JP4126160B2 - 排液弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、排液槽へ液体の流し込みを調整するための排液弁に関し、特に、排液に際して液体が汚れないようにした排液弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造では、使用済み薬液が一旦排液槽に貯められ、そこからフィルタを通し、濃度調整などして再利用されることがある。そのため、薬液はできるだけ汚さないように排液することが望ましく、半導体製造装置に使用される排液弁の特に摺動部分に塗られたグリスが混入しないように注意が払われている。そのため排液弁には、従来から摺動部分に薬液が触れないようにする工夫がなされている。図4は、従来から使用されている排液弁を示した図である。
【0003】
排液弁100は、ボディ101に入力ポート102と出力ポート103が形成され、その入力ポート102が横向きに、そして出力ポート103が下向きになるようにして取り付けられる。弁を開閉させる駆動手段にはスプリング111と作動流体として圧縮エアが使用され、閉弁のためのスプリング111がピストン110を図中左方へ付勢し、そのピストン110に対して反対側に開弁のための圧縮エアを導入する操作ポート112が設けられている。
【0004】
また、ピストン110から突設されたピストンロッド113の先端部には弁体114が取り付けられ、ピストンロッド113を包むようにしたベローズ115が、その弁体114と一体となってベローズ組立を構成している。こうすることによって、弁室104内を流れる薬液がピストンロッド113に触れないようになっている。弁体114及びベローズ115の材質には薬液によって腐食しないようにPTFE(四フッ化エチレン樹脂)が使用され、それによってベローズ組立が形成されている。
【0005】
そこで、こうした排液弁100は、通常、ピストン110がスプリング111によって付勢され、ピストンロッド113の先端部に固定された弁体114が弁座面に押し付けられて閉弁状態にある。そして、開弁させる場合には操作ポート112から圧縮エアを供給し、ピストン110をスプリング111の付勢力に抗して加圧する。そのため、その加圧力によってピストン110が図中右方へ移動し、弁体114を弁座面から離間して開弁する。そして、入力ポート102から弁室104内に薬液が流れ込み、更に出力ポート103を通って不図示の排液槽へと流れる。
【0006】
このとき、ピストンロッド113にはその摺動部分に滑りを良くするためのグリスが塗布されているが、ベローズ115によって覆われているので、弁室104に入った薬液がグリスの付いた摺動部分に触れることを防止している。そのため、排液槽に流れた使用済みの薬液にはグリスが混じることがなく、再利用可能な状態に保つことができる。
一方、再び弁を閉じる場合には、操作ポート112から圧縮エアを放出することによってピストン110への加圧を解放すれば、スプリング111の付勢力によってピストン110が押し戻され図示するような閉弁状態へと戻る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした従来の排液弁100は、薬液の汚染防止としての効果は認められるものの、そのために使用されるベローズ115にコストがかかり、製品としての価格が高いものになってしまう問題があった。即ち、弁体114及びベローズ115を一体にしたベローズ組立にはPTFEが使用されるが、そのPTFEが高価で、しかもベローズの加工が困難なために加工費も高額になるからである。こうしたことは、ベローズに替えてダイヤフラムを使用する排液弁にも同様に存在する問題であった。
【0008】
また、薬液の汚染防止としてベローズ115を使用した場合、弁を大きく開けるためには蛇腹の数を多くする必要があり、ピストンロッド113が摺動する軸方向寸法が大きくなり、排液弁100が大型になる欠点があった。一方、ベローズ115に替えてダイアフラム弁を使用する排液弁でも、弁を大きく開けるだけのストロークが必要であるため、径の大きいものになってしまってやはり大型になってしまう。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、安価な排液弁を提供すること、または小型の排液弁を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の排液弁は、ロッドの先端に設けられた弁体を、入力ポート側に設けられた弁座面に当接・離間させることにより、入力ポートと出力ポートとの間で弁の開閉を行うものであり、前記ロッドが、弁室内に突設されたロッドガイド内に摺動可能に挿入され、前記弁体が、前記ロッドガイドより大径の筒状部を有する有底筒形状をしたものであって、前記ロッドが摺動可能に支持されたロッドガイドから突き出された閉弁時に、前記弁体の筒状部で前記ロッドの露出部を覆うようにしたものであることを特徴とする。
【0011】
よって、本発明によれば、閉弁時には弁体の筒状部がロッドの露出部を覆って垂れ落ちるような薬液の付着を防止し、一方、薬液が弁室内に勢い良く流れ込む可能性のある開弁時には、移動する弁体の中にロッドガイドが相対的に進入し、弁体内部の空間容積が縮小することで弁体内のエアを噴き出し、その噴出エアによって薬液の進入を防止してロッドへ薬液が触れるのを防止している。そのため、本発明では、こうした簡易な形状の弁体によって薬液の汚染が防止できるとともに、ベローズなどの部材を用いない分コスト削減になり、小型化を図ることができた。
【0012】
また、本発明の排液弁は、前記ロッドがロッドガイド内に後退した開弁時には、前記弁体の筒状部の開口端を壁面に当接させて当該ロッドガイドを覆った密閉空間を形成するものであることを特徴とする。
よって、本発明によれば、開弁時にはロッドガイドを覆った弁体の筒状部が壁面に当接して密閉空間を形成することで、弁室内を通って流れる薬液がロッドが入った弁体内へ進入することを一切遮断する。
【0013】
また、本発明の排液弁は、前記ロッドガイドが、その先端全周に張り出した返シの形成されたものであることを特徴とする。
よって、本発明によれば、弁の開く途中など、弁体とロッドガイドとの隙間に入った薬液が、そのロッドガイドに沿ってロッド側へ流れるのを返シによって防ぐことができる。
【0014】
また、本発明の排液弁は、前記ロッドが、閉弁時に前記ロッドガイドから露出する部分が前記ロッドガイドに摺接しないように小径で形成されたものであることを特徴とする。
よって、本発明によれば、ロッドのロッドガイドから露出する部分がロッドガイドに摺接しないので、万一薬液がロッドに触れてしまっても、その薬液がグリスで汚染される可能性は極めて低い。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る排液弁の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、排液弁の一実施形態を示した閉弁時の断面図であり、図2は、その開弁途中の断面図で、図3は、開弁時の断面図である。
排液弁1は、ボディ2に入力ポート3と出力ポート4とが形成され、従来例のものと同様に入力ポート3が横向きに、そして出力ポート4が下向きになるようにして取り付けられる。
【0016】
ボディ2内には、一端にピストン10を有するピストンロッド11がロッドガイド12によって摺動可能に支持され、そのピストンロッド11には、ピストン10の反対側端部に弁体13が固定されている。ロッドガイド12は、弁室5内に突設され、そこから更にピストンロッド11が突き出されている。弁体13は、有底円筒形状をしたものであり、弁座面6と平行な平面部13Aの中心にピストンロッド11が直交方向から固定され、弁座面6と当接する部分にシール用の弁シート14が取り付けられている。そして、その平面部13Aの周縁にはロッドガイド12と平行に円筒状のカバー部13Bが突設されている。カバー部13Bは、その中にロッドガイド12が入り込むだけの大きさの径で形成され、閉弁時(図1)にはロッドガイド12から突き出たピストンロッド11の露出部11aを覆うだけの長さで形成されている。
【0017】
また、この弁体13は、開弁時(図3)にはロッドガイド12の段差部(請求項2に記載する「壁面」に相当するもの)にカバー部13Bの開口端が突き当たり、入り込んだロッドガイド12を覆って密閉空間を構成するように形成されている。従って、この排液弁1の弁ストロークは、弁体13のカバー部13B開口端がロッドガイド12の段差部に設けられたシールパッキン15に突き当たる距離に設計されている。このように弁体13をシールパッキン15に当接させることで、弁体13内に形成された空間の気密性を良くしている。なお、開弁時にこうした密閉空間を構成するのは、薬液の進入を完全に防止する点で好ましいからであるが、完全に開弁した状態では、薬液が弁体13とロッドガイド12との隙間から入るほど勢い良く弁室5に流れ込むことは考えにくいので、必ずしも必要な構成ではない。
【0018】
この排液弁1は、ベローズなどを使用する従来のもののようにピストンロッドを完全にシールしてはいない。そのため、弁を完全に開いて密閉空間(図3参照)とするまでは(図2参照)、弁体13とロッドガイド12との間に隙間16ができてしまう。そこで、そうした隙間16から薬液がロッドガイド12に沿ってピストンロッド11の露出部11aに流れないように、ロッドガイド12の先端には全周にわたってフランジ状の返シ12aが形成されている。
【0019】
こうした各構成は、本発明が問題とするピストンロッド11とロッドガイド12との摺接面にグリスが塗られているためであり、薬液がそのグリスの着いたピストンロッド11に触れて排液槽に入らないようにするためである。そのため本実施形態では、更に万一薬液がピストンロッド11に触れてもグリスで汚染されないように、ロッドガイド12から突き出るピストンロッド11の露出部11aにおけるグリスの付着を防止するべく、露出部11aがロッドガイド12に摺接しないように小径で形成されている。
【0020】
一方、この排液弁1は、前記従来例のものと同様にスプリング18と圧縮エアによって弁の開閉が行われるものである。そのために、ピストンロッド11には軸心部分に穴17が形成され、そこには閉弁方向にピストンロッド11を付勢するためのスプリング18が挿入されている。また、ピストン10が摺動するボディ2に固定されたシリンダブロック19には、スプリング18の付勢力に抗してピストン10を加圧する圧縮エアを供給するための操作ポート20が形成されている。
【0021】
続いて、こうした構成による本実施形態の排液弁1について、その動作を以下に説明する。排液弁1は、通常図1に示すように、ピストン10がスプリング18によって付勢され、ピストンロッド11の先端部に固定された弁体13の弁シート14が弁座面6に押し付けられて閉弁状態になっている。そして、開弁させる場合には操作ポート20から圧縮エアを供給し、ピストン10をスプリング18の付勢力に抗して加圧する。すると、エアの加圧力によってピストン10が図中右方へ移動し、弁体13が弁座面6から離間して開弁する。こうして弁が開くと、図2に示すように弁体13が弁座面6から離間する段階で薬液が入力ポート3から弁室5内へ流れ込んでくる。そうした場合、薬液は、そのまま出力ポート4へと直接流れるだけでなく、勢い良く流れ込みんで弁体13の平面部13Aにぶつかって跳ね上がり、カバー部13Bの上に回り込んで落ちるように流れるものもある。
【0022】
そうした薬液に対しては、弁体13のカバー部13Bによってピストンロッド11が覆われているので、露出部11aへ薬液が触れるのを防いでいる。また、図2に示すように弁が完全に開くまでの間は、カバー部13Bの上から回り込んだ薬液がロッドガイド12に沿って露出部11aへ流れることも考えられる。そうした薬液は、ロッドガイド12先端の返シ12aによって露出部11aへの進入が止められる。更に、本実施形態では、そうした薬液に対して弁体13内から噴き出される噴出エアによって積極的に進入を禁止している。
【0023】
即ち、弁体13内には閉弁時に図1に示すように大きな空間21が形成されている。そして、図2に示すように、弁を開くために弁体13がロッドガイド12に重なるように移動すると、ロッドガイド12が相対的に進入して弁体13内の空間21の容積が縮小し、そのことによって空間21内のエアが押し出されて隙間16から噴き出る。このとき、隙間16は僅かな間隔なのでエアは勢い良く噴出し、その噴出したエアはロッドガイド12との間から進入しようとする薬液にとって逆風となり、露出部11aへの薬液が押し戻される。
【0024】
こうした状況で、加圧されたピストン10が更にスプリング18を圧縮してピストンロッド11が摺動し、排液弁1が完全に開弁すると、図3に示すようにカバー部13Bの開口端がシールパッキン15に当接し、弁体13内に密閉空間が形成される。こうして完全に開弁した状態になれば、弁室5内に入り込んだ薬液が如何に流れようとも、弁体13による密閉空間内のピストンロッド11は薬液との接触が回避される。また、ロッドガイド12内に後退したピストンロッドロッド11は、グリスの塗られた摺動面と露出部11aとは非接触なので、閉弁時に突き出される露出部11aにグリスが付着することはない。
【0025】
そして、すべての薬液が排出された後は、操作ポート20から圧縮エアを放出することによってピストン10への加圧を解放すれば、スプリング18の付勢力によってピストン10が押し戻され、図1に示すような閉弁状態に戻る。こうした場合、開弁時に隙間16からはエアが噴出していたのとは逆にエアが吸い込まれ、それに伴ってロッドガイド12に付着した薬液が流れることが考えられる。しかし、この場合でもロッドガイド12先端の返シ12aによってせき止められ、露出部11aへの薬液の付着が防止される。
【0026】
一方、図1に示すように完全な閉弁状態になった場合、弁室5の内壁面には薬液が付着している。そのため、特に天井面に付着した薬液のボタ落ちが考えられるが、そうした薬液は弁体13のカバー部13Bによって露出部11aに落ちることはない。また、ロッドガイド12の上に落ちたものは、返シ12aによって狭い隙間16となっているので、その薬液が露出部11aへ跳ね返って入ることも防止されている。
【0027】
このように、本実施形態の排液弁1によれば、ベローズやダイヤフラムを使用しなくてもピストンロッド11の露出部11aに薬液が触れることを防止することがでる。そのため、この排液弁1によっても、従来の排液弁と同様に薬液をグリスで汚染させることなく再利用することが可能となる。そして、本実施形態の排液弁1では、ベローズ等を使用しないことで高価なPTFEを使う部材を減らして排液弁1の価格を下げることができ、またベローズ等に要する組立スペースを削減することで排液弁1の小型化を図ることができた。
【0028】
以上、本発明に係る排液弁の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、弁を開閉させる駆動手段として、圧縮エアを作動流体としたシリンダを使用したが、これ以外にもモータを利用してロッドを軸方向に駆動させるようにしたものであってもよい。
【0029】
【発明の効果】
本発明は、ロッドを弁室内に突設したロッドガイド内に摺動可能に挿入し、弁体を前記ロッドガイドより大径の筒状部を有する有底筒形状として、ロッドが摺動可能に支持されたロッドガイドから突き出された閉弁時に、弁体の筒状部でロッドの露出部を覆うようにしたので、安価な排液弁を提供すること、また小型の排液弁を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる排液弁の一実施形態の閉弁時を示した断面図である。
【図2】本発明にかかる排液弁の一実施形態の開弁途中を示した断面図である。
【図3】本発明にかかる排液弁の一実施形態の開弁時を示した断面図である。
【図4】従来の排液弁を示した断面図である。
【符号の説明】
1 排液弁
3 入力ポート
4 出力ポート
5 弁室
6 弁座面
11 ピストンロッド
11a 露出部
12 ロッドガイド
12a 返シ
13 弁体
13B カバー部
Claims (4)
- ロッドの先端に設けられた弁体を、入力ポート側に設けられた弁座面に当接・離間させることにより、入力ポートと出力ポートとの間で弁の開閉を行う排液弁において、
前記ロッドは、弁室内に突設されたロッドガイド内に摺動可能に挿入され、前記弁体は、前記ロッドガイドより大径の筒状部を有する有底筒形状をしたものであって、前記ロッドが摺動可能に支持されたロッドガイドから突き出された閉弁時に、前記弁体の筒状部で前記ロッドの露出部を覆うようにしたものであること、
前記弁体と前記ロッドガイドとの間に隙間が形成され、
前記隙間が、閉弁状態から開弁状態へと移行しているときにおいて、前記弁体と前記ロッドにより囲まれた空間内のエアが前記ロッドガイドにより圧縮され噴き出ることにより薬液の侵入を防止するように設定していること、
を特徴とする排液弁。 - 請求項1に記載の排液弁において、
前記ロッドがロッドガイド内に後退した開弁時には、前記弁体の筒状部の開口端を壁面に当接させて当該ロッドガイドを覆った密閉空間を形成するものであることを特徴とする排液弁。 - 請求項1又は請求項2に記載の排液弁において、
前記ロッドガイドは、その先端全周に張り出した返シが形成されたものであることを特徴とする排液弁。 - 請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の排液弁において、
前記ロッドは、閉弁時に前記ロッドガイドから露出する部分が前記ロッドガイドに摺接しないように小径で形成されたものであることを特徴とする排液弁。
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