JP4113196B2 - マイクロ波フィルタ - Google Patents

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Description

本発明は、マイクロストリップラインにより構成される共振器を用いたマイクロ波フィルタに関する。
無線又は有線で情報通信を行う通信機器には、共振特性を利用した高周波部材が多く含まれている。例えば、帯域通過(バンドパス)フィルタは、共振素子を複数個並べて特定の周波数帯の信号のみを通過させる機能を有する。このバンドパスフィルタは、励振線と共振器、更にそれぞれの共振器対で作る結合によって構成されている。
通信システムで用いるバンドパスフィルタには、隣接する周波数帯域間で干渉を起こさないようなスカート特性が要求される。これは、急峻なスカート特性を有するバンドパスフィルタを用いることで、周波数を有効に利用することができるからである。ここで、スカート特性とは、通過帯域端部から阻止域に至る減衰の度合いである。
超狭帯域なバンドパスフィルタの従来例として、高温超伝導体を用いたマイクロストリップライン構造を採用した例がある(例えば、非特許文献1参照)。ここで、本明細書では、比帯域で1%未満を超狭帯域、5%未満を狭帯域と呼ぶこととする。この文献のフィルタは5段のチェビシェフ型フィルタであるが、比帯域0.014%を実現している。このような超狭帯域フィルタは、共振器間の結合を非常に小さくする必要がある。
しかしながら、共振器対の間の距離で変えることができ、安定な結合を得ることが可能な結合の取り得る範囲が限られているために、この共振器対を用いてフィルタを構成しようとすると、シャープカットに必要なフィルタ段数の増加と狭帯域化が両立できない。また、超狭帯域フィルタでは弱い結合が必須で、そのために多段にすると非常に大きくなり、基板の反り等の問題もあり、実現が非常に困難になる。さらに、超狭帯域フィルタを複数個用いてフィルタバンク化しようとすると、もともと小さい結合で構成されているフィルタであるため、別のフィルタとの弱い結合が効いてきて、特性に変調をきたすという問題があった。
IEEE International Microwave Symposium Digest, Vol.3, June 2003., P.P.1881-4
従来の技術で挙げたような超狭帯域フィルタを実現するためには、共振器間の結合を極めて弱くする必要がある。共振器間の結合の強さは共振器間の距離に関係し、共振器間の距離を離せば弱い結合が得られる。しかし、共振器間の距離を離すのも基板サイズの制約がある。そこで、短い共振器間距離で弱い結合を達成するために、基板を薄くすることが考えられる。基板を薄くすれば、確かに短い距離で弱い結合を達成できるが、そうすると今度は、強い結合を持たせる場合に共振器間を非常に近接させなければならず、製作の上で困難が生じてくる。
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、同一基板内に強弱様々な結合を共振器間に持たせることができ、通信機器の高周波部材などの設計の許容度を広げることのできるマイクロ波フィルタを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明は、次のような構成を採用している。
即ち、本発明の一態様は、誘電体基板の一方の主面上にライン状電極が形成され、他方の主面上に共通電極が形成されたマイクロストリップラインにより構成される共振器が、一方向に沿って複数個配列されたマイクロ波フィルタであって、前記誘電体基板に、一方の主面を部分的に削ることにより前記基板の他方の主面からの基板膜厚が異なる複数の凹部領域が形成され、各々の凹部領域に前記共振器がそれぞれ複数個形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、同一基板上に形成されたマイクロストリップライン構造において、隣接する共振器間、又は異なるフィルタ間で誘電体層の厚みを変えることにより、同一基板(誘電体層)内に結合の強さの異なる共振器対を配置することができる。従って、通信機器の高周波部材などの設計の許容度を広げることができ、その有用性は大である。
実施形態を説明する前に、本発明の基本的な考え方について説明する。
帯域通過フィルタの構成は、図1に示すように、励振線1と共振器2、更にそれぞれの共振器対で作る結合3,4によって実現される。前述したように、超狭帯域フィルタを実現するためには、共振器間の結合を極めて弱くする必要があり、短い共振器間距離で弱い結合を達成するために、基板(誘電体層)を薄くする必要がある。
基板が薄い場合の共振器間の距離と結合の強さの関係を図2中のAに示す。図2には、基板が薄くなった効果が分かるように、厚い場合の特性もBとして表示してある。図2より、基板を薄くすれば、確かに短い距離で弱い結合を達成できるが、そうすると今度は、強い結合を持たせる場合、共振器間を非常に近接させなければならず、製作の上で困難が生じてくる。
そこで本発明者らは、誘電体層に段差を持たせたマイクロストリップライン構造を考案した。
誘電体層の厚さが厚い場合と薄い場合の共振器間の結合係数kとギャップsの関係は、図2の特性AとBに、それぞれ示してある。基板の大きさをx2、導体パターン形成の際に可能な最小のギャップをx1とすれば、物理的に製作可能なギャップsは、x1<s<x2となり、この区間X1-2 に対応する結合係数kが実現可能なkの値である。
誘電体層の厚さが一様な場合は、得られるkの値の範囲は、厚さが薄い場合は区間ka(ka1〜ka2)であり、厚い場合は区間kb(kb1〜kb2)である。本発明の構造により、厚い部分と薄い部分、2通りの誘電体層の厚さが同一基板内に存在し、得られるkの値の範囲は区間Ka-b (ka1〜kb2)に広げられることになる。
また、上記のように誘電体層の厚さを変化させ所望の結合係数を共振器に持たせる方法により、同一基板上に、共振器間の距離を離すことなく、強弱の結合係数を実現できるため、限られた大きさの基板内での狭帯域シャープカットフィルタの設計が可能である。
また、2つのフィルタ間で一方の厚さを薄くすれば、フィルタ間の結合が弱くなる。これを、同一基板上の独立したフィルタに用いると、フィルタ間の寄生結合が大幅に低減でき、それぞれのフィルタの特性の寄生結合による変調、或いは劣化を大幅に低減できる。つまり、同一基板上に複数のフィルタを、それぞれの特性に影響を与えることなく、配置できる。これにより、同一基板上にフィルタバンク等の多数個のフィルタを形成でき、特に超狭帯域フィルタの場合は、フィルタ内の結合が非常に弱くフィルタ間の結合にも非常に敏感のため、非常に有効となる。
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
(第1の実施形態)
図3(a)(b)は、本発明の第1の実施形態に係わるマイクロ波フィルタの概略構成を説明するためのもので、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A’断面図である。このフィルタは、マイクロストリップライン共振器対を用いた2段フィルタ(共振周波数5GHz、帯域2MHz)である。
誘電体層としての基板11の一方の主面(表面)上に、ライン状電極14,15,16がそれぞれ形成され、他方の主面(裏面)上には共通電極13が形成されている。ライン状電極14は、L字形パターンに形成され、励振線として機能する。ライン状電極15,16は、コ字形パターンに形成され、共振器を構成するようになっている。即ち、ライン状電極15と共通電極13でマイクロストリップライン構造の第1の共振器101が構成され、ライン状電極16と共通電極13でマイクロストリップライン構造の第2の共振器102が構成されている。そして、共振器101,102で共振器対が構成され、共振器102を設ける部分12の基板膜厚は薄くなっている。
次に、上記のマイクロストリップライン構造の製作手順を述べる。誘電体層には、厚さ0.5mm、比誘電率約10のMgO基板11を用いた。この基板11の一方の表面に、イオンミリングにより0.1mm削った領域(凹部領域)12を設けた。そして、基板11の表裏両面に、レーザー蒸着法により超電導膜であるYBCO薄膜を形成した。このYBCO薄膜に対し、上面のみをイオンミリングにより励振線14及び共振器101,102のパターン(15,16)に切り出した。基板11の下面側のYBCO薄膜は共通電極13としてそのまま用いた。なお、図には示さないが、励振線14の電極取り出し部分には、コネクタとのコンタクトを取るために、YBCO薄膜の上にAg,Auの層をスパッタリングとイオンミリングを用いて形成している。
本実施形態の2段フィルタの特性を、図4に示す。図中の実線が本実施形態素子の特性、破線が従来素子の特性である。従来の一様な厚さの誘電体層を用いて作製した場合と比較して、共振器間の距離は同一にしてあるが、共振器間の結合が小さくなっているため、帯域が小さなフィルタが実現できていることが分かる。
ここで、電極を形成するための導体として、超電導体であるYBCOを用いているが、他の酸化物超電導体や金属系超電導体、或いはAu等の金属の場合にも、同様に結合が小さい共振器対を実現することができる。また、基板としても、サファイア,LaAlO3 を初めとして、上記導体が成膜できる材料であれば、本実施形態と同様の効果を得ることが可能である。但し、共振器を用いる性質上、共振器の構成要素としては導体損失の小さな導体や誘電損失が小さな基板を用いることが好ましい。
このように本実施形態によれば、隣接する共振器101,102の一方に対し、凹部領域12を設けて基板厚みを薄くすることにより、共振器101,102間の結合を小さくして帯域がより小さなフィルタを実現することができる。ここで、本実施形態のように隣接する共振器101,102を、段差を持って配置することは、単に薄い誘電体層上に共振器を隣接配置するよりも共振器間の結合を弱くできるのである。
(第2の実施形態)
図5(a)(b)は、本発明の第2の実施形態に係わるマイクロ波フィルタの概略構成を説明するためのもので、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B’断面図である。このフィルタは、マイクロストリップラインで構成したチェビシェフ8段帯域通過フィルタである。なお、図3(a)(b)と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
本実施形態のフィルタは、中心周波数5GHz、帯域幅2.5MHzで設計されており、さらに基板の厚さを交互に変えることにより、各共振器対の結合を小さくしている。このため、30mm×40mmと比較的小さなフィルタ占有面積で、比帯域が0.05%と小さいにも拘わらず、8段の超狭帯域フィルタを実現できた。
以下に、このフィルタ構造の製作手順を述べる。第1の実施形態と同様に、誘電体層としては、厚さ0.5mm、比誘電率約10のMgO基板11を用いた。この基板11の表面に、イオンミリングにより0.1mm削った凹部領域12を設けた。そして、基板11の両面に、レーザー蒸着法によりYBCO薄膜を形成した。このYBCO薄膜に対し、イオンミリングにより励振線14及び共振器201,202のパターン(電極17,18,19,20,21,22,23,24)に切り出した。励振線14の電極取り出し部分は、第1の実施形態と同様、Ag,Auがスパッタリングとイオンミリングで成膜してある。また、フィルタの占有面積は30mm×40mmである。
図5(a)のパターンで、第1の共振器201を構成する電極17,19,21,23は段差の無い誘電体層部分に、第2の共振器202を構成する電極18,20,22,24は、段差のある部分つまり誘電体層が0.1mm薄い部分12に配置されている。即ち、誘電体層の膜厚が厚い第1の共振器201と誘電体層の膜厚が薄い第2の共振器202が交互に配置されている。
本実施形態の帯域通過フィルタの特性を、図6に示す。図中の実線が本実施形態素子の特性、破線が従来素子の特性である。この図から本実施形態素子は、超狭帯域にも拘わらず、良好な特性が実現できていることが分かる。
ここで、導体としては、第1の実施形態で説明したように、YBCOの代わりに、他の酸化物超電導体や金属系超電導体、或いはAu等の金属を用いることも可能である。さらに、基板としても、第1の実施形態で説明したように、サファイア,LaAlO3 を始めとする上記導体が成膜できる基板を用いることが可能である。
このように本実施形態によれば、共振器の配列方向に対して誘電体層膜厚の薄い凹部領域12を交互に設けることにより、隣接する共振器間の結合を小さくすることができ、先の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
(第3の実施形態)
図7(a)(b)は、本発明の第3の実施形態に係わるマイクロ波フィルタの概略構成を説明するためのもので、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C’断面図である。このフィルタは、第2の実施形態と同様に、マイクロストリップラインで構成したチェビシェフ8段帯域通過フィルタである。なお、図3(a)(b)と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
本実施形態のフィルタは、中心周波数5GHz、帯域10MHzと第2の実施形態に比べて、広い帯域を実現している。この場合、共振器対の結合量は、小さいものから比較的大きなものまでの3つにしている。従来の板厚一定の誘電体基板を用いた場合には小さい結合の場合に共振器間の距離が離れすぎて、安定な結合をとることが困難であったが、本実施形態のように共振器毎の誘電体厚さを変えることにより、良好な結合を実現できた。
以下に、このマイクロストリップライン構造の製作手順を述べる。第1の実施形態と同様に、ベースとなる誘電体層には、厚さ0.5mm、比誘電率約10のMgO基板11を用いた。この基板11の表面に、イオンミリングによって、0.1mm削った凹部領域12と、0.2mm削った凹部領域25を設けた。そして、基板11の両主面に、レーザー蒸着法によりYBCO薄膜を形成した。このYBCO薄膜に対し、イオンミリングにより励振線14及び共振器のパターン(電極26,27,28,29,30,31,32,33)に切り出した。励振線14の電極取り出し部分は、第1の実施形態と同様、Ag,Auがスパッタリングとイオンミリングで成膜してある。
図7(a)のパターン中、電極26,33は段差の無い誘電体層部分に、電極27,28,31,32は段差0.1mmの部分12に、電極29,30は段差が0.2mmの部分25に配置されている。ここで、電極26による共振器と電極27による共振器との間の結合係数をk1、電極27による共振器と電極28による共振器との間の結合係数をk2、電極28による共振器と電極29による共振器との間の結合係数をk3、電極29による共振器と電極30による共振器との間の結合係数をk4、電極30による共振器と電極31による共振器との間の結合係数をk5、電極31による共振器と電極32による共振器との間の結合係数をk6、電極32による共振器と電極33による共振器との間の結合係数をk7とすると、結合係数の大小関係は、k1=k7>k2=k6>k3=k5>k4となっている。
本実施形態の帯域通過フィルタの特性を、図8に示す。図中の実線が本実施形態素子の特性、波線が従来素子の特性である。この図から、誘電体基板の板厚が一定で、かつ大きな共振器間結合を得るべく板厚を決めた従来素子と比較し、本実施形態素子は共振器間の結合が小さいものから大きなものまで存在するフィルタとして、良好な特性が実現できていることが分かる。
なお、導体としては、第1の実施形態で説明したように、YBCOの代わりに、他の酸化物超電導体や金属系超電導体、或いはAu等の金属を用いることも可能である。さらに、基板としても、第1の実施形態で説明したように、サファイア,LaAlO3 を始めとする上記導体が成膜できる基板を用いることが可能である。
このように本実施形態によれば、誘電体基板11に凹部領域12を設けると共に、凹部領域12内で膜厚の異なる部分25を設けることにより、同一基板内に強弱様々な結合を共振器間に持たせることができる。このため、通信機器の高周波部材の設計の許容度を大きく広げることができる。従って、共振器を用いるマイクロ波コンポーネントの設計の自由度が大幅に増加でき、従来不可能だった超狭帯域シャープカットフィルタや、帯域が大きく異なるフィルタの同一基板への集積化が実現可能となる。
(第4の実施形態)
図9は(a)(b)は、本発明の第4の実施形態に係わるマイクロ波フィルタ群の概略構成を説明するためのもので、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D’断面図である。このフィルタ群は、2種類の8段帯域通過フィルタである。なお、図3(a)(b)と同一部部には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
誘電体層からなる同一基板上に、2種類の8段帯域通過フィルタが形成されている。即ち、中心周波数4.92GHz、帯域10MHzの第1のフィルタと、中心周波数4.94GHz、帯域5MHzの第2のフィルタが、同一基板上に配置されている。
フィルタバンク等にも用いられるフィルタの集積化においては、フィルタ間のアイソレーションが非常に重要である。このアイソレーションは、特に結合の小さな狭帯域フィルタでは問題となる。本実施形態では、互いに異なるフィルタに属する共振器の対に、本発明を適用して、フィルタ間の相互作用を十分低減した狭帯域フィルタ群を構成した。
製作にあたっては、第1の実施形態と同様に、ベースとなる誘電体層としての基板には、厚さ0.5mm、比誘電率約10のMgO基板11を用いた。この基板11の表面に、イオンミリングにより0.2mmの段差の凹部領域25を形成した。そして、基板11の両面に、レーザー蒸着法によりYBCO薄膜を形成した。このYBCO薄膜に対し、イオンミリングにより励振線14及び共振器のパターン(電極34,35)に切り出した。即ち、第1のフィルタ401として、段差のない誘電体層部分に電極34を配置し、第2のフィルタ402として、段差のある部分つまり誘電体層が0.2mm薄い部分25に電極35を配置した。励振線14は、何れのフィルタ401,402においても段差のない部分に形成した。
本実施形態のマイクロ波フィルタ群(両帯域通過フィルタ)の特性を、図10にそれぞれ示す。この図から、相互干渉による特性の変調は見られず、独立のフィルタとして実現できていることが分かる。
なお、導体としては、第1の実施形態で説明したように、YBCOの代わりに、他の酸化物超電導体や金属系超電導体、或いはAu等の金属を用いることも可能である。さらに、基板としても、第1の実施形態で説明したように、サファイア,LaAlO3 を始めとする上記導体が成膜できる基板を用いることが可能である。
このように本実施形態によれば、同一基板11上に形成する第1及び第2のフィルタ401,402において、各々のフィルタにおける誘電体層の膜厚を異ならせることにより、同一基板11上に異なる特性のフィルタ401,402を実現することができる。即ち、誘電体層の膜厚を変えるのみで、同一基板内に共振器間の結合の異なる2つのフィルタを簡易に作製することができる。従って、共振器を用いるマイクロ波コンポーネントの設計の自由度が大幅に増加でき、従来不可能だった超狭帯域シャープカットフィルタや、帯域が大きく異なるフィルタの同一基板への集積化が実現可能となる。
(第5の実施形態)
図11(a)(b)は、本発明の第5の実施形態に係わるマイクロ波フィルタ群の概略構成を説明するためのもので、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D’断面図である。このフィルタ群は、帯域幅の異なる3種類の8段帯域通過フィルタである。なお、図3(a)(b)と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
誘電体層からなる同一基板上に、3種類の8段帯域通過フィルタが形成されている。即ち、中心周波数は共通で5GHz、帯域幅が5MHz,7MHz,10MHzと異なる3つのフィルタが1枚の基板に集積化されている。このように、帯域が異なることにより、用いる結合の値が大きく変わる場合においても、本実施形態により同一基板上への集積化が可能となる。
製作に当たっては、第1の実施形態と同様に、ベースとなる誘電体層としての基板には、厚さ0.5mm、比誘電率約10のMgO基板11を用いた。この基板11の表面に、イオンミリングによって、0.1mm削った凹部領域12と、0.2mm削った凹部領域25との段差を設けた。そして、基板11の両主面に、レーザー蒸着法によりYBCO薄膜を形成した。このYBCO薄膜に対し、イオンミリングにより励振線14及び共振器のパターン(電極36,37,38)に切り出した。即ち、第1のフィルタ(広帯域幅帯域通過フィルタ)501として、段差のない誘電体層部分に電極37を配置し、第2のフィルタ(中間帯域通過フィルタ)502として、誘電体層が0.1mm薄い部分12に電極38を配置し、第3のフィルタ(狭帯域幅帯域通過フィルタ)503として誘電体層が0.2mm薄い部分25に共振器36を配置した。励振線14は、何れのフィルタにおいても段差のない部分に形成した。
本実施形態のマイクロ波フィルタ群の特性を、図12にそれぞれ示す。図中の点線は第1のフィルタ501、破線は第2のフィルタ502、実線は第3のフィルタ503の特性をそれぞれ示している。この図から分かるように、特性の変調は見られず、従来の誘電体層の厚さが一様なマイクロストリップライン構造では実現が難しかった、同一基板上の帯域幅の異なる帯域通過フィルタを作製できた。
なお、このフィルタ群は、中央に最も薄い誘電体層部分を配置することにより、各帯域通過フィルタ間の分離が図られている。また、導体としては、第1の実施形態で説明したように、YBCOの代わりに、他の酸化物超電導体や金属系超電導体、或いはAu等の金属を用いることも可能である。さらに、基板としても、第1の実施形態で説明したように、サファイア,LaAlO3 を始めとする上記導体が成膜できる基板を用いることが可能である。
このように本実施形態によれば、同一基板11上に形成する第1乃至第3のフィルタ501〜503において、各々のフィルタにおける誘電体層の膜厚を異ならせることにより、同一基板11上に異なる特性のフィルタ501〜503を実現することができる。即ち、誘電体層の膜厚を変えるのみで、同一基板内に共振器間の結合の異なる3つのフィルタを簡易に作製することができる。従って、先の第4の実施形態と同様の効果が得られる。
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。マイクロストリップラインを構成する導体や誘電体層は、先に説明したように各種の変形が可能である。さらに、共振器の配置個数、誘電体層の膜厚の薄い部分の種類,配置方法等の条件は、仕様に応じて適宜変更可能である。また、実施形態ではフィルタに適用した例を説明したが、必ずしもフィルタに限らず共振器を用いる各種のデバイスに適用することが可能である。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
帯域通過フィルタの基本構成を示す模式図。 厚さが異なる誘電体層に構成されたマイクロストリップライン共振器対のギャップと結合係数の関係を示す特性図。 第1の実施形態に係わるマイクロ波フィルタの概略構成を示す平面図と断面図。 第1の実施形態に係わるマイクロ波フィルタの特性を示す図。 第2の実施形態に係わるマイクロ波フィルタの概略構成を示す平面図と断面図。 第2の実施形態に係わるマイクロ波フィルタの特性を示す図。 第3の実施形態に係わるマイクロ波フィルタの概略構成を示す平面図と断面図。 第3の実施形態に係わるマイクロ波フィルタの特性を示す図。 第4の実施形態に係わるマイクロ波フィルタ群の概略構成を示す平面図と断面図。 第4の実施形態に係わるマイクロ波フィルタ群の特性を示す図。 第5の実施形態に係わるマイクロ波フィルタ群の概略構成を示す平面図と断面図。 第5の実施形態に係わるマイクロ波フィルタ群の特性を示す図。
符号の説明
1…励振線
2…共振器
3…励振線と共振器の間の結合
4…共振器同士の間の結合
11…基板(誘電体層)
12…凹部領域
13…共通電極
14…ライン状電極(励振線)
15〜24,26〜38…ライン状電極
25…凹部領域
101,201…第1の共振器
102,202…第2の共振器
401,501…第1のマイクロ波フィルタ
402,502…第2のマイクロ波フィルタ
503…第3のマイクロ波フィルタ

Claims (2)

  1. 誘電体基板の一方の主面上にライン状電極が形成され、他方の主面上に共通電極が形成されたマイクロストリップラインにより構成される共振器が、一方向に沿って複数個配列されたマイクロ波フィルタであって、
    前記誘電体基板に、一方の主面を部分的に削ることにより前記基板の他方の主面からの基板膜厚が異なる複数の凹部領域が形成され、各々の凹部領域に前記共振器がそれぞれ複数個形成されていることを特徴とするマイクロ波フィルタ。
  2. 前記凹部領域内で隣接するライン状電極による共振器間の結合係数は、前記凹部領域の底部から前記基板の他方の主面までの距離が短いほど小さいことを特徴とする請求項1記載のマイクロ波フィルタ。
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