JP4126963B2 - 多気筒内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸気弁開弁特性を変化させる可変バルブ機構を有する多気筒内燃機関の空燃比制御装置に関し、詳細には運転状態の変化にかかわらず各気筒の運転空燃比のばらつきを排除することが可能な多気筒内燃機関の空燃比制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の各気筒の吸入空気量に影響を与える吸気弁の開弁特性を変化させることにより、吸気通路の絞り弁(スロットル弁)による絞り損失を生じることなく各気筒の吸入空気量を調節するようにした内燃機関の制御装置が知られている。例えば、吸気弁のバルブリフト量、開弁期間(吸気弁カムの作用角)、バルブオーバラップ量等の開弁特性値を変化させると、他の条件が同一であっても気筒内に吸入される空気量は変化する。このため、これらの吸気弁開弁特性値のうち一つまたはそれ以上を運転中に変化させることにより、スロットル弁を用いることなく機関吸入空気量を制御する、いわゆる機関のノンスロットル運転が可能となる。このように、スロットル弁を用いないノンスロットル運転を行うことにより、スロットル弁による吸気絞り損失を低減して機関の熱効率を向上させることが可能となる。
【0003】
機関のノンスロットル運転を行う場合には、各気筒に吸入される空気量はそれぞれの気筒毎の吸気弁の開弁特性値により決定されることとなる。ところが、各気筒の吸気弁、あるいは吸気弁の開弁特性値を変化させる可変バルブ機構には製造上及び制御上の誤差が生じるため各気筒の開弁特性値を同一に制御した場合でも実際には各気筒の開弁特性値にはばらつきを生じる。このため、各気筒毎の吸入空気量もそれぞれの吸気弁の開弁特性値のばらつきに応じてばらつくようになる。このため、仮に各気筒への燃料供給量が等しい場合であっても各気筒では気筒毎に運転空燃比がばらつくようになり、各気筒の発生トルクが変動する問題が生じる。
【0004】
この種の空燃比制御装置の例としては、例えば特開平6−213044号公報に記載されたものがある。同公報の空燃比制御装置は、各気筒の吸気弁バルブリフトを変化させてノンスロットル運転を行う多気筒内燃機関の排気通路に酸素濃度センサを配置し、単一の酸素濃度センサを用いて各気筒の排気空燃比を測定するとともに、この排気空燃比のばらつきに応じて各気筒の吸気弁のバルブリフトを調節することにより、各気筒の吸入空気量を同一の値に調節している。これにより、各気筒の吸入空気量と空燃比とのばらつきが防止されるようになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特開平6−213044号公報の装置のように、機関のそれぞれの運転状態で実際に測定した各気筒の排気空燃比に基づいて各気筒のバルブリフトを調整することにより各気筒間の空燃比のばらつきを無くすようにしていると問題が生じる。
【0006】
例えば、各運転状態における吸入空気量のばらつきは酸素濃度センサ等で測定した各気筒の排気空燃比のばらつきに基づいて算出されるが、実際には機関の運転状態が異なると排気ガスの流速が変化するため、酸素濃度センサの検出遅れ時間が変化する。また、特に特開平6−21304号公報の装置のように複数の気筒の排気ガスを単一のセンサを用いて測定していると、上記検出遅れにも気筒毎のばらつきが生じ、しかもこのばらつきが機関回転数、負荷などによっても変化してしまう。このため、各運転状態においてセンサで検出した排気空燃比に基づいて吸入空気量を補正していると、例えば高回転、高負荷運転時等には補正誤差が大きくなり、極端な場合には制御にハンチングを生じるような場合もある。
【0007】
また、機関が過渡状態にある場合には運転状態の変化に応じてセンサの検出遅れも変化の過渡状態にあるため、測定値の信頼性が低下し吸入空気量の補正精度が悪化するようになり、同様に誤補正や制御のハンチングが生じる場合がある。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題に鑑み、吸気弁の開弁特性を変化させノンスロットル運転を行う多気筒内燃機関において、機関運転状態の変化にかかわらず正確に各気筒の空燃比のばらつきを無くすことが可能な多気筒内燃機関の空燃比制御装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、気筒内吸入空気量に影響を与える吸気弁の開弁特性値を変化させる可変バルブ機構を備えた多気筒機関の空燃比制御装置であって、機関の予め定めた基準運転状態において各気筒毎に測定した排気空燃比を用いて基準運転状態における各開弁特性値毎の各気筒の排気空燃比のばらつきを算出するとともに、算出したばらつきに基づいて、前記基準運転状態において各気筒の運転空燃比のばらつきを低減するための燃料噴射量の空燃比補正係数を各開弁特性値毎に算出する補正係数算出手段を備え、前記予め定めた基準運転状態は、機関のアイドル運転状態であり、機関が前記基準運転状態以外の運転状態にあるときに、各開弁特性値における前記空燃比補正係数を機関運転状態を表す所定のパラメータの値に基づいて修正することにより、基準運転状態以外の運転状態における各気筒の運転空燃比のばらつきを低減するように各気筒の燃料噴射量を制御する、多気筒内燃機関の空燃比制御装置が提供される。
【0010】
すなわち、請求項1の発明では基準運転状態において各気筒毎に測定した排気空燃比にもとづいて各開弁特性値毎の各気筒の空燃比のばらつきが算出され、このばらつきに基づいて各気筒の空燃比ばらつきを無くすための燃料噴射量の補正係数である空燃比補正係数が算出される。しかし、本発明では実際に測定した排気空燃比に基づいて各気筒の空燃比補正係数を算出するのは基準運転状態においてのみであり、他の運転状態における空燃比補正係数は、基準運転状態で求めた各開弁特性値毎の空燃比補正係数を機関の運転状態に応じて補正することにより求めるようにしている。
【0011】
このため、基準運転状態として、例えば定常運転状態で、しかも排気ガスのセンサへの到達遅れ(輸送遅れ)が既知の、正確に各気筒毎の空燃比のばらつきの検出が可能な運転状態をとることにより、正確に基準運転状態における空燃比補正係数を算出することが可能となる。
なお、各気筒間の開弁特性値のばらつきの大きさは、開弁特性値に応じて変るため、基準運転状態における各気筒の空燃比補正係数も各開弁特性値毎に求められる。
また、本発明では基準運転状態として機関のアイドル運転状態が採用される。アイドル運転状態では、通常運転状態には変化が少なく、定常運転が行われる。また、回転数が低く、各気筒からの排気ガスが単一のセンサに到達する際の時間差が大きく、各気筒からの排気ガスのセパレーションが良好になるため気筒毎の排気ガス空燃比を正確に測定することができる。このため、アイドル運転状態を基準運転状態に設定して各気筒の排気空燃比を測定することにより、正確な空燃比制御が可能となる。
なお、例えば機関の点火時期を遅角させることにより、機関出力の増大を抑制しながら各気筒の吸入空気量を増大したアイドル運転を行うようにすれば、各気筒の排気ガス量が増大するため各気筒毎の空燃比の測定精度が更に向上する。
【0012】
本発明では更に、基準運転状態からの運転状態の変化と、その運転状態変化があった場合にも各気筒の空燃比のばらつきを低減するために必要な空燃比補正係数の修正を予め実験等により求めてある。そして、基準運転状態と異なる運転状態における空燃比補正係数の値は、基準運転状態における同一の開弁特性値における空燃比補正係数を運転状態に応じて修正することにより求められる。このため、基準運転状態における各開弁特性値の空燃比補正係数に基づいて、定常、過渡を問わず各運転状態における空燃比補正係数を正確に求めることができ、運転状態にかかわらず正確に各気筒の空燃比のばらつきをなくすことが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、前記補正係数算出手段は各気筒の空燃比を実質的に同一にするように前記燃料噴射量の空燃比補正係数を各開弁特性値毎に算出する、請求項1に記載の多気筒内燃機関の空燃比制御装置が提供される。
すなわち請求項2の発明では各気筒の空燃比を実質的に同一にするように空燃比補正係数が算出される。これにより、各気筒間の空燃比のばらつきが完全に防止されるようになる。
請求項3に記載の発明によれば、前記補正係数算出手段は、機関が前記予め定めた基準運転状態において機関が気筒内吸入空気量が最大になる基準開弁特性値で運転されているときの各気筒毎の空燃比ばらつきに基づいて、各気筒の空燃比のばらつきを低減するための燃料噴射量の基準補正係数を算出し、機関が前記予め定めた基準運転状態において前記基準開弁特性値以外で運転されている場合には、前記基準補正係数を用いて補正した後の燃料噴射量に対する前記空燃比補正係数を算出する、請求項1または請求項2に記載の多気筒内燃機関の空燃比制御装置が提供される。
【0014】
すなわち、請求項3の発明では基準運転状態において機関が、筒内吸入空気量が最大になる開弁特性値である基準開弁特性値で運転されているときの各気筒毎の空燃比ばらつきに基づいて基準補正係数が算出される。機関が基準開弁特性値で運転されている状態とは、例えば開弁特性値としてバルブリフトを制御する場合には、バルブリフトが最大になるように制御された状態、開弁期間(作用角)を制御する場合には、作用角が最大になるように制御された状態である。
【0015】
このように吸入空気量が最大になるように開弁特性値が制御された状態では、開弁特性値による吸入空気量のばらつきはほとんど無視できるほど小さくなり、各気筒における吸入空気量のばらつきは各気筒に至る吸気通路の長さや形状のわずかな差異によるもののみとなる。また、この状態では各気筒の吸入空気量のばらつきは小さいため、各気筒の燃料噴射弁などの特性ばらつきが空燃比のばらつきに大きく現れるようになる。
【0016】
従って、基準開弁特性値での運転中に測定した各気筒毎の空燃比に基づいて算出した基準補正係数を用いて燃料噴射量を補正することにより、各気筒の開弁特性値のばらつき以外の原因による固有の空燃比ばらつきを補正することが可能となる。これにより、基準開弁特性値での運転以外の運転時に、基準開弁特性値での運転で求めた基準補正係数を用いてまず燃料噴射量を補正し、この補正後の燃料噴射量に対する空燃比補正係数を算出するようにすることにより、開弁特性値の変化による空燃比のばらつきを正確に補正することが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、前記機関運転状態を表すパラメータは、機関回転数、機関負荷又はアクセル開度のうち少なくとも1つを含む請求項1から請求項3に記載の多気筒内燃機関の空燃比制御装置が提供される。
【0018】
すなわち、請求項4の発明では基準運転状態において算出した各気筒の各開弁特性値毎の空燃比補正係数は、機関回転数、機関負荷またはアクセル開度(アクセルペダルの踏込み量)のいずれか一つ以上のパラメータに応じて修正される。例えば、機関負荷またはアクセル開度が増大すると各気筒の吸入空気量はそれに応じて増大する。このため、機関負荷またはアクセル開度が増大すると開弁特性値が同一であっても各気筒の吸入空気量のばらつきは大きくなる。このため、空燃比補正係数の修正量は機関負荷またはアクセル開度が増大するとそれにつれて大きくなる。
【0019】
一方、機関回転数が上昇すると、それに応じて吸入空気量が増大するため気筒間の吸入空気量のばらつきも大きくなるが、吸気ポートへの筒内既燃ガスの吹返しの量も回転数により変化するため、実際には回転数が一様に増加しても吸入空気量のばらつきは一様には増大せず、ばらつきが最大になる回転数が存在する。このため、開弁特性値が同一であった場合、各気筒の空燃比補正係数はある回転数までは回転数の上昇に応じて増大するが、この回転数を越えると回転数の上昇とともに空燃比補正係数が減少する。すなわち、空燃比補正係数が最大となるピーク回転数が存在する。
【0020】
このように、基準運転状態における各気筒の空燃比補正係数を、機関回転数、機関負荷またはアクセル開度に応じて予め求めておいた関係に基づいて運転状態に応じて修正するようにしたことにより、運転状態にかかわらず正確に各気筒の空燃比のばらつきを低減することが可能となる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、前記機関運転状態を表すパラメータは、更に機関温度を含む、請求項4に記載の多気筒内燃機関の空燃比制御装置が提供される。
【0022】
すなわち、請求項5の発明では請求項4の発明において更に、機関温度に応じて空燃比補正係数が修正される。可変バルブ機構を備えた機関では、機構の構成部品の熱膨張量が各気筒で必ずしも一様ではなく、気筒毎にばらつきが生じる。このため、機関温度上昇による各気筒の吸気弁の開弁特性値の変化は同一にはならず開弁特性値のばらつきが生じる。このばらつきは熱膨張量が大きいほど、すなわち温度が高いほど大きくなるため、空燃比補正係数の修正量も機関温度が高いほど大きくなる。
【0023】
本発明では、機関温度に応じて空燃比補正係数を修正するようにしたことにより、各運転状態において更に正確に各気筒の空燃比のばらつきを低減することが可能となる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、前記補正係数算出手段は、排気通路に配置された単一の空燃比センサを用いて複数気筒の排気空燃比を測定する、請求項1または請求項2に記載の多気筒内燃機関の空燃比制御装置が提供される。
【0025】
すなわち、請求項6の発明では排気通路に配置された単一の空燃比センサを用いて複数の気筒の排気空燃比を測定する。
本来、各気筒毎の排気空燃比を全ての運転状態において正確に測定できれば、その測定結果を用いて正確な空燃比のばらつき補正を行うことができる。
各気筒の排気行程の位相が異なっている場合、各気筒からの排気は時間差を持って排気通路の空燃比センサ設置位置に到達するため、機関回転速度に同期して空燃比センサの出力をサンプリングすることにより、単一の空燃比センサを用いて複数気筒の排気空燃比を個別に測定することができる。しかし、単一の空燃比センサを用いた場合には、運転状態によりセンサでの空燃比センサ検出遅れや、各気筒の排気のセパレーションが大きく変化するため、特定の測定条件が成立する場合以外の運転条件では各気筒毎の排気空燃比を正確に測定することはできない。
【0026】
本発明では、実際に各気筒毎の空燃比を測定するのは基準運転状態においてのみであるため、上記の各気筒毎の排気空燃比を正確に測定できる特定の条件が成立する運転状態を基準運転状態として設定するようにすることにより、単一のセンサを用いた場合でも正確に各気筒毎の排気空燃比を正確に測定することが可能となる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の空燃比制御装置を自動車用4気筒ガソリン機関に適用した場合の概略構成図、図2は図1の機関の吸気系統の概略構成を示す模式図、図3は図2の吸気系における空燃比センサ57の配置を示す平面図である。
【0031】
図1〜図3において、1は内燃機関、8は機関1の気筒内に形成された燃焼室、2は吸気弁、3は排気弁をそれぞれ示している。本実施形態では、吸気弁2の駆動用カムシャフト6と排気弁駆動用カムシャフト7とが独立して設けられている。図1〜図3において、4はカムシャフト6に設けられた吸気弁駆動用カム、5はカムシャフト7に設けられた排気弁駆動用カムを示している。
【0032】
また、13はクランクシャフト、15は燃料噴射弁、17は機関回転数を検出する回転数センサである。19は機関全体の吸入空気量を検出するエアフローメータ、20は内燃機関冷却水の温度を検出するための冷却水温センサ、22はECU(電子制御装置)である。50はシリンダ、52は吸気管、53はサージタンク、51はサージタンクと各気筒の吸気ポートとを接続する吸気マニホルドである。また、54は排気管、55は点火栓、56は独立したアクチュエータ(図示せず)を備え、後述するECU22からの制御信号に応じてアクセル開度(アクセルペダル踏込み量)とは無関係に開度を変更可能なスロットル弁、57は排気ガス空燃比を検出するための空燃比センサである。
【0033】
本実施形態においては、排気弁駆動用カム5はカムシャフト軸線方向に一様なカムプロファイルを有する通常のカムが用いられているのに対して、吸気弁駆動用カム4は、カムシャフト6の軸線方向に沿ってカムプロファイルが変化する形状とされている。
図4は、吸気弁駆動用カム4の詳細形状を示す図である。図4に示すように、本実施形態の吸気弁カム4のカムプロファイルは、カムシャフト中心軸線方向に沿って変化しており、カムプロファイルのノーズ高さと作用角とは図4の右端から左端に向けて連続的に増大するようにカムプロファイルが設定されている。このため、吸気弁2のバルブリフト量と開弁期間とは、吸気弁2のバルブリフタのカム4との接触位置に応じて変化し、バルブリフタの接触位置がカムの右端から左端に移動するに従ってバルブリフト量は大きく、かつ吸気弁の開弁期間は長くなる。
【0034】
本実施形態では、可変バルブ機構9を用いて機関運転中にカムシャフトを軸線方向に移動させることにより、吸気弁2のバルブリフト量と開弁期間等の開弁特性値を変化させることが可能となっている。すなわち、可変バルブ機構9を用いて、カムシャフト6を機関運転中に軸線方向にスライドさせることにより吸気弁カム4とバルブリフタとの接触位置を変化させ、吸気弁2の駆動に使用するカムプロファイルを変化させることが可能となっている。
【0035】
吸気弁2のバルブリフト量が増大すると、吸気弁の開弁期間が同一であっても気筒内に吸入される空気量が増大する。また、カムの作用角(吸気弁の開弁期間)が大きく(長く)なると、バルブリフト量が同一であっても気筒内に吸入される空気量は増大する。本明細書では、上記の吸気弁バルブリフト量、作用角(開弁期間)等のように気筒内吸入空気量に影響を与える吸気弁動作パラメータを開弁特性値と称している。
【0036】
図5は可変バルブ機構9の動作原理を示す断面図である。図5において、30は吸気弁用カムシャフト6に連結された磁性体、31は磁性体30を駆動するためのソレノイド、32は磁性体30を図5右側方向に向けて付勢するための圧縮ばねである。本実施形態の可変バルブ機構では、コイル31に通電が行われると磁性体30は、ばね32の付勢力に抗して図5左方向に移動し、吸気弁2のバルブリフタとカム4との接触位置はカムシャフト軸線方向に変位する。磁性体30の移動量はソレノイド31への通電電流に応じて変化するため、本実施形態では、ソレノイド31への通電電流を制御することにより吸気弁2のバルブリフタとカム4との接触位置、すなわち吸気弁2の開弁特性値を制御することが可能となっている。本実施形態では、ソレノイド31への通電電流が増大するに従って、カムシャフト6は図4、図5において左側方向に移動し、吸気弁2のバルブリフト量と開弁期間とが減少する。このため、本実施形態では、ソレノイド31に通電していない状態で機関1の各気筒の吸入空気量は最大になり、通電電流が増大するにつれて各気筒の吸入空気量は減少する。
【0037】
図1に16で示すのは、吸気弁2の開弁特性値(バルブリフト量、開弁期間)を検出する開弁特性値センサである。前述したように、本実施形態では吸気弁2の開弁特性値はカムシャフト6の軸線方向移動量に応じて変化するため、カムシャフト6の軸線方向位置が定れば吸気弁2の開弁特性値も決定される。このため、本実施形態では開弁特性値センサ16としては、吸気弁カムシャフト6の軸線方向位置(移動量)を検出する軸位置センサが用いられ、ECU22は開弁特性値センサ16で検出したカムシャフト位置を用いて、予め記憶した関係に基づいて吸気弁2のバルブリフト量、開弁期間などの開弁特性値を算出している。
【0038】
なお、本実施形態では、吸気弁2のカム4のプロファイルは軸線方向に沿ってノーズ高さと作用角との両方が同時に変化するように設定されているが、ノーズ高さ(バルブリフト量)のみ、あるいは作用角(開弁期間)のみが変化するようにしても、可変バルブ機構9を用いて各気筒の吸入空気量を制御することが可能である。
また、本実施形態では吸気弁の開弁特性値のみを変更しているが、排気弁にも9と同様な可変バルブ機構を設け、排気弁の開弁特性値をも変更するようにすることも可能である。
更に、それぞれの弁毎に例えば電磁アクチュエータ等の駆動装置を有する独立駆動式の吸気弁または/及び排気弁を有する機関では、それぞれの駆動装置を制御することにより個々の弁の開弁特性値を変更することが可能である。
【0039】
前述したように、本実施形態では、スロットル弁56は独立したアクチュエータを備えており、運転者のアクセルペダル踏込み量(アクセル開度)と機関運転状態とに基づいてECU22により制御される。
本実施形態では気筒吸気弁のバルブリフト量、開弁期間などの開弁特性値を変更することにより各気筒の吸入空気量を制御することができる。このため、本実施形態では吸入空気量が比較的少ない領域ではスロットル弁56は全開状態に保持したまま吸気弁の開弁特性値を変更することにより吸入空気量を制御するようにして、吸気管絞りによるポンピング損失を低減した、いわゆるノンスロットル運転を行うことが可能となる。
【0040】
ところが、実際の機関では各気筒の吸気弁2やカム4等を含む動弁系には、製作誤差、運転上の熱変形等によるばらつきが生じるため各気筒の吸気弁開弁特性値を同一に制御しても気筒内に充填される空気量にはばらつきが生じ、同一にはならない。
更に、動弁系のばらつき以外にも例えば、各気筒に至る吸気通路の長さの差等により、各気筒の吸入空気量には差が生じている。また、吸入空気量のばらつきに加えて各気筒に噴射される燃料量にも各気筒の燃料噴射弁の製作公差内でばらつきが生じている。
【0041】
このため、実際の機関では各気筒の吸気弁開弁特性と燃料噴射量との設定値を同一に制御していても、気筒毎の吸入空気量と燃料噴射量とにはばらつきを生じるため、各気筒の燃焼空燃比にもばらつきを生じるようになる。このため、気筒間の空燃比ずれによる排気性状の悪化や発生トルクの不均一が生じる問題がある。
特に、本実施形態のように吸気絞りを排除したノンスロットル運転を行う場合には、各気筒の吸入空気量は吸気弁の開弁特性値により決定されるため、開弁特性値の各気筒でのばらつきが吸入空気量のばらつきに直接影響するようになる。
このような吸入空気量等のばらつきによる各気筒毎の空燃比のばらつきは、各気筒からの排気空燃比を計測して空燃比のばらつきを低減するように燃料噴射量を各気筒毎に補正することにより解消することができる。
【0042】
本実施形態では、機関1の排気マニホルドには排気空燃比を検出する空燃比センサ57が配置されている。本来、各気筒の排気空燃比を正確に検出するためには、各気筒の排気系毎に空燃比センサを配置することが好ましい。しかし、各気筒では気筒の工程サイクルは所定のクランク角ずつ異なっており、例えば本実施形態のような4サイクル4気筒機関では各気筒の排気行程はクランク角180度(180CA)ずつずれている。
従って、単一の空燃比センサ57を用いた場合でも、測定条件が整っている場合には正確に各気筒の燃焼空燃比を計測することが可能となる。
【0043】
上記の、単一の空燃比センサ57を用いて各気筒の燃焼空燃比を正確に計測することが可能な条件とは、例えば
(A)機関が定常運転されていること。
(B)機関回転数が低速であること。
(C)各気筒からの排気流量が多いこと。
等である。
すなわち、単一の空燃比センサ57を用いて各気筒の空燃比を正確に検出するためには、空燃比センサ57への各気筒からの排気到達時期(輸送遅れなど)が一定である必要があるため、機関が定常運転されていること(上記(A))が必要となる。
【0044】
また、機関回転数が高くなると各気筒から排出された排気が空燃比センサ57の位置に到達する前に混合してしまい、それぞれの気筒からの排気のセパレーションが悪化するため気筒毎の空燃比を正確に計測できなくなる。従って、単一の空燃比センサ57を用いて各気筒の排気空燃比を正確に検出するためには機関が低速で運転されている状態であること(上記(B))が好ましい。
【0045】
更に、空燃比センサ57で各気筒からの排気空燃比を検出する際には、各気筒からの排気流量が多ければ多いほど検出精度が向上する。このため、単一の空燃比センサ57を用いて各気筒の排気空燃比を検出する際にも出来るだけ排気流量が多い状態で(上記条件(C))計測を行うことが好ましい。
【0046】
なお、仮に各気筒の排気系毎に空燃比センサを設けた場合にも正確な計測を行うためには上記(A)から(C)の条件が成立した状態で計測を行うことが好ましいが、本実施形態のように単一の空燃比センサ57を用いて各気筒の排気空燃比を計測する際には、上記(A)から(C)の条件が特に重要となる。
【0047】
ところが、実際の運転では上記の(A)から(C)の条件が常に成立するわけではなく、機関の高速運転、過渡運転なども頻繁に行われる。
一方、吸気弁の動弁系のばらつきに起因する各気筒毎の空燃比のばらつきは、吸気弁のバルブリフト量や開弁期間(作用角)等の開弁特性値だけでなく、機関回転数、負荷などの機関運転状態に応じて変化する。また、これらの空燃比のばらつきは機関の稼働時間によっても変化する。従って、気筒毎の空燃比のばらつきを補正するためには本来、全ての運転状態でその都度各気筒の排気空燃比を計測することが必要となるが、上述のように単一の空燃比センサを用いて各気筒の排気空燃比を計測する場合、高速運転時、過渡運転時などでは正確に各気筒の排気空燃比を検出することができない。このため、単一の空燃比センサ出力に基づいて気筒毎の空燃比のばらつきを補正していると、機関の運転状態によっては誤補正や制御のハンチングを生じる場合がある。
【0048】
本実施形態では、各気筒毎の空燃比のばらつきを補正する際に、以下の方法で単一の空燃比センサを用いながら正確に各運転状態における空燃比のばらつきを補正する。
以下、本実施形態における気筒毎の空燃比ばらつき補正操作について説明する。
本実施形態における空燃比ばらつき補正は、1.基準運転状態ににおける各気筒毎の空燃比計測と空燃比補正係数の算出と、2.機関運転状態に応じた空燃比補正係数の修正、の2段階で行われる。
【0049】
以下、それぞれについて説明する。
1.基準運転状態における気筒毎空燃比計測と空燃比補正係数の算出。
本実施形態では、まず、上記の(A)から(C)の条件を満足する機関運転状態(基準運転状態)で機関を運転し、この運転状態における空燃比センサ57の出力から各気筒の排気空燃比を計測する。
【0050】
すなわち、本実施形態では基準運転状態として、機関が必ず定常(条件(A))かつ低速(条件(B))で運転されるアイドル運転時に排気流量を増大(条件(C))させるために点火時期を所定量遅角した状態をとり、この基準運転状態で吸気弁のバルブリフト、作用角等の開弁特性値を変化させて各気筒の空燃比を計測する。
この状態では、各気筒の排気空燃比を最も正確に計測することができるため、空燃比ばらつきをなくすための各気筒の燃料噴射量の補正量(補正係数)を正確に算出することができる。
【0051】
なお、本実施形態ではECU22は別途実行される図示しない燃料噴射量演算操作により、エアフローメータ19で検出した吸入空気量Qと機関回転数Nとに基づいて燃料噴射量設定値Fを、F=(Q/N)×K×FAFの形で算出する。ここで係数Kは、1回転当りの吸入空気量(Q/N)に対して各気筒での燃焼空燃比を目標空燃比(例えば理論空燃比)にするために必要とされる1回当りの燃料噴射量、FAFは空燃比センサ57出力に基づいて検出した機関全体としての平均運転空燃比を目標空燃比にするためのフィードバック補正係数である。本実施形態ではフィードバック補正係数FAFについては、公知の適宜な方法で設定されるが、本発明の技術的特徴とは直接関係しないため詳細な説明は省略する。
【0052】
燃料噴射演算操作により算出される燃料噴射量設定値Fは各気筒に共通の値となる。各気筒の実際の吸入空気量と実際の燃料噴射量が同一であれば、各気筒の燃料噴射弁に燃料噴射量設定値Fに対応する燃料噴射信号を入力することにより、各気筒の空燃比は同一になる。しかし、実際には各気筒の吸入空気量にはばらつきがあり、更に、同一の燃料噴射信号Fを入力した場合でも各燃料噴射弁の燃料噴射量にはばらつきが生じるため、各気筒の空燃比は同一にはならない。
【0053】
本実施形態では、基準運転状態で計測した各気筒の排気空燃比から、各気筒の空燃比のばらつきを算出し、空燃比のばらつきを低減するために必要とされる燃料噴射量の補正係数(空燃比補正係数)Ai(iは気筒番号)を気筒毎に算出する。本発明では空燃比補正係数の算出方法として、公知の任意の方法を採用することができるが、本実施形態では、各気筒の空燃比のばらつきを完全になくして各気筒の空燃比を一致させるようにしており、例えば各気筒の排気空燃比をAFiとしたときの各気筒の空燃比補正係数Aiを、
【0054】
Ai=AFi/((1/n)Σ(1〜n)AFi)として算出する。
ここで、(1/n)Σ(1〜n)AFiは全気筒の空燃比の算術平均値である。上記により算出した空燃比補正係数Aiを用いて上記の各気筒共通の燃料噴射量設定値Fを補正し、各気筒の燃料噴射弁にAi×Fの大きさの燃料噴射信号を供給することにより、各気筒の空燃比は上記平均空燃比(1/n)Σ(1〜n)AFiに一致するようになる。
【0055】
上述の空燃比補正係数Aiは、基準運転状態において吸気弁の開弁特性値を変えて、各開弁特性値毎に作成する。
ところで、前述したように、機関の基準運転状態においては各気筒の空燃比のばらつきを正確に測定することができる。しかし、空燃比のばらつきには(1)作用角等の開弁特性値のばらつきに起因するものと、(2)各気筒の吸気通路の長さの差による空気量のばらつきや燃料噴射弁の特性のばらつきに起因するものとの2種類がある。
【0056】
しかも、これらのばらつきのうち、各気筒毎の作用角などの開弁特性値に起因する空燃比のばらつきは開弁特性値が変化するとばらつきの大きさも変化するのに対して、吸気通路長さや燃料噴射弁特性によるばらつきは作用角が変化してもほとんど変化しない。
このため、正確に空燃比のばらつきを補正するためにはこれらの2種類のばらつきを区別して取扱う必要がある。そこで、本実施形態ではまず、上記(2)の、開弁特性値とは無関係なものに起因する空燃比のばらつきを求め、このばらつきを補正した状態で(1)の開弁特性値毎のばらつきに対する補正係数を求めることとしている。
【0057】
作用角、バルブリフトなどの開弁特性値のばらつきによる空燃比(吸入空気量)のばらつきは、吸入空気量が少ない状態ほど、言換えれば作用角及びバルブリフト量が小さいほど大きくなり、逆に吸入空気量が最大となった状態、すなわち作用角とバルブリフトと量とが最大になった状態では、開弁特性値に起因する各気筒の吸入空気量のばらつきはほとんど無視できる程度になる。すなわち、作用角とバルブリフト量とが最大の状態では、各気筒における空燃比のばらつきは、吸気通路長さや燃料噴射弁特性のばらつきに起因するもの(上記(2))のみになる。
【0058】
そこで、本実施形態ではまず、基準運転状態において吸入空気量が最大になる開弁特性値(基準開弁特性値)で機関を運転し、このときの空燃比補正係数を各気筒の基準補正係数Xiとして算出する。
【0059】
すなわち、Xi=AFi/((1/n)Σ(1〜n)AFi)
そして、上記吸入空気量が最大になる開弁特性値以外の開弁特性値では、予め基準補正係数Xiを用いて燃料噴射設定値Fを補正した量の燃料Xi×Fをそれぞれの気筒に噴射した状態での空燃比のばらつきをもとめ、空燃比補正係数Aiを算出する。これにより、空燃比補正係数Aiは各気筒の開弁特性値のばらつきのみに起因する空燃比のばらつきに対応した値となる。なお、基準開弁特性値における各気筒の空燃比補正係数Aiは1.0とする。
これにより、基準運転状態における各開弁特性値毎の各気筒の空燃比補正係数Aiが求められる。
【0060】
2.機関運転状態に応じた空燃比補正係数Aiの修正。
次に機関運転状態に応じた空燃比補正係数Aiの修正について説明する。上述したように、基準運転状態で求めた空燃比補正係数Aiは、開弁特性値のばらつきのみに起因する各気筒の空燃比のばらつきに対応したものとなっている。
ところが、各気筒の開弁特性値のばらつきは、開弁特性値そのものの値により変化するだけでなく、機関の運転状態によっても変化する。
【0061】
例えば、機関負荷が増大するとも開弁特性値が同一であっても吸入空気量は増大する。このため、開弁特性値が同一であっても各気筒の空燃比のばらつきは大きくなるため、空燃比補正係数による燃料噴射量の補正量も開弁特性値の値が同一であっても機関負荷とともに大きくする必要がある。
【0062】
また、機関回転数が増大すると負荷が増大したと場合と同様に吸入空気量は増大する。しかし、この場合には回転数により吸気ポートへの既燃ガスの吹返し量が変化するため、回転数が増大した場合気筒内吸入空気量はある回転数までは一様に増大するが、それ以上では回転数とともに減少するようになる。従って、開弁特性値が同一であっても各気筒の空燃比のばらつきは、回転数と共に変化し、ばらつきが最大になるピーク回転数が存在する。
【0063】
更に、各気筒の空燃比のばらつきは機関温度によっても変化する。例えば、機関温度が上昇するとカムシャフトも熱膨張する。本実施形態では、図5に示した可変バルブ機構9を用いて開弁特性値を変化させているため、カムシャフト6は磁性体30を固定点として図5の左側に熱膨張することになる。このため、各気筒におけるカム4の熱膨張による移動量(すなわち熱膨張による各気筒の開弁特性値変化量)は、磁性体30から離れた側の気筒ほど大きくなる。
従って、機関温度に応じて各気筒での熱膨張による開弁特性値の変化を気筒毎に補正する必要が生じる。
【0064】
本実施形態では、予め機関負荷、回転数、機関温度による空燃比補正係数の変化を実験または計算により求めてあり、基準運転状態における空燃比補正係数に対する修正係数の形でECU22のROMに格納してある。そして、基準運転状態と異なる負荷、回転数、機関温度の運転では、基準運転状態において算出した空燃比補正係数をこれらの修正係数に基づいて補正するようにしている。
これにより、本実施形態では正確に各気筒の排気空燃比を計測することが困難な運転状態においても正確に各気筒の空燃比を一致させるように各気筒の燃料噴射量を補正することが可能となっている。
【0065】
図6、図7は、上記に説明した空燃比制御操作を説明するフローチャートであり、図6は空燃比補正係数Ai及び基準補正係数Xiの学習操作を、図7は図6の操作で学習したAi及びXiを用いた燃料噴射量補正操作を、それぞれ示している。図6、図7の操作は、ECU22により一定時間毎または一定クランク回転角毎に実行されるルーチンにより行われる。
【0066】
まず、図6の学習操作について説明する。
図6において操作がスタートすると、ステップ601では、まず今回機関を始動してから各気筒の補正係数Ai、Xiの学習が完了しているか否かが判定され、すでに完了している場合はそのまま本操作を終了する。
【0067】
ステップ601で、まだ補正係数の学習が完了していない場合には、次にステップ603に進み、現在機関が基準運転状態で運転されているか否かが判定される。前述したように空燃比補正係数Ai及び基準補正係数Xiは各気筒毎の空燃比を空燃比センサ57で正確に検出できる状態で学習する必要がある。本実施形態では、車両が停止中であり(例えば車速が3km/h以下)、かつ機関がアイドル運転中(スロットル弁開度がゼロ)の状態のときを基準運転状態と判断し、学習を行う。機関が基準運転状態にないときには、本操作はそのまま終了する。次に、ステップ605では学習を行うべき値に各気筒の吸気弁の開弁特性値(バルブリフト、開弁期間)を設定する。
【0068】
前述したように、空燃比センサ57で正確に各気筒の空燃比を検出するためにはできるだけ各気筒の排気流量が大きいことが好ましい。そこで、本実施形態では機関回転数をアイドル回転数に維持しながら各気筒の点火時期を遅延させた状態で学習を行う。点火時期を遅延させると各気筒の出力トルクが低下するため、トルクの低下を補いつつアイドル回転数を一定に維持するために各気筒の開弁特性値は大流量側にシフトされ、排気流量が増大する。ステップ605では、吸気弁の開弁特性値を大流量側にシフトさせ、各気筒の吸入空気量を増大させると同時に、各気筒の点火時期を調節(遅角)することにより機関のアイドル回転数を一定に維持する。
【0069】
ステップ607では、上記の開弁特性値設定により機関のアイドル回転数を維持したまま気筒の吸入空気量が充分に増大したか否か、すなわち学習条件が成立したか否かを判定し、成立していない場合には成立するまで待つこととし、今回の操作は終了する。これにより、学習条件が成立するまで図6の操作が繰返される。
【0070】
なお、本実施形態ではステップ607で学習条件が成立した場合には、ステップ619から625により、そのときの開弁特性値θにおける空燃比補正係数Ai(θ)が算出され、その後ステップ605での開弁特性値の設定を所定量ずつ変更して、各気筒毎に各開弁特性値θにおける空燃比補正係数Aiが全部算出されるまで図6の操作を繰返す。
【0071】
また、ステップ605では、まず現在の運転状態でアイドル回転数を維持しながら点火時期遅角により吸入空気量が最大になる開弁特性値(基準開弁特性値)の空燃比補正係数を算出し、この基準開弁特性値における各気筒の空燃比補正係数を基準補正係数Xiとして記憶し、次回の図6の操作実行時からは、ステップ605では開弁特性値を所定量ずつ、吸入空気量が低下する側に変更するとともに、機関回転数が変化しないように点火時期を調整する操作を行う。
【0072】
すなわち、本実施形態では補正係数の学習時にはまず各気筒の吸入空気量が現在の回転数で最大になるように開弁特性値を調整して各基準補正係数を算出し、その後吸入空気量を減少させながら他の開弁特性値における空燃比補正係数を算出するようにしている。
前述したように、まず学習時に基準補正係数を算出するのは気筒の吸入空気量がある程度大きくなる開弁特性値での運転では、各気筒間の空燃比のばらつきは、吸気通路長さや燃料噴射弁の特性ばらつきによるもののみとなるためである。これらのばらつきは開弁特性値を変化させても変化しない。このため、本実施形態ではまず基準補正係数をXiを求め、このXiで各気筒の空燃比が等しくなるように燃料噴射量を補正した状態で他の開弁特性値における空燃比補正係数Aiを算出するようにしている。
すなわち、本実施形態における空燃比補正係数Aiは、各開弁特性値における各気筒の、開弁特性値のみに起因する空燃比のばらつきに対応した値となっている。
【0073】
上記の操作を具体的に説明すると、図6ステップ607で学習条件が成立した場合には、ステップ609に進み、現在の開弁特性値が各気筒の最大吸入空気量に対応する、予め定めた値(基準開弁特性値)になっているか否かを判定し、基準開弁特性値になっている場合には、ステップ613で空燃比センサ57出力に基づいて各気筒の排気空燃比を計測する。
【0074】
すなわち、ステップ613では、各気筒の排気行程に排出された排気が、空燃比センサ57に到達するタイミング毎にクランク回転角に同期して空燃比センサ57出力をサンプリングし、各気筒の排気空燃比AFiを求め、ステップ615では各気筒の排気空燃比の平均値((1/n)Σ(1〜n)AFi)と、それぞれの気筒の排気空燃比AFiとから各気筒の空燃比が同一なるように燃料噴射量を修正するための基準補正係数Xiを、Xi=AFi/((1/n)Σ(1〜n)AFi)として算出する。前述したように、基準補正係数Xiは、各気筒の開弁特性値以外の要素(吸気通路長さや燃料噴射弁特性のばらつき)に起因する各空燃比のばらつきに対応する値となる。
そして、ステップ615で各気筒の基準補正係数Xiを算出後、ステップ617では算出したXiを記憶(学習)して、今回の操作は終了する。
【0075】
次回に図6の操作が開始されると、ステップ605では開弁特性値θが、吸入空気量が低下する側(例えばバルブリフト量が減少、及びカム作用角が減少する側)に所定量シフトされる。これにより、ステップ609の次にはステップ619から625が実行され、各気筒の各開弁特性値における空燃比補正係数Ai(θ)が求められる。
すなわち、ステップ619では各気筒の排気空燃比が計測され、ステップ621で、現在の開弁特性値θにおける仮の空燃比補正係数Ai(θ)′が、
Ai(θ)′=AFi/((1/n)Σ(1〜n)AFi)
として算出される。
【0076】
ステップ619で算出された仮の空燃比補正係数Ai(θ)′は、機関の熱膨張による各気筒により生じる各気筒の空燃比ばらつきと、各気筒の開弁特性値以外の要素に起因する各気筒の空燃比のばらつきとを含んだ値となっている。そこで、ステップ623では、各気筒の、後述する熱変形に対する補正係数Ri(TL)とステップ617で記憶した基準補正係数XiJとを用いて、仮の空燃比補正係数Ai(θ)′を補正し、各気筒の真の空燃比補正係数Ai(θ)を算出する。
すなわち、Ai(θ)=Ai(θ)′/(Xi×Ri(TL))
【0077】
なお、上記の各式において、添字iは気筒番号を、θは開弁特性値を表し、TLは機関温度(潤滑油温度)を表している。上記により、ステップ623で算出された空燃比補正係数Ai(θ)は、機関の熱膨張によるばらつきや、吸気通路長さや燃料噴射弁特性のばらつきによる各気筒の空燃比のばらつきへの影響を排除した、純粋に開弁特性値のみに起因する各気筒の空燃比のばらつきに対応したものとなる。
【0078】
ステップ625では、ステップ623で算出した空燃比補正係数を記憶した後、本操作の今回の実行は終了する。なお、本操作は予め定めた開弁特性値の値全てについて各気筒の空燃比補正係数Ai(θ)を算出するまで繰返された後終了する。
【0079】
図7は、図6の学習操作により記憶した補正係数XiとAi(θ)とを用いた燃料噴射量補正操作を示すフローチャートである。
図7の操作では、基準運転状態で求めた各気筒の空燃比補正係数Ai(θ)を機関運転状態を表すパラメータの値に基づいて補正することにより、基準運転状態以外の運転状態においても、正確に各気筒の空燃比が一致するように燃料噴射量を気筒毎に補正する。
【0080】
図7において、ステップ701では機関回転数N、吸入空気量Q、機関潤滑油温度TLがそれぞれのセンサにより検出され、ステップ703では現在の吸気弁の開弁特性値θが、開弁特性値センサ16(図1)により検出される。
そして、ステップ705では、図6のステップ617で記憶した各気筒の基準補正係数Xiが読出される。
また、ステップ707では、ステップ703で検出した現在の開弁特性値θに基づいて、ステップ625で記憶した各気筒の空燃比補正係数Ai(θ)が読出される。
【0081】
更に、ステップ709では、機関回転数Nと機関吸入空気量Qとに基づいて空燃比補正係数の回転数Nと負荷(Q/N)における各気筒の修正係数Liが、決定される。本実施形態では、前述のように機関回転数Nと吸入空気量Qとを変えて機関を運転し、基準運転状態で求めた空燃比補正係数Ai(θ)がどのように変化するかを予め求めてあり、NとQとをパラメータとする2次元数値マップの形で回転数負荷修正係数Liとして予めECU22のROMに格納してある。ステップ713では、機関回転数Nと機関吸入空気量Qとに基づいて上記マップから現在の回転数と負荷とにおける回転数負荷修正係数Liが算出される。
なお、ステップ709では機関負荷を表すパラメータとして機関1回転当りの吸入空気量(Q/N)をとっているが、機関負荷を表すパラメータとしてQ/Nの代りにアクセル開度(アクセルペダルの踏込み量)を用いても良い。
また、ステップ709では、機関回転数と負荷とに対する修正を1つの修正係数Liで行っているが、機関回転数に対する修正係数と機関負荷に対する修正係数とを個別に設けるようにすることも可能である。
【0082】
更に、ステップ711では、機関の熱膨張を表す各気筒の機関温度修正係数Riが、ステップ701で検出した潤滑油温度(機関温度)TLに基づいて算出される。前述したように、機関の熱膨張による空燃比のばらつきは各気筒の位置関係により異なってくる。本実施形態では、予め空燃比補正係数に対する機関の熱膨張の影響を各機関温度(潤滑油温度)毎に実験により求め、潤滑油温度TLをパラメータとした1次元マップとしてECU22のROMに格納してあり、ステップ711ではこのマップに基づいて現在の潤滑油温度TLにおける各気筒毎の機関温度修正係数Ri(TL)が算出される。
【0083】
次いで、ステップ713では、ステップ707で読出した現在の開弁特性値θにおける基準運転状態の各気筒の空燃比補正係数Ai(θ)が、ステップ709で算出した回転数負荷修正係数Li、ステップ711で算出した機関温度修正係数Ri(TL)とを用いて、Ai(θ)×Li×Ri(TL)に修正され、修正後の空燃比補正係数を用いて、別途図示しない操作により機関回転数と負荷(Q/N)とに基づいて算出された燃料噴射量設定値Fが修正される。これにより、現在の運転状態で各気筒の空燃比を一致させるために必要とされる各気筒の燃料噴射量Fi(θ)が、
【0084】
Fi(θ)=F×Xi×Ai(θ)×Li×Ri(TL)
として算出される。
上述のように、本実施形態によれば、単一の空燃比センサ57を用いた場合でも正確に各気筒毎の空燃比を検出可能な基準運転状態で各気筒の空燃比補正係数を求め、この空燃比補正係数を機関運転状態を表す所定のパラメータを用いて修正することにより、単一の空燃比センサ57では正確に各気筒の空燃比を検出することのできない運転状態においても、正確に各気筒の空燃比を一致させることが可能となっている。
【0085】
ところで、前述のように、本実施形態では吸気弁の開弁特性値を変化させることにより、スロットル弁を使用せずに、可変バルブ機構9を使用して機関の吸入空気量を制御することが可能となっており、スロットル弁による絞り損失をなくした熱効率の高いノンスロットル運転が可能となっている。
しかし、可変バルブ機構9を用いて吸入空気量を制御する場合には、スロットル弁を用いて吸入空気量を制御する場合に較べて上記ノンスロットル運転が可能であることの他にも有利な点がある。
【0086】
可変バルブ機構9を用いた場合にはスロットル弁による吸気絞りに較べて、極めて短時間で気筒の吸入空気量を変化させることが可能となる。
通常、スロットル弁を用いて気筒の吸入空気量を変化させる場合には、吸気弁下流側のサージタンクや吸気マニホルドなどの容積がデッドボリュームとなるため、スロットル弁の開度を変えてから実際に気筒内吸入空気量が変化するまでに時間を要し、吸入空気量は比較的緩やかに変化するようになる。
【0087】
これに対して、吸気弁の開弁特性値を変化させると気筒内吸入空気量は極めて短時間にステップ状変化に近い変化をするようになる。
このため、例えばNOX吸蔵触媒から吸蔵したNOXを放出させ、還元浄化する場合には吸気弁の開弁特性値を変化させることにより気筒内吸入空気量を変化させるほうが良好な結果を得ることができる。
【0088】
気筒内で理論空燃比より希薄(リーン)な燃焼を行う内燃機関の排気系に、流入する排気の空燃比がリーンのときに排気中のNOXを吸着、吸収またはその両方にて選択的に保持し、流入する排気の空燃比が理論空燃比またはリッチ空燃比となったときに、吸蔵したNOXを排気中の還元成分を用いて還元浄化するNOX吸蔵触媒を設け、機関のリーン空燃比運転中にNOX吸蔵触媒に排気中のNOXを吸蔵除去するリーンバーン機関の排気浄化装置が知られている。
【0089】
このようなNOX吸蔵触媒を使用した排気浄化装置では、NOX吸蔵触媒が吸蔵したNOXで飽和してしまうともはや排気中のNOXを除去できなくなるため、NOX吸蔵触媒に吸蔵したNOXの量が所定量に到達する毎に機関をリーン空燃比運転から理論空燃比またはリッチ空燃比に切換えて、NOX吸蔵触媒に理論空燃比またはリッチ空燃比の排気を供給して排気中の還元成分によりNOX吸蔵触媒に吸蔵されたNOXを還元浄化する必要がある。
【0090】
通常、機関をリーン空燃比運転から理論またはリッチ空燃比運転に切換えるためには、各気筒に供給する燃料を増大すると同時に、気筒内に吸入される空気量を低減する必要がある。
この場合、例えば通常の機関では、スロットル弁を絞り、吸入空気量を低減するとともに、EGR(排気ガス再循環)装置により吸気系に排気ガスの一部を循環させて気筒に吸入される新気の量を低減することにより、気筒内に吸入される空気(新気)量を低減する。しかし、スロットル弁下流側にはサージタンク、吸気マニホルドなどの比較的大きな容積が存在する。このため、スロットル弁開度を急激に変えた場合でも実際に気筒内に吸入される空気量は比較的緩やかにしか低下せず、機関の空燃比を急激にリーンから理論空燃比またはリッチ空燃比にすることはできない。
【0091】
このため、NOX吸蔵触媒が吸収したNOXを還元浄化する際に、スロットル弁を用いて吸入空気量を制御していると、排気空燃比をリーンからリッチに急激に切換えることが出来ず、切換の際にNOX吸蔵触媒のNOXの還元浄化に寄与しないリーンとリッチとの間の中間空燃比での運転を経てから切換が行われることとなり、無駄な燃料消費の増大を招くとともに、NOX吸蔵触媒の吸蔵したNOXの還元浄化に要する時間が増大する問題が生じる。
これに対して、例えば図5の可変バルブ機構9を用いた場合には、カムの短い距離の移動で気筒の吸入空気量を急激に減少することができるため、リーンから理論空燃比またはリッチ空燃比への切換も極めて短時間で行うことができる。
このため、バルブの開弁特性値を変更することにより気筒内吸入空気量を制御する機関では、NOX吸蔵触媒に吸蔵したNOXを短時間で効率的に還元浄化することが可能となる。
【0092】
ところで、上述のように開弁特性値毎に空燃比補正係数を求める場合には、開弁特性値センサ16の検出精度が問題となる。例えば、開弁特性値センサ16の出力特性が変化してしまったような場合には、気筒の開弁特性値を正確にフィードバック制御することができないため、各気筒の空燃比補正係数を正確に求めることができなくなるのみならず、機関の吸入空気量を正確に制御することができなくなり、機関性能や排気性状が悪化する問題がある。
【0093】
図1から図5に示した実施形態では、機関運転中に開弁特性値センサ16の実際の出力特性を検出し、検出した出力特性に基づいてセンサ16出力値を補正するようにしている。これにより、開弁特性値センサ16の出力特性が変化したような場合にも、正確に開弁特性値を検出することが可能となる。
【0094】
以下、本実施形態における開弁特性値センサ16の実際の出力特性の検出方法について説明する。
開弁特性値センサ16の実際の出力特性は、例えば機関の開弁特性値(本実施形態では、バルブリフト量と作用角)が最大になったときのセンサ16出力と最小になったときの出力とにより規定される。このため、機関運転中に開弁特性値を最大値と最小値に設定することが可能であれば、開弁特性値センサ16の実際の出力特性を機関運転中に検出することが可能となる。
【0095】
ところが、各気筒の開弁特性値を変化させると気筒内に吸入される空気量が変化するため、機関出力トルクや回転数が大幅に変化してしまい、通常は運転中に開弁特性値を最大値と最小値との間で変化させることは困難な問題がある。
本実施形態では、この問題を、例えば機関のフュエルカット運転中に行うことにより解決している。
【0096】
以下、図8を用いて本実施形態の開弁特性値センサ16の出力特性検出操作について説明する。図8の操作はECU22により一定時間毎または一定クランク回転角毎に実行されるルーチンとして行われる。
【0097】
図8の操作では、
イ)機関が減速中などのフュエルカット運転を実施していること、または
ロ)フュエルカット以外の運転が実施されており、前回の出力特性計測から所定時間以上経過していて、しかもスロットル弁開度操作等により機関の出力トルクを一定に維持しながら開弁特性値を最小値及び最大値に設定することが可能であること、
のいずれか一方の条件が成立したときに、機関の開弁特性を実際に最小値から最大値まで変化させて、最小値と最大値とにおける開弁特性値センサ16出力値を求めることによりセンサ16の出力特性の計測を行う。
前述したように、本実施形態ではセンサ出力特性を検出する際に実際に機関の開弁特性値を最小値と最大値にセットする必要があり、機関出力に影響が出る可能性がある。
【0098】
そこで、本実施形態では機関で燃焼が行われておらず開弁特性値を最小または最大にセットしても機関出力に影響が生じないフュエルカット運転中、若しくは開弁特性値を最大値及び最小値にセットした場合でもスロットル弁開度を調整することにより機関吸入空気量(すなわち機関出力)を一定に維持できる運転状態で機関が運転されている場合のみセンサ出力特性の検出操作を行うようにしている。
これにより、機関の運転に影響を生じることなくセンサ出力特性を検出可能となるため、出力特性が変化した場合でも特性変化に応じた出力補正を行い、正確に機関の開弁特性値を検出することが可能となる。
【0099】
以下、図8の操作を具体的に説明する。
操作がスタートすると、まずステップ801では現在機関のフュエルカット運転(F/C運転)が行われているか否かが判定される。現在F/C運転が実行されている場合には、開弁特性値を変化させても機関の運転に影響がでることがないため、ステップ803から805でセンサ16の出力特性の計測を行う。
【0100】
すなわち、ステップ803では、可変バルブ機構9を駆動して開弁特性値を最小値(吸入空気量が最小になる開弁特性値、すなわち本実施形態ではバルブリフト量と作用角との両方が最小になる位置に相当し、図5ではカムシャフト6が最も図5の左側に移動したときの開弁特性値)に制御する。そして、ステップ805では可変バルブ機構9により開弁特性値が最小値に到達するのに充分な時間が経過後開弁特性値センサ16の出力θを、最小開弁特性値出力θminとして記憶する。
【0101】
そして、最小開弁特性値出力を記憶した後、ステップ807では開弁特性値を最大値(吸入空気量が最大になる開弁特性値、すわなち本実施形態ではバルブリフト量と作用角との両方が最大になる位置であり、図5でカムシャフト6が最も右側に移動したときの開弁特性値)に制御し、充分な時間が経過した後に開弁特性値センサ16の出力θを、最大開弁特性値出力値θmaxとして記憶する。
【0102】
また、ステップ801で現在フュエルカット運転中でない場合には、次にステップ811に進み、フラグXの値が1にセットされているか否かを判定する。Xはステップ813の計測実行条件が成立した場合にはステップ817で1に、計測実行条件が成立しない場合にはステップ815で、出力特性の検出が終了した場合にはステップ829で、それぞれゼロにセットされるフラグである。フラグXは、センサ出力特性を検出中であるか否かを示し、一旦ステップ813の計測実行条件が成立した場合には、その後ステップ813の条件が成立しなくなっても、ステップ819から827のセンサ出力特性検出操作を完了するようにする機能を有している。
【0103】
ステップ811でX≠1であった場合には、センサ出力特性を検出中でないため、ステップ813に進み、現在センサ出力特性検出を実行する条件が成立しているか否かを判定する。前述したように、本実施形態ではセンサ出力特性を検出するためには、吸気弁の開弁特性値を変更する必要があるため、フュエルカット運転時以外はあまり頻繁に実施することは好ましくない。そこで、ステップ813で判定する検出実行条件は、機関始動時からの運転時間が所定値(例えば10分)の整数倍であること(この場合には、機関運転中10分毎に計測実行条件が成立する)、あるいは、機関冷却水温度または潤滑油温度が10°Kの整数倍であること(この場合には、機関運転中冷却水温度または潤滑油温度が10°K上昇する毎に計測実行条件が成立する)とされている。なお、ステップ813の計測実行条件としては、機関運転中に適宜な時間間隔で計測実行条件が成立するような条件であれば他の条件を設定することも可能である。
【0104】
ステップ813で計測実行条件が成立していない場合には、ステップ815でフラグXの値を0にセットして、本操作はステップ821から829のセンサ出力特性検出を行うことなく終了する。
【0105】
また、ステップ813で計測実行条件が成立していた場合には、ステップ817に進み、フラグXを1にセットした後ステップ819に進む。これにより、一旦ステップ813の計測実行条件が成立すると、次回からは図8の操作を実行する毎に、ステップ811の次に直接ステップ819が実行されるようになり、出力特性の検出が完了してステップ829でXの値が1にセットされるまで、ステップ813の判定はバイパスされるようになる。
【0106】
ステップ819では、スロットル弁の開度を制御することにより現在の機関出力トルクを変化させずに開弁特性値を最小から最大まで変化させることが可能か否か、すなわち等出力制御条件が成立しているか否かが判定される。例えば、現在の機関運転状態(回転数、負荷)では開弁特性値を最小にセットするとスロットル弁を全開にしても現在の吸入空気量を維持できずに吸入空気量が減少してしまうような場合、あるいはスロットル弁を全閉にしても開弁特性値を最大にすると吸入空気量が現在の吸入空気量より増大してしまうような場合は、現在の機関出力トルクを変化させずに開弁特性値を最小から最大まで変化させる制御(等出力制御)を行うことはできない。
本実施形態では、予め等出力制御が可能な回転数Nと負荷(Q/N)との範囲を予め実験等により求め、等出力制御条件としてECU22のROMに格納してある。ステップ819では、現在の回転数、負荷がこの等出力制御条件に合致しているか否かが判定される。
【0107】
ステップ819で現在等出力制御条件が成立していない場合には、本操作の今回の実行は終了する。この場合、次回以降の運転でステップ819の等出力制御条件が成立すればステップ821以下のセンサ出力特性検出操作が実行される。
ステップ810で等出力制御条件が成立している場合には、ステップ821で開弁特性値が最小になるように可変バルブ機構9が制御されるとともに機関の出力トルクが一定に維持されるようにスロットル弁56開度が調整される。そして、ステップ823では開弁特性値が最小値に到達するのに充分な時間が経過した後に現在のセンサ16出力をθminとして記憶(学習)する。
【0108】
また、ステップ825と827では、ステップ821,823と同様に機関の出力を一定に維持しながら開弁特性値を最大になるようにして、この状態でのセンサ16出力をθmaxとして記憶(学習)する。そして、θminとθmaxとの値の学習が完了するとステップ829ではフラグXの値が0にセットされる。
【0109】
上述のように、図8の操作により、機関がフュエルカット運転する毎に、及びそれ以外の運転状態では適宜な間隔でセンサ出力特性の検出が行われ、開弁特性の最小値と最大値とにおけるセンサ出力θmaxおよびθminの値が更新される。これにより、最大値と最小値との間の任意の開弁特性値に対するセンサ出力値を公知の適宜な方法で求めることができるようになり、機関運転中にセンサ出力特性が変化した場合にもセンサ出力を補正して正確な開弁特性値を検出することが可能となる。
【0110】
【発明の効果】
各請求項に記載の発明によれば、機関の運転状態にかかわらず各気筒間の空燃比のばらつきを低減することが可能となる共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空燃比制御装置を自動車用4気筒ガソリン機関に適用した実施形態の概略構成図である。
【図2】図1の機関の吸気系統の概略構成を説明する模式図である。
【図3】図2の吸気系における空燃比センサの配置を示す平面図である。
【図4】図1の機関の吸気弁駆動用カムの詳細形状を示す図である。
【図5】可変バルブ機構9の動作原理を示す断面図である。
【図6】図1の実施形態の空燃比制御操作を説明するフローチャートである。
【図7】図1の実施形態の空燃比制御操作を説明するフローチャートである。
【図8】図1の実施形態の開弁特性値センサの出力特性検出操作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1…内燃機関
2…吸気弁
3…排気弁
4…吸気弁駆動カム
6…吸気カム
9…可変バルブ機構
16…開弁特性値センサ
22…電子制御ユニット(ECU)
56…スロットル弁
Claims (6)
- 気筒内吸入空気量に影響を与える吸気弁の開弁特性値を変化させる可変バルブ機構を備えた多気筒機関の空燃比制御装置であって、
機関の予め定めた基準運転状態において各気筒毎に測定した排気空燃比を用いて基準運転状態における各開弁特性値毎の各気筒の排気空燃比のばらつきを算出するとともに、算出したばらつきに基づいて、前記基準運転状態において各気筒の運転空燃比のばらつきを低減するための燃料噴射量の空燃比補正係数を各開弁特性値毎に算出する補正係数算出手段を備え、
前記予め定めた基準運転状態は、機関のアイドル運転状態であり、
機関が前記基準運転状態以外の運転状態にあるときに、各開弁特性値における前記空燃比補正係数を機関運転状態を表す所定のパラメータの値に基づいて修正することにより、基準運転状態以外の運転状態における各気筒の運転空燃比のばらつきを低減するように各気筒の燃料噴射量を制御する、多気筒内燃機関の空燃比制御装置。 - 前記補正係数算出手段は各気筒の空燃比を実質的に同一にするように前記燃料噴射量の空燃比補正係数を各開弁特性値毎に算出する、請求項1に記載の多気筒内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記補正係数算出手段は、機関が前記予め定めた基準運転状態において機関が気筒内吸入空気量が最大になる基準開弁特性値で運転されているときの各気筒毎の空燃比ばらつきに基づいて、各気筒の空燃比のばらつきを低減するための燃料噴射量の基準補正係数を算出し、機関が前記予め定めた基準運転状態において前記基準開弁特性値以外で運転されている場合には、前記基準補正係数を用いて補正した後の燃料噴射量に対する前記空燃比補正係数を算出する、請求項1または請求項2に記載の多気筒内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記機関運転状態を表すパラメータは、機関回転数、機関負荷又はアクセル開度のうち少なくとも1つを含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多気筒内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記機関運転状態を表すパラメータは、更に機関温度を含む、請求項4に記載の多気筒内燃機関の空燃比制御装置。
- 前記補正係数算出手段は、排気通路に配置された単一の空燃比センサを用いて複数気筒の排気空燃比を測定する、請求項1または請求項2に記載の多気筒内燃機関の空燃比制御装置。
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