JP4120420B2 - モータ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は突極性を有する交流モータを高性能に制御するモータ制御装置に係り、特に磁極位置センサなしで前記モータを制御するモータ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開2001−169590号公報
同期モータの速度やトルクを制御するためには、磁極位置を検出するか、あるいは推定する必要がある。その検出した磁極位置に基づいて電流制御あるいは電圧制御を行うことで、同期モータのトルクや速度を制御することができる。近年、この磁極位置を位置検出器で検出することなく、同期モータを制御する磁極位置センサレス制御方式が提案されている。先行技術として、例えば前記特許文献1がある。これは交流モータを駆動するための印加電圧に加えて、位置検出を行うための検出用電圧を重畳し、検出用電圧に対する電流変化状態や変化方向により回転子位置を推定検出するものである。
【0003】
この磁極位置推定方法の推定原理は、次の原理に基づいている。すなわち、突極性を有する交流モータは回転子の位置によりインダクタンスが異なるため、電流変化状態や電流差分ベクトルを検出することによって、回転子位置を推定することができる、というものである。例えば、磁石埋め込み型同期モータの場合は、磁石を埋め込んだ磁極方向(d軸方向)はインダクタンスが最小となる。それに対して電気的に直交するq軸方向のインダクタンスは最大となる。
【0004】
そこで、制御装置が推定する磁極位置方向(dc軸方向)が、実際のd軸方向と異なる場合について述べる。dc軸方向に検出用電圧を印加すると、それに対する電流差分ベクトルが発生する。この電流差分ベクトルの方向は、dc軸方向より、電流が流れやすい方向、つまり、インダクタンスが最小となるd軸方向に近づく。その電流差分ベクトルの方向を次のdc軸方向に設定して、その方向に検出用電圧を印加すると、さらに電流差分ベクトルはd軸方向に近づく。dc軸がd軸と数10°異なっている場合でも、このように推定を繰り返し、数回のサンプリング演算でdc軸はd軸に一致することができる。この方法を用いることにより、磁極位置センサを設けることなく、短時間で回転子位置を推定できるので、安価で高性能の交流モータの制御装置を提供することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記先行技術の方法では、次のような問題が発生する場合があることがわかった。交流モータの負荷が増大すると、回転子電流が増大して電流の流れ方により、部分的に飽和する現象が発生する。つまり、インダクタンスが最小となる回転子の位置がd軸方向から電流ベクトルの方向に少し移動してしまう。そのため、上記のように、交流モータの負荷が大きくなると、インダクタンスが最小となる位置をd軸として推定しようとした場合に、正しい磁極位置を推定することができないことがある。すなわち、発生するモータトルクに比較して、大きな電流が流れてしまうことになる。したがって、電流による損失が増加し、結局駆動効率が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、突極性を有する交流モータを磁極位置センサなしで高性能に制御するシステムにおいて、モータの負荷状態や電流の流れ方にしたがって、推定磁極位置を補正し、できるだけ正確な磁極位置を推定することにある。したがって、所定のモータ電流により適正なモータトルクを発生させ、高効率運転を実現することができる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題は以下の手段によって解決することができる。
【0008】
突極性を有する交流モータと、前記交流モータに電圧を印加する電力変換器とを有し,前記印加電圧を磁極位置センサなしで制御する制御装置を有するモータ制御装置において、前記モータ制御装置は、前記交流モータのd軸電圧指令値に対して前記交流モータの回転子位置検出用電圧を重畳する手段と、前記重畳した位置検出用電圧に対する前記モータの電流変化から前記交流モータの回転子位置を検出する手段と、前記交流モータのトルク指令値に応じて前記検出された回転子位置の補正量を求める手段とを備え前記補正量により補正された回転子位置に基づいてモータの電流制御あるいは電圧制御をおこなうことに特徴がある。
【0009】
また、前記回転子位置の補正量を求める手段は、前記モータトルク指令値が大きいとき前記補正量が大きくなる補正量を求める手段であること。また、前記回転子位置の補正量を求める手段は、前記モータトルク指令値とモータ速度から前記補正量を求める手段であること。また、前記回転子位置の補正量を求める手段は、前記モータ速度が大きいとき補正量が小さくなる補正量を求める手段であること、に特徴がある。
【0010】
また、突極性を有する交流モータと、前記交流モータに電圧を印加する電力変換器と、印加電圧を磁極位置センサなしで制御する制御装置を有するモータ制御装置において、前記モータ制御装置は、前記交流モータの印加電圧に前記交流モータの回転子位置検出用電圧を重畳する手段と、前記重畳した位置検出用電圧に対する前記モータの電流変化から前記交流モータの回転子位置を検出する手段と、前記交流モータのd軸q軸電流あるいはd軸q軸電流指令値から前記回転子位置の補正量を求める手段とを備え、前記求められた補正量により補正された回転子位置に基づいてモータの電流制御あるいは電圧制御をおこなうモータ制御装置に特徴がある。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、突極性を有する交流モータと、該交流モータへの印加電圧を磁極位置センサなしで制御する制御装置を備え、前記制御装置が前記印加電圧にモータの回転子位置検出用電圧を重畳し、位置検出用電圧に対する電流変化から前記交流モータの回転子位置を検出するとともに、前記交流モータのトルク増加に従って、前記検出した回転子位置を補正する。例えば、突極性を有する同期モータにおいて、印加電圧ベクトルVrに検出用電圧ベクトルを重畳する方法として、搬送波の半周期毎に正の検出用電圧ベクトル+Vs/2と負の検出用電圧ベクトル−Vs/2を重畳する(ここで、その搬送波一周期の間は印加電圧ベクトルVrを一定とする)。このとき、モータ電流を検出し、半周期毎の電流差分ベクトルを求める。次に、印加電圧ベクトルVrを一定とした搬送波一周期の間における2回の電流差分ベクトルの差(以下、電流差分ベクトルΔiとよぶことにする)を演算する。この電流差分ベクトルΔiが検出用電圧ベクトルVsに対する電流変化状態である。ここで、この電流差分ベクトルΔiの位相θcoを求める。
【0012】
また、モータのトルク指令τrとモータ速度ωmから、回転子の部分的磁気飽和により発生する補正位置Δθを算出する。このΔθを位置補正量として、位相θcoに加算することにより、実際の回転子の磁極位置θを求める。以上のような方法により、制御装置のdc軸方向の位相θcが磁極位置の方向(d軸)となるので、より精度の良い推定磁極位置を用いて磁極位置センサレス制御を行うことができる。これにより、適正な電流で所定のトルクを発生することができ、高効率のモータ制御を行うことができる。
【0013】
以下、本発明の一実施例を図1により説明する。図1は、高負荷領域でも駆動される突極性を有する同期モータについて、電流センサだけで磁極位置を検出する一実施例を示す構成図である。この実施例は、磁石埋め込み型同期モータ1を制御する場合の構成例を示している。図1は同期モータ1をバッテリー2の直流エネルギーで駆動するモータ制御システムの構成図である。バッテリー2の直流電圧は、インバータ3により3相の交流電圧に変換され、同期モータ1に印加される。
【0014】
この印加電圧はコントローラ4において次のような演算を行って決定される。まず、電流指令値発生部6では、モータが発生すべきトルク指令値τrに対して、d軸電流指令値idr、q軸電流指令値iqrを決定する。ここで、d軸は磁極位置(磁束)の方向、q軸は電気的にd軸に直交する方向を示しており、d-q軸座標系(図2参照)を構成する。同期モータ1において、同じモータ速度ωmで、かつ、同じモータトルクτを発生する条件の下で、idr、iqrの割合を変えることができるが、モータ損失は異なる。そこで、電流指令値発生部6にモータ速度ωmを入力し、モータ速度ωmにおいてトルク指令値τrに対してモータ損失が最も少ない最適な電流指令値idr、iqrを電流指令値発生部6から出力するようにしている。なお、モータ速度ωmは速度検出部16において、後述する磁極位置θの変化量(微分値)から検出している。
【0015】
磁石を有する回転子が回転すると、d-q軸座標系も回転する。そこで、静止座標系(α-β軸座標系)からの位相をθとする。つまり、本実施例は磁極の位相θ(以下、磁極位置θとよぶことにする。)を電流状態から精度良く検出することが目的である。d軸電流とq軸電流を指令値どおりに制御できれば、同期モータ1はトルク指令値τrと一致したトルクを発生することができる。なお、トルク指令値τrは直接その値を指示される場合もあるし、図示していない速度制御演算回路から指令される場合もある。
【0016】
また、電流センサ5u、5vから検出されたU相電流iu、V相電流ivは、搬送波半周期毎に発生する電流検出パルスP1のタイミングにより電流検出部10でサンプリングされ、静止座標系のα軸、β軸の電流 iα、iβに変換される。ここでは、α軸はU相軸と同じ方向とし、β軸はそれに直交する方向として説明する。この実施例では、電流検出部10で検出する電流はU相とV相の2つの相電流iu、ivであるが、W相電流iwはiu、ivから求めることができるので、W相電流iwの検出を省略している。本発明は3相電流をすべて検出する場合にも適用できることは当然である。
【0017】
このα軸、β軸電流 iα、iβは座標変換部11でd-q軸座標系のd軸電流id、q軸電流iqに変換される。電流制御部7では、d軸電流指令値idrとd軸電流idのd軸電流偏差、q軸電流指令値iqrとq軸電流iqのq軸電流偏差を演算し、それぞれの電流偏差に対して比例・積分制御演算によってd軸電圧指令値Vdrと、q軸電圧指令値Vqrを出力する(なお、逆起電力を補償するための制御方法として、モータ速度ωmを用いた非干渉制御を行う方法も提案されている)。ここで、d軸電圧指令値Vdrには検出用電圧手段12により検出用電圧が加算されて、座標変換部8に入力される。また、q軸電圧指令値Vqrはその値が直接、座標変換部8に入力される。この座標変換部8では、磁極位置θcにより静止座標系の3相電圧指令値Vur、Vvr、Vwrを演算する。これらの3相電圧指令値はPWM信号発生部9に入力されている。PWM信号発生部9における演算により、3相のPWMパルスPu、Pv、Pwをインバータ3に出力する。これにより、同期モータ1に印加する電圧が決定される。
次に、図1の実施例における重要な要素である磁極位置を検出する方法について述べる。検出用電圧発生部12、電流差分演算部13、位置検出部14および位置補正部15について説明する。まず、検出用電圧発生部12において、搬送波半周期毎に、dc軸の正方向及び負方向に交互に検出用電圧ベクトルVs/2を重畳するために、一定の正負の検出用電圧を発生する。具体的なベクトル図を図2に示す。図2は電流差分ベクトルを検出して磁極位置を推定するための印加電圧ベクトル、検出用電圧ベクトル、電流差分ベクトルの関係を示すベクトル図である。電流制御部7で演算される電圧指令ベクトルVr(Vdr,Vqr、ここではVdr)に対して、検出用電圧ベクトルは搬送波半周期毎にdc軸正方向の+Vs/2とdc軸負方向の-Vs/2とを交互に繰返す。そのため、実際に座標変換部8に入力される電圧ベクトルは図2に示したVr1とVr2である。
【0018】
これに対して、電流差分演算部13において、電流検出部10で搬送波半周期毎に算出されたα軸電流iα、β軸電流iβが入力されると、その期間の電流の差から、搬送波半周期毎の電流差分ベクトルを求める。ここで、検出用電圧ベクトルを+Vs/2としたときの電流差分ベクトルをΔip、検出用電圧ベクトルを-Vsとしたときの電流差分ベクトルをΔimとする。次に、検出用電圧ベクトルVsに対する電流差分ベクトルΔiをΔipとΔimの差から求める。この電流差分ベクトルΔiのα軸成分Δiα、β軸成分Δiβを位置検出部14に出力する。Δi、つまり、ΔipとΔimの差は、電圧指令ベクトルVr、及び、同期モータ1の逆起電力の大きさに影響されることなく、Vr1とVr2の差である検出用電圧ベクトルVsだけにより決定される。図2に示すように、検出用電圧ベクトルVsをdc軸方向に印加し、それに対する電流差分ベクトルΔiが流れることになるが、このベクトル関係は同期モータ1のインダクタンスの影響を表わしている。
【0019】
位置検出部14では、電流差分ベクトルΔiのα軸成分Δiα、β軸成分Δiβからその位相θdiを求める。この位相θdiをそのまま磁極位置としてもよいが、実際には、ノイズの影響を除去するために、フィルタ処理を行い、磁極位置θcoを算出している。この磁極位置θcoに、補正位置Δθを加算することにより、磁極位置θcを求めているが、これは本発明の特徴のひとつである。
【0020】
まず、補正位置Δθがない場合について磁極位置を検出する原理について説明する。磁石埋め込み型同期モータ1の回転子17の構造を図3に示す。図3は磁石埋め込み型同期モータの回転子の構造と、電流ベクトルが小さいときのインダクタンスの変化状態を示す構造図である。この回転子17は極数4極の場合の構造になっており、4つの磁石18a,18b,18c,18dを回転子17の内部に埋め込んでいる。この場合のインダクタンスは磁石のあるd軸方向が最小になり、磁石のないq軸方向が最大になっている。このようなモータの特性を逆突極性とよぶ。また、極数が4極の場合には、機械角180°が電気角360°に相当する。このような同期モータ1に対して、図2に示すように、コントローラ4が推定した磁極の方向(dc軸方向)に検出用電圧ベクトルVsを印加すると、それに対する電流差分ベクトルΔiはdc軸よりもd軸に近い方向のベクトルになる(図2)。
【0021】
この理由は次のように説明できる。d軸のほうがインダクタンスが最小になっているため、d軸方向の電流がq軸方向の電流よりも流れやすい。そのため、実際のq軸電流差分値は印加した検出用電圧ベクトルのq軸成分の割には小さく、d軸電流差分値は印加した検出用電圧ベクトルのd軸成分の割には大きくなる。このような理由により、電流差分ベクトルΔiの位相θdiは検出用電圧ベクトルVsの位相θcから実際のd軸方向に近づく。そこで、次の演算のとき、位相θdiをdc軸方向とすれば、さらに、θdiはd軸方向θに接近する。数回の演算を行うと、θdiはd軸方向θにほぼ一致することになる。これが電流の変化状態から位置検出を行う原理である。なお、極性については、別途、磁気飽和状態から判定する。
【0022】
次に、電流による磁気飽和を考慮した位置補正方法を説明する。図4は磁石埋め込み型同期モータの回転子において、電流ベクトルが大きいときの磁気飽和領域とインダクタンスの変化状態を示している。すなわち、高負荷状態における電流ベクトルiの方向と大きさを回転子17上に示したものである。図3に比べて、図4の場合、負荷が大きくて、電流ベクトルが大きくなっている。このとき、電流ベクトルiの方向を中心に部分的な磁気飽和が起こることを実験的に見出した。図4に電流ベクトルiによる部分的磁気飽和状態を示す。電流ベクトルiが向いているq軸の正方向とd軸の負方向の間(斜線で示した部分)が磁気飽和領域になっている。回転子17において、磁石18が存在する領域の透磁率は空隙と同じなので、インダクタンスが最小になっているが、磁気飽和が発生した領域についても透磁率が空隙に近づく。
【0023】
そのため、透磁率が小さくなっている領域の中心軸はd軸から時計方向に位相Δθo遅れた方向になり、この軸がインダクタンスを最小とする方向になる。また、透磁率が大きい領域は狭くなり、その中心軸であるインダクタンス最大の方向も時計方向に位相Δθo遅れる。この状態を図4に示している。なお、磁気飽和が発生すると、インダクタンスの最大値は磁気飽和がない図3の場合よりは小さくなっている。
【0024】
同期モータ1を高負荷駆動すると、大きい電流が流れ、このような現象が生じる。そこで、電流差分ベクトルにより突極性を利用して回転子の磁極位置を検出する位置センサレス制御システムにおいて、電流ベクトルiの流れ方に応じて、位相ずれΔθoを補償する方法を図1の位置補正部15に示す。位置補正部15には、トルク指令τrとモータ速度ωmを入力している。ここでの処理方法を図5のブロック図に示す。図5は、図1のシステム構成における位置補正部15の演算方法を示すブロック図である。トルク指令τrを入力すると、トルク指令τrが大きくなるに従って、補正位置Δθを増加するように位置補正部15ではテーブル化してもっている。また、モータ速度ωmをパラメータにして、補正位置Δθの大きさを実際の位相ずれΔθoに一致させるようにしている。この補正位置Δθを図1の位置検出部14で得られる磁極位置θcoに加算することにより、図4で示した位相ずれΔθoを補償して回転子17の磁極位置θに合わせることができる。
【0025】
図5では、モータ速度ωmがωm1<ωm2<ωm3のようにωmが大きくなるにしたがって、補正量としての補正位置Δθを減少するような特性にしている。これは、モータ速度ωmが大きいとき、逆起電力を打ち消す弱め界磁制御を行う必要があり、負のd軸電流を大きくして、電流ベクトルiの位相をd軸の負方向に近づけるためである。このため、位相ずれΔθoはモータ速度ωmが増加すると、わずかに小さくなる。図5はこれを考慮した演算を行っている。なお、電流ベクトルiの流し方によっては、モータ速度ωmが増加したとき、補正位置Δθを大きくする場合もある。このような方法を採用することにより、モータのトルクが大きく、大電流を流して部分的磁気飽和が発生する場合にも、モータ電流で精度良く磁極位置を推定できる特徴がある。
【0026】
従来、所定のトルクを発生するとき、位置センサがある場合に比べて、突極性に基づいた位置センサレス制御を行うと、位置ずれにより必要とする電流が大きくなってしまい、モータの損失が増大してしまうという問題があった。これに対して、本発明の場合、実施例により説明したように、位置ずれを補正位置Δθにより補償できるので、位置センサがある場合と同様の電流で、所定のトルクを発生することができる。これにより、高負荷時のモータ損失を低減できる。
【0027】
また、本実施例では、トルク指令τrを用いて位置補正演算を行っているが、実際のトルクを測定してフィードバックしても良い。また、d軸電流、q軸電流の値から推定して、トルク指令τrの代わりに適用することも可能である。また、位置ずれの補償を精度良く行うために、モータ速度ωmも用いているが、簡略化するためには、トルク指令τrだけで補正位置Δθを決定しても良い。
【0028】
図6は、位置補正部の入力、及び、処理方法が図1と異なる実施例を示す構成図である。図6において、位置補正部19には、電流指令部6で得られたd軸電流指令idr、q軸電流指令iqrを入力し、次のような方法で補正位置Δθを演算している。この補正位置Δθに位置検出部14から出力される磁極位置θcoを加算することで、磁極位置θcを求めている。前述したように、電流ベクトルiの流し方により、補正位置Δθの大きさを変える必要があるため、ここでは、電流ベクトルiを制御するためのd軸電流指令idr、q軸電流指令iqrを用いている。図7は、図6のシステム構成における位置補正部19における演算方法を説明するためのブロック図である。
【0029】
まず、ブロック20において、負のd軸方向からの電流ベクトルiの位相θiを求める。この位相は図4に示しているように、負の値になる。また、ブロック21では、電流ベクトルiの大きさを求め、それにゲイン-Gを乗算することにより、比例ゲインkを算出する。この比例ゲインkは、図4における電流ベクトルiの位相θiに対する位相ずれΔθoの割合を与えるものである。従って、ブロック22において、位相θiと比例ゲインkの積を算出することにより、補正位置Δθを算出する。このΔθにより、位相ずれΔθoを補償するものである。つまり、電流ベクトルiの大きさが増加すると、位相ずれΔθoも大きくなるとともに、それを補償する比例ゲインkも大きくなる。従って、実際の磁極位置を精度良く推定することができる。
【0030】
なお、図7に示した処理方法の代わりに、d軸電流指令idr、q軸電流指令iqrを入力して、ニ次元のテーブルを用いて、補正位置Δθを得ることもできる。この場合、より正確に計測した位相ずれΔθoを基に、ニ次元のテーブルを作成することにより、位置推定精度をより向上させることができる。これにより、位置センサ無しでも、与えられたモータトルク指令に対して、最小の電流でトルクを発生し、モータを駆動できるので、高効率化を図ることができる。
【0031】
また、前記図7では、位置補正部19において、d軸電流指令idr、q軸電流指令iqrを入力して補正位置Δθを求めているが、d軸電流id、q軸電流iqを用いても、同様に目的を達成することができる。
【0032】
以上が、本発明の一実施例であり、電流センサだけを用いて同期モータの磁極位置を検出する方法について述べた。同期モータとしては、円筒型のロータ、突極性を持つロータのいずれにも適用できる。また、同期モータの他に、リラクタンスモータでも突極性を利用して本発明を適用することができる。
【0033】
本発明によれば、磁気飽和が発生していない場合だけでなく、磁気飽和が発生するような高負荷運転のときにも、突極性を有する交流モータを、電流センサだけで精度良く回転子位置を検出することができる。したがって、機械的に回転位置を計測する位置センサを用いなくても、制御性に優れ、かつ、損失を低減した同期モータの駆動システムを提供することができる効果がある。
【0034】
このような演算を行うことにより、高負荷時の部分的磁気飽和による位相ずれを補償することができ、常に精度の良い位置検出を行うことができる。これを制御に用いることにより、応答性の良いモータ制御を行うことができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、交流モータが高負荷運転にともなう部分飽和が発生する場合であっても、電流センサだけで回転子位置を精度良く検出することができるので、回転子位置を計測する位置センサを用いなくても、制御性に優れ、かつ低損失の同期モータの駆動システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 高負荷領域でも駆動される突極性を有する同期モータに本発明を適用したときの一実施例を示す構成図である。
【図2】 電流差分ベクトルを検出して磁極位置を推定するための、印加電圧ベクトル、検出用電圧ベクトル、電流差分ベクトルの関係を示すベクトル図である。
【図3】 磁石埋め込み型同期モータの回転子の構造と、電流ベクトルが小さいときのインダクタンスの変化状態を示すである。
【図4】 磁石埋め込み型同期モータの回転子において、電流ベクトルが大きいときの磁気飽和領域とインダクタンスの変化状態を示す図である。
【図5】 図1のシステム構成における位置補正部の演算方法を説明するためのブロック図である。
【図6】 位置補正部の入力、及び、処理方法が図1と異なる他の実施例を示す構成図である。
【図7】 図6のシステム構成における位置補正部19の演算方法を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
1;同期モータ 2;バッテリー 3;インバータ 4;コントローラ 5u,5v;電流センサ 6;電流指令値発生部 7;電流制御部 8、11;座標変換部 9;PWM信号発生部 10;電流検出部 12;検出用電圧発生部 13;電流差分演算部 14;位置検出部 15、19;位置補正部 16;速度検出部 17;回転子 18a,18b,18c,18d--磁石。
Claims (5)
- 突極性を有する交流モータと、前記交流モータに電圧を印加する電力変換器と、前記交流モータへの印加電圧を磁極位置センサなしで制御する制御装置を有するモータ制御装置において、前記モータ制御装置は、前記交流モータのd軸電圧指令値に対して前記交流モータの回転子位置検出用電圧を重畳する手段と、前記重畳した位置検出用電圧に対する前記モータの電流変化から前記交流モータの回転子位置を検出する手段と、前記交流モータのトルク指令値に応じて前記検出された回転子位置の補正量を求める手段とを備え、前記補正量により補正された回転子位置に基づいてモータの電流制御あるいは電圧制御をおこなうことを特徴とするモータ制御装置。
- 請求項1において、前記回転子位置の補正量を求める手段は、前記モータトルク指令値が大きいとき前記補正量が大きくなる補正量を求める手段であることを特徴とするモータ制御装置。
- 請求項1において、前記回転子位置の補正量を求める手段は、前記モータトルク指令値とモータ速度から前記補正量を求める手段であることを特徴とするモータ制御装置。
- 請求項3において、前記回転子位置の補正量を求める手段は、前記モータ速度が大きいとき補正量が小さくなる補正量を求める手段であることを特徴とするモータ制御装置。
- 突極性を有する交流モータと、前記交流モータに電圧を印加する電力変換器と、前記交流モータへの印加電圧を磁極位置センサなしで制御する制御装置を有するモータ制御装置において、前記モータ制御装置は、前記交流モータの印加電圧に前記交流モータの回転子位置検出用電圧を重畳する手段と、前記重畳した位置検出用電圧に対する前記モータの電流変化から前記交流モータの回転子位置を検出する手段と、前記交流モータのd軸q軸電流あるいはd軸q軸電流指令値から前記回転子位置の補正量を求める手段とを備え、前記求められた補正量により補正された回転子位置に基づいてモータの電流制御あるいは電圧制御をおこなうことを特徴とするモータ制御装置。
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