JP4112065B2 - 薄膜トランジスタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本願発明は薄膜半導体を利用した半導体装置および半導体装置の動作方法に関する技術である。特に、半導体装置として薄膜トランジスタ(TFT)の構成および動作方法に関する。
【0002】
なお、本明細書で定義する半導体装置とは、TFTの如き単体素子だけでなく、基板上に形成されたTFTで構成される電気光学装置も含む。
【0003】
【従来の技術】
近年、絶縁表面を有する基板上にTFTを形成して半導体回路を構成する技術が急速に進んでいる。その様な半導体回路としてアクティブマトリクス型液晶表示装置の様な電気光学装置が代表例として挙げられる。
【0004】
アクティブマトリクス型液晶表示装置は、同一基板上に画素マトリクス回路とドライバー回路とを設けたモノリシック型表示装置である。また、さらにメモリ回路やクロック発生回路等のロジック回路を内蔵したシステムオンパネルの開発も進められている。
【0005】
ドライバー回路やロジック回路(これらはまとめて周辺回路と呼ぶ)は高速動作を行う必要があるので、活性層として非晶質珪素膜(アモルファスシリコン膜)を用いることは不適当である。そのため、現状では結晶性珪素膜(ポリシリコン膜)を活性層としたTFTが主流になってきている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、高い信頼性を有する薄膜トランジスタおよび高い信頼性を確保するための薄膜トランジスタの動作方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本明細書で開示する発明の構成は、
少なくともチャネル形成領域が、複数の棒状または偏平棒状結晶が互いに概略平行に特定の方向性をもって並んだ結晶構造体からなる薄膜トランジスタであって、
オン状態にある時の前記チャネル形成領域は80〜250℃の温度に加熱されていることを特徴とする。
【0008】
また、他の発明の構成は、
少なくともチャネル形成領域が、複数の棒状または偏平棒状結晶が互いに概略平行に特定の方向に規則性をもって並んだ結晶構造体からなり、該結晶構造体の結晶粒界の殆どで結晶格子に連続性を有する薄膜トランジスタであって、
オン状態にある時の前記チャネル形成領域は80〜250℃の温度に加熱されていることを特徴とする。
【0009】
また、他の発明の構成は、
複数の棒状または偏平棒状結晶が互いに概略平行に特定の方向性をもって並んだ結晶構造体からなるチャネル形成領域を有する薄膜トランジスタを、80〜250℃の温度に加熱した状態で動作させることを特徴とする。
【0010】
また、他の発明の構成は、
複数の棒状または偏平棒状結晶が互いに概略平行に特定の方向性をもって並んだ結晶構造体からなるチャネル形成領域のチャネル幅を100μm以上とすることにより、80〜250℃に自己発熱させることを特徴とする。
【0011】
また、他の発明の構成は、
複数の棒状または偏平棒状結晶が互いに概略平行に特定の方向性をもって並んだ結晶構造体からなるチャネル形成領域を有する薄膜トランジスタを動作させるにあたって、
前記チャネル形成領域のチャネル長をL、チャネル幅をWとした時、L/W=0.01以下とすることにより、80〜250℃に自己発熱させることを特徴とする。
【0012】
本願発明の最も特徴的な点は、薄膜トランジスタを動作させると同時にキンク効果(ホットキャリア注入などによって動作が暴走する現象)を防止または抑制することにある。
【0013】
即ち、薄膜トランジスタの動作中、ホットキャリア注入等でゲイト絶縁膜中に捕獲された電荷を動作に伴う自己発熱によって放出することで、動作と同時にキンク効果を防ぐことができる。
【0014】
本願発明の詳細について以下に示す実施例でもって説明する。
【0015】
【実施例】
〔実施例1〕
本実施例では絶縁表面を有する基板上に本発明によるTFTを形成するための作製工程について説明する。また、本発明によるTFTの特徴についての説明を行う。
【0016】
まず、絶縁表面を有する基板として石英基板301を準備する。石英基板の代わりに表面に 0.5〜5 μmの厚さの絶縁膜を形成したセラミックス基板、シリコン基板等を用いることができる。なお、太陽電池に使用される様なグレードの低いシリコン基板は安価であるので反射型表示装置の様に透光性基板を用いる必要のない用途において有効である。
【0017】
302は非晶質珪素膜であり、最終的な膜厚(熱酸化後の膜減りを考慮した膜厚)が10〜75nm(好ましくは15〜45nm)となる様に調節する。本実施例で作製するTFTは活性層が非常に薄いため、オン状態(チャネルが形成された状態)においてチャネル形成領域が完全に空防化するFD(Full-Depletion)型TFTとなる。
【0018】
なお、非晶質珪素膜302の成膜は減圧熱CVD法またはプラズマCVD法によれば良い。また、非晶質珪素膜の代わりにSi1-X GeX で示される様なゲルマニウムを含有した珪素膜を用いても良い。
【0019】
次に、非晶質珪素膜302の結晶化工程を行う。結晶化の手段としては本発明者による特開平7-130652号公報記載の技術を用いる。同公報の実施例1および実施例2のどちらの手段でも良いが、本願発明では実施例2に記載した技術内容(特開平8-78329 号公報に詳しい)を利用するのが好ましい。
【0020】
特開平8-78329 号公報記載の技術は、まず触媒元素の添加領域を選択するマスク絶縁膜303を形成する。マスク絶縁膜303は触媒元素を添加するために複数箇所の開口部を有している。この開口部の位置によって結晶領域の位置を決定することができる。
【0021】
そして、非晶質珪素膜の結晶化を助長する触媒元素としてニッケル(Ni)を含有した溶液をスピンコート法により塗布し、Ni含有層304を形成する。なお、触媒元素としてはニッケル以外にも、ゲルマニウム(Ge)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)等を用いることができる。(図3(A))
【0022】
また、上記触媒元素の添加工程は、レジストマスクを利用したイオン注入法またはプラズマドーピング法を用いることもできる。この場合、添加領域の占有面積の低減、横成長領域の成長距離の制御が容易となるので、微細化した回路を構成する際に有効な技術となる。
【0023】
次に、触媒元素の添加工程が終了したら、450 ℃1 時間程度の水素出しの後、不活性雰囲気、水素雰囲気または酸素雰囲気中において 500〜700 ℃(代表的には 550〜650 ℃)の温度で 4〜24時間の加熱処理を加えて非晶質珪素膜302の結晶化を行う。本実施例では窒素雰囲気で570 ℃14時間の加熱処理を行う。
【0024】
この時、非晶質珪素膜302の結晶化はニッケルを添加した添加領域305から優先的に進行し、基板301の基板面に対してほぼ平行に成長した結晶領域306が形成される。本発明者らはこの結晶領域306を横成長領域と呼んでいる。(図3(B))
【0025】
結晶化のための加熱処理が終了したら、マスク絶縁膜303を除去してパターニングを行い、横成長領域306のみでなる島状半導体層(活性層)307を形成する。
【0026】
次に、珪素を含む絶縁膜でなるゲイト絶縁膜308を形成する。ゲイト絶縁膜308の膜厚は後の熱酸化工程による増加分も考慮して20〜250nm の範囲で調節すれば良い。また、成膜方法は公知の気相法(プラズマCVD法、スパッタ法等)を用いれば良い。
【0027】
次に、図3(C)に示す様に触媒元素(ニッケル)を除去または低減するための加熱処理(触媒元素のゲッタリングプロセス)を行う。この加熱処理は処理雰囲気中にハロゲン元素を含ませ、ハロゲン元素による金属元素のゲッタリング効果を利用するものである。
【0028】
なお、ハロゲン元素によるゲッタリング効果を十分に得るためには、上記加熱処理を700 ℃を超える温度で行なうことが好ましい。この温度以下では処理雰囲気中のハロゲン化合物の分解が困難となり、ゲッタリング効果が得られなくなる恐れがある。
【0029】
そのため本実施例ではこの加熱処理を700 ℃を超える温度で行い、好ましくは800 〜1000℃(代表的には950 ℃)とし、処理時間は 0.1〜 6hr、代表的には 0.5〜 1hrとする。
【0030】
なお、本実施例では酸素雰囲気中に対して塩化水素(HCl)を0.5 〜10体積%(本実施例では3体積%)の濃度で含有させた雰囲気中において、950 ℃、30分の加熱処理を行う例を示す。HCl濃度を上記濃度以上とすると、活性層307の表面に膜厚程度の凹凸が生じてしまうため好ましくない。
【0031】
また、ハロゲン元素を含む化合物してHClガスを用いる例を示したが、それ以外のガスとして、代表的にはHF、NF3 、HBr、Cl2 、ClF3 、BCl3 、F2 、Br2 等のハロゲンを含む化合物から選ばれた一種または複数種のものを用いることが出来る。
【0032】
この工程においては活性層307中のニッケルが塩素の作用によりゲッタリングされ、揮発性の塩化ニッケルとなって大気中へ離脱して除去されると考えられる。そして、この工程により活性層307中のニッケルの濃度は 5×1017atoms/cm3 以下にまで低減される。
【0033】
なお、 5×1017atoms/cm3 という値はSIMS(質量二次イオン分析)の検出下限である。即ち、現状ではSIMSの検出下限にまで低減されるとしか判明していないが、実際には 1×1014〜 1×1017atoms/cm3 の濃度にまでニッケルは低減されているものと思われる。
【0034】
本発明者らが試作したTFTを解析した結果、 1×1018atoms/cm3 以下(好ましくは 5×1017atoms/cm3 以下)ではTFT特性に対するニッケルの影響は確認されなかった。ただし、本明細書中における不純物濃度は、SIMS分析の測定結果の最小値でもって定義される。
【0035】
また、上記加熱処理により活性層307とゲイト絶縁膜308の界面では熱酸化反応が進行し、熱酸化膜の分だけゲイト絶縁膜308の膜厚は増加する。この様にして熱酸化膜を形成すると、非常に界面準位の少ない半導体/絶縁膜界面を得ることができる。また、活性層端部における熱酸化膜の形成不良(エッジシニング)を防ぐ効果もある。
【0036】
さらに、上記ハロゲン雰囲気における加熱処理を施した後に、窒素雰囲気中で950 ℃ 1時間程度の加熱処理を行なうことで、ゲイト絶縁膜308の膜質の向上を図ることも有効である。
【0037】
なお、SIMS分析により活性層307中にはゲッタリング処理に使用したハロゲン元素が 1×1015〜 1×1020atoms/cm3 の濃度で残存することも確認されている。また、その際、活性層307と加熱処理によって形成される熱酸化膜との間に前述のハロゲン元素が高濃度に分布することがSIMS分析によって確かめられている。
【0038】
次に、図示しないアルミニウムを主成分とする金属膜を成膜し、パターニングによって後のゲイト電極の原型309を形成する。本実施例では2wt% のスカンジウムを含有したアルミニウム膜を用いる。なお、これ以外にもタンタル膜、導電性を有する珪素膜等を用いることもできる。(図3(D))
【0039】
ここで本発明者らによる特開平7-135318号公報記載の技術を利用する。同公報には、陽極酸化により形成した酸化膜を利用して自己整合的にソース/ドレイン領域と低濃度不純物領域とを形成する技術が開示されている。
【0040】
まず、アルミニウム膜のパターニングに使用したレジストマスク(図示せず)を残したまま3%シュウ酸水溶液中で陽極酸化処理を行い、多孔性の陽極酸化膜311を形成する。
【0041】
この多孔性の陽極酸化膜311は時間に比例して膜厚が増加する。また、上面にレジストマスクが残っているのでゲイト電極の原型309の側面のみに形成される。なお、特開平7-135318号公報記載の技術では、この膜厚が後に低濃度不純物領域(LDD領域とも呼ばれる)の長さになる。本実施例では膜厚が700 nmとなる様な条件で陽極酸化処理を行う。
【0042】
次に、図示しないレジストマスクを除去した後、エチレングリコール溶液に3%の酒石酸を混合した電解溶液中で陽極酸化処理を行う。この処理では緻密な無孔性の陽極酸化膜312が形成される。なお、多孔性の陽極酸化膜の内部にも電解溶液が浸透するので、その内側にも形成される。
【0043】
この無孔性の陽極酸化膜312は印加する電圧に応じて膜厚が決定する。本実施例では、100 nm程度の膜厚で形成される様に印加電圧を80Vとして陽極酸化処理を行う。
【0044】
そして、上述の2回に渡る陽極酸化処理の後に残ったアルミニウム膜313が実質的にゲイト電極として機能する。
【0045】
こうして図3(E)の状態が得られたら、次にゲイト電極313、多孔性の陽極酸化膜311をマスクとしてゲイト絶縁膜308をドライエッチング法によりエッチングする。そして、多孔性の陽極酸化膜311を除去する。こうして形成されるゲイト絶縁膜314の端部は多孔性の陽極酸化膜311の膜厚分だけ露出した状態となる。(図4(A))
【0046】
次に、一導電性を付与する不純物元素の添加工程を行う。不純物元素としてはN型ならばP(リン)またはAs(砒素)、P型ならばB(ボロン)を用いれば良い。
【0047】
本実施例では、まず1回目の不純物添加を高加速電圧で行い、n- 領域315、316を形成する。この時、加速電圧が80keV 程度と高いので不純物元素は活性層表面だけでなく露出したゲイト絶縁膜の端部の下にも添加される。このn- 領域315、316は不純物濃度が 1×1018〜 1×1019atoms/cm3 となる様に調節する。(図4(B))
【0048】
さらに、2回目の不純物添加を低加速電圧で行い、n+ 領域317、318を形成する。この時は加速電圧が10keV 程度と低いのでゲイト絶縁膜がマスクとして機能する。また、このn+ 領域317、318はシート抵抗が 500Ω以下(好ましくは 300Ω以下)となる様に調節する。(図4(C))
【0049】
以上の工程で形成された不純物領域は、n+ 領域がソース領域317、ドレイン領域318となり、n- 領域が低濃度不純物領域319となる。また、ゲイト電極直下の領域は不純物元素が添加されず、実質的に真性なチャネル形成領域320となる。
【0050】
なお、低濃度不純物領域319はチャネル形成領域320とドレイン領域318との間にかかる高電界を緩和する効果があり、LDD(ライトドープドレイン)領域とも呼ばれる。
【0051】
以上の様にして活性層が完成したら、ファーネスアニール、レーザーアニール、ランプアニール等の組み合わせによって不純物元素の活性化を行う。それと同時に添加工程で受けた活性層の損傷も修復される。
【0052】
次に、層間絶縁膜321を500 nmの厚さに形成する。層間絶縁膜321としては酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、有機性樹脂膜、或いはそれらの積層膜を用いることができる。
【0053】
なお、有機性樹脂膜としてはポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド等が用いられる。有機性樹脂膜の利点は、▲1▼成膜方法が簡単である点、▲2▼容易に膜厚を厚くできる点、▲3▼比誘電率が低いので寄生容量を低減できる点、▲4▼平坦性に優れている点などが挙げられる。
【0054】
次に、コンタクトホールを形成した後、ソース電極322、ドレイン電極323を形成する。最後に、基板全体を350 ℃の水素雰囲気で1〜2hr加熱し、素子全体の水素化を行うことで膜中(特に活性層中)のダングリングボンド(不対結合手)を補償する。
【0055】
以上の工程によって、図4(D)に示す様な構造のTFTを作製することができる。以下に、こうして得られたTFTの特徴について述べる。
【0056】
(本発明で用いる結晶性珪素膜の特徴)
まず、本願発明で得られたTFTの活性層の特徴について説明する。ハロゲン元素によるゲッタリングプロセス後の活性層は、非常に特徴的な構造の結晶性珪素膜で構成されている。
【0057】
具体的には、棒状または偏平棒状結晶が巨視的に見て特定の方向性をもって並んだ結晶構造体からなることがTEM(透過型電子顕微鏡法)による観察で確認される。また、この時、各結晶同士は互いに概略平行に並ぶ。
【0058】
なお、「特定の方向に規則性をもつ」とは、複数の棒状または偏平棒状結晶の成長方向がほぼ同一の方向に向かっていることを意味している。この場合、キャリアはまるで雨樋を流れる水の如く棒状または偏平棒状結晶の内部を優先的に進むと考えられるため、キャリアにとって異方性を有した結晶構造と言える。
【0059】
本発明者らは、この成長方向とチャネル方向(TFTがオン状態にある時にキャリアが移動する方向)とを一致させることで、非常に動作速度の高いTFTを得ている。
【0060】
また、ゲッタリングプロセスによって結晶同士の境界(結晶粒界)ではSi−Ni結合が切れ、Si−Si結合として再結合することにより不対結合手が激減する。即ち、結晶粒界の殆どは格子欠陥を形成せずに連続しており、結晶粒界は実質的にキャリアを捕獲しない。この事はキャリアの移動度が向上することを意味しており、後述するTFT特性はこの様な結晶構造に起因してなしうるものと考えられる。
【0061】
この事に関して、本発明者らがHR−TEM(高分解能透過型電子顕微鏡法)により結晶粒界付近の格子縞を観察した結果、異なる結晶間で格子縞が1対1に対応し、連続的に連なっていることが確認された。即ち、結晶粒界において結晶格子に連続性があり、不対結合手の如き結晶欠陥が殆ど存在しないことが判明している。
【0062】
さらに、結晶化終了直後の結晶とゲッタリングプロセス後の結晶とを比べるとゲッタリング後の方が結晶の内部欠陥が少ないことがTEMによる観察で確認された。これは 700℃を超える高い温度の加熱処理による効果と考えられる。
【0063】
即ち、本発明の結晶シリコン膜を形成するにあたって結晶化温度以上の温度でのアニール工程(本実施例の場合、図3(C)に示す工程)は、結晶粒内の欠陥低減に関して重要な役割を果たしている。その事について説明する。
【0064】
図10(A)は図3(B)に示した結晶化工程までを終了した時点での結晶シリコン膜を25万倍に拡大したTEM写真であり、結晶粒内(黒い部分と白い部分はコントラストの差に起因して現れる)に矢印で示される様なジグザグ状に見える欠陥が確認される。
【0065】
この様な欠陥は主としてシリコン結晶格子面の原子の積み重ね順序が食い違っている積層欠陥であるが、転位などの場合もある。図10(A)は{111}面に平行な欠陥面を有する積層欠陥と思われる。その事は、ジグザグ状に見える欠陥が約70°の角をなして折れ曲がっていることから推測できる。
【0066】
一方、図10(B)に示す様に、同倍率で見た本発明の結晶シリコン膜は、結晶粒内には殆ど積層欠陥や転位などに起因する欠陥が見られず、非常に結晶性が高いことが確認できる。この傾向は膜面全体について言えることであり、欠陥数をゼロにすることは現状では困難であるが、実質的にゼロと見なせる程度にまで低減することができる。
【0067】
即ち、本発明の結晶シリコン膜は結晶粒内の欠陥が殆ど無視しうる程度にまで低減され、且つ、結晶粒界が高い連続性によってキャリア移動の障壁になりえないため、単結晶または実質的に単結晶と見なせる。
【0068】
この様に、図10(A)と(B)の写真に示した結晶シリコン膜は結晶粒界はほぼ同等の連続性を有しているが、結晶粒内の欠陥数には大きな差がある。本発明の結晶シリコン膜が図10(A)に示した結晶シリコン膜よりも遙に高い電気特性を示す理由はこの欠陥数の差によるところが大きい。
【0069】
以上の事から、本発明にとって図3(C)に示した工程は必要不可欠な工程であることが判る。本発明者らは、この工程によって起こる現象について次の様なモデルを考えている。
【0070】
まず、図10(A)に示す状態では結晶粒内の欠陥(主として積層欠陥)には触媒元素(代表的にはニッケル)が偏析している。即ち、Si-Ni-Siといった形の結合が多数存在していると考えられる。
【0071】
しかしながら、触媒元素のゲッタリングプロセスを行うことで欠陥に存在するNiが除去されると、Si-Ni 結合は切れる。そのため、シリコンの余った結合手はすぐにSi-Si 結合を形成して安定する。こうして欠陥が消滅する。
【0072】
勿論、高い温度での熱アニールによって結晶シリコン膜中の欠陥が消滅することは知られているが、本発明ではニッケルとの結合が切れて未結合手が多く発生するためシリコンの再結合がさらにスムーズに行われると推測できる。
【0073】
また、同時に結晶シリコン膜が熱酸化される際に発生する余剰シリコン原子が安定性を求めて欠陥へと移動し、Si-Si 結合の生成に大きく寄与していると考えられる。この概念はいわゆる高温ポリシリコン膜の結晶粒内に欠陥が少ない理由として知られている。
【0074】
また、本発明者らは結晶化温度を超える温度(代表的には 700〜1100℃)で加熱処理を行うことで結晶シリコン膜とその下地との間が固着し、密着性が高まることで欠陥が消滅するというモデルを考えている。
【0075】
結晶シリコン膜と下地膜となる酸化珪素膜とでは、熱膨張係数に10倍近くの差がある。従って、非晶質シリコン膜から結晶シリコン膜に変成した段階(図10(A))では、結晶シリコン膜が冷却される時に非常に大きな応力が結晶シリコン膜にかかる。
【0076】
この事について、図11を用いて説明する。図11(A)は結晶化工程後の結晶シリコン膜にかかる熱履歴を示している。まず、温度(t1 )で結晶化された結晶シリコン膜は冷却期間(a)を経て室温まで冷やされる。
【0077】
ここで図11(B)に示すのは冷却期間(a)にある時の結晶シリコン膜であり、10は石英基板、11は結晶シリコン膜である。この時、結晶シリコン膜11と石英基板10との界面12における密着性はあまり高くなく、それが原因となって多数の粒内欠陥を発生していると考えられる。
【0078】
即ち、熱膨張係数の差によって引っ張られた結晶シリコン膜11は石英基板10上で非常に動きやすく、引っ張り応力などの力によって積層欠陥や転位などの欠陥13を容易に生じてしまうと考えられる。
【0079】
こうして得られた結晶シリコン膜が図10(A)に示した様な状態となるのである。そしてその後、図11(A)に示す様に温度(t2 )で触媒元素のゲッタリング工程が施され、その結果、結晶シリコン膜中の欠陥が前述の理由によって消滅する。
【0080】
ここで重要なことは触媒元素のゲッタリング工程が行われると同時に結晶シリコン膜石英基板に固着され、石英基板との密着性が高まる点である。即ち、このゲッタリング工程は結晶シリコン膜と石英基板(下地)との固着工程を兼ねていると考えられる。
【0081】
こうしてゲッタリング+固着工程を終了すると冷却期間(b)を経て室温まで冷やされる。ここで結晶化工程の後の冷却期間(a)と異なる点は、石英基板10とアニール後の結晶シリコン膜14との界面15が非常に密着性の高い状態となっている点である。(図11(C))
【0082】
この様に密着性が高いと石英基板10に対して結晶シリコン膜14が完全に固着されるので、結晶シリコン膜の冷却段階において結晶シリコン膜に応力が加わっても欠陥を発生するには至らない。即ち、再び欠陥が発生する様なことを防ぐことができる。
【0083】
なお、図11(A)では結晶化工程後に室温まで下げるプロセスを例にとっているが、結晶化が終了したらそのまま温度を上げてゲッタリング+固着工程を行うこともできる。その様なプロセスを経ても本発明の結晶シリコン膜を得ることは可能である。
【0084】
こうして得られた本発明の結晶シリコン膜(図10(B))は、単に結晶化を行っただけの結晶シリコン膜(図10(A))に較べて格段に結晶粒内の欠陥数が少ないという特徴を有している。
【0085】
この欠陥数の差は電子スピン共鳴分析(Electron Spin Resonance :ESR)によってスピン密度の差となって現れる。現状では本発明の結晶シリコン膜のスピン密度は少なくとも 5×1017spins/cm3 以下(好ましくは 3×1017spins/cm3 以下)であることが判明している。ただし、この測定値はは現存する測定装置の検出限界に近いので、実際のスピン密度はさらに低いと予想される。
【0086】
以上の様な結晶構造および特徴を有する本発明の結晶シリコン膜は、連続粒界結晶シリコン(Continuous Grain Silicon:CGS)と呼ばれる。
【0087】
(本発明のTFTの電気特性)
次に、本実施例に従って作製した薄膜トランジスタの電気特性を調べた結果について以下に述べる。測定は市販の装置(ヒューレットパッカード社製:型番4145B)を用いて行った。
【0088】
まず、本発明者らが行った1回目の試験について説明する。本発明者らは上記装置を用いてTFTを測定し、横軸にゲイト電圧、縦軸にドレイン電流をプロットしたグラフ(Id−Vg特性と呼ぶ)を調べた。なお、測定時の試料温度は試料を支持するサーモチャック(温度制御機能を有する)で室温に制御した。
【0089】
また、TFTサイズはL/W=8/8μmの場合(図1(A))と、L/W=8/200μmの場合(図1(B))について調べた。なお、Lはチャネル長、Wはチャネル幅である。
【0090】
そして、まず初期特性としてイニシャル状態のId−Vg特性を調べ、次に、初期特性を測定した後、同条件10回の繰り返し測定による劣化加速試験を行い、TFTが劣化する割合を調べた。
【0091】
以上の試験の結果を図1(A)、(B)に示す。図1(A)において101(実線)、102(点線)で示されるグラフがId−Vg特性(またはId−Vg曲線)である。そして、101が初期特性であり、102が10回繰り返し測定を行った後に測定した特性を表している。
【0092】
また、図1(A)において103(実線)、104(点線)はそれぞれ101、102に示すId−Vg特性に対応する電界効果移動度(モビリティ)の変動を表すグラフである。モビリティはTFTの動作速度を表す指針であり、Id−Vg特性のデータから理論的に計算で求めている。
【0093】
また、同様に図1(B)において105(実線)、106(点線)はそれぞれイニシャルおよび加速試験後のId−Vg特性であり、107(実線)、108(点線)はそれぞれイニシャルおよび加速試験後のモビリティである。
【0094】
この様な試験結果から本発明者らが得た知見を以下に示す。図1(A)の場合、イニシャル時には最大で 300cm2/Vs近いモビリティを達成していたのであるが、加速試験後には最大値で 220cm2/Vs程度にまで劣化してしまっている。また、ゲイト電圧が0V以下の領域でのドレイン電流(ここではオフ電流と呼ぶ)も加速試験後には2倍程度に増加してしまっている。
【0095】
ところが、図1(B)の場合、イニシャル時のモビリティ(107で示される)と加速試験後のモビリティ(108で示される)に大きな差は見られず、殆ど劣化していないことが確認された。また、オフ電流にも大きな変化は見られなかった。
【0096】
これらの結果から、10回繰り返し測定による加速試験ではチャネル幅の大きいTFTの方が劣化に強いという傾向が確認された。なお、本発明者らは数十個のTFTで同様の傾向を確認している。
【0097】
これらの結果を受けてチャネル幅の長さが異なることによるTFTの性質の違いを検討した結果、本発明者らはチャネル幅が大きい場合に起こる大電流による自己発熱に注目した。そこで、同一構造のTFTを積極的に加熱し、その状態で繰り返し測定による加速試験を行った。
【0098】
その結果を図2に示す。図2(A)はL/W=6.6/2μmのトリプルゲイト型TFTを室温で調べた結果、図2(B)は同じトリプルゲイト型TFTを125℃に加熱して調べた結果である。
【0099】
図2(A)に示す様に、室温で加速試験を行った場合、イニシャル状態のId−Vg特性(実線)201と加速試験後のId−Vg特性(点線)202とでは変化が見られないが、イニシャル状態のモビリティ(実線)203に対して加速試験後のモビリティ(点線)204は最大値で20%近くも劣化している。
【0100】
一方、図2(B)に示す様に、125℃に加熱した状態で加速試験を行った場合、イニシャル状態のId−Vg特性(実線)205、加速試験後のId−Vg特性(点線)206は殆ど変化が見られず、イニシャル状態のモビリティ(実線)207と加速試験後のモビリティ(点線)208との間にも大きな変化は見られなかった。
【0101】
以上の結果から、本願発明によるTFTは熱を加えることで劣化しにくくなる性質を持つことが確認された。この効果は、80℃以上で顕著になり、250℃程度まで確認されている。本発明者らの実験では100〜200℃の温度範囲内で安定な効果が得られている。
【0102】
従って、図1に示した試験の結果は、チャネル幅の大きいTFTが自己発熱により加熱され、結果的に劣化が抑制されていたと考えられる。なお、エミッション顕微鏡でチャネル幅が100μm以上のTFTを観察した場合、オン状態にある時のチャネル付近では発熱による発光が確認される。これは、おそらく100℃以上に加熱されることにより発光が観測されたものと予想される。
【0103】
なお、チャネル長(L)とチャネル幅(W)を様々に変えて実験を行った結果、チャネル幅が100μm以上であれば本願発明の効果を確認できた。特に、L/W=0.01以下(例えばL=2μmであればW=200μm以上)の関係にある時、顕著な効果を確認することができた。
【0104】
また、熱により劣化を防ぐまたは抑制するという効果は、本願発明のTFTに特有の現象である。本発明者らがいわゆる低温ポリシリコンTFTに対して同様の試験を行った結果、加熱によりしきい値電圧(Vth)が大きくシフトしてしまい使い物にならなかった。
【0105】
なお、低温ポリシリコンとしてニッケルの如き触媒元素を使用して結晶化したものと触媒元素を使用せずレーザーアニールのみで結晶化したものとを調べたが、どちらの場合も結果は同じであった。
【0106】
(本発明のTFTに関する推測)
上述の様なTFTの劣化は、特に電子がキャリアとなるN型TFTにおいて顕著である。実際のところ、本実施例に従って作製したP型TFTではどの様な条件でも殆ど劣化しないことが確認されている。
【0107】
これはTFTの劣化原因の代表例が、CHE(チャネルホットエレクトロン)注入とDAHC(ドレインアバランシェホットキャリア)注入であることからも容易に理解できる。
【0108】
CHE注入とは、チャネル内の電子がチャネルに沿った方向の電界により高いエネルギーを持ち、ついにはゲイト絶縁膜中に注入される現象である。また、DAHC注入とは、高エネルギーの電子が格子との衝突電離により電子−正孔対を形成し、それらがゲイト絶縁膜中に注入される現象である。(小柳光正:サブミクロンデバイスII,pp125 ,丸善株式会社,1998)
【0109】
これらの劣化現象は、ゲイト絶縁膜中に注入された電子が電気特性の変動を招くことにより引き起こされる。前述の繰り返し測定による劣化加速試験においてもCHE注入やDAHC注入による劣化が進行していると考えられる。
【0110】
本発明者らは、本願発明によるTFTを加熱することでCHE注入やDAHC注入による劣化を抑制しうる理由として、熱エネルギーによってゲイト絶縁膜中に捕獲された電子が活性層中へ再放出されるためと推測している。
【0111】
本願発明のTFTは完全空乏型(FD型)TFTであるので、非常にキャリアの移動度が高いという特徴がある。実際、図1、2に示す様にモビリティは平均で 200cm2/Vsを上回るものであり、一般的なTFTでは到底なし得ない電気特性を実現している。
【0112】
従って、その反面としてCHE注入やDAHC注入による劣化も生じやすいのであるが、加熱によりその様な劣化を防止または抑制することで非常に高い性能と高い信頼性を有するTFTが実現される。
【0113】
〔実施例2〕
本実施例は、実施例1に示した作製工程をもとにN型TFTとP型TFTとでなるCMOS回路を作製する例である。
【0114】
まず、実施例1に示す工程に従って図5(A)に示す状態を得る。図5(A)において、501は石英基板、502、503は活性層、504、505はゲイト絶縁膜、506、507はゲイト電極、508、509は無孔性の陽極酸化膜である。
【0115】
次に、P型TFTとなる領域をレジストマスク510で覆い、N型を付与する不純物元素(リンまたは砒素)を添加する。この工程は、実施例1に示した様に高加速電圧と低加速電圧の2回の工程に分けて行う。
【0116】
この工程によりN型TFTのソース領域511、ドレイン領域512、低濃度不純物領域513、チャネル形成領域514が形成される。(図5(B))
【0117】
次に、レジストマスク510を除去して、N型TFTとなる領域をレジストマスク515で覆い、P型を付与する不純物元素(ボロン)を添加する。この工程も高加速電圧と低加速電圧の2回に分けて行う。
【0118】
この工程によりP型TFTのソース領域516、ドレイン領域517、低濃度不純物領域518、チャネル形成領域519が形成される。(図5(C))
【0119】
次に、レジストマスク515を除去し、層間絶縁膜520を形成する。本実施例では、まず窒化珪素膜を25nmの厚さに形成し、その上に酸化珪素膜を900 nmの厚さに形成した積層膜を用いる。
【0120】
層間絶縁膜520を形成したら、コンタクトホールを形成してソース電極521、522およびドレイン電極523を形成する。ドレイン電極523はN型TFTとP型TFTとで共通化する。
【0121】
最後に、素子全体の水素化を行い、図5(D)に示した構造のCMOS回路が完成する。この様なCMOS回路はインバータ回路とも呼ばれ、消費電力が少ないという特徴がある。そのため、TFTで形成する様々な半導体回路の基本回路として多く用いられている。
【0122】
本実施例で作製したCMOS回路は、実施例1で説明した様に100〜200℃の温度状況の下で優れた信頼性を実現するため、その様な環境に曝される回路または大電流が流れて自己発熱が大きい回路に極めて有効である。
【0123】
〔実施例3〕
本実施例では、加熱状況下で劣化耐性が向上するという本願発明のTFTの特徴を最大限に生かすため、実施例2に示したCMOS回路をバッファ回路に適用する例を示す。
【0124】
図6に示すのは、アクティブマトリクス型表示装置の回路配置の一例である。601はシリコン基板、602は下地膜であり、その上に画素マトリクス回路603、ソースドライバー回路604、ゲイトドライバー回路605、ロジック回路606がTFTでもって形成されている。
【0125】
この場合、バッファ回路はソースドライバー回路604やゲイトドライバー回路605に組み込まれる。ここでソースドライバー回路604の基本的な回路構成を図7に示す。
【0126】
図7において、701はシフトレジスタ回路であって702に示す様なインバータ回路(クロックドインバータ回路も含む)で構成されている。そして、703がバッファ回路であり、複数のインバータ回路で構成されている。また、704はサンプリング回路であり、データ線から送られるビデオ信号をアナログスイッチ705で画素マトリクス回路へと送る。
【0127】
703で示されるバッファ回路の役割は電流増幅機能と考えれば良い。通常、画素マトリクス回路では1本のソース線に対して1000個を超えるTFTが接続されるため非常に大きな負荷がかかる。そのため、TFTの充放電を効率良く行うためには大電流を流す必要がある。
【0128】
その様な理由からアナログスイッチ705のチャネル幅は300 〜400 μm程度と非常に広くなっている。しかし、シフトレジスタ回路701のチャネル幅はせいぜい10μm程度である。シフトレジスタ回路は大電流を流す必要がないのでチャネル幅を狭くして回路の集積度を高めているのである。
【0129】
ところが、シフトレジスタ回路701から送られる電流でアナログスイッチ705を駆動しようとすると、負荷が大きすぎて駆動できない。そこで、アナログスイッチ705を駆動するために、電流を増幅してやることが必要となる。
【0130】
図7に示す回路では、徐々にチャネル幅が大きくなる様に設計された複数のインバータ回路を直列につないでバッファ回路703を構成している。こうすることで円滑な電流増幅が行われる。
【0131】
以上の様に、バッファ回路とは非常に大きな電流を取り扱う必要があるため、自己発熱の問題が最も顕著になる回路でもある。しかしながら、本願発明のTFTは自己発熱を逆手にとって劣化抑制に用いることができるため、まさにバッファ回路の信頼性を向上させる上で最適なTFTであると言える。
【0132】
勿論、バッファ回路だけでなく大電流を取り扱うサンプリング回路(特にアナログスイッチ)に本願発明のTFTを採用することは非常に有効である。
【0133】
〔実施例4〕
本実施例では、実施例1に示したハロゲン元素によるゲッタリング効果に加えてリン元素によるゲッタリング効果を得るための構成について説明する。説明には図8を用いる。
【0134】
まず、実施例1の工程に従ってハロゲン元素によるゲッタリングプロセスまで行い、図3(C)の状態を得る。次に、タンタルとタンタルを主成分とする材料との積層膜でなるゲイト電極801を形成する。
【0135】
次に、ゲイト電極801の表面を陽極酸化することによって陽極酸化膜802を形成する。陽極酸化膜802は保護膜として機能する。(図8(A))
【0136】
次に、ゲイト電極801をマスクとしてゲイト絶縁膜308をドライエッチング法によりエッチングする。そして、その状態でリン元素をイオン注入法により添加して不純物領域803、804を形成する。(図8(B))
【0137】
次に、窒化珪素膜を厚く形成した後、ドライエッチング法によるエッチバックを行い、サイドウォール805を形成する。そして、サイドウォール805を形成した後、再びリン元素を添加してソース領域806、ドレイン領域807を形成する。(図8(C))
【0138】
なお、サイドウォール805の下は2度目のリン元素が添加されず、ソース/ドレイン領域よりも低濃度にリン元素を含む一対の低濃度不純物領域808となる。また、ゲイト電極801の下は不純物の添加されないチャネル形成領域809となる。
【0139】
こうして図8(C)の状態が得られたら、450〜650℃(代表的には600℃)で8〜24時間(代表的には12時間)の加熱処理を行う。
【0140】
この加熱処理はリン元素による触媒元素(ここではニッケル)のゲッタリングを目的とした工程であるが、同時に不純物の活性化、活性層が受けたイオン注入時の損傷の回復が行われる。
【0141】
この工程では、加熱処理を行うことでチャネル形成領域809に残存するニッケルがソース/ドレイン領域806、807に移動し、そこでゲッタリングされて不活性化する。即ち、チャネル形成領域809内部に残存するニッケルを除去することが可能である。
【0142】
なお、ソース/ドレイン領域806、807は導電性を有していれば電極としての機能を果たすのでニッケルの有無が電気特性に影響を与える恐れがない。そのため、ゲッタリングサイトとして機能させうるのである。
【0143】
以上の様にして図8(D)の状態が得られたら、実施例1に従って層間絶縁膜810、ソース電極811、ドレイン電極812を形成して図8(E)に示す薄膜トランジスタが完成する。
【0144】
なお、本実施例ではゲイト電極としてタンタルを用いているが、導電性を有する結晶性珪素膜を用いても良い。また、低濃度不純物領域の形成方法は本実施例の手段に限定されるものではない。
【0145】
本実施例で最も重要な構成は、チャネル形成領域に残存する触媒元素をソース領域およびドレイン領域に移動させてゲッタリングすることにある。これは、リン元素による金属元素のゲッタリング効果に着目した発明である。
【0146】
なお、本実施例ではN型TFTの例を示したが、P型TFTの場合、ボロン元素だけではゲッタリング効果が得られないので、リン元素とボロン元素の両方をソース/ドレイン領域に添加することが必要である。
【0147】
〔実施例5〕
本実施例では、実施例1と異なる構造の薄膜トランジスタに本願発明を適用した場合の例について説明する。説明には図9を用いる。
【0148】
まず、石英基板901上にゲイト電極902を形成する。ゲイト電極902は後の熱酸化工程に耐えられる様にタンタル、シリコン等の耐熱性の高い電極を利用しておく。
【0149】
次に、ゲイト電極902を覆う様にしてゲイト絶縁膜903を形成する。その上には、後に活性層となる非晶質珪素膜を50nmの厚さに形成する。そして、実施例1と同様に開口部を有するマスク絶縁膜905を形成した後、ニッケル含有層906を形成する。
【0150】
こうして図9(A)の状態が得られたら、結晶化のための加熱処理を行い、横成長領域でなる結晶性珪素膜907を得る。(図9(B))
【0151】
次に、マスク絶縁膜905を除去してハロゲン元素を含む雰囲気中で加熱処理を行う。条件は実施例1に従えば良い。この工程によって結晶性珪素膜907中からニッケルがゲッタリングされ、気相中へと除去される。(図9(C))
【0152】
こうしてゲッタリングプロセスが完了したら、パターニングにより横成長領域のみでなる活性層908を形成し、その上に窒化珪素膜でなるチャネルストッパー909を形成する。(図9(D))
【0153】
図9(D)の状態が得られたら、N型を呈する結晶性珪素膜を形成してパターニングを施し、ソース領域910、ドレイン領域911を形成する。さらに、ソース電極912、ドレイン電極913を形成する。
【0154】
最後に、素子全体に対して水素雰囲気中で加熱処理を行い、図9(E)に示す様な構造の逆スタガ型TFTが完成する。本実施例で示す逆スタガ型TFTも実施例1と同様の結晶性珪素膜で活性層を構成しているので、加熱状況下で耐劣化特性が向上するという特徴を有している。
【0155】
なお、本実施例に示した構造は逆スタガ型TFTの一例であり、本実施例の構造に限定されるものではない。また、逆スタガ型TFTだけでなく他のボトムゲイト型TFTに適用することも可能である。
【0156】
【発明の効果】
実施例1に示した工程で得られた本願発明のよるTFTを80〜250℃(好ましくは100〜200℃)の温度範囲で用いることでホットキャリア注入による劣化(キンク効果)が効果的に防止または抑制され、非常に高い信頼性を確保することができる。
【0157】
また、大電流を取り扱う回路に本願発明のTFTを用いると、自己発熱によって常に加熱された状態となり、非常に高い信頼性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 TFTの電気特性を説明するための図。
【図2】 TFTの電気特性を説明するための図。
【図3】 薄膜トランジスタの作製工程を示す図。
【図4】 薄膜トランジスタの作製工程を示す図。
【図5】 薄膜トランジスタの作製工程を示す図。
【図6】 アクティブマトリクス型表示装置の回路配置を示す図。
【図7】 ドライバー回路の回路構成を示す図。
【図8】 薄膜トランジスタの作製工程を示す図。
【図9】 薄膜トランジスタの構造を示す図。
【図10】 活性層の結晶粒の様子を示すTEM写真。
【図11】 欠陥の生成および消滅に関するモデルを説明するための図。

Claims (6)

  1. 少なくともチャネル形成領域が、複数の棒状または偏平棒状結晶が互いに概略平行に特定の方向性をもって並んだ結晶構造体からなる薄膜トランジスタであって、
    前記チャネル形成領域を有する半導体層は、基板上に非晶質珪素膜を形成し、結晶化を助長する金属元素を前記非晶質珪素膜に選択的に添加し加熱処理を行うことによって前記非晶質珪素膜を前記基板に平行な方向に結晶化して結晶性珪素膜を形成し、ハロゲン元素を含む雰囲気中において700℃を超える温度で加熱処理を行うことによって前記結晶性珪素膜中の前記金属元素を低減して形成されたものであり、
    前記チャネル形成領域は、チャネル長をL、チャネル幅をWとした時、L/W=0.01以下、かつ、W=100μm以上であり、
    オン状態にある時の前記チャネル形成領域は自己発熱によって80〜250℃の温度に加熱されていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
  2. 請求項1において、
    前記ハロゲン元素を含む雰囲気は、HF、NF 、HBr、Cl 、ClF 、BCl 、F 、Br から選ばれた一種または複数種を含む雰囲気であることを特徴とする薄膜トランジスタ。
  3. 請求項1または2において、
    前記金属元素は、Ni、Ge、Co、Fe、Pd、Pt、Cu、Auから選ばれた一種または複数種であることを特徴とする薄膜トランジスタ。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一において、
    前記基板は石英基板であることを特徴とする薄膜トランジスタ。
  5. 請求項1乃至のいずれか一において、
    オン状態にある時の前記チャネル形成領域は完全に空乏化していることを特徴とする薄膜トランジスタ。
  6. 請求項1乃至のいずれか一において、
    前記薄膜トランジスタのゲート電極は側面にサイドウォールを有することを特徴とする薄膜トランジスタ。
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