JP4033028B2 - 内燃機関の可変バルブ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の吸気バルブ又は排気バルブのバルブ可変量(リフト量、作用角、バルブタイミング等)を制御する内燃機関の可変バルブ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、内燃機関の吸入空気量の制御はスロットルバルブによって行われるが、最近では、吸気バルブのリフト量を可変する可変バルブ機構を設け、アクセル開度やエンジン運転状態等に応じて吸気バルブのリフト量を可変することで吸入空気量を制御する技術が開発されている。この可変吸気バルブ制御による吸入空気量制御は、吸気バルブのリフト量を小さくすることによって、吸気通路をスロットルバルブで絞ることなく吸入空気量を少なくすることができるので、ポンピングロスを低減することができると共に、吸気バルブのリフト量を小さくすることによって、カム軸の駆動力も低減することができて、燃費を向上させることができるという利点がある。
【0003】
このような可変バルブリフト制御システムにおいては、特許文献1(特開2001−263110号公報)に示すように、各気筒毎に吸気バルブを駆動する電磁アクチュエータを設けたものがあるが、この構成では、気筒数と同数の電磁アクチュエータが必要になるため、システム構成が複雑化して高コストになる欠点がある。
そこで、複数気筒の吸気バルブのリフト量を一括して1つの可変バルブ機構で制御するシステムが開発されている。
【0004】
しかし、この可変吸気バルブ制御による吸入空気量制御では、低負荷時に吸気バルブのリフト量が小さくなるため、各気筒で目標リフト量に対する実リフト量のばらつき(各気筒の部品公差や組付公差によるばらつき)の割合が大きくなって、気筒間の吸入空気量ばらつきが大きくなる傾向がある。このため、気筒間の吸入空気量ばらつきの影響を受けて各気筒のトルクや空燃比が変動し易く、気筒間のトルクばらつきや空燃比ばらつきが大きくなる傾向がある。
【0005】
このような気筒間のトルクばらつきや空燃比ばらつきを補正する方法が幾つか提案されている。例えば、特許文献2(特開昭62−17342号公報)に示すように、クランク軸に設けたトルクセンサで各気筒毎にトルクを検出して、各気筒のトルクが全気筒の平均トルクになるように各気筒毎に燃料噴射量を補正するようにしたものがある。
【0006】
或は、特許文献3(特開2000−220489号公報)に示すように、排気管に設置した空燃比センサの出力に基づいて各気筒の空燃比を推定し、気筒間の空燃比ばらつきが小さくなるように各気筒毎に燃料噴射量を補正するようにしたものがある。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−263110号公報(第3頁〜第6頁等)
【特許文献2】
特開昭62−17342号公報(第2頁等)
【特許文献3】
特開2000−220489号公報(第2頁〜第3頁等)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許文献2、3では、各気筒毎にトルクや空燃比を検出して、その検出結果に基づいて各気筒毎に燃料噴射量を補正することで、各気筒のトルクばらつきや空燃比ばらつきを補正するようにしている。しかし、気筒間の吸入空気量ばらつきが大きくなると、単に燃料噴射量を補正するだけでは、各気筒のトルクばらつきや空燃比ばらつきを十分な精度で補正することは困難である。しかも、気筒間の吸入空気量ばらつきや吸入燃料量ばらつき等の複数の要因が絡み合って気筒間のトルクばらつきや空燃比ばらつきが発生している場合も、十分な精度で補正することは困難である。
【0009】
この対策として、各気筒の部品公差や組付公差を小さくして(つまり気筒間の吸気バルブリフト量のばらつきを小さくして)、気筒間の吸入空気量のばらつきを小さくすることが考えられるが、これを実現するには、部品の加工精度を向上させたり、部品を選択して組み付けたりする必要があり、部品コストや製造コストが高くなってしまうという欠点がある。
【0010】
そこで、本発明者らは、複数気筒の吸気バルブのリフト量を一括して1つの可変バルブ機構で制御するシステムにおいて、各気筒の吸気行程毎(4気筒エンジンであれば180℃A毎)に可変バルブ機構を高速駆動することで、気筒間の吸気バルブリフト量のばらつき(又は吸入空気量のばらつき)を補正する“気筒別可変バルブ制御”を研究している。
【0011】
しかし、可変バルブ機構を高速駆動するにしても限界があり、可変バルブ機構の駆動時間を無視できないため、各気筒の吸気行程毎に可変バルブ機構を駆動する方式では、可変バルブ機構の駆動途中(リフト可変動作の途中)で吸気バルブの開弁タイミングを迎えてしまい、バルブプロフィール(バルブリフトカーブ)が過渡状態となってしまう。このため、目標リフト量に対応した適正なバルブプロフィールで吸気バルブを開弁することができなくなり、気筒別可変バルブ制御の制御精度が低下して、気筒間の吸気バルブリフト量のばらつき(又は吸入空気量のばらつき)を精度良く補正することができないという問題がある。
【0012】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、複数気筒のバルブ可変量を一括して1つの可変バルブ機構で制御するシステムにおいて、気筒別可変バルブ制御の制御精度を向上させることができる内燃機関の可変バルブ制御装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、複数気筒の吸気バルブ又は排気バルブ(以下単に「バルブ」という)のバルブ可変量を一括して1つの可変バルブ機構で制御するシステムにおいて、気筒間ばらつき算出手段により気筒間の実バルブ可変量又は実吸入空気量のばらつきの情報(以下「気筒間ばらつき情報」という)を算出し、この気筒間ばらつき情報を考慮して気筒別目標バルブ可変量設定手段により各気筒毎に目標バルブ可変量を設定し、気筒別可変バルブ制御手段により、複数気筒の全てのバルブが閉じている全バルブ閉弁期間に、可変バルブ機構を次にバルブが開かれる気筒の目標バルブ可変量に相当する位置まで駆動することでバルブ可変量を気筒別に制御することを第1の特徴とし、更に、可変バルブ機構を次にバルブが開かれる気筒の目標バルブ可変量に相当する位置まで駆動する駆動期間(以下単に「可変バルブ機構の駆動期間」という)に応じて各気筒の目標バルブ可変量をバルブ可変量修正手段により修正することを第2の特徴とするものである。
【0014】
上記請求項1に係る発明の第1の特徴によれば、可変バルブ機構を次にバルブが開かれる気筒の目標バルブ可変量に相当する位置まで駆動する駆動期間が、全バルブ閉弁期間よりも短い場合には、全バルブ閉弁期間内に可変バルブ機構の駆動を終了することができるので、可変バルブ機構の駆動の途中でバルブが開弁する事態を回避することができて、各気筒のバルブプロフィールが過渡状態となることを回避することができる。これにより、気筒間ばらつき情報を考慮して設定した目標バルブ可変量に対応した適正なバルブプロフィールでバルブを開くことができ、気筒別可変バルブ制御を精度良く行うことができる。
【0015】
ところが、可変バルブ機構の故障やバッテリ電圧の低下等によって可変バルブ機構の駆動時間が長くなったり、或は、エンジン回転速度が上昇して全バルブ閉弁期間の時間が短くなって、可変バルブ機構を次にバルブが開かれる気筒の目標バルブ可変量に相当する位置まで駆動する駆動期間が、全バルブ閉弁期間よりも長くなると、全バルブ閉弁期間内に可変バルブ機構の駆動を終了することができなくなって、各気筒のバルブプロフィールが過渡状態となってしまい、気筒別可変バルブ制御の制御精度が低下してしまう。
【0016】
この対策として、請求項1に係る発明は、可変バルブ機構を次にバルブが開かれる気筒の目標バルブ可変量に相当する位置まで駆動する駆動期間(以下単に「可変バルブ機構の駆動期間」という)に応じて各気筒の目標バルブ可変量をバルブ可変量修正手段により修正することを第2の特徴としている。
【0017】
このように、各気筒の目標バルブ可変量を修正すれば、各気筒のバルブ開弁期間を変化させることができ、それに伴って全バルブ閉弁期間を変化させることができる。従って、可変バルブ機構の駆動期間に応じて各気筒の目標バルブ可変量を修正すれば、可変バルブ機構の駆動期間の長さに応じて全バルブ閉弁期間の長さを調整することができる。これにより、修正前の目標バルブ可変量では可変バルブ機構の駆動期間が全バルブ閉弁期間よりも長くなってしまう条件下でも、全バルブ閉弁期間の長さを可変バルブ機構の駆動期間以上に拡大して、各気筒のバルブプロフィールが過渡状態となることを回避することができ(或は全バルブ閉弁期間に対する可変バルブ機構の駆動期間の超過分を減少させて、各気筒のバルブプロフィールが過渡状態となる期間を短くすることができ)、気筒別可変バルブ制御の制御精度の低下を抑えることができる。
【0018】
この場合、請求項2のように、全バルブ閉弁期間の長さが可変バルブ機構の駆動期間以上になるように各気筒の目標バルブ可変量を修正するようにすると良い。このようにすれば、全バルブ閉弁期間内に可変バルブ機構の駆動を確実に終了することができ、各気筒のバルブプロフィールが過渡状態となることを確実に回避することができる。
【0019】
更に、請求項3のように、可変バルブ機構の駆動期間が全バルブ閉弁期間よりも長くなったときに、該全バルブ閉弁期間が長くなる方向に各気筒の目標バルブ可変量を修正するようにすると良い。このようにすれば、可変バルブ機構の駆動期間が全バルブ閉弁期間よりも長くなって、全バルブ閉弁期間を長くする必要が生じたときのみ目標バルブ可変量を修正する機能が働くようになるため、気筒間ばらつき情報を考慮して設定した目標バルブ可変量を必要以上に修正してしまうことを防止することができる。
【0020】
ところで、各気筒の目標バルブ可変量を修正してバルブ開弁期間を変化させると、それに伴って各気筒の吸入空気量が変化してトルクが変化してしまう。
この対策として、請求項4のように、各気筒の目標バルブ可変量を修正する際に、その修正の前後でトルクがほぼ同等になるように各気筒の目標バルブタイミングを修正すると良い。このようにすれば、各気筒の目標バルブ可変量を修正する際に、各気筒のバルブ開弁期間の変化による吸入空気量の変化分を、各気筒のバルブタイミング(バルブ開閉時期)の修正による吸入空気量の変化分で打ち消して、トルクをほぼ同等にすることができる。
【0021】
具体的には、請求項5のように、各気筒のバルブ開弁期間が短くなる場合には各気筒の目標バルブタイミングを遅角補正し、各気筒のバルブ開弁期間が長くなる場合には各気筒の目標バルブタイミングを進角補正するようにすると良い。一般に、各気筒の吸気バルブタイミングを遅角すると、バルブ開弁時のピストン位置が下がってバルブ開弁時の筒内圧が低下するため、各気筒の吸気流速が速くなって吸入空気量が増加する。一方、各気筒の吸気バルブタイミングを進角すると、各気筒の吸気流速が遅くなって吸入空気量が減少する。
【0022】
従って、各気筒のバルブ開弁期間が短くなる場合に、各気筒の目標バルブタイミングを遅角補正すれば、バルブ開弁期間の減少による吸入空気量の減少分を、バルブタイミングの遅角補正による吸入空気量の増加分で打ち消して、トルクをほぼ同等に維持することができる。一方、各気筒のバルブ開弁期間が長くなる場合に、各気筒の目標バルブタイミングを進角補正すれば、バルブ開弁期間の増加による吸入空気量の増加分を、バルブタイミングの進角補正による吸入空気量の減少分で打ち消して、トルクをほぼ同等に維持することができる。
【0023】
ところで、可変バルブ機構の可変範囲はストッパ機構等よって所定範囲内に制限されているため、各気筒の目標バルブ開弁期間が調整可能な最小開弁期間よりも短い期間に設定されると、各気筒のバルブ開弁期間を目標バルブ開弁期間に制御することができなくなる。
【0024】
また、各気筒の目標バルブ可変量の修正による吸入空気量の減少分を、各気筒の目標バルブタイミングの遅角補正による吸入空気量の増加分で打ち消してトルクをほぼ同等に維持する際に、目標バルブ閉弁時期が下死点よりも遅角側に設定されると、ピストンの上昇による筒内ガスの吸気ポートへの吹き返しが発生するため、バルブタイミングの遅角補正による吸入空気量の増加効果が低下して、トルクをほぼ同等に維持することができなくなる。
【0025】
これらの事情を考慮に入れて、請求項6のように、可変バルブ機構の駆動期間に応じて各気筒の目標バルブ可変量を修正する際に、修正後の目標バルブ開弁期間が所定の最小開弁期間よりも短くなるか又は修正後の目標バルブ閉弁時期が下死点よりも遅角側になる場合には、上述したような不具合が発生するため、可変バルブ機構の駆動期間に応じて修正した目標バルブ可変量をそのまま採用することを中止して、各気筒の目標バルブリフト量を増加させるようにすると良い。このようにすれば、各気筒の目標バルブリフト量を増加させることで、目標バルブリフト量に対する実バルブリフト量のばらつき(各気筒の部品公差や組付公差によるばらつき)の割合を小さくすることができ、気筒間のバルブリフト量のばらつき(又は吸入空気量のばらつき)を許容範囲内に抑えることができる。
【0026】
また、可変バルブ機構の駆動期間が全バルブ閉弁期間よりも長くなると、各気筒のバルブプロフィールが過渡状態となってしまい、気筒間のバルブリフト量のばらつき(又は吸入空気量のばらつき)を精度良く補正することができなくなるため、請求項7のように、可変バルブ機構の駆動期間が全バルブ閉弁期間よりも長くなったときに、各気筒の目標バルブリフト量を増加させて、気筒間のバルブリフト量のばらつき(又は吸入空気量のばらつき)を許容範囲内に抑えるようにしても良い。
【0027】
更に、請求項8のように、各気筒の目標バルブリフト量を増加させたときに、内燃機関のスロットルバルブを制御して吸入空気量を制御するようにしても良い。このようにすれば、各気筒の目標バルブリフト量の増加による吸入空気量の増加分を、スロットルバルブ制御による吸入空気量制御によって減少させることができるので、各気筒の目標バルブリフト量を増加させても、各気筒のトルクをほぼ一定に保つことができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。内燃機関である例えば直列4気筒のエンジン11は、第1気筒#1〜第4気筒#4の4つの気筒を有し、このエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、DCモータ等によって開度調節されるスロットルバルブ15とスロットル開度を検出するスロットル開度センサ16とが設けられている。
【0029】
更に、スロットルバルブ15の下流側には、サージタンク17が設けられ、このサージタンク17には、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ18が設けられている。また、サージタンク17には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド19が設けられ、各気筒の吸気マニホールド19の吸気ポート近傍に、それぞれ燃料を噴射する燃料噴射弁20が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ21が取り付けられ、各点火プラグ21の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0030】
また、エンジン11の吸気バルブ28と排気バルブ29には、それぞれリフト量を可変する可変バルブリフト機構30,31(可変バルブ機構)が設けられている。更に、吸気バルブ28と排気バルブ29に、それぞれバルブタイミング(開閉タイミング)を可変する可変バルブタイミング機構を設けるようにしても良い。
【0031】
一方、エンジン11の排気管22には、排出ガス中のCO,HC,NOx等を浄化する三元触媒等の触媒23が設けられ、この触媒23の上流側に、排出ガスの空燃比又はリッチ/リーン等を検出する排出ガスセンサ24(空燃比センサ、酸素センサ等)が設けられている。また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ25や、エンジン11のクランク軸が一定クランク角(例えば30℃A)回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ26が取り付けられている。このクランク角センサ26の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0032】
これら各種センサの出力は、エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)27に入力される。このECU27は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御プログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて燃料噴射弁20の燃料噴射量や点火プラグ21の点火時期を制御する。
【0033】
次に、図2に基づいて吸気バルブ28の可変バルブリフト機構30の構成を説明する。尚、排気バルブ29の可変バルブリフト機構31は、吸気バルブ28の可変バルブリフト機構30と実質的に同一構成であるため、説明を省略する。
【0034】
図2に示すように、吸気バルブ28を駆動するためのカムシャフト32とロッカーアーム33との間に、リンクアーム34が設けられ、このリンクアーム34の上方に、ステッピングモータ等のモータ41で回動駆動されるコントロールシャフト35が設けられている。モータ41の回動軸41aに連結されたウォーム42と、コントロールシャフト35と一体的に回動するように設けられたウォームホイール43とが噛み合うことで、モータ41の回転力がコントロールシャフト35に伝達されるようになっている。また、モータ41には、モータ41の回転角度(回動軸41aの回転角度)を検出するエンコーダ等のモータ回転角度センサ44(図1参照)が設けられている。
【0035】
コントロールシャフト35には、偏心カム36が一体的に回動可能に設けられ、この偏心カム36の軸心に対して偏心した位置に、リンクアーム34が支持軸(図示せず)を介して揺動可能に支持されている。このリンクアーム34の中央部には、揺動カム38が設けられ、この揺動カム38の側面が、カムシャフト32に設けられたカム37の外周面に当接している。また、リンクアーム34の下端部には、押圧カム39が設けられ、この押圧カム39の下端面が、ロッカーアーム33の中央部に設けられたローラ40の上端面に当接している。
【0036】
これにより、カムシャフト32の回転によってカム37が回転すると、そのカム37の外周面形状に追従してリンクアーム34の揺動カム38が左右に移動して、リンクアーム34が左右に揺動する。リンクアーム34が左右に揺動すると、押圧カム39が左右に移動するため、押圧カム39の下端面形状に応じてロッカーアーム33のローラ40が上下に移動して、ロッカーアーム33が上下に揺動する。このロッカーアーム33の上下動によって吸気バブル28が上下動するようになっている。
【0037】
一方、コントロールシャフト35の回転によって偏心カム36が回転すると、リンクアーム34の支持軸の位置が移動して、リンクアーム34の押圧カム39とロッカーアーム33のローラ40との初期の接触点位置が変化する。また、リンクアーム34の押圧カム39の下端面は、左側部分にロッカーアーム33の押圧量が0(吸気バルブ28のリフト量が0)となるような曲率でベース曲面39aが形成され、このベース曲面39aから右方に向かうに従ってロッカーアーム33の押圧量が大きくなる(吸気バルブ28のリフト量が大きくなる)ような曲率で押圧曲面39bが形成されている。
【0038】
吸気バルブ28の最大リフト量を大きくする高リフトモードの場合には、コントロールシャフト35の回転によってリンクアーム34の押圧カム39とロッカーアーム33のローラ40との初期の接触点位置を右方に移動させる。これにより、カム37の回転によって押圧カム39が左右に移動したときに押圧カム39の下端面のうちローラ40に接触する区間が右方に移動するため、ロッカーアーム33の最大押圧量が大きくなって吸気バルブ28の最大リフト量が大きくなると共に、ロッカーアーム33が押圧される期間が長くなって吸気バブル28の開弁期間が長くなる。
【0039】
一方、吸気バルブ28の最大リフト量を小さくする低リフトモードの場合には、コントロールシャフト35の回転によってリンクアーム34の押圧カム39とロッカーアーム33のローラ40との初期の接触点位置を左方に移動させる。これにより、カム37の回転によって押圧カム39が左右に移動したときに押圧カム39の下端面のうちローラ40に接触する区間が左方に移動するため、ロッカーアーム33の最大押圧量が小さくなって吸気バルブ28の最大リフト量が小さくなると共に、ロッカーアーム33が押圧される期間が短くなって吸気バブル28の開弁期間が短くなる。
【0040】
以上説明した可変バルブリフト機構30では、モータ41でコントロールシャフト35を回転させてリンクアーム34の押圧カム39とロッカーアーム33のローラ40との初期の接触点位置を連続的に移動させれば、例えば図3に示すように、直列4気筒エンジン11の全ての気筒(#1〜#4)の吸気バルブ28の最大リフト量と開弁期間(以下単に「リフト量」という)を一括して連続的に可変することができる。
【0041】
ECU27は、ROMに記憶された可変バルブ制御ルーチン(図示せず)を実行することで、アクセル開度やエンジン運転状態等に基づいて吸気バルブ28の可変バルブリフト機構30を制御して、吸気バルブ28のリフト量を連続的に可変して吸入空気量を制御する。尚、可変バルブリフト機構30と可変バルブタイミング機構を併用したシステムの場合には、リフト量とバルブタイミングの両方を連続的に可変して吸入空気量を制御するようにしても良い。
【0042】
また、ECU27は、後述する気筒間ばらつき補正用の各ルーチンを実行することで、エアフローメータ14の出力に基づいて各気筒の気筒間吸入空気量ばらつき率DEVを算出し、この気筒間吸入空気量ばらつき率DEVに基づいて気筒間の実吸入空気量のばらつきが小さくなるように各気筒毎に吸気バルブ28の目標リフト量VVLMを設定する。そして、図14に示すように、全気筒の吸気バルブ28が閉弁している全吸気バルブ閉弁期間になる毎に、可変バルブリフト機構30のモータ41を次の吸気気筒の目標リフト量VVLMに相当する位置まで高速駆動することで、吸入空気量を気筒別に制御して気筒間の吸入空気量ばらつきを補正する。
【0043】
更に、ECU27は、可変バルブリフト機構30のモータ41を次の吸気気筒の目標リフト量VVLMに相当する位置まで駆動するのに要するモータ駆動期間TACTを算出し、このモータ駆動期間TACTが全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEよりも長くなったときには、図15に示すように、各気筒の目標リフト量VVLMを小さくして各気筒の吸気バルブ開弁期間TOPENを短くすることで、全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEの長さを可変バルブリフト機構30のモータ駆動期間TACT以上にする。これにより、全吸気バルブ閉弁期間TCLOSE内に可変バルブリフト機構30の駆動を終了して、各気筒のバルブプロフィールが過渡状態となることを回避する。
【0044】
このように各気筒の吸気バルブ28の目標リフト量VVLMを小さくして吸気バルブ開弁期間TOPENを短くすると、それに伴って各気筒の吸入空気量が減少してトルクが低下してしまう。
【0045】
そこで、ECU27は、図12に示すように、各気筒の吸気バルブ28の目標リフト量を小さくして吸気バルブ開弁期間を短くする場合には、各気筒の吸気バルブ28の目標バルブタイミングを遅角補正する。一般に、各気筒の吸気バルブタイミングを遅角すると、バルブ開弁時のピストン位置が下がってバルブ開弁時の筒内圧が低下するため、各気筒の吸気流速が速くなって吸入空気量が増加する。従って、各気筒の吸気バルブ28の目標リフト量を小さくして吸気バルブ開弁期間を短くする場合に、各気筒の吸気バルブ28の目標バルブタイミングを遅角補正すれば、吸気バルブ開弁期間の減少による吸入空気量の減少分を、吸気バルブタイミングの遅角補正による吸入空気量の増加分で打ち消して、トルクをほぼ同等に維持することができる。
【0046】
以下、本実施形態でECU27が実行する気筒間ばらつき補正用の各ルーチンの処理内容を説明する。
【0047】
[気筒間ばらつき補正ルーチン]
図4に示す気筒間ばらつき補正ルーチンは、エアフローメータ14の出力電圧のA/D変換タイミング(例えば4ms周期)で起動される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、気筒間ばらつき補正実行条件が成立しているか否かを判定する。ここで、気筒間ばらつき補正実行条件は、例えば、次の2つの条件▲1▼、▲2▼を両方とも満たすことである。
▲1▼始動後所定時間以上が経過していること(つまり始動直後の不安定な運転状態でないこと)
▲2▼過渡運転状態でないこと(つまり定常運転状態であること)
【0048】
これら2つの条件▲1▼、▲2▼を両方とも満たせば、気筒間ばらつき補正実行条件が成立するが、いずれか一方でも満たさない条件があれば、気筒間ばらつき補正実行条件が不成立となる。もし、気筒間ばらつき補正実行条件が不成立と判定されれば、ステップ102以降の気筒間ばらつき補正に関する処理を実行することなく、本ルーチンを終了する。
【0049】
一方、上記ステップ101で、気筒間ばらつき補正実行条件が成立していると判定された場合には、ステップ102以降の気筒間ばらつき補正に関する処理を次のようにして実行する。まず、ステップ102で、後述する図6の気筒間吸入空気量ばらつき率算出ルーチンを実行して、各気筒のエアフローメータ14の出力に基づいて各気筒の気筒間吸入空気量ばらつき率DEV(#i)を算出する。ここで、(#i)は気筒番号であり、(#1)〜(#4)のいずれかを意味する。
【0050】
この後、ステップ103に進み、各気筒毎に気筒間吸入空気量ばらつき率DEV(#i)に応じたリフト補正量FVVL(#i)を図5のマップを用いて算出する。図5のマップは、気筒間吸入空気量ばらつき率DEV(#i)が1よりも大きい領域では、リフト補正量FVVL(#i)が減量値(マイナス値)となり、気筒間吸入空気量ばらつき率DEV(#i)が1よりも小さい領域では、リフト補正量FVVL(#i)が増量値(プラス値)となる。つまり、ある気筒の吸入空気量が全気筒の平均吸入空気量よりも多くなるほど、リフト補正量FVVL(#i)による減量補正量が大きくなり、反対に、ある気筒の吸入空気量が全気筒の平均吸入空気量よりも少なくなるほど、リフト補正量FVVL(#i)による増量補正量が大きくなって、気筒間の実吸入空気量のばらつきが小さくなるようにしている。尚、気筒間吸入空気量ばらつき率DEV(#i)が1付近の所定領域では、リフト補正量FVVL(#i)=0に設定され、吸気バルブリフト量VVLが補正されない。
【0051】
リフト補正量FVVL(#i)の算出後、ステップ104に進み、後述する図7のバルブ開閉状態推定ルーチンを実行して、全気筒の吸気バルブ28が閉弁している全吸気バルブ閉弁期間を推定し、バルブ開閉状態フラグXLIFT0を、全気筒の吸気バルブ28が閉弁していることを意味する「ON」にセットするか又は少なくとも1つの吸気バルブ28が開弁していることを意味する「OFF」にリセットする。
【0052】
この後、ステップ105に進み、全気筒の吸気バルブ28が閉弁しているか否か(バルブ開閉状態フラグXLIFT0=ONか否か)を判定し、少なくとも1つの吸気バルブ28が開弁していると判定されれば、そのまま本ルーチンを終了する。
【0053】
その後、ステップ105で、全気筒の吸気バルブ28が閉弁していると判定されたときに、ステップ106に進み、補正前の全気筒の平均リフト量VVLに次の吸気気筒のリフト補正量FVVL(#i)を加算して、気筒別目標リフト量VVLMを求める。
【0054】
次の吸気気筒が第1気筒#1のとき(つまり第1気筒#1の吸気行程前)には、第1気筒#1のリフト補正量FVVL(#1)を全気筒の平均リフト量VVLに加算して気筒別目標リフト量VVLMを求める。
VVLM=VVL+FVVL(#1)
【0055】
次の吸気気筒が第2気筒#2のとき(つまり第2気筒#2の吸気行程前)には、第2気筒#2のリフト補正量FVVL(#2)を全気筒の平均リフト量VVLに加算して気筒別目標リフト量VVLMを求める。
VVLM=VVL+FVVL(#2)
【0056】
次の吸気気筒が第3気筒#3のとき(つまり第3気筒#3の吸気行程前)には、第3気筒#3のリフト補正量FVVL(#3)を全気筒の平均リフト量VVLに加算して気筒別目標リフト量VVLMを求める。
VVLM=VVL+FVVL(#3)
【0057】
次の吸気気筒が第4気筒#4のとき(つまり第4気筒#4の吸気行程前)には、第4気筒#4のリフト補正量FVVL(#4)を全気筒の平均リフト量VVLに加算して気筒別目標リフト量VVLMを求める。
VVLM=VVL+FVVL(#4)
【0058】
このようにして、全気筒の吸気バルブ28が閉弁している全吸気バルブ閉弁期間になる毎に、次の吸気気筒のリフト補正量FVVL(#i)を用いて、次の吸気気筒の目標リフト量VVLMを設定する。このステップ106の処理が特許請求の範囲でいう気筒別目標バルブ可変量設定手段としての役割を果たす。
【0059】
この後、ステップ107に進み、全吸気バルブ閉弁期間になる毎に、気筒別目標リフト量VVLMに応じて可変バルブリフト機構30のモータ41を高速駆動して、全吸気バルブ閉弁期間内に可変バルブリフト機構30のモータ41を次の吸気気筒の目標リフト量VVLMに相当する位置まで駆動する。このようにして、各気筒の吸気バルブ28のリフト量を気筒別に制御する“気筒別可変バルブ制御”を実行することで、各気筒の吸入空気量を気筒別に制御して、気筒間の吸入空気量ばらつきを補正する。このステップ107の処理が特許請求の範囲でいう気筒別可変バルブ制御手段としての役割を果たす。
【0060】
[気筒間吸入空気量ばらつき率算出ルーチン]
図4のステップ102で、図6に示す気筒間吸入空気量ばらつき率算出ルーチンが起動されると、まず、ステップ201で、エアフローメータ14で検出した瞬時空気流量GAを読み込んだ後、ステップ202に進み、クランク角カウンタCCRNKのカウント値を読み込む。このクランク角カウンタCCRNKは、クランク角センサ26の出力信号に基づいて例えば30℃A毎に「1」ずつインクリメントされるため、クランク角カウンタCCRNKの24カウントが1サイクル(720℃A)に相当する。尚、クランク角カウンタCCRNKは、「24」になった時点で「0」にリセットされる。また、クランク角カウンタCCRNK=0のクランク回転位置が、第1気筒#1の圧縮上死点(圧縮TDC)に相当し、クランク角カウンタCCRNK=6、12、18のクランク回転位置が、それぞれ第3気筒#3、第4気筒#4、第2気筒#2の圧縮TDCに相当するように設定されている。
【0061】
この後、ステップ203に進み、各気筒の吸入空気量平均値GAave(#i) を算出する。
この場合、クランク角カウンタCCRNK=12〜17の期間(つまり第1気筒#1の吸気行程に対応する期間)は、その期間の瞬時空気流量GAの平均値を第1気筒#1の吸入空気流量平均値GAave(#1) とする。
【0062】
クランク角カウンタCCRNK=6〜11の期間(つまり第2気筒#2の吸気行程に対応する期間)は、その期間の瞬時空気流量GAの平均値を、第2気筒#2の吸入空気流量平均値GAave(#2) とする。
【0063】
クランク角カウンタCCRNK=18〜23の期間(つまり第3気筒#3の吸気行程に対応する期間)は、その期間の瞬時空気流量GAの平均値を、第3気筒#3の吸入空気流量平均値GAave(#3) とする。
【0064】
クランク角カウンタCCRNK=0〜5の期間(つまり第4気筒#4の吸気行程に対応する期間)は、その期間の瞬時空気流量GAの平均値を、第4気筒#4の吸入空気流量平均値GAave(#4) とする。
この後、ステップ204で、各気筒の気筒間吸入空気量ばらつき率DEV(#i)を次式により算出する。
【0065】
【数1】
【0066】
上式の分母は、全気筒の吸入空気流量平均値GAave(#1) 〜GAave(#4) の平均値である。
尚、図6の気筒間吸入空気量ばらつき率算出ルーチンでは、各気筒の吸入空気流量平均値GAave(#i) を用いて気筒間吸入空気量ばらつき率DEV(#i)を算出したが、各気筒の吸入空気流量極大値や吸入空気量積算値を用いて気筒間吸入空気量ばらつき率DEV(#i)を算出するようにしても良い。また、各気筒の吸入空気量に応じて発生する吸気脈動がエアフローメータ14で検出されるまでの時間遅れ等を考慮して、各気筒の吸入空気流量平均値の算出期間を適宜変更しても良い。
【0067】
また、吸気管圧力センサ18の出力に基づいて気筒間吸入空気量ばらつき率DEV(#i)を算出するようにしても良い。また、各気筒の筒内圧を検出する筒内圧センサや各気筒のバルブリフト量を検出するリフトセンサを備えたシステムでは、筒内圧センサの出力やリフトセンサの出力に基づいて気筒間吸入空気量ばらつき率DEV(#i)を算出するようにしても良い。
【0068】
[バルブ開閉状態推定ルーチン]
図4のステップ104で、図7に示すバルブ開閉状態推定ルーチンが起動されると、まず、ステップ301で、図4のステップ107で算出した目標リフト量VVLMを読み込んだ後、ステップ302に進み、図8のマップを用いて、目標リフト量VVLMに応じて全吸気バルブ閉弁期間(全気筒の吸気バルブ28が閉弁しているクランク角範囲)を求める。
【0069】
一般に、吸気バルブ28のリフト量が小さくなるほど、全吸気バルブ閉弁期間が長くなるため、図8のマップは、吸気バルブ28の目標リフト量VVLMが小さくなるほど、全吸気バルブ閉弁期間が長くなるように設定されている。図8のマップは、予め、設計値、実験、シミュレーション等によって設定され、ECU27のROMに記憶されている。
【0070】
この後、ステップ303に進み、現在のクランク角CCRNKが全吸気バルブ閉弁期間内であるか否かを判定する。その結果、現在のクランク角CCRNKが全吸気バルブ閉弁期間内であると判定された場合には、ステップ304に進み、バルブ開閉状態フラグXLIFT0を、全気筒の吸気バルブ28が閉弁していることを意味する「ON」にセットする。
【0071】
一方、現在のクランク角CCRNKが全吸気バルブ閉弁期間ではないと判定された場合には、ステップ305に進み、バルブ開閉状態フラグXLIFT0を、少なくとも1つの吸気バルブ28が開弁していることを意味する「OFF」にリセットする。
【0072】
[バルブ可変量修正ルーチン]
図9及び図10に示すバルブ可変量修正ルーチンは、気筒別可変バルブ制御の実行中に所定周期で実行され、特許請求の範囲でいうバルブ可変量修正手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ401で、モータ回転角度センサ44の出力信号に基づいて、可変バルブリフト機構30のモータ41を現在の位置から次の吸気気筒の目標リフト量VVLMに相当する位置まで駆動するのに要するモータ駆動期間TACT(℃A)を算出する。
【0073】
この後、ステップ402に進み、図7のステップ302で推定した全吸気バルブ閉弁期間(クランク角範囲)に基づいて全吸気バルブ閉弁期間TCLOSE(℃A)を算出する。
【0074】
この後、ステップ403に進み、可変バルブリフト機構30のモータ駆動期間TACTが全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEよりも長いか否かを判定する。その結果、モータ駆動期間TACTが全吸気バルブ閉弁期間TCLOSE以下であると判定された場合には、全吸気バルブ閉弁期間内に可変バルブリフト機構30の駆動を終了することができると判断して、ステップ104以降の目標バルブ可変量修正処理を実行することなく、本ルーチンを終了する。
【0075】
一方、上記ステップ403で、モータ駆動期間TACTが全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEよりも長いと判定された場合には、全吸気バルブ閉弁期間内に可変バルブリフト機構30の駆動を終了することができないと判断して、ステップ104以降の目標バルブ可変量修正処理を次のようにして実行する。
【0076】
まず、ステップ404で、モータ駆動期間TACTと全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEとの差(つまり全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEに対するモータ駆動期間TACTの超過分)を求め、その値をバルブ開弁期間変更量ΔTOPEN(℃A)とする。
ΔTOPEN=TACT−TCLOSE
【0077】
このバルブ開弁期間変更量ΔTOPENだけ吸気バルブ開弁期間TOPENを短くすれば、全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEがバルブ開弁期間変更量ΔTOPENだけ長くなるため、全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEの長さがモータ駆動期間TACT以上(実際にはTCLOSE=TACT)になる。
【0078】
この後、ステップ405に進み、バルブ開弁期間変更量ΔTOPENだけ吸気バルブ開弁期間TOPENを短くするように平均リフト量VVLを次のようにして変更する。まず、可変バルブリフト機構30のバルブリフト特性(図4参照)に基づいて前回の平均リフト量VVLに対応した前回の目標吸気バルブ開弁期間TOPENMを算出する。
TOPENM←VVL
【0079】
次に、この前回の目標吸気バルブ開弁期間TOPENMからバルブ開弁期間変更量ΔTOPENを減算して目標吸気バルブ開弁期間TOPENを変更する。
TOPENM=TOPENM−ΔTOPEN
【0080】
そして、再び可変バルブリフト機構30のバルブリフト特性(図4参照)に基づいて変更後の目標吸気バルブ開弁期間TOPENMに対応した平均リフト量VVLを算出する。
VVL←TOPENM
このようにして平均リフト量VVLを変更することで、図4のステップ106で算出する各気筒の目標リフト量VVLMが変更される。
【0081】
この後、ステップ406に進み、バルブ開弁期間変更量ΔTOPENに応じたバルブタイミング変更量ΔVVTを図11のマップを用いて算出する。図11のマップは、バルブ開弁期間変更量ΔTOPENが大きくなるほどバルブタイミング変更量ΔVVTが大きくなるように設定されている。これにより、バルブ開弁期間変更量ΔTOPENを増加させて目標吸気バルブ開弁期間TOPENMを減少させる場合には、バルブタイミング変更量ΔVVTを増加させて目標バルブタイミングVVTMを遅角補正することで、吸気バルブ開弁期間TOPENの減少による吸入空気量の減少分を、バルブタイミングVVTの遅角補正による吸入空気量の増加分で打ち消して、トルクをほぼ同等に維持する。これとは反対に、バルブ開弁期間変更量ΔTOPENを減少させて目標吸気バルブ開弁期間TOPENMを増加させる場合には、バルブタイミング変更量ΔVVTを減少させて目標バルブタイミングVVTMを進角補正することで、吸気バルブ開弁期間TOPENの増加による吸入空気量の増加分を、バルブタイミングVVTの進角補正による吸入空気量の減少分で打ち消して、トルクをほぼ同等に維持する。
【0082】
この後、ステップ407に進み、前回の目標バルブタイミングVVTMからバルブタイミング変更量ΔVVTを減算して目標バルブタイミングVVTMを変更する。
VVTM=VVTM−ΔVVT
【0083】
この後、図10のステップ408に進み、▲1▼変更後の平均リフト量VVLが下限リフト量よりも小さいか否かによって変更後の目標吸気バルブ開弁期間TOPENMが下限値よりも短いか否かを判定すると共に、▲2▼変更後の目標バルブタイミングVVTMに応じた変更後の目標バルブ閉弁時期が下死点(BDC)よりも遅角側であるか否かを判定する。
【0084】
その結果、変更後の平均リフト量VVLが下限リフト量以上(変更後の目標吸気バルブ開弁期間TOPENMが最小開弁期間以上)であると判定され、且つ、目標バルブ閉弁時期が下死点よりも進角側であると判定された場合には、変更後の平均リフト量VVLと変更後の目標バルブタイミングVVTMをそのまま採用して、本ルーチンを終了する。
【0085】
これに対して、ステップ408で、変更後の平均リフト量VVLが下限リフト量よりも小さい(つまり変更後の目標吸気バルブ開弁期間TOPENMが最小開弁期間よりも短い)と判定された場合、又は、目標バルブ閉弁時期が下死点よりも遅角側であると判定された場合には、変更後の平均リフト量VVLをそのまま採用することを中止して、ステップ409に進み、平均リフト量VVLを所定リフト量KVVLに設定して各気筒の目標リフト量VVLMを増加させる。この所定リフト量KVVLは、目標リフト量VVLMに対する実リフト量のばらつき(各気筒の部品公差や組付公差によるばらつき)の割合を所定のばらつき許容値(例えば5%)以下にするリフト量である。
【0086】
この場合、変更後の目標バルブタイミングVVTMをそのまま採用しても良いが、目標バルブタイミングVVTMを変更前の値に戻すようにしても良い。
【0087】
この後、ステップ410に進み、各気筒の目標リフト量VVLMの増加による吸入空気量の増加分を、スロットルバルブ制御による吸入空気量制御によって減少させて、各気筒のトルクをほぼ一定にする。このステップ410の処理が特許請求の範囲でいうスロットル制御手段としての役割を果たす。
【0088】
以上説明した本実施形態の実行例を図13乃至図15に示すタイムチャートを用いて説明する。図13に示すように、気筒間ばらつき補正実行条件が成立して気筒間ばらつき補正実行フラグがONされている期間は、エアフローメータ14の出力に基づいて各気筒の気筒間吸入空気量ばらつき率DEV(#i)を算出し、この気筒間吸入空気量ばらつき率DEV(#i)に基づいて、気筒間の実吸入空気量のばらつきが小さくなるように各気筒のリフト補正量FVVL(#i)を算出する。
【0089】
そして、図14に示すように、全気筒の吸気バルブ28が閉弁している全吸気バルブ閉弁期間になる毎に、次の吸気気筒のリフト補正量FVVL(#i)を全気筒の平均リフト量VVLに加算して、次の吸気気筒の目標リフト量VVLMを設定し、可変バルブリフト機構30のモータ41を次の吸気気筒の目標リフト量VVLMに相当する位置まで高速駆動することで、吸入空気量を気筒別に制御して気筒間の吸入空気量ばらつきを補正する。
【0090】
これにより、可変バルブリフト機構30のモータ駆動期間TACTが、全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEよりも短くなる場合には、全吸気バルブ閉弁期間TCLOSE内に可変バルブリフト機構30の駆動を終了することができるので、可変バルブリフト機構30の駆動の途中で吸気バルブ28が開弁する事態を回避することができて、各気筒のバルブプロフィールが過渡状態となることを回避することができる。その結果、各気筒の実吸入空気量ばらつきを考慮して設定した目標リフト量VVLMに対応した適正なバルブプロフィールで吸気バルブ28を開くことができ、気筒別可変バルブ制御を精度良く行うことができる。
【0091】
更に、気筒別可変バルブ制御の実行中は、可変バルブリフト機構30のモータ駆動期間TACTを算出し、このモータ駆動期間TACTが全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEよりも長くなる場合には、図13に示すように、目標吸気バルブ開弁期間TOPENMを短くし、それに対応して各気筒の目標リフト量VVLM(平均リフト量VVL)を小さくすることで、図15に示すように、各気筒の吸気バルブ開弁期間TOPENを短くして、全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEの長さをモータ駆動期間TACT以上に修正する。
【0092】
これにより、変更前の目標リフト量VVLMでは可変バルブリフト機構30のモータ駆動期間TACTが全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEよりも長くなってしまう条件下(例えばバッテリ電圧低下時やエンジン高回転時)でも、全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEの長さを可変バルブリフト機構30のモータ駆動期間TACT以上に維持して、各気筒のバルブプロフィールが過渡状態となることを回避することができ、気筒別可変バルブ制御の制御精度の低下を少なくすることができる。
【0093】
しかも、本実施形態では、可変バルブリフト機構30のモータ駆動期間TACTが全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEよりも長くなって、全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEを長くする必要が生じたときのみ目標リフト量VVLM(平均リフト量VVL)を変更するようにしたので、各気筒の実吸入空気量ばらつきを考慮して設定した目標リフト量VVLMを必要以上に変更してしまうことを防止することができる。
【0094】
また、本実施形態では、各気筒の目標リフト量VVLM(平均リフト量VVL)を変更する際に、各気筒の目標吸気バルブ開弁期間TOPENMの減少/増加に応じて目標バルブタイミングVVTを遅角/進角するようにしたので、吸気バルブ開弁期間TOPENの変化による吸入空気量の変化分を、バルブタイミングVVTの補正による吸入空気量の変化分で打ち消して、トルクをほぼ同等に維持することができ、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0095】
ところで、可変バルブリフト機構30の可変範囲はストッパ機構等よって所定範囲内に制限されているため、各気筒の目標吸気バルブ開弁期間TOPENMが所定下限値よりも短い値に設定されると、各気筒の吸気バルブ開弁期間TOPENを目標バルブ開弁期間TOPENMに制御することができなくなる。
【0096】
また、各気筒の目標吸気バルブ開弁期間TOPENMの減少による吸入空気量の減少分を、各気筒の目標バルブタイミングVVTMの遅角補正による吸入空気量の増加分で打ち消してトルクを同等にする際に、目標バルブ閉弁時期が下死点よりも遅角側に設定されると、ピストンの上昇による筒内ガスの吸気ポートへの吹き返しが発生するため、バルブタイミングの遅角補正による吸入空気量の増加効果が低下して、トルクを同等にすることができなくなる。
【0097】
これらの事情を考慮に入れて、本実施形態では、図13に示すように、変更後の目標吸気バルブ開弁期間TOPENMが調整可能な最小開弁期間よりも短くなった場合(又は目標バルブ閉弁時期が下死点よりも遅角側になった場合)には、上述したような不具合が発生するため、その時点t1 で、各気筒の目標リフト量VVLMを所定リフト量KVVLまで増加させる。これにより、目標リフト量VVLMに対する実バルブリフト量のばらつき(各気筒の部品公差や組付公差によるばらつき)の割合を小さくすることができ、気筒間のバルブリフト量のばらつき(又は吸入空気量のばらつき)を許容範囲内に抑えることができる。
【0098】
更に、本実施形態では、各気筒の目標リフト量VVLMを増加させたときに、目標リフト量VVLMの増加による吸入空気量の増加分を、スロットルバルブ制御による吸入空気量制御によって減少させるようにしたので、各気筒の目標リフト量VVLMを増加させても、各気筒のトルクをほぼ一定に保つことができ、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0099】
尚、上記実施形態では、可変バルブリフト機構30のモータ駆動期間TACTが全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEよりも長くなったときに、各気筒の目標リフト量VVLMを変更して、全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEの長さをモータ駆動期間TACT以上にするようにしたが、全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEに対するモータ駆動期間TACTの超過分を減少させて、各気筒のバルブプロフィールが過渡状態となる期間を短くするようにしても良い。
【0100】
また、可変バルブリフト機構30のモータ駆動期間TACTが全吸気バルブ閉弁期間TCLOSEよりも長くなったときに、各気筒の目標リフト量VVLMを増加させて、気筒間のバルブリフト量のばらつき(又は吸入空気量のばらつき)を許容範囲内に抑えるようにしても良い。
【0101】
また、本発明の適用範囲は、吸気バルブのリフト量を可変する可変バルブ制御システムに限定されず、吸気バルブのリフト量、作用角、バルブタイミングの少なくとも1つを可変する可変バルブ制御システムに広く適用することができる。また、排気バルブについても、本発明を適用して実施できる。
【0102】
更に、本発明は、気筒間の吸入空気量ばらつきに基づいて気筒別可変バルブ制御を行うシステムに限定されず、気筒間のバルブ可変量ばらつきに基づいて気筒別可変バルブ制御を行うシステムに適用しても良い。
【0103】
その他、本発明は、直列エンジンに限定されず、V型エンジン、水平対向エンジン等、種々の複数気筒エンジンに適用でき、気筒数も適宜変更しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態におけるエンジン制御システム全体の概略構成図
【図2】可変バルブリフト機構の正面図
【図3】可変バルブリフト機構によるバルブリフト量の連続可変動作を説明するためのバルブリフト特性図
【図4】気筒間ばらつき補正ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図5】リフト補正量FVVLのマップを概念的に示す図
【図6】気筒間吸入空気量ばらつき率算出ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図7】バルブ開閉状態推定ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図8】全吸気バルブ閉弁期間のマップを概念的に示す図
【図9】バルブ可変量修正ルーチンの処理の流れを示すフローチャート(その1)
【図10】バルブ可変量修正ルーチンの処理の流れを示すフローチャート(その2)
【図11】バルブ開弁期間変更量ΔTOPENに応じたバルブタイミング変更量ΔVVTのマップを概念的に示す図
【図12】バルブ可変量の変更前後でトルクを同等する方法を説明するためのバルブリフト特性図
【図13】気筒間ばらつき補正の実行例を示すタイムチャート
【図14】モータ駆動期間が短い時の気筒別可変バルブ制御の実行例を示すタイムチャート
【図15】モータ駆動期間が長い時の気筒別可変バルブ制御の実行例を示すタイムチャート
【符号の説明】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管、14…エアフローメータ、15…スロットルバルブ、20…燃料噴射弁、21…点火プラグ、22…排気管、26…クランク角センサ、27…ECU(気筒間ばらつき算出手段,気筒別目標バルブ可変量設定手段,気筒別可変バルブ制御手段,バルブ可変量修正手段,スロットル制御手段)、28…吸気バルブ、29…排気バルブ、30,31…可変バルブリフト機構(可変バルブ機構)、41…モータ、44…モータ回転角度センサ。
Claims (8)
- 内燃機関の複数気筒の吸気バルブ又は排気バルブ(以下単に「バルブ」という)のバルブ可変量を一括して1つの可変バルブ機構で制御する内燃機関の可変バルブ制御装置において、
気筒間の実バルブ可変量又は実吸入空気量のばらつきの情報(以下「気筒間ばらつき情報」という)を算出する気筒間ばらつき算出手段と、
前記気筒間ばらつき情報を考慮して各気筒毎に目標バルブ可変量を設定する気筒別目標バルブ可変量設定手段と、
前記複数気筒の全てのバルブが閉じている全バルブ閉弁期間に、前記可変バルブ機構を次にバルブが開かれる気筒の目標バルブ可変量に相当する位置まで駆動することでバルブ可変量を気筒別に制御する気筒別可変バルブ制御手段と、
前記可変バルブ機構を次にバルブが開かれる気筒の目標バルブ可変量に相当する位置まで駆動する駆動期間(以下単に「可変バルブ機構の駆動期間」という)に応じて各気筒の目標バルブ可変量を修正するバルブ可変量修正手段と
を備えていることを特徴とする内燃機関の可変バルブ制御装置。 - 前記バルブ可変量修正手段は、前記全バルブ閉弁期間の長さが前記可変バルブ機構の駆動期間以上になるように各気筒の目標バルブ可変量を修正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の可変バルブ制御装置。
- 前記バルブ可変量修正手段は、前記可変バルブ機構の駆動期間が前記全バルブ閉弁期間よりも長くなったときに、該全バルブ閉弁期間が長くなる方向に各気筒の目標バルブ可変量を修正することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の可変バルブ制御装置。
- 前記バルブ可変量修正手段は、各気筒の目標バルブ可変量を修正する際に、その修正の前後でトルクがほぼ同等になるように各気筒の目標バルブタイミングを修正することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関の可変バルブ制御装置。
- 前記バルブ可変量修正手段は、各気筒の目標バルブ可変量を修正する際に、各気筒のバルブ開弁期間が短くなる場合には各気筒の目標バルブタイミングを遅角補正し、各気筒のバルブ開弁期間が長くなる場合には各気筒の目標バルブタイミングを進角補正することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の可変バルブ制御装置。
- 前記バルブ可変量修正手段は、前記可変バルブ機構の駆動期間に応じて各気筒の目標バルブ可変量を修正する際に、修正後の目標バルブ開弁期間が調整可能な最小開弁期間よりも短くなるか又は修正後の目標バルブ閉弁時期が下死点よりも遅角側になる場合には、各気筒の目標バルブリフト量を増加させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の内燃機関の可変バルブ制御装置。
- 前記バルブ可変量修正手段は、前記可変バルブ機構の駆動期間が前記全バルブ閉弁期間よりも長くなったときに、各気筒の目標バルブリフト量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の可変バルブ制御装置。
- 前記バルブ可変量修正手段により各気筒の目標バルブリフト量を増加させたときに、内燃機関のスロットルバルブを制御して吸入空気量を制御するスロットル制御手段を備えていることを特徴とする請求項6又は7に記載の内燃機関の可変バルブ制御装置。
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