JP4126603B2 - 渦電流式減速装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、渦電流式減速装置に関し、詳しくは、電磁コイルへの通電、非通電によって、回転軸に制動を与え、又は解除する構造の渦電流式減速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
渦電流式減速装置(以下、「リターダ」と言う。)としては、大別すると、永久磁石のみを用いるタイプと、電磁石のみを用いるタイプと、永久磁石と電磁石の両方を備えたタイプ(特開2002−272193号)とがある。永久磁石を用いるリターダにおいては、複数の永久磁石を外周に設けた磁石支持リングをステータケース内部に配置し、当該磁石支持リングを移動させることによって制動力を切り替えるようになっている。一方、電磁石を用いたリターダにおいては、鉄心に巻回された電磁コイルをローターに近接配置し、当該電磁コイルへの通電、非通電によって回転軸(ローター)に制動を与え、又は解除するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の渦電流式減速装置は、制御装置から制動解除指令が出力されていても、制御不良によりコイルへ電流が供給されて制動状態のままとなる場合があった。逆に、制御装置から制動指令が出力されていても、コイルへ通電する回路内の断線やスイッチの接触不良によって制動状態とならないか、或いは十分な制動力が得られない場合があった。また、ローターの異常な偏心によってコイルとローターが擦過した場合にも、装置の故障・異常を検知することができなかった。上記のような故障の場合には、直ちに渦電流式減速装置を修理し、或いは、交換する必要がある。
【0004】
本発明の目的は、電磁石を用いた渦電流式減速装置において、故障・動作異常を容易に検出可能とすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、電磁コイル又はその近傍の温度を測定し、その測定値を予め設定した値と比較し、比較結果によって渦電流式減速装置の故障を判断する。
【0006】
すなわち、本発明の第1の態様に係る渦電流式減速装置は、少なくとも、電磁コイルの通電によって発生する電磁界を用いて回転軸に対して制動力を付与・解除する制動部と;前記電磁コイルの温度を検出する第1の温度センサと;前記第1の温度センサの出力に基づいて装置の故障の有無を判定する判定部とを備えている。そして、前記判定部は、制動解除指令時の温度T0と、制動解除指令中(非制動動作中)の前記第1の温度センサの検出値Tとの差ΔT(T−T0)が予め設定された規定温度差ΔTc以上となった場合に、故障と判定する
【0007】
また、本発明の第2の態様に係る渦電流式減速装置は、少なくとも、電磁コイルの通電によって発生する電磁界を用いて回転軸に対して制動力を付与・解除する制動部と;前記電磁コイルの温度を検出する第1の温度センサと;前記第1の温度センサの出力に基づいて装置の故障の有無を判定する判定部と;実質的に前記制動部の発熱の影響を受けない部位の温度Taを検出する第2の温度センサとを備えている。そして、前記判定部は、制動中に前記第1の温度センサの検出値Tと前記第2の温度センサの検出値Taとの差(T−Ta)が予め定められた基準値α以下となった場合に、故障と判定することを特徴とする渦電流式減速装置。
【0008】
なお、上記第1及び第2の態様に対して、電磁コイルへの通電を検出することによる故障判定を組み合わせることもできる。
【0009】
一般に、電磁石を用いた渦電流式減速装置において、制動時に電磁コイルに対して電流を流すと、当該電磁コイル自体が発熱して、雰囲気温度よりも高くなる。逆に、非制動中には、電磁コイルの温度は雰囲気温度との差がなくなるまで下降する。ここで、ローターの異常な偏心により、ローターと電磁コイル或いは、ローターと鉄心が擦過した場合には、制動解除指令中であっても、摩擦熱が発生し電磁コイルの温度が上昇する。従って、渦電流式減速装置が正常であれば、制動解除指令によって装置は非制動状態となり、電磁コイルの温度は上昇しない。制動解除指令中に電磁コイルの温度が上昇した場合は、制御不良によりコイルへ電流が供給されて制動状態となっていたり、ローターと電磁コイルが擦過するといった故障が渦電流式減速装置に発生していると判断できる。
【0010】
一方、渦電流式減速装置が正常であれば、制動指令によって装置は制動状態となり、電磁コイルの温度は雰囲気温度よりも高くなる。制動指令中に電磁コイルの温度が雰囲気温度より高くならない場合は、制動状態に入らない非制動の状態で作動不良となっていると判断することができる。
【0011】
また、電磁石を用いた渦電流式減速装置においては、制動時に電磁コイルが通電され、非制動時には通電されないため、電磁コイルに流れる電流値を測定することによって、減速装置の故障を判断できる。なお、上記第1及び第2の態様を、永久磁石と電磁石とを組み合わせた所謂ハイブリッド型磁石を磁力源としたタイプのリターダに置き換えても良い。
【0012】
【発明の実施の形態】
最初に、本発明の技術的思想が適用されるリターダについて簡単に説明する。図1及び図2は、本発明が適用される電磁石式リターダの概略構成を示す平面図及び側面図である。図において、符号1はローターを示し、符号2は電磁石(制動部)10を固定する固定枠を示す。ローター1は車両のプロペラシャフト3に連結され、当該シャフト3に連動して回転する。なお、ローター1の外周には図示しない放熱フィンが形成されている。ローター1の内周面に面するように複数配置された電磁石10と、これを固定する固定枠2によってステータが構成される。電磁石(制動部)10は、固定枠2に連結された複数の鉄心10aと、各鉄心10aの外周に巻かれた電磁コイル10bとから構成される。電磁コイル10bは図示しない電流源(制御装置)に接続され、制動時に通電されるようになっている。
【0013】
図3は、本発明が適用されるハイブリッド型の渦電流式減速装置(リターダ)の要部の構造を示す縦断面図である。図4は、図3に示すリターダの要部の構造を示す横断面図であり、図3を上方から見た様子である。リターダ110は、機関の回転軸116に対して固定部材18を介して固定されたロータ111と;ロータ111の近傍に配置される制動ユニット(112a,112b,114a,114b)と、当該制動ユニットを包囲するケース120とを備えている。なお、本発明は図3及び図4に示した例以外に、他のタイプのハイブリッド型リターダに適用できることは言うまでもない。
【0014】
回転軸116は、例えば、大型車両(トラック)のプロペラシャフトに連結される。ロータ111は円盤状に成形され、中心部を回転軸116が貫通する格好で配置される。ケース120内部に収容された制動ユニットは、ロータ116の右側面側に配置された複数の電磁コイル112aと;当該電磁コイル112aの内部を貫通する鉄心122aと;鉄心122aの一部に埋め込まれ、ロータ111の右側面に対向する複数の永久磁石114aと;ロータ111の左側面側に配置された複数の電磁コイル112bと;当該電磁コイル112bの内部を貫通する鉄心122bと;鉄心122bの一部に埋め込まれ、ロータ111の左側面に対向する複数の永久磁石114bとを備えている。
【0015】
隣接する永久磁石112aは、互いにN極同士又はS極同士が対向するように配置される。また、ロータ111を挟んで左右両側に配置される永久磁石112a,112bは、N極とS極が対向するように配置される。なお、図示はしないが、他の例として永久磁石の同極が対向するように配置させることも可能である。
【0016】
上記のような構造のリターダにおいて、非制動状態(制動OFF時)おいては、原則として、電磁コイル112a,112bを非通電状態とする。永久磁石114a、114bのN極から出る磁界は、鉄心122a,122bを介して電磁コイル112a,112bの内部を通って短絡磁気回路を形成する。永久磁石114a,114bからの磁界は、鉄心122a,122bの外部へは殆ど出ることがない。
【0017】
なお、非制動時において、電磁コイル112a,112bを非通電状態とすることが好ましい。また、電磁コイル112a,112bの磁界と永久磁石114a,114bの磁界の方向が同じとなるように、電磁コイル112a,112bを通電することも可能である。この場合には、電磁コイルから発生した磁界が永久磁石を通過できずロータ111へ流入する可能性がある。
【0018】
次に、制動状態(制動ON時)においては、電磁コイル112a,112bの磁界と永久磁石114a,114bの磁界の方向が逆となる方向に電磁コイル112a,112bを通電する。永久磁石114a,114bのN極から出た磁界は、電磁コイル112a,112bによる磁界と反発して、ロータ111側に入り、永久磁石114a,114bのS極に戻る。すなわち、永久磁石114a,114bとロータ111との間に磁気回路が形成される。そして、電磁コイル112a,112bからの磁界と永久磁石114a,114bからの磁界とに基づく渦電流によりロータ111に制動力が付与される。
【0019】
以下、本発明の第1の態様として、電磁コイル又はその周辺の温度に基づく故障検出機能を備えたリターダについて説明する。その際、制動解除指令中(車両走行中)の故障検出機能(第1〜第4実施例)と、制動指令中(車両制動中)の故障検出機能(第5〜第8実施例)とに分けて説明する。
【0020】
第1実施例
図5は、本発明の第1実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。図6は、第1実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。
【0021】
本実施例に係る故障検出部は、電磁石を構成するコイル10b,112a,112b又は鉄心10a,122a,122bの温度を検出する第1温度センサ12と;コントローラ14と;コントローラから与えられた温度ΔTと基準温度ΔTcとを比較する比較器18と;蛍光灯の点滅などの所定の警告を行う警告装置16とを備えている。コントローラ14は、制動部10に対して制動指令(通電)又は制動指令解除指令(非通電)を供給する。制動部10においては、コントローラ14からの指令信号に基づいて制動動作を開始し又は停止する。
【0022】
第1温度センサ12は、常にコイル10b,112a,112bの温度Tを直接的もしくは間接的に測温する。コントローラ14では、制動指令から制動解除指令に切替えた時点の測温値T0を記憶するとともに、制動解除指令中のコイル測温値Tと切替え時点の測温値T0の差を温度上昇値ΔT(ΔT=T−T0)を求める。比較器18においては、コントローラ14から与えられた温度上昇値ΔTを予め設定された上限値ΔTcと比較し、比較結果をコントローラ14に送信する。コントローラ14においては、ΔT≧ΔTcとなったときに、それを渦電流式減速装置の故障と判断して、故障発生信号を警告装置16に送信する。警告装置16では、車両の運転者や、車両の制御装置へ異常の警告を出力する。これによって、減速装置の制動解除指令中(車両の走行中)における当該減速装置の故障を検出することができる。
【0023】
コイル温度は、熱電対や測温抵抗体、サーミスタのような温度測温手段により、コイル巻線部を直接測温したり、コイルと温度の相関のある鉄芯部等を測温する。そして、その測温値を故障検知用のデータとして用いる。
【0024】
ΔTcの値は、コイル温度の測定方法やその位置、更にはコイルに供給する電流値、コイル自体の温度上昇特性を考慮して最適な値を設定する。
【0025】
コイル温度をコイル巻線部に直接熱電対を埋め込んで測定した場合、渦電流式減速装置が故障していなければ制動指令によって、装置は制動状態になり、コイル温度は上昇し、制動解除指令によってコイル温度は下降する。一方、故障によって、制動解除指令中でも、実際にコイルへ電流が流れて制動状態となっていれば、コイルの温度は上昇する。
【0026】
コイルを直接測温する場合は、制動解除指令直後にコイル温度が低下するが、鉄心10a,122a,122b等に取付けた温度計によって間接的にコイル温度を測定する場合は、制動解除指令によって正常に制動を解除した場合でも、温度計の測温値は一時的に上昇する。このため、一時的な上昇量を考慮して上限値ΔTcを設定する必要がある。なお、一時的な温度上昇値は、測定位置や、コイル自体の温度上昇特性などによって変わるため、試験条件を変えて、最も温度が上昇するときの上昇値を考慮してΔTcの値をそれ以上とする必要がある。
【0027】
第2実施例
図7は、本発明の第2実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。図8は、第2実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。本実施例の説明において、上述した実施例と同一又は対応する構成要素については同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0028】
本実施例は、実施例1の装置に車速による制御を加えたものである。具体的な構成としては、車速センサ22;比較器24が付加されている。本実施例に係る渦電流式減速装置が搭載された車両の車速Vを車速センサ22で検出する。比較器24において、検出した車速Vが予め設定した値Vc以上の場合には、実施例1と同様に機能する。そして、車両の車速が値Vc未満の場合には、温度上昇値ΔTがΔTc以上となっても故障と見なさない。すなわち、コントローラ14は警報装置に警報信号を出力しない。
【0029】
電磁コイルが高温の状態でロータの回転を急停止すると、電磁コイル自体の温度は徐々に低下するが、コイル近傍(鉄心等)に取り付けた温度計は、ローターや電磁コイルからの熱によって、非制動中であっても測温値は上昇する。従って、車速が低い場合(特に、車両が停止している場合)は、故障していないのにもかかわらず制動解除指令中にコイル近傍の温度が大幅に上昇する場合がある。そこで、車速がある値Vc未満では温度上昇値ΔTがΔTc以上となっても故障警報を出さないようにする。
【0030】
第3実施例
図9は、本発明の第3実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。図10は、第3実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。本実施例の説明において、上述した各実施例と同一又は対応する構成要素については同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0031】
本実施例の装置は、第1実施例に対し、車速による制御を加え、車速に応じて上限値ΔTcが異なる値をとるようしたものである。具体的構成としては、車速センサ22を追加している。コントローラ29には、車速Vと上限値ΔTcとの関係が予め記憶されており、その時の車速Vに応じた上限値ΔTcを選択する。そして、比較器18において、選択したΔTcとΔTを比較し、故障判断をする。これにより、第1実施例や第2実施例よりもより的確に故障を検知することが可能となる。
【0032】
第4実施例
図11は、本発明の第4実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。図12は、第4実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。本実施例の説明において、上述した各実施例と同一又は対応する構成要素については同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0033】
第4実施例は、第2実施例と第3実施例とを組み合わせることによって構成される。すなわち、コントローラ34は、車速Vに応じて上限値ΔTcとして異なる値を採用する。更に、車速Vがある値Vc未満では、故障警報を出さない。
【0034】
第5実施例
図13は、本発明の第5実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。図14は、第5実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。本実施例の説明において、上述した各実施例と同一又は対応する構成要素については同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0035】
本実施例においては、第1温度センサ12aによって常にコイル温度を直接的もしくは間接的に測温すると同時に、第2温度センサ12bによって、ローターや電磁コイルの発熱による影響を受けない部位の雰囲気温度を測定する。第1温度センサ12aの出力は、コントローラ44を介して、又は直接比較器48に入力される。第2温度センサ12bの出力は、コントローラ44に入力される。コントローラ44では、第2温度センサ12bによって検出される雰囲気温度Taに基づいて、基準値Tc(=Ta+α)を算出する。
【0036】
一般に、雰囲気温度の測定位置や電磁コイルの温度の測定方法及び位置によって、非制動の状態であっても雰囲気温度と電磁コイル温度が必ずしも同じ値とならないため、補正量αを採用する。これらを考慮して最適な値を選択する。
【0037】
比較器48においては、コイル温度Tと基準値Tcとを比較し、その結果をコントローラ44に戻す。コントローラ44では、T≦Tcとなったときに、それを渦電流式減速装置の故障と判断し、警告信号を警告装置16に送信する。警告装置16は、運転席や、車両の制御装置へ異常の警告を出力する。これにより、制動指令にもかかわらず非制動の状態のまま作動不良を起こした場合の故障を検出することができる。
【0038】
なお、非制動状態(走行時)から制動状態への切替え直後は、測温値TがTa+αを超えていないため、故障の判断は、制動を切替えてから設定時間ts経過後に行う。具体的構成としては、コントローラ44から出力される制動指令信号を制動部10の他にタイマー46に送信する。タイマー46では、制動指令信号が入力されてから時間を測定し、予め定められた時間ts経過後に所定の信号をコントローラ44に対して出力する。制動指令信号が出力されてから設定時間tsに達してない場合は、T≦Tcであっても、故障と判断しない。
【0039】
第6実施例
図15は、本発明の第6実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。図16は、第6実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。本実施例の説明において、上述した各実施例と同一又は対応する構成要素については同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0040】
本実施例は、制動中の故障検出において、第2の実施例と同様に、車速Vに基づく制御を行うものである。具体的な構成としては、車速センサ22;比較器24が付加されている。本実施例に係る渦電流式減速装置が搭載された車両の車速Vを車速センサ22で検出する。比較器24において、検出した車速Vが予め設定した値Vc以上の場合には、実施例5と同様に機能する。そして、車両の車速が値Vc未満の場合には、温度上昇値ΔTがΔTc以上となっても故障と見なさない。すなわち、コントローラ54は警報装置に警報信号を出力しない。
【0041】
一般に、車速Vが低い場合、制動指令によって装置が正常に制動状態となっても、電磁コイルを流れる電流値が小さいため、当該コイル自体の温度はほとんど上昇することがない。このため、温度計の値も雰囲気温度と同じ値をとる。従って、車速が低い場合は、制動指令中でも測温値が雰囲気温度と大差無い状態となる。そこで、車速がある値Vc未満では測温値がT≦Tcとなっても故障警報を出さないようにしている。
【0042】
第7実施例
図17は、本発明の第7実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。図18は、第7実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。本実施例の説明において、上述した各実施例と同一又は対応する構成要素については同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0043】
本実施例は、制動中の故障検出において、第3実施例と同様に、車速Vに基づく制御を行うものである。すなわち、車速Vに応じて補正量αが異なる値をとるようしたものである。具体的構成としては、車速センサ22を追加している。コントローラ64には、車速Vと補正量αとの関係が予め記憶されており、その時の車速Vに応じた補正量αを選択する。これにより、第5実施例や第6実施例よりもより的確に故障を検知することが可能となる。
【0044】
第8実施例
図19は、本発明の第8実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。図20は、第8実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。本実施例の説明において、上述した各実施例と同一又は対応する構成要素については同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0045】
第8実施例は、第6実施例と第7実施例とを組み合わせることによって構成される。すなわち、コントローラ74は、車速Vに応じて補正量αとして異なる値を採用する。更に、車速Vがある値Vc未満では、故障警報を出さない。
【0046】
第9実施例
次に、電磁コイルに流れる電流値に基づく故障検出機能を備えたリターダについて、第9実施例として説明する。
【0047】
図21は、本発明の第9実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。本実施例の説明において、上述した各実施例と同一又は対応する構成要素については同一の符号を付し、重複した説明は省略する。本実施例に係る装置は、電磁コイル10bに対して電流を供給することによって制動・非制動を切り替えるコントローラ114と、電磁コイル10bに流れる電流値を検出する電流検出記112と、故障時に所定の警告を行う警告装置16とを備えている。
【0048】
本実施例において、車両に対して制動を行う場合には、コントローラ114から必要な電流が電磁コイル10bに供給される(通電される)。一方、車両に対して制動を行わない場合には、電磁コイル10bへの通電は遮断される。電流検出器112においては、常に電磁コイル10bに流れる電流値を監視する。そして、コントローラ114から制動指令が出ているにもかかわらず、電磁コイル10bに電流が流れていない場合には、減速装置の故障と判断する。また、コントローラ114から制動解除指令が出ているにもかかわらず、電磁コイル10bに電流が流れている場合にも、減速装置の故障と判断する。
【0049】
なお、コントローラ114は電磁コイル10bを通電するための通電回路を含んでおり、電流検出器112は当該通電回路と電磁コイル10bとの間に直列に接続される。また、コントローラ114においては、ある程度の電流ノイズ等を考慮し、通電・非通電の閾値を設定することができる。すなわち、電流検出器112において極めて微少な電流が検出された場合には、非通電と判断する。これによって、更に正確に減速装置の故障を判定することが可能となる。
【0050】
なお、本実施例は上述した各実施例と組み合わせることもできる。すなわち、電磁コイルへの通電を検出すると同時に、電磁コイルの温度を測定し、双方の測定結果に基づいて故障を判定することができる。
【0051】
以上、本発明の実施例(実施形態、実施態様)について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の技術的思想が適用される電磁石式リターダの概略構成を示す平面図である。
【図2】図2は、図1の側面図である。
【図3】図3は、本発明の技術的思想が適用されるハイブリッド型リターダの要部の構造を示す縦断面図である。概略構成を示す平面図である。
【図4】図4は、図3に示すリターダの要部の構造を示す横断面図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、第1実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の第2実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、第2実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本発明の第3実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、第3実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。
【図11】図11は、本発明の第4実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、第4実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、本発明の第5実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、第5実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。
【図15】図15は、本発明の第6実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。
【図16】図16は、第6実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。
【図17】図17は、本発明の第7実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。
【図18】図18は、第7実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。
【図19】図19は、本発明の第8実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。
【図20】図20は、第8実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出手順を示すフローチャートである。
【図21】図21は、本発明の第9実施例に係る渦電流式減速装置の故障検出部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 ローター
3 プロペラシャフト
10 制動部(電磁石)
10a,122a,122b 鉄心
10b,112a,112b 電磁コイル
12 第1温度センサ
14,114 コントローラ
16 警告装置
18 比較器
112 電流検出器

Claims (13)

  1. 電磁石を用いた渦電流式減速装置において、
    電磁コイルで発生する電磁界によって回転軸に制動力を付与・解除する制動部と;
    前記電磁コイルあるいは、その近傍の温度を検出する第1の温度センサと;
    前記第1の温度センサの出力に基づいて装置の故障の有無を判定する判定部とを備え
    前記判定部は、制動解除指令時の温度T0と、制動解除指令中(非制動動作中)の前記第1の温度センサの検出値Tとの差ΔT(T−T0)が予め設定された規定温度差ΔTc以上となった場合に、故障と判定することを特徴とする渦電流式減速装置。
  2. 当該渦電流式減速装置が搭載される車両の速度Vを検出する車速センサを更に備え、
    前記第1の温度センサは、前記電磁コイル近傍の温度を検出する構成であり、
    前記判定部は、前記車速センサによって検出された車速Vが予め設定された規定車速Vc以上となった場合のみ、故障と判定することを特徴とする請求項に記載の渦電流式減速装置。
  3. 前記規定温度差ΔTcは、前記車速センサによって検出される車速Vに応じて設定されることを特徴とする請求項に記載の渦電流式減速装置。
  4. 前記判定部による判定の結果、装置の故障が発見された場合に、所定の警告を行う警告部を更に備えることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の渦電流式減速装置。
  5. 前記判定部は、予め定められた基準値と前記第1の温度センサによって検出された温度とを用いて、当該装置の故障の有無を判定することを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の渦電流式減速装置。
  6. 前記基準値は、前記第1の温度センサによる検出条件及び前記制動部の制動条件に基づいて定められることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5に記載の渦電流式減速装置。
  7. 前記電磁石に加えて、永久磁石を更に備え、
    前記制動部は、前記電磁コイル及び永久磁石で発生する磁界によって前記回転軸に制動力を付与・解除することを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6に記載の渦電流式減速装置。
  8. 電磁石を用いた渦電流式減速装置において、
    電磁コイルで発生する電磁界によって回転軸に制動力を付与・解除する制動部と;
    前記電磁コイルあるいは、その近傍の温度を検出する第1の温度センサと;
    前記第1の温度センサの出力に基づいて装置の故障の有無を判定する判定部と;
    実質的に前記制動部の発熱の影響を受けない部位の温度Taを検出する第2の温度センサとを備え、
    前記判定部は、制動中に前記第1の温度センサの検出値Tと前記第2の温度センサの検出値Taとの差(T−Ta)が予め定められた基準値α以下となった場合に、故障と判定することを特徴とする渦電流式減速装置。
  9. 制動指令が入力されてからの時間を検出するタイマーを更に備え、
    前記判定部は、前記タイマーの出力に基づき、前記制動指令から所定の時間経過した後に故障判定を行うことを特徴とする請求項に記載の渦電流式減速装置。
  10. 当該渦電流式減速装置が搭載される車両の速度Vを検出する車速センサを更に備え、
    前記第1の温度センサは、前記電磁コイル近傍の温度を検出する構成であり、
    前記判定部は、前記車速センサによって検出された車速Vが予め設定された規定車速Vc以上となった場合のみ、故障と判定することを特徴とする請求項8又は9に記載の渦電流式減速装置。
  11. 前記基準値αは、前記車速センサによって検出される車速Vに応じて設定されることを特徴とする請求項10に記載の渦電流式減速装置。
  12. 前記判定部による判定の結果、装置の故障が発見された場合に、所定の警告を行う警告部を更に備えることを特徴とする請求項8,9,10又は11に記載の渦電流式減速装置。
  13. 前記電磁石に加えて、永久磁石を更に備え、
    前記制動部は、前記電磁コイル及び永久磁石で発生する磁界によって前記回転軸に制動力を付与・解除することを特徴とする請求項8,9,10,11又は12に記載の渦電流式減速装置。
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