JP4128335B2 - 多経路フェージングチャネルに対する遅延拡散推定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
(技術分野)
本発明は同期化シーケンスを用いるデジタル無線モバイル通信システムに関し、より特定的には、時間変化する多経路チャネルのフェージングチャネルにおける遅延拡散を推定する方法と装置に関する。
【0002】
(背景技術)
現代の無線モバイル受信機は一般的にデジタル信号プロセッサを用いて実現される。目的とする信号はまずアナログ式のフロントエンド回路で処理され、次に、アナログ/デジタル変換器(ADC)でサンプリングされる。これに続く処理は、このADCから出力された記憶済みのデジタルサンプルに基づいて実現される。
【0003】
信号が典型的な無線チャネルを伝搬すると、一般的に受信信号に増倍的、分散的及び加算的な欠陥などの複数の損傷が発生する。多経路伝搬によって引き起こされる分散的な欠陥は記号間干渉となりかねず、これは変調処理において均等化の使用を必要とする。復調とは、伝搬チャネルを通過する受信済み信号のサンプルからの送信済みメッセージデータを抽出することである。
【0004】
しかしながら、ひどい損傷がある場合ですら、デジタル信号プロセッサがアルゴリズムを用いて、送信済みデータの信頼性のある復号化を可能とすることができる。
【0005】
送信上の損傷の1つの重要なタイプは、複数の経路上で伝搬されている信号の遅延時間によって引き起こされる遅延拡散(多経路フェージング)として知られている。この遅延拡散の損傷は無線モバイル環境では時間によって変化し、異なった遅延間隔で異なった経路から到達する同じ信号の異なって遅延する同士間で干渉を引き起こす。
【0006】
多くの実際上のシステムでは、遅延拡散が最小という条件の場合に実行される復号化が比較的単純である。一方、遅延拡散が大きい条件下での復号化処理では、イコライザスキームを用いる必要がある。しかしながら、イコライザスキームを実行すると性能が変動する結果となり、また、必要とされる処理がさらに複雑化し、これが、命令サイクルと消費電力の増加になる。したがって、特定の多経路チャネル環境に対して利用可能な最も効率的なデコーディングスキームを選択することが重要となる。
【0007】
最も適切な復号化(復調)スキームを選択するためには、遅延拡散推定方法が必要となる。遅延拡散を推定することによって、復調技法を選択する際の基準となる実質的な判断基準が確立される。
【0008】
周知の遅延拡散推定技法は一般的に、タイミングの変動についてか、または、この変動量に基づいた結論についてのどちらかの推定に関連する。すなわち、これらの技法では、様々なスキームで復調が実行され、また、最良の性能を持つスキームは受信処理機能にとって最も適切なものである。
【0009】
このようなスキームの1つが米国特許第5,400,368号に開示されている。しかしながら、この開示されたスキームは、受信信号と同期化パターンとの相関の形状とロールオフを全く利用していない。その上、この開示スキームは、様々な段階の遅延拡散条件を考慮していない。
【0010】
(発明の開示)
したがって、本発明の目的は、復調技法の最適な選択を可能とする改善された遅延拡散推定方法によって先行技術の欠点を克服することである。
【0011】
本発明の図示された実施形態によれば、受信信号波形の遅延拡散を推定する方法は、
(1)所定の同期化シーケンスに対応する信号波形のサンプリングされたセグメントを受信するステップと、
(2)受信されたサンプリング済みセグメントを高サンプリング速度で再サンプリングするステップと、
(3)様々なサンプリング時間に対応して、この同期化シーケンスを再サンプリング済みのセグメントに相関させるステップと、
(4)これらの相関から相関エネルギエネルギプロフィールを計算して、その相関エネルギプロフィール内でのピークエネルギ値とその位置を決定するステップと、
(5)そのピークエネルギ値の位置の前後で、事前に選択された等しいオフセットで相関エネルギ値を計算するステップと、
(6)これらのオフセット相関エネルギ値の内の最大値を決定し、ピークエネルギ値に対するこの最大オフセット相関エネルギ値の比率に基づいて遅延判断基準を計算するステップと、
(7)平均化によってそのデータを平滑化するステップと、
(8)平滑化された遅延判断基準を所定のルックアップテーブルと照合するステップと、
(9)このルックアップテーブルから予測された遅延拡散を得るステップと
を含んでいる。
【0012】
ほとんどの場合、遅延拡散が特定の範囲内に収まるかどうか分かっていることが望ましい。この目的のために、しきい値をルックアップテーブル中に設定しておけば遅延拡散範囲を識別することができる。
【0013】
(発明の実施の形態)
本発明は、タイミング付けすなわち初期トレーニングでの支援のために同期化シーケンスを用いるデジタル通信システムに応用可能である。無線応用例では、このような状況は一般的にTDMA(時分割多重アクセス方式)システムや1部のCDMA(符号分割多重アクセス方式)のシステムに見受けられるが、その理由は、タイミング付けは、モバイル環境での送信済みデータの検出では重要であるからである。
【0014】
本発明の1つの実施形態では、同期化シーケンスは、S[i](ここで、i=0、1、2、…、L−1)で示される長さLを持っている。受信機は、受信されたアナログ波形がナイキストサンプリング速度を満足するかそれを越える周波数でサンプリングされて、あらゆるエリアシング効果を防止するように設計される。これは、受信された波形が任意の周波数で、しかもいかなる所望の初期サンプリング位相でも、デジタルドメインで再サンプリングされ得ることを意味する。
【0015】
ある1つの実施形態では、受信された信号波形のセグメントの同期化シーケンスに対応した再サンプリングは、例えば記号速度のM倍(ここで、Mはシステム実現要件に従って選ばれる)という高いサンプリング速度で実行される。オーバーサンプリングされた受信信号サンプルはr[k](ここで、k=0、1、2、…)で示される。次に、周知の同期化パターンが、様々なサンプリング時間に対応する再サンプリング済みのものと相関され望まれる相関を得る。j番目の相関結果C(j)の計算は次式の相関に従って実行される。
【0016】
Figure 0004128335
【0017】
相関エネルギ{C(j)}のピーク値が決定され、このピークの位置と値の双方が記憶される。これらのパラメータはそれぞれjpeakと|C(jpeak)|で示される。加えて、相関エネルギ値はjpeakからの±Δ(ここで、Δは復調パルス形状に従って選ばれるが、1記号持続時間未満である)というオフセットで計算される。代表としての相関エネルギプロフィールを図1に示すが、同図には上記のj値が示されている。
【0018】
この2つのオフセット相関エネルギ値の内の最大値がピーク相関エネルギ値と比較され、その結果として得られる比率によって、次式の関係に従って遅延判断基準Dcritの値が決定される。
【0019】
Figure 0004128335
【0020】
遅延判断基準値(Dcrit)は、受信された複数の同期化シーケンスにわたって平均化することが可能であるが、これは、チャネル誘導された遅延拡散と共に単調に増加する。したがって、ある1つの実施形態では、この関係を遅延拡散の計算に用いられる。遅延拡散がある範囲内にあるかどうか判断することは通常重要であるので、1部の実施形態では、ルックアップテーブル中の適切なしきい値をこの判断に用いている。
【0021】
上記の本発明によるプロセスのフロー図を図2に示す。最初に、同期化シーケンスに対応する信号波形のセグメントが受信される(ステップ1)。この受信されたセグメントは高サンプリング速度で再サンプリングされ(ステップ2)、既知の同期化パターンと相関される(ステップ3)。次に、相関エネルギの位置とピーク値を発見し(ステップ4)、事前選択された等しいオフセットでの、ピーク値前後における相関エネルギ値が得られる(ステップ5)。次に、遅延判断基準が、最大オフセット値とピーク値の比率に基づいて決定される(ステップ6)。この遅延判断基準は、受信された複数の同期化シーケンスにわたって平均化され(ステップ7)、その結果得られたデータをルックアップテーブル中の所定のしきい値と照合する(ステップ8)。遅延拡散推定値が識別される(ステップ9)。
【0022】
上述したように、遅延判断基準Dcritの計算は±Δというオフセットでの値に基づいて計算される。しかしながら、ある1つの実施形態では、このプロセスは、Δの倍数である間隔を複数個包括するように拡張される。この拡張によって、この実施形態は広い範囲の遅延拡散特徴にわたって遅延拡散を推定することができる。
【0023】
ここに開示する正確な遅延拡散推定技法は、適切な復調方法を決定する具体的な方式を提供するものである。復調技法を適切に選択することは、消費電力と受信機の性能とのバランスを最適化する場合には無線システムでは重要な事項である。一般的なモバイル通信に対する応用においては、低遅延拡散条件と高遅延拡散条件の双方をモバイル端末が経験するということは一般的ではない。したがって、消費電力を効率的に管理すると同時に、この高遅延拡散条件と低遅延拡散条件の双方を満足させるということは、先行技術にない際だった性能上の利点を表すものである。
【0024】
ある1つのシステム実施形態の動作を図3のフロー図に示す。受信されたサンプルデータは上述したように処理され(ステップ10)、正確な遅延拡散推定値を決定する(ステップ20)。低遅延拡散が推定された場合、差動復号化復調技法が選択される(ステップ30)。高遅延拡散が推定された場合、MLSE(最尤シーケンス推定法)イコライザ復調技法が選択される(ステップ40)。最後に、最適に復調された結果がデコーディング済み結果として出力される(ステップ50)。
【0025】
本発明は、その推定の性質とその既知の特徴パターンの使用とによって、他の形態の受信機実現例とチャネル特徴の応用例に適応可能である。例えば、本発明は、ある種のタイプの地形では固定式無線製品や、送信システムの特徴化又は試験を実行するいかなるデバイスにも適応するようにすることができる。
【0026】
要するに、多経路伝搬チャネルの遅延拡散を正確に計算する方法が開示されている。その結果、最適な復調技法が容易に決定される。そのうえ、開示された本発明は様々な無線送受信機の応用例に適用できる。
【0027】
本発明の上記の実施形態は、例示目的だけである。以下のクレームの精神と範囲から逸脱することなく、多くの代替実施形態が当業者には考えられよう。
【図面の簡単な説明】
本発明の図示した実施形態は次の図面を参照すればより充分に理解されよう。
【図1】 一般的な相関エネルギプロフィールのグラフである。
【図2】 本発明の遅延拡散推定方法のフロー図である。
【図3】 本発明による方法のシステム応用例のフロー図である。

Claims (14)

  1. 時間変化式多経路伝搬チャネル上で送信された受信信号波形の遅延拡散を推定する方法において、
    所定の同期化シーケンスに対応する前記信号波形のセグメントをサンプリングするステップと、
    高サンプリング速度で前記サンプリングされた受信済みセグメントを再サンプリングするステップと、
    様々なサンプリング時間に対応して、前記同期化シーケンスを前記再サンプリングされたセグメントに相関させるステップと、
    前記相関から相関エネルギプロフィールを計算するステップと、
    前記相関エネルギプロフィール内のピークエネルギ値とその位置を決定するステップと、
    前記ピークエネルギ値の位置の前後で、事前選択された等しいオフセットでの相関エネルギ値を計算するステップと、
    前記オフセット相関エネルギの最大値を決定するステップと、
    前記ピークエネルギ値に対する前記最大オフセット相関エネルギの比率に基づいて遅延判断基準を計算するステップと、
    前記遅延判断基準を所定のルックアップテーブルと照合して、拡散遅延の推定値を得るステップと
    を有する方法。
  2. 遅延判断基準を計算する前記ステップが、受信された複数の同期化シーケンスにわたって平均化された遅延判断基準を計算するステップを含む請求項1に記載の方法。
  3. 前記遅延判断基準を所定のルックアップテーブルと照合する前記ステップが、前記遅延判断基準を所定の拡散遅延しきい値を含む所定のルックアップテーブルと照合するステップを含む請求項1に記載の方法。
  4. 相関エネルギプロフィールを計算する前記ステップが、次式で示される相関エネルギプロフィールを計算するステップを含む請求項1に記載の方法。
    Figure 0004128335
    ここで、C(j)はj番目の相関結果、
    S[i]は同期化シーケンス(i=0、1、2、…、L−1)、
    Lは同期化シーケンスの長さ、
    r[k]はオーバーサンプリングされた受信済み信号のシーケンス(k=0、1、2、…)
    受信された信号の再サンプリング速度は前記受信信号の記号速度のM倍である。
  5. 遅延判断基準を計算する前記ステップが、次式で示される遅延判断基準を計算するステップを含む請求項1に記載の方法。
    Figure 0004128335
    ここで、Dcritは遅延判断基準、
    C(jpeak)は相関エネルギ|C(j)|のピーク値(C(j)はj番目の相関結果)、
    jpeakは相関エネルギのピーク値の位置、
    Δは、変調パルス形状に従って選択されたjpeakからの1記号持続時間未満のオフセットである。
  6. 遅延判断基準を計算する前記ステップが複数の前記オフセットに従って遅延判断基準を計算するステップを含む請求項1に記載の方法。
  7. 遅延拡散推定値に従って復調技法を選択するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
  8. 遅延拡散推定値に従って復調技法を選択する前記ステップが、遅延拡散推定値が所定のしきい値未満の場合に差動復号化復調技法を選択するステップを含む請求項7に記載の方法。
  9. 遅延拡散推定値に従って復調技法を選択する前記ステップが、遅延拡散推定値が所定のしきい値を上回る場合、MLSE(再尤シーケンス推定方式)イコライザ復調技法を選択するステップを含む請求項7に記載の方法。
  10. 所定の同期化シーケンスに対応する信号波形のサンプリング済みセグメントを受信する受信機と、
    前記受信されたサンプリング済みセグメントを高サンプリング速度でデジタル式にサンプリングする再サンプリング回路と、
    前記同期化シーケンスを様々なサンプリング時間に対応して前記再サンプリング済みセグメントと相関させる処理回路であり、
    前記処理回路は前記相関から相関エネルギプロフィールを計算し、
    前記処理回路は前記相関エネルギプロフィール内のピークエネルギ値とその位置を決定し、
    前記処理回路は前記ピークエネルギ値の前記位置の前後で事前に選択された等しいオフセットでの相関エネルギ値を計算し、
    前記処理回路は前記オフセット相関エネルギ値の内の最大値を決定し、
    前記処理回路は、前記最大オフセット相関エネルギ値の前記ピークエネルギ値に対する比率に基づいて遅延判断基準を計算する処理回路と、
    前記遅延判断基準をルックアップテーブルと照合して前記遅延拡散を決定する比較回路と、
    を備える遅延拡散推定機能を有する通信受信デバイス。
  11. 前記遅延判断基準が受信された複数の同期化シーケンスにわたって平均化される請求項10に記載の通信デバイス。
  12. ステップ(d)での前記相関エネルギプロフィールの前記計算が次式に基づいている請求項10に記載の通信デバイス。
    Figure 0004128335
    ここで、C(j)はj番目の相関結果、
    S[i]は同期化シーケンス(i=0、1、2、…L−1)、
    Lは同期化シーケンスの長さ、
    r[k]はオーバーサンプリングされた受信済み信号サンプルのシーケンス(k=0、1、2、…)、
    受信された信号の再サンプリング速度は受信された信号の記号速度のM倍である。
  13. ステップ(h)での前記遅延判断基準の前記計算が次式に基づいている請求項10に記載の通信デバイス。
    Figure 0004128335
    ここで、Dcritは遅延判断基準、
    C(jpeak)は相関エネルギ|C(j)|のピーク値(C(j)はj番目の相関結果)、
    jpeakは相関エネルギのピーク値の位置、
    Δは変調パルス形状に従って選択されたjpeakからの、1記号持続時間未満のオフセットである。
  14. 前記遅延判断基準の前記計算が複数の前記オフセットに基づいている請求項10に記載の通信デバイス。
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