題になってくる。もとより、固着(接合)強度の観点から真実接着面(点)での選択的固着(接合)が好ましいことはいうまでもない。
【0007】
前記したことから、微小構造体の各要素(部材、部品)を固着(接合)する方法としては、従来のマクロな構造体を対象としてきた前記ワイヤーボンディングなどの溶接やはんだ付けあるいはその他の方法は、微小構造体の固着(接合)手段としては信頼性や経済性などの観点から不適切なものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した従来技術の限界に鑑み創案されたものである。
本発明者は、微小構造体、例えばディメンションが数mm以下のマイクロ(μ)構造体の各構成要素(部材、部品)を強固かつ経済的に接合させる方法について鋭意検討した。
【0009】
その結果、本発明者は、マイクロ(μ)構造体(前記した小型化された磁気記憶装置やマイクロマシンなど)の軽加重下で相対運動する摺動部の2面間に作用する「表面間力」(詳しくは後述するが、その主たる力は「メニスカス力」である。)に起因した高い摩擦と激しい摩耗によるシステムダウンや短命化の解消、という研究の中から微小な要素(部材、部品)の当接部(接合部)に安定的に接着剤から成るメニスカス(meniscus)を形成することができること、これにより微小な要素(部材、部品)同士を接着させることができるという知見を得た。
【0010】
本発明は、前記した知見をベースにして完成されたものである。
本発明により、ディメンションが数mm以下などの微小(マイクロ)構造体の各要素(部材、部品)、あるいは、真実接着面積と見掛接触面積の比が25,000分の1以下などというオーダの微小構造体の各要素(部材、部品)、別言すれば、当接する両者の表面構造が鏡面構造に近く、表面間力が大きく作用するもの同士の接着方法として、両要素(部材、部品)の接合点に接着剤の毛管凝縮によるメニスカスを形成させ、当該メニスカス中の接着剤により両要素(部材、部品)を強固かつ経済的に接着するという毛管凝縮効果を利用した新規な接着方法が提供される。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも二つの分離された接着対象物を所定の接合点において接着する接着方法において、その接着対象物の所定の接合点及び接合点の近傍に液体が存在する場合に形成されるメニスカスの領域(以下、接合点及びメニスカスの領域を合わせて接合部という)に、蒸気化した接着剤を毛管凝縮させることにより液体として配置し、この接合部で接着対象物を接着する毛管凝縮効果を利用した接着方法に関するものである。
【0012】
より具体的には、本発明は毛管凝縮効果を利用した接着方法において、接着対象物が接着剤の所定の蒸気圧から成る雰囲気下に配置されるとともに、接合部において接着剤を毛管凝縮させることによりメニスカスを形成させ、このメニスカスを構成する接着剤により接着対象物を接着する接着方法に関するものである。
【0013】
更に、本発明は毛管凝縮効果を利用した接着方法において、接着剤が、接着成分と接着成分を硬化するための硬化剤の二成分で構成され、第一段階で、接着成分の毛管凝縮によるメニスカスが形成され、第二段階で、この接着成分のメニスカスの表面に硬化剤の毛管凝縮によるメニスカスが形成されることで、接着成分を硬化させるとともに接着対象物を接着する接着方法に関するものである。
【0014】
更にまた、本発明は毛管凝縮効果を利用した接着方法において、少なくとも二つの分離された接着対象物を所定の接合点において接着する接着方法において、
前記接着対象物の少なくとも一方の接合部に、予め流動性の接着剤の層を形成した接着対象物を用い、前記接合部において、
・前記流動性の接着剤の接着成分のマイグレーションによるメニスカスを形成させた後、
・前記接着対象物を蒸気化した硬化剤の所定の蒸気圧から成る雰囲気下に配置するとともに、前記接着成分のメニスカスの表面に前記硬化剤の毛管凝縮によるメニスカスを更に形成し、
前記接着成分を硬化させるとともに前記接着対象物を接着する接着方法に関するものである。
【0015】
以下、本発明の技術的構成及び実施態様について詳しく説明する。
【0016】
本発明の新しい毛管凝縮効果を利用した接着方法は、前記「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、マイクロ(μ)構造体(微小構造体)の摺動部の2面間に作用する「表面間力」、特に「メニスカス力」に起因した高い摩擦と激しい摩耗によるシステムダウンや短命化の解消、という本発明者の研究の中から逆転の発想により創案されたものである。
【0017】
本発明の技術的構成の理解に資するために、前記したマイクロ(μ)構造体における「表面間力(主としてメニスカス力)」の解消に関する本発明者の研究の概要を以下に説明する。
【0018】
イ).「マイクロ(μ)」構造体を扱う技術分野においては、従来の「マクロ」構造体のもとで発達して来たマニュピレーション技術やシステム設計論は役に立たない。
ロ).これは、「マクロ」な領域において無視して来た「表面間力」が大きく作用することになり、物理現象が大きく変化するためである。即ち、質量は寸法の3乗に比例して小さくなるが、表面積は寸法の2乗に比例して小さくなる。このため、相対的に表面積に比例する「表面間力」が、体積に比例する重力や慣性力よりも大きな影響力をもつことになるためである。
ハ).「表面間力」の具体例は、原子間力や流体の表面張力に起因する「メニスカス力」が、近接あるいは接触している「表面間」に「付着力」(注)として作用する現象である。
(注)2面間に作用する「付着力」は、より厳密には、▲1▼ファン・デル・ワールス力、▲2▼静電気力、▲3▼メニスカス力(液体架橋による付着力)の3つがある。このうち、「マイクロ(μ)」構造体の製造やオペレーションの段階で問題になる大半のものは「メニスカス力」である。
ニ).従って、「マイクロ(μ)」構造体(前記した磁気記憶装置やマイクロマシン等)の摺動部など、軽荷重下で相対運動する2面間に「表面間力」、即ち、「メニスカス力」が作用すると、高い摩擦と激しい摩耗が誘発され、システムダウン、短寿命化の問題が生じる。
ホ).前記した「マイクロ(μ)」構造体における「表面間力(メニスカス力)」の解消策として、即ち「メニスカス力」を低減させるための方策として、表面を適度な粗さにするテクスチャリング法(texturing)などが提案されている。
なお、微小(マイクロ)機械システムの更なる微小化に対応して、前記したテクスチャリング法においてもマイクロメートル(μm)スケールの表面粗さからナノメートル(nm)の表面粗さを重視した研究が進められている。
【0019】
前記した「メニスカス」の発生機構及び「メニスカス」による付着力(「メニスカス力」)の概要を、以下に説明する。
【0020】
1).図1は、表面が滑らかな半径Rの球と表面が滑らかな平面が接触し、かつ、接触点近傍に「液体」が存在する場合に、接触点近傍に形成される「メニスカス」を示している。
図2は、前記図1の要部拡大図である。
2).前記した「メニスカス」の発生機構は、
・ 湿った雰囲気からの毛管凝縮、
・ 表面に既に存在する液体のマイグレーション、
が考えられる。
3).表面が乾燥状態の2面の接触部では、前者、即ち毛管凝縮(熱力学的平衡過程)がメニスカス力発生の主要機構である。
この場合、メニスカス半径(r1 )はケルビン半径(rκ)と等しくなり(r1 =rκ)、前記ケルビン半径(rκ)は次式で表される(図1参照)。
κ=γV/〔RTlog(p/ps)〕…………(1.1)
γ :水の表面エネルギー
V :モル体積(分子1個当りの体積)
:気体定数
T :絶対温度
p :水の蒸気圧
ps:水の飽和蒸気圧
p/ps:相対温度
を示す。
なお、20℃においては、γV/〔RT〕=0.54nmとなるので、ケルビン半径(rκ)は次式で表される。
κ=0.54/〔log(p/ps)〕…………(1.2)
4).図1〜図2において、平衡状態のメニスカス高さ(h)及びメニスカス直径(w)は、次式で表される。
h=rκ(cosθ1 +cooθ2 ) …………(1.3)
w=2◆(2Rh) …………(1.4)
但し、
θ1 ,θ2 :球と平面に対する水の接触角
R:接触している球の半径
を示す。
5).前記したときの大きさのメニスカスによる付着力(「メニスカス力」) 「Fp」は、ラプラス圧(γ/rκ)に作用面積〔π・(w/2)2〕 を掛けたものであり、次式で表される。
Fp=2πRγ(cos1 +cooθ2 ) …………(1.5)
なお、メニスカス力(Fp)のベクトルは、二つの平面が引き合う方向に作用する。
【0021】
前記したように、本発明の新しい毛管凝縮効果を利用した接着方法は、微小(マイクロ)構造体の摺動部などの2面間に作用するメニスカス力によるマイクロ構造体のシステムダウン、短寿命化の問題を解消するという研究の方向、例えば当該マイクロ系での最適なテクスチャリング法(texturing)によるメニスカス力の減少化という研究の方向、とは全く逆の発想により生まれたものである。
即ち、マイクロ構造体、マイクロ機械系におけるメニスカス力の解消という方向ではなく、逆に合目的にメニスカス力を増大させ2面間を固着させてしまう方向で本発明が生まれたものである。
【0022】
本発明は前記した逆転の発想で生まれたものであり、メニスカス力の発生部位、別言すれば予め設定された微小(マイクロ)構造体の各要素(部材、部品)の微小な接合点において、いかに安定して接着剤からなるメニスカス(meniscus)を形成し、当該メニスカス中の接着剤により接合点において強固に固着するか、という点に核心がある。
本発明は、前記したように微小(マイクロ)構造体、マイクロ機械系において、メニスカス形成部位を積極的に接合点(接着点)として活用しようとするものである。
【0023】
本発明の毛管凝縮効果を利用した接着法は、微小(マイクロ)構造体の各要素(部材、部品)間の接着に適用することができるものであり、接着対象物としては、これら要素系の所定の接合点において接着剤(本発明において、この「接着剤」という用語は、後述するように最広義に解釈されるべきである。)の毛管凝縮によりメニスカス(meniscus)が生じるものであれば特段に制約を受けない。
【0024】
毛管凝縮によるメニスカス(meiniscus)の発生は、前記したように、例えば所望の湿度の雰囲気下において表面が平滑な球体と平面体が接触している系において、当該接触部において毛管凝縮(熱力学的平衡過程)によりメニスカスが発生する。
本発明において、前記した表面が平滑な球体と平面体などの接触対象物は、前記メニスカスを介して接着されるが、接着強度に優れた接着体を得るという観点から所望のディメンションのものであることが好ましい。
なお、本発明において表面が平滑な球体という用語は、湾曲した凸表面を有する物体、マクロ的には平滑にみえるがミクロ的には微細な凹凸表面を有する物体、などを意味し、最広義に解釈されるべきである。
【0025】
以下、前記した観点から、本発明の毛管凝縮効果を利用した接着法に適用される接触対象物について、特にその表面特性やディメンションについて説明する。なお、接着強度は、形成されるメニスカス体積(volume)や接着剤の性能にも強い相関を有することから、接着対象物をディメンションのみから規定することは1つの目安と考えるべきである。
【0026】
まず、マクロな系での接着メカニズムと本発明が対象とする微小、ミクロの系での接着メカニズムについて説明する。
マクロな系、例えば接着対象物(ワーク)の大きさが数10センチ〜数メートルのオーダの系においては、ワーク同士の接合点における接触に寄与する突起の数と接触面積は見掛よりも非常に小さく、さらにその表面に働く力が慣性力や重力が支配的であるため毛管凝縮効果を利用した接着方法では十分な接着力(接着強度)が得がたい。但し、例外として、水が二枚のスライドガラス(これは鏡面構造で表面が極めて平滑である。)の間に入ったときなどは、異常な付着強度を示すことから、マクロな系においても表面が極めて平滑な場合は例外である。
【0027】
これに対して、ミクロな系においては、ミクロ化するために必要な加工精度の向上(表面の平滑度が維持される。)、ミクロ系では慣性力や重力に比較して表面間力が支配的になること、などから少ない真実接触点における接着のみで十分な接着強度が得られることになる。
【0028】
本発明の毛管凝縮効果を利用した接着法において、接着対象物(ワーク)の大きさは、例えば球体と平面体の接着の場合、数ミリメートル(mm)以下のディメンションのものが好ましい。
【0029】
以下、本発明の接着対象物(ワーク)の大きさの一応のディメンションについて、前記図1〜図2を利用して説明する。
【0030】
いま、雰囲気制御(特に接着剤の蒸気圧制御)が可能なチャンバー内に設置された表面が極めて滑らかな窒化珪素球(球体)と窒化珪素板(平板)の接着対象物(ワーク)を用い、接合点に接着剤のメニスカスを毛管凝縮効果により凝縮させ、その後、接着剤を硬化させる接着方法を例にとり、本発明の接着対象物の大きさの一応のディメンションについて説明する。
【0031】
前記した接着方法において、ワーク(球体)が安定的に接着される接着力(メニスカス力、Fp)を、ワーク(球体)の重量と同じ引張荷重で安定であると仮定する。即ち、単位面積当りの引張りの接着強度を10MPとする。
また、接着剤の種類によって異なるが、ワークに対する接触角(θ1,θ2)を30度とする。
【0032】
以上の仮定により安定的にワーク(球体)が接着される可能領域(接着可能領域)を、ワーク(球体)の半径R(mm)と雰囲気(接着剤)の相対蒸気圧(P/Ps)の関係で求める。結果を図3に示す。
図3より、次のことが判る。
(1).前記した仮定のもとでワーク(球体)は、球体半径5mm程度まで安定的に接着される。
(2).ワーク(球体)のディメンションが大きくなるほど、接着に必要な雰囲気の相対蒸気圧は高くなる。
【0033】
前記したワーク(球体)の半径5mmの場合、ワーク(球体)の接着面積(A)とその重量(W)比(A/W)は、3.0×10-9(m2/g)となり、これ以上であればワーク(球体)が安定的に接着されることが判る。
【0034】
本発明の接着方法に適用される接着対象物(ワーク)の大きさについて、別の角度から説明する。
原子間力顕微鏡AFM(Atomic Force Micrometer)の観察により、接着対象物が平面同士で接触していると仮定した場合、真実接触面積(S1 )の見掛接触面積(S2 )に対する比(S1 /S2 )が、25,000分の1以下のオーダのときに雰囲気中の蒸気成分は毛管凝縮により効率的にメニスカスを形成することが観察される。
なお、メニスカスの体積は、蒸気圧がその飽和蒸気圧との比で60%を越えるようになるとき、急激に増大することが観察される。従って、前記した相対蒸気圧比のときあるいはそれ以上のときに接着強度が十分になる。後述するように接着剤が雰囲気の蒸気成分であるとき、接着強度との関連からみて接着剤の蒸気圧は、飽和蒸気圧との比が60%以上であることが好ましい。
【0035】
本発明において、前記した真実接触面積(S1 )と見掛接触面積(S2 )の比(S1 /S2 )が25,000分の1以下のオーダーにある接着対象物(別言すれば表面が極めて平滑である接着対象物)は、本発明の毛管凝縮効果を利用した接着方法を適用することができるものであり、真実接触している突起近傍に接着性をもった液体を毛管凝縮させることで接着対象物を安定的に接着することができる。
【0036】
本発明の毛管凝縮効果を利用した接着法が適用できる接着対象物(ワーク)は、前記したS1/S2比が25,000分の1以下のオーダという表面が極めて平滑なものに限定されない。なお、前記S1(真実接触面積)は、ワークを接合点において接触させた当初に所定の突起(凸部)により形成される真実接触面積を表している。
前記したように、接着強度は接合点において形成されるメニスカスの膜厚や体積に相関するものであり、かつ、メニスカスの膜厚や体積は雰囲気の接着剤成分の相対蒸気圧(P/Ps)と密接に関係している。
このため、例えば、接着剤成分の相対蒸気圧(P/Ps)を増大させてメニスカス膜厚を増大させることにより、当初(相対蒸気圧を増大させる前の状態において)、接着に関与しなかったワーク表面の極微細な突起(凸部)を、接着に関与させることができる表面粗さをもつものも接着対象物(ワーク)として使用することができる。
【0037】
以下、前記したワークを接合点において接触させた当初に真実に接触する突起(凸部)のほかに、メニスカス膜厚を増大させることにより接着に関与することができる突起(凸部)を有するワークについて説明する。
なお、この種の表面粗さを有するワークを、粗い表面のワークというが、その表面の粗さの度合は、前記した表面が平滑でS1 (真実接触面積)のワークとの相対関係で理解されるべきである。
【0038】
図4は、前記した特徴を有するワークの表面特性を説明する図である。図中W1 は表面が粗いワーク、W2 は表面が平滑なワークを示す。
粗い表面のワーク(W1 )において、表面に存在する突起(凸部)の高さ(δ)は、正規分布に従い、かつ、その先端部は先端半径(r)を持つと仮定する。いま、各突起におけるメニスカス面積をA、接着剤の単位面積当りの接着力をfとすると、総接着強度は、下記の数1で表される。なお、数1の積分領域は、接着の全領域(Ω)であることはいうまでもない。
【0039】
【数1】
Figure 0004129947
【0040】
ところで、表面に存在する突起の高さ(δ)は正規分布に従うこと、及び、図4に示されるように表面の突起の最大高さを(Ry)、ある蒸気圧におけるメニスカスの高さを(t)とすれば、注目している表面における突起がメニスカスに浸食される(浸る)確率は、下記の数2に示される。
なお、数2において、xは突起高さ、μは期待値、σは標準偏差を意味する。
【0041】
【数2】
Figure 0004129947
【0042】
また、注目している接着領域(Ω)における突起の総数を(N)とすると、メニスカスに浸食される(浸る)突起の個数(Nm)は、下記の数3で示される。
【0043】
【数3】
Figure 0004129947
【0044】
更に、接着領域の面積を(An)とすれば、メニスカスが形成される面積(Am)は、下記の数4で示される。
【0045】
【数4】
Figure 0004129947
【0046】
ここで、アセトン及びシアノアクリレート系接着剤におけるメニスカス高さ(t)と相対蒸気圧(P/Ps)の関係を、ワークと接着剤との接触角(θ1 ,θ2 )を30度と仮定して理論計算したときの結果を図5に示す。
図5に示されるように、雰囲気の相対蒸気圧を高く設定すれば、接触点に形成されるメニスカス高さが増大するため、接着に関与できる突起の数、即ち、接着面積を増加させることができる。
前記したように表面粗さが大きく、接着に関与する突起の数を増加させたい場合に、メニスカス高さを増大させることは有効である。なぜならばメニスカス高さが増大すれば、その高さに応じて相手面に接触していない突起においてもメニスカスが形成されるようになるからである。前記図5を用いれば、所望するメニスカス高さ(これは、所望する接着強度を、接着剤の単位面積当たりの強度で除すれば必要とされる接触面積が求められ、その接触面積に対応するメニスカス高さは前記数4から求めることができる。)を得るのに必要な雰囲気の相対蒸気圧を求めることができる。
【0047】
更にまた、本発明の接着方法が適用できる接着対象物の大きさについて、別の観点から、即ち、メニスカス面積(接着面積)「A」と重量「W」の関係で説明する。
前記図1〜図3を利用して説明したワークの大きさの目安として、ワーク(球体)の半径が5mmの場合、ワーク(球体)の接着面積(A)とその重量(W)の比(A/W)が3.0×10-9(m2/g) 以上であれば安定的に接着されることを説明した。
本発明において、ワーク(球体)の種々の大きさの検討から、本発明の接着方法が適用できる接着対象物の大きさは、一応の目安としてA/Wの比が0.75×10-10(m2 /g)より大きいものが好ましいものである。なお、前記比の値は、「A」と「W」がそれぞれ独立して満足すればよいものである。
【0048】
前記したA/Wの比の値は、接着に供した実際の材料定数(W)、蒸気圧60%程度の雰囲気における計算より求めたメニスカス面積(A)により求めることができる。
例えば、表面がある程度の粗さを持った平面同士の接着を想定したとき、メニスカス面積(A)は、次のようにして求めればよい。
まずワーク(接着対象物)の表面粗さを算出し、二平面に存在する突起の平均半径を求め(これは、AFM topographyにより容易に求めることができる。)、その等価半径〔1/(r)=1/(r1 )+1/(r2 )〕を計算して突起1つに対するメニスカス面積を算出し、次いで見掛接触面積の25,000分の1が真実接触面積であるとして求めればよい。
【0049】
前記したことから判るように、非常に粗い二つの表面を本発明の毛管凝縮効果を利用した接着法で接着する場合、強固な接着強度を得るためには突起1つ当りのメニスカス面積を増大させる必要があり、このために雰囲気の接着剤の蒸気圧を高める必要がある。
【0050】
次に、本発明の毛管凝縮効果を利用した接着法を実施するための装置について図6〜図7を参照して説明する。なお、本発明は、図示のものに限定されないことはいうまでもないことである。
【0051】
本発明の接着法は、前記したように接着剤の所定の蒸気圧雰囲気下においてワーク(接着対象物)を所定の接合点において接合させるとともに、当該接合点において接着剤の蒸気を毛管凝縮させてメニスカスを形成し、当該接着剤からなるメニスカスを介してワークを接着するものである。
このため、本発明の接着法に適用される装置として、図6〜図7に示されるものを使用すればよい。
【0052】
図6は、本発明の接着法に適用される装置(A)の全体図(全体ブロック図)である。
図7は、図6のチャンバー(1)内に配設される可動型の接着対象物(ワーク)固定具(11)の斜視図である。
【0053】
図示されるように、本発明の接着法に適用される装置(A)は、大きな要素としては、
(1).可動型の接着対象物(ワーク)固定具(11)を内部に配設したチャンバー(1)、
(2).接着剤の容器を内部に配設したチャンバー(2)、
(3).接着剤が水分硬化型であるときに硬化剤(水分)をチャンバー(1)内に供給するための加湿器(3)、
(4).装置(A)全体を不活性雰囲気にするための不活性気体ボンベ(4)、
から構成されるものである。なお、装置(A)には図示されるようにV(バルブ)、P(ポンプ)などが装備され、装置の吸排気が行われる。
【0054】
チャンバー(1)内に配設される可動型の接着対象物(ワーク)固定具(11)の詳細は図7に示されており、その機構は図から明らかである。
図7に示されるようにワーク固定具(11)は、ピン(またはボール)(a)を固定するワーク固定具(1a)と平面ワーク(b)を固定するワーク固定具(1b)を有し、かつこれらワーク固定具(1a)(1b)は、可動ステージ基板(1c)上に可動式に配設された可動ステージ(1a1)(1b1)上に固定される。このようなワーク固定具(11)の機構により、ワーク(a,b)は所定の接合点において当接され、メニスカス形成部位が準備される。
【0055】
チャンバー(2)において、容器(21)内の所望の接着剤は、図示しない加熱装置、エバポレータなどにより所望の蒸気圧及び所望する蒸気量となるように処理される。
以下、接着剤の所望の蒸気圧、蒸気量とするための方法について説明する。
本発明において、「接着剤」という用語の意味は、最広義に解釈されるべきであり、接着に関与する全ての成分を意味し、その成分は、「接着成分」、「溶媒又は溶剤」、及び「硬化剤」の内、少なくとも1種以上からなるものである。又、接着剤成分とは、その接着剤を構成する成分を示している。
【0056】
(1)溶剤を必要としない光硬化型接着剤の場合、所望する蒸気圧、蒸気量になるようにエバポレータなどにより雰囲気温度をコントロールすることにより蒸気圧のコントロールを行ない、当該蒸気をボンベ(4)からの乾燥窒素ガスなどと混合し、メニスカス形成性の所望の雰囲気を作る。
このことは、水分硬化性の接着剤を用いる場合、第一段で接着成分のメニスカスを形成し、第二段で所望の水蒸気圧雰囲気で水のメニスカスを形成し、接着成分を硬化させながらワークを接着させる際にも同様である。
【0057】
(2)溶剤を必要とする場合、即ち、接着剤が接着成分とその接着成分を溶解する溶媒(溶剤)とで構成される場合、多成分系の蒸気−液体平衡から共沸点を持つような組成のもとで所望の蒸気圧、蒸気量を作ればよい。
蒸気が毛管凝縮して形成するメニスカスの全体積は、雰囲気の蒸気圧、蒸気量が小さいときは小さいものになる。
成分系の場合において、好ましい接着強度の確保という観点から、接着成分をより多く含むメニスカスの作り方について、以下に説明する。
【0058】
いま、溶媒の沸点をbp1、接着成分の沸点をbp2とする。
また、チャンバー(1)内の温度をTcとし、その時の溶媒の飽和蒸気圧と蒸気圧それぞれPs1、P1とし、また、接着成分の飽和蒸気圧と蒸気圧をそれぞれPs2、P2とする。
このとき、メニスカスのケルビン半径(rκ)(前記式1.2参照)は、所定の相対湿度(なお、ここでいう湿度とは、雰囲気中の溶媒および接着成分に対するものである。)のとき、どの程度の大きさの間隙に液体として存在するかという熱力学的平衡条件から求められる値であり、理論的には、相対湿度が「0」でない限りケルビン半径(rκ)に対する大きさの間隙に液体が存在し得ることになる。
このとき、溶媒よりも接着成分をより多く間隙に凝縮させたい場合、雰囲気の条件として、TcにおいてP1/Ps1よりもP2/Ps2が大きくなるように設定すれば、比較的多量の接着成分を接合部に集めることができ、大きな接着強度を得ることができる。
【0059】
本発明の毛管凝縮効果を利用した接着法においては、微小(マイクロ)構造体の接着しようとする各要素(部材、部品)の接合点以外に、メニスカス形成性の間隙がある場合、これら間隙にも接着性が液体として凝縮するようになるため、こららの部位をマスク等により保護してもよいことはいうまでもないことである。
【0060】
次に、本発明の毛管凝縮効果を利用した接着法に適用される接着剤について説明する。
本発明の接着法においては、適用される接着剤は、接合部において毛管凝縮によりメニスカスを形成し得るものであれば、特段に制約を受けない。
一般には、接合部の小さな間隙に効果的に接着剤の蒸気を凝縮させるために、モル体積が小さいものが適している。また、一般的に、溶剤を必要としないタイプや、時後的に(第二段階として)硬化剤を適用するタイプのものでないものの方が好ましいといえる。
【0061】
本発明の接着法に適用される接着剤としては、ワークがプラスチック(樹脂)製のものでその接合点の壁面を溶解させて接合させるものは、所望の溶解力に優れた各種溶剤(ドープセメントを含む。)を用いることができる。
その他の接着剤としては、例えば尿素樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、レゾルシノール樹脂接着剤、イソシアネート樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤(アクリル系接着剤として、光硬化接着剤を含む。)などを用いることができる。
【0062】
前記接着剤による接着は、所望の方式により行なえばよい。
例えば、熱硬化性樹脂接着剤(尿素、メラミン、フェノール、エポキシ、レゾルシノールなどの熱硬化性樹脂系の接着剤)の場合には、凝縮させた後に加熱処理するか、あるいは硬化剤をあらかじめ接着剤に混合したものを凝縮させて接着すればよい。
また、イソシアネート樹脂系の接着剤の中には、イソシアネート基が表面の水と反応する湿気硬化型接着剤があり、これを用いる場合には、最初にイソシアネート樹脂を毛管凝縮によって接合点に凝縮させるか、あるいは前処理として塗布しておき、マイグレーションによりメニスカスを形成し、その後湿潤空気雰囲気下に配置することで、水の接合点への凝縮を促し、樹脂の硬化、接着を行えばよい。
前記した接着法は、シアノアクリレート系接着剤に適用することができる。
光硬化型の接着剤の場合、凝縮させた後(メニスカスの形成後)、光を照射することにより硬化、接着を行えばよい。
ワークが合成樹脂製である場合、接着される樹脂に適した溶剤を凝縮させた後(メニスカスの形成後)、接合点の樹脂表面を溶解させた後、乾燥することにより接着すればよい。
【0063】
次に、本発明の毛管凝縮効果を利用した接着法の応用例について説明する。なお、以下に例示する応用例は一例であり、その他の応用例を容易に理解することができる。また、これら応用例における具体的な接着法は、後述の実施例に示されている。
(1).石英ガラス板(平板)と石英ガラス製ボールレンズの接着。これは、超小型レーザー測長システムの光学系(レンズ系)などの製作において重要なものである。
(2).樹脂板(平板)とピンの接着。これは、微小加速度センサなどのケースの製作、セルロイド製微小歯車の固定などにおいて重要である。
(3).窒化珪素球とアルミ基板の接着。これは、ディスク型磁気記録装置用スライダと(スライダ)サスペンション(アルミ製)の接着において重要である。
(4).微小シリカ球と多結晶シリコン基板の接着。これは、圧痕形状を得るための工具(微小シリカ球がびっしり並んだ基板を金属平面などに押圧してテクスチャリングを得るときに使用する工具)の製作において重要である。
(5).微小(マイクロ)構造体、マイクロ機械系の各要素(部材、部品)、例えばマイクロモータ、マイクロタービン、ギヤトレーン、マイクロ歯車などの接着。
【0064】
【実施例】
以下、本発明の毛管凝縮効果を利用した接着法を実施例により更に詳しく説明する。
なお、本発明は実施例のものに限定されないことはいうまでもないことである。
【0065】
(実施例1)
ワーク(接着対象物)として、石英ガラス板と石英ガラス製ボールレンズを用いた。また、図6〜図7に示される装置を用いた。
前記石英ガラス板と半径300マイクロメートル(μm)の石英ボールレンズを図7に示されるワーク固定具(11)に取付け、ステージ(1a1,1b1)を移動することにより互いに接触させ、これを図6の気体置換が可能な程度に真空に引かれた真空チャンバー(1)内に設置した。
【0066】
一方、チャンバー(2)内に紫外線硬化型接着剤を入れた容器(21)を設置した。
チャンバー(1)内の紫外線硬化型接着剤の蒸気圧が適正な値(例えば飽和蒸気圧の60%)となるように、チャンバー(2)内に流入する雰囲気用気体ボンベ(4)からの乾燥窒素の流量とチャンバー(2)内の圧力、及び両チャンバー(1、2)の温度を調節した。
次いで、紫外線硬化型接着剤の蒸気を含んだ乾燥窒素をチャンバー(1)内に導入し、毛管凝縮効果によってワークの接合点に紫外線硬化型接着剤からなるメニスカスを形成した。
その後、チャンバー(1)の覗き窓によりワークに向けて紫外線を照射し、接着剤を硬化させるとともにワークの接着を行った。
接着されたワークは、接合点において最適なメニスカス体積のもとで強固に接着されていた。このようにして製造された接合体は、超小型レーザー側長システムの光学系(レンズ系)の製作に有用なものであった。
【0067】
(実施例2)
ワークとしてセルロイドなどの汎用プラスチック製のピン部材と平板を用いた。即ち、プラスチック製の部材同士の接合点を溶剤(アセトン)により溶解し、接合した。また、図6〜図7に示される装置を用いた。
前記ピン部材として、先端の曲率半径が500マイクロメートル(μm)に加工されたものを用いた。前記ピン部材及び平板を図7に示されるワーク固定具(11)に取付け、ステージ(1a1,1b1)を移動させることにより互いに接触させ、これを気体置換が可能な程度に真空に引かれた真空チャンバー(1)内に設置した。
一方、チャンバー(2)内にアセトン(本発明でいう接着剤である。)を入れた容器(21)を設置した。
チャンバー(1)内のアセトン蒸気圧が適正な値(例えば飽和蒸気圧の60%以上)となるように、チャンバー(2)内に流入する乾燥窒素の流量とチャンバー(2)内の圧力、及び両チャンバー(1、2)の温度を調節した。
次いで、アセトン蒸気を含んだ乾燥窒素をチャンバー(1)内に導入し、毛管凝縮効果によって、ワークの接合点にアセトンからなるメニスカスを形成した。セルロイド系プラスチックはアセトンによって溶解するため、接合点のみが溶解され、別の流路系により乾燥窒素を導入したところ凝集していたアセトンが蒸発し、接着が完了した。ワークは十分な接着強度をもって接着された。
【0068】
(実施例3)
ワークとしてアセチルセルロースをディップコート法により表面に薄膜状に付着させた窒化珪素球とアルミニウム基板を用いて、前記実施例2と同様に接着を行った。このものにおいても、ワークは、十分な接着強度をもって接着された。
【0069】
(実施例4)
接着剤として湿気硬化型のポリイソシアネート系接着剤またはシアノアクリレート系接着剤を用い、またワークとして微小シリカ球と多結晶シリコン基板を用い、先ずこのワークの接合部に、接着成分のメニスカスを形成させ、その後に湿潤窒素雰囲気とし、接合部に水(硬化剤)のメニスカスを形成し、ワークを接着した。
具体的には、多結晶シリコン基板(シリコンウエハ)上に直径100ミクロン(μ)の微小シリカ球を散布する。その後、これを真空チャンバー(1)内に設置し、気体置換が可能な程度に真空とする。
一方、チャンバー(2)内に湿気(水分)硬化型ポリイソシアネート系接着剤あるいはシアノアクリレート系接着剤を入れた容器(21)を設置した。
チャンバー(1)内の接着剤の蒸気圧が適正な値となるようにチャンバー(2)内に流入する乾燥窒素の流量、チャンバー(2)内の圧力、及び両チャンバー(1、2)の温度を調節した。
次いで、接着剤の蒸気を含んだ乾燥窒素をチャンバー(1)内に導入し、毛管凝縮効果によって、ワークのシリコンウエハと微小シリカ球の真実接触点の周りのみに選択的にメニスカスを形成した。
その後、加湿装置(3)を経由する別の流路系により湿潤窒素を導入し、水を接合点にのみ選択的に凝縮させて、水(硬化剤)からなるメニスカスを形成し、接着剤を硬化するとともにワークを接着した。このとき、シリコンウエハ上で互いに接触するシリカ球同士も、その接合点で接着した。
このように得られた接着体は、十分な接着強度により接着され、テクスチャリング用の圧痕形状を得るための工具として有用であった。
【0070】
【発明の効果】
本発明により、微小(マイクロ)構造体の製作、即ちディメンションが小さな複数の(部材、部品)から構成される微小(マイクロ)構造体の製作において、ディメンションの小さな各要素(部材、部品)同士の接合点は効率的かつ経済的に接着することができる。
即ち、本発明の接着法は、ディメンションの小さな各要素(部材、部品)の間の接合点に毛管凝縮により接着剤の均一なメニスカスを形成させ、当該メニスカスを介して各要素(部材、部品)の間を接着するため、接合強度が均一で接着歩留りの高い接着体を効率的かつ経済的に製造することができる。
【0071】
本発明の毛管凝縮効果を利用した新しい接着法は、簡便であり、必要とされるコストや時間のみならず、設備への投資などからみて、有意義な接着方法であり、その意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 毛管凝縮によるメニスカスの形成とメニスカス力を説明する図である。
【図2】 図1の要部拡大図である。
【図3】 R(ワークの球半径)とP/Ps(相対蒸気圧)の関係からみた接触可能領域のグラフである。
【図4】 粗い表面のワークと平滑な表面のワークとの接合部の模式図である。
【図5】 P/Ps(相対蒸気圧%)とt(メニスカス膜厚、nm)の関係を示すグラフである。
【図6】 本発明の毛管凝縮効果を利用した接着法に適用される装置図(全体ブロック図)である。
【図7】 図7のチャンバー(1)内に配設される可動型の接着対象物(ワーク)固定具(11)の斜視図である。
【符号の説明】
A …………… (毛管凝縮効果を利用する接着法を実施するための)接着装置
1 …………… チャンバー(1)
2 …………… チャンバー(2)
3 …………… 加湿装置
4 …………… 雰囲気用気体ボンベ(窒素ガスボンベ)
11 …………… 接着対象物(ワーク)固定具
1a,1b ………… ワーク固定具
a,b ………… ワーク
1a1,1b1 …… 可動ステージ
1c ………… 可動ステージ基板

Claims (10)

  1. 少なくとも二つの分離された接着対象物を所定の接合点において接着する接着方法において、
    蒸気化した接着剤を、前記接着対象物の所定の接合点及び前記接合点の近傍に液体が存在する場合に形成されるメニスカスの領域(以下、接合点及びメニスカスの領域を合わせて接合部という)に毛管凝縮させ、該接合部に液体化して配置することで、
    前記接着対象物を前記接合部で接着する毛管凝縮効果を利用した接着方法。
  2. 前記接着対象物が前記接着剤の所定の蒸気圧から成る雰囲気下に配置されるとともに、前記接合部において前記接着剤を毛管凝縮させることによりメニスカスを形成させ、前記メニスカスを構成する前記接着剤により前記接着対象物を接着する請求項1に記載の毛管凝縮効果を利用した接着方法。
  3. 前記接着対象物が、数mm以下のディメンションのものである請求項1または2に記載の毛管凝縮効果を利用した接着方法。
  4. 前記接着対象物が、数mm以下のディメンションのものであり、且つ平面同士の接触とみなした前記接合部における真実接触面積(S)の見掛接触面積(S)の比(S/S)が、25,000分の1以下のオーダである請求項1または2に記載の毛管凝縮効果を利用した接着方法。
  5. 前記接着対象物が、数mm以下のディメンションの球体と平面体であり、且つ前記接合部における接着面積(メニスカス面積)(A)と球体の重量(W)の比(A/W)が(A/W)>0.75×10−10(m/g)である請求項1または2に記載の毛管凝縮効果を利用した接着方法。
  6. 前記接着剤が、接着対象物の接合部における壁面を溶解して接着する溶剤のみで構成される請求項1または2に記載の毛管凝縮効果を利用した接着方法。
  7. 前記接着剤が、接着成分のみで構成される請求項1または2に記載の毛管凝縮効果を利用した接着方法。
  8. 前記接着剤が、接着成分及び前記接着成分を溶解する溶媒で構成される請求項1または2に記載の毛管凝縮効果を利用した接着方法。
  9. 前記接着剤が、接着成分と前記接着成分を硬化するための硬化剤の二成分で構成され、第一段階で、前記接着成分の毛管凝縮によるメニスカスを形成し、
    第二段階で、前記接着成分のメニスカスの表面に前記硬化剤の毛管凝縮によるメニスカスを形成して
    前記接着成分を硬化させるとともに前記接着対象物を接着する請求項2に記載の毛管凝縮効果を利用した接着方法。
  10. 少なくとも二つの分離された接着対象物を所定の接合点において接着する接着方法において、
    前記接着対象物の少なくとも一方の接合部に、予め流動性の接着剤の層を形成した接着対象物を用い、前記接合部において、
    ・前記流動性の接着剤の接着成分のマイグレーションによるメニスカスを形成させた後、
    ・前記接着対象物を蒸気化した硬化剤の所定の蒸気圧から成る雰囲気下に配置するとともに、前記接着成分のメニスカスの表面に前記硬化剤の毛管凝縮によるメニスカスを更に形成し、
    前記接着成分を硬化させるとともに前記接着対象物を接着する毛管凝縮効果を利用した接着方法。
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