JP4126468B2 - X線発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、医療用のX線機器や工業用の非破壊X線検査機器などに用いられるX線発生装置に係り、特にX線発生の際の変換効率をアップするための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療用のX線透視撮影装置やX線CT装置は、撮影に必要なX線を発生させるためのX線管を備えている。このX線管は、真空容器内に陽極であるターゲットと陰極が配設されていて、陰極からの電子ビームがターゲットに照射されることによりX線が発生するものである。X線撮影を行う場合は、X線管から被検体(患者)へX線を照射するとともに、被検体からの透過X線をイメージインテンシファイアやX線検出アレイで検出した後、必要な信号処理を行ってX線透視像やX線CT像(X線断層像)を得ている。得られたX線透視像やX線CT像は医師に供され、医師が的確な診断を下すのに大いに貢献している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のX線透視撮影装置やX線CT装置の場合、短時間での繰り返し撮影が難しくて撮影効率が良くないという問題がある。撮影に必要なX線を発生するX線管では、X線発生の際の変換効率が1%以下と非常に悪く、X線を連続発生させるとターゲットの温度上昇が激しいので、ターゲット冷却用のX線管休止期間を挟みながら、X線を断続的に発生させており、短時間での繰り返し撮影は難しいのである。
【0004】
ターゲットの温度上昇を防ぐために、陽極であるターゲットを回転させたり、絶縁油によりターゲットを冷却したりするといった工夫もされてはいるけれども、ターゲットへ供給されるエネルギーの99%以上が熱に変換されることから、ターゲットの温度上昇をうまく回避するには至っていない。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑み、X線発生の際の変換効率が良好でX線の連続発生が可能なX線発生装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明に係るX線発生装置は、レーザビームの照射によりX線を放出する材料で形成されているX線発生用ターゲットと、少なくとも前記X線発生用ターゲットが内側に配設されている真空容器と、前記真空容器内のターゲットにレーザビームを照射するレーザビーム照射手段とを備え、かつ、前記レーザビーム照射手段は、レーザビームを照射するレーザ光源と、レーザビームを収束する収束手段とを備え、前記X線発生用ターゲットが予め設定されているX線照射中心を巡る環状経路に沿ってX線照射中心に向けてX線を放出できる位置にあるよう構成されているとともに、前記収束手段は前記レーザ光源と前記X線発生用ターゲットとの間の距離に合わせて前記レーザ光源と前記収束手段との間の距離が変わるよう構成されており、前記レーザビーム照射手段が、前記環状経路に沿って位置するX線発生用ターゲットに順にレーザビームを照射してゆくレーザビーム走査を行うよう構成されている。
【0007】
〔作用〕
次に、この発明のX線発生装置によりX線を発生させる際の作用について説明する。
請求項1の発明のX線発生装置において、レーザビーム照射手段からのレーザビームが、真空容器内のX線発生用ターゲットに照射されると、X線発生用ターゲットからX線が放出される。X線発生用ターゲットのレーザビーム照射エリアのところでプラズマが生じてX線(レーザプラズマX線)が放出されるのである。レーザビーム照射によりX線を発生させる場合、X線発生の際の変換効率は非常に高くて50%を越すほどである。逆に言えば、ターゲットへの供給エネルギーのせいぜい50%が熱に変換されるだけであり、供給エネルギーの99%が熱に変換される従来のX線管と比べると、ターゲットに加わる熱量は一挙に半減してターゲットの温度上昇が抑えられるようになる結果、X線を連続発生させられるようになる。
【0008】
さらに、予め設定されているX線照射中心を巡る環状経路に沿ってX線照射中心に向けてX線を放出できるようX線発生用ターゲットがX線を放出できる位置にあって、レーザビーム照射手段によるレーザビーム走査で、環状経路に沿って位置するX線発生用ターゲットに順にレーザビームが照射される。したがって、X線照射中心に対しては照射角度の異なるX線照射が周りから順に行われる。したがって、X線照射中心に被検体をセットするとともに、各X線照射に伴って被検体から出る透過X線を検出するようX線検出器を配しておけば、異なる照射角度のX線照射によるX線投影データが得られるから、これを画像再構成処理して、被検体の断層像を得ることができる。つまり、請求項1のX線発生装置は、X線断層像用の装置として用いることが出来るのである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明のX線発生装置の実施例を図面を参照しながら説明する。
【0010】
請求項1の発明の実施例である第1実施例のX線発生装置を説明する。図1は第1実施例のX線発生装置の要部構成を示す概略図であり、第1実施例のX線発生装置は、X線CT装置の撮像系に用いられている。
【0011】
第1実施例のX線発生装置は、図1に示すように、真空容器2の内側におのおの設けられている複数個のX線発生用ターゲット1と、真空容器2の中のX線発生用ターゲット1にレーザビームLBを照射するレーザビーム照射部9を備えている。
【0012】
X線発生用ターゲット1の材質としては、タングステンや金などの重元素が好適である。タングステンや金などの重元素のものは、X線発生の際の変換効率、すなわちレーザビームLBの照射でX線発生用ターゲット1に供給されるエネルギーのうちX線に変換される割合が、非常に高いからであり、50%を越える変換効率が得られる。
X線発生用ターゲット1は、このような、レーザビームの照射によりX線を放出する材料で形成されており、複数個のX線発生用ターゲット1が、図1に示すように、予め設定されているX線照射中心CPを巡る環状経路RPに沿ってX線照射中心に向けてX線を放出できる位置へそれぞれ設置されている。つまり、X線照射中心CPを中心とする真円の環状経路RPに沿って等しい間隔で各X線発生用ターゲット1が並んでいるのである。
【0013】
なお、図1の場合、X線発生用ターゲット1の個数を、便宜上、5個として図示しているが、X線発生用ターゲット1の数は5個に限られるものではなく、もっと多くてもよい。
【0014】
また、第1実施例では、レーザビーム照射部9が、レーザ光源4と収束レンズ5に加えて、レーザビーム走査のための4個の揺動ミラー10および5個の固定ミラー11を具備している。各揺動ミラー10は、レーザビームLBを、至近のX線発生用ターゲット1に照射する位置か、反時計方向に位置する次の固定ミラー11へ送る位置に切り換えセットできるよう構成されている。揺動ミラー10が実線で示す位置にあれば、X線発生用ターゲット1へレーザビームLBが照射され、揺動ミラー10が点線で示す位置にあれば、次の固定ミラー11へレーザビームLBが送られる。すなわち、レーザビーム照射部9は、環状経路RPに沿って設置されたX線発生用ターゲット1へレーザビームLBを順に照射してゆくレーザビーム走査を行う構成となっているのであるが、このレーザビーム走査が、揺動ミラー10の実線で示す位置と点線で示す位置の間での切替えにより行われるのである。なお、揺動ミラー10の位置の切替え機構は、通常のミラー切替え機構で容易に実現できる。
【0015】
また、レーザビームLBが照射されるX線発生用ターゲット1が、どれであるかによって、レーザ光源4とX線発生用ターゲット1の間の距離が異なり、そのままではレーザビームLBの収束状態が変化してX線の発生量が変動することになるので、レーザ光源4とX線発生用ターゲット1の間の距離に合わせて、収束レンズ5の位置を前後させるなどして、レーザビームLBの収束状態を安定させる構成となっている。
【0016】
レーザビームLBが順番に照射された各X線発生用ターゲット1からは、X線照射中心CPに向け扇形のX線が次々放出される。第1実施例の場合は、X線CT装置であるから、X線が扇形となるようコリメータ(図示省略)などをX線発生用ターゲット1の前方に配しておくとともに、被検体Mを挟んでX線検出アレイ12がX線発生用ターゲット1に対して対抗配置しておく。そして、各X線発生用ターゲット1からのX線照射に従って、対応するX線検出アレイ12からはX線投影データとしての検出信号が得られることになる。なお、X線検出アレイ12の後段のX線CT像を得るための画像再構成部(図示省略)は、従来のX線CT装置と全く同様のもので十分である。
【0017】
続いて、上述の構成を有する第1実施例のX線発生装置のX線発生動作を説明する。先ずX線照射中心CPに被検体Mの関心部位をセットするとともに、揺動ミラー10を全て実線の位置にセットしておいて、レーザ光源4を発光させる。収束レンズ5を出たレーザビームLBは先頭の揺動ミラー10で反射されて、至近にある最初のX線発生用ターゲット1へ所定時間照射されてターゲット1からX線を放射させると同時に、対応するX線検出アレイ12からはX線投影データとしての検出信号が得られる。
【0018】
次に、最初の揺動ミラー10が点線の位置に切替えセットされ、次のX線発生用ターゲット1にレーザビームLBが照射されると、対応するX線検出アレイ12からX線投影データとしての検出信号が得られる。その後、第2番目の揺動ミラー10を点線の位置に切替えセットし、先と同様、X線照射とX線投影データとしての検出信号の収集を行う。以下、同様、最後のX線発生用ターゲット1まで順にレーザビームLBが照射されるとともに、X線投影データとしての検出信号が得られる。こうして得らたX線投影データを、画像再構成部で処理することにより、X線CT像を得て、TVモニタ(図示省略)などに表示する。
【0019】
このように、第1実施例のX線発生装置では、X線を発生する際の変換効率がすこぶる良くてX線発生用ターゲット1の温度上昇が抑えられるので、X線の連続発生が可能となり、短時間での繰り返し撮影が行えることから、撮影効率が改善される。それだけでなく、X線発生用ターゲット1の方は真空容器2の内側に設ける必要があるけれども、レーザビーム照射部9の方は、真空容器2の外側に設けられている構成であることから、X線発生装置の製造が容易であるという利点もある。これに加え、X線CT像を得ることが出来る。
【0020】
続いて、請求項1の発明の実施例である第2実施例のX線発生装置を説明する。図2および図3は第2実施例のX線発生装置の要部構成を示す概略図であり、第2実施例のX線発生装置も、X線CT装置の撮像系に用いられている。第2実施例は、基本的には第1実施例と同じ構成であるが、以下の点が相違する。X線発生用ターゲット1およびX線検出アレイ12がそれぞれ1個だけであるため、図3に示すように、X線照射中心CPを巡る環状経路RPに沿ってX線発生用ターゲット1が位置A→位置B→位置Cと順に移動させられるとともに、X線検出アレイ12も対応する位置a→位置b→位置cへ順に移動させられる構成となっている。
【0021】
また、レーザビーム照射部13が、レーザ光源4と収束レンズ5に加えて、回転ミラー14および反射ミラー15を具備している。X線発生用ターゲット1の移動と合わせて、回転ミラー14が回転軸Xbの回りに回転するとともに反射ミラー15がX線発生用ターゲット1に対面する位置となるよう移動し、レーザビーム照射部13からのレーザビームLBがX線発生用ターゲット1へちょうど当たるよう構成されている。
【0022】
第2実施例のX線発生装置の場合、レーザビーム照射部13からのレーザビームLBがX線発生用ターゲット1に連続照射されるようにすることも出来るし、レーザビーム照射部13からのレーザビームLBがX線発生用ターゲット1に一定間隔移動するごとに照射されるようにすることも出来る。前者の場合は、X線が連続的に放出され、後者の場合はX線が間歇的に放出されることになる。このように、第2実施例のX線発生装置は、X線発生用ターゲット1およびX線検出アレイ12やレーザビーム照射部13の回転ミラー14および反射ミラー15が移動する他は、第1実施例と同じようにしてX線を発生し、X線投影データとしての検出信号が得られることになる。
【0023】
なお、第2実施例は、X線発生用ターゲット1を回転させるように構成したが、X線発生用ターゲットをリング状に構成してもよい。このように構成すれば、レーザビームLBの走査に合わせてX線検出アレイ12だけを回転させればよい。
【0024】
最後に、請求項1の発明の実施例である第3実施例のX線発生装置を説明する。図4および図5は第3実施例のX線発生装置の要部構成を示す概略図であり、第3実施例のX線発生装置も、やはりX線CT装置の撮像系に用いられている。第3実施例は、基本的には第2実施例と同じ構成であるが、レーザビーム照射部16の構成が以下のように異なる。レーザビーム照射部16は、レーザ光源4の他に、内面に鏡面反射加工が施された断面真円形のリング17およびリング17の内側を周方向へ移動してゆく集光ミラー18を具備している。そして、図4に示すように、レーザ光源4からのレーザ光は未収束の状態でリング17の内に導入されるとともに、リング17の周面に沿って一定間隔で多数の開口19が設けられている。リング17の内に導入されたレーザ光は反時計方向に沿って進行してゆくが、集光ミラー18に当たると収束されながら開口19の方向へ反射する。反射したところに開口19があればレーザビームLBがリング17の外に出ることになる。なお、図4では多数の開口19を配置したが、開口19の配置位置に沿うようにリング状のスリットを設けてよい。
【0025】
一方、X線発生用ターゲット1の方は、図4および図5に示すように、リング17から少し離れてリング17と平行に設定されるとともにX線照射中心CPを中心とする真円の環状経路RPに沿って真空容器2ごと移動するよう構成されている。又、X線発生用ターゲット1と集光ミラー18は常に対面するように同期して移動させられるようにも構成されている。そして、図5に示すように、X線発生用ターゲット1が各開口19の位置に来る度に、集光ミラー18によりレーザ光が収束されながら、レーザビームLBとして開口19を通してX線発生用ターゲット1へ照射される。勿論、レーザビームLBが照射されたX線発生用ターゲット1からは、X線がX線照射中心CPへ向けて放出されることになる。したがって、第3実施例のX線発生装置も、X線発生用ターゲット1およびX線検出アレイ12やレーザビーム照射部16の集光ミラー18が移動しながら、第2実施例と同様にX線を発生して、X線投影データとしての検出信号がX線検出アレイ12から得られることになる。
【0026】
なお、第1〜3実施例において明らかなように、請求項1の発明において、X線発生用ターゲット1が予め設定されているX線照射中心CPを巡る環状経路RPに沿ってX線照射中心CPに向けてX線を放出できる位置にあるという場合、複数個のターゲット1を環状経路RPに沿って順に設置しておく形態や、1個のターゲット1を環状経路RPに沿って順に移動させる形態があることになる。
【0027】
この発明は、上記の実施例に限られるものではなく、以下のように変形実施することもできる。
(1)第1実施例では、X線発生用ターゲット1およびX線検出アレイ12が複数個設けられていたが、第1実施例において、X線発生用ターゲット1とX線検出アレイ12が、それぞれ1個だけで順に次のターゲットと検出アレイのある位置へ移動してゆく構成のものが、変形例として挙げられる。
【0028】
(2)第2、3実施例では、X線発生用ターゲット1が1個であったが、第1実施例の如くX線発生用ターゲット1を複数個設けることにより、あるいは、リング状のX線発生用ターゲット1を設けることにより、X線発生用ターゲット1の移動を不要とした構成のものが、それぞれ変形例として挙げられる。
【0029】
(3)第1〜3実施例は、X線発生装置が医療用装置に用いられる形態であったが、この発明のX線発生装置は、医療用に限られず、工業用の非破壊X線検査機器などに用いることができる。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1の発明のX線発生装置によれば、レーザビームの照射によりX線を発生させる構成であるので、X線発生の際の変換効率が非常に良く、ターゲットで熱に変換される供給エネルギーの割合が著しく低減することから、ターゲットの温度上昇を十分に抑えられるようになる結果、X線の連続発生が可能となり、撮影効率が改善される。また、レーザビームの照射によりX線を発生させる構成の場合、事実上、X線発生用ターゲットだけを真空雰囲気に置けばよいことから、X線発生装置の製造が容易となる。
【0031】
さらに、X線照射中心に対して照射角度の異なるX線照射が周りから順に行われる構成であるので、X線照射中心にセットした被検体のX線断層像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例のX線発生装置の要部構成を示す概略図である。
【図2】 第2実施例のX線発生装置の要部構成を側面方向から見た概略図である。
【図3】 第2実施例のX線発生装置の要部構成を正面方向から見た概略図である。
【図4】 第3実施例のX線発生装置の要部構成を正面方向から見た概略図である。
【図5】 第3実施例のX線発生装置の要部構成を側面方向から見た概略図である。
【符号の説明】
1…X線発生用ターゲット
2…真空容器
9…レーザビーム照射部
4…レーザ光源
5…収束レンズ
13,16…レーザビーム照射部
CP…X線照射中心
RP…環状経路
Claims (1)
- レーザビームの照射によりX線を放出する材料で形成されているX線発生用ターゲットと、少なくとも前記X線発生用ターゲットが内側に配設されている真空容器と、前記真空容器内のターゲットにレーザビームを照射するレーザビーム照射手段とを備え、かつ、前記レーザビーム照射手段は、レーザビームを照射するレーザ光源と、レーザビームを収束する収束手段とを備え、前記X線発生用ターゲットが予め設定されているX線照射中心を巡る環状経路に沿ってX線照射中心に向けてX線を放出できる位置にあるよう構成されているとともに、前記収束手段は前記レーザ光源と前記X線発生用ターゲットとの間の距離に合わせて前記レーザ光源と前記収束手段との間の距離が変わるよう構成されており、前記レーザビーム照射手段が、前記環状経路に沿って位置するX線発生用ターゲットに順にレーザビームを照射してゆくレーザビーム走査を行うよう構成されていることを特徴とするX線発生装置。
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