JP4114109B2 - 電動機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動機を駆動するための制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6に従来の技術例を示す。図において、1は商用電源、2はインバータ部、3は昇圧トランス部、4は制御対象であるモータであり、インバータ2のPWM出力を直接昇圧する方法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この従来方法ではインバータ2と昇圧トランス3を接続するケーブルや、昇圧トランス3とモータ4を接続するケーブルが長いときに、インバータの主回路素子の高速スイッチングと、ケーブルの浮遊インピーダンスの影響によって過大なサージ電圧が発生する。このサージ電圧によって、昇圧トランスのコイルやモータコイルの絶縁が劣化し、焼損に至る場合がある。また、インバータ2は直流成分を含んだ矩形波を出力するため、昇圧トランス内に偏磁現象が発生し、特にインバータ2からの出力周波数の低周波領域で昇圧トランスが過励磁になるという問題があった。さらに、モータ4のシャフトがアースブラシ等で接地されていない場合や、ファンなどのように負荷側が対地から離れた状態であると、インバータ出力の中性点電圧の変動に起因してモータの軸に電圧が生じ、モータのベアリングに電食が発生し、破損するという問題があった。この中性点電圧の変動は、モータやモータケーブルの浮遊容量を介して流れる漏洩電流の原因にもなっていた。
本発明は、前述したサージ電圧、昇圧トランスの偏磁や過励磁、インバータ出力の中性点電圧の変動、モータのベアリングの電食破損、モータやモータケーブルの浮遊容量を介して流れる漏洩電流の問題点を解決した電動機の制御装置を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の電動機の制御装置は、パルス幅変調によって電動機を制御する可変電圧可変周波数の電圧を出力するインバータ部と、前記インバータ部の出力電圧を正弦波に変換して出力する正弦波フィルタ部と、前記正弦波フィルタ部の出力電圧を昇圧し前記電動機へ出力する昇圧トランスとを有する電動機の制御装置において、前記昇圧トランスの2次側巻線を星形結線として前記電動機に接続すると共に、前記インバータ部の筐体と前記電動機のフレームと前記昇圧トランスのシールド板と前記星形結線の中性点を接地したものである。また、前記電動機の制御装置に置いて、前記インバータ部の筐体と前記電動機のフレームと前記昇圧トランスのシールド板と前記星形結線の中性点とを一点接地としたものである。また、前記電動機の制御装置に置いて、前記正弦波フィルタ部は、前記インバータ部出力の各相に直列に接続されるリアクトルと、前記昇圧トランスの1次側の線間に星形結線または環状結線されたコンデンサからなるものである。また前記正弦波フィルタ部の各相と直列に共通鉄心を持つコモンモードチョークコイルを接続したものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、同一名称には同一符号を付し重複説明を省略する。図1は本発明の第一実施例の構成図である。図において1は商用電源、2はPWMインバータ部、3は昇圧トランス部、4は制御対象であるモータ、7はPWMインバータ部2の出力電圧を正弦波に変換して出力する正弦波フィルタ部、8は昇圧トランスのシールド板である。この正弦波フィルタ部7は、インバータ部出力の各相に直列に接続されるリアクトル5と昇圧トランス3の1次側の線間に星形結線または環状結線されたコンデンサ6から構成されている。インバータ出力のPWM波形は正弦波フィルタ部7によって正弦波に変換される。これによりインバータ出力電圧は高調波成分が除去され前述のようなトランスやモータにおけるサージ電圧、トランス部3における過励磁現象や偏磁現象を起こすことなく昇圧され、交流電動機に与えられる。昇圧トランス3の構成は、1次側巻線および2次側巻線の少なくとも一方を星形結線とする。図1は1次側を環状結線、2次側を星型結線にした例である。また、接地方法は、星形結線の中性点を接地する。図1は、インバータの筐体、昇圧トランスのシールド板およびモータフレームに接続される接地ケーブルを含めた一点接地とした例である。図2に本発明の駆動装置を用いたシステムにおけるインバータ出力電圧、モータ入力電圧およびモータ軸電圧を示す。図2において(a)はインバータ出力電圧であり、(b)はモータ端子の入力電圧である。正弦波フィルタ部7によってインバータ出力電圧の波形(a)を正弦波化し、この正弦波電圧を昇圧してモータへ与えるので、モータ端子においても(b)の波形のようにようにサージ電圧は発生しない。またトランスの星形結線の中性点を接地することで、トランスの2次側の中性点電圧の変動を抑制できるので、(c)のようにモータ軸電圧も発生しない。
第二実施例を図3に示す。図3において図1と異なる部分は共通鉄心を持つコモンモードチョークコイル(9)を正弦波フィルタ部の各相と直列に接続した点だけである。このコモンモードチョークコイルによってインバータ出力のコモンモードインピーダンスが高くなり、PWMインバータによって発生するコモンモード電圧、漏洩電流、モータの軸電圧を第一実施例よりもさらに抑制することができる。このコモンモードチョークコイルを接続する位置は、インバータ部出力と昇圧トランスの間のどこでもよい。図3では、コモンモードチョークコイルをコンデンサ6と昇圧トランスの間に直列接続した例である。図4は第二実施例の変形例であり、コモンモードチョークコイルをリアクトル5とコンデンサ6との間に直列接続した例である。
図5はコモンモードチョークコイルの例を示す。各相の巻線は全て同一回数、同一方向の極性を持ち、磁気的に互いに結合される共通鉄心上に構成されている。零相電流が零の場合は、共通鉄心に発生する磁束は相殺されるため、この電流に対してインピーダンスは零となるが、零相電流が零でない場合はインピーダンスを持つものである。
【0006】
【発明の効果】
以上説明したように、パルス幅変調によって電動機を制御する可変電圧可変周波数の電圧を出力するインバータ部と、前記インバータ部の出力電圧を正弦波に変換して出力する正弦波フィルタ部と、前記正弦波フィルタ部の出力電圧を昇圧し前記電動機へ出力する昇圧トランスとを有する電動機の制御装置において、前記昇圧トランスの1次側巻線または2次側巻線の少なくとも一方を星形結線とし前記星形結線の中性点を接地したので、前述の軸電圧の発生原因となるモータに印加される電圧の中性点電圧とアースが同電位となるので、軸電圧は発生せず、漏洩電流も流れない。また、インバータ出力電圧を正弦波フィルタによって正弦波化した電圧波形を昇圧トランスによって昇圧するので、昇圧トランスやモータ端子には正弦波電圧が印加され、サージ電圧は発生しないし、昇圧トランスの偏磁現象が起こったり、過励磁になったりすることが避けられる。したがって、本発明は交流電動機の駆動装置として次のような利点がある。
(1)正弦波フィルタによってインバータ出力電圧が正弦波化され、接続ケーブルが長いときでも、サージ電圧の発生がない。
(2)昇圧トランスの1次側巻線および2次側巻線の少なくとも一方を星形結線とし、星形結線の中性点を接地することでモータに印加される電圧の中性点電圧とアースが同電位となり、軸電圧は発生せず、漏洩電流も流れない。
(3)本発明の駆動装置は、低圧インバータで高圧モータを駆動する昇圧ドライブシステムに用いると効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例の構成図である。
【図2】本発明の第一実施例を用いた場合の波形図であり、(a) はインバータ出力電圧、(b) はモータ入力電圧、(c) はモータ軸電圧である。
【図3】本発明の第二実施例の構成図である。
【図4】本発明の第二実施例の構成図の変形例である。
【図5】本発明の第二実施例で使用するコモンモードチョークコイルの構成図である。
【図6】従来の交流電動機の駆動装置の構成図である。
【符号の説明】
1 商用電源
2 インバータ
3 昇圧トランス
4 モータ
5 リアクトル
6 コンデンサ
7 正弦波フィルタ
8 シールド板
9 コモンモードチョークコイル
Claims (4)
- パルス幅変調によって電動機を制御する可変電圧可変周波数の電圧を出力するインバータ部と、前記インバータ部の出力電圧を正弦波に変換して出力する正弦波フィルタ部と、前記正弦波フィルタ部の出力電圧を昇圧し前記電動機へ出力する昇圧トランスとを有する電動機の制御装置において、
前記昇圧トランスの2次側巻線を星形結線として前記電動機に接続すると共に、前記インバータ部の筐体と前記電動機のフレームと前記昇圧トランスのシールド板と前記星形結線の中性点を接地したことを特徴とする電動機の制御装置。 - 前記インバータ部の筐体と前記電動機のフレームと前記昇圧トランスのシールド板と前記星形結線の中性点とを一点接地としたことを特徴とする請求項1に記載の電動機の制御装置。
- 前記正弦波フィルタ部は、前記インバータ部出力の各相に直列に接続されるリアクトルと前記昇圧トランスの1次側の線間に星形結線または環状結線されたコンデンサからなる請求項1に記載の電動機の制御装置。
- 前記正弦波フィルタ部の各相と直列に共通鉄心を持つコモンモードチョークコイルを接続したことを特徴とする請求項1または3に記載の電動機の制御装置。
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