JP4120753B2 - 共役ジエン重合触媒、その製造方法および共役ジエン重合体の製造方法 - Google Patents

共役ジエン重合触媒、その製造方法および共役ジエン重合体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な共役ジエン重合触媒、その製造方法および該重合触媒を用いる共役ジエン重合体の製造方法に関し、さらに詳しくは、高1,4−シス結合含量の共役ジエン重合体を与える重合触媒、その製造方法および該共役ジエン重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1,4−シス結合含量が高いポリブタジエンは低発熱性及び耐摩耗性に優れており、従来からタイヤの原料ゴムとして大量に使用されている。一般に、タイヤ用のポリブタジエンは、機械的強度、低発熱性及び耐摩耗性のバランスに優れることが必要であり、そのためには、1,4−シス結合含量をできるだけ高く、適度な分子量分布(例えば、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.7〜4程度)および好適な分子量(例えば、Mnが10万〜30万程度)のポリブタジエンが求められている。しかし、従来のポリブタジエンは、1,4−シス結合含量が98%程度であり、機械的強度や耐摩耗性が不十分である場合があった。
【0003】
一方、ネオジムなどのランタン系列金属を触媒金属として含有する重合触媒を使用すると、重合体分子の分岐が少なく、低発熱性に優れるポリブタジエンが得られる為、この触媒系に関する検討が行われている。例えば、特公平5−65525号公報には、特定のネオジム有機リン酸塩化合物、ジイソブチルアルミニウムハイドライドおよびエチルアルミニウムセスキクロリドからなる重合触媒を使用して得られる、1,4−シス結合含量が99.0モル%、Mw/Mnが2.3、ムーニー粘度が18であるポリブタジエンが開示されている。しかし、このポリブタジエンは、タイヤ用材料として用いるには分子量が低すぎる。この触媒系で分子量を上げると1,4−シス結合含量が低下するという問題がある。
また、特開平8−73515号公報には、ネオジムバーサテート、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムクロライドおよびメチルアルミノキサンからなる重合触媒を使用することにより、1,4−シス結合含量が97.7モル%、Mw/Mnが2.5、Mnが32万(標準ポリスチレン換算)のポリブタジエンが開示されている。しかし、この触媒系では、さらに1,4−シス結合含量の高いポリブタジエンを製造することは困難である。
【0004】
上記のごとく、従来のランタン系列金属を触媒金属として含有する重合触媒で得られるポリブタジエンは、タイヤ用材料として用いるには不十分であり、さらに1,4−シス結合含量が高く、かつ、適度な分子量分布および好適な分子量を有するポリブタジエンを製造し得る重合触媒が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、1,4−シス結合含量が高く、かつ、適度な分子量分布及び好適な分子量を有する共役ジエン系重合体を製造し得る新規な共役ジエン重合触媒、その製造方法および該重合触媒を用いる共役ジエン重合体の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ランタン系列金属を触媒金属とした特定の重合触媒を用いることにより、従来になく高い1,4−シス結合含量を有し、かつ、適度な分子量分布及び好適な分子量を有するポリブタジエンを製造できることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば、ランタン系列金属化合物(A)および有機アルミニウムオキシ化合物(B)とからなる共役ジエン重合触媒であって、ランタン系列金属化合物(A)がランタン系列金属(A1)とハロゲン原子不含の成分(A2)とハロゲン原子を含有する成分(A3)とから形成される塩、アルコキシドまたは錯体であることを特徴とする共役ジエン重合触媒が提供される。
【0008】
また、ランタン系列金属(A1)およびハロゲン原子不含の成分(A2)から形成される塩、アルコキシドまたは錯体と、ハロゲン原子を含有する成分(A3)とを反応させて得られる、(A1)、(A2)、および(A3)で構成されるランタン系列金属化合物(A)を得る工程と、該(A)と有機アルミニウムオキシ化合物(B)とを接触させる工程とからなる該共役ジエン重合触媒の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、該共役ジエン重合触媒の存在下で、共役ジエンを重合することを特徴とする共役ジエン重合体の製造方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
共役ジエン重合触媒
本発明の共役ジエン重合触媒は、ランタン系列金属化合物(A)および有機アルミニウムオキシ化合物(B)とからなり、ランタン系列金属化合物(A)はランタン系列金属(A1)とハロゲン原子不含の成分(A2)とハロゲン原子を含有する成分(A3)とから形成される塩、アルコキシドまたは錯体であり、なかでも塩が好ましい。
塩としては、例えば、カルボン酸塩、リン含有有機酸塩およびフェノキシドが挙げられる。これらは、さらに(カルボン酸塩)(リン含有有機酸塩)、(カルボン酸塩)(フェノキシド)のような異なる結合様式からなる複合塩構造のものであってもよい。これらのなかでも、カルボン酸塩、リン含有有機酸塩、(カルボン酸塩)(リン含有有機酸塩)が好ましく、カルボン酸塩がより好ましい。
【0010】
ランタン系列金属(A1)は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムから選ばれる。なかでもランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム及びガドリニウムが好ましく、得られる重合体の1,4−シス結合含量が高く、重合活性が高い点に加えて、原料が入手しやすく、取り扱いやすい点から、ネオジムがより好ましい。
【0011】
ハロゲン原子不含の成分(A2)としては、ハロゲン不含有機モノカルボン酸、ハロゲン不含のリン含有有機酸、ハロゲン不含モノフェノール類、ハロゲン不含モノアルコール類およびハロゲン不含β−ジケトン類が挙げられる。なかでも、ハロゲン不含有機モノカルボン酸およびハロゲン不含のリン含有有機酸が好ましく、ハロゲン不含有機モノカルボン酸がより好ましい。
【0012】
ハロゲン不含有機モノカルボン酸は、特に限定されないが、通常、炭素数2〜12の、例えば、酢酸、オクタン酸、オクテン酸、エチルヘキサン酸、ラウリン酸、バーサチック酸(炭素数1以上のアルキル基が3つ結合した三級炭素にカルボキシル基を有する炭素数6〜20の脂肪族モノカルボン酸であり、例えば、シェル化学から販売されているバーサチック−10などが例示される。)などのハロゲン不含脂肪族モノカルボン酸;フェニル酢酸などのハロゲン不含アリール置換脂肪族モノカルボン酸;シクロペンタンカルボン酸などのハロゲン不含脂環族モノカルボン酸; 安息香酸、ナフテン酸などのハロゲン不含芳香族モノカルボン酸;などが挙げられる。なかでも、炭素数6〜20のハロゲン不含脂肪族モノカルボン酸が好ましく、重合活性が高い点から、バーサチック酸がより好ましい。
【0013】
ハロゲン不含のリン含有有機酸は、特に限定されないが、下記の一般式(I)で表される。
【0014】
一般式(I)
【化1】
Figure 0004120753
【0015】
(ここで、R及びRは、それぞれ、水素原子、水酸基、又は、ハロゲン置換基を有さない炭素数1〜20の、炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、フェノキシ基もしくはアルキルフェノキシ基を表わす。また、R及びRは、それぞれ同一の基であっても異なる基であってもよい。)
【0016】
上記一般式(I)で示される化合物の具体例としては、リン酸ジブチル、リン酸ジヘキシル、リン酸ジオクチル、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、リン酸ジオレイル、リン酸ブチル(2−エチルヘキシル)、リン酸(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(フルオロヘキシル)、リン酸ビス(クロロヘキシル)などのハロゲン不含リン酸ジアルキルエステル;リン酸ジフェニル、リン酸ビス(p−ノニルフェニル)などのハロゲン不含リン酸ジアリールエステル; 2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノブチルなどのハロゲン不含モノアルキルホスホン酸モノアルキルエステル; 2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−p−ノニルフェニルなどのハロゲン不含モノアルキルホスホン酸モノアリールエステル;ホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、ホスホン酸モノ−1−メチルヘプチルなどのハロゲン不含ホスホン酸モノアルキルエステル;ホスホン酸モノ−p−ノニルフェニルなどのハロゲン不含ホスホン酸モノアリールエステル;ジブチルホスフィン酸、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、ジオレイルホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸などのハロゲン不含ジアルキルホスフィン酸; ジフェニルホスフィン酸、ビス(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸などのハロゲン不含ジアリールホスフィン酸;などが挙げられる。
【0017】
ハロゲン不含モノフェノール類は、例えば、ハロゲン置換基を有さない炭素数6〜20の、フェノール;2,6−t−ブチルフェノール、2,6−t−ブチル−4−メチルフェノールなどのアルキル置換モノフェノール;などが挙げられる。
【0018】
ハロゲン不含モノアルコール類は、例えば、ハロゲン置換基を有さない炭素数1〜10の、メタノール、エタノール、 i−プロパノール、t−ブタノール、t−アミルアルコール、 2−ブテニルアルコール、3−ヘキセニルアルコールなどのハロゲン不含脂肪族モノアルコール;シクロヘキシルアルコールなどのハロゲン不含脂環族モノアルコール;ベンジルアルコールなどのハロゲン不含アリール置換脂肪族モノアルコール;などが挙げられる。
【0019】
ハロゲン不含β−ジケトン類としては、例えば、ハロゲン置換基を有さない炭素数5〜12の、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、エチルアセチルアセトンなどが挙げられる。
【0020】
ハロゲン原子を含有する成分(A3)は、(A2)で例示した化合物をハロゲンで置換したものであり、例えば、ハロゲン置換有機モノカルボン酸、ハロゲン置換リン含有有機酸、ハロゲン置換フェノール類、ハロゲン置換アルコール類およびハロゲン置換β−ジケトン類が挙げられる。なかでも、ハロゲン置換有機モノカルボン酸およびハロゲン置換有機リン酸が好ましく、ハロゲン置換有機モノカルボン酸がより好ましい。ハロゲンとしては、通常、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられるが、なかでも塩素が好ましい。
【0021】
ハロゲン置換モノカルボン酸類としては、例えば、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、クロロ酢酸、ヨード酢酸、ジフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、フルオロプロピオン酸、クロロプロピオン酸、フルオロ酪酸、クロロ酪酸などの炭素数2〜12のハロゲン置換脂肪族モノカルボン酸;フルオロ安息香酸、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸、ジフルオロ安息香酸、ジクロロ安息香酸、トリフルオロ安息香酸、トリブロモ安息香酸、トリクロロ安息香酸などのハロゲン置換芳香族モノカルボン酸;フルオロフェニル酢酸、ブロモフェニル酢酸、クロロフェニル酢酸、ヨードフェニル酢酸、ジフルオロフェニル酢酸、ジクロロフェニル酢酸、トリフルオロフェニル酢酸、トリクロロフェニル酢酸などのハロゲン化アリール置換脂肪族モノカルボン酸;などが挙げられる。なかでも、ハロゲン置換脂肪族モノカルボン酸が好ましく、α−ハロゲン置換脂肪族モノカルボン酸がより好ましく、トリクロロ酢酸が特に好ましい。
【0022】
ハロゲン置換リン含有有機酸は、特に限定されないが、下記の一般式(II)で表される。
【0023】
一般式(II)
【化2】
Figure 0004120753
【0024】
(ここで、R及びRの少なくともひとつは、炭素数1〜20を含有する、ハロゲン置換炭化水素基、ハロゲン置換芳香族炭化水素基、ハロゲン置換アルコキシ基、ハロゲン置換フェノキシ基又はハロゲン置換アルキルフェノキシ基を表わす。R又はRが上記の基でない場合は、水素原子又は水酸基を表わす。また、R及びRは、それぞれ、同一の基であっても異なる基であってもよい。)
【0025】
上記一般式(II)で示される化合物の具体例としては、リン酸ビス(フルオロヘキシル)、リン酸ビス(ブロモヘキシル)、リン酸ビス(クロロヘキシル)、リン酸ビス(ヨードヘキシル)などのリン酸ジ(ハロゲン置換アルキル)エステル; リン酸ビス(フルオロフェニル)、リン酸ビス(ブロモフェニル)、リン酸ビス(クロロフェニル)、リン酸ビス(ヨードフェニル)などのリン酸ビス(ハロゲン置換アリール)エステル; ビス(フルオロヘキシル)ホスフィン酸、ビス(ブロモヘキシル)ホスフィン酸、ビス(クロロヘキシル)ホスフィン酸などのビス(ハロゲン置換アルキル)ホスフィン酸;ビス(フルオロフェニル)ホスフィン酸、ビス(ブロモフェニル)ホスフィン酸、ビス(クロロフェニル)ホスフィン酸などのビス(ハロゲン置換アリール)ホスフィン酸;などが挙げられる。
【0026】
ハロゲン置換モノフェノール類としては、例えば、炭素数6〜20の、フルオロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、ヨードフェノール、ジフルオロフェノール、ジクロロフェノール、トリフルオロフェノール、トリブロモフェノール、トリクロロフェノールなどが挙げられる。
【0027】
ハロゲン置換モノアルコール類としては、例えば、炭素数1〜12の、フルオロエタノール、ブロモエタノール、クロロエタノール、ヨードエタノール、フルオロプロパノール、クロロプロパノール、フルオロブタノール、クロロブタノールなどのハロゲン置換脂肪族モノアルコール;フルオロベンジルアルコール、クロロベンジルアルコール、ジクロロベンジルアルコール、トリフルオロベンジルアルコール、トリクロロベンジルアルコールなどのハロゲン化アリール置換脂肪族モノアルコール;などが挙げられる。
【0028】
ハロゲン置換されたβ−ジケトン類としては、例えば、炭素数5〜12の、フルオロアセチルアセトン、ブロモアセチルアセトン、クロロアセチルアセトン、ヨードアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ヘキサブロモアセチルアセトン、ヘキサクロロアセチルアセトン、フルオロベンゾイルアセトン、クロロベンゾイルアセトン、ペンタフルオロベンゾイルアセトン、ペンタクロロベンゾイルアセトン、フルオロエチルアセチルアセトン、クロロエチルアセチルアセトンなどが挙げられる。
【0029】
ランタン系列金属化合物(A)を形成する(A2)と(A3)の結合数比は、(A2):(A3)=1:2、または(A2):(A3)=2:1である。この比が1:2である方が、得られる重合体の1,4−シス結合含量を高くできる点で好ましい。但し、それぞれの結合数比を有する化合物の混合物であってもよい。
【0030】
ランタン系列金属化合物(A)は、例えば、ランタン系列金属(A1)およびハロゲン原子不含の成分(A2)から形成される塩、アルコキシドまたは錯体と、この成分(A2)と比較してより酸性度の高い(具体的には、25℃、水中の酸解離指数pKaがより小さい。)ハロゲン原子を含有する成分(A3)とを反応させて、この成分(A2)の一部を成分(A3)に置換することによって得られる。この反応の過程で未反応で残留する化合物や副生するランタン系列金属化合物(A)以外のランタン系列金属化合物を除去することが好ましいが、本発明の効果を本質的に阻害しない範囲において、これらの不純物を含んでいてもよい。これらの不純物の含有量は、好ましくは50モル%未満、より好ましくは25モル%未満、特に好ましくは10モル%未満である。このランタン系列金属化合物(A)を製造する際には、反応を阻害しない、所望の溶媒を用いることができる。また、反応温度や反応時間は適宜調整すればよい。
【0031】
有機アルミニウムオキシ化合物(B)
本発明における有機アルミニウムオキシ化合物(B)は、アルミノキサンとも言われ、下記一般式(III)または一般式(IV)で示される構造を有する化合物である。
【0032】
一般式(III):
【化3】
Figure 0004120753
【0033】
一般式(IV):
【化4】
Figure 0004120753
【0034】
(ここで、R〜R10は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜10を含有する炭化水素基である。nは0以上の整数であって、好ましくは5以上、上限は好ましくは100、より好ましくは50である。また、R〜R10は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。)
【0035】
一般式(III)及び(IV)における炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、フェニル基などが挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。
一般式(III)及び(IV)におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子又はヨウ素原子が挙げられる。中でも、塩素原子が好ましい。
【0036】
有機アルミニウムオキシ化合物(B)の具体例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、プロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、オクチルアルミノキサン、ヘキシルアルミノキサン、クロロアルミノキサンなどを挙げることができる。
【0037】
有機アルミニウムオキシ化合物(B)は、有機アルミニウム金属化合物と水とを反応させて合成することができる。有機アルミニウム金属化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどが挙げられる。これらの混合物を使用することもできる。
【0038】
上記(A)及び(B)からなる触媒の組成比((B)はアルミニウム原子換算で計算し、モル比で示す。)は、(B)/(A)が好ましくは100〜5,000、より好ましくは200〜2,000である。(B)/(A)が過度に小さい場合は重合活性が低下し、過度に大きい場合は重合活性が低下すると共に、多量の触媒が残留しやすくなる。
【0039】
重合触媒の調製は、特に限定されないが、成分(A)と成分(B)とを、通常、−78〜100℃、好ましくは−20〜80℃にて、通常、1秒〜24時間、好ましくは30秒〜1時間接触させる。この調製の際に、単量体が共存していてもよい。また、使用する触媒構成成分が固体状である場合には、溶媒を使用して調製することが好ましい。ここで使用する溶媒としては、特に限定されないが、炭素数1〜10の鎖状または環状の飽和炭化水素及び炭素数6〜12の芳香族炭化水素が挙げられ、これらはハロゲン原子で置換されていてもよい。
飽和炭化水素としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。ハロゲン原子で置換された飽和炭化水素としては、クロロホルム、メチレンクロライド、ジクロロエタンなどが挙げられる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。ハロゲン原子で置換された芳香族炭化水素としては、クロロベンゼンなどが挙げられる。中でも、ヘキサン、シクロヘキサンが好ましい。
【0040】
本発明において使用する触媒は、触媒の構成成分をカーボンブラック、無機化合物、有機高分子化合物などの担体に担持して使用してもよく、それによって触媒の重合反応器への付着による汚染を防止することができる。
【0041】
無機化合物としては、無機酸化物、無機塩化物、無機水酸化物などが挙げられ、少量の炭酸塩、硫酸塩を含有していてもよい。具体例としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、カルシアなどの無機酸化物及び塩化マグネシウムなどの無機塩化物が好ましく挙げられる。これらの無機化合物は、平均粒子径が5〜150μm、比表面積が2〜800m2/gの多孔性粒子であることが好ましく、通常、100〜800℃で熱処理して水分を除去して担体として使用する。
【0042】
有機高分子化合物としては、側鎖に芳香族環、置換芳香族環、またはヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、ハロゲン原子などの官能基を有するものが好ましく、エチレン、プロピレン、ブテンなどのα−オレフィン単量体単位を有する重合体を化学変性することによって得られる官能基を有する変性α−オレフイン単独重合体及び変性α−オレフイン共重合体並びにアクリル酸、メタクリル酸、塩化ビニル、ビニルアルコール、スチレン、ジビニルベンゼンなどの単量体単位を有する重合体及びそれらの化学変性物などが挙げられる。具体例としては、スチレン−メタクリル酸−ジビニルベンゼンからなるカルボキシ変性架橋スチレン共重合体などが挙げられる。これらの有機高分子化合物は、平均粒子径が5〜250μmの球状粒子の状態で担体として使用することが好ましい。
【0043】
本発明の共役ジエン重合触媒には、さらに、周期律表1〜3、12および13族元素から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物を加えてもよい。この有機金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウム水素化物、有機マグネシウムハロゲン化物、有機アルミニウムハロゲン化物などが挙げられる。
【0044】
有機リチウム化合物としては、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウムなどが挙げられる。有機マグネシウム化合物としては、ジブチルマグネシウムなどが挙げられる。有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどが挙げられる。有機アルミニウム水素化物としては、ジエチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキハイドライドなどが挙げられる。有機マグネシウムハロゲン化物としては、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライドなどが挙げられる。有機アルミニウムハロゲン化物としては、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどが挙げられる。
【0045】
共役ジエン重合体の製造方法
本発明の共役ジエン重合体の製造方法は、上記共役ジエン重合触媒の存在下に共役ジエンを重合するものである。
【0046】
共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。なかでも、1,3−ブタジエンおよび2−メチル−1,3−ブタジエンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
【0047】
本発明の効果を本質的に損なわない限り、共役ジエンと共重合可能なその他の単量体を共重合してもよい。共重合可能なその他の単量体としては、特に限定されないが、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、2−メチル−4,6−ジクロルスチレン、2,4−ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン、1−ブテン、シクロペンテン、2−ノルボルネンなどの炭素数2〜10を含有するモノオレフィン単量体;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの炭素数5〜10を含有する非共役ジエン単量体;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレートなどの炭素数1〜8を含有するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;などが挙げられる。
【0048】
共役ジエン重合触媒の使用量(単量体1モルに対する(A)のモル量で示す。)は、通常、0.01〜100ミリモル、好ましくは0.1〜50ミリモルである。(A)の使用量が過度に少ない場合は、重合活性が低下し、過度に多い場合は得られる重合体の分子量が低下しすぎたり、触媒残渣の除去が困難となる。
【0049】
共役ジエン系重合体の重合方法としては、特に限定されないが、塊状重合法、不活性溶媒中での溶液重合法及びスラリー重合法並びに気相攪拌槽及び気相流動床を使用した気相重合法などが挙げられる。これらの方法の中では、分子量分布を狭くできる点で、溶液重合法が好ましい。また、回分式重合法、連続式重合法ともに採用できる。
【0050】
溶液重合法で使用する不活性溶媒としては特に限定されないが、炭素数1〜10の鎖状または環状の飽和炭化水素及び炭素数6〜12の芳香族炭化水素が挙げられ、これらはハロゲン原子で置換されていてもよい。飽和炭化水素としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。ハロゲン原子で置換された飽和炭化水素としては、クロロホルム、メチレンクロライド、ジクロロエタンなどが挙げられる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。ハロゲン原子で置換された芳香族炭化水素としては、クロロベンゼンなどが挙げられる。中でも、ヘキサン、シクロヘキサンが好ましい。
【0051】
重合温度は、通常、−50〜200℃、好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは20〜90℃である。重合時間は1秒〜20時間程度、重合圧力は0.1〜3MPa程度である。
【0052】
本発明の共役ジエン重合体の製造方法において、重合体の分子量を調節するために、連鎖移動剤を添加することができる。連鎖移動剤としては、1,4−シスポリブタジエンゴムの製造において従来から使用されるものが同様に使用でき、その具体例として、1,2−ブタジエンなどのアレン類、シクロオクタジエンなどの環状ジエン類及び水素などが挙げられる。
【0053】
重合反応の停止は、通常、所定の転化率に達した時点で、重合系に重合停止剤を添加することによって行われる。重合停止剤としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類;塩酸などの無機酸;クエン酸、安息香酸などの有機酸;などが挙げられる。また、これらの重合停止剤は2種類以上の混合物として使用してもよい。
【0054】
重合反応停止後の重合体を回収する方法は、常法に従えばよく、スチームストリッピング法、貧溶媒中で重合体を析出する方法などを用いることができる。重合体を回収するにあたり、回収工程での重合体の劣化防止や重合体の長期貯蔵時における劣化防止の為に、通常使用される老化防止剤を添加してもよい。また、油展ゴムとする為に、予め伸展油を添加することもできる。
【0055】
本発明の共役ジエン重合体の製造方法によって、1,4−シス結合含量が99モル%以上、数平均分子量(Mn)が100,000〜500,000、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2〜3.5である共役ジエン重合体が容易に効率よく得られる。得られた共役ジエン重合体は、樹脂の耐衝撃性改良剤として使用されたり、必要に応じてプロセス油で油展し、カーボンブラック、シリカなどの充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤などを配合して加硫し、機械的強度、耐摩耗性及び低発熱性などの特性が要求される、タイヤ、ホース、ベルト、その他の各種工業用品などのゴム製品に使用される。また、必要に応じて、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、他のブタジエンゴムなどの他の合成ゴム、および天然ゴムとブレンドして使用することもできる。
【0056】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、以下において、部および%で表記したものは、断りがない限り、重量基準である。
【0057】
重合体の分析方法
ブタジエン重合体の1,4−シス結合含有量は、H−NMR分析と13C−PST−NMR分析により決定した。
分子量分布(Mw/Mn)はゲル浸透クロマト法(GPC分析法)によって決定した。具体的には、カラムとして東ソー社製GMHを2本連結したものを用い、テトラヒドロフランを溶離液として、標準ポリブタジエン試料(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて作成した校正曲線に基づいて、重合体のMwおよびMnを求め、決定した。
【0058】
(製造例1)
トリバーサチック酸ネオジム塩の製造
水酸化ナトリウム0.8g(20mmol)を溶解した水溶液15mlにバーサチック酸(バーサチック−10:シェル製)3.5g(20mmol)を添加して、バーサチック酸ナトリウム塩水溶液を調製した。塩化ネオジム4g(16mmol)を溶解した水溶液に、強攪拌しながら上記のバーサチック酸ナトリウム塩水溶液を滴下すると、青紫色の粘稠物が生成する。この粘稠物を充分に水洗した後、乾燥してトリバーサチック酸ネオジム塩を得た。
【0059】
(製造例2)
トリ(トリクロロ酢酸ネオジム塩の製造
酸化ネオジムを当量のトリクロロ酢酸を含有する30%水溶液中に加え、一晩反応させたのち、反応混合物をろ過し、ろ液を減圧下で溶媒留去した。その後、得られた固体をエーテルで洗浄し、160℃で減圧下3時間乾燥することによりトリ(トリクロロ酢酸ネオジム塩を得た。アルセナゾIII法による純度は、97.9%であった。
【0060】
(実施例1)
ビス(トリクロロ酢酸)(バーサチック酸)ネオジム塩の製造
トリバーサチック酸ネオジム塩10g(15.2mmol)を溶解したトルエン溶液30mlに、80℃に加温しながら、トリクロロ酢酸5.07g(31mmol)を溶解したトルエン溶液30mlを滴下し、滴下終了後、さらに6時間攪拌しながら後反応した。その後、トルエンを留去して得られた赤紫色のペースト状物に、n−ヘキサン200mlを加えて溶解した。この溶液を静置することによって析出する赤紫色固体を濾別し、十分水洗し、乾燥した。この赤紫色固体をジエチルエーテルで溶解・再結晶して、白色のビス(トリクロロ酢酸)(バーサチック酸)ネオジム塩を得た。得られたビス(トリクロロ酢酸)(バーサチック酸)ネオジム塩の、アルセナゾIII法によるネオジム含有率は22.0%(理論計算値は22.5%)であり、硝酸銀滴定による塩素含有率は37.2%(理論計算値は33.1%)であった。
【0061】
ブタジエン重合体の製造
耐圧ガラスアンプルに、ビス(トリクロロ酢酸)(バーサチック酸)ネオジム塩0.009mmol、シクロヘキサン36gおよび1,3−ブタジエン4gを仕込んだ。次いで、トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムの混合物から調製されたアルミノキサン(MMAO:東ソー・アクゾ社製)のn−ヘキサン溶液をアルミニウム原子換算で9mmolに相当する量加え、50℃にて50分重合した後、少量のメタノールを加えて反応を停止した。
その後、得られた重合体溶液を、老化防止剤を含有する大量の酸性メタノール(塩酸を2%含有するメタノール溶液)に加えて、重合体を析出させた。重合体を濾別し、乾燥してブタジエン重合体を得た。得られたブタジエン重合体の、1,4−シス結合含量、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)を測定し、結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
ブタジエン重合体の製造において、ビス(トリクロロ酢酸)(バーサチック酸)ネオジム塩0.009mmolに代えてトリバーサチック酸ネオジム塩0.009mmolを使用した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0063】
(比較例2)
ブタジエン重合体の製造において、ビス(トリクロロ酢酸)(バーサチック酸)ネオジム塩0.009mmolに代えてトリ(トリクロロ酢酸ネオジム塩0.006mmolとトリバーサチック酸ネオジム塩0.003mmolとの混合物を使用した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例3)
ブタジエン重合体の製造において、ビス(トリクロロ酢酸)(バーサチック酸)ネオジム塩0.009mmolに代えてトリ(トリクロロ酢酸ネオジム塩0.003mmolとトリバーサチック酸ネオジム塩0.006mmolとの混合物を使用した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
Figure 0004120753
【0066】
トリバーサチック酸ネオジム塩を使用した場合、重合活性に優れるものの、得られたブタジエン重合体の1,4−シス結合含量は低く、また数平均分子量が低く分子量分布も比較的広い。(比較例1)
トリ(トリクロロ酢酸ネオジム塩とバーサチック酸ネオジム塩とを混合して使用した場合、重合活性は低下し、得られたブタジエン重合体の1,4−シス結合含量がやや高くなるが、その数平均分子量は低く、分子量分布も比較的広い。(比較例2および3)
【0067】
これらに比べて、本願発明のビス(トリクロロ酢酸)(バーサチック酸)ネオジム塩を使用した場合、重合活性は比較的高く、好適な分子量と適度な分子量分布を有するブタジエン重合体が得られ、その1,4−シス結合含量は極めて高い。(実施例1)
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、1,4−シス結合含量が高く、かつ、適度な分子量分布及び好適な分子量を有する共役ジエン系重合体を製造し得る新規な共役ジエン重合触媒および共役ジエン重合体の製造方法が提供される。

Claims (3)

  1. ランタン系列金属化合物(A)および有機アルミニウムオキシ化合物(B)とからなる共役ジエン重合触媒であって、ランタン系列金属化合物(A)がランタン系列金属(A1)とハロゲン不含有機モノカルボン酸(A2)とハロゲン置換有機モノカルボン酸(A3)とから形成される塩であることを特徴とする共役ジエン重合触媒。
  2. ランタン系列金属(A1)およびハロゲン不含有機モノカルボン酸(A2)から形成される塩と、ハロゲン置換有機モノカルボン酸(A3)とを反応させて、前記成分(A2)の一部を前記成分(A3)で置換したランタン系列金属化合物(A)を得る工程と、該化合物(A)と有機アルミニウムオキシ化合物(B)とを接触させる工程とからなる請求項1記載の共役ジエン重合触媒の製造方法。
  3. 請求項1記載の共役ジエン重合触媒の存在下で、共役ジエンを重合することを特徴とする共役ジエン重合体の製造方法。
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