JP4114441B2 - ターボ分子ポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造装置や分析装置などにおける中真空から高真空領域を形成するために使用されるターボ分子ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
ターボ機構TKの原理を利用して分子、ガス等の排気を行なうターボ分子ポンプは従来より図4に示す構成をなしている。図4において、1はポンプ機台部で中央部上方には固定枠3が垂設され、この固定枠3にモータ2が収容されるとともに下方左側面には排気口7が設けられている。ポンプ機台部1の上方にはターボ分子ポンプTMの主体であるポンプ機構を収容するケーシング5が垂設され、このポンプ機台部1とケーシング5とはそれぞれのフランジ1F、5Fにて気密に接合され一体となっている。
【0003】
モータ2から突出している回転軸4Sに回転体4が固設されている。この回転体4は略円筒体状を呈し、モータ2にて高速回転されるが、その上方部にターボ機構TKが設けられ、下方には円筒部4Tが形成されている。すなわち、回転体4の上方にはその円周部に回転翼Bが一体的に複数段、具体的には上段より下方へ5枚一定の間隔を有して形成され、この回転翼Bに対して、外方のケーシング5の内周面からは、固定翼Tが内方に突出する形で張設されている。
Sはスペーサで、前記固定翼Tを所定間隔で保持しケーシング5内に固定されている。これら回転翼Bと固定翼Tの組み合わせによってターボ機構TKが構成される。
【0004】
他方、この回転体4の下方における円筒部4Tの外周はポンプ機台部1側に固定された固定翼Tの固定支持体であるステータリング9の内周面に近接し、この両者の組み合わせによりねじ溝ポンプNPが構成されている。このねじ溝ポンプNPはドラッグポンプとして機能する。すなわち、ステータリング9には、ねじ溝Nが形成されている。しかも、このねじ溝Nは図示のとおり、下方になるにつれてその深さが浅くなる円錐状をなし、粘性流にて分子を引き込み排気する。こうしてターボ機構TKとねじ溝ポンプNPの協働によって吸気口6からのガス分子が圧縮され下方の排気口7より排出される。Fは吸気口6側のフランジで、ケーシング5と気密状態で一体化されており、被排気側たとえば半導体製造装置における反応室(図示せず)などに接合される。あるいはダクト(図示せず)を介して接合される。
【0005】
図4に示すターボ分子ポンプTMは、ターボ機構TKによるポンプ機構とねじ溝機構によるポンプ機構を有機的に結合したもので、通常ハイブリッド形ターボ分子ポンプと称されている。もちろんこのようなハイブリッド形でないターボ機構TKのみからなるターボ分子ポンプも提供されている。
【0006】
回転体4および回転翼Bは分子を排気するためにモータ2にて通常数万rpmの回転数で回転駆動される。したがって、磁気軸受8は耐久性を高めるため非接触形の磁気軸受が採用される。具体的には電磁石方式の磁気軸受が組み合わされ、電力供給とその供給量の制御が行なわれるようになっている。また固定翼Tを積層状に固定保持する各スペーサSの幅は、図示のとおり吸気口6側は大きく、排気口7側になるにつれて幅が小さく設定されている。このようにターボ分子ポンプTMにおいては、ターボ機構が軸芯方向に一定距離を有して配設され、またハイブリッド形の場合は、さらにねじ溝ポンプ機構を配設する関係で円筒部を有し軸長が大きく構成されている。
【0007】
ターボ分子ポンプTMの内部構成は以上詳述したとおりであるが、ターボ機構TKを回転駆動させて作動させるモータ2や電磁石等が備えられており、これらモータ2ならびに磁気軸受8への電力供給を行なう電源装置が、ターボ分子ポンプTMの外部装置として組み合わせられる。
図5はこの関係を示す従来の構成図で、ターボ分子ポンプTMへの電力供給は電源装置ESよりケーブルD1を介して行なわれるようになっている。すなわちC1はケーブルD1の一端に接続されケーブルD1をターボ分子ポンプTMの接続器CPに電気的に接続させるためのプラグであり、C2はケーブルD1の他端側に接続され電源装置ESに接続するためのプラグである。またケーブルD2は電源部(図示せず)からの電力を電源装置ESに供給するもので、一端には電源装置ESに電気的接続を行ない得るプラグC3が取り付けられ、他端には電源部に接続される接続器C4が取り付けられている。なお、図5におけるターボ分子ポンプTMの外観は図4と異なるが内部機構、構成は図4と同一である。
この場合、ターボ分子ポンプTMは上記したように、たとえば半導体製造装置(図示せず)などの内部に組み込まれ、したがって電源装置ESは、このような半導体製造装置から遠く離れた位置に設置される制御盤(図示せず)等に組み込まれる場合が多い。そのためにケーブルD1はそれだけの離れた距離を確保する長さを必要とする。
またターボ分子ポンプTMが上述したように磁気軸受型の場合、回転体4を軸磁気浮上させる制御を行なわせるために各制御軸ごとに検出器があり、また各制御軸ごとの電磁石用の信号線が必要である。この制御は通常5軸方式が行なわれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような事情から、これらのターボ分子ポンプTMにおける各被制御機器と電源装置ESに装填された制御回路とを接続する信号線が多くなる。そのためケーブルD1と信号線を束ねると芯線数が多くケーブルD1は相当な太さとなる。ケーブルD1が太くなると設置時のケーブルD1の配設が悪くなり、またケーブルD1が長くなるほどインピーダンスが大きくなるので、ケーブルD1の長さにも限界がある。それ以上の長さを必要とする場合には、特別の調整装置を設置する必要がある。ターボ分子ポンプTMにおける回転体4はモータ2の駆動にて数万rpmの高速で回転しており、回転体4の材料が腐蝕性ガスにより腐蝕を受けた場合には、回転体4の遠心破壊が生起する。この場合、破壊した回転体4の破片は、回転体4の外周に配設されたステータリング(環状の枠体)9に衝突し、その後ターボ分子ポンプTMのケーシング5に衝撃を与えることになる。ケーシング5が受けた衝撃は、ターボ分子ポンプTMが直接的に取り付けられた半導体製造装置に伝わるため、半導体製造装置を据え付ける場合、据え付け構造を頑強な構造にする必要がある。これらのために半導体製造装置が大型複雑化せざるを得ないという問題も有している。
本発明はこのような課題を解決するターボ分子ポンプを提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明が提供するターボ分子ポンプは、上記課題を解決するために、ターボ分子ポンプ本体内におけるケーシングと固定翼車群を保持する保持部材との間に空間を形成するとともに、この空間に磁気軸受等の制御を行なう制御回路構成部品を配置させたものである。さらにこれら制御回路構成部品を樹脂でモールドし、このモールドしたものを空間に収納配置したものである。したがって制御回路構成部品と被制御機器との間はターボ分子ポンプ内の回路(ケーブル)となり、ターボ分子ポンプと電源装置との間のケーブルは電気エネルギーの供給のためのケーブルだけとなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明が提供するターボ分子ポンプを図面に示す実施例にしたがって説明する。
図1は本発明の第1の実施例を示す縦断面図で、ケーシング5内の上方には、ターボ機構TKによるポンプが配置され、下方にはねじ溝ポンプNPによるドラッグポンプが設けられている。すなわち、電磁石方式の磁気軸受8にて回転自在に保持された回転軸4S上には回転体4が一体的に架設され、回転体4の上方外周には多段(図示例では5段)の回転翼Bが付設されている。この回転翼Bに対抗してケーシング5の内周からは固定翼Tが同様に多段(5段)の形で張設されている。この固定翼Tはその外方端がスペーサSにて保持され、このスペーサSにて一定間隔を有して回転翼Bのそれぞれの間に挿入され、ターボ機構TKが構成されている。このターボ機構TKにて回転翼Bが高速回転されると吸気口6からのガス分子が叩かれて下方に移送され排気口7から排出される。
【0011】
他方、回転体4における円筒部4Tにはケーシング5内の下方に配設されたステータリング9が対応している。このステータリング9は前記スペーサSの最下段のスペーサSとポンプ機台部1との間に挟持されていて、その内周面が前記円筒部4Tの外周面に近接して対応されている。と同時に、このステータリング9の内周面側には2点鎖線で示すねじ溝Nが形成され、円筒部4Tの内周面との間でねじ溝ポンプNPが構成されている。このねじ溝ポンプNPはドラッグポンプとして機能し、ターボ分子ポンプTMとねじ溝ポンプNPの作動により排気が行なわれる。ところで、スペーサSとステータリング9は図1に示されるとおり、ケーシング5における上方の段部5Kと下方のポンプ機台部1の上面の段部1Kとの間に挟持されているが、固定翼Tを固定保持する保持部材として機能している。なお、各スペーサSとステータリング9は円筒状に配列され、かつケーシング5の内周面とは一定の間隔を有して設けられている。すなわち、空間Aが形成されている。
【0012】
さて、本発明は空間Aにフレキシブルな基板10が挿設されており、この基板10には磁気軸受8等の制御を行なう制御回路構成部品が取り付けられていて、この点に本発明の特徴がある。この基板10には図面上明らかにされていないが制御回路構成部品が樹脂でモールドされて配設されている。そしてこの基板10は最下端がL字形に曲折されてステータリング9の凹部に固定されている。またV1は磁気軸受8側における被制御機器と基板10における制御回路構成部品とを接続するケーブル(信号線)であり、V2は基板10における制御回路構成部品とターボ分子ポンプTMへの電気エネルギーを供給するための接続端子CPとを接続するケーブルである。
【0013】
図1において空間Aは環状をなし、この空間を有効利用すべく基板10も薄形にして環状に挿設されている。しかし、この環状の基板10の挿設は単に空間Aの有効利用という面のみではなく、上述したように回転体4が遠心破壊を生起した時その衝撃の緩和にも有効である。すなわち、遠心破壊による回転体4の破片がケーシング5に衝撃を与える前に、このリング状の基板10に衝突し、衝突エネルギーが消費されケーシング5に与える衝撃エネルギーが小さくなる。この機能をより確固たるものにするために、基板10の外周面にカーボンファイバーなどを巻回させる。あるいは基板10の外周面に空間Aを充填させる弾性体を貼設する。
【0014】
図2に示す実施例は、ステータリング9の外周面に形成された凹部空間HAのみに円筒形の基板11を挿設した変形例である。もちろんこの基板11も環状(リング状)をなし、ステータリング9の外周面に嵌挿される形で配設されている。そしてその内方には弾性体12が挿設されている。V1、V2は図1と同様のケーブルである。この実施例はとりわけ遠心破壊が起りやすい回転体4の下方円筒部の破片が外方に飛散したとき、その衝撃エネルギーが基板11に及ぼす影響を極力抑えることができる。
【0015】
以上のような構成からなるターボ分子ポンプTMによれば被制御機器と制御回路構成部品とを接続するケーブルV1、V2は共に図1、図2に示すとおり非常に短いものにすることができ、ターボ分子ポンプTMのポンプ機体内に収納することができる。図3はそのようなターボ分子ポンプTMを示す図である。したがって、ターボ分子ポンプTMの外部装置としての電源装置が省略でき、あるいは基板10にて兼用でき、外部から電力を供給するだけのケーブルV3があればよいことになる。このケーブルV3の一端に取り付けられたプラグC3は接続端子CPに接続され、他端の接続器C4は電源側に接続される。なお図1、図2そして図3において、図4、図5と同一の符号で示す部品、機構は図1、図2、図3と同一のものであり、詳細な説明は省略する。
【0016】
本発明が提供するターボ分子ポンプは以上詳述したとおりであるが、上記ならびに図示例に限定されるものではなく、種々の変形例を包含する。たとえば、図示例のターボ分子ポンプTMはハイブリッド型のものであるが、ターボ機構TKのみからなるターボ分子ポンプにも適用可能である。また図示例では、回転体4の軸受機能を有する磁気軸受を簡略な図で示したが具体的には電磁石と磁石との組み合わせの構成をとるものである。ただ軸受は磁気軸受方式のみに限定されるものではなく、機械方式の玉軸受等からなる軸受を有するターボ分子ポンプにも本発明は適用可能である。さらに本発明の要部に係わる構成として図示例のターボ分子ポンプTMでは、ステータリング9が介設されているが、このステータリング9を介設せずステータのみで構成されるターボ分子ポンプにおいても本発明は適用可能である。
【0017】
【発明の効果】
本発明が提供するターボ分子ポンプは以上の構成であるから、つぎの利点を有する。
(1)電源装置が基板上にて構成できるので、電源装置がターボ分子ポンプの本体内部に配置でき、一体化できるとともにポンプ自体を小形化できる。このことから省スペースおよび設置工数を大幅に削減できる。
(2)回転体が万が一遠心破壊しても、その衝撃がケーシングや外部に与える影響は最小限に小さくでき、被排気設備の構成を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるターボ分子ポンプの構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明によるターボ分子ポンプの変形例の構成を示す縦断面図である。
【図3】本発明によるターボ分子ポンプの電力供給系を示す図である。
【図4】従来におけるターボ分子ポンプの構成を示す図である。
【図5】従来におけるターボ分子ポンプの電力供給系を示す図である。
【符号の説明】
1…ポンプ機台部
2…モータ
3…固定枠
4…回転体
5…ケーシング
6…吸気口
7…排気口
8…磁気軸受
9…ステータリング
B…回転翼
T…固定翼
S…スペーサ
10、11…基板
V1、V2…ケーブル
Claims (2)
- 円筒状のケーシング内に軸受を介して回転体を軸着するとともに、この回転体の外周部でかつ軸芯方向に取り付けられた複数段の回転翼車群と、この複数個の回転翼車群に対応して前記ケーシング内に配置された複数個の固定翼車と、この複数個の固定翼車間にて前記ケーシング内周面部に介設され各固定翼車を所定間隔で保持する複数段のスペーサとを有し、前記ケーシングの軸方向一端側の吸気口からのガスを圧縮して他端側の排気口に排出するターボ分子ポンプにおいて、前記ケーシングの内面と固定翼車群を保持するスペーサ等の保持部材との間に空間を形成し、この空間にターボ分子ポンプの作動を制御するための制御回路構成部品を配置させたことを特徴とするターボ分子ポンプ。
- 制御回路構成部品が樹脂でモールドされた板状部材を空間に収納したことを特徴とする請求項1記載のターボ分子ポンプ。
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JP7087418B2 (ja) * | 2018-02-02 | 2022-06-21 | 株式会社島津製作所 | 真空ポンプ |
-
2002
- 2002-08-29 JP JP2002249880A patent/JP4114441B2/ja not_active Expired - Lifetime
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