JP4112464B2 - 被削性の優れた熱間鍛造非調質部品の製造方法 - Google Patents

被削性の優れた熱間鍛造非調質部品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば自動車のエンジン部品、建設機械部品等の熱間鍛造により製造して使用される部品であって、鍛造後の仕上加工が容易な、優れた被削性を有する熱間鍛造非調質部品の製造方法に関する。
自動車のエンジン部品や建設機械部品等では、数多くの部品が熱間鍛造により製造されている。これはクランクシャフト、コンロッド等比較的大きな部品が多く、かつ形状が複雑なため、熱間鍛造による成形がコスト面で最も有利となるためである。しかしながら、熱間鍛造は、粗形状を製造するにすぎず、当然熱間鍛造後には、最終製品形状に加工するために、機械加工等で仕上加工が施される。従って、これらの部品では、大量生産が容易にできるレベルの優れた被削性を有していることが要求される。
熱間鍛造に使用される鋼材としては、昭和50年代前半までは、炭素鋼や、炭素鋼に若干量のCr、Mo等を添加した低合金鋼を用いて鍛造後に焼入焼もどし(調質)することにより、必要な強度を確保していた。しかしながら、この方法は熱処理に多大なエネルギーを必要とすることから、鍛造後に空冷するのみで、必要な強度が得られ、熱処理を省略することが可能な非調質鋼が、数多く使用されるようになり、多数の材料が開発され、今日に到っている。
この多数の非調質鋼の開発の際において、熱処理せずに必要な強度を得るという強度面での性能が重視されてきたことは勿論であるが、鍛造品は、機械加工が必須の工程となることから、被削性の改善も同時に重視され、強度を確保するための元素の添加量についても、被削性を考慮して上下限の範囲が決定されるとともに、被削性改善元素として知られているPb等の元素を有効活用して、例えば特許文献1〜3に示す大量生産可能な被削性を有する熱間鍛造用非調質鋼が開発されてきた。
特開平1−165749号公報 特開平1−176055号公報
しかしながら、前記特許文献に記載の鋼には以下の問題がある。
前記した通り、従来の熱間鍛造用非調質鋼においても被削性は開発の際に最重要視され、開発が行われてきた。しかし、従来の被削性改善方法は基本的に成分元素の最適化によって、被削性等の要求事項を満足させようとするものである。そして、化学成分は、要求される機械的特性に合わせて、非常に大きく変化する。そのため、強度確保のための基本的成分元素であるC、Mn、Cr量の変動によって、得られる被削性のレベルが変化し、添加しなければならない被削性向上元素の量が変化する。従って、新しい開発鋼を開発する度に性能確認のための多数の試作実験を行わなければならず、開発に伴う工数は多大なものとなっている。
また、最近さらなる軽量化の要求が強くなっていることから、より硬度の高い鍛造品で必要な被削性を達成することが要求されるようになってきており、従来の成分元素最適型の被削性改善方法では限界にきている。従って、成分の改善のみでなく、製造方法の改善
による被削性改善方法の開発が強く望まれていた。
本発明は以上説明した課題を解決するために成されたものであり、その目的は、製造方法の面からの新しい被削性改善方法を提案し、これと従来の成分最適型の被削性改善対策とを組合せることによって、より短期間での開発を可能にするとともに、高硬度の鍛造品でも被削性を確実に改善することのできる熱間鍛造用非調質部品の製造方法を提供することにある。
前記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、質量%で、C:0.20〜0.60%、Si:0.10%以上0.70%未満、Mn:0.30〜2.00%、S:0.01〜0.20%、Cr:0.05〜2.00%、Al:0.060%以下、V:0.01〜0.50%、N:0.003〜0.020%を含有し、残部Fe及び不純物元素からなると共に、不可避不純物としてのP含有量が0.04%未満である鋼材を、下限温度を固相線温度×0.94又は1250℃の何れか高い方とし、上限温度を液相線温度×0.98以下とする範囲に加熱し、該範囲の温度域で、素材表面の85%以上が金型に接触するように、超高温熱間鍛造加工して(該超高温熱間鍛造加工後に1250℃未満の温度で仕上げ鍛造を行う場合を除く)、組織がフェライトパーライトであって、平均オーステナイト結晶粒度番号が2.5番以下である熱間鍛造品とすることを特徴とする被削性の優れた熱間鍛造非調質部品の製造方法である。
本発明において注目すべきことは、通常の温度に比べ高温に加熱及び鍛造する超高温鍛造を実施することにより、2.5番以下というより粗大化した結晶粒を有する鍛造品を製造し、粒粗大化の効果という被削性向上元素の添加とは別の方法によって、被削性を改善し、仕上加工を容易にできることを見出した点にある。
前記したように、成分の最適化を特徴とする熱間鍛造用非調質鋼は、既に多数の特許が出願されており、それにより、熱間鍛造後熱処理せずに必要な強度を確保でき、かつ必要な被削性を確保した鋼が既に提案されている。
一方、超高温鍛造については、例えば特開平5−15935号に記載されており、複雑な形状の部品をより小さい変形抵抗で加工可能とすることが可能な技術として、既に公知となっている。
しかしながら、後者の超高温鍛造は、本発明の目的である製造面からの被削性の改善とは全く無関係に開発された技術であり、被削性の改善のために、積極的に利用されるという考え方は皆無であった。また、前記した化学成分の最適化による被削性の改善のみでは、特に硬さがHv300以上となる場合においては、大量生産可能な被削性を得ることが難しくなり、成分の最適化以外の方法による改善の必要があった。
本発明者等は、多数の実験を繰り返し、調査検討を重ねた結果、超高温鍛造によって、結晶粒度を粗大化させ、2.5番以下のオーステナイト結晶粒度を有する鍛造品とした場合に、通常の3〜6番の鍛造品に比べて、成分を変えなくても被削性の改善が可能になることを新規に見出したものである。
さらに、具体的に説明すると、Hv200以下程度の比較的硬度が低い場合には、フェライトの変形が容易であるために、機械加工時に炭化物が破断、変形し、切粉の生成するのに必要なエネルギーが結晶粒度によって大きく変化することはなく、その効果はあるものの、それほど大きくはない。しかし、硬度が高くなって、Hv240程度以上になると、結晶粒が大きいほど機械加工時の炭化物の破断、変形に伴うエネルギーが小さくなり、加工時に発生するエネルギーも小さくなって、工具寿命が改善することが明らかとなった。実際に機械加工が問題となるのは、後者の硬さが高くなった場合であり、本発明を適用
することによって被削性を大きく改善することができる。
次に本発明である被削性の優れた熱間鍛造非調質部品の製造方法で使用される鋼材の成分範囲の限定理由について説明する。
なお、言うまでもなく、本発明は、化学成分の範囲の限定を特徴とする発明ではない。従って、以下に示す成分範囲は、熱間鍛造後非調質で使用でき、かつ本発明の超高温鍛造によって被削性の改善効果を確実に得ることのできる成分範囲を示すものである。
C:0.20〜0.60%
Cは、侵入型元素であって固溶強化により強度向上に効果のある元素であり、鍛造後に必要な強度を確保するためには、少なくとも0.20%以上含有させる必要がある。しかし、その含有量が増加すると、硬さが高くなって被削性が低下し、本発明の方法を適用しても鍛造後の仕上加工が難しくなるので、上限を0.60%とした。
Si:0.10%以上〜0.70%未満
Siは、鋼の製造時に脱酸剤として使用するのに有効な元素である。従って、最低でも0.10%以上の含有が必要である。しかしながら、多量に添加しすぎると、脱炭しやすくなるとともに、熱間加工性、靭性が低下するので、上限を0.70未満とする
Mn:0.30〜2.00%
Mnは、鋼材の焼入性を高め、必要な強度を確保するための基本元素であり、0.30%以上の含有が必要である。しかしながら、多量の含有は被削性を低下させて、鍛造後の仕上加工が難しくなるため、その上限を2.00%とした。
S:0.01〜0.20%
Sは被削性を向上させるために必要な元素であり、0.01%以上の含有が必要である。しかし、多量の含有は靭性を低下させるので、上限を0.20%とした。
Cr:0.05〜2.00%
Crは、Mnと同様に鋼材の焼入性を高め、必要な強度を確保するための基本元素であり、0.05%以上の含有が必要である。しかしながら、多量の含有は靭性を低下させるため、上限を2.00%とした。
Al:0.060%以下
Alは、脱酸のために必要な元素である。しかしながら、Alは鋼中でアルミナとなって存在し、被削性に悪影響を及ぼすとともに、疲労破壊の起点となって疲労特性を低下させるため、脱酸のための最低限の添加に抑える必要があり、上限を0.060%とした。被削性を重視するのであれば、できるだけ添加量を抑えることが好ましい。
なお、脱酸効果の点より下限は0.002%とすることが好ましい。
V:0.01〜0.50%
Vは熱間鍛造後の冷却時に鋼中でV炭窒化物となって析出し、析出強化によって疲労強度を向上させる元素であり、非調質で使用可能とするために不可欠となる元素である。従って、その含有率の下限を0.01%とした。しかしながら、多量に含有しても効果が飽和し、コスト高となるため、上限を0.50%とした。
N:0.003〜0.020%
Nは、鋼中でV等と結合して炭窒化物となって存在し、この炭窒化物によって鋼を析出強化させ、強度向上に効果のある元素であり、含有率の下限を0.003%とした。しかしながら、多量に含有させると、鋳片、鋼塊内にブローホ−ルが生成し、鍛造時における割れ発生の原因となるため、上限を0.020%とした。
また、本発明で使用する鋼は、上記元素以外に不可避不純物としてPを含有する場合がある。しかし、その量は多くても0.04%未満である。
次に、請求項1の発明の化学成分以外の条件の限定理由について説明する。
組織をフェライトパーライトとしたのは、本発明である超高温鍛造による被削性の改善効果がフェライトパーライト組織である場合に最も効果的となるからである。
また、平均結晶粒度番号を2.5番以下としたのは、2.5番以下の粗粒にしないと、通常の鍛造温度による加工で得られる3〜6番程度の結晶粒からなる鍛造品と比較して、明確な被削性の改善効果が得られないためである。なお、本発明で規定している結晶粒度とは、JISG0551で規定された方法によって測定することのできるオーステナイト結晶粒度を意味する。
なお、結晶粒度の下限は、靱性が大きく低下しないようにするため、1番程度とすることが好ましい。
次に、請求項1に記載した製造方法における製造条件の限定理由について説明する。
通常の熱間鍛造では、1000〜1200℃程度の温度にて加熱及び鍛造されることが普通である。しかしながら、それでは、平均結晶粒度番号が安定して2番以下となる鍛造品を製造することはできない。粗大粒からなる鍛造品を製造するには、通常に比べ温度の高い超高温度領域で加熱、鍛造することによって可能となる。具体的には、下限温度が固相線温度×0.94又は1250℃の何れか高い方、上限温度が液相線温度×0.98となる温度で加熱及び鍛造するという超高温鍛造を実施することにより達成される。
なお、鍛造する鋼材の液相線温度及び後述の固相線温度は、棒状素材を用い、一方向凝固試験を行うことにより求めることができる。
ここで、下限温度を固相線温度×0.94又は1250℃の何れか高い方としたのは、これより低い温度では、結晶粒度番号を2.5番以下とすることが難しくなり、通常温度における鍛造部品と、被削性における明確な差異を得ることが難しくなるためである。
また、より結晶粒が粗大化した鍛造品を得るためには、加熱炉から抽出した被加工材を抽出後、可能な限り短時間で鍛造する必要がある。温度低下は表面の方が大きくなることと、鍛造後の機械加工は、当然の如く表面から加工することとなるため、表面の温度低下が大きくならないように、加熱終了後すばやく鍛造する必要があるからである。
一方、上限温度を液相線温度×0.98としたのは、この温度を越える温度での加熱及び鍛造は、溶融してしまう部分が多くなり、鍛造により目的とする形状の鍛造品を仕上げること自体が困難となるためである。
但し、本発明において、結晶粒が粗大化した組織を得るために、通常に比べ高温に加熱し、固相線に近い温度まで加熱すると、鍛造素材の一部が溶融しはじめ、固相線温度を越えて加熱すると、溶融する部位が増加していく。このような素材を鍛造すると、鍛造後に空孔が残留し、必要な強度の確保が難しくなる。そのため、超高温鍛造時においては、素材表面の大部分(85%以上、特に固相線を超える温度に加熱する場合には、90%以上)が金型に接触しているような高い静水圧状態で鍛造することにより、空孔が減少するように工夫して鍛造することが必要である。
また、本発明の製造方法により得られる鍛造部品では、請求項2に記載した発明のように、請求項1の製造方法で使用される鋼に加えてさらにTiを添加して、析出強化により強度向上を図ることができる。以下、その限定理由について説明する。
Ti:0.003〜0.05%
Tiは炭化物を生成し、微細分散して析出強化により鋼の強度向上に有効である。従って、少量の添加であれば、非調質部品の性能向上に効果的であり、下限を0.003%とした。しかしながら、Tiは析出強化に効果がある一方で、窒化物を生成し、加熱時の結晶粒粗大化を防止する効果がある。結晶粒粗大化防止は、通常であれば鋼の性能向上に有
効であるが、本発明は、逆に粗大化による被削性向上を目的としているので、その添加量を少量に抑える必要があり、上限を0.05%とした。
さらに、本発明の製造方法により得られる鍛造部品では、請求項3に記載した発明のように、さらにPb、Te、Ca、Bi、Mg、Zr等の元素を添加した鋼を使用することによって、超高温鍛造により得られた優れた被削性をさらに改善することができる。以下、その限定理由について説明する。
Pb、Te、Ca、Bi、Mg、Zrは、被削性を改善する効果のある元素である。本発明により得られた鍛造品は、前記した超高温鍛造を行うことによって、通常温度による鍛造を行った場合と比較して優れた被削性を有している。しかしながら、本発明による鍛造品も従来鋼と同様に、被削性改善元素を添加することによって、超高温鍛造により得られた被削性をさらに改善することが可能となるので、必要に応じ添加できるものとした。但し、添加量が多すぎても、熱間加工性が低下する原因となるため、上限をPb、Te、Biは0.30%、Ca、Mg、Zrは0.01%とした。
このように、請求項1又は2の発明で使用する鋼に、Pb、Te、Ca、Bi、Mg、Zr等の被削性向上元素を追加した鋼を用いることによって、さらに被削性を改善することができる。なお、超高温鍛造の方法、得られる非調質部品の組織、結晶粒度番号の範囲及びその限定理由については、前記した請求項1と全く同一である。
また、不純物としてPを含有する点については、請求項2、3で使用する鋼についても、請求項1の場合と全く同様である。
次に、本発明の実施例について説明する。表1は供試材として用いた鋼の化学成分を示すものである。
Figure 0004112464
また、表1には、固相線温度、液相線温度を併記するが、これは、後述のφ75の鍛伸丸棒をさらに鍛伸し、機械加工して準備したφ15×250mmの棒状素材を用い、一方向凝固試験を行って、測定した温度である。
供試材は、表1に示す成分からなる鋼をVIM溶解炉にて溶解し、製造された鋼塊を直径75mmの丸棒に鍛伸し、空冷することにより準備した。得られた材料を用い、後述の超高温鍛造を実施し、被削性の評価を行った。
超高温鍛造は、前記鍛伸材から、直径70mm、長さ90mmの円柱型試験片を準備し、これを横置きし、後述の表3に示す加熱温度、鍛造前温度の条件で、高さが35mmと
なるまで鍛造した。また、鍛造は金型の試験材と接触する部分の形状を調整して、試験片の側面が加工の進行とともに接触していくようにし、高さが35mmとなるまで加工した時点で91%の表面が金型と接触するような条件で実施した。鍛造後、粗大化の程度を正確に把握するため、JISG0551に準拠した方法で結晶粒度を調査した。鍛造は、後述の表2に示す通り2水準の温度条件での超高温鍛造(加熱温度、鍛造前温度とも全て規定し範囲内)と、本発明の効果を明確にするために、比較として通常条件での鍛造も同時に実施した。
但し、本発明による超高温鍛造を実施すると、通常温度での鍛造に比べ当然の如く結晶粒が粗大化するため、初析フェライトの生成サイトが減少し、フェライト率が低下して硬さが上昇するという傾向を示す。硬さが上昇すると、当然の結果として被削性が低下するため、その低下分を考慮しないと公平な評価とならない。そこで、超高温鍛造した場合に通常鍛造の場合と鍛造後の硬さが同等となるよう、あらかじめ炭素当量を若干低めに調整した材料を準備して、実験を行った。
表1に示す鋼No.1、2、3、4のそれぞれの材料に対し、1’、2’、3’、4’が超高温鍛造時に硬さが同等となるように準備した材料である。また、成分が変化すると、当然の如く、得られる被削性は変化するため、成分が異なる鋼材を同じ条件で比較するのは、公平な比較とはならない。そこで、鋼No.1〜4の通常鍛造時の被削性試験(試験方法は後述)による寿命をそれぞれ100とし、寿命比で示すこととした。すなわち、後述する表3に示す鋼1’の寿命の数値は、鋼1の通常鍛造の場合の被削性試験で得られた寿命との比を意味し、鋼No.2〜4及び鋼No.2’〜4’の寿命の値とは全く関連がない値である。従って、表3に示すそれぞれの鋼の寿命の数字と100との差異が、本発明の方法による被削性改善効果の大きさを意味する。
次に、被削性評価試験の方法について示す。
被削性の評価は、外周旋削試験と穴加工試験を行うことにより実施した。試験は、前記した鍛造試験片から、φ32の丸棒試験片を作製して実施した。具体的な試験条件は、表2に、試験結果を表3に示す。
Figure 0004112464
Figure 0004112464
表3から明らかなように、通常鍛造した場合と超高温鍛造した場合とを比較すると、同じ鋼材で比較すると、超高温鍛造により硬さが上昇してしまうため、それによる被削性の低下分が、粒粗大化による被削性改善分と相殺されて、特に大きな効果が得られていないかのようにみえる。しかしながら、実際に製造する際には、硬さは重要な管理項目であり、当然の如く狙いとする硬さが得られるように成分も含めて調整がされる。従って、被削性改善効果は、同一硬さで比較する必要がある。
この点を考慮し、例えば通常鍛造での鋼No.2の被削性評価結果と、超高温鍛造することによる硬さ上昇分を考慮し、No.2に比べ炭素当量を若干低減した供試材No.2’の超高温鍛造品の被削性評価結果を比較すると、硬さは同等であるが、被削性が大きく改善していることがわかる。他の鋼No.1、3、4についても同様の比較をすることにより、本発明による被削性改善効果の大きさを把握することができる。
但し、表3の結果から明らかなように、得られる被削性改善効果は、硬さが比較的低いHv200程度の鋼No.4に比べ、硬さが比較的高い鋼No.2の方が大きな効果が得られている。しかしながら、実際に被削性が問題となるのは、硬さの高い場合であり、本
発明による効果は、硬さが比較的高くなると予想される鍛造品に対して、工具寿命改善に大きな効果を得ることができる。
以上、試験片レベルの評価によって大きな効果を得られることが確認できたので、実際に自動車用足廻り部品に適用し、前記した供試材No.2’に相当する鋼材を用いて効果の確認実験を行った。実験は、超高温鍛造品については、加熱温度1380℃、鍛造前温度1340℃の条件で実施した。この鍛造の際、鍛造品の空孔の発生を防止するため、鍛造時の被加工材の表面が型と接触する面積率が91%と鍛造時に静水圧が高くなるように配慮して実施した。また、比較として前記した供試材No.2に相当する鋼材を用いて、通常温度(加熱温度1240℃、鍛造前温度1200℃)で鍛造を行った。
その後、得られた鍛造品から、実際に機械加工が行われる部位を切り出して、丸棒試験片を作製し、前記した試験と同様の被削性評価試験を実施した。その結果、硬さは、通常鍛造品がHV280に対し、超高温鍛造品もHV283とほぼ同等であったが、被削性は、旋削試験での工具寿命は166、ドリル寿命が172(どちらも通常鍛造品での寿命を100とした場合の値)と優れた結果が得られた。
そこで、この試験片の結晶粒度を測定した結果、通常鍛造品の4.8に対し、超高温鍛造品は2.0と極端に粒が粗大化していた。結晶粒度調査時に空孔の有無についても同時に確認したが、空孔は十分に潰れており、良好であった。従って、超高温鍛造することによる粒の粗大化が、被削性の改善に効果的であることが確認できたとともに、鍛造時の型と被加工材との接触面積を高めて、高い静水圧状態での鍛造を実施することにより、空孔が少ない良好な鍛造品が得られることがわかった。
上記のごとく、本発明における上記超高温鍛造は、鍛造荷重低下と複雑形状製品の製造を可能にするために開発された技術であり、従来は被削性改善を主な目的として、積極的に適用されることはなかった。しかし、前記したように、超高温鍛造を利用して粗大粒からなる鍛造部品を製造することによって、被削性改善元素に頼らなくても、被削性を大幅に改善できることが明らかになった。
従って、S、Pb等の添加に頼ることなく鍛造品の被削性改善に大きく貢献することができ、その効果は極めて大なるものがある。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.20〜0.60%、Si:0.10%以上0.70%未満、Mn:0.30〜2.00%、S:0.01〜0.20%、Cr:0.05〜2.00%、Al:0.060%以下、V:0.01〜0.50%、N:0.003〜0.020%を含有し、残部Fe及び不純物元素からなると共に、不可避不純物としてのP含有量が0.04%未満である鋼材を、下限温度を固相線温度×0.94又は1250℃の何れか高い方とし、上限温度を液相線温度×0.98以下とする範囲に加熱し、該範囲の温度域で、素材表面の85%以上が金型に接触するように、超高温熱間鍛造加工して(該超高温熱間鍛造加工後に1250℃未満の温度で仕上げ鍛造を行う場合を除く)、組織がフェライトパーライトであって、平均オーステナイト結晶粒度番号が2.5番以下である熱間鍛造品とすることを特徴とする被削性の優れた熱間鍛造非調質部品の製造方法。
  2. 請求項1に記載の熱間鍛造非調質部品の製造方法で使用する鋼材に加えて、質量%でTi:0.003〜0.05%を含有する鋼材に請求項1記載の方法を施すことを特徴とする被削性の優れた熱間鍛造非調質部品の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の熱間鍛造非調質部品の製造方法で使用する鋼材に加えて、さらに質量%でPb:0.30%以下、Te:0.30%以下、Ca:0.01%以下、Bi:0.30%以下、Mg:0.01%以下、Zr:0.01%以下の1種または2種以上を含有する鋼材に請求項1記載の方法を施すことを特徴とする被削性の優れた熱間鍛造非調質部品の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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