JP4118689B2 - OchrobactrumAnthropi由来のD−ヒダントイナーゼ - Google Patents
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Description
本出願は、2001年4月3日出願の米国仮出願番号60/281150の恩恵を主張するものであり、その内容は引用により全体を本発明の一部とする。
本発明は、D-ヒダントインを対応するD-N-カルバモイル-α-アミノ酸へとエナンチオ選択的に加水分解する、Ochrobactrum anthropi由来の新規D-ヒダントイナーゼ;該酵素をコードしている核酸;該核酸を含む発現ベクター;および該酵素を発現できる宿主細胞に関するものである。
ヒダントイナーゼは5-一置換ヒダントインから対応するN-カルバモイル-α-アミノ酸への変換を触媒する酵素である。この光学的に純粋なN-カルバモイル-α-アミノ酸は、しかる後化学的または酵素的手段によりアミノ酸へと加水分解され得る。この重要なエナンチオ選択性により、それらは、半合成ペニシリンおよびセファロスポリンの製造のための有用な中間体である光学的に純粋なD-またはL-アミノ酸の生成にとって価値あるものとなる。光学的に純粋なN-カルバモイルアミノ酸を生成させるためのヒダントイナーゼの使用は当分野で既知である[Syldatk,C., Muller,R., Siemann,M., Krohn,K., and Wagner,F.(1992)。Biocatalytic production of amino acids and derivatives(D.Rozell and F.Wagner, Ed.) p.75-128 Hanser Publishers, New York]。酵素ヒダントイナーゼはKlebsiella、Corynebacterium、Agrobacterium、Pseudomonas、Bacillus、およびStreptomycesを包含する様々な供給源から単離されている。欧州特許出願EP/0739978 A2は、高温のアルカリ性媒質中で改善された活性と安定性を示す、Agrobacterium tumefaciensから産生されるヒダントイナーゼを記載している。米国特許第5516660号は、D-、L-および/またはD,L-5-一置換ヒダントインからL-α-アミノ酸を生成させることのできるヒダントイナーゼを産生するArthrobacter種の新規標本を開示している。米国特許第5714355号は、親生物の2.7倍までの酵素活性を持つArthrobacter種の突然変異体標本を記載している。PCT公開WO00/58449は、過去に単離されたヒダントイナーゼに比して改善された酵素特性を示す、修飾ヒダントイナーゼを記載している。触媒活性と共に改善されたエナンチオ選択性を示す新たな酵素を単離する必要性が今なお存在する。
本発明は、好ましくは配列番号2に記載の配列または配列番号2と少なくとも80%一致する蛋白の配列を有する、Ochrobactrum anthropi由来の単離精製されたD-ヒダントイナーゼを目的とするものである。
本発明は、Ochrobactrum anthropi由来のヒダントイナーゼの全体または一部をコードしている核酸配列を含む単離された核酸分子に関するものである。Ochrobactrum anthropiの好ましい菌株は、ブダペスト条約の規定の下にAmerican Type Culture Collecion, Rockville, Maryland, U.S.A.に寄託されたATCC202035である。好ましくはこの核酸分子はDNA分子であり、核酸配列はDNA配列である。全てのDNA配列は、左から右への向きが5’から3’に至る通常の方向である式によって本明細書に表記する。本明細書で使用するヌクレオチド塩基の略語は当分野で常套的なものであり、即ち、Tはチミン、Aはアデニン、Cはシトシン、そしてGはグアニンであり;またXはA、T、C、またはGであり、Puはプリン(即ちGまたはA)であり、そしてPyはピリミジン(即ちTまたはG)である。図6(配列番号1)に示すものと実質上同じヌクレオチド配列の全体または一部を有するDNA配列、またはこのDNA配列に対し相補的なDNA配列;または配列番号1もしくはその構成成分とハイブリダイズするDNA配列が、さらに好ましい。好ましくはこのDNA配列は緊縮(ストリンジェント)条件下でハイブリダイズする。緊縮ハイブリダイゼーション条件は、 85%より大きな、 より好ましくは90%より大きな相同性のDNA配列を選択する。緊縮条件下でのDNAのスクリーニングはNature, 313:402-404(1985)に記載の方法に従って実施でき、この内容は引用により本明細書の一部とする。本出願に開示するDNAと緊縮条件下でハイブリダイズできるDNA配列は、例えばこの開示したDNA配列のアレレ変異体であってよく、またはOchrobactrum anthropi中に天然に存在しそれでいて開示したDNA配列に関連しているものであってよく、または他の細菌源から誘導することができる。核酸ハイブリダイゼーションの一般技術はManiatis,T. et al., Molecular Cloning, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.(1982)およびHaymes,B.D. et al., Nucleic Acid Hybridization, a Practical Approach, IRL Press, Washington,D.C.(1985)に開示されており、これらの文献は引用により本明細書の一部とする。ヒダントイナーゼの一部をコードしているヌクレオチド配列(即ちDNA配列)の場合、ヌクレオチド配列が少なくとも約15ヌクレオチドの長さであることが好ましい。
(1) 該配列を含むゲノムDNAまたは相補的DNA(cDNA)からの二本鎖DNA配列の単離;
(2) 該DNA配列の化学合成;および
(3) ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による該DNA配列の合成。
1文字コード 3文字コード
Y Tyr L-チロシン
G Gly L-グリシン
F Phe L-フェニルアラニン
M Met L-メチオニン
A Ala L-アラニン
S Ser L-セリン
I Ile L-イソロイシン
L Leu L-ロイシン
T Thr L-スレオニン
V Val L-バリン
P Pro L-プロリン
K Lys L-リジン
H His L-ヒスチジン
Q Gln L-グルタミン
E Glu L-グルタミン酸
W Trp L-トリプトファン
R Arg L-アルギニン
D Asp L-アスパラギン酸
N Asn L-アスパラギン
C Cys L-システイン
培地1 培地2
麦芽エキス 1% ペプトン 0.3%
酵母エキス 1% グリセロール 4%
ペプトン 1% 麦芽エキス 1%
グルコース 2% 酵母エキス 1%
pH7.0 pH7.0
1.1 Ochrobactrum anthropiの洗浄細胞による連続的変換
トリプチカーゼソイ(pH8.0)斜面培養からOchrobactrum anthropi 1エーゼ量を500mlの標準フラスコ当たり100mlのBPYNH生産培地を入れたフラスコ2個に接種し、37℃で24時間振盪した。
BPYNH生産培地:
0.5%牛肉エキス粉末
0.5%酵母エキス
1%バクト-ペプトン
0.15% NaCl
0.1% ヒダントイン
(pH8.0)
洗浄した細胞の再利用。変換%。
1回目の使用 2回目の使用 3回目の使用
1時間 5時間 24時間 4.5時間 23時間 5時間 23時間
5% 18% 54% 9% 34% 12% 27%
500mlの標準フラスコ当たり100mlのBPYNH生産培地に培養を接種し、37℃で22時間振盪した。細胞を洗浄し、1mlを10X濃度で0.45%食塩水/100mM TAPS pH8.5/10mg/ml DL-p-ヒドロキシフェニルヒダントイン中、28℃、32℃、37℃、および42℃で5時間および24時間インキュベートした。12% TCA 250μlで反応を停止させ、上清を検定した。相対活性を図1に示す。最適な活性は42℃より高い温度で起こる。
培養の洗浄細胞懸濁液0.5mlアリコートを、燐酸緩衝液(pH7.0)中、最終濃度2%のグルタルアルデヒド(G.A.)0.5ml、または燐酸緩衝液中2%のG.A. 0.5mlとアセトン1ml、またはアセトンのみ0.5mlで、室温で10分間処理した。処理した細胞を、0.9%食塩水10ml、次いで食塩水+1mg/ml硫酸アンモニウムで洗浄し、100mM TAPS緩衝液(pH8.5)1mlに再懸濁した。再懸濁した細胞懸濁液を100mM TAPS(pH8.5)中で10mg/mlのD,L-p-ヒドロキシフェニルヒダントインと共に(最終容量800μl)42℃で4時間インキュベートした。12% TCA 200μlで反応を停止させ検定した。
ヒダントイナーゼ活性に及ぼすグルタルアルデヒドとアセトンの効果:
処理 相対活性
対照(緩衝液のみ) 1
グルタルアルデヒド 1.2
グルタルアルデヒド/アセトン 1.2
アセトン 2.8
Ochrobactrum anthropiのグルタルアルデヒド処理細胞濃縮液を使用して、200mM TAPS緩衝液中10mg/ml DL-p-ヒドロキシフェニルヒダントインと共に種々のpHおよび42℃でインキュベーションを行った。一方の実験でpH8.0-8.8の範囲を、そして他方の実験でpH8.8-9.8をカバーした。正常pHに戻すための調節を試料採取時刻および少なくとも30分毎に行った。図2は、活性の至適pHがpH8.8である事を示している。
pHプロフィール研究由来のグルタルアルデヒド処理細胞をpH8.8、9.3および9.8に約4時間維持した。固体を洗浄し、25mM TAPS(pH8.8)および10mg/ml D,L-p-ヒドロキシフェニルヒダントインに再懸濁し、42℃で4時間インキュベートした。結果は、酵素の最大安定性がpH8.8の処理時であることを示した。pHプロフィール研究における活性の至適pH8.8は恐らくpH9.3または9.8よりもpH8.8の場合の方が酵素の安定性が高いことによるものであろう。
アルカリ性pHでのヒダントイナーゼの安定性
pH 相対活性
8.8 1.75
9.3 1.17
9.8 0.62
D,L-p-ヒドロキシフェニルヒダントイン基質は5mg/mlでは完全に溶解しないため、懸濁液を作製し、グルタルアルデヒド処理細胞と共にインキュベートした。インキュベーションは200mM TAPS(pH8.8)中、42℃で6時間実施し、pH調節を少なくとも毎時行って正常に戻した。反応を検定し、生成物をmg/mlで下に記録した。
変換速度に及ぼす基質濃度の効果
基質
mg/ml 30分 60分 2 3/4時間 4時間 6時間 %
変換
5 .56 1.0 1.9 2.1 2.2 40%
10 .75 1.4 3.4 4.0 4.4 40%
20 .82 1.5 4.0 6.2 7.7 35%
50 .95 1.6 4.2 6.3 9.2 17%
ヒダントイナーゼの粗製抽出液を洗浄細胞濃縮液のミクロフルイダイズによって取得した。粗製抽出液とセライトを2容量のアセトンおよび4%グルタルアルデヒドと共にスラリー化することにより酵素をセライト上に固定化し、水洗した。遠心分離により固体を回収したが、これは湿重量1g当たり約0.3IUの活性を持っていた。
酵素的に製造した生成物の旋光性
[α]20D (C=0.5%、50:50水性エタノール)
酵素によるD-N-カルバモイルアミノ酸 -170.80゜
合成によるD-N-カルバモイルアミノ酸 -173.08゜
旋光性の文献値 -175゜
グルタルアルデヒド固定化酵素(9.23g湿重量)を400mM TAPS(pH8.7)20mlに懸濁し、D,L-p-ヒドロキシフェニルヒダントイン400mgを加え、窒素を積層して42℃、130rpmで23時間振盪した。当初pHは4時間ほど低下したが、最終的には安定化し、むしろ僅かに上昇した。最初の6時間は1時間に1回pHを調節して正常に戻し、800μlの試料を採取し、12% TCA 200μlで不活性化し検定した。24時間の時点で酵素固体を水洗し、新たな基質を加え、前と同様にインキュベートしこれを3回連続した。酵素を2回目と3回目の間にH2O中に保存した。
固定化ヒダントイナーゼの再利用
(生成物のmg/ml)
時間 1日目/1回目 2日目/2回目 3日目/3回目
1 1.8 2.8 2.3
2 2.8 - 3.1
3 - 7.1 -
4 5.9 - 5.7
5 - 10.2 -
6 9.2 - 7.8
7 10.4 - 9.4
22 - 10.9 -
23 10.9 - -
ヒダントインの最終的回収率:
1日目 2日目 3日目
273mg(62%) 255mg(58%) 274mg(63%)
2.1 ヒダントイナーゼの精製
トリプチカーゼ大豆3%またはYNH寒天(pH8.0)上の斜面培養を500ml標準フラスコ当たり100mlのYNH培地中に接種し、250rpm、28℃で24時間振盪した。種菌を500ml標準フラスコ当たり100mlのCSH-8培地(pH7.0)中に4%で交雑させ、250rpm、28℃で24時間振盪した(全ブロスの最終pH 〜 7.9-8.1)。
0.15% NaCl 0.5%蔗糖
0.1% ヒダントイン 0.1% ヒダントイン
(pH8.0) (pH7.0)
ゲル濾過クロマトグラフィーは、天然のヒダントイナーゼの分子量がおよそ100000ないし110000ダルトンであることを示した。
調製用未変性ゲル由来の活性バンド溶出液を検定し、BSA標準を用いるPierce Microtiter検定プロトコルにより蛋白を測定した。比活性は蛋白1mg当たり4IUより高いと決定された。
調製用未変性ゲル由来の活性バンド溶出液を低分子量蛋白マーカーを用いてPhast System IEF-PAGEゲル上3-9のpH範囲でランさせ、ゲルを銀染色した。活性バンド蛋白のPIはおよそ4.5と決定した。
53000DaサブユニットのN末端は自動エドマン配列決定により、
Ala-Lys-Val-Ile-Lys-Gly-Gly-Thr-Val-Ile-Thr-Ala-Asp-Arg-Thr-Phe(配列番号3)
と決定した。
3.1 Ochrobactrum anthropi由来の染色体DNAの調製
種菌培地25mlを入れた125mlフラスコ2個にOchrobactrum anthropiの斜面培養を接種した。この培養を1.5%酵母エキス、0.15% NaCl、0.1%ヒダントイン(pH8.0)中、28℃、250rpmで24時間増殖させた。細胞を遠心分離により収穫し、溶菌し、100μg/mlのプロテイナーゼKおよび0.5% SDSを含有するTE(10mM Tris-Cl pH8.0、1mM EDTA)緩衝液中で消化した。この懸濁液を37℃で1時間インキュベートした。次にこのミックスを0.7M NaCl中10% CTAB(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、Sigma H-5882)中65℃で20分間沈殿させ、細胞壁残屑、多糖類、および残存蛋白を除去した(Wilson,K.(1994) Preparation of Genomic DNA from Bacteria, in F.M.Ausubel, R.Brent, R.E.Kingston, D.D.Moore, J.A.Smith, J.G.Seidman, and K.Struhl(Eds.), Current Protocols in Molecular Biology John Wiley & Sons, New York)。混合物を2回、即ちまずクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)、次いでフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)で抽出し、イソプロパノールで沈殿させた。100μg/mlのRNアーゼAを含有するTEにDNAペレットを溶解し、22℃で16時間インキュベートした。2回目のプロテイナーゼK/SDS消化を行い、有機抽出とエタノール沈殿化を反復した。DNAをTEに溶解した。DNA濃度を260nmで分光測光的に測定した。
Applied Biosystems 391 DNAシンセサイザーPCR-MATEを用いてN末端アミノ酸配列(上記実験の項2.5)から4個の17量体変性オリゴヌクレオチドプローブを合成し(図3)、γ[32P]ATP(Amersham AH9968)で末端標識し、制限エンドヌクレアーゼBamHI、EcoRI、およびHindIIIで消化したO.anthropi染色体DNAのサザンブロット(Southern,E.M. 1975, J.Mol.Biol. 98:503-517)をプロービングするのに使用した。ハイブリダイゼーションはTMAC溶液(3M TMAC、0.1M Na3PO4、pH6.8、5Xデンハート、1% SDS、100μg/ml変性鮭精子DNA、1mM EDTA)緩衝液中46℃で18時間実施した。TMACはテトラメチルアンモニウムクロリド、Sigma T-3411である。この染色体DNAのHindIII消化物のサザンブロットは6kbと12kbという2個のフラグメントを同定し、これらはN末端オリゴヌクレオチドプローブの1つとハイブリダイズした。O.anthropi染色体DNAをHindIIIで消化し、0.8% SeaPlaque(FMC)調製用アガロースゲルで、TAE(0.40M Tris-酢酸塩、0.002M EDTA)緩衝液中を10ボルトで16時間電気泳動した。5-7Kb DNAフラグメントおよび10-14Kbフラグメントを含むゲル切片を切り取り、Glass Max DNA Spin Cartridge系(BRL)で単離した。このHindIIIフラグメントを、アンピシリン選択マーカーをネオマイシン選択マーカーに交換することにより修飾したpBluescript KS+ファージミドベクター(Stratagene)にライゲーションし、HindIIIで開裂させ、細菌アルカリホスファターゼで脱燐酸化した。このライゲーション混合物を使用して、2.5Kvolt、200オーム、25μFdで電気穿孔することによりE.coli XL1-blue細胞(Stratagene)を形質転換させた。形質転換体を30μg/mlネオマイシンを含有するLB寒天上で選択した。
ゲノムライブラリーのコロニーブロットを作製し、N末端オリゴヌクレオチドプローブでスクリーニングした。各フラグメントから12のクローンをさらなる評価のためにまず選択した。プラスミドDNAを、TELT mini-prep法(He, et al., Nucl.Acids Res., 18:1660(1990))を用いて各形質転換体から単離した。これらのクローンのサザン分析により、プローブとハイブリダイズする2個のクローンを同定した。制限分析により、これら2個のクローンが、同一の13Kb HindIIIフラグメントを同じ向きに含んでいることが確定した(図4)。プライマー伸長およびサザンブロッティングによるこの13Kb HindIIIフラグメントのさらなる分析は、このフラグメント内部のヒダントイナーゼ遺伝子の位置および向きを決定した。この2個のクローンのうち一方から4Kb EcoRVフラグメントを単離し、EcoRVで開裂しておいたpBluescript KS+ファージミドベクターpSTKSN中にサブクローニングし、細菌アルカリホスファターゼで脱燐酸化した。プラスミドDNAを上記と同様に12個のコロニーから単離し、EcoRI消化により分析した。2個のクローンが正しいフラグメントを反対の向きに含んでいると同定された(図5)。これら2個のクローンを活性について検定したところ、一方が、元のOchrobactrum細胞の約2倍量の合計細胞酵素を産生することが示された。4Kb EcoRVフラグメントのヌクレオチド配列決定は、プローブ4に相補的な配列を同定した(配列番号7)。隣接DNA配列の翻訳は、先に決定されたN末端アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を生成した(配列番号3)。
この4Kb EcoRVフラグメント上にコードされているヒダントイナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を、fmol DNAサイクル配列決定系(Promega)を用いるジデオキシ鎖終止法(Sanger, et al., Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A. 74:5463-5467(1977))によって決定した。遺伝子の同定に使用されたN末端オリゴヌクレオチドプローブ(前進および逆)および合成された内部プライマーを使用して、両方の鎖から遺伝子全体を配列決定した。TBE(0.089M Tris-硼酸塩、0.089M硼酸、0.002M EDTA)緩衝液中7M尿素を含有する7% Long Ranger(AT BIOCHEM)ポリアクリルアミドゲル上で、電気泳動を2700ボルトで実施した。完全なヌクレオチド配列を図6に示す。コード領域は1440bp長であり、480アミノ酸蛋白(MW=53kD)をコードしている。これは該酵素の脱グリコシル化型と一致する(上記の実験の項1.5)。該DNA配列の翻訳から決定したN末端蛋白配列は、上記の実験の項2.5で同定した蛋白配列と同一である。
4.1 発現ベクターへのサブクローニング
ヒダントイナーゼ遺伝子のコード領域にPCRで突然変異を起こさせて、コード領域の翻訳開始部位にBamHIおよびNcoI制限部位を、そして該遺伝子の3'末端にBamHI部位を挿入し、発現ベクターへのクローニングを促進させた。以下のプライマーをPCR反応用に合成した:
5'-GGGAACGAGGATCCATGGCAAAGGT-3'(配列番号10)
(BamHIおよびNcoI部位を含む)
5'-AACTCATGCGCGGATCCCGAAGCTG-3'(配列番号11)
(BamHI部位を含む)
PCRフラグメントをBamHIで消化しGlass Max DNA Spin Cartridge系(BRL)でカラム精製した。このフラグメントをBamHIで開裂しておいたpBluescriptファージミドベクターpSTKSNにライゲーションし、細菌アルカリホスファターゼで脱燐酸化した。ライゲーションミックスを用いてE.coli DH5αmcrコンピテント細胞(BRL)を形質転換させた。プラスミドDNAを、上記実験項3.3に記載のように6個のコロニーから単離し、BamHI消化により分析した。クローンのうち5個が正しい組み立て物を含んでおり、これらをNcoI消化によってさらに分析した。5個全てがNcoI部位を持っていた。これらのうち1個を幾つかの発現ベクターへのサブクローニング用に選択した(図7)。このクローンをpKSHY3と命名した。
各宿主から2個のクローンを振盪フラスコ評価のために選択した。制限分析は各々のクローンが正しい組み立て物を含んでいることを確認した。新しい一夜培養を用いて、ネオマイシン選択下に増殖させたTブロス培養25mlに接種した。培養を37℃でインキュベートし、A600が2となるまで増殖させた。零時点を測定し、次いでこの培養に0.4mM IPTGを誘導した。1時間および2時間の時点を採用した。培養を収穫して活性を検定し、還元条件下に20-25mAで電気泳動させた4-20%蛋白勾配ゲル(Enprotech)で、その時点の発現について分析した。蛋白ゲルは、元のOchrobactrum細胞に比較して増大した発現レベルを示す。表7に活性の結果をまとめる。これらの結果に基づき、BL21をさらなるヒダントイナーゼ発現研究のための最良の宿主として選択した。
試料 湿重量(g/10ml) ヒダントイナーゼ活性(IU/g)
T7-1 0.09 7.5
W3110-1 0.21 3.3
W3110-2 0.18 3.5
BL21-1 0.19 8.0
BL21-2 0.13 8.0
7-1 0.16 4.6
7-2 0.24 4.2
5.1 基質特異性
ヒダントイナーゼ遺伝子を含むE.coli BL21を実施例4.2に記載のように増殖させた。細胞を遠心分離し100mM炭酸緩衝液(pH9.0)で洗浄し、同緩衝液に再懸濁し、超音波処理によって破壊した。この酵素を実施例2に記載のように精製した。精製酵素を種々のヒダントインを基質として基質特異性について試験した。結果を表9にまとめる。
基質 比活性(IU/mg)
ヒダントイン 7.5
ウラシル 1.8
2-チオウラシル N.D.
5-メチルヒダントイン 10.6
5,5-ジフェニルヒダントイン N.D.
ヒドロキシメチル 5,5-ジメチルヒダントイン 5.6
p-ヒドロキシメチルヒダントイン 1.9
D,L ヒダントイン 5-酢酸 1.8
2-チオヒダントイン 4.3
種々の金属イオンを100mM濃度で添加したヒダントインを用いて精製ヒダントイナーゼを検定した。結果を下の表10にまとめる。
金属イオン比活性:
無し(EDTA) 4.8 Mg(II) 5.2
Ca(II) 3.6 Mn(II) 7.1
Co(II) 3.6 Ni(II) 3.6
Cu(II) 1.2 Zn(II) 1.8
Fe(III) 3.8
Fe(II) 9.3
この組換え酵素を実施例1.7で非精製酵素について記載したように固定化した。固定化酵素と精製酵素を種々の温度で検定し、至適温度を決定した。結果を下の表11に示す。
温度 相対活性
固定化酵素 精製酵素
25 73 38
37 100 69
45 100 100
55 93 85
65 94 80
75 82 66
Claims (19)
- 配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードしている配列を含む、単離された核酸分子。
- 請求項1に記載の核酸分子に対し相補的な配列を有する核酸に対し相補的なまたは該核酸とストリンジェントハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズできる配列を有する、単離された核酸分子。
- DNA分子である請求項1に記載の核酸分子。
- DNA分子である請求項2に記載の核酸分子。
- 配列番号1のヌクレオチド配列を有する、請求項3に記載の単離されたDNA分子。
- 配列番号2のアミノ酸配列 を有する、単離されたポリペプチド。
- 請求項1に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
- 複製起点、プロモーター、および転写終止配列をさらに含む、請求項7に記載の発現ベクター。
- 選択マーカー遺伝子をさらに含む、請求項8に記載の発現ベクター。
- 配列番号1のDNA配列を含む、請求項7に記載の発現ベクター。
- 該ベクターがプラスミドである、請求項7に記載の発現ベクター。
- 該プラスミドが、プラスミドhyd13fおよびプラスミドhyd4fという群から選ばれる、請求項11に記載の発現ベクター。
- 請求項7に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
- 請求項8に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
- 請求項9に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
- 真核生物および原核生物という群から選ばれる、請求項13に記載の宿主細胞。
- 請求項13に記載の宿主細胞を該ポリペプチドの発現をもたらす条件下で培養することを含む、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドを生成する方法。
- 5−一置換ヒダントインを、対応するD−N−カルバモイルアミノ酸を形成するのに好適な条件下で、配列番号2に示すD−ヒダントイナーゼ と接触させることを含む、5−一置換ヒダントインを立体選択的に変換する方法。
- 5−一置換ヒダントインがラセミ混合物である、請求項18に記載の方法。
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