JP4117549B2 - 真空レギュレータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療、搬送等の種々の分野で用いられる吸引器、真空搬送機等の真空機器内に設けられ、該機器に作用する真空度を調整する真空レギュレータに関するものであり、さらに詳しくは、主として医療用の吸引器で好適に用いられ部品点数が極めて少なく、分解、洗浄及び組み立てが容易に行えることができる真空レギュレータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の真空レギュレータにおいて、図7に示すようなものがあった(例えば、特許文献1)。図において真空レギュレータである調整器は、一次側に真空ポンプ(図示せず)等の真空発生手段を接続すると共に、二次側に真空機器の動作部(図示せず)を接続し、前記動作部に作用する真空圧を調整する所謂真空調整器として構成されている。調整器の本体であるケーシング101には弁102を構成するポート113及び弁座114が形成されている。ポート113と連通する出口流路103は図示しない真空ポンプと接続され、ケーシング101のポート113と連通する室104にはダイヤフラム105が配置され、このダイヤフラム105によって密閉された二次室117と調整室118とに分割されている。二次室117は接続されている入口流路106を介して前記真空機器の動作部が接続されている。ダイヤフラム105は押さえ部材107によってケーシング101に押圧固定されて二次室117の気密を保持し得るように構成されている。またダイヤフラム105の中心を貫通して弁体115が設けられ、弁体115はダイヤフラム105と押さえ部材107との間に配設されたバネ108によって弁座114側に付勢されており、ねじ部材110の底部120と当接する段部116が形成されている。内部にバネ111を配するねじ部材110はケーシング101内周に螺着されているブッシング109の内周に螺合され、端部には調整ハンドル112が固定されている。
また、その作用は、まず前記真空ポンプから入口流路106を通じて、二次室117へ真空圧が作用し、調整ハンドル112を回転させることにより、回転に伴なってねじ部材110が回転してダイヤフラム105から離隔する方向に移動する。ねじ部材110の移動はばね111を介して弁体115に伝達され、この弁体115が弁座114から離隔して弁102を所定の開度で開放する。これにより二次室117には弁102の開度に応じた真空圧が作用し、入口流路106を介して前記真空機器の動作部に作用するものであった。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−19867号公報(第3−4頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の真空レギュレータでは、前述したように部品点数が非常に多く構造が極めて複雑であった。そのため、特に分解後の殺菌・消毒が必要とされる医療用吸引器の真空圧調整として使用される場合には、分解、洗浄及び組み立てが非常に困難であるという問題が発生していた。
【0005】
本発明は、以上のような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、部品点数が極めて少なく、分解、洗浄及び組み立てが容易に行える真空レギュレータを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の構成は、図1、図2を参照しつつ説明すると、環状凹部10を上部に有する第一弁室6を内部に有し、下部に環状の嵌合突部7を有し、また第一弁室6に連通する入口流路11を有する蓋体1と、蓋体1の上部に螺合され、その下部に設けられた弁体16が第一弁室6の環状凹部10の中央に突出して設けられた環状の支持体12に密封状態で支承されている調圧ねじ2と、上部に蓋体1の嵌合突部7を受容する嵌合凹部18とそれに連続して、真空ラインに接続される出口流路21と連通している底部嵌合凹部20が底部中央に設けられ且つ外気と連通されている第二弁室19を有する本体3と、中央に弁体16と協働して流路制御部24を形成する貫通口22を、周縁部に環状係止部25を有し、外周部27が中央部26より薄肉に形成され、その下面中央に本体3の底部嵌合凹部20に密封摺動可能状態で嵌挿される円筒部29が突出して設けられ、周縁部が蓋体1と本体3とで挟持固定されたダイヤフラム4と、蓋体1の環状凹部10に嵌挿され第一弁室6の天井面とダイヤフラム4上面とで挟持された弾性体5とを具備することを第1の特徴とする。
【0007】
また、ダイヤフラム4がポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと称する)からなることを特徴とした請求項1記載の真空レギュレータであることを第2の特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施態様について図面を参照して説明するが、本発明が本実施態様に限定されないことは言うまでもない。図1は本発明の実施態様を示す真空レギュレータの縦断面図である。図2は図1の分解斜視図である。図3は図1における本体の斜視図である。図4は図1の流路制御部が閉止状態にあるときの縦断面図、図5は図1の真空機器動作部が閉止状態のときに第一弁室に真空圧が生じたときの縦断面図である。図6は本実施態様の使用例の概略図である。
【0009】
図1乃至図3において、1は蓋体であり、内部には上部に環状凹部10を有する第一弁室6が形成され、環状凹部10の中央から突出して環状の支持体12が設けられている。下部には環状の嵌合突部7を有し、嵌合突部7の下端部周側面には径方向に突出した円弧状突起部8が、また嵌合突部7の下端面には内周にテーパ面を有する円環状突起部9が一体的に設けられている。また側面には第一弁室6に連通する入口流路11が設けられている。尚、本実施態様では入口流路11は側面に設けられているが、第一弁室6に連通し操作上支障が無ければ、上面に設けてもよく、特に限定されない。
【0010】
2は蓋体1上部に螺合されている略円柱状の調圧ねじであり、上部に把持部14、把持部14の下から中間部にかけて雄ねじ部15及び下端部にニードル状の弁体16が一体的に設けられている。また調圧ねじ2の雄ねじ部15と弁体16の間の周側面にはОリング17が嵌着され蓋体1の支持体12に密封状態で支承されている。
【0011】
3は本体で、上部に蓋体1の嵌合突部7を受容する嵌合凹部18が設けられている。嵌合凹部18には、上端部に設けられ蓋体1の嵌合突部7と略同径の円孔部31と、円孔部31の径方向に拡張して設けられ蓋体1の円弧状突起部8と略同形状の切り欠き溝32と、切り欠き溝32の下部に全周に亙って設けられ挿入された蓋体1の円弧状突起部8が周方向に回動され本体3と係合するための係合用溝33と、さらに係合用溝33下部に設けられ円孔部31と略同径の嵌着部34が設けられている。また、さらに下面に設けられ外部真空ライン(図示せず)に接続される出口流路21と連通している底部嵌合凹部20が底部中央に設けられ、且つ外気連通路23により外気とを連通されている第二弁室19が嵌合凹部18に連続して設けられている。第二弁室19は後記ダイヤフラム4によって蓋体1の第一弁室6とは密閉状態で隔離されている。また、本体3は蓋体1と後記バイヨネット方式で係合固定されている。尚、本実施態様では出口流路21は本体3の下面に設けられているが、側面に設けても良く、その位置は特に限定されない。
【0012】
4はPTFE製のダイヤフラムで、外周部27は中央部26より薄肉に形成されている。中央部26の中心には、弁体16と協働して流路制御部24を形成する貫通孔22が本体3の出口流路21に連通するように設けられており、また中央部26の上面は平面状に形成されバネ受け部28になっている。一方、中央部26の下面中央には内部に貫通孔22を有する円筒部29が突出して設けられており、その外周側面にはОリング30が嵌着され、本体3の底部嵌合凹部20に密封摺動可能状態で嵌挿されている。また中央部26より薄肉にされた外周部27の外側に位置する周縁部には断面矩形状の環状係止部25が設けられ、蓋体1の円環状突起部9の外周面に嵌合されると共に、本体3の嵌合凹部18の底部となる嵌着部34に嵌着された状態で蓋体1と本体3とで密封挟持固定されている。
【0013】
5は弾性体であるバネであり、フッ素樹脂が被覆してある。蓋体1の環状凹部10に嵌挿され第一弁室6の天井面13とダイヤフラム4のバネ受け部28とで挟持されている。フッ素樹脂被覆は必ずしも必要としないが、フッ素被覆することにより耐薬品性に優れた効果を有する。尚、本実施態様では弾性体にバネ5を用いているが、ベローズ、ゴム等の弾性力を有するものを用いても良く、本実施態様には限定されない。
【0014】
本実施態様におけるダイヤフラム4を除く本体等の各部材の材質はポリ塩化ビニル、ポリプロピレンやその他のプラスチック或いは金属でもよく特に限定されない。またダイヤフラム4の材質はPTFE等のフッ素樹脂が好適に使用されるが、耐薬品性の要求がそれほど厳しくない場合はゴムや金属等を使用しても良い。
本発明は、以上説明したように前記従来技術に比較して部品点数が極めて少ない構成になっている。
【0015】
次に本実施態様の真空レギュレータの作用を図1及び図4乃至図6に基づいて説明する。
【0016】
図4において、事前に、流路制御部24が閉止状態の本実施態様の真空レギュレータの出口流路21に真空ポンプ(図示せず)等の真空発生手段を接続し、入口流路11に閉止状態の真空機器動作部(図示せず)を接続する。
まず、真空ポンプを始動させると、出口流路21内は真空ポンプの能力に応じて減圧される。次に調圧ねじ2を流路制御部24が開放する方向に回動させると、回動に伴なって調圧ねじ2が上昇し同時に弁体16がダイヤフラム4の貫通口22から離間し、流路制御部24が開状態になる。これにより、出口流路21と第一弁室6が連通し、第一弁室6内は減圧される。この時、ダイヤフラム4によって密封状態で第一弁室6と隔離され且つ外気連通路23を介して大気と連通している第二弁室19内の圧力は第一弁室6内の圧力より高くなっていくため、初期偏平状態のダイヤフラム4には上方向の力(大気圧×ダイヤフラム4下面側の大気受容面積)が加わり、その上方向の力の方がバネ5の弾性力より大きくなり始めると、ダイヤフラム4の中央部26と薄肉の外周部27の連絡部分が折曲して山形状に変形し、貫通口22は弁体16に近づいて行き、ついには圧接され、流路制御部24は閉止状態になる。(図5の状態)
【0017】
次に、この状態で閉止状態の真空機器動作部を作動させるために開放させると、第一弁室6内の圧力は、前記状態より高くなり第二弁室19内との圧力の差が小さくなる。そのため、ダイヤフラム4への上向きの力は弱まり、バネ5の弾性力によりダイヤフラム4は偏平状態になり元の位置(図1)に戻る。この時、ダイヤフラム4の貫通口22は弁体16から離間し、流路制御部24の開度は確保され、真空機器動作部に真空圧が作用する。(図1の状態)
真空機器動作部の真空度を目的値に調整する場合は、調圧ねじ2を回動させ、流路制御部24の開度を調整する。これにより真空機器動作部は、真空ポンプの出力及び流路制御部24の開度に応じた真空度でもって対象物に作用する。
次に、本実施態様の真空レギュレータが医療器具、特に患者の喉や気管に付着した汚物等を吸引処理する吸引器等の真空調整用として使用される場合について図6に基づいて説明する。まず真空レギュレータの出口流路21に真空ポンプ35を接続し入口流路11にチューブ37を介して真空機器動作部36内のトラップ39に接続し、トラップ39から延びたチューブ38を用いて患者に付着した汚物等を吸引する。この時患者の状態等に応じた真空度で患者に作用することができ、万が一、チューブ38端部が、患者の皮膚等に直接当たり異常な真空度が作用した場合でも、前記構造を有しているので、バネ5の弾性力に対してダイヤフラム4への上向きの力が大きくなり、流路制御部24が閉止され患者を傷つけることなく、安全に汚物等を吸引できる。
【0018】
次に、図1乃至図3に基づいて真空レギュレータの組み立て方法について説明する。まず、Оリング17が嵌着された調圧ねじ2を蓋体1の上部から螺合していき、調圧ネジ2の先端にある弁体16が蓋体の支持体12の下端部より突出した状態にして、蓋体1の支持体12に密封状態で支承させる。次にバネ5を蓋体1の環状凹部10に嵌挿する。一方、円筒部29にОリング30が嵌着されたダイヤフラム4を、円筒部29を本体3の底部嵌合凹部20に密封摺動可能状態で嵌挿させると共に周縁部の環状係止部25を本体3の嵌着部34に嵌着させることにより本体3に固定する。次に調圧ねじ2を螺合させバネ5が環状凹部10に嵌挿された蓋体1を、ダイヤフラム4が嵌着された本体3の上方から、蓋体1の円弧状突起部8を本体3の切り欠き溝32に嵌合させ係合用溝33の位置まで押え込んだ後、蓋体1を周方向に90度回動することにより蓋体1の円弧状突起部8を蓋体1の係合用溝33に係合させ蓋体1を本体3に固定する。所謂バイヨネット方式により係合固定する。この時ダイヤフラム4の環状係止部25は蓋体1の円環状突起部9に嵌合され、バネ5は蓋体1の第一弁室6の天井面13とダイヤフラム4のバネ受け部28とで挟持されていることは言うまでもない。尚、蓋体1と本体3との固定方法は、本実施態様ではバイヨネット方式によって係合固定しているが、この方法に限定されず、蓋体1下部及び本体3上部にネジ部等を設けることによる螺着固定等その他の方法を用いても良い。このように本実施態様の真空レギュレータは組み立てが極めて容易であり、組み立てに要する工具も一切不要である。
【0019】
一方、分解方法については、上記組み立てとは逆の手順で行えば良く、分解も容易であり、組み立て時と同様に工具も一切不要である。
【0020】
次に本実施態様の真空レギュレータの洗浄について説明する。本真空レギュレータ分解後、各部材をオートクレーブにて滅菌、または温水、薬液による浸漬殺菌・消毒、水蒸気または薬品ガスによる殺菌・消毒等によって洗浄する。洗浄の際、ダイヤフラム4がPTFE製であるため各部材を分別することなく、まとめて洗浄することが可能である。
【0021】
【発明の効果】
本発明は以上の様な構造をしており、これを使用することにより以下の優れた効果が得られる。
1.部品点数が極めて少なく、工具を一切使用することなく、組み立て、分解が極めて容易に行える。特に医療分野においては機器のメンテナンス及び機器の洗浄時間の大幅な短縮が図られる。
2.ダイヤフラムをPTFE製にすると、機器の洗浄の際、各部材を分別することなく、まとめて洗浄することが可能になり、洗浄時間の大幅な短縮が図られる。また、吸引時における汚物等の付着が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様を示す真空レギュレータの開状態を示す縦断面図である。
【図2】図1における分解斜視図である。
【図3】図1における本体の斜視図である。
【図4】図1の閉状態を示す縦断面図である。
【図5】図1において真空機器動作部が閉止状態のときに第一弁室に真空圧が生じたときの縦断面図である。
【図6】本実施態様の使用例の概略図である。
【図7】従来の真空レギュレータを示す部分縦断面図である。
【符号の説明】
1…蓋体
2…調圧ねじ
3…本体
4…ダイヤフラム
5…弾性体(バネ)
6…第一弁室
7…嵌合突部
8…円弧状突起部
9…円環状突起部
10…環状凹部
11…入口流路
12…支持体
13…天井面
14…把持部
15…雄ねじ部
16…弁体
17…Oリング
18…嵌合凹部
19…第二弁室
20…底部嵌合凹部
21…出口流路
22…貫通口
23…外気連通路
24…流路制御部
25…環状係止部
26…中央部
27…外周部
28…バネ受け部
29…円筒部
30…Oリング
31…円孔部
32…切り欠き溝
33…係合用溝
34…嵌着部
35…真空ポンプ
36…真空機器動作部
37…チューブ
38…チューブ
39…トラップ

Claims (2)

  1. 環状凹部を上部に有する第一弁室を内部に有し、下部に環状の嵌合突部を有し、また該第一弁室に連通する入口流路を有する蓋体と、
    該蓋体の上部に螺合され、その下部に設けられた弁体が該第一弁室の環状凹部の中央に突出して設けられた環状の支持体に密封状態で支承されている調圧ねじと、
    上部に前記蓋体の嵌合突部を受容する嵌合凹部とそれに連続して、真空ラインに接続される出口流路と連通している底部嵌合凹部が底部中央に設けられ且つ外気と連通されている第二弁室を有する本体と、中央に前記弁体と協働して流路制御部を形成する貫通口を、周縁部に環状係止部を有し、外周部が中央部より薄肉に形成され、その下面中央に該本体の該底部嵌合凹部に密封摺動可能状態で嵌挿される円筒部が突出して設けられ、環状係止部が該蓋体と該本体とで挟持固定されたダイヤフラムと、
    該蓋体の該環状凹部に嵌挿され第一弁室の天井面と該ダイヤフラム上面とで挟持された弾性体とを具備したことを特徴とした真空レギュレータ。
  2. ダイヤフラムがポリテトラフルオロエチレンからなることを特徴とした請求項1記載の真空レギュレータ。
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