天井板吊持用長尺材は、上述したように天井板を支えるものであるから、構造物としてより高い強度及び耐久強さを有することが求められている。
ところで、上述した特許文献1にかかる従来構成にあっては、図19のように、天井板pを、化粧部材73の支持端部82,82上面で支持するものである。ここで、支持端部82,82の幅寸法が、天井板pの同方向長さに対して極めて短いことから、天井板pは、その自重により中央部分が下方へ撓む傾向にある。このため、天井板pを支持する支持端部82には、前記自重により、その幅方向の外端に向かって徐々に負荷重が増大する傾斜分布荷重(所謂、三角形状の分布荷重)が作用する。そして、この傾斜分布荷重は、支持端部82を介して天井板支持部78にも作用する。本体部材72は、上述したようにハンガーにより上方から吊持されるものであるから、天井板支持部78の基部分に、天井板支持部78を下方へ撓ませようとする負荷が集中する。このような負荷が作用する天井板支持部78を、溝内上部81と支持端部82とが挟持することによって支えているのである。特に、支持端部82は、外側から延成されて天井板支持部78の上面を支持するものであるから、天井板支持部78を支える要である。すなわち、支持端部82,82の、天井板支持部78,78を支持する力が、天井板pの自重を支えるための強度と耐久強さとなっている。さらに、前記した傾斜分布荷重は、静的負荷として作用するだけでなく、振動等によって繰り返し負荷となって作用することもあるから、この繰り返し負荷に耐え得る力(耐久強さ)が、支持端部82,82の、天井板支持部78を支持する力として必要となっている。
このような従来構成の、天井板支持部78を支持する支持端部82は、上述したように、化粧部材73の構成上、金属板の板端部分から形成されており、必然的に一枚板状となる。この一枚板状の支持端部82では、天井板支持部78を支持する力に限界があり、上記した静的負荷及び繰り返し負荷が長期に亘って作用すると、徐々に天井板支持部78を支持する力が低下し、これに伴って耐久強さが顕著に低下する傾向を示す。そのため、天井板pを一層安定して長期的に支持することができるように、この従来構成に比してより高い強度と耐久強さを有するものが求められている。さらに、地震等のように強い振動が生じると、局所的に大きな負荷が瞬間的に作用することから、このような大きな負荷に耐え得る強度と耐久強さも求められている。
本発明は、天井板の自重による静的負荷及び繰り返し負荷に対して、天井板を長期的に安定して支持し得る高い強度と耐久強さを有する天井板吊持用長尺材を提案するものである。
本発明は、上下方向の垂直辺部と、該垂直辺部の上端に設けられた、ハンガーが固着される幅広の係止隆部と、垂直辺部の下端から両外方へ延成された水平係合部とを具備してなる断面逆T字形の吊持杆と、吊持杆の水平係合部下面に被着される支持下辺部と、支持下辺部の両外端から折り返して水平係合部の上面を覆うように内方へ延出し、さらに折り返して外方へ延出して積層することにより形成された二重板構造の支持二重辺部とを備え、支持二重辺部と支持下辺部との間で水平係合部を挟着すると共に、各支持二重辺部の外側端から下方へ延成された側辺部を備えてなる、下方が開口された断面略コ字形の係止梁とを備えたものであることを特徴とする天井板吊持用長尺材である。ここで、天井板吊持用長尺材は、係止梁の支持二重辺部上面で、天井板の側端部を支持するものである。
かかる構成にあっては、吊持杆と係止梁とを別部材とし、吊持杆の両側の水平係合部を、係止梁の支持下辺部とその両側の支持二重辺部とにより狭着することによって、この吊持杆と係止梁とを一体化してなるものである。ここで、係止梁の支持二重辺部は、その二重板構造を、支持下辺部の外端から折り返されて延出された支持第一辺部と側辺部の上端から折り曲げられて延成された支持第二辺部とから構成してなるものであるから、この形態(すなわち、吊持杆の水平係合部をその上側から押さえ付けて狭着した形態)を保持する力が強い。そして、この支持二重辺部の保持力は、上述した従来構成の、化粧部材の一枚板状の支持端部による保持力に比して、著しく向上する。このため、水平係合部に作用する、上述した天井板の自重による静的負荷及び繰り返し負荷に対する強度と耐久強さが向上する。したがって、本構成は、上述した従来構成に比して、天井板を長期的に安定かつ適正に支持し得るものである。さらに、このような支持二重辺部の高い強度と耐久強さは、地震等による局所的な大きな力に対しても、優れた耐性を発揮して、この力によって該支持二重辺部及び水平係合部が変形してしまうことを抑止でき得る。
また、天井板吊持用長尺材は、天井板を支持した場合に、その係止梁が天井に露出するため、係止梁を所定色で塗装された板材から成形すれば、天井の外観を良好に保つことができる。そして、この係止梁は、吊持杆を別部材として成形されるものであるから、吊持杆に、係止梁と同様に塗装された板材を用いる必要がない。したがって、係止梁のみを所定色に塗装した板材から成形すればよく、塗装にかかる作業及びその費用を低減でき得る。
尚、本構成の係止梁にあっては、略矩形状の一枚板を折り曲げ加工することにより得ることができるものである。すなわち、一枚板の幅方向中央部分で支持下辺部が形成され、その外側部分で両側の支持二重辺部が形成され、さらに外側部分で両側の側辺部が形成されたものとして得ることができる。さらに、係止梁の下方に開口された口縁を、両側の側辺部の下端から夫々内方へ延成された口縁部によって構成するようにしても良い。
また、係止梁の支持二重辺部は、その内端を吊持杆の垂直辺部に当接するようにした形態としても良いし、該内端を垂直辺部から所定距離だけ離れるようにした形態とすることもできる。ここで、支持二重辺部は、その内端をできるだけ垂直辺部に近づけた形態とすることにより、水平係合部を支持する面積が増えるから、上述した静的負荷及び繰り返し負荷に対する強度及び耐久強さがさらに向上する。そのため、支持二重辺部は、その幅寸法をできるだけ広くした構成が好適である。
上述した天井板吊持用長尺材にあって、吊持杆の係止隆部が断面矩形環状を成し、その下面に長手方向に沿って形成された上部嵌合溝と、係止梁の支持二重辺部の内端と吊持杆の垂直辺部との間に隙間を成し、該隙間により形成された下部嵌合溝とを備えてなり、上部嵌合溝と下部嵌合溝とに、垂直辺部の側面に係合される連結用板片の上下端部を嵌合させるようにした構成が提案される。
ここで、連結用板片は、二個の天井板吊持用長尺材を、互いの端部同士を突き合わせて直列に連結するために用いられるものである。
かかる構成は、連結用板片を嵌合するための上部嵌合溝と下部嵌合溝とを形成したものであり、連結用板片の上端を上部嵌合溝に係止し、下端を下部嵌合溝に係止することによって、連結用板片を取り付けることができるようになっている。すなわち、連結用板片は、その上端を上部嵌合溝に係入させた後、その下端を、支持二重辺部の上面に当接させ、この状態から、上端を支点として撓ませながら、該下端を上部嵌合溝へ係入させることにより、天井板吊持用長尺材に結合されるようになっている。
本発明にあって、下部嵌合溝は、支持二重辺部と垂直辺部との隙間によって構成されていることから、その溝深さが板材二枚分の板厚となって充分な深さを有している。これは、上述した従来の、化粧部材の支持端部が一枚板状である構成で、同様に形成した下部嵌合溝に比して深い溝形状となる。このため、本構成に、連結用板片を一旦嵌合すれば、前記従来構成に比して、この嵌合状態を維持する作用が高い。これにより、天井板吊持用長尺材の連結を適正かつ安定的に保持することができ、天井板を長期に亘って安定して支持する効果が一層高まる。さらに、地震等により天井板吊持用長尺材に強い力が作用した場合にも、連結用板片による連結状態が解除され難く、天井板を安定して支持する優れた作用効果を維持でき得る。
また、下部嵌合溝の外側溝端は、支持二重辺部の内端である。ここで、この内端は折り返されて形成された部分であるから、その内端外面が内方へ凸となる曲面形状となっている。このため、下部嵌合溝は、上記したように比較的深い溝構造であっても、連結用板片を取り付ける場合に、その下端を嵌合し易くなっている。さらに、外側溝端が曲面形状となっていることにより、振動等によって、連結用板片の下端と接触又は摺動しても、互いに傷つき難くなっている。尚、このような下部嵌合溝の曲面形状は、支持二重辺部により成形されるものであるから、別の加工を行うことなく得られるのである。
また、下部嵌合溝を形成する支持二重辺部は、支持下辺部から内方へ折り返し、さらに、外方へ折り返すことにより形成されるものであるから、その寸法形状が安定して成形される。そのため、その外方へ折り返す内端位置を、所望の位置で安定して設けることができる。これは、支持二重辺部が、係止梁を成形する板材の中央部分から形成される支持下辺部から折り返す加工により形成されることから、例え、この板材の寸法形状にバラツキを有していても、このバラツキが折り返す加工の精度に影響しないためである。したがって、支持二重辺部の内端から形成される下部嵌合溝は、板材のバラツキが影響せず、予め設定された寸法形状で安定して成形され得るのである。
上述した天井板吊持用長尺材にあって、吊持杆が、その水平係合部の、垂直辺部から外方へ所定間隔をおいた部位に、長手方向に沿って上方に突出するリブ部を曲成したものであると共に、係止梁の支持二重辺部が、水平係合部のリブ部より外側の領域を覆うように設けられている構成が提案される。
かかる構成にあって、係止梁の支持二重辺部は、水平係合部のリブ部より外側の領域を支持するため、その幅寸法が制限され、水平係合部を支持する面積が制限される。そのため、本構成は、支持二重辺部が垂直辺部に近接する構成に比して、水平係合部をその上側から押さえ付ける保持力が低下する傾向となる。しかし、吊持杆の水平係合部にリブ部を設けることによって、該水平係合部の剛性と強度とを向上することができるから、総合的に、静的負荷や繰り返し負荷に対する強度や耐久強さを向上することができる。すなわち、水平係合部にリブ部を設けることによって、支持二重辺部の支持面積減少による保持力の低下分を補っている。
そして、本構成によれば、静的負荷や繰り返し負荷に対する強度や耐久性を適正に維持しつつ、係止梁の支持二重辺部を幅方向に短縮化することができる。そのため、係止梁を成形するために要する材料量を低減することができ得る。ここで、本発明にあっては、上述したように、係止梁を所定色で塗装された板材から成形することができるものであるから、該係止梁の成形に要する板材の面積(所謂、原単位)を低減することができ、塗料の使用量を削減することが可能である。したがって、係止梁の成形に使用する板材の原価を低減できるため、総じて天井板吊持用長尺材の製造費用を低減でき、優れた市場競争力を発揮できるという利点を有する。
尚、本構成のリブ部としては、水平係合部の長手方向に沿って連成されている構成や、所定間隔をおいて複数形成されている構成のいずれとすることも可能である。前者の構成は、例えば、水平係合部を、その長手方向に亘って、上方に凸状にもりあげるように屈曲加工することにより成形することができる。一方、後者の構成は、水平係合部の所定部位を上方へ押し上げるように加工することにより成形することが可能である。
また、係止梁の支持二重辺部としては、その内端を、リブ部の外端に当接して設ける構成や、リブ部の外端に近接するように設ける構成とすることにより、水平係合部の支持面積を広くできるため、これら構成を好適に用い得る。尚、支持二重辺部の内端をできるだけ内方位置まで設けるようにするためには、リブ部の外側部分を、水平係合部に対してできるだけ直交する形状となるように形成することが好ましい。
ここで、吊持杆の係止隆部が断面矩形環状を成し、その下面に長手方向に沿って形成された上部嵌合溝を備え、該上部嵌合溝と、垂直辺部と水平係合部のリブ部との隙間により構成した下部嵌合溝とに、垂直辺部の側面に係合される連結用板片の上下端部を嵌合させるようにした構成が提案される。
かかる構成は、上述したように、連結用板片の上端を上部嵌合溝に係止し、下端を下部嵌合溝に係止することによって、連結用板片を取り付けることができる。そして、この連結用板片を、互いの端部同士を突き合わせた二個の天井板吊持用長尺材に取り付けることにより、両者を直列に連結することができる。
本構成は、水平係合部に設けたリブ部により下部嵌合溝を規定するものであるから、該下部嵌合溝の寸法形状を安定して形成することができ得る。また、リブ部は、上述したように、水平係合部を屈曲加工するなどして設けられるものであるから、リブ部の外形を滑らかな形状に成形し易い。そのため、下部嵌合溝は、連結用板片を取り付ける場合に、その下端を嵌合し易くなっている。さらに、外側溝端(リブ部内端)が滑らかな形状であれば、振動等によって、連結用板片の下端と接触又は摺動しても、互いに傷つき難くなる。
尚、下部嵌合溝の深さは、リブ部の高さによって決まる。リブ部を高く形成すると水平係合部の剛性が向上するが、連結用板片を嵌合し難くなる傾向にある。そのため、リブ部の高さを、支持二重辺部の板厚と同等か、又は若干低くなるようにした構成が、好適に用い得る。この構成では、水平係合部の剛性を確保できると共に、連結用板片を嵌合し易く且つ嵌合後に連結状態を充分に保持することが可能である。
本発明の天井板吊持用長尺材は、上述したように、断面略コ字形の係止梁が、断面逆T字形の吊持杆を構成する水平係合部の下面に被着される支持下辺部と、支持下辺部の両外側端から折り返して水平係合部上面を覆うように内方へ延出し、さらに折り返して外方へ延出して積層された支持二重辺部とを備えてなり、支持下辺部と両側の支持二重辺部とにより水平係合部を狭着して、係止梁と吊持杆とを一体化してなるものであるから、支持二重辺部は、その二重板構造によって支持下辺部との間で水平係合部を狭着した状態で保持する力が強く、この保持力により、天井板の自重から生じる静的負荷及び繰り返し負荷に耐え得る高い強度と耐久強さとを発揮する。したがって、上述した従来構成に比して、天井板を長期的に安定かつ適正に支持することができ得る。また、吊持杆と係止梁とを別部材としていることから、係止梁を所定色で塗装された板材から成形するものとすれば、天井板の上方に隠れる吊持杆に係止梁と同じ塗装の材料を用いる必要がなく、塗装作業及びその費用を低減でき得る。
また、吊持杆の係止隆部の下面に長手方向に沿って形成された上部嵌合溝と、係止梁の支持二重辺部の内端と吊持杆の垂直辺部との隙間に形成された下部嵌合溝とに、垂直辺部の側面に係合される連結用板片の上下端部を嵌合させるようにした構成にあっては、下部嵌合溝を比較的深く形成でき、連結用板片の嵌合状態を保持する作用に優れる。そのため、天井板吊持用長尺材の連結状態を安定的に保持でき、天井板を長期に亘って安定して支持する効果に優れる。さらに、この下部嵌合溝は、係止梁を形成する板材の寸法誤差の影響を受けず、予め設定された寸法形状で安定して成形され得る。
また、吊持杆の水平係合部の、垂直辺部から外方へ所定間隔をおいた部位に、上方に突出するリブ部を曲成すると共に、係止梁の支持二重辺部を、水平係合部のリブ部より外側の領域を覆うように設けた構成にあっては、水平係合部の剛性と強度を向上できるため、支持二重辺部による水平係合部の支持面積が制限されても、総合的に静的負荷や繰り返し負荷に対する強度や耐久強さを向上することができる。また、支持二重辺部の幅を短くすることができることにより、係止梁を成形するための板材の原単位と塗料使用量を低減することができため、原価を低減でき、高い市場競争力を発揮することが可能である。
ここで、吊持杆の係止隆部の下面に長手方向に沿って形成された上部嵌合溝と、垂直辺部と水平係合部のリブ部との隙間により構成した下部嵌合溝とに、垂直辺部の側面に係合される連結用板片の上下端部を嵌合させるようにした構成にあっては、下部嵌合溝が、係止梁に関係せずに形成されるため、予め設定された寸法形状で安定して成形され得る。また、下部嵌合溝の外端部を滑らかな形状に成形可能であることから、連結用板片の下端を嵌合し易くなる。さらに、嵌合後、振動などによっても互いが傷つき難くなるため、総じて耐久寿命を適正に維持することができ得る。
実施例1の天井板吊持用長尺材1は、図1〜図3のように、断面逆T字形の吊持杆2と断面略コ字形の係止梁3とが結合されて一体化されてなるものである。
上記した吊持杆2は、長尺状の略長方形のスチール製鋼板から成形されており、その断面形状が中心線に対して鏡面対称となっている。この吊持杆2は、一枚のスチール製鋼板をプレス成形することにより断面逆T字形に加工されてなり、係止隆部12、垂直辺部11、水平係合部13,13とから構成されている。ここで、垂直辺部11は、スチール製鋼板を、その長手方向の中心線に対する両側を部分的に背中合わせとなるように重ねて形成されており、上下方向の二枚板状となっている。係止隆部12は、前記垂直辺部11を構成する二枚の板上端から夫々延成されてなり、スチール製鋼板の中央部分を断面矩形環状に折り曲げ加工されて形成されている。水平係合部13,13は、垂直辺部11を構成する二枚の板下端から夫々外方へ折り曲げられて延出されて形成されている。この水平係合部13,13は、水平方向に沿った平板状を成している。
さらに、吊持杆2の係止隆部12の下面には、垂直辺部11の上端の両脇に、上方へ窪むように形成された上部嵌合溝15が長手方向に沿って設けられている。また、垂直辺部11には、その長手方向端部に、長手方向に窪んだ係着凹部18が形成されている。上部嵌合溝15及び係着凹部18は、後述する連結用板片40の係合に用いられる構成であり、詳しくは後述する。
上記した係止梁3は、長尺状の略長方形のスチール製カラー鋼板から形成されており、その断面形状が中心線に対して鏡面対称となっている。この係止梁3は、一枚のスチール製カラー鋼板をプレス成形することにより断面略コ字形に形成されてなり、支持下辺部21、支持二重辺部22,22、側辺部23,23、口縁部24,24とから構成されてなる。
ここで、支持下辺部21は、カラー鋼板の中央部分から形成され、上記した吊持杆2の水平係合部13下面に被着される平板形状となっている。支持二重辺部22,22は、水平係合部13の上面を覆う支持第一辺部22a,22bと、該支持第一辺部22a,22a上に積層された支持第二辺部22b,22bとの二重板構造となっている。この支持第一辺部22a,22aは、この支持下辺部21の両外端から延出され、水平係合部13の外側端で内方へ折り返されて該水平係合部13の上面を覆うように形成されている。支持第二辺部22b,22bは、支持第一辺部22a,22aの内端から外方へ折り返されて、該支持第一辺部22a,22aと背中合わせとなるように重ねられて形成されている。また、側辺部23,23は、支持二重辺部22,22の各支持第二辺部22b,22bの外側端から夫々下方へ延成されてなる。尚、支持第二辺部22b,22bと側辺部23,23との折曲部分は、上記した支持下辺部21と支持第一辺部22a,22aとの折返部分の外面に密着するように形成されている。また、口縁部24,24は、側辺部23,23の下端から夫々内方へ延成されてなり、カラー鋼板の両側端部から形成されている。そして、この口縁部24,24間が開口しており、係止梁3が下方開口する断面略コ字形となっている。尚、口縁部24,24の内端は、上側に折り返されており、内端が下方から見えないようにしている。
尚、本実施例1にあっては、支持二重辺部22,22の内端と垂直辺部11との間に所定間隔の隙間が形成されており、この隙間により下部嵌合溝16を構成している。
上述した吊持杆2と係止梁3とは、吊持杆2の水平係合部13,13を、その下面に被着される支持下辺部21と各上面を夫々覆う支持二重辺部22,22とによりかしめて狭着することによって、一体化されている。これにより、天井板吊持用長尺材1が形成されている。ここで、本実施例1にあっては、吊持杆2の成形材であるスチール製鋼板に、溶融亜鉛メッキ鋼を用いており、また、係止梁3の成形材であるスチール製鋼板に、所定色で表面塗装されたカラー鋼板を用いている。このように、天井板吊持用長尺材1は、吊持杆2と係止梁3とを別部材として成形するものであるから、天井板pを支持した場合に(図17参照)、天井に露出する係止梁3のみにカラー鋼板を使用することができるのである。
このような天井板吊持用長尺材1の製造工程における、吊持杆2と係止梁3とを一体化する工程について、図4〜6に従って詳細に説明する。
吊持杆2は、長尺状の長方形に切断された溶融亜鉛メッキ鋼板をロール成形加工することにより、上記した断面逆T字形に形成される。尚、この吊持杆2を成形するロール成形加工の工程は、従来と同様に実施でき、詳細は省略する。
一方、係止梁3の成形材であるカラー鋼板30を、長尺状の長方形として準備する。そして、このカラー鋼板30を、図4(A)から図4(B)のように、ロール成形加工によって、その幅方向の中央部分を長手方向に沿った凹溝31に成形する。ここで、凹溝31は、平底状の溝底部31aと、溝底部31aの両側端から略垂直に起立した溝側壁部31b,31bとからなり、溝底部31aの幅寸法が、吊持杆2の水平係合部13,13の総幅寸法より僅かに広くなるように形成している。尚、凹溝31は、その溝底部31aの幅寸法と、溝側壁部31b,31bの高さ寸法とが、ロール成形加工により、常に安定して、精度良く成形される。これは、カラー鋼板30の、寸法形状の許容誤差範囲内でのバラツキに影響されない。
そして、凹溝31の溝側壁部31b,31bの両上端から夫々外方へ延出されている側板部32,32は、図4(C)のように、その各側端を下方へ折り曲げて、口縁部24,24の形状を成形する。このようにして、中間梁体35を得る。尚、この口縁部24は、所定幅寸法で、さらに上方へ折り返して形成される。この折り返した端部で、上記したカラー鋼板30の寸法形状のバラツキを収めるようにしている。
図5(A)のように、中間梁体35に形成された凹溝31の溝底部31a内面に、吊持杆2の水平係合部13,13下面を載置する。その後、図5(B)のように、ロール成形加工によって、凹溝31の溝側壁部31b,31bを夫々内方へ折り畳み、水平係合部13,13上に被着させる。次に、図6(C)のように、側板部32,32を、水平係合部13,13上に被着された溝側壁部31b,31b上に押し付けるようにロール成形加工し、さらに、図6(D)のように、側板部32,32を、溝側壁部31b,31bの外端で下方へ折り曲げる加工を行う。ここで、溝側壁部31b,31bを折り畳む加工と、側板部32,32を溝側壁部31b,31b上に折り付ける加工とによって、吊持杆2の水平係合部13,13をかしめて狭着する。
このように中間梁体35をロール成形加工することによって、吊持杆2と一体化された係止梁3を成形する。この加工により、中間梁体35の溝底部31aが支持下辺部21となり、溝側壁部31b,31bと該溝側壁部31b、31bに積層された側板部32,32の内側部分とが支持二重辺部22,22となり、側板部32,32の外側部分が側辺部23,23となる。こうして、天井板吊持用長尺材1を得る。
このような加工工程にあって、支持下辺部21と支持二重辺部22とは、上記したように、寸法形状を安定して精度良くロール成形加工された、凹溝31の溝底部31aと溝側壁部31b,31bから夫々形成されるようになっているから、カラー鋼板30の寸法形状のバラツキに影響せず、予め定められた所望の寸法形状で安定して精度良く形成され得る。このため、支持二重辺部22,22の内端位置が設定通りに安定して定まり、この内端と吊持杆2の垂直辺部11との隙間によって形成される下部嵌合溝16,16にあっても、その寸法形状が、同様に安定して精度良く形成されることとなっている。尚、本実施例1にあっては、下部嵌合溝16,16の溝幅寸法を、後述する連結用板片40の板厚とほぼ同じ寸法として、該連結用板片40の嵌合した状態を保持する作用効果を高めている。
次に、上述した実施例1の天井板吊持用長尺材1を直列に連結する構成について説明する。
図7に、二個の天井板吊持用長尺材1を連結するための連結用板片40を示す。この連結用板片40には、その中央部分に、板裏側へ突出したフック部41,41が設けられている。そして、このフック部41,41の両側に、嵌合片部42と嵌合爪部43とが夫々設けられている。ここで、嵌合片部42は、その上端を天井板吊持用長尺材1の上部嵌合溝15に嵌合する部位であり、嵌合爪部43は、板表側へ山状に折り曲げられた形状を成し、その上端位置が接合片部42の上端より低くなるように設けられている。また、連結用板片40の下端は、長手方向に沿って嵌合下辺部45として形成されており、天井板吊持用長尺材1の下部嵌合溝16に嵌合される部位となっている。
尚、この連結用板片40には、フック部41,41の左右両側に螺子孔46,46が形成されている。そして、上記した天井板吊持用長尺材1には、連結用板片40が該天井板吊持用長尺材1に取り付けられた状態で、連結用板片40の各螺子孔46,46と対向する位置に、夫々螺子孔19が設けられている(図2参照)。
この連結用板片40を用いて二個の天井板吊持用長尺材1を連結する。一方の天井板吊持用長尺材1の端部に、図8(A)のように、連結用板片40の、その片方のフック部41の外側部分を取り付ける。この取り付け過程としては、図9(A)のように、連結用板片40の嵌合片部42,42の上端を、天井板吊持用長尺材1の上部嵌合溝15に係入して、この上端を支点として嵌合下辺部45を支持二重辺部22上に当接する。この状態から、図9(B)のように、嵌合下辺部45を垂直辺部11方向へ押し付けて、該嵌合下辺部45を下部嵌合溝16へ係入する。その後、連結用板片40を、片方のフック部41が垂直辺部11の係着凹部18に係止されるように横方向に移動させる。
同様に、連結用板片40の、天井板吊持用長尺材1が取り付けられていない片側部分に、図8(B)のように、他方の天井板吊持用長尺材1を取り付ける。その後、連結用板片40の螺子孔46,46と、各天井板吊持用長尺材1,1の螺子孔19,19とを、螺子47,47により螺合する。さらに、連結用板片40の各嵌合爪部43を、垂直辺部11側に押し付けて上方へ延ばすことにより、図9(C)のように、該嵌合爪部43の上端を上部嵌合溝15へ係入させる。このようにして、二個の天井板吊持用長尺材1同士を、互いの端部を突き合わせるようにして直列に連結する。
上述と同様に、所定個数の天井板吊持用長尺材1を順次直列に連結する。このように所定個数連結したものを平行に並べて、隣り合うもの同士に、天井板吊持用長尺材1’を直交するように夫々連結する。これを所定間隔毎に連結することにより、総じて、天井板吊持用長尺材1、1’を格子状に配設する(図17参照)。
ここで、天井板吊持用長尺材1、1’同士を直交する構成について説明する。図10及び図11のように、直列に連結した天井板吊持用長尺材1には、その垂直辺部11の、長手方向の所定位置に、連結孔38が形成されている。この連結孔38は、長手方向の両側部分に、係合溝部38a,38aを備えた形状となっている。さらに、連結孔38の直下で、係止梁3の両側に、部分的に切除された挿入開口39,39が形成されている。一方、この天井板吊持用長尺材1に直交させる天井板吊持用長尺材1’にあっては、その係止梁3’の長手方向端部が、三角状に加工された三角状先端37となっている(図11(B)参照)。この三角状先端37は、連結時に、天井板吊持用長尺材1の挿入開口39に挿入される。
天井板吊持用長尺材1’の端部には、直交連結板片60が結合されている。この直交連結板片60は、図10及び図11のように、天井板吊持用長尺材1’の垂直辺部11と面接触する固持板部61と、上記した天井板吊持用長尺材1の連結孔38に係合するフック部62とから構成されている。ここで、固持板部61は、螺子63,63により、天井板吊持用長尺材1’と螺合されて、該天井板吊持用長尺材1’に固結されている。この直交連結板片60は、そのフック部62を、天井板吊持用長尺材1’の端部から突出するように結合されている。また、フック部62は、板ばねとなっており、その端部に、上記した連結孔38の係合溝部38aと係合する係合端部62aが形成されている。尚、直交連結板片60は、螺子63,63による螺合する構成の他、天井板吊持用長尺材1’にカシメられて結合されるようにしても良い。
図10のように、天井板吊持用長尺材1’に結合された直交連結板片60のフック部62を、直列に連結された天井板吊持用長尺材1の一側からその連結孔38に嵌め込む。ここで、フック部62の係合端部62aが、連結孔38の係合溝部38aに係合すると共に、三角状先端37が挿入開口39に挿入する。同様に、図11のように、別の天井板吊持用長尺材1’のフック部62を、天井板吊持用長尺材1の他側から同じ連結孔38へ嵌め込む。これにより、直列に連結された天井板吊持用長尺材1の両側に、天井板吊持用長尺材1’,1’を直交するように連結できるのである。
このように、直列に連結された天井板吊持用長尺材1を、所定間隔毎に、直交連結板片60が固持された天井板吊持用長尺材1’により連結する。こうして、天井板吊持用長尺材1,1’を格子状に配設する(図17参照)。尚、直交連結板片60が固持された天井板吊持用長尺材1’は、上記した、三角状先端37が形成されていること、直交連結板片60を螺合する螺子63,63の螺子穴(図示省略)を備えている以外は、直列に連結される天井板吊持用長尺材1と同じ構成であり、同じ部位には同じ符号を記し、その説明を省略している。
このように格子状に組み付けられた天井板吊持用長尺材1,1’は、従来と同様に、その係止隆部12にハンガーが固着されて配設される(図17参照)。そして、天井板吊持用長尺材1で囲まれた四角形の開口に夫々天井板pが取り付けられ、多数の天井板が整列状に配設されて室内の天井が構成される。ここで、天井板pは、その四辺の端部がそれぞれ、天井板吊持用長尺材1の支持二重板部22によって支持される(図1参照)。
上記のように構成された天井では、天井板吊持用長尺材1の係止梁3の下面が露出している。この係止梁3は所定色で塗装されたカラー鋼板から成形されているから、天井の外観は良好に保たれる。一方、天井板吊持用長尺材1の吊持杆2は、色塗装されていない溶融亜鉛メッキ鋼板から成形しているが、天井裏に隠れてしまうため、天井の外観に無関係である。すなわち、本実施例1の天井板吊持用長尺材1にあっては、天井裏に隠れてしまう吊持杆2をカラー鋼板で成形する必要がないのである。したがって、カラー鋼板とする塗装作業を軽減し、塗装材料を減少することができるか、又は、比較的高価なカラー鋼板の使用を抑制できるため、総じて製造費用の低減を実現でき得る。
上述したように天井板吊持用長尺材1が格子状に組み付けられて天井板pが配設された状態にあって、各天井板吊持用長尺材1の支持二重辺部22には、天井板pの自重により、該支持二重辺部22の外端に向かって徐々に負荷重が大きくなる傾斜分布荷重が作用する。これは、支持二重辺部22の幅寸法に比して、該幅方向の天井板長さが著しく長いためである。この傾斜分布荷重は、支持二重辺部22を介して吊持杆2の水平係合部13にも作用することから、ハンガーにより上方から吊持されている吊持杆2の、水平係合部13と垂直辺部11とが連成された折曲部分に負荷(応力)が集中し易い。この負荷は、水平係合部13を下方へ撓ませるように作用する。このような負荷が作用する水平係合部13を、支持二重辺部22と支持下辺部21とが挟持することによって支えているのである。
また、上述したように、水平係合部13の上面を支持する支持二重辺部22は、その支持第一辺部22aを支持下辺部21の外端から折り返されて延出されたものとして成形され、かつその支持第二辺部22bを側辺部23の上端から折り曲げられて延成されたものとして成形されているから、水平係合部13を、支持下辺部21と狭着した状態で保持する力が強い。このため、上記した傾斜分布荷重によって水平係合部13を下方へ撓ませようとする負荷が作用しても、この負荷に充分に耐え得る強度を発揮し得るのである。さらに、この構成は、水平係合部13を狭着する保持力に優れた構成であるから、静的な負荷だけでなく、振動等による繰り返し負荷に対する耐久強さ(疲れ強さ)や耐久寿命(疲れ寿命)にも優れている。これにより、天井板吊持用長尺材1は、天井板pが振動する等することにより繰り返し作用する傾斜分布荷重に対しても、充分に耐え得る耐久性を有しているのである。
このように本構成の天井板吊持用長尺材1は、天井板pを安定して長期に渡って支持することができるものである。そして、地震等により局所的に強い応力集中が生じた場合にも、支持二重辺部22の高い保持力によって、水平係合部13の変形を抑止することが可能であり、高い安全性も発揮し得る。尚、本実施例1にあっては、支持二重辺部22の支持第二辺部22bと側辺部23との折曲部分が、支持第一辺部22aと支持下辺部21との折返し部分の外表面に倣って圧着されて形成されていることから、上記した水平係合部13を狭着した状態に保持する力が一層強くなっている。
上述した本実施例1の天井板吊持用長尺材1と比較する構成として、上述した特許文献1で開示された従来構成の天井板吊持用長尺材71を図19に示す。この天井板吊持用長尺材71の化粧部材73は、一枚の金属板を、その塗装面を下にしてロール成形加工することにより成形されたものであるから、本体部材72の天井板支持部(水平係合部)78,78を上方から支持する支持端部82,82は、必然的に一枚板状となっている。そして、この一枚板状の支持端部82,82は、側辺部83,83から折り曲げられて延成されているのみである。この支持端部82,82による天井板支持部78,78を支持する保持力に比して、上述した本実施例1の支持二重辺部22,22では、水平係合部13,13を支持する保持力が著しく高く発揮される。これは、支持二重辺部22,22が、上述したように、その支持第一辺部22a,22a及び支持第二辺部22b,22bをそれぞれ支持下辺部21、側辺部23,23から延成された二重板構造となっているためである。したがって、本実施例1の天井板吊持用長尺材1は、従来構成の天井板吊持用長尺材71に比して、天井板pの自重による生じる静的な負荷及び繰り返し負荷に対する強度及び耐久強さが著しく向上しており、天井板pを安定して長期的に支持する作用効果に優れている。
また、本実施例1の天井板吊持用長尺材1は、支持二重辺部22の内端と垂直辺部11との隙間によって、上記した連結用板片40を嵌合するための下部嵌合溝16を形成したものである。この下部嵌合溝16は、その溝深さが支持二重辺部22を構成する二枚板厚により定まっている。これに対して、上述した従来構成の天井板吊持用長尺材71にあっては、同様に形成された下部嵌合溝86の溝深さが一枚板状の支持端部82により定まる。このため、本実施例1の下部嵌合溝16は、従来構成の下部嵌合溝86に比して、深く形成される。これにより、本実施例1は、従来構成に比して、連結用板片40の嵌合状態を保持する作用に優れ、直列に連結した状態を維持する効果が高い。したがって、例えば地震などが発生した場合に、その震動によって天井板吊持用長尺材1の連結状態が解除されてしまうことを抑止する効果が高い。
ここで、上記した下部嵌合溝16は、その溝外端部が支持二重辺部22の内端部である。支持二重辺部22の内端部は、その支持第一辺部22aから支持第二辺部22bに折り返されて形成されていることから、曲面状の外形となっている。このため、上述したように、連結用板片40を取り付ける際に、その下端を下部嵌合溝16へ係入し易く、また、係入時に下端が下部嵌合溝16の溝外端部により傷つくことを防ぎ得る。さらに、連結用板片40を取り付ける際の、該連結用板片40を横方向へ摺動させる時に、連結用板片40の下端が、下部嵌合溝16の溝外端部と摺り合って傷つくことを防ぐという効果も有る。
この下部嵌合溝16は、上述したように、支持二重辺部22の寸法形状が安定して精度良く成形されるため、同様に、予め設定された寸法形状で安定して成形され得ることとなっている。このため、生産された天井板吊持用長尺材1は、上記した下部嵌合溝16の作用効果を、カラー鋼板30の寸法誤差に影響せず、安定して発揮できるのである。一方、上述した従来構成の天井板吊持用長尺材71では、その下部嵌合溝86が、化粧部材73の支持端部82の内端位置によって定まることとなる。ところが、この支持端部82は、金属板の側端部から成形されるため、金属板の寸法誤差に従って、内端位置がばらついてしまう。すなわち、従来構成では、下部嵌合溝86の溝幅を、所定寸法に安定して成形することが極めて難しいのである。
尚、このような下部嵌合溝16の形態は、本実施例1の支持二重辺部22を成形することにより必然的に形成されることから、溝深さを深くするための特別な加工や、曲面形状とするための特別な加工を行うことなく得られる。すなわち、上記した下部嵌合溝16から生じる作用効果は、係止梁3の構成が有する特有の作用効果である。
さらに、上述した上部嵌合溝15及び下部嵌合溝16は、連結用板片40だけでなく、天井板吊持用長尺材1と室内の壁とを連結するためのL字形の連結用板片(図示省略)を嵌合するものとして用いることもできる。このL字形の連結用板片にあっても、連結用板片40と同様に、その嵌合状態を保持する作用に優れ、室内壁と連結した状態を維持する効果が高い。
一方、上述したように本実施例1にあっては、係止隆部12に上部嵌合溝15を設け、かつ支持二重辺部22と垂直辺部11との隙間を下部嵌合溝16を形成した構成であるが、この他の構成として、例えば、図12のように、支持二重辺部52,52の内端を垂直辺部11に当接するようにした天井板吊持用長尺材51とすることもできる。かかる構成の係止梁53では、その支持二重辺部52,52の水平係合部13を支持する面積が広くなるため、支持二重辺部52,52の、支持下辺部21と共に水平係合部13を狭着する保持力が一層向上し、上記した傾斜分布荷重による静的負荷及び繰り返し負荷に対する強度及び耐久強さがさらに高まる。尚、この構成では、下部嵌合溝が形成されてないことから、別に構成するか、本実施例1と異なる連結構成を用いるものとすることを要する。この図12にあっては、上述した実施例1と同じ構成部材には、同じ記号を示し、その説明を省略している。
実施例2の天井吊持用長尺材101は、図13〜図15のように、断面逆T字形の吊持杆102と断面略コ字形の係止梁103とが結合されて一体化されてなるものである。吊持杆102は、上述した実施例1と同様に、一枚の略長方形のスチール製鋼板を折り曲げ加工するロール成形加工により形成されてなり、係止隆部12、垂直辺部11、水平係合部113,113とから構成されている。
ここで、水平係合部113,113は、垂直辺部11の下端から水平方向に所定間隔をおいた部位に、その長手方向に沿って、上方(係止隆部12側)に突出するリブ部115,115が曲成されている。このリブ部115は、水平係合部113の該リブ部115の内方と外方の部位を同一水平方向に維持したまま、上方に凸状の断面山形となるように屈曲加工することにより曲成されている。このように加工することによって、水平係合部113は、そのリブ部115を除く下面が同一水平面となっている。また、このリブ部115,115と垂直辺部11の下端との間の所定間隔は、上記した実施例1の、係止梁3の支持二重辺部22,22と吊持杆2の垂直辺部11との間の間隔と、同じとなるように設定している。
そして、本実施例2にあっては、リブ部115,115と垂直辺部11の下端との間に形成された隙間により、下部嵌合溝116を構成している。また、このリブ部115,115は、その水平嵌合部113,113の上面からの高さが、後述する係止梁103の支持二重辺部122の上面よりも若干低くなるように形成されている。そして、このリブ部115,115は、その内側部分を比較的緩やかに傾斜する形状となるように形成されており、これによって、下部嵌合溝116に上記した連結用板片40を取り付ける際に、該連結用板片40の下端を係入し易くなっている。
さらに、このリブ部115は、その外側部分を水平係合部113に対してできるだけ直交するような形状(所謂、起立した壁状)となるように形成している。これにより、後述する係止梁103の支持二重片122を、できるだけ内方まで延成することができるため、該支持二重片122による水平係合部113の保持力を向上する効果に優れる。このように、本実施例2にあっては、リブ部115を、その断面形状が略直角三角形の山状となるように形成している。
この吊持杆102は、水平係合部113,113にリブ部115,115を形成した以外は、上述した実施例1と同じ構成であるため、同じ構成要素には同じ符号を記し、その説明を省略している。
一方、上記した係止梁103は、上述した実施例1と同様に、一枚の略長方形のスチール製カラー鋼板を折り曲げ加工するロール成形加工により断面略コ字形に形成されてなり、支持下辺部21、支持二重辺部122,122、側辺部23,23、口縁部24,24とから構成されてなる。ここで、支持二重辺部122,122は、支持第一辺部122a、122bと支持第二辺部122b,122bとが積層されてなる二重板構造となっている。そして、支持下辺部21の両外端から延出されて、水平係合部113,113の外側端で内方へ折り返され、さらに、水平係合部113,113のリブ部115,115の外端に近接する位置で外方へ折り返されて形成されている。すなわち、この支持二重辺部122,122は、水平係合部113,113の、リブ部115,115より外側となる外側領域113a,113aを覆っている。尚、上述したように、リブ部115は、その外側部分をできるだけ直交する形状としていることから、支持二重辺部122の内端の配設位置をできるだけに内側とすることが可能である。これにより、支持二重辺部122による水平係合部113の保持力を可及的に高めることができ得る。
この係止梁103は、支持二重辺部122,122を、水平係合部113,113の外側領域113a,113aを覆うように形成した以外は、上述した実施例1と同じ構成であるため、同じ構成要素には同じ符号を記し、その説明を省略している。
そして、吊持杆102と係止梁103とは、上述した実施例1と同様に、吊持杆102の水平係合部113,113を、その下面に被着される支持下辺部21とその外側領域113a,113aの各上面を覆う支持二重辺部122,122とによりかしめて狭着することによって、一体化されている。さらに、吊持杆102は溶融亜鉛メッキ鋼を用いて成形され、また、係止梁103はカラー鋼板を用いて成形されている。
本実施例2の係止梁103は、上述したように支持二重辺部122,122が水平係合部113,113の外側領域113a,113aを覆うため、上述した実施例1の構成(図1又は別例の図12)に比して、支持二重辺部122の幅が短くなる。すなわち、係止梁103の成形に用いるカラー鋼板は、その幅寸法(支持二重辺部122の幅方向となる寸法)の短いものを使用することができ、原単位(板材の使用面積)を低減できる。さらに、カラー鋼板の製造における、塗料の使用量を低減することができる。このようにカラー鋼板の購入費用または製造費用を低減することができることから、総じて係止梁103の製造費用を低減することができ得る。
尚、本実施例2の天井板吊持用長尺材101の製造工程にあって、吊持杆102と係止梁103とを一体化する工程は、上述した実施例1と同様に行うことができる(図4〜6参照)。ここで、本実施例2にあっては、上述した実施例1に比して、幅寸法の短い長方形のカラー鋼板を用いる。そして、当該カラー鋼板を、その中央部分を凹溝に成形する際(図4(A),(B)参照)に、該凹溝の溝側壁部(図4中の31bに該当)を、その高さ寸法が水平係合部113の外側領域113aの幅寸法と等しくなるように加工形成する。その後、吊持杆102の水平係合部113,113をかしめて狭着するように加工して、該吊持杆102と一体化された係止梁103を成形し、天井板吊持用長尺材101を得る。本実施例2にあって、は、溝側壁部の高さ寸法を変更した以外は、上述した実施例1と同様に成形することができ、詳細については省略する。
本実施例2は、上述した実施例1と同様に加工成形されるものであるから、天井板吊持用長尺材101は所望の寸法形状で精度良く安定して成形され得る。
一方、上記した天井板吊持用長尺材101を直列に連結する構成としては、上述した実施例1と同様に(図8参照)、連結用板片40を、天井板吊持用長尺材101の上部嵌合溝15と下部嵌合溝116とに係入することにより行う。この際に、連結用板片40は、その嵌合片部42,42の上端を、図16(A)のように、天井板吊持用長尺材101の上部嵌合溝15に係入し、嵌合下辺部45を支持二重辺部122上に当接した後、図16(B)のように、上端を支点して嵌合下辺部45を垂直辺部11方向へ押し付けて下部嵌合溝116へ係入する。そして、図16(C)のように、螺子47,47により連結用板片40と天井吊持用長尺材101とを螺合し、さらに、連結用板片40の各嵌合爪部43を、垂直辺部11側に押し付けて上方へ延ばすことにより、該嵌合爪部43の上端を上部嵌合溝15へ係入させる。
ここで、上述したように、下部嵌合溝116の外端部分を構成するリブ部115が、その高さ寸法を支持二重辺部122より若干低く設定していること、およびリブ部115の内側部分を比較的緩やかな傾斜形状としていることによって、連結用板片40の嵌合下辺部45を下部嵌合溝116へ係入し易くしている。
このように、実施例2の天井板吊持用長尺材101を直列に連結する構成は、上述した実施例1と同様であり、その詳細については省略する。また、天井板吊持用長尺材101を直交する構成についても、上述した実施例1と同様であり(図10,11参照)、その詳細については省略する。
そして、上述した実施例1と同様に、直列に連結した天井板吊持用長尺材101を、所定間隔毎に、直交連結板片60が固持された天井板吊持用長尺材101により連結することにより、天井板吊持用長尺材101を格子状として、その係止隆部12にハンガーが固着されて配設される(図示省略)。天井板吊持用長尺材101に囲まれた四角形の開口に、天井板pが、その四辺端部を天井板吊持用長尺材101の支持二重辺部122により支持して、夫々取り付けられる(図17参照)。
この天井板pが取り付けられた状態では、上述したように、該天井板pの自重により、各天井板吊持用長尺材101の支持二重辺部122に、その幅方向で外端に向かって徐々に負荷重が大きくなる傾斜分布荷重が作用する。この傾斜分布荷重により、天井板吊持用長尺材101には、その水平係合部113と垂直辺部11とが連成された折曲部分に負荷(応力)が集中し易く、該水平係合部113を下方へ撓ませるように作用する。
このような傾斜分布荷重に対して、天井板吊持用長尺材101は、水平係合部113を支持二重辺部122と支持下辺部21とが挟持することにより支えている。尚、当然ながら、水平係合部113の剛性および強度によっても支えている。本実施例2の天井板吊持用長尺材101は、上述したように、支持二重辺部122が水平係合部113の外側領域113aを支持している。そのため、上述した実施例1の構成に比して、支持二重辺部122が支持下辺部21を挟持する支持面積が小さくなっており、支持二重辺部122により水平係合部113を保持する力が減少する傾向にある。しかし、水平係合部113は、リブ部115が形成されていることから、上述した実施例1の水平係合部13に比して、その剛性や強度が向上している。これらが組み合わされることによって総合的に、上記した傾斜分布荷重によって水平係合部113を下方へ撓ませる負荷に対して、充分に耐え得る強度を発揮できる。
さらに、本実施例2の天井板吊持用長尺材101は、上述した実施例1と同様に、静的な負荷だけでなく、繰り返し負荷に対する疲れ強さや疲れ寿命にも優れている。したがって、天井板pを安定して長期に渡って支持できると共に、地震等により局所的に強い応力集中が生じた場合にも、水平係合部113の変形を抑止する効果が高く、高い安全性を発揮する。
このように、本実施例2は、水平係合部113の支持面積減少により生じる支持二重辺部122の保持力低減分を、水平係合部113のリブ部115による剛性や強度向上によって補い、上述した実施例1と同様の、静的負荷や繰り返し負荷に対して高い強度と耐久性とを発揮するという、作用効果を有している。
また、本実施例2にあっては、支持二重辺部122の幅寸法を、上述した実施例1の構成(図1又は別例の図12)に比して、短くしている。すなわち、係止梁103を成形するためのカラー鋼板は、その原単位(使用面積)を、実施例1に比して減少することができる。そのため、仮に、カラー鋼板を製造して用いる場合には、スチール製鋼板の使用量と塗料の使用量とを低減することができ、その製造費用を低減することができる。また、カラー鋼板を購入する場合には、その購入費用を低減することができる。尚ここで、カラー鋼板の製造費用または購入費用は、その塗料の費用や優れた塗装技術を必要とすることにより、比較的高額となっている。そのため、カラー鋼板の製造費用や購入費用を低減することは、天井板吊持用長尺材101の製造費用を低減することに対する寄与が大きく、製品の市場競争力を著しく高めることができ得る。
また、本実施例2の天井板吊持用長尺材101は、リブ部115と垂直辺部11との隙間によって、上記した連結用板片40を嵌合するための下部嵌合溝116を形成したものである。そして、リブ部115の突出高さを支持二重辺部122より若干低くしていることから、下部嵌合溝116の溝深さが比較的深く形成される。これは、上述した実施例1の下部嵌合溝16より若干浅いだけであり、従来構成の下部嵌合溝86(図19参照)に比して深く形成されている。これにより、本実施例2にあっても、上述した実施例1と同様に、連結用板片40の嵌合状態を保持する作用に優れ、直列に連結した状態を維持する効果が高くなるため、地震などの震動によって連結状態が解消されてしまうことを抑制でき得る。
ここで、リブ部115は、上述したように、その内端部を滑らかに傾斜する形状としていることから、連結用板片40を取り付ける際に、その下端を下部係合溝116に係入し易くなっている。さらに、この係入時に、リブ部115や連結用板片40の下端が傷つき難い。また、連結用板片40を横方向へ摺動させる時にも、その下端と下部嵌合溝116とが傷つき難くなる。
尚、リブ部115の突出高さは、本実施例と同様の連結用板片40を用いる場合には、該連結用板片40の下端を係入し易いように、支持二重辺部122の厚み以下とする構成が好ましい。ところで、上述したように支持二重辺部122上には天井板pが乗載されるのであるから、リブ部115が支持二重辺部122より高くなると、該天井板pの支持が不安定となり易い。このことから、リブ部115は、支持二重辺部122の厚み以下とすることが、本発明の主旨に適する。
実施例2は、上述したように、水平係合部113を断面山形に屈曲加工することにより長手方向に沿ってリブ部115を形成するようにした構成であるが、その他の構成として、リブ部を長手方向で所定間隔をおいて形成するようにした構成とすることもできる。例えば、所定長さのリブ部を一定間隔毎に断続的に形成した吊持杆を備えた天井板吊持用長尺材とする。このリブ部は、水平係合部に所定形状の金型を押し付けることにより上方へ突出させる加工を行うことによって成形することができる。この構成にあっても、水平係合部の剛性や強度を向上できるため、該水平係合部の外側領域を覆うように係止梁の支持二重辺部を設けることにより、上述した実施例2の構成と同様に、当該天井板吊持用長尺材に作用する静的負荷や繰り返し負荷に対して高い強度と耐久性とを発揮できる。
本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で適宜用いることができる。例えば、実施例1にあって吊持杆2と係止梁3とを一体化する製造工程、実施例2にあって、吊持杆102と係止梁103とを一体化する製造工程は、上記した加工工程以外にも、様々な加工工程により成形可能である。