JP4114389B2 - 排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気ガス中のNOxを浄化する排気浄化装置、特に、排気系に設けた還元触媒の上流側に排気ガス還元剤の供給装置を配した排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関が排出する排気ガス中のNOxは排気浄化装置により浄化されているが、特に、ディーゼルエンジンで用いられる排気浄化装置はその排気系に選択還元型のNOx触媒(SCR触媒)を置き、その上流側に尿素水を還元剤として供給し、酸素過剰雰囲気下においてNOxを浄化できるNOx浄化装置が採用されている。ここで、尿素水は式(1)のように加水分解及び熱分解して、NH3を放出する。
【0003】
(NH2)2CO+H2O→2NH3+CO2・・・・(1)
また、NOx触媒上でのNH3と窒素酸化物との間の脱硝反応は以下の(2)、(3)式の反応がそれぞれ行われることが知られている。
4NH3+4NO+O2→4N2+6H20・・・・(2)
2NH3+NO+NO2→2N2+3H20・・・・(3)
このようなNOx触媒は、例えば図9に示すように、アンモニア吸着量が多いほどNOx浄化率が高く、しかも、図8に示すように、触媒温度が300℃以上で高浄化率を確保できるが、200℃程度では浄化率が低減する傾向にある。そこで、低温域で高浄化率を得るにはアンモニア吸着量を高く制御することが好ましい。しかし、NOx触媒に吸着できるアンモニア吸着量には限界があり、例えば、後述する図2中に示すように、アンモニアスリップ限界ライン(実線n)は触媒温度に依存する。ここで、NOx還元剤であるアンモニアが過剰に投入されるとアンモニアスリップ限界ライン(実線n)を越える余剰アンモニアが排出され、アンモニアスリップが生じる。このアンモニアスリップを防止するためには、アンモニア吸着量を限界内(実線n下側の領域)に保持するように制御する必要がある。
【0004】
このためNOx浄化装置では、NOx触媒中のアンモニア吸着量が適正な範囲内となるよう制御する上で、現在のアンモニア吸着量を把握する必要がある。この場合、エンジンからのNOx排出量Qnoxと、マップから導出されるNOx触媒温度相当のNOx浄化率ηと、これらNOx排出量及びNOx浄化率に応じた触媒でのアンモニア消費量CNH3(=f(η・Qnox))を計算し、これと添加した還元剤量BNH3からアンモニア吸着量ANH3が計算可能である。なお、図2において、アンモニア吸着量ANH3(n)が今回値を示し、ANH3(n−1)が前回値を示す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述のNOx浄化装置が用いる尿素水添加装置は運転域に応じて尿素水添加量を増減調整すると共に、間欠的に排気路中に尿素水を噴射している。即ち、排気ガスは尿素水、即ち、アンモニアと共存して流動する場合と、非共存で流動する場合がある。
【0006】
ところが、図3に示すように、NOx触媒の浄化率ηは、アンモニア(尿素水)添加中、即ち、排気ガス中にアンモニアが共存する時のNOx浄化率特性(図3の符号○)と、アンモニア非添加、即ち、排気ガス中にアンモニアが共存しなくなった時のNOx浄化率特性(図3の符号●)とに相違があることが判明した。即ち、排気ガスがアンモニア共存時にある尿素水添加時のNOx浄化率ηaに対して、排気ガスヘの尿素水添加中止時(アンモニア非共存時)に切換えが成された場合、NOx浄化率ηbが比較的大きくなることが判明した。これは、尿素水添加中止時に、アンモニア非共存の排気ガス中に触媒上に吸着されていたアンモニアが離脱して飛散する状態が生じるが、ここでの離脱アンモニアは排気路を流動するだけの浮遊アンモニアより触媒担体に近い部位に留まっていたため、NOx還元特性が強化されたものと思われる。
【0007】
このように間欠的に尿素水を排気路に噴射供給する尿素水添加装置を用いた場合、添加停止直後にNOx浄化率がより大きい値を示すことより、マップ値であるアンモニア共存時のNOx浄化率が実際は間欠的に増減変動していることと成る。このため、NOx浄化率ηで算出されるアンモニア消費量CNH3(=f(η・Qnox))にずれが生じ、正確なアンモニア吸着量ANH3が算出されず、このようなアンモニア吸着量に基き、アンモニア添加制御を継続すると、過剰添加が生じ、吸着量限界値(実線n)を越える余剰アンモニアが排出され、アンモニアスリップが生じることとなり、改善が求められている。
本発明は、以上のような課題に基づき、NOx浄化率を精度良く導出しアンモニア添加制御を的確に行うことで、アンモニアスリップを防止できる排気浄化装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、エンジンの排気通路に配設されたNOx触媒と、上記NOx触媒上流の排気通路にアンモニアを供給する還元剤供給手段と、前記還元材供給手段よりも上流の上記排気通路及び上記NOx触媒下流の上記排気通路に配設されたNOxセンサと、上記NOxセンサの情報からNOx浄化率を算出し、そのNOx浄化率からNOxを浄化するために消費されたアンモニアの量を算出するアンモニア消費量算出手段と、上記アンモニア消費量と前回算出済みの推定アンモニア吸着量とに基き上記NOx触媒に消費されずに吸着されていると推定される推定アンモニア吸着量を推定するアンモニア吸着量推定手段と、上記エンジンが所定の定常運転状態にある場合に、上記還元剤供給手段を供給状態と非供給状態とに切換操作するとともに当該供給時と非供給時のNOx浄化率の差を算出し、その算出されたNOx浄化率の差に基いて現状アンモニア吸着量を推定し、その現状アンモニア吸着量で上記アンモニア吸着量推定手段により推定された推定アンモニア吸着量を補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする。
このようにアンモニア吸着量を精度良く把握することができるのでアンモニアの供給制御ラインとアンモニアスリップ限界ラインとのスリップ防止のためのマージンを小さくすることが可能となり、結果的にNOxの浄化効率を向上させることができる。また、ある程度の浄化率が得られる排気温度で、ある程度のNOx排出量があり、エンジン回転数の変動が少ない安定した所定運転状態の時に実施することにより精度良くアンモニア吸着量を推定でき、アンモニアスリップを防止できる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の排気浄化装置において、上記補正手段はアンモニアの供給状態時と非供給状態時のNOx浄化率の差と、アンモニアの供給状態時もしくは非供給状態時のどちらか一方のNOx浄化率の実測値に基いて、実アンモニア吸着量を推定することを特徴とする。
このように、同一のNOx浄化率差でデータ上に2つのアンモニア吸着量が存在する場合、一方のアンモニア吸着量を排除することができるので、確実な実アンモニア吸着量を推定できる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1記載の排気浄化装置において、上記NOx触媒を担持するコンバータ内の雰囲気温度に応じて当該NOx触媒に吸着されるべきアンモニア量を設定する目標アンモニア吸着量設定手段と、上記目標アンモニア吸着量、上記アンモニア消費量及び上記補正アンモニア吸着量に基づいて、上記補正アンモニア吸着量が上記目標アンモニア吸着量になるように還元剤の供給量を算出する還元剤供給量算出手段と、を備えたことを特徴とする。
このように、補正後のアンモニア吸着量から供給量を決定するので、精度の良い還元剤供給が可能と成り、アンモニアスリップ、NOx浄化率の向上が図れる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態としての排気浄化装置を図1、図2を参照して説明する。ここでの排気浄化装置(以後単にNOx浄化装置と記す)は、図示しない車両に搭載されたディーゼルエンジン(以後単にエンジンと記す)1の排気系2に装着される。
ここでエンジン1は燃料噴射系を備え、同燃料噴射系は図示しない燃焼室にインジェクタ5により燃料噴射を行う燃料噴射部3と同部3に燃料を供給する燃料供給部4と、これらを制御する燃圧制御部601及び噴射制御部602としてのエンジンECU6を備える。
ここで燃料供給部4はエンジン駆動の高圧燃料ポンプ7の高圧燃料を燃圧調整部8で定圧化した上でコモンレール9に供給する。燃圧調整部8はエンジンECU6に接続され、燃圧制御部601の出力Dpに応じてコモンレール9内の圧力が所定圧力となるよう吐出量を調整可能である。
【0012】
燃料噴射部3はコモンレール9に電磁バルブVpを介して連結されたインジェクタ5により高圧燃料噴射を行う。電磁バルブVpはエンジンECU6に接続され、エンジンECU6の噴射制御部602の出力Dj信号に応じて燃料噴射量、噴射時期を調整可能である。なお、電磁バルブVpとエンジンECU6の接続回線は1つのみ図示した。
ここで噴射制御部602はエンジン回転数Neとアクセルペダル踏込量θaに応じた基本燃料噴射量INJbを求め、運転条件に応じた、たとえば水温や大気圧の各補正値dt,dpを加えて燃料噴射量Uf(=INJb+dt+dp)を導出する。更に噴射時期は、周知の基本進角値に運転条件に応じた補正を加えて導出される。その上で、演算された噴射時期及び燃料噴射量Uf相当の出力Dj信号を図示しない燃料噴射用ドライバにセットし、燃料噴射部の電磁バルブVpに出力し、インジェクタ5の燃料噴射を制御する。
【0013】
エンジン1の排気系2はエンジン本体の排気多岐管11及び排気多岐管11から延出する前後排気管12f,12rを備え、これら排気管の途中にNOx浄化装置13を備える。
NOx浄化装置13は前後排気管12f、12rの間に装着されたNOx触媒コンバータ14と、NOx触媒コンバータ14の上流の前排気管12fに配備され尿素水溶液(以後単に尿素水と記す)を供給する還元剤供給手段としての尿素水供給装置15とを備える。
NOx触媒コンバータ14はケーシング141内に図示しないハニカム構造のセラミック製の触媒担体16を金属網を束ねたシール材17を介してずれなく支持しており、同担体16にNOx触媒として機能するための触媒金属(例えばバナジウム)が担持される。
【0014】
尿素水供給装置15から排気路Eに噴霧された尿素水は流動中に加水分解してアンモニア(NH3)を生成する。このアンモニアはNOx触媒の雰囲気下で還元剤としての排気ガス中のNOxを選択還元可能である。ここでNOx触媒はアンモニア供給量や排気ガスの雰囲気温度の高低に応じ、即ち、上述した式(2)、(3)の反応を行い、NOxの脱硝反応を促進することができる。
NOx触媒コンバータ14のケーシング141にはその入口側と出口側とに前後触媒温度センサ18、19が配備され、これら入口側と出口側の前後触媒温度Texf、TexrはNOx浄化装置13の制御部を成す排気系ECU21に出力される。
【0015】
更に、排気多岐管11から延出する前排気管12f上でNOx浄化装置13の上流側には前NOx濃度センサ22が配備され、NOx浄化装置13下流の後排気管12rには後NOx濃度センサ23が配備され、これら両センサの入口側と出口側の前後NOx濃度Snoxf、Snoxrが排気系ECU21に出力される。
NOx触媒コンバータ14の排気路E上流側には尿素水供給装置15が配備される。
尿素水供給装置15はNOx触媒コンバータ14の排気路E上流側位置に向けて尿素水を噴霧する添加ノズル29と、添加ノズル29に接続された噴射管30と、噴射管30の上流端の高圧エアタンク24と、同タンク近傍に設けた高圧エア制御バルブ25と、高圧エア制御バルブ25より下流位置で開口する尿素水パイプ26と、尿素水パイプ26に尿素水を供給する尿素水タンク27と、尿素水を供給する尿素水供給部28と、これらの制御手段を成す排気系ECU21とを備える。
【0016】
排気系ECU21は通信回線10を介しエンジンECU6よりエンジン運転情報を取込み、これら各データに基き、アンモニア消費量算出手段A1、アンモニア吸着量推定手段A2、補正手段A3、還元剤供給量算出手段A4及び尿素水供給制御手段A0として機能する。
アンモニア消費量算出手段A1はNOxセンサの情報からNOx浄化率ηを算出し、そのNOx浄化率ηからNOxを浄化するために消費されたアンモニアのアンモニア消費量CNH3(=f(η・Qnox))を算出する。この処理に先立ち、NOx排出量QnoxがエンジンECU6から入力される排気流量qaとNOx濃度により導出される。
アンモニア吸着量推定手段A2はアンモニア消費量CNH3に基きNOx触媒に吸着されているアンモニアの推定アンモニア吸着量ANH3(n)を推定する。
【0017】
還元剤供給量算出手段A4は目標アンモニア吸着量ANH3(O)、アンモニア消費量CNH3及び補正されたアンモニア吸着量ANH3に基づいて、その補正アンモニア吸着量ANH3が目標アンモニア吸着量ANH3(O)になるように還元剤の供給量BNH3を算出する。
即ち、図2に示したように、推定アンモニア吸着量ANH3(n)は前回のアンモニア吸着量ANH3(n−1)よりアンモニア消費量CNH3を減算し、添加量BNH3を加算することで算出され、この際、今回の添加量BNH3を考慮しての推定アンモニア吸着量ANH3(n)を設定することとなる。なお、ここでの関係式(4)を付記する。
【0018】
ANH3(n)=ANH3(n−1)+BNH3−CNH3・・・・(4)
補正手段A3は、エンジン1が所定の定常運転状態(エンジン回転数Neの変動が所定範囲内)にある場合に、尿素水供給装置15を供給状態と非供給状態とに切換操作するとともに供給時のNOx浄化率ηaと非供給時のNOx浄化率ηbの差Δη(=ηb−ηa)を算出し、その算出されたNOx浄化率の差Δη相当の現状アンモニア吸着量AmNH3をマップm1(図4参照)により推定して求め、その現状アンモニア吸着量AmNH3によりアンモニア吸着量推定手段により推定された推定アンモニア吸着量ANH3(n)を補正し、即ち、ここでは変更し、現状アンモニア吸着量AmNH3を目標アンモニア吸着量ANH3(O)として設定する。
【0019】
ここでマップm1は図3における、アンモニア共存時のNOx浄化率ηaと非共存時のNOx浄化率ηbとの差分Δηに対する現状アンモニア吸着量AmNH3の相対関係より作成されている。即ち、ここでの現状アンモニア吸着量AmNH3の演算マップm1はエンジンの排気量、排気路E構成、触媒容量等を考慮して予め設定されることとなる。
なお、ここでの現状アンモニア吸着量AmNH3の演算マップm1に代えて、図5(a),(b)に示すマップm2−1、m2−2を用いても良い。
この場合、一方である供給時のNOx浄化率ηaの実測値が所定値より小さい場合(ηa<x0)にはマップm2−1を、大きい場合(ηa≧x0)にはマップm2−2を用いて、現状アンモニア吸着量AmNH3を求める。
【0020】
これにより同一のNOx浄化率差(差分Δη)がデータ上に2つ存在する場合でも、マップm2−1、m2−2の一方を選択してアンモニア吸着量を算出することとなり、他方を排除でき、確実な実アンモニア吸着量(現状アンモニア吸着量AmNH3)を推定できる。
なお他方の非供給時のNOx浄化率ηbの実測値を用いてマップm2−1、m2−2を作成し、同様の制御を行っても良い。
尿素水供給制御手段A0は得られた添加量(供給量)BNH3相当の出力DNH3で尿素水供給部28の作動を制御する。
【0021】
このような、NOx浄化装置13を搭載した図示しない車両のエンジン1の駆動時において、エンジンECU6は運転域に応じた制御を実行し、得られた燃圧制御部601の出力Dpで燃圧調整部8を駆動し、コモンレール9に所定圧の燃料を供給し、噴射制御部602の出力Djで電磁バルブVpを駆動し、燃料噴射量、噴射時期を調整する。
一方、排気系ECU21は、エンジンキーのオンと同時に図示しない排気浄化制御のメインルーチンを実行し、その途中で、図6、図7の尿素水添加制御ルーチンを所定制御サイクル毎に繰り返す。ここで、ステップs1ではエンジン回転数Ne、吸入空気量qaをエンジンECU6より取込み、更に、前後触媒温度Texf,Texr、NOx濃度Snoxf,Snoxr、前回吸着量SNH3(n−1)、その他のデータを各センサより取込む。
【0022】
なお、ここでは、前後触媒温度Texf,Texrの平均値{(Texf+Texr)/2}が触媒温度Texとして算出され、前後NOx濃度Snoxf,SnoxrよりNOx浄化率η(=f(Snoxf−Snoxr)が算出され、それぞれ記憶処理される。
ステップs2に達すると、触媒温度Texより直接目標アンモニア吸着量ANH3(O)を演算する。ここでは、図2の触媒温度−アンモニア吸着量ANH3マップを用い、破線で示すアンモニアの供給制御ラインL1より仮の目標アンモニア吸着量ANH3(O)をマップ値として求める。
【0023】
ステップs3ではアンモニア消費量算出手段A1として機能する。まず、現在の排気ガス流量qaに前NOxセンサ22の前NOx濃度Snoxfを乗算して前NOx排出量Qnoxfが算出され、後NOxセンサ23の後NOx濃度Snoxrを乗算して後NOx排出量Qnoxrが算出される。次いで、前後NOx排出量Qnoxf、Qnoxrの差分ΔQnoxより差分相当値f(ΔQnox)のアンモニア消費量CNH3(=f(η・Snox))を演算する。
ステップs4は、還元剤の供給量である平均尿素添加量BNH3を算出する還元剤供給量算出手段として機能する。ここでは上述の関係式(4)に相当する(5)式を用いる。
【0024】
ここで前回のアンモニア吸着量ANH3(n−1)よりアンモニア消費量CNH3を減算した値を求め、この値を今回値である目標アンモニア吸着量ANH3(n)より減算して尿素添加量BNH3を算出することとなる。ここで前回のアンモニア吸着量ANH3(n−1)は前制御周期で後述のステップs17を通過している場合は現状アンモニア吸着量AmNH3を充当する。更に、目標アンモニア吸着量ANH3(n)はステップs2の仮の目標アンモニア吸着量ANH3(O)が代入されることとなる。
ステップs5では定常運転状態か否かを、エンジン回転数Neが過度に変化していない状態が所定時間継続しているか否かを判断し、定常状態ではステップs6に、回転変動が大きく生じている場合はステップs7に進む。
【0025】
定常状態にあるとしてステップs5よりステップs6に達するとする。
ここではステップs4で求めた平均尿素添加量BNH3の2倍の尿素水添加量OB’NH3を算出する。
次いで、ステップs9では、尿素水添加量OB’NH3相当の出力D(OB’NH3)で尿素水供給部28をデューティー駆動し、尿素水添加タイマT1をリセットし、尿素水添加時間のカウントを開始する。
ステップs10、s11では、尿素水添加時のNOx浄化率を演算するもので、まず、最新の前後NOx濃度Snoxf,Snoxrを読み込み、これらより添加時のNOx浄化率ηa(=f(Snoxf−Snoxr)が算出される。
【0026】
ステップs12では、尿素水添加タイマT1が所定時間taを上回るまでステップs10、s11を繰り返し、上回るとステップs13に進む。
ステップs13では出力D(OB’NH3)で尿素水供給部28を駆動するのを停止し、尿素水添加停止タイマT2をリセットし、尿素水添加停止時間のカウントを開始する。
ステップs14、s15では、尿素水添加停止時のNOx浄化率を演算するもので、まず、最新の前後NOx濃度Snoxf,Snoxrを読み込み、これらより添加停止時のNOx浄化率ηb(=f(Snoxf−Snoxr))が算出される。
ステップs16では、尿素水添加停止タイマT2が所定時間taを上回るまでステップs14、s15を繰り返し、上回るとステップs17に進む。
【0027】
ステップs17では、補正手段として、供給時(尿素水添加時)のNOx浄化率ηaと非供給時(尿素水添加停止時)のNOx浄化率ηbの差分Δη(=ηb−ηa)を算出し、差分Δηに基いて現状アンモニア吸着量AmNH3を推定する。
ここでは実アンモニア吸着量マップm1(場合により、マップm2−1、m2−2を採用)により現状アンモニア吸着量AmNH3を求め、リターンされる。なお、ここで推定された現状アンモニア吸着量AmNH3を次回の制御周期におけるステップs4の現状NH3の吸着量の値として使用する。
過渡時にステップs5からステップs7に達するとする。
【0028】
ここでは平均尿素添加量BNH3を今回の目標尿素水添加量(供給量)OBNH3として設定する。ステップs8に進むと、ここでは尿素水供給制御手段A0として機能し、目標尿素水添加量OBNH3相当の出力DNH3で尿素水供給部28をデューティー駆動し、今回の制御周期を終了し、リターンする。
このように、補正後のアンモニア吸着量と目標アンモニア吸着量ANH3(O)から目標尿素水添加量OBNH3を決定するので、精度の良い還元剤供給が可能と成り、アンモニアスリップを防止し、NOx浄化率の向上が図れる。
【0029】
更に、現状アンモニア吸着量を精度良く把握することができるのでアンモニアの供給制御ラインL1とアンモニアスリップ限界ラインnとのスリップ防止のためのマージン(図2での幅d)を小さくすることが可能となり、結果的にNOxの浄化効率ηを向上させることができる。また、ある程度の浄化率が得られる排気温度で、ある程度のNOx排出量があり、エンジン回転数の変動が少ない安定した所定運転状態の時(ステップs5、s6乃至ステップs17の制御時)に実施することにより精度良くアンモニア吸着量(現状アンモニア吸着量AmNH3)を推定し、把握することができる。
【0030】
補正手段A3はアンモニアの供給状態時と非供給状態時のNOx浄化率の差(ステップs17で算出)と、アンモニアの供給状態時もしくは非供給状態時のどちらか一方のNOx浄化率の実測値ηa,ηb(ステップs11、s15)に基いて、実アンモニア吸着量(現状アンモニア吸着量AmNH3)を推定するが、その際、NOx浄化率ηaの実測値が所定値より小さい場合(ηa<X0)にはマップm2−1(図5(a)参照)を、大きい場合(ηa≧X0)にはマップm2−2(図5(b)参照)を用いて、現状アンモニア吸着量AmNH3を求めるとしてもよく、この場合、同一のNOx浄化率差Δηでデータ上に2つのアンモニア吸着量が存在する場合、一方のアンモニア吸着量を排除することができるので、確実な現状アンモニア吸着量AmNH3(実アンモニア吸着量)を推定でき、アンモニアスリップを防止できる。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、アンモニア吸着量を精度良く把握することができるのでアンモニアの供給制御ラインとアンモニアスリップ限界ラインとのスリップ防止のためのマージンを小さくすることが可能となり、結果的にNOxの浄化効率を向上させることができる。また、ある程度の浄化率が得られる排気温度で、ある程度のNOx排出量があり、エンジン回転数の変動が少ない安定した所定運転状態の時に実施することにより精度良くアンモニア吸着量を推定でき、アンモニアスリップを防止できる。
【0032】
請求項2の発明は、同一のNOx浄化率差でデータ上に2つのアンモニア吸着量が存在する場合、一方のアンモニア吸着量を排除することができるので、確実な実アンモニア吸着量を推定できる。
【0033】
請求項3の発明は、補正後のアンモニア吸着量から供給量を決定するので、精度の良い還元剤供給が可能と成り、アンモニアスリップ防止、NOx浄化率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態としてのエンジンの排気浄化装置とこれを装着するエンジンの概略構成図である。
【図2】 図1の排気浄化装置の排気系ECUが用いる排気ガス−アンモニア吸着量マップの特性説明図である。
【図3】 図1の排気浄化装置の排気系ECUが用いるアンモニア吸着量−NOx浄化率の特性線図である。
【図4】 図1の排気浄化装置の排気系ECUが用いるアンモニア共存時と非共存時のNOx浄化率の差分に対する現状アンモニア吸着量の相関特性説明図である。
【図5】 図1の排気浄化装置の排気系ECUが用いる他の、アンモニア共存時と非共存時のNOx浄化率の差分に対する現状アンモニア吸着量の相関特性説明図で、(a)は第1のエリア用、(b)は第2のエリア用である。
【図6】 図1の排気浄化装置の排気系ECUが用いる尿素水添加ルーチンの前部フローチャートである。
【図7】 図1の排気浄化装置の排気系ECUが用いる尿素水添加ルーチンの後部フローチャートである。
【図8】 排気浄化装置に用いられるNOx触媒の触媒温度−NOx浄化率の特性線図である。
【図9】 排気浄化装置に用いられるNOx触媒のアンモニア吸着量−NOx浄化率の特性線図である。
【符号の説明】
1 エンジン
6 エンジンECU
14 NOx触媒
15 尿素水供給装置(還元剤供給手段)
21 排気系ECU
22 前NOxセンサ
23 後NOxセンサ
η NOx浄化率
CNH3 アンモニア消費量
ηa 供給時のNOx浄化率
ηb 非供給時のNOx浄化率
Δη NOx浄化率の差
AmNH3 現状アンモニア吸着量(実アンモニア吸着量)
ANH3 アンモニア吸着量
A0 尿素水供給制御手段
A1 アンモニア消費量算出手段
A2 アンモニア吸着量推定手段
A3 補正手段
A4 還元剤供給量算出手段
BNH3 還元剤量
E 排気通路
Claims (3)
- エンジンの排気通路に配設されたNOx触媒と、
上記NOx触媒上流の排気通路にアンモニアを供給する還元剤供給手段と、
前記還元材供給手段よりも上流の上記排気通路及び上記NOx触媒下流の上記排気通路に配設されたNOxセンサと、
上記NOxセンサの情報からNOx浄化率を算出し、そのNOx浄化率からNOxを浄化するために消費されたアンモニアの量を算出するアンモニア消費量算出手段と、
上記アンモニア消費量と前回算出済みの推定アンモニア吸着量とに基き上記NOx触媒に消費されずに吸着されていると推定される推定アンモニア吸着量を推定するアンモニア吸着量推定手段と、
上記エンジンが所定の定常運転状態にある場合に、上記還元剤供給手段を供給状態と非供給状態とに切換操作するとともに当該供給時と非供給時のNOx浄化率の差を算出し、その算出されたNOx浄化率の差に基いて現状アンモニア吸着量を推定し、その現状アンモニア吸着量で上記アンモニア吸着量推定手段により推定された推定アンモニア吸着量を補正する補正手段と、
を備えたことを特徴とする排気浄化装置。 - 請求項1記載の排気浄化装置において、
上記補正手段はアンモニアの供給状態時と非供給状態時のNOx浄化率の差と、アンモニアの供給状態時もしくは非供給状態時のどちらか一方のNOx浄化率の実測値に基いて、実アンモニア吸着量を推定することを特徴とする排気浄化装置。 - 請求項1記載の排気浄化装置において、
上記NOx触媒を担持するコンバータ内の雰囲気温度に応じて当該NOx触媒に吸着されるべきアンモニア量を設定する目標アンモニア吸着量設定手段と、
上記目標アンモニア吸着量、上記アンモニア消費量及び上記補正アンモニア吸着量に基づいて、上記補正アンモニア吸着量が上記目標アンモニア吸着量になるように還元剤の供給量を算出する還元剤供給量算出手段と、
を備えたことを特徴とする排気浄化装置。
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