JP4122990B2 - 含水爆薬収容容器、含水爆薬収容体及び含水爆薬の排出方法 - Google Patents

含水爆薬収容容器、含水爆薬収容体及び含水爆薬の排出方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、含水爆薬を収容して運搬や貯蔵を行うために使用される含水爆薬収容容器、含水爆薬収容体及び含水爆薬の排出方法に関するものである。さらに詳しくは、耐油性及び防湿性の機能を有するとともに、優れた強度を備えた含水爆薬収容容器、含水爆薬収容体及び含水爆薬の排出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来型の含水爆薬は、取り扱い性を確保するため、常温では膠質状であるのが一般的である。そのため、包装形態としては例えば内径30mmの円柱状に成形された含水爆薬をクラフト紙で巻いて筒状にしたもの(カートリッジタイプの含水爆薬)、或いは内径50mmの合成樹脂製チューブに一定量充填してから端末をアルミニウムのクリップで留めたもの等が知られている。何れも容器はファイバ板箱(段ボール箱)に入れて梱包され、輸送、保管するのが一般的であった。
【0003】
例えば、25℃における粘度が40〜3000Pa・SのW/O型エマルション爆薬を、ポリエチレン−ナイロン−ポリエチレンの3層フィルム等の合成樹脂フィルムで包装し、該フィルムの一方端又は両端に口締め部を設けた爆薬包が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
近年では、装填機を使用して直接発破孔にバルク状態で注入する必要性から、一定の形態を持たず、通常500Pa・S以下の低粘度で優れた流動性を有する含水爆薬、即ちバルク状含水爆薬が使用されるようになってきた。このようなバルク状の含水爆薬は、ナイロン/ポリエチレンラミネート等の合成樹脂フィルム製の袋中に10〜20kg単位で収容されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−163692号公報(第2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来の爆薬を包装するために使用される合成樹脂フィルムは、耐油性が不十分で収容された含水爆薬が経時的に浸み出す場合があった。また、係る合成樹脂フィルムの防湿性が不十分で外部から袋内へ水分が透過して含水爆薬の品質が低下するおそれもあった。さらに、含水爆薬が収容された合成樹脂フィルム製の袋を発破孔へ装填するなどの取扱いに際して、合成樹脂フィルムの強度不足のため袋が破れるおそれがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、耐油性及び防湿性の機能を有するとともに、優れた強度を備えた含水爆薬収容容器、含水爆薬収容体及び含水爆薬の排出方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、第1の発明の含水爆薬収容容器は、硬質ファイバ板又は重質紙の積層体よりなる基材を筒状に成形してなる胴部と、該胴部の底部に取着される地板と、胴部の頂部に取着される天板と、前記地板及び天板を胴部に連結する連結具とから構成され、内部に粘度が常温で50〜500Pa・Sの含水爆薬が収容される含水爆薬収容容器であって、胴部の含水爆薬に接する内面には耐油性と防湿性の機能を備えた機能層が設けられ、かつJIS Z0212に規定された圧縮試験による一次最大圧縮荷重が1.5〜20kNであるとともに、前記胴部の周囲に補強用カバーが取付けられ、操作ハンドルを操作して含水爆薬収容容器を回動させる機構を備え、さらに前記胴部内の地板側には、胴部の内面形状に対応する外面形状を有し、胴部内に収容された含水爆薬の排出後に胴部内を摺動させて胴部内面に付着した含水爆薬を掻き落とすための掻き取り板が収容されていることを特徴とするものである。
【0009】
第2の発明の含水爆薬収容容器は、前記機能層は、金属層を含む合成樹脂層の積層構造により形成されているものである
【0010】
の発明の含水爆薬収容体は、第1又は2の発明の含水爆薬収容容器内に、前記含水爆薬が収容されていることを特徴とするものである。
【0011】
の発明の含水爆薬の排出方法は、請求項に記載の含水爆薬収容容器内には前記含水爆薬が収容され、その後連結具を解除して天板を胴部から取り外し、次いで操作ハンドルを操作して含水爆薬収容容器を回動させ含水爆薬収容容器を傾けて含水爆薬を排出した後、連結具を解除して地板を胴部から取り外し、掻き取り板を押圧して胴部内を頂部側へ摺動させることにより胴部内面に付着した含水爆薬を含水爆薬収容容器外へ排出することを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
図1に示すように、含水爆薬収容容器(以下、単に収容容器ともいう)11は、円筒状に成形されている胴部13と、該胴部13の底部に連結具としての連結バンド14によって取着される地板15と、胴部13の頂部に連結バンド14によって取着される天板16とから構成されている。図3に示すように、胴部13は硬質ファイバ板又は重質紙の積層体よりなる基材12によって円筒状に成形されている。図4に示すように、天板16は中心部が周囲より膨出した形状を有し、強度向上が図られている。地板15も天板16と同じ形状を有している。この収容容器11の内部には含水爆薬17が収容されて含水爆薬収容体18、即ち含水爆薬充填物が構成される。含水爆薬17はエマルション爆薬、スラリー爆薬等の水性爆薬を意味する。
【0013】
エマルション爆薬として具体的には、例えば酸化剤水溶液と、流動パラフィンと乳化剤とからなる可燃剤混合物を攪拌混合(乳化)して得られる乳化物に、合成樹脂製微小中空球体を添加混合して得られるものが挙げられる。ここで、例えば酸化剤水溶液は、硝酸アンモニウム69.5重量部及び硝酸ナトリウム10.3重量部を水13.3重量部に加えて加温することにより得られる。可燃剤混合物は、流動パラフィン5.0重量部と乳化剤1.4重量部を加温混合することで得られる。酸化剤水溶液と可燃剤混合物を撹拌混合して乳化物が得られ、これに樹脂製微小中空球体0.5重量部が添加されてエマルション爆薬が得られる。また、スラリー爆薬としては、硝酸アンモニウム及び水を主成分とし、可燃物としてアルミニウム等の金属粉、鋭感剤、気泡剤等よりなるスラリー状のものが挙げられる。
【0014】
含水爆薬17は、図示しない発破孔に機械装填を行なうことができるようにする観点及び容器から含水爆薬17を容易に排出できるようにする観点から、常温でポンプ装填が可能な範囲の粘度、常温で好ましくは50〜500Pa・S、より好ましくは80〜250Pa・Sである。粘度が500Pa・Sを越える場合、含水爆薬17を装填機のホースから排出する際の排出圧力が上昇する等、取り扱い性の問題が発生し易くなる傾向にある。一方、粘度が50Pa・S未満の場合、含水爆薬17の製造が困難となる傾向にある。
【0015】
また、ポンプを使用し、ある程度の圧力を加えて含水爆薬17を発破孔に装填する観点から、含水爆薬17の感度は実用範囲内でできるだけ鈍感とする必要があり、JIS K 4801の規格で定める雷管起爆感度試験において不爆となる感度であることが好ましい。
【0016】
含水爆薬収容容器11の強度は、含水爆薬17が収容された含水爆薬収容体18が運搬及び保管において、何段か積まれた状態でも変形等がないという観点から、JIS Z 0212による圧縮試験において、一次最大圧縮荷重が1.5〜20kNであることが必要であり、3〜10kNであることが好ましい。この試験はJIS Z 0212 試験方法B(圧縮方向:対面)によるものである。一次最大圧縮荷重が1.5kN未満の場合には、含水爆薬収容容器11の運搬及び保管時に変形が生じないような強度を維持することができない場合がある。一方、20kNを越えるような強度を得るためには胴部13を構成する基材12の種類を特殊なものに変更したり、厚みを相当厚くしたりする必要があり、実用的ではない。
【0017】
また、この一次最大圧縮荷重はJIS K 4829の積み重ね試験の規定をも満たすものである。火薬類取締法では収容容器11に収容される火薬の質量に制限があるため、この規定を満たすためには例えば容器サイズは直径51cmで高さ15cmの大きさのものから直径28cmで高さ50cmの大きさのものが適当である。
【0018】
加えて、含水爆薬収容容器11は、JIS K 4829「火薬類の容器包装性能試験法」に適合する強度を有することが好ましい。具体的には含水爆薬収容体18の上面から荷重(W=(3―h)/h×Gの式で求められる荷重)を加えた場合に、内容物の漏れ、運搬等の取り扱いに悪影響を及ぼすおそれのある変質又は容器の強度を弱めたり、積み重ね時の取り扱い性を損なうおそれのある変形がないことが条件となる。
【0019】
ここで、W:含水爆薬収容体18の上面に加わる荷重をキログラムで表した数値、h:含水爆薬収容体18の高さをメートルで表した数値、G:含水爆薬収容体18の全質量をキログラムで表した数値である。
【0020】
前記胴部13の基材12を形成する硬質ファイバ板は、いわゆる段ボール原紙のことで、フラットなライナ間に波型の中芯が接合されたものである。重質紙は、いわゆる厚紙のことで、例えば平方メートル当たりの重量が180g/m2に相当する厚みのあるクラフト紙が挙げられる。本実施形態の重質紙は180g/m2のクラフト紙6枚を接着剤で接着して積層されたものである。つまり、これらの硬質ファイバ板又は重質紙は積層体として胴部を形成している。積層体にすることにより、JIS K 4829の規定を満たす強度を維持することができる。
【0021】
また、胴部13を構成する基材12の厚みに特に制限はないが、構成及び強度を考慮して厚みが定められ、通常1〜4mm、好ましくは2〜3mmである。具体的には、例えば180g/m3のクラフト紙を6層に巻いて接着した厚みが約2mmの積層成形品が使用される。
【0022】
図3に示すように、胴部13の含水爆薬17に接する内面には耐油性と防湿性の機能を備えた機能層19が設けられている。耐油性は、含水爆薬17が胴部13に浸透して残留するのを回避し、含水爆薬収容容器11の再利用を図るために必要である。そのための耐油性試験は、20℃において、ニュートラルオイルと胴部13内面を接触させた状態で3日間放置し、胴部13外面にオイルの浸み出しがないことを目視によって確認することによって行なわれる。
【0023】
一方、防湿性は、外部から水分が胴部13を透過して内部に到り含水爆薬17の組成が変化して、含水爆薬17としての性能が低下するのを防止するために必要である。そのための防湿性試験は、地板15を胴部13に固定した収容容器11内に吸湿剤として塩化カルシウム300gを置き、天板16を胴部13に固定して密封した後、40℃、90%RHの雰囲気中に7日間放置し、吸湿剤の重量増加を測定し水分透過量を求めることにより行なわれる。なお、RHは相対湿度を表す。その水分透過量は10g以下であることが必要である。耐油性と防湿性の双方の機能を備えることによって火薬類取締法の規定を満たすことができる。
【0024】
耐油性と防湿性の機能を備えた機能層19としては、アルミニウム箔等の金属層を合成樹脂フィルムよりなる合成樹脂層に積層した積層構造を有するラミネートフィルムが好ましいが、耐油性に優れた合成樹脂フィルムと防湿性に優れた合成樹脂フィルムのラミネートフィルムであってもよい。ここで、ラミネートの方法としては押し出しラミネート法とドライラミネート法があるが、押し出しラミネート法で使用されるポリエチレン、ポリプロピレン等の接着用樹脂は積層構造のうちの一層とみなし、ドライラミネート法で使用する接着用樹脂は積層構造の一層とはみなさない。アルミニウム箔等の金属層の防湿性は特に優れていることから、合成樹脂フィルムのみからなるラミネートフィルムの構成で耐油性を向上させるだけでなく、高湿度雰囲気下での吸湿をほぼ完全に抑制することが可能となる。
【0025】
前記合成樹脂フィルムとしては例えば、ポリエチレン(PE)フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、ナイロン(NY)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が挙げられる。機能層として具体的には、ポリエチレンフィルムとアルミニウム箔とポリエチレンフィルムとからなるラミネートフィルム、ナイロンフィルムとポリエチレンフィルムとアルミニウム箔とポリエチレンフィルムとからなるラミネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリエチレンフィルムとアルミニウム箔とポリエチレンフィルムからなるラミネートフィルム等が挙げられる。
【0026】
前記アルミニウム箔等の金属層の厚みは、耐油性及び防湿性を得るという観点から、7〜20μmが好ましい。この厚みが7μm未満の場合、製造が難しく、金属箔の入手が困難となる。しかも、厚みが薄い場合には金属箔にピンホールが数多く発生したり、強度が低下したりする懸念があるが、他の合成樹脂フィルムとラミネートとすることで強度的な問題がなくなるため、7〜20μmの範囲であれば十分な耐油性及び防湿性を得ることが可能である。一方、20μmを越える場合、耐油性及び防湿性の性能はそれ以上向上せず、却って無駄になる。
【0027】
上記の金属層は、アルミニウム等の金属を合成樹脂フィルムの表面に蒸着等の手段によって形成することもできる。アルミニウムを蒸着した合成樹脂フィルムのアルミニウム蒸着膜の厚みはアルミニウム箔の1/1000以下であるが、合成樹脂フィルムよりも単独よりも格段に防湿性を向上させることができる。具体的には、アルミニウム蒸着無延伸ポリプロピレン(AlVM−PP)、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(AlVM−PET)フィルム、無延伸ポリプロピレン/アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム/延伸ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。
【0028】
また、耐油性に優れた合成樹脂フィルムとしては、ナイロンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム及びポリ塩化ビニリデンで被覆された延伸ポリプロピレンフィルムが挙げられる。耐油性に優れた合成樹脂フィルムの厚みは、できるだけ薄くして耐油性を得るために15〜40μmであることが好ましい。
【0029】
防湿性に優れた合成樹脂フィルムとしては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルム、ポリ塩化ビニリデンで被覆された延伸ポリプロピレン(KOPP)フィルム、延伸又は無延伸ポリプロピレン(OPP又はCPP)フィルム、ポリ塩化ビニリデンで被覆されたポリエチレンテレフタレート(KPET)フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム及び高密度ポリエチレンが挙げられる。ポリ塩化ビニリデンで被覆することにより防湿性がさらに向上するが、塩素を含むため後処理などの取扱い性が悪くなる。防湿性がポリ塩化ビニリデンで被覆されたフィルムより若干劣るフィルムでも、他の合成樹脂フィルムを積層することで防湿性を高めることができる。防湿性に優れた合成樹脂フィルムの厚みは、できるだけ薄くして防湿性を得るために15〜60μmであることが好ましい。
【0030】
従って、耐油性と防湿性を備えた機能層19は双方の合成樹脂フィルムを積層することにより得られる。そのような機能層19として具体的には、延伸ポリプロピレンフィルム/ポリエチレンフィルム/エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム/ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンで被覆された延伸ポリプロピレンフィルム/無延伸ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。
【0031】
そして、図3は機能層19としてポリエチレンフィルム20aとアルミニウム箔21とポリエチレンフィルム20bとの3層が積層されたラミネートフィルムを示している。一般にラミネートフィルムや合成樹脂フィルムは、硬質ファイバ板又は重質紙より構成される基材12の内面に接着用フィルムを用いた熱溶着によって接合される。図3の場合にはポリエチレンフィルム20bがその役目を果たしている。そのような接着用フィルムにポリエチレンフィルムを用いた場合には、できるだけ薄くして接着性を発揮させるためその厚みは通常10〜20μm、好ましくは15μmである。中間層又は最表面層のフィルムの厚さは、金属層の傷の防止等という観点から、通常20〜100μmの範囲である。具体的には、例えば、ナイロンフィルムは25μm、ポリエチレンテレフタレートフィルムは12μm、 ポリエチレンフィルムは20〜80μmがラミネートフィルムとして一般的である。
【0032】
さらに、図2に示すように、前記胴部13の両端近傍の強度を補強する目的で、胴部13の両端外面に表面処理鋼板等で作製された補強リング22が取り付けられる。
【0033】
前記天板16及び地板15は表面処理鋼板、ベニア合板又はポリエチレン成形板で形成されるが、含水爆薬17との相互作用等により、輸送上の問題をなくす必要がある。従って、鋼板を使用する場合には表面処理鋼板、例えば亜鉛メッキ鋼板或いは合成樹脂フィルムで被覆された鋼板が使用される。また、天板16又は地板15の材質によっては耐油性と防湿性が求められるが、その場合には胴部13と同じように耐油性と防湿性の機能を有する機能層19で被覆される。
【0034】
前記連結具は、地板15又は天板16を胴部13に固定するために使用されるもので、具体的には例えばレバー式の連結バンド14が挙げられる。ここで、レバー式の連結バンド14について説明する。図5に示すように、バンド本体141は円弧状をなし、その開口端部の一方には上下両側が折曲げられて形成された断面コの字状をなすレバー142の一端が回動可能に取付けられ、他方には連結リング143の一端が回動可能に取付けられている。該連結リング143の他端はレバー142の中間部に回動できるように貫通支持されている。そして、地板15又は天板16を胴部13の端部に置いた状態で、バンド本体141をそれらの境界部の周囲に配置し、レバー142を締めるようになっている。
【0035】
レバー142の両側が折曲げられて形成された一方の側片144の先端側には係止孔145が透設されている。バンド本体141の開口端部の一方の側には、バンド本体141の半径方向に延びる回動軸146を中心に回動する抜止め用レバー147が支持されている。そして、図6に示すように、レバー142を締めた後に抜止め用レバー147を回動させてレバー142の係止孔145に係合させることにより、レバー142が解除されるのを防止するようになっている。
【0036】
図1に示すように、前記胴部13内の地板15側には、胴部13の内面形状に対応する外面形状を有し、胴部13内に収容された含水爆薬17の排出後に胴部13内を頂部側へ摺動させて残留した含水爆薬17を掻き落とすための掻き取り板としての掻き取り円板23が収容されている。この掻き取り円板23は、含水爆薬収容容器11内に収容された含水爆薬17を排出した後、胴部13内面に付着する含水爆薬17を掻き取る目的で、予め含水爆薬17の収容前に収容容器11内底面、つまり地板15の上方に配置される。掻き取り円板23の材質として硬いものを使用すると、胴部13の内面を傷付ける場合があること及び掻き取り円板23と胴部13との間における摩擦等が問題となり易い。従って、掻き取り円板23の材質としては軟質材料が好ましく、ゴム、軟質ウレタン発泡体、軟質ポリエチレン等が使用される。
【0037】
また、掻き取り円板23の材質によっては耐油性及び防湿性が求められるが、その場合には胴部13と同じように耐油性と防湿性の機能を有する機能層19で被覆される。掻き取り円板23の外径は、胴部13内面に付着した含水爆薬17を掻き落とす必要があることから、胴部13内径と同一、或いは0.1mm程度大きい方が好ましい。また、掻き取り円板23の厚みは、掻き取り円板23を押圧して含水爆薬17を排出させる場合に掻き取り円板23に対して垂直に押圧できる厚みであれば特に限定されないが、通常5〜50mm、好ましくは10〜30mmである。
【0038】
また、軟質材料で形成される掻き取り円板23の中心部分を含水爆薬17と相互作用のない硬質のベニア板、硬質樹脂材料製の板材等で全て置き換えたり、貼り合わせによって補強部分とすることもできる。さらに、含水爆薬17の粘度が低い場合には胴部13内面に付着した含水爆薬17を掻き落とす機能さえあれば良いので、中心部のない構成とすることもできる。
【0039】
次に、胴部13を補強するために胴部13の周囲に補強用カバー24が取付けられる。この補強用カバー24には含水爆薬収容容器11を回動させるための機構も備えられている。図7に示すように、半円筒状をなす一対の分割板25a,25bがそれらの一側縁に設けられた蝶番26により開閉可能に構成されている。一方の分割板25aの他側縁には、上下位置に一対の結合用金具27が取着されている。該結合用金具27は、分割板25aに固定されている金具本体28と、金具本体28に回動自在な結合用アーム29と、該結合用アーム29の先端に回動可能に連結された係合リング29aと、結合用アーム29を締付ける締付け部30とよりなっている。他方の分割板25bの他側縁の上下位置には係合用のフック31が取着され、図8に示すように両分割板25a,25bを閉じたときに一方の分割板25aの各結合用アーム29が係合されるようになっている。
【0040】
各分割板25a,25bの外面の上下ほぼ中央位置には、四角枠状をなす操作ハンドル32が支持軸33を介して接合されている。両操作ハンドル32は、分割板25a,25bを閉じたとき180度対向する位置に設けられている。また、各分割板25a,25bの外面の上下ほぼ中央部には、操作ハンドル32とは周方向に90度離れた位置に平面コの字状をなす把持部34が固定金具35によって固着されている。そして、補強用カバー24が胴部13に取付固定された状態で把持部34を把持して含水爆薬収容容器11を持ち上げることができるようになっている。
【0041】
図9に示すように、含水爆薬17を装填機用の貯槽に注入するためのホッパー36は装填機の架台37の内側に保持されている。架台37から上方へ延びる一対の支持柱38の上端には横方向へ延びる支持片39が支持され、各支持片39の先端部上面には支持凹部40が切欠き形成されている。そして、これら支持凹部40に含水爆薬収容容器11の胴部13外周に巻き付けられた補強用カバー24の両操作ハンドル32の支持軸33が支持され、操作ハンドル32の操作により含水爆薬収容容器11を回動できるようになっている。前記支持片39の外面には図10に示すように操作ハンドル32に当接して含水爆薬収容容器11の回動角度を規制する停止板41が固着されている。
【0042】
また、収容容器11は輸送中或いは収容容器11内の含水爆薬17の移し替え中に収容容器11表面が汚れる可能性があるため、収容容器11外面を撥水加工等で表面処理する方が好ましい。前記含水爆薬収容体18は、胴部13に地板15を連結バンド14で連結し、胴部13内の地板15の上方位置に掻き取り円板23を載せた後、含水爆薬17を例えば20〜30kg充填し、次いで天板16を被せ、連結バンド14で天板16を胴部13に連結することで得られる。
【0043】
次に、本実施形態の作用について説明する。
含水爆薬17を収容容器11に収容する場合には、まず図2に示すように、胴部13の上下両端に補強リング22をかしめ付けることにより、胴部13の上下両端の強度が向上される。次いで、図1に示すように、胴部13の底部に地板15を当て、その外周縁と胴部13の外周縁とを挟着するように連結バンド14を被せた後、レバー142を締める。その後、抜止め用レバー147を回動させてレバー142の係止孔145に係止させ、レバー142が解除されないようにロックする。その状態で胴部13内に掻き取り円板23を入れ、地板15の上方位置に支持する。
【0044】
このようにして胴部13の底に地板15が固定され、その上に掻き取り円板23が支持された状態で、収容容器11内部に含水爆薬17を注入する。含水爆薬17の充填が終了したら天板16を胴部13の上端に被せ、地板15と同様にして連結バンド14によって天板16を胴部13に固定する。このようにして収容容器11に含水爆薬17が収容された含水爆薬収容体18が得られる。
【0045】
続いて、図8に示すように、補強用カバー24を胴部13の周囲に巻いて上下一対の結合用アーム29の係合リング29aを係合用のフック31に係合し、締付け部30を回動させて結合用アーム29を締付け、補強用カバー24を胴部13に固定する。次いで、図9に示すように、一対の把持部34を把持して操作ハンドル32の根元に位置する支持軸33を装填機の支持柱38の上端に設けられた支持片39の支持凹部40に支持させる。その状態で天板16を胴部13に固定する連結バンド14を前記とは逆の操作で解除し、天板16を胴部13から取り外す。そして、図10に示すように、操作ハンドル32を回動操作して収容容器11内の含水爆薬17を装填機用のホッパー36内へ流し込む。この回動操作は、操作ハンドル32が停止板41に当接するまで行なわれる。
【0046】
収容容器11内から含水爆薬17がほとんど排出された後には、図11に示すように、地板15を胴部13に固定する連結バンド14を前記とは逆の操作で解除し、地板15を胴部13から取り外す。その状態で、掻き取り円板23をその後方から頂部に向かって図中の矢印に示すように収容容器11の軸線方向に押圧する。掻き取り円板23を押圧することにより、胴部13の内周面に付着していた含水爆薬17が掻き出されてホッパー36内に落される。この掻き取り円板23を用いることにより、含水爆薬17の排出後に胴部13内面に付着した含水爆薬17を手で取り除く作業が不要となり、最後に掻き取り円板23に付着した含水爆薬17を取り除くことで、含水爆薬収容容器11の再利用が可能となる。
【0047】
以上の実施形態により発揮される効果を以下にまとめて記載する。
・ 実施形態の含水爆薬収容容器11によれば、胴部13の内面には耐油性と防湿性の機能を備えた機能層19としてアルミニウム箔21を含む合成樹脂のラミネートフィルムの積層体が配置されていることから、胴部13の内面に優れた耐油性及び防湿性を発現することができる。このため、収容容器11から含水爆薬17が浸み出すことを防止することができると同時に、高湿度雰囲気下での吸湿をほぼ完全に抑制することが可能である。
【0048】
・ 本実施形態の基材12を構成する重質紙は180g/m2のクラフト紙6枚を接着剤で接着して積層されたものであり、JIS Z0212に規定された圧縮試験による一次最大圧縮荷重が1.5〜20kNのものである。従って、含水爆薬が収容された収容容器11を積み上げた場合でも、収容容器11が変形を生じたりするおそれがない。従って、装填機のホッパー36を介してその貯槽への含水爆薬17の移し替えを円滑に行なうことができる。
【0049】
・ また、収容容器11の内底部には掻き取り円板23を配置したことから、含水爆薬17の排出後に掻き取り円板23を胴部13内で頂部側へ摺動させることにより胴部13内面に付着した含水爆薬17を容易に掻き落とすことができる。従って、収容容器11の再利用が可能となり、梱包材を廃棄する必要がない。しかも、含水爆薬17を収容容器11内に充填できるため、従来のファイバ板箱を使用する場合のように、内装としての樹脂製袋が廃材として発生せず、収容容器11自体はそのまま再利用が可能である。
【0050】
従来においては、中身の含水爆薬を袋から一旦装填機用の貯槽に移し替える場合に、手作業にて袋を絞りながら貯槽内に含水爆薬を移し替える、或いはローラの間に袋を挟んで機械的に含水爆薬を絞り出すといった手法が取られていた。本実施形態ではこのような煩雑であった作業を簡略化することができるとともに、胴部13内面への含水爆薬17の付着をなくし、収容容器11の清掃の手間を省略することが可能である。
【0051】
なお、本発明は前記実施形態を次のように変更して実施することもできる。
・ 胴部13の形状は円筒以外に、楕円筒、長円筒のほか、四角筒、六角筒、八角筒等の多角筒等であってもよい。
【0052】
・ 機能層19を構成する金属層は、アルミニウム箔以外に亜鉛箔、錫箔などであってもよい。
・ 胴部13の両端外面に設けられる補強リング22を省略することもできる。
【0053】
・ 含水爆薬収容容器11から含水爆薬17を排出する場合、実施形態とは異なる傾斜角度に調整したり、収容容器11を垂直に立てたりしてもよい。
さらに、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。
(1) 前記機能層が有する耐油性と防湿性は、次に示す試験方法によって定められるものである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の含水爆薬収容容器。
【0054】
耐油性試験:20℃において、ニュートラルオイルと胴部内面を接触させた状態で3日間放置し、胴部外面にオイルの浸み出しがないことを目視によって確認する。
【0055】
防湿性試験:地板を胴部に固定した収容容器内に吸湿剤として塩化カルシウム300gを置き、天板を胴部に固定して密封した後、40℃、90%RHの雰囲気中に7日間放置し、吸湿剤の重量増加を測定し水分透過量を求め、その水分透過量が10g以下である。
【0056】
このように構成した場合、胴部の耐油性と防湿性の性能を確実に発揮することができる。
(2) 前記機能層は、耐油性を有する合成樹脂フィルムと防湿性を有する合成樹脂フィルムとを積層してなるラミネートフィルムである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の含水爆薬収容容器。このように構成した場合、耐油性と防湿性の双方の機能を兼ね備えることができる。
(3) 前記胴部は円筒状に成形されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の含水爆薬収容容器。このように構成した場合、胴部の強度を最も向上させることができる。
(4) 一側縁で開閉可能に構成された一対の分割板と、各分割板の他側縁に設けられた結合用金具とよりなる補強用カバーを前記胴部の周囲に巻き付けて結合用金具で締付けるように構成されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の含水爆薬収容容器。このように構成した場合、胴部を補強することができる。
(5) 前記補強用カバーの外面には180度対向する位置に一対の操作ハンドルが支持軸を介して接合されている上記技術思想(3)に記載の含水爆薬収容容器。このように構成した場合、含水爆薬が収容された含水爆薬収容容器を操作ハンドルの操作によって内部の含水爆薬を容易に排出することができ、また支持軸を他の支持部に支持すれば、その支持軸を中心として含水爆薬収容容器を簡単に回動させて内部の含水爆薬を容易に排出することができる。
【0057】
【発明の効果】
この発明は以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
第1の発明の含水爆薬収容容器によれば、耐油性及び防湿性の機能を有するとともに、優れた強度を発揮することができる。また、収容される含水爆薬が低粘度であることから、含水爆薬収容容器からの含水爆薬の排出を容易に行なうことができる。さらに、操作ハンドルを回動操作することにより含水爆薬収容容器から含水爆薬を容易に排出することができるとともに、含水爆薬の排出後に掻き取り板を胴部内で摺動させることにより胴部内面に付着した含水爆薬を容易に掻き落とすことができる。
【0058】
第2の発明の含水爆薬収容容器によれば、第1の発明の効果に加え、耐油性及び防湿性の機能を確実に発揮することができる
【0059】
の発明の含水爆薬収容体は、第1又はの発明の効果を発揮することができるうえに、収容される含水爆薬が低粘度であることから、含水爆薬収容容器からの含水爆薬の排出を容易に行なうことができる。
【0060】
の発明の含水爆薬の排出方法によれば、含水爆薬を排出した後、掻き取り板を押圧して胴部内を頂部側へ摺動させることにより胴部内面に付着した含水爆薬を含水爆薬収容容器外へ容易に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 含水爆薬収容体を示す部分破断斜視図。
【図2】 上下端に補強リングが固定された胴部を示す斜視図。
【図3】 胴部の構成を示す断面図。
【図4】 天板を示す斜視図。
【図5】 連結具を示す斜視図。
【図6】 含水爆薬収容体を示す斜視図。
【図7】 補強用カバーを示す斜視図。
【図8】 補強用カバーを含水爆薬収容容器の外周に固定した状態を示す斜視図。
【図9】 含水爆薬収容体を装填機の支持柱に支持した状態を示す斜視図。
【図10】 含水爆薬収容容器を傾けて含水爆薬を排出する状態を示す斜視図。
【図11】 掻き取り円板で含水爆薬収容容器の内面に付着した含水爆薬を掻き取る状態を示す斜視図。
【符号の説明】
11…含水爆薬収容容器、12…基材、13…胴部、14…連結具としての連結バンド、15…地板、16…天板、17…含水爆薬、18…含水爆薬収容体、19…機能層、20a,20b…合成樹脂層としてのポリエチレンフィルム、21…金属層としてのアルミニウム箔、23…掻き取り板としての掻き取り円板。

Claims (4)

  1. 硬質ファイバ板又は重質紙の積層体よりなる基材を筒状に成形してなる胴部と、該胴部の底部に取着される地板と、胴部の頂部に取着される天板と、前記地板及び天板を胴部に連結する連結具とから構成され、内部に粘度が常温で50〜500Pa・Sの含水爆薬が収容される含水爆薬収容容器であって、
    胴部の含水爆薬に接する内面には耐油性と防湿性の機能を備えた機能層が設けられ、かつJIS Z0212に規定された圧縮試験による一次最大圧縮荷重が1.5〜20kNであるとともに、前記胴部の周囲に補強用カバーが取付けられ、操作ハンドルを操作して含水爆薬収容容器を回動させる機構を備え、さらに前記胴部内の地板側には、胴部の内面形状に対応する外面形状を有し、胴部内に収容された含水爆薬の排出後に胴部内を摺動させて胴部内面に付着した含水爆薬を掻き落とすための掻き取り板が収容されていることを特徴とする含水爆薬収容容器。
  2. 前記機能層は、金属層を含む合成樹脂層の積層構造により形成されている請求項1に記載の含水爆薬収容容器
  3. 請求項1又は請求項2に記載の含水爆薬収容容器内に、前記含水爆薬が収容されていることを特徴とする含水爆薬収容体。
  4. 請求項1に記載の含水爆薬収容容器内には前記含水爆薬が収容され、その後連結具を解除して天板を胴部から取り外し、次いで操作ハンドルを操作して含水爆薬収容容器を回動させ含水爆薬収容容器を傾けて含水爆薬を排出した後、連結具を解除して地板を胴部から取り外し、掻き取り板を押圧して胴部内を頂部側へ摺動させることにより胴部内面に付着した含水爆薬を含水爆薬収容容器外へ排出することを特徴とする含水爆薬の排出方法。
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