JP4111995B1 - 神経栄養因子産生促進装置 - Google Patents

神経栄養因子産生促進装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4111995B1
JP4111995B1 JP2007550625A JP2007550625A JP4111995B1 JP 4111995 B1 JP4111995 B1 JP 4111995B1 JP 2007550625 A JP2007550625 A JP 2007550625A JP 2007550625 A JP2007550625 A JP 2007550625A JP 4111995 B1 JP4111995 B1 JP 4111995B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
frequency
neurotrophic factor
electromagnetic wave
production
cells
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007550625A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2008056414A1 (ja
Inventor
光晴 西
巌 木下
Original Assignee
株式会社メディカル・アプライアンス
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 株式会社メディカル・アプライアンス filed Critical 株式会社メディカル・アプライアンス
Application granted granted Critical
Publication of JP4111995B1 publication Critical patent/JP4111995B1/ja
Publication of JPWO2008056414A1 publication Critical patent/JPWO2008056414A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61NELECTROTHERAPY; MAGNETOTHERAPY; RADIATION THERAPY; ULTRASOUND THERAPY
    • A61N2/00Magnetotherapy
    • A61N2/004Magnetotherapy specially adapted for a specific therapy
    • A61N2/006Magnetotherapy specially adapted for a specific therapy for magnetic stimulation of nerve tissue
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61NELECTROTHERAPY; MAGNETOTHERAPY; RADIATION THERAPY; ULTRASOUND THERAPY
    • A61N2/00Magnetotherapy
    • A61N2/004Magnetotherapy specially adapted for a specific therapy
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61NELECTROTHERAPY; MAGNETOTHERAPY; RADIATION THERAPY; ULTRASOUND THERAPY
    • A61N2/00Magnetotherapy
    • A61N2/02Magnetotherapy using magnetic fields produced by coils, including single turn loops or electromagnets
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61NELECTROTHERAPY; MAGNETOTHERAPY; RADIATION THERAPY; ULTRASOUND THERAPY
    • A61N1/00Electrotherapy; Circuits therefor
    • A61N1/40Applying electric fields by inductive or capacitive coupling ; Applying radio-frequency signals

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Radiology & Medical Imaging (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Neurology (AREA)
  • Magnetic Treatment Devices (AREA)
  • Electrotherapy Devices (AREA)
  • Radiation-Therapy Devices (AREA)

Abstract

脳疾患等の各種の疾患を治療又は予防するために、患部への細胞移植や注射を施すことなく、治療場所を問わない簡易な手法によって、患部における神経栄養因子又は神経栄養因子様物質の産生を促進させる神経栄養因子産生促進装置を提供する。
神経栄養因子産生促進装置は、20〜180MHz、280〜600MHz、700〜1000MHzの範囲の高周波交番磁界を磁束密度0.01テスラ以下で細胞に対して作用させるため、当該周波数の高周波電磁波を発生させる高周波電磁波発生手段を備え、当該高周波数の高周波交番磁界による磁気刺激により、細胞内のカルシウムイオン濃度を上昇させ、神経栄養因子群のエキソサイトーシスを誘発させるとともに、磁気刺激により細胞内における神経栄養因子群の転写因子(mRNA)を増加させて、神経栄養因子群の合成及び細胞外への放出を促進させる。
【選択図】図6

Description

本発明は、脳疾患等の各種の疾患の治療に有用な神経栄養因子又は神経栄養因子様物質の産生を促進させる神経栄養因子産生促進装置に関する。
アルツハイマー型痴呆等の神経変性疾患、うつ病、脳血管疾患などの脳疾患は、中枢神経系細胞が脆弱化、損傷することが原因で生じる。これらの脳疾患を治療するために、新たに細胞を脳の中に移植するか、或いは、神経栄養因子を脳の中に注入して、壊れていく神経細胞を保護するといった、脳の再生療法が研究されている。このような再生療法の多くは未だ研究段階であるが、一部は既に臨床応用が行われつつあり、種々の脳疾患に対する新しい治療法として、注目を集めている。例えば、非特許文献1、2には、神経栄養因子を脳内に導入するため、神経栄養因子を産生する細胞を脳内に移植して、神経栄養因子の量的不足を補う治療法が開示されている。
"脳の再生医療"、[online]、日本脳神経外科学会、[2006年10月16日検索]、インターネット<http://square.umin.ac.jp/neuroinf/patient/701.html> "神経保護、神経修復薬の展望"、[online]、[2006年10月16日検索]、インターネット<http://www.h2.dion.ne.jp/~park/index1/i1014hogo.html>
ところで、上記中枢神経系細胞を修復する機能を有する神経栄養因子は、脳血液関門(即ち、脳内への有害物質の進入を防止するために血管と脳との間にあるバリア)を通過できないので、静脈注射等によっては神経栄養因子を脳内に投与することができない。従って、従来の脳の再生療法では、上記のように神経栄養因子を産生する細胞を脳内に移植するか、或いは、脳内に神経栄養因子を直接的に注入するしか方法が無かった。
しかしながら、脳に対する細胞移植や神経栄養因子の注入といった手法は、中枢神経系細胞の損傷、脳への感染等の重大な危険を伴う行為であるので、特定の高度な医療施設でのみ実現可能な治療方法であり、患者数が増加しているにも関わらず、患者がどこでも簡単に治療を受けることはできなかった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、脳疾患等の各種の疾患を治療又は予防するために、患部への細胞移植や注射を施すことなく、治療場所を問わない簡易な手法によって、患部における神経栄養因子又は神経栄養因子様物質の産生を促進させることが可能な、新規かつ改良された神経栄養因子産生促進装置を提供することにある。
脳疾患に対する磁気治療効果のメカニズムについては完全には解明されていないが、本願発明者らが鋭意努力したところ、所定の周波数の高周波交番磁界を、適切な磁界強度(例えば0.01テスラ以下)で、被治療体の患部における特定の細胞(神経栄養因子又は神経栄養因子様物質を産生可能な細胞、例えば、グリア細胞)に作用させることにより、当該細胞内のカルシウムイオン(Ca2+)濃度を上昇させて、神経栄養因子及び/又は神経栄養因子様物質(以下、「神経栄養因子及び/又は神経栄養因子様物質」を「神経栄養因子群」と称する場合もある。)のエキソサイトーシス(exocytosis:開口放出)なる反応を誘発させるとともに、当該細胞内の転写因子(mRNA:Messenger ribonucleic
acid)を増加させて、神経栄養因子群神経栄養因子群の合成及び放出を促進させることができ、これにより、神経栄養因子群神経栄養因子群の産生を促進できるという知見を得た。
そこで、本願発明者らは、かかる細胞における神経栄養因子群神経栄養因子群の産生促進作用に着目し、鋭意努力して、細胞に作用させる高周波交番磁界の周波数について実験及び検討を行った。この結果、神経栄養因子群神経栄養因子群の産生促進という磁気治療効果を、大幅に高めることが可能な好適な高周波交番磁界の周波数を見出し、以下のような本願発明に想到した。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、細胞に対して磁気刺激を与えることにより神経栄養因子又は神経栄養因子様物質の産生を促進させる神経栄養因子産生促進装置が提供される。この神経栄養因子産生促進装置は、所定の産生促進用高周波数の高周波交番磁界を所定の磁束密度で細胞に対して作用させるため、産生促進用高周波数の高周波電磁波を発生させる高周波電磁波発生手段と、産生促進用高周波数の高周波交番磁界による磁気刺激により、細胞内のカルシウムイオン濃度を上昇させ、神経栄養因子又は神経栄養因子様物質のエキソサイトーシスを誘発させるとともに、磁気刺激により細胞内における神経栄養因子又は神経栄養因子様物質の転写因子(mRNA)を増加させて、神経栄養因子又は神経栄養因子様物質の合成及び細胞外への放出を促進させるように、前記高周波電磁波発生手段で発生される前記高周波電磁波の前記産生促進用高周波数を、20〜180MHzに制御する周波数制御手段と、を備えることを特徴とする。
かかる構成により、磁気治療に適した産生促進用高周波数の高周波電磁波を発生させることによって、当該産生促進用高周波数の高周波交番磁界を放射して、被治療体の患部等の細胞に作用させることができる。かかる磁気刺激により、被治療体の患部における細胞内における神経栄養因子又は神経栄養因子様物質の産生を促進させ、この神経栄養因子又は神経栄養因子様物質により、疾患により脆弱化、損傷または数が減少している細胞を再生させて、当該疾患を好適に磁気治療できる。かかる磁気治療により、患部への細胞移植や注射を施すことなく、治療場所を選ばずに、簡易に疾患の治療又は予防を行うことができる。
また、上記20〜180MHz、280〜600MHz、700〜1000MHzの高周波交番磁界による磁気刺激を、神経栄養因子群神経栄養因子群を産生可能な細胞に作用させることにより、この細胞が産生した神経栄養因子群神経栄養因子群の作用により、疾患が原因で脆弱化等した細胞の神経突起の伸展度を、非刺激群と比して例えば2倍以上にできるので、磁気治療効果を向上できる。
また、上記細胞は、神経栄養因子及び/又は神経栄養因子様物質を産生可能な細胞であって、グリア細胞、神経細胞、繊維芽細胞、血管内皮細胞、表皮細胞、角化細胞、免疫細胞又は筋肉細胞を含んでもよい。
また、上記神経栄養因子は、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF−2)又はグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)のうち少なくともいずれかを含んでもよい。
また、神経栄養因子様物質は、アデノシン、アデノシン1リン酸(AMP)、マンガンイオン、ゲニピン、lysophosphatidylethanolamine、ガングリオシド又はRho-kinaseのうち少なくともいずれかであってもよい。
また、上記神経栄養因子産生促進装置は、中枢神経系又は脳脊髄神経系の細胞の脆弱化、損傷又は細胞数の減少が原因で生じる疾患を治療するために用いられる治療器であってもよい。
また、上記疾患は、神経変性疾患、うつ病、脳血管疾患又は脊髄損傷のうち少なくともいずれかであってもよい。
また、上記産生促進用高周波数は、60〜180MHz、280〜300MHz、450〜550MHz、又は、900〜950MHzの範囲から選択されるようにしてもよい。これにより、上記脆弱化等した細胞の神経突起の伸展度を、非刺激群と比して例えば2.5倍以上にできるので、さらに磁気治療効果を向上できる。
また、上記産生促進用高周波数は、100〜160MHzの範囲から選択されるようにしてもよい。これにより、上記脆弱化等した細胞の神経突起の伸展度を、非刺激群と比して例えば3倍以上にできるので、より一層磁気治療効果を向上できる。
また、上記産生促進用高周波数は、120〜160MHzの範囲から選択されるようにしてもよい。これにより、上記脆弱化等した細胞の神経突起の伸展度を、非刺激群と比して例えば3.5倍以上にできるので、顕著に磁気治療効果を向上できる。
また、上記高周波電磁波発生手段は、高周波電流を出力する高周波発振手段と;高周波発振手段から高周波電流が印加されることによって、産生促進用高周波数の高周波電磁波を発生させる高周波用アンテナと;を備えるようにしてもよい。これにより、上記産生促進用高周波数の高周波電磁波を好適に発生させて、産生促進用高周波数の高周波交番磁界を被治療体の患部の細胞に適切に作用させることができる。
また、上記高周波電磁波発生手段は、高周波電磁波を発生させるオン期間と、高周波電磁波を発生させないオフ期間を所定の周期で繰り返して、高周波電磁波を間欠的に発生させるようにしてもよい。これにより、高周波交番磁界を間欠的に発生させて被治療体の患部の細胞に作用させることができるので、当該細胞に対して、高周波交番磁界を作用させた状態と、作用させない状態とを繰り返し切り替えることができる。このため、当該細胞に作用する高周波交番磁界刺激に変化が生じ、磁気治療効果を高めることができる。
また、上記高周波電磁波発生手段は、高周波電磁波を発生させる第1のオン期間と、高周波電磁波を発生させない第1のオフ期間を、2.0±10%kHzに対応する周期で繰り返して、高周波電磁波を間欠的に発生させるようにしてもよい。また、上記高周波電磁波発生手段は、高周波電磁波を発生させる第2のオン期間と、高周波電磁波を発生させない第2のオフ期間を、7.8±10%Hzに対応する周期で繰り返して、高周波電磁波を間欠的に発生させるようにしてもよい。これにより、被治療体の患部の細胞が敏感に反応する好適な時間間隔で高周波交番磁界を間欠発生させて、患部の細胞に作用させることができる。
また、上記2.0±10%kHzの範囲から選択される産生促進用低周波数の低周波交番磁界を細胞に対して作用させるため、産生促進用低周波数の低周波電磁波を発生させる低周波電磁波発生手段を備えるようにしてもよい。これにより、被治療体の患部の細胞に対して、上記高周波交番磁界のみならず、磁気治療に適した産生促進用低周波数の周波数の低周波交番磁界を作用させて、磁気治療効果をさらに向上することができる。
また、上記低周波電磁波発生手段は、低周波電流を出力する低周波発振手段と;低周波発振手段から低周波電流が印加されることによって、産生促進用低周波数の低周波電磁波を発生させる低周波用アンテナと;を備えるようにしてもよい。これにより、産生促進用低周波数の低周波電磁波を好適に発生させて、産生促進用低周波数の低周波交番磁界を被治療体の患部の細胞に適切に作用させることができる。
また、上記低周波用アンテナに印加される低周波電流の立ち上がり時間は、0.1μ秒以下であるようにしてもよい。これにより、低周波交番磁界の強度の変化率を高めることができるので、細胞が低周波交番磁界を感じ易くなる。
また、上記低周波電磁波発生手段は、低周波電磁波を発生させるオン期間と、低周波電磁波を発生させないオフ期間を所定の周期で繰り返して、低周波電磁波を間欠的に発生させるようにしてもよい。これにより、低周波交番磁界を間欠的に発生させて被治療体の患部の細胞に作用させることができるので、当該細胞に対して、低周波交番磁界を作用させた状態と、作用させない状態とを切り替えることができる。このため、当該細胞に作用する低周波交番磁界刺激に変化が生じ、磁気治療効果を高めることができる。
また、上記低周波電磁波発生手段は、低周波電磁波を発生させる第3のオン期間と、低周波電磁波を発生させない第3のオフ期間を、7.8±10%Hzに対応する周期で繰り返して、低周波電磁波を間欠的に発生させるようにしてもよい。これにより、被治療体の患部の細胞が敏感に反応する好適な時間間隔で低周波交番磁界を間欠発生させて、当該細胞に作用させることができる。
また、上記高周波電磁波発生手段は、高周波電磁波を発生させるオン期間と、高周波電磁波を発生させないオフ期間を所定の周期で繰り返して、高周波電磁波を間欠的に発生させ、高周波電磁波のオン期間と、低周波電磁波のオン期間とは、同期しているようにしてもよい。これにより、高周波交番磁界と低周波交番磁界とは、同タイミングで発生/非発生を繰り返すので、双方の交番磁界が患部の細胞に作用するときと、作用しないときを明確に分離できる。このため、当該細胞に作用する交番磁界刺激に明確な変化が生じ、磁気治療効果を高めることができる。
また、上記高周波電磁波発生手段は、産生促進用高周波数より大きい周波数の高周波電磁波を、産生促進用高周波数に対応する周期で間欠的に発生させることによって、産生促進用高周波数の高周波電磁波を発生させるようにしてもよい。これにより、高い周波数の高周波電磁波を搬送波として、上記産生促進用高周波数の高周波電磁波を発生させることができる。
また、上記高周波電磁波発生手段が発生させる産生促進用高周波数の高周波電磁波は、産生促進用高周波数未満の高周波電磁波を発生させる際に生じる高調波を含んでもよい。つまり、高周波電磁波発生手段は、上記産生促進用高周波数の整数分の1の周波数の電磁波を発生させる際に、高調波として当該産生促進用高周波数の高周波電磁波を付随的に発生させる電磁波発生手段を含んでもよい。
以上説明したように本発明によれば、患部への細胞移植や注射を施すことなく、治療場所を問わない簡易な磁気治療によって、患部における神経栄養因子又は神経栄養因子様物質の産生を促進させて、脳疾患等の各種の疾患を治療又は予防できる。
本発明の第1の実施形態にかかる磁気治療器の外観を示す斜視図である。 同実施形態にかかる磁気治療器の内部構成の一例を示す平面図である。 同実施形態にかかる磁気治療器の内部構成の別の例を示す平面図、及び発振コイルを示す平面図である。 同実施形態にかかる磁気治療器の回路構成例を示すブロック図である。 同実施形態にかかる高周波用コイルおよび低周波用コイルに印加される高周波電流および低周波電流の波形を示す波形図である。 同実施形態にかかる磁気治療器を用いた治療態様を示す説明図である。 同実施形態にかかる磁気治療器を用いた治療態様を示す説明図である。 同実施形態にかかる磁気治療器による磁気治療効果のメカニズムを示すフローチャートである。 本発明の実施例にかかる実験1で用いた磁気刺激装置の構成を示す斜視図である。 本発明の実施例にかかる実験1の実験結果を示すグラフである。 本発明の実施例にかかる実験2の実験結果を示すグラフである。 本発明の実施例にかかる実験5の実験結果を示すグラフである。 上記実施形態にかかる磁気治療器が発生させた電磁波の周波数の測定結果を示すグラフである。
符号の説明
10、10A、10B 磁気治療器(神経栄養因子産生促進装置)
12 ハウジング
16 表示部
18 電源部
20 制御ブロック
21 電源供給回路
22 主制御回路
23 クロック生成回路
24 高周波発振手段
25 低周波発振手段
30、30A、30B 高周波用コイル
40、40A、40B 低周波用コイル
50 発振コイル
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(第1の実施の形態)
以下に、本発明の第1の実施形態にかかる神経栄養因子産生促進装置の一例として、磁気治療器について説明する。この磁気治療器は、人体の患部の細胞に磁気刺激を与えることで、細胞における神経栄養因子及び/又は神経栄養因子用物質(以下、「神経栄養因子及び/又は神経栄養因子用物質」を「神経栄養因子群神経栄養因子群」と称する。)の産生を促進させ、脳疾患等の各種の疾患を治療及び予防するための治療器である
<磁気治療器の構成>
まず、図1に基づいて、本実施形態にかかる磁気治療器10の外観構成について説明する。なお、図1は、本実施形態にかかる磁気治療器10の外観構成を示す斜視図である。
図1に示すように、磁気治療器10は、例えば、ハウジング12と、操作部14と、表示部16とを備える。
ハウジング12は、内部に磁気治療器10の主要な各装置を収容するための筐体であり、例えば、プラスチック等の合成樹脂などで形成されている。このハウジング12は、図1の例では、平坦な略直方体形状(例えば、長さ8cm×幅6cm×高さ2cm程度)を有しているが、かかる例に限定されず、例えば、略球状、略楕円球状、略棒状、略立方体形、その他ユーザが把持しやすい形状など、任意の形状に変更可能である。磁気治療器10のユーザは、かかるハウジング12を把持して、磁気治療器10を患部に対して直接接触させる、或いは患部に対して所定距離以内に接近させることにより、磁気治療器10から放射された電磁波(交番磁界を含む。)を患部に作用させることができる。
操作部14は、例えば、磁気治療器10の動作(交番磁界の照射動作など)をオン/オフするためのスイッチなどである。ユーザは、例えば、かかる操作部14を押下するごとに、磁気治療器10の動作/非動作を切り替えることができる。
また、表示部16は、例えば、LED(発光ダイオード)等の発光ランプなどで構成される。この表示部16は、磁気治療器10の動作/非動作の状態や、後述する電源部(図示せず。)の残量または充電の状態などを表示することができる。本実施形態では、この表示部16は、赤色LED16aと緑色LED16bの2つのLEDで構成されている。この赤色LED16aは、例えば、電源部の電池残量等が所定レベル以上であれば点灯し、このレベル未満であれば点滅する。また、緑色LED16bは、磁気治療器10の動作時には点灯又は点滅し、非動作時には消灯する。
しかし、表示部16は、かかる例に限定されず、例えば、文字または図形等を表示可能な液晶表示装置(LCD)などから構成されもよい。これにより、表示部16は、磁気治療器10が照射している電磁波(交番磁界)の周波数若しくは強度、照射を継続した時間、照射タイミング、治療スケジュール、電池の残量、時刻、または温度などの各種情報を表示することが可能になる。
次に、図2A、図2Bに基づいて、本実施形態にかかる磁気治療器10の内部構成について説明する。なお、図2Aは、本実施形態にかかる磁気治療器10の内部構成の一例(磁気治療器10A)を示す平面図であり、図2Bは、本実施形態にかかる磁気治療器10の内部構成の別の例(磁気治療器10B)を示す平面図、及び、その内部の発振コイル50を示す斜視図である。
図2Aに示すように、磁気治療器10Aのハウジング12の内部には、例えば、電源部18と、制御ブロック20と、高周波用コイル30Aと、低周波用コイル40Aと、が設けられている。このうち、制御ブロック20、高周波用コイル30Aおよび低周波用コイル40Aは、例えば、同一の基板17上に設置されており、ハウジング12に対してまとめて脱着可能である。
電源部18は、例えば、各種の充電池または乾電池などの電池(例えば9Vの乾電池等)などで構成された直流の電源装置であり、磁気治療器10A内の各部に対して電力を供給する。また、制御ブロック20は、例えば、磁気治療器10A内の各部を制御する制御装置、高周波を発振する高周波発振回路およびクロック生成回路など(いずれも図示せず。)が設置されている回路基板であるが、詳細については後述する(図3参照。)。
高周波用コイル30Aは、高周波電流が印加されることにより高周波電磁波を放射するアンテナ(高周波用アンテナ)の一例である。この高周波用コイル30Aは、例えば、比較的太い銅線を8回巻きしたコイルで構成されたループアンテナである。かかる高周波用コイル30Aは、例えば、上記制御ブロック20から高周波電流が印加されることにより、産生促進用高周波数(例えば100〜160MHz)である高周波電磁波を発生させ、周囲に放射することができる。この高周波電磁波は、高周波交番磁界及び高周波交番電界を含む。
一方、低周波用コイル40Aは、低周波電流が印加されることにより低周波電磁波を放射するアンテナ(低周波用アンテナ)の一例である。この低周波用コイル40Aは、例えば、比較的細い銅線を軸芯に500回巻きしたコイルで構成されたループアンテナである。かかる低周波用コイル40Aは、例えば、上記制御ブロック20から低周波電流が印加されることにより、周波数が例えば約2.0kHzである低周波電磁波を発生させ、周囲に放射することができる。この低周波電磁波は、低周波交番磁界及び低周波交番電界を含む。
これらの高周波用コイル30Aおよび低周波用コイル40Aは、例えば、それぞれの中心軸が例えば略同一方向となるように平行に設置されている。そして、この高周波用コイル30Aおよび低周波用コイル40Aは、それらの中心軸が、ハウジング12の最も広い面(図1の上面及び下面)に対して平行となるように配置されている。このため、高周波用コイル30Aおよび低周波用コイル40Aが発生した高周波電磁波および低周波電磁波により、磁力線がハウジング12の側面に対して垂直になるような高周波交番磁界及び低周波交番磁界が形成される。
次に、図2Bに示す磁気治療器10Bについて説明する。図2Bに示すように、磁気治療器10Bのハウジング12の内部には、例えば、電源部18と、制御ブロック20と、高周波用コイル30Bと低周波用コイル40Bとを含む発振コイル50と、が設けられている。このうち、制御ブロック20、高周波用コイル30Bおよび低周波用コイル40Bは、例えば、同一の基板17上に設置されており、ハウジング12に対してまとめて脱着可能である。なお、図2Bの磁気治療器10Bは、上記図2Aの磁気治療器10Aと比べて、高周波用コイル30Bと低周波用コイル40Bの構成及び配置が異なるのみであり、その他の構成要素は略同一であるので、詳細説明は省略する。
発振コイル50は、図2Bに示すように、例えば、直径3cm、軸方向の幅9mm、径方向の厚さ2mmのアクリル製の環状基台部52の外周に、比較的太い銅線を巻いた高周波用コイル30Bと、比較的細い導線を巻いた低周波用コイル40Bを形成したものである。このうち、高周波用コイル30Bは、1回巻きソレノイドコイル(直径3cm)であり、低周波用コイル40Bは、200回巻きソレノイドコイル(直径3cm、巻き幅5mm)である。このように、発振コイル50は、1つの環状基台部52に、高周波用コイル30B及び低周波用コイル40Bという2種のコイルを同軸上に作成したものである。
この発振コイル50は、その中心軸(高周波用コイル30B及び低周波用コイル40Bの中心軸)が、ハウジング12の最も広い面(図1の上面及び下面)に対して垂直となるように配置されている。このため、高周波用コイル30Bおよび低周波用コイル40Bが発生した高周波電磁波および低周波電磁波により、磁力線がハウジング12の最も広い面に対して垂直になるような高周波交番磁界及び低周波交番磁界が形成される。
以上、図2A、図2Bを参照して、磁気治療器10の2つの構成例(10A、10B)について説明した。上記の磁気治療器10Aと磁気治療器10Bとでは、交番磁界の磁力線が形成される方向や形状が異なる。しかし、いずれの場合も、高周波用コイル30A、30B(以下「高周波用コイル30」と総称する。)および低周波用コイル40A、40B(以下「低周波用コイル40」と総称する。)が発生した高周波電磁波および低周波電磁波は、例えば、コイルの中心軸を中心とする全周方向に対して略均等に拡散するように照射される。このため、磁気治療器10A、10Bのいかなる面をいかなる角度で患部に接触又は接近させても磁気治療効果がある。従って、かかる磁気治療器10を用いた治療が簡便になる。
なお、高周波電磁波又は低周波電磁波を放射するアンテナとしては、上記図2の高周波用コイル30及び低周波用コイル40のようなループアンテナの例に限定されず、例えば、ロッドアンテナ等の各種のアンテナを用いることができる。
次に、図3に基づいて、本実施形態にかかる磁気治療器10の回路構成および動作についてより詳細に説明する。なお、図3は、本実施形態にかかる磁気治療器10の回路構成を示すブロック図である。
なお、以下に説明する制御ブロック20および上記高周波用コイル30は、所定の産生促進用周波数(例えば83.3MHz)の高周波電磁波を発生させる高周波電磁波発生手段の一構成例である。また、この制御ブロック20および上記低周波用コイル40は、所定の周波数(例えば2kHz)の低周波電磁波を発生させる低周波電磁波発生手段の一構成例である。
図3に示すように、制御ブロック20は、例えば、主制御回路22と、電源供給回路21と、クロック生成回路23と、高周波発振手段24と、低周波発振手段25とを備える。
主制御回路22は、例えば、1チップマイクロコンピュータなどで構成されており、制御ブロック20内の各部を制御する機能を有する。
電源供給回路21は、例えば、オン/オフ制御回路212と、昇圧回路214と、降圧回路216とを有しており、上記電源部18からの電力を制御ブロック20内の各部に供給することを制御する機能を有する。具体的には、オン/オフ制御回路212は、例えば、操作部14のスイッチのオン/オフを検出して、検出結果を主制御回路22に入力する。また、オン/オフ制御回路212は、主制御回路22のオン/オフ指示に基づいて、電源部18から高周波用コイル30および低周波用コイル40などへの電力供給をオン/オフする。
また、昇圧回路214は、例えば、9Vの乾電池からなる等電源部18からの電力を、必要に応じて昇圧することができる。これにより、高周波用コイル30および低周波用コイル40に供給する電圧を例えば9Vに維持することができる。また、昇圧回路214は、例えば、電源部18の電池の消耗等により、自身の出力できる電圧が所定レベル以下に降下した場合には、主制御回路22に対して電池消耗のエラー信号を出力することもできる。この結果、主制御回路22は、当該エラー信号が入力されると、例えば、赤色LED16aを点灯から点滅に切り替える制御を行い、電池の消耗をユーザに通知することができる。
また、降圧回路216は、電源部18の電源を降圧することにより、主制御回路22等に供給する電圧を例えば5Vに維持することができる。また、降圧回路216は、例えば、電源部18の電池の消耗等により、自身が出力できる電圧が所定レベル以下に降下した場合には、主制御回路22に対して電圧低下のエラー信号を出力することもできる。この結果、主制御回路22は、例えば、電圧降下などによる突発的な動作停止等のトラブルを未然に防止するべく、磁気治療器10全体の動作を停止するよう制御する。この結果、例えば、磁気治療器10の動作中には点灯していた緑色LED16bが、消灯するよう制御されるので、磁気治療器10の動作が停止したことをユーザに通知することができる。
クロック生成回路23は、例えば、所定周波数のクロック信号を生成して、主制御回路22に出力する。このクロック生成回路23は、例えば、32.7kHzおよび10MHzのクロック信号を生成できるように構成されている。主制御回路22は、このクロック生成回路23から入力されたクロック信号を低周波発振回路254に出力する。低周波発振回路254は、当該クロック信号に基づいて、例えば、2.0kHzおよび7.81Hzのクロック信号を生成し、変調回路246およびコイル駆動回路258にそれぞれ出力する。
高周波発振手段24は、所定の産生促進用周波数(例えば約83.3MHz)の高周波電流を生成して、高周波用コイル30に印加する。この高周波発振手段24は、例えば、周波数制御回路242と、高周波発振回路244と、変調回路246と、コイル駆動回路248とを有する。
周波数制御回路242は、高周波発振回路244が生成する高周波の周波数を制御する機能を有する。具体的には、この周波数制御回路242は、例えば、主制御回路22からの周波数設定信号、および高周波発振回路244からフィードバックされた高周波に基づいて、高周波発振回路244が出力する高周波の周波数を制御する。この結果、高周波発振回路244は、例えば83.3MHzの高周波を安定的に発振して、変調回路246に出力することができる。なお、高周波は、所定の周波数を伝達できる信号であれば、高周波電流または高周波電圧の何れであってもよい。また、上記高周波発振回路244が出力する83.3MHzの高周波は、例えば略正弦波信号である。
変調回路246は、例えば、低周波発振回路254から入力されるクロック信号に基づいて、高周波発振回路244から入力された83.3MHzの高周波を、例えば2段階でオン/オフ処理して間欠的に出力することができる。
第1段階のオン/オフ処理は、例えば、2.0kHzのクロック信号に基づいて、入力された83.3MHzの高周波を部分的にカットして、間欠的に出力する処理である。具体的には、変調回路246は、例えば、所定の第1のオン期間(例えば400μsec)は83.3MHzの高周波をそのまま出力し、次いで、所定の第1のオフ期間(例えば100μsec)は当該高周波の振幅をカットした信号として出力する処理を繰り返す。これにより、変調回路246は、例えば、定常的な正弦波として入力された83.3MHzの高周波を、例えば2.0kHz相当の周期でオン/オフして、83.3MHzの高周波を間欠発振することができる。換言すると、変調回路246は、例えば、高周波発振回路244から入力された83.3MHzの高周波を搬送波として、2.0kHzの略矩形波を表す信号を出力する変調処理を行うことができる。
また、第2段階のオン/オフ処理は、例えば、上記第一段階目のオン/オフ処理がなされた高周波を、7.81Hzのクロック信号に基づいて、さらに部分的にカットして間欠的に出力する処理である。具体的には、変調回路246は、例えば、所定の第2のオン期間(例えば64msec)は当該高周波をそのまま出力し、次いで、所定の第2のオフ期間(例えば64msec)は当該高周波の振幅をカットした信号として出力する処理を繰り返す。これにより、変調回路246は、例えば、上記のように2.0kHz相当の周期で間欠した83.3MHzの高周波を、7.81Hz相当の周期でオン/オフして、さらに大きい周期で間欠した高周波を間欠発振することができる。換言すると、変調回路246は、例えば、高周波発振回路244から入力された83.3MHzの高周波を搬送波として、7.81Hzの略矩形波を表す信号を出力することができる。
このような変調回路246による2段階のオン/オフ処理が施された高周波は、コイル駆動回路248に入力される。コイル駆動回路248は、入力された高周波を電源供給回路21からの電力で増幅し、周波数が83.3MHzの高周波電流を2.0kHz及び7.81Hzに相当する2つの周期で間欠発振して、高周波用コイル30に印加する。このとき、コイル駆動回路248は、高周波用コイル30に印加する高周波電流の電流値を制御することにより、高周波用コイル30が発生する高周波電磁波の磁界強度(磁束密度)を制御して、患部に対して作用する高周波交番磁界の磁界強度が例えば50nT〜0.01T以下の範囲となるようにする。例えば、本実施形態にかかる磁気治療器10Bの高周波用コイル30Bが発生する高周波電磁波の磁界強度を実測したところ、1.3μTであり、これによって、高周波用コイル30Bからの有効距離が3mmの範囲内で、患部に対して50μT以上の高周波交番磁界を作用させることができる。
一方、低周波発振手段25は、例えば、約2kHzの低周波電流を生成して、低周波用コイル40に印加する。この低周波発振手段25は、例えば、低周波発振回路254と、コイル駆動回路258とを有する。
低周波発振回路254は、上述したように、主制御回路22から入力されたクロック信号に基づき、例えば2.0kHzおよび7.81Hzのクロック信号を生成し、変調回路246およびコイル駆動回路258にそれぞれ出力する。また、低周波発振回路254は、例えば、当該クロック信号に基づいて、2.0kHzの低周波を略矩形波として生成し、さらに、この低周波に対して、例えば約7.81Hz相当の周期で(64msecごとに)オン/オフ処理を施して、約7.81Hz相当の周期で間欠する2kHzの低周波を生成する。具体的には、低周波発振回路254は、例えば、所定の第3のオン期間(例えば64msec)は当該低周波をそのまま出力し、次いで、所定の第3のオフ期間(例えば64msec)は当該低周波の振幅をカットした信号として出力する処理を繰り返す。これにより、低周波発振回路254は、例えば、2.0kHzの低周波を、7.81Hz相当の周期でオン/オフして間欠発振することができる。なお、この低周波発振回路254の前後にも、上記周波数制御回路242及び変調回路246に相当する回路を設けてもよい。
コイル駆動回路258は、低周波発振回路254から入力された低周波を電源供給回路21からの電力で増幅して、周波数が2.0kHzの高周波電流を7.81Hzに相当する周期で間欠的に発振して、低周波用コイル40に印加する。このとき、コイル駆動回路258は、低周波用コイル40に印加する低周波電流の電流値を制御することにより、低周波用コイル40が発生する低周波電磁波の磁界強度(磁束密度)を制御することで、患部に対して作用する低周波交番磁界の磁界強度が例えば50nT〜0.01T以下の範囲となるようにする。例えば、本実施形態にかかる磁気治療器10Bの低周波用コイル40Bが発生する高周波電磁波の磁界強度を実測したところ、13μTであり、これによって、低周波用コイル40Bからの有効距離が3mmの範囲内で、患部に対して50μT以上の低周波交番磁界を作用させることができる。
<電磁波発生タイミング>
ここで、図4を参照して、本実施形態にかかる高周波用コイル30および低周波用コイル40に印加される高周波電流および低周波電流の波形について詳細に説明する。なお、図4は、本実施形態にかかる高周波用コイル30および低周波用コイル40に印加される高周波電流および低周波電流の波形を示す波形図である。
図4(a)に示すように、高周波用コイル30には、産生促進用周波数(例えば約83.3MHz)の高周波電流が印加されている。この高周波電流は、例えば、振幅が30mAであり、0Aを中心とした対称な略正弦波となっている。
また、この高周波電流は、例えば、連続波ではなく、周期的にオン/オフされた断続波となっている。詳細には、高周波電流は、例えば400μsecの第1のオン期間(1)と、例えば100μsecの第1のオフ期間(2)とを交互に繰り返した波形を有し、例えば約2.0kHzに対応する周期で間欠している。さらに、かかる高周波電流は、より大きい時間スケールでは、例えば64msecの第2のオン期間(3)と、例えば64msecの第2のオフ期間(4)とを交互に繰り返した波形を有し、例えば約7.81Hzに対応する周期でも間欠している。また、この高周波電流は、例えば約83.3MHzと高周波であるので、その立ち上がり時間および立ち下がり時間が例えば0.003μsec以下と非常に微少である。
これに対し、図4(b)に示すように、低周波用コイル40には、例えば、周波数が約2.0kHzの低周波電流が印加されている。この低周波電流は、例えば、約2.0kHzの周期で、17μAまたは0Aの2値を交互にとる矩形波(方形波)となっている。この低周波電流が17μAとなる期間(5)は、例えば400μsecであり、0Aとなる期間(6)は、例えば100μsecである。また、この低周波電流の略矩形波は、その立ち上がり時間が0.1μsec以下であり、立ち下がり時間が例えば1.0μsec以下となるように調整されている。このように、低周波用コイル40に印加する低周波電流の立ち上がり時間を0.1μsec以下、立ち下がり時間を1.0μsec以下と非常に短くすることで、この低周波電流の印加により低周波用コイル40から発生する低周波電磁波の単位時間当たりの変化量を大きくすることができる。これにより、磁気刺激対象の細胞が極微弱磁界(磁束密度が例えば50nT〜0.01T)を感じやすくなる(即ち、細胞が磁気刺激を受けやすくなる)ので、神経栄養因子群の産生を更に促進できる。なお、低周波用コイル40に印加する電圧の立ち上り時間を短くしても、コイル周囲に発生する磁界変化率は大きくならないが、上記のように低周波電流の立ち上り時間を短くすることにより、磁界変化率を大きくすることができ、細胞が磁界を敏感に感じるようになる。
また、この低周波電流も、例えば、連続波ではなく、例えば約7.81Hzで周期的にオン/オフされた断続波となっている。詳細には、低周波電流は、例えば64msecの第3のオン期間(6)と、例えば64msecの第3のオフ期間(8)とを交互に繰り返した波形を有し、例えば約7.81Hzに対応する周期で間欠している。
さらに、図4(a)および図4(b)を比較すると、高周波電流が7.81Hzの周期でオン/オフされるタイミングと、低周波電流が7.81Hzの周期でオン/オフされるタイミングとが同期している。より詳細には、高周波電流および低周波電流は、ともに7.81Hzに対応する周期で間欠して(具体的には、例えば128msecの周期でオン/オフを繰り返して)いるが、このとき、高周波電流の第2のオン期間(3)(若しくは第2のオフ期間(4))と、低周波電流の第3のオン期間(7)(若しくは第3のオフ期間(8))とが略同一のタイミングとなるように、高周波電流および低周波電流の印加タイミングが調整されている。
加えて、高周波電流が高周波用コイル30に印加される期間(1)(高周波電流のオン期間)と、低周波電流が例えば17μAとなる期間(5)(即ち、低周波用コイル40に電流が流れる期間)とが、同期している。より詳細には、高周波電流は2.0kHzで間欠して(具体的には、例えば500μsecの周期でオン/オフを繰り返して)いる一方、低周波電流は2.0kHzで17μAまたは0Aの2値を交互にとっている。この場合において、高周波電流の第1のオン期間(1)と、低周波電流が17μAとなる期間(5)とが一致しており、高周波電流の第1のオフ期間(2)と、低周波電流が0Aとなる期間(6)とが一致している。このように、高周波電流が実際に高周波用コイル30に流れる期間と、低周波電流が実際に低周波用コイル40に流れる期間とが同期するように、高周波電流および低周波電流の印加タイミングが調整されている。
上記のような高周波電流が例えば9Vで印加されることにより、高周波用コイル30は、例えば、図4(a)に示したような高周波電流と略同一の波形の高周波電磁波を、発生して周囲に放射することができる。この高周波電磁波は、例えば、周波数が約83.3MHzの高周波の略正弦波であり、約2.0kHzおよび約7.81Hzに相当する周期で周期的に間欠している。かかる高周波電磁波の照射により、例えば、磁気治療器10の周囲に、産生促進用高周波数が例えば83.3MHzである高周波交番磁界を、間欠的に発生させることができる。
より詳細には、この高周波交番磁界は、例えば、磁束密度(磁場強度)が例えば1.3μTを最大振幅として約83.3MHzで周期的に増減し、磁場の向きが正負両方向に約83.3MHzで周期的に変動する交番磁界であって、例えば約2.0kHzおよび約7.81Hz相当の周期で間欠して発生したものである。
このように間欠した高周波交番磁界を発生させることにより、磁気治療器10は、例えば、被治療体(人体の患部等)に対して、産生促進用高周波数である約83.3MHzの高周波交番磁界だけでなく、この高周波交番磁界を搬送波とする約2.0kHzおよび約7.81Hzの低周波交番磁界も同時に照射しているように作用できる。
また、上記のような低周波電流が例えば9Vで印加されることにより、低周波用コイル40は、例えば、図4(b)に示したような低周波電流と略同一の波形の低周波電磁波を発生させて、周囲に放射することができる。この低周波電磁波は、例えば、周波数が約2.0kHzの低周波の略矩形波であり、約7.81Hzで周期的に間欠している。かかる低周波電磁波の照射により、例えば、磁気治療器10の周囲に、産生促進用低周波数が例えば約2.0kHzである低周波交番磁界を、間欠的に発生させることができる。
より詳細には、この低周波交番磁界は、例えば、磁場の強度が例えば例えば13μTであり、磁場の向きが例えば正方向のみに固定された磁場を、2.0kHzの周期でオン/オフする(例えば、400μsecのオン期間と、100μsecのオフ期間を交互に繰り返す)することにより生じた交番磁界であり、全体としては、約7.81Hz相当の周期で間欠して発生されたものである。
このように間欠した低周波交番磁界を発生することにより、磁気治療器10は、例えば、被治療体に対して、産生促進用低周波数である約2.0kHzの低周波交番磁界だけでなく、この低周波交番磁界を搬送波とする約7.81Hzの低周波交番磁界も同時に照射しているように作用できる。
さらに、高周波用コイル30および低周波用コイル40に対して、上記高周波電流及び低周波電流を同時並行して印加することにより、かかる高周波電磁波と低周波電磁波を同時に発生させることができる。この結果、例えば、磁気治療器10の周囲に、高周波交番磁界と低周波交番磁界を同時に発生させることができる。このとき、上記図4で示したように、例えば、高周波電磁波および低周波電磁波の7.81Hzでの間欠タイミングが相互に同期しており、かつ、高周波電磁波の2.0kHzでの間欠タイミングと、低周波電磁波による2.0kHzでの磁場発生タイミングとが同期している。
これにより、高周波電磁波照射による高周波交番磁界の発生タイミングと、低周波電磁波照射による磁界の発生タイミングとを同期させることができる。即ち、高周波用コイル30が高周波交番磁界を発生するときには、低周波用コイル40も所定強度の磁界を発生する一方、高周波用コイル30が高周波交番磁界を発生しないときには、低周波用コイル40も所定レベルの磁界を発生しないようにできる。従って、磁気治療器10は、全体として、磁界(高周波用コイル30が発生する高周波交番磁界、および低周波用コイル40が発生する所定レベルの磁界)の発生/非発生を周期的に繰り返すことができる。
なお、上記では交番磁界の発生について説明したが、上記電磁波の照射により高周波交番電界と低周波交番電界も発生している。これらの交番電界の発生態様は、例えば、上記交番磁界の発生態様と略同一であるので、その説明は省略する。
また、上記図3及び図4の例では、産生促進用高周波数として83.3MHzの高周波電磁波を発生させ、産生促進用低周波数として2.0kHzの低周波電磁波を発生させる例について説明したが、発生させる周波数はかかる例に限定されない。本実施形態にかかる磁気治療器10は、上記と同様な構成で、産生促進用高周波数として例えば20〜180MHz、280〜600MHz、700〜1000MHzの範囲の高周波電磁波を発生させることが可能であり、また、産生促進用低周波数として例えば2±10%kHzの範囲の低周波電磁波を発生させることが可能である。
<磁気治療器による磁気治療態様>
次に、図5A及び図5Bに基づいて、本実施形態にかかる磁気治療器10による磁気治療態様およびその作用効果について説明する。なお、図5A及び図5Bは、本実施形態にかかる磁気治療器10A、10B(図2A、図2B参照。)を用いた治療態様を示す説明図である。
図5A及び図5Bに示すように、磁気治療器10は、例えば乾電池等の電池で作動する小型軽量の治療器(例えば家庭用治療器)であり、患者が容易に携帯可能である。また、この磁気治療器10は、上記高周波用コイル30及び低周波用コイル40からの電磁波の発生により、体外から脳内等の患部の細胞に磁気刺激を作用させることができる磁気刺激式の治療器である。このため、磁気治療器10は、従来の電極貼付型の治療器のように人体に電流を流すための電極や、特殊な大型の装置を必要とせず、また、脳内等に磁気刺激を与える場合でも頭髪を剃毛する必要が無い。
かかる磁気治療器10を用いて人体の患部(被治療体)を治療する場合には、例えば、図5A(a)及び図5B(a)に示すように、電源を入れて動作させた磁気治療器10を、患部に対して直接的に、若しくは、頭髪や衣服などを介して間接的に接触させるだけでよい。これにより、磁気治療器10は、上記のようにして発生させた交番磁界(高周波交番磁界および低周波交番磁界)を患部の磁気刺激対象の細胞に作用させることができる。このとき、交番磁界は、例えば、人体の表面(毛髪、皮膚など)の細胞だけではなく、人体の内部(脳、脊髄、筋肉、血管、骨など)の細胞にも作用して、これらの細胞に磁気刺激を与える。
また、磁気治療器10は、例えば、患部に対して必ずしも接触させる必要はなく、図5A(b)及び図5B(b)に示すように、体表から所定距離以内に離隔した位置に接近させるだけでも、上記交番磁界を患部の細胞に作用させることができる。即ち、磁気治療器10は、例えば、電極貼付タイプの接触型の磁気治療器等とは異なり、頭髪や衣服の上などからでも治療が可能な非接触型の磁気治療器として利用できる。しかし、磁気治療器10が発生する交番磁界の強度は、磁気治療器10から離隔するにつれ小さくなる(離隔距離の3乗に比例して低下する。)ので、磁気治療器10と患部が過度に離隔すると磁気治療効果が薄れてしまう。
そこで、本実施形態にかかる磁気治療器10は、高周波用コイル30及び低周波用コイル40と磁気刺激対象の患部との距離(最低限の磁界強度の磁気刺激を与えるための有効距離)を考慮して、例えば、磁界強度(磁束密度)が例えば50nT〜0.01Tの交番磁界を当該患部に対して作用させることができるように、高周波用コイル30及び低周波用コイル40が発生する高周波交番磁界及び低周波交番磁界の磁界強度が調整されている。この50nTという微弱な磁界強度であっても、神経栄養因子群の産生を促進できる程度の磁気刺激を細胞に与えることができる。地磁気の強さは約66mTであるので、上記50nTという磁界強度は、地磁気の約1000分の1程度の非常に弱い強度である。
ここで、上記の磁気治療器10A(図2A参照)と磁気治療器10B(図2B参照)を用いた場合の相違について説明する。図5Aに示すように、上記磁気治療器10Aを用いた場合には、磁力線が磁気治療器10Aを長手方向に横断するような交番磁界が発生する。また、図5Bに示すように、上記磁気治療器10Bを用いた場合には、磁力線が磁気治療器10Bを短手方向に縦断するような交番磁界が発生する。これにより、患者の脳内の広く深い範囲に磁気刺激を及ぼすことができる。なお、磁気治療器10A、10Bは、その周囲全体に向けて交番磁界を発生させているので、磁気治療時における患部に対して対向させる磁気治療器10A、10Bの向きは、図5A、図5Bのような体表に対して平行な方向の例に限定されず、体表に対して垂直方向、斜め方向など任意の方向であっても交番磁界を患部に作用させて治療することができる。
以上のようにして、上記磁気治療器10を用いて、高周波交番磁界及び低周波交番磁界を患部に対して作用させることにより、例えば、患部の特定の細胞における神経栄養因子群の産生を促進して、この神経栄養因子群により中枢神経系細胞又は脳神経系細胞の回復を促して、脳疾患等を治療する磁気治療効果を発揮できる。
このとき、磁気治療器10は、上記高周波電磁波及び低周波電磁波を間欠発振するので、患部に対して交番磁界を断続的に作用させて、磁界作用に変化を与えることができる。このため、定常的な交番磁界を連続的に発生させた場合のように、患部の組織(細胞など)が定常的な交番磁界に慣れてしまうため磁気治療効果が薄れてしまうことがない。さらに、高周波交番磁界の発生タイミングと、低周波交番磁界の発生タイミングとが同期しているので、磁気治療器10が作用させる磁界全体としてもメリハリがある。このため、患部に対する磁気刺激の有無をより明瞭にし、磁気治療効果を向上できる。
さらに、磁気治療器10は、発生する高周波電磁波の立ち上がり時間および立ち下がり時間が、例えば0.003μsec以下と非常に微少であるとともに、略矩形波である低周波電磁波の立ち上がり時間が0.1μsec以下であり、立ち下がり時間が例えば1.0μsec以下となるように調整されている。このため、上記のような交番磁界の変化時においては、磁界の作用/非作用の変化スピードが速い。従って、患部の組織はかかる磁界の変化に敏感に反応するので、磁気治療効果が高まる。
また、磁気治療器10は、患部の細胞に対して作用させる高周波交番磁界及び低周波交番磁界の強度(磁束密度)が、例えば50nT以上、0.01T以下であり、従来の他の磁気治療器(例えば0.8〜10T)と比べて、非常に小さいことも特徴である。即ち、従来の磁気治療器のように高い磁界強度を用いた場合には、磁気刺激により脳などの患部に障害が生じる可能性がある。かかる強い磁気刺激による障害は周知のことであり、このため、磁界環境での安全作業基準が先進国で定められている。例えば、アメリカ合衆国(スタンフォード大学、1971年)では、全身、頭部に対する磁気刺激は、0.02T、1日当たり数分の暴露とされている。
しかし、従来の磁気治療法、磁気刺激法では、0.1T以上の磁界を作用させるものが大半を占めている。例えば、直径数ミリの肩こり治療用の磁石であっても、その磁界強度は0.08〜0.13Tである。このように、高強度の磁界による磁気刺激を用いた従来の磁気治療器では、長期間の使用による生体に対する障害の可能性は否定できない。これに対し、本実施形態にかかる磁気治療器10が患部の細胞に作用させる磁界強度は、上記のように、50nT以上0.01T以下と微弱であるので、生体に対して障害を発生させる可能性が極めて低く、特に、脳等の敏感で重要な患部に対する安全な磁気治療を提供できる。
ただし、患部に対して作用させる交番磁界の磁界強度が過度に低いと(例えば30nT未満)、磁気治療効果が低くなると考えられる。一説には、細胞が反応可能な最低の磁界強度は例えば30nT程度と考えられている。そこで、本実施形態にかかる磁気治療器10では、患部の細胞に対して作用させる磁界強度を、例えば50nT〜0.01Tの好適な範囲とするために、高周波用コイル30及び低周波用コイル40が発生する高周波交番磁界及び低周波交番磁界の磁界強度が調整されている。これらのコイルが発生する交番磁界の磁界強度は、磁気治療器10内の高周波用コイル30及び低周波用コイル40と、磁気刺激対象の患部との距離(例えば、体表から脳内の患部までの距離)、並びに、患部の透磁率(例えば、脳の透磁率)などに基づいて、決定される。
具体的には、本実施形態にかかる磁気治療器10Bの構成では、例えば、体表から6cm以内の深さの患部に対して、少なくとも50nTの高周波交番磁界及び低周波交番磁界を作用させる場合(即ち、磁気治療器10による磁気刺激の有効距離を6cmとする場合)には、高周波用コイル30Bが発生する高周波交番磁界の当該コイル30B近傍での磁界強度を例えば約0.01Tに設定し、低周波用コイル40Bが発生する低周波交番磁界の当該コイル40B近傍での磁界強度を例えば約0.1T以上に設定すればよい。また、上記有効距離を12cmとする場合には、上記高周波交番磁界のコイル30B近傍での磁界強度を例えば約0.1Tに設定し、上記低周波交番磁界のコイル40B近傍での磁界強度を例えば約1Tに設定すればよい。
以上のように、本実施形態にかかる磁気治療器10は、例えば、患部の細胞の神経栄養因子群の産生を促進するために好適な周波数及び磁界強度の交番磁界を作用させるとともに、かかる交番磁界の作用/非作用を、細胞が刺激を受けやすいタイミングで切り替えることができる。従って、本実施形態にかかる磁気治療器10は、従来の磁気治療器と比して磁気治療効果が非常に高い。
また、磁気治療器10は、操作が簡単である上に、電池駆動式で軽量小型であり持ち運びしやすいだけでなく、上記のように患部に当接または接近させるだけで、容易かつ短時間(例えば10分間)で磁気治療効果を奏することができる。従って、かかる磁気治療器10を用いた磁気治療は、従来の脳の再生療法のように、脳内への細胞移植手術や脳内への注入という高度な医療技術を必要としない。よって、患者が入院することなく、家庭、職場、学校等の任意の場所で、患者自身が磁気治療器10を使用して、いつでも簡単に治療することができる。
また、従来の脳内への細胞移植手術や脳内への注入といった従来の再生療法は、脳の損傷や感染症、副作用を引き起こす恐れがあった。これに対して、本実施形態にかかる磁気治療器10は、神経栄養因子群を産生する機能を有する細胞に対して体外から磁気刺激を与えることによって、当該細胞内で神経栄養因子群の産生を促進させて、脆弱化等した中枢神経系細胞又は脳脊髄神経系細胞などの自立回復又は増殖を促すものである。このため、細胞移植手術や注射のように脳内に医療器具を挿入する必要がないので、脳の損傷や感染症、副作用が無く、患部周囲の細胞、組織への影響が小さいという大きな利点がある。
<磁気治療器による治療対象>
次に、本実施形態にかかる磁気治療器10の(1)磁気刺激対象の細胞、(2)磁気刺激により産生される物質、(3)治療対象の部位、(4)治療対象の疾患、について、詳細に説明する。
(1)磁気刺激対象の細胞(神経栄養因子群を産生可能な細胞)
磁気治療器10の磁気刺激対象の細胞は、神経栄養因子及び/又は神経栄養因子様物質を産生することが可能な細胞である。具体的には、この磁気刺激対象の細胞は、例えば、グリア細胞、神経細胞、繊維芽細胞、血管内皮細胞、筋肉細胞、表皮細胞、角化細胞又は免疫細胞などである。このような磁気刺激対象の細胞が存在する主な部位は、例えば、脳、脊髄、神経、血管、筋肉、皮膚などである。
このうち、グリア細胞(neuroglia)は、神経栄養因子群を産生する代表的な細胞の総称であり、例えば、アストロサイト(アストログリア:astroglia)、マイクログリア(microglia)、オリゴデンドロサイト(oligodendrocyte)、シュワン細胞(Schwann cell)、外套細胞(mantle cell)などがある。グリア細胞は、例えば、脳、神経細胞の周囲、血管、筋肉などに存在し、自身が産生した神経栄養因子群を神経細胞やグリア細胞に供給して、これらの細胞の増殖、回復を支援する。また、上記の繊維芽細胞、血管内皮細胞、筋肉細胞、表皮細胞又は免疫細胞などといった、体内の至る部位に存在する非神経系の細胞も、神経栄養因子群を産生する。
(2)磁気刺激により産生される物質
磁気治療器10により、上記磁気刺激対象の細胞(グリア細胞等)に磁気刺激を与えると、当該細胞において、神経栄養因子及び/又は神経栄養因子様物質が産生される。この神経栄養因子及び/又は神経栄養因子様物質の生理的な効果が、磁気治療器10による磁気治療効果の主体となる。
神経栄養因子(NT:Neurotrophin)は、脳、脊髄、末梢神経に存在する神経系細胞の生存や正常機能の維持を支える分子(タンパク質)であり、発生期の神経系細胞の成長や分化、或いは損傷を受けた神経系細胞の再生や生存、維持などに重要な機能を有する。この神経栄養因子は、例えば、神経成長因子(NGF:Nerve Growth Factor)、脳由来神経栄養因子(BDNF:Brain-Derived Neurotrophic Factor)、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF−2:Fibroblast Growth Factor-2)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF:Glial cell line -Derived Neurotrophic Factor)などを含む。
神経栄養因子様物質は、神経栄養因子以外の、神経系細胞の神経突起伸展作用を有する物質群である。この神経栄養因子様物質は、上記神経栄養因子と同様に、神経系細胞の生存や正常機能の維持を支える物質であり、タンパク性成分と、非タンパク性成分とがある。この神経栄養因子様物質は、例えば、アデノシン(adenosine)、アデノシン1リン酸(AMP:adenosine
monophosphate)、マンガンイオン、ゲニピン(植物成分で生薬由来低分子物質)、lysophosphatidylethanolamine(動植物膜成分)、ガングリオシド、Rho-kinaseなどを含む。このうち、アデノシン、アデノシン1リン酸は非タンパク性の神経栄養因子様物質であり、Rho-kinaseはタンパク性の神経栄養因子様物質である。
(3)治療対象の部位
被治療体における治療対象の部位(患部)は、中枢神経系(CNS:Central Nervous System)又は脳脊髄神経系(Craniospinal Nervous System)である。中枢神経系は、終脳、間脳、中脳、小脳、橋、延髄、脊髄及び血管を含む。この中枢神経系は、神経細胞(neuron)とグリア細胞と血管とからなる。また、脳脊髄神経系は、末梢神経系(PNS:Peripheral Nervous System)のうち、脳神経(cranial
nerves)と脊髄神経(spinal
nerves)とから構成される神経系である。この脳脊髄神経系は、神経細胞(neuron)、シュワン細胞及び外套細胞からなる。これらの中枢神経系や脳脊髄神経系をなす細胞は、上記グリア細胞等から供給された神経栄養因子群の生理的効果により、修復、成長、分化、増殖し、以下に示す各種の疾患の治療に寄与する。なお、細胞の分化とは、細胞の性質、形態が変化することである。また、中枢神経系細胞とは、中枢神経系(終脳(大脳半球)、間脳、中脳、小脳、橋、延髄、脊髄、血管)に存在する細胞をいう。また、脳脊髄神経系細胞とは、脳脊髄神経系に存在する細胞をいう。
また、被治療体(例えば人体)において、上記のような治療対象の部位(患部)と、磁気治療器10による磁気刺激対象の部位とは、同一の部位であってもよいし、或いは、異なる部位であってもよい。例えば、脳(治療対象の部位)を治療するために、脳(磁気刺激対象の部位)に対して磁気刺激を与えてもよい。また、脊髄(治療対象の部位)を治療するために、この脊髄に対して神経栄養因子群を供給可能な別の部位、例えば大腿部(磁気刺激対象の部位)に対して磁気刺激を与えてもよい。
(4)治療対象の疾患
磁気治療器10による治療対象の疾患は、種々の要因で上記中枢神経系又は脳脊髄神経系をなす細胞(例えば神経細胞やグリア細胞)が脆弱化、損傷、またはその細胞数が減少することが原因で起こる疾患である。具体的には、治療対象の疾患は、例えば、(a)神経変性疾患(アルツハイマー型痴呆、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症など)、(b)うつ病、(c)脳血管疾患(脳卒中、脳梗塞など)、(d)慢性疼痛、(e)神経因性疼痛、(f)脊髄損傷(病変又は外傷によるもの)などである。また、疾患ではないが、これらの疾患を予防するための(g)神経保護作用も、磁気治療器10による磁気治療効果の1つである。
このように、本実施形態にかかる磁気治療器10は、神経変性疾患治療器(アルツハイマー型痴呆治療器、パーキンソン病治療器、ハンチントン病治療器、筋萎縮性側索硬化症治療器、多発性硬化症治療器、多系統萎縮症治療器、脊髄小脳変性症治療器など)、うつ病治療器、脳血管疾患用治療器(脳卒中治療器、脳梗塞治療器など)、慢性疼痛治療器、神経因性疼痛治療器、脊髄損傷治療器、又は、上記各種疾患の予防装置などとして利用できる。
例えば、うつ病を治療する場合には、上記磁気治療器10を用いて人体の脳に交番磁界を照射し、脳内のグリア細胞(アストロサイト等)からBDNF、NGF等の分泌を促進し、脆弱化等を起こした中枢神経系細胞に神経栄養因子群を与えることにより、周辺の中枢神経系細胞を増殖、再生させることで、細胞の機能が回復し、セロトニン(脳内快楽物質)の産生が回復することで、うつ病の治療に寄与できる。
また、アルツハイマー型痴呆を治療する場合には、上記磁気治療器10を用いて人体の脳に交番磁界を照射し、脆弱化等を起こした脳内のマイネルト核のグリア細胞(アストロサイト等)からBDNF、NGF等の分泌を促進し、βアミロイド沈着により脆弱化した大脳皮質細胞を増殖、再生させることで、アルツハイマー型痴呆の治療に寄与できる。
また、脳卒中を治療する場合には、上記磁気治療器10を用いて人体の脳に交番磁界を照射し、血管閉塞等により損傷された部位のグリア細胞(アストロサイト等)からBDNF、NGF等の分泌を促進し、損傷された細胞に神経栄養因子群を与えることにより、損傷された部の神経細胞、グリア細胞を増殖、再生させることで、脳卒中の治療に寄与できる。
また、神経因性疼痛を治療する場合には、上記磁気治療器10を用いて疼痛を感じる患部に交番磁界を照射することで、末梢神経においてBDNF、NGF等の産生を促進させる。このBDNF、NGF等が神経細胞内を移動し、脊髄後根節、脊髄に輸送されて、脊髄後根節、脊髄でアストロサイトが増殖することにより、神経過敏症が回復し、神経因性疼痛を治療できる。NGF等は、産生された周辺部位や、または神経細胞内を移動し、脊髄後根節、脊髄に輸送されて、損傷された感覚神経を修復、再生させることで治療に寄与できる。
<磁気治療効果のメカニズム>
次に、図6を参照して、本実施形態にかかる磁気治療器10による交番磁界の磁気刺激によって、上記疾患に対する磁気治療効果を奏するメカニズムについて、詳細に説明する。図6は、本実施形態にかかる磁気治療器10による磁気治療効果のメカニズムを示すフローチャートである。
この磁気治療効果のメカニズムとしては、大局的には、脳疾患等の患部(脳など)における中枢神経系細胞に対して、神経栄養因子及び/又は神経栄養因子様物質(以下「神経栄養因子群」)を高濃度で供給して、中枢神経系細胞の再生を促すことにある。詳細には、磁気治療器10から高周波交番磁界を照射して、グリア細胞等のように神経栄養因子群を産生可能な細胞(上記磁気刺激対象の細胞)に対して磁気刺激を与えることにより、この細胞内での神経栄養因子群の産生を促進させ、当該細胞で産生された神経栄養因子群を、脳疾患等の患部の細胞に供給して、脳疾患等により脆弱化、損傷、減少等した中枢神経系細胞を修復、成長、分化、増殖させることにある。
図6に示すように、この神経栄養因子群の産生促進のメカニズムとしては、細胞実験の結果から、3つの細胞内プロセスが同時に起こっていると考えられる。この3つのプロセスは、(1)細胞内カルシウムイオン濃度の上昇によるエキソサイトーシスによる神経栄養因子群の放出(S10→S20→S30)、(2)細胞内カルシウムイオン濃度の上昇によるmRNAの増加による神経栄養因子群の合成及び放出(S10→S20→S40→S42→S44)、(3)細胞内カルシウムイオン濃度の上昇に起因しないmRNAの増加による神経栄養因子群の合成及び放出(S10→S40→S42→S44)である。以下に、これらの神経栄養因子群の産生プロセスについてそれぞれ説明する。
(1)エキソサイトーシス
エキソサイトーシス(開口放出)は、真核細胞が持つ細胞機能であり、細胞内に蓄積された物質を細胞外に放出する機能である。開口放出であるので、タンパクのような巨大分子でも細胞外に放出することが可能である。
このプロセス(1)について詳細に説明する。まず、磁気治療器10による磁気刺激(S10)により、グリア細胞等の神経栄養因子群を産生する細胞において、細胞膜表面又は細胞内に存在する電位依存性カルシウムイオンチャンネル又は電位非依存性のカルシウムイオンチャンネルが開放し、細胞外又は細胞内のカルシウム貯蔵部位からカルシウムイオンが供給され、細胞内カルシウムイオン濃度が上昇する(S20)。細胞内カルシウムイオン濃度が上昇することにより、細胞内の神経栄養因子群を貯蔵した小胞が細胞膜と融合し、細胞外の空間に神経栄養因子群を放出する、エキソサイトーシスが起こる(S30)。エキソサイトーシスは、細胞内のカルシウムイオン濃度がわずか10%の上昇でも誘発される。細胞内のカルシウムイオン濃度上昇後、数分以内に放出現象が始まり、完了する。
(2)細胞内カルシウムイオン濃度上昇に伴うmRNAの増加
このプロセス(2)は、細胞増殖促進作用に起因するものである。神経栄養因子群は、細胞分裂期にも産生されることが神経科学の分野ではすでに知られている。上記の磁気刺激(S10)により細胞内カルシウムイオン濃度が上昇する(S20)と、細胞の増殖周期が加速される。細胞増殖期の静止期にある細胞は、上記カルシウムイオン濃度の上昇により、G1期を経て、S期へ移行する。S期では、DNA、RNAの複製が起こり、神経栄養因子群を産生するためのmRNAが増加する(S40:これを証明するデータとして、後述の実験2の結果を参照。)。かかる複製により増加したmRNAにより、タンパク質である神経栄養因子と、タンパク性成分である一部の神経栄養因子様物質とが合成され(S42)、合成された神経栄養因子群が細胞外に放出される(S44)。このプロセス(2)による神経栄養因子群の産生は、磁気刺激後、時間経過と共に増大すると考えられる。このことは、細胞分裂のメカニズムから妥当と考えられる。
(3)細胞内カルシウムイオン濃度上昇に起因しないmRNAの増加
このプロセス(3)では、上記の磁気刺激(S10)を受けた細胞内で、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇に起因せずに、mRNAが増加し(S40)、神経栄養因子群が合成されて(S42)、細胞外に放出される(S44)。
このプロセス(3)が生じていると考えられる根拠について説明する。後述の実験1では、MB8細胞(磁気刺激対象の細胞)に対する磁気刺激から3時間経過後の培地をPC12細胞(神経栄養因子群が供給されて、分化する細胞)に添加し、PC12細胞の神経突起の伸展が確認された。実験1に使用したMB8細胞の分裂はおよそ1日に1回である。実験条件の磁気刺激後3時間の培養ではS期に移行する細胞は少ないので、上記プロセス(3)のように、磁気刺激によって直接的にmRNAの増加作用が活性化されていると考えられる。また、別の実験で、培養した神経細胞に磁気刺激を10分行い、その後10分放置した後に、神経細胞内のMAPキナーゼ活性が約20%上昇しているという実験データを得た。MAPキナーゼは細胞内でのたんぱく質の活性化、DNA、RNA合成を連鎖反応的に調整する酵素である。この連鎖反応はMAPキナーゼ系と呼ばれ、シグナルが細胞膜から核へと伝達される反応系である。この反応系が作動し、タンパクである神経栄養因子の合成が促進されるので、mRNAも増加される。
上記プロセス(2)は、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇に起因して、RNAの合成が生じるものであった。しかし、上記実験において、3時間の反応時間ではmRNAが合成され、その命令により、神経栄養因子群が合成される量は少ない。従って、かかる実験結果を鑑みれば、上記プロセス(2)のみならず、プロセス(3)も同時に進行しているといえる。
ここで、非タンパク性の神経栄養因子様物質の産生のメカニズムについて説明する。神経栄養因子様物質の代表的なものとして、例えば、アデノシン(adenosine)、アデノシン1リン酸(AMP:adenosine
monophosphate)、マンガンイオン、ゲニピン(植物成分で生薬由来低分子物質)、lysophosphatidylethanolamine(動植物膜成分)、ガングリオシド、Rho-kinaseがある。これら以外にも数百種類の神経栄養因子様物質が発見されているが、物質として同定されていないものが多い。
これらの神経栄養因子様物質は、単体のイオン(マンガンイオンなど)、低分子物質(アデノシン、アデノシン1リン酸など)、脂質(lysophosphatidylethanolamine、ガングリオシドなど)、タンパク性成分(Rho-kinaseなど)などといったように、その種類、物性が多岐にわたる。タンパク性の神経栄養因子様物質は、mRNAの指示で合成が促進されて、細胞外に放出される。一方、非タンパク性の神経栄養因子様物質は、その種類が多いので、産生メカニズムも一様ではない。例えば、単体イオンや低分子性物質の神経栄養因子様物質は、細胞内に存在しているものもあり、また、細胞内で合成されるものもある。また、脂質の神経栄養因子様物質は、細胞内で合成される。いずれの非タンパク性の神経栄養因子様物質の場合も、エキソサイトーシスにより細胞外へ放出されると考えられる。脂質の神経栄養因子様物質は、細胞膜の構成成分でもあるので、エキソサイトーシス以外のプロセスにより細胞外へ放出される場合も考えられる。
以上のようなプロセス(1)〜(3)により、磁気刺激を受けた細胞(グリア細胞等)において神経栄養因子群が産生されると、この神経栄養因子群が疾患等により脆弱化した中枢神経系細胞等に供給され、神経栄養因子群により中枢神経系細胞が保護作用を受ける(S50)。その結果、脆弱化等していた中枢神経系細胞が活性化して修復、成長、分化、増殖して(S60)、上記中枢神経系細胞の脆弱化等が原因の脳疾患(神経変性疾患、うつ病、脳血管疾患など)の治療効果が得られる(S70)。
以上説明したメカニズムにより、磁気治療器10を用いて患部に対して好適な磁気刺激を与えることで、細胞内における神経栄養因子群の産生を促進させて、上記脳疾患等の各種疾患に対して優れた治療又は予防効果を発揮できる。
かかる観点から、本実施形態にかかる磁気治療器10は、好適な磁気刺激を与えることの可能な交番磁界として、例えば、磁束密度が0.01T以下で、約120〜160MHzの産生促進用周波数の高周波交番磁界及び約2.0kHzの低周波交番磁界を放射して、患部に対して作用させることができる。この約120〜160MHz前後の高周波交番磁界の照射刺激は、例えば、他の周波数帯と比して、細胞における神経栄養因子群の産生を促進する作用が高いと考えられる。また、2.0kHzの低周波交番磁界の照射刺激は、例えば、細胞からβ−エンドルフィンやサイトカイン等を放出させる作用を有すると考えられる。
なお、患部に対して作用させる高周波交番磁界の産生促進用周波数は、後述する実験結果によれば、磁気治療効果上、約120〜160MHzが好適であるが、これ以外の周波数範囲であっても、細胞内のカルシウムイオン濃度上昇に充分に寄与することが判明した。この好適な産生促進用周波数の範囲は、20〜180MHz、280〜600MHz、700〜1000MHz(第4の好適な範囲)であり、より好ましくは、60〜180MHz、280〜300MHz、450〜550MHz、又は、900〜950MHz(第3の好適な範囲)であり、更に好ましくは、100〜160MHz(第2の好適な範囲)、最も好ましくは、120〜160MHz(第1の好適な範囲)である。ここで挙げたもののうち、後者の範囲の産生促進用周波数ほど、磁気刺激対象の細胞内で神経栄養因子群をより多く産生させて、治療対象の部位の細胞に供給できるので、磁気治療効果が高いといえる。
次に、上記実施形態にかかる磁気治療器10による磁気治療効果を検証する実験を行った結果について説明する。この磁気治療器10は、上述したように、好適な産生促進用周波数の高周波交番磁界及び低周波交番磁界(例えば2.0kHz)を放射して、被治療体に磁気刺激を施すことができるものである。なお、以下の実施例は、上記実施形態にかかる磁気治療器10の磁気治療効果を実験的に検証するためのものであり、本発明は以下の例に限定されるものではない。
<実験1>
まず、上記磁気治療器10によって被治療体の細胞に作用させる高周波交番磁界の産生促進用高周波数の適切な範囲を決定するために行った実験1について説明する。
この実験1では、磁気刺激対象の細胞(MB8細胞)に対して、相異なる複数の周波数(20〜3000MHz)の高周波交番磁界を作用させて、培地内で神経栄養因子群を産生させた後、この神経栄養因子群を含む培地をPC12細胞(神経栄養因子群の存在により、神経突起を伸展(分化)させて分化する細胞)に添加して神経突起の伸展度を判定し、磁気刺激を与えなかった非刺激群と比較した磁気治療の効果度を、周波数ごとに求めた。
まず、本実験1における実験条件とその手順(1)〜(5)について説明する。
(1)MB8細胞及びPC12細胞の培養
神経栄養因子群の産生細胞(磁気刺激対象の細胞)として、グリア系細胞である「MB8細胞」を用いた。このMB8細胞は、神経栄養因子及び神経栄養因子様物質を産生する細胞である。生後8日のマウスの脳細胞を培養し、グリア細胞を増殖させて、MB8細胞を得た。このMB8細胞を、24穴の培養プレート(コラーゲンIコート)に1穴当たり約15.5×10個播いて、10%FBS加DMEM培地(日水製薬社製)及び炭酸ガス培養装置(インキュベーター)を用いて、温度37℃、炭酸ガス濃度5%の環境で24時間培養した。
また、神経突起伸展の確認用細胞として、PC12細胞(JCRB0266)を用いた。このPC12細胞は、副腎髄質の褐色細胞腫の細胞であり、神経成長因子の実験、研究に標準的に使用される細胞である。このPC12細胞は、神経成長因子(NGF)等の存在下で神経突起を伸展する細胞であり、神経成長因子等の作用で副腎細胞から神経細胞に分化を始める。かかるPC12細胞として、細胞バンクである財団法人ヒューマンサイエンス研究資源バンクから分譲されたものを用いた。かかるPC12細胞を、48穴培養プレート(コラーゲンIVコート)に1穴当たり約28×10個(細胞同士の間隔が近すぎない程度)播いて、10%ウマ血清+5%FBS加RPMI1640培地(日水製薬社製)及び炭酸ガス培養装置を用いて、温度37℃、炭酸ガス濃度5%の環境で24時間培養した。なお、以下の細胞培養は全て、この温度37℃、炭酸ガス濃度5%の環境で行った。
(2)MB8細胞に対する磁気刺激
上記磁気治療器10B(図2B参照)に相当する実験用の磁気刺激装置を用いて、上記培養プレート内の各MB8細胞(神経栄養因子群の産生細胞)に対して、磁気刺激を与えた。磁気刺激は、培養プレートの下面側から、磁気刺激装置を用いて交番磁界を照射することによって行った。この際、30分間磁気刺激を与えた後、30分間培養し(培養中は磁気刺激なし)、さらに、30分間磁気刺激を与えた。このようにMB8細胞に作用させる高周波交番磁界の周波数を実験単位ごとに、20MHz〜3000MHzの範囲で段階的に変えて、それぞれ実験を行った。
この磁気刺激に用いた実験用の磁気刺激装置の構成について詳細に説明する。この磁気刺激装置は、MHz帯域(20MHz〜3000MHz)の高周波を生成するための信号発生器(「E4421B」アジレント社製)と、kHz帯域(2.0kHz)の低周波を生成するためのファンクションジェネレータ(「33220A」アジレント社製)と、Hz帯域(7.81kHz)の低周波を生成するためのファンクションジェネレータ(「FG320」横河電機社製)と、これら3種の帯域の信号の出力強度を調整するRF−AMPユニット(増幅器)と、これら3種の帯域の信号を統合制御する制御ユニットと、上記図2Bの磁気治療器10Bが備える発振コイル50と、から構成される。
磁気刺激時には、図7に示すように、発振コイル50の上に、上記MB8細胞の培養プレート60を載置して、遮光の布をかけた。次いで、発振コイル50の高周波用コイル30、低周波用コイル40にそれぞれ高周波電流、低周波電流を印加して、高周波交番磁界及び低周波交番磁界を含む電磁波を発生させ、これにより、培養プレート60の各培養穴内のMB8細胞に対して、30分間磁気刺激を与えた後に、磁気刺激を中止して30分間培養し、さらに30分間の磁気刺激を与えた。
この際、高周波用コイル30に印加する高周波電流の周波数を、実験単位ごとに、20〜3000MHzの間で段階的に変化させて、異なる産生促進用高周波数の高周波交番磁界を細胞に作用させた。一方、低周波用コイル40に印加する低周波電流の周波数は2.0kHzに維持して、一定の周波数(2.0kHz)の低周波交番磁界を細胞に作用させた。これによって、低周波交番磁界の影響を排除して、高周波交番磁界の周波数とMB8細胞内の神経栄養因子群の産生度との相関を実験することができる。なお、高周波交番磁界がいずれの周波数の場合でも、高周波交番磁界及び低周波交番磁界の双方を、上記図4で示したように7.81Hzで間欠的に出力した。また、磁気刺激中における上記発振コイル50の中心部での磁界強度(磁束密度)を測定したところ、83.3MHzの高周波電磁波の磁界強度が1.26μT、低周波電磁波の磁界強度が13μTであった。
(3)磁気刺激後のMB8細胞の培養、神経栄養因子群の産生
上記(2)の各周波数での磁気刺激を受けた磁気刺激群の各MB8細胞(神経栄養因子群の産生細胞)を、上記培養プレートを用いて温度37℃で3時間培養した。この培養中には、MB8細胞は、上記の磁気刺激を受けたときの各周波数に応じた量の神経栄養因子群を産生して、細胞外に放出する。また、上記(2)の磁気刺激を施さなかった非刺激群のMB8細胞も、磁気刺激群と同様な条件で培養した。
(4)PC12細胞への神経栄養因子群の供与、神経突起の伸展
上記(3)の培養後、磁気刺激群の各MB8細胞の培地(MB8細胞が産生した神経栄養因子群を含む。)を吸引してマイクロフィルターで濾過し、この濾過後の培地を、PC12細胞にそれぞれ添加した。その後、温度37℃で24時間、各PC12細胞を培養した。この培養中に、培地内に存在する神経栄養因子群の量に応じて各PC12細胞の神経突起が形成されて、伸展する。また、非刺激群のMB8細胞の培地を添加したPC12細胞も同様に培養した。
(5)PC12細胞における神経突起の伸展度の判定
上記(4)の培養後の各PC12細胞を顕微鏡で観察して、神経突起の長さが1細胞長以上に伸展しているものを陽性細胞と判定した。各周波数の磁気刺激群ごとに300個のPC12細胞を観察し、陽性細胞数を記録した。また、非刺激群のPC12細胞についても、同様に判定を行い、陽性細胞数を記録した。
そして、以下の式に基づき、上記周波数ごとに磁気刺激の効果度を求めた。この効果度は、磁気刺激群のPC12細胞が非刺激群のPC12細胞と比べてどの程度神経突起を伸展しているか、即ち、磁気刺激によるPC12細胞の神経突起の伸展度(磁気治療効果)を周波数ごとに表す指標となる。つまり、この効果度が高いほど、磁気刺激によってMB8細胞内の神経栄養因子群が大量に産生され(神経栄養因子群の産生度が高い。)、この神経栄養因子群によりPC12細胞の神経突起が伸展している(神経突起の伸展度が高い。)ことを表す。このことは、神経栄養因子群が高濃度で供給されることによって、疾患が原因で脆弱化等した中枢神経系細胞又は脳脊髄神経系細胞の修復、成長、分化、増殖が好適に促進されて、疾患の磁気治療効果度が高いことを表す。
(効果度)=(磁気刺激群の陽性細胞数)/(非刺激群の陽性細胞数)
さらに、上記のようにして神経突起の伸展の効果を実験単位毎に得た後、これらの効果を同一の周波数ごとに集計して、神経突起の伸展の平均効果度(倍)を求めた。
なお、本実験1は、全周波数の合計で2173回行った。各実験データの集計を行う場合、各周波数の実験ごとに、磁気刺激以外の要因が神経突起伸展に関与した可能性のあるデータ(例えば、細胞培養の不良、同一周波数において他の実験データから大きく乖離した特異的な実験データ)は集計から除外した。本実験1では、各実験日において、非刺激群の神経突起伸展の確認、135MHzでの磁気刺激時の神経突起伸展の確認、及び、前日の実験用いた周波数のうちのいずれかによる磁気刺激時の神経突起伸展の確認、に関する実験を再度行い、実験の正確性を担保した。
また、上記実験1で用いたPC12細胞は、神経成長因子等の作用で副腎細胞から、神経細胞に分化を始める特性を有しており、このPC12細胞が神経細胞に分化したことは神経突起を伸展することで容易に判断できる。神経栄養因子群の産生反応は複数の機序があり、またそれぞれの反応が、複数の反応の連携で実行される(カスケード反応)。本実験1では、これらの個々の機序、反応を調べたのではなく、生体にとって重要で、且つ、総合的、最終的な神経機能である神経突起の伸展現象の発現の程度を調べたものである。即ち、上記神経栄養因子群の産生に関する個々の反応が促進されていても、最終的に神経突起の伸展がなければ、治療としての価値は低いと考えられるので、磁気治療効果を示す指標として、周波数ごとの神経突起の伸展度を測定した。
以上、実験1の実験条件及び実験手順について説明した。かかる実験1の実験結果を、表1及び図8に示す。なお、図8のグラフは、表1に示す平均効果度(倍)の実験データを周波数[MHz]ごとにプロットして近似曲線を描いたものである。
Figure 0004111995
なお、上記表1及び図8における各パラメータの意味は、次の通りである。
・「周波数(MHz)」は、上記磁気刺激装置によって発生させた高周波電磁波の周波数、即ち、MB8細胞に作用させた高周波交番磁界の周波数である。
・「効果度」は、磁気刺激群の効果度を非刺激群の効果度で割った値を、周波数ごとに平均した値であり、各周波数の高周波交番磁界による磁気刺激群の神経突起伸展の効果が、非刺激群の何倍であるかを表す。
表1及び図8に示すように、MB8細胞(磁気刺激対象の細胞)に対して作用された高周波交番磁界の周波数が120〜160MHzの範囲(第1の好適な範囲)である場合には、神経栄養因子群によるPC12細胞の神経突起伸展に対する効果度は3.5倍以上と極めて高くなっており、特に、上記周波数が140〜160MHzである場合には、効果度が3.6倍程度と最も高いピークとなっている。従って、上記第1の好適な範囲の高周波交番磁界の磁気刺激を作用させれば、磁気刺激を与えない場合よりも、3.5倍以上のPC12細胞で神経突起の伸展を促すことができ、極めて優れた磁気治療効果を発揮するといえる。
また、MB8細胞(磁気刺激対象の細胞)に対して作用された高周波交番磁界の周波数が100〜160MHzの範囲(第2の好適な範囲)である場合には、神経栄養因子群によるPC12細胞の神経突起伸展に対する効果度は3倍以上と顕著に高くなっている。従って、上記第2の好適な範囲の高周波交番磁界の磁気刺激を作用させれば、磁気刺激を与えない場合よりも、3倍以上のPC12細胞で神経突起の伸展を促すことができ、顕著に優れた磁気治療効果を発揮するといえる。
また、高周波交番磁界の周波数が60〜180MHz、280〜300MHz、450〜550MHz、又は、900〜950MHzの範囲(第3の好適な範囲)である場合には、神経栄養因子群によるPC12細胞の神経突起伸展に対する効果度は2.5倍以上と非常に高くなっている。従って、上記第3の好適な範囲の高周波交番磁界の磁気刺激を作用させれば、磁気刺激を与えない場合よりも、2.5倍以上のPC12細胞で神経突起の伸展を促すことができ、非常に優れた磁気治療効果を発揮するといえる。
さらに、高周波交番磁界の周波数が20〜180MHz、280〜600MHz、700〜1000MHzの範囲(第4の好適な範囲)である場合には、神経栄養因子群によるPC12細胞の神経突起伸展に対する効果度は2倍以上と比較的高くなっている。従って、上記第4の好適な範囲の高周波交番磁界の磁気刺激を作用させれば、磁気刺激を与えない場合よりも、2倍以上のPC12細胞で神経突起の伸展を促すことができ、優れた磁気治療効果を発揮するといえる。
なお、生体内で産生された神経栄養因子群は、産生細胞から放出され、神経栄養因子群を必要とする部位(治療対象の部位)まで、細胞間隙を通過していく。この通過の過程で、神経栄養因子群の分子は通過するが、液体性成分は減少する(この現象を「生体濃縮」という)。従って、神経栄養因子群が必要部位に到達したときには、産生されたときの濃度以上に濃縮されているので、磁気治療効果はさらに増大する。
以上のような実験1の結果により、MB8細胞等の神経栄養因子群の産生細胞(磁気刺激対象の細胞)に作用させる高周波交番磁界の産生促進用高周波数は、上記第4の好適な範囲、好ましくは第3の好適な範囲、より好ましくは第2の好適な範囲、最も好ましくは第1の好適な範囲であることが、磁気治療効果の観点から望ましいといえる。つまり、かかる範囲の周波数の高周波交番磁界を作用させることにより、上記神経栄養因子群の産生細胞による神経栄養因子群の産生を大幅に促進させて、その周囲等に存在する中枢神経系細胞又は脳脊髄神経系細胞に高濃度の神経栄養因子群を供与し、当該細胞の神経突起の伸展度を2倍、2.5倍、3倍、3.5倍以上に増加できる。従って、脳疾患等により脆弱化、損傷、減少した中枢神経系細胞又は脳脊髄神経系細胞を修復、成長、分化、増殖させて、脳疾患等を好適に治療又は予防することができ、磁気治療効果が高いといえる。
<実験2>
次に、上記磁気治療器10による磁気刺激により、細胞内のmRNAが増加して、神経栄養因子群の合成促進がなされていることを検証するために行った実験2について説明する。この実験2では、135MHzの磁気刺激後の細胞内のmRNAの発現増加を、RT−PCR法(Reverse Transcriptase-Polymerase Chain Reaction:逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応法)により検証した。
まず、本実験2における実験条件とその手順(1)〜(7)について説明する。
(1)MB8細胞の培養
神経栄養因子群の産生細胞(磁気刺激対象の細胞)として、グリア系細胞である「MB8細胞」を用いた。このMB8細胞の培養は、上記実験1の細胞培養と同様にして行った。
(2)MB8細胞に対する磁気刺激
上記実験1と同様な磁気刺激装置(図7参照。)を用いて、高周波交番磁界(135MHz)および低周波交番磁界(2.0kHz)をMB8細胞に対して照射して、20分間、磁気刺激を与えた。
(3)磁気刺激後のMB8細胞の培養
上記(2)の磁気刺激を受けたMB8細胞を温度37℃で3時間培養して、MB8細胞内でmRNAの生成を促進させた。
(4)RNAの抽出
上記培養後に、培地を捨て、RNA抽出液(ISOGEN)を添加した。次いで、MB8細胞をホモゲナイザーで破砕し、室温で5分間静置した。さらに、この懸濁液にクロロホルムを加えて、室温で10分間静置した後に、4℃にて12000xgで15分間遠心した。その後、上清を分取し、上清と等量のイノプロパノールを加えて、室温で10分間静置後、再度、4℃にて12000xgで15分間遠心した。次いで、得られた沈殿物に1mlの70%エタノールを加えて洗浄後、4℃にて12000xgで5分間遠心した。沈殿物をデシケーター内で15分間真空乾燥後、DEPC処理したTris−HCl/EDTA液を加えて十分に溶解して、RNA溶液とした。
(5)RT−PCR法によるRNAの増幅
上記RNA溶液と10μMプライマーと超純水とを、PCRチューブに入れ、72℃で2分間反応させた。次いで、10mMのdNTP(deoxynucleotide
triphosphate)液、100mMのDTT(dithiothreitol)液、200unit/μl逆転写酵素液を加えて、42℃で60分間、逆転写反応を行った。さらに、Tris−HCl/EDTA液を加えて、72℃で7分間、加熱処理し、一本鎖cDNA溶液を得た。この一本鎖cDNA溶液に、超純水、PCR buffer、25mM−MgCl2、2.5mM−dNTP mix、各10μM プライマー2種、Taqポリメラーゼを加え、PCRチューブに入れて、94℃で3分間反応させた。その後、変性を94℃で30秒間、アニーリングを45℃で1分間、鎖伸長を72℃で45秒間、以上の反応を1サイクルとして、40分間このサイクルを繰り返した。さらに、72℃で5分間反応させて、鎖伸長反応を終結させた。
(6)RNAの分離、検出(電気泳動)
上記の鎖伸長反応終了後に、ローディングバッファーを加え、エチジウムブロマイドを含む2(w/v)アガロースゲル上で電気泳動して、RNAをサイズ別に分離した。
(7)RNAの定量
上記電気泳動後、分離したRNAを蛍光発色させて、「Molecular Imaging FX(BIO RAD社製)」で画像として取り込んで、ソフトウェア「Image J」を用いて、mRNAを定量化した。
また、磁気刺激を与えていない非刺激群のMB8細胞についても、上記磁気刺激群の細胞と同様にして、細胞内のmRNAの発現増加を定量化した。そして、磁気刺激群のmRNA量を磁気刺激群のmRNA量で除算して、mRNAの増加度(倍)を求めた。このmRNAの増加度は、BDNFのmRNAと、NGFのmRNAについてそれぞれ2回ずつ求めた。
以上、実験2の実験条件及び実験手順について説明した。次に、かかる実験2の実験結果について説明する。かかる実験2の実験結果を図9に示す。
図9に示すように、BDNFのmRNAについては、磁気刺激群の細胞は、1回目の実験では非刺激群の2.78倍、2回目の実験では非刺激群の2.06倍(平均で2.42倍)の発現(即ち、BDNFのmRNAの増加)がみられた。また、NGFのmRNAについては、磁気刺激群の細胞は、1回目の実験では非刺激群の2.20倍、2回目の実験では非刺激群の1.52倍(平均で1.86倍)の発現(即ち、NGFのmRNAの増加)がみられた。
この実験結果によれば、上記磁気治療器10を用いた135MHzの高周波交番磁界の磁気刺激により、神経栄養因子群の産生細胞内において、BDNFやNGFを産生するためのmRNAが、非刺激群と比べて大幅に増加していることが実証されたといえる。よって、上記磁気治療器10により磁気刺激を与えることで、神経栄養因子群の産生細胞内においてmRNAの増加によりBDNFやNGF等の神経栄養因子が大量に合成されて、当該細胞外に放出されるといえる。
<実験3>
次に、上記磁気治療器10による磁気刺激により、細胞内でエキソサイトーシスが生じることを検証するために行った実験3について説明する。
エキソサイトーシスは、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇後、数分以内に開口放出が始まり、完了する。これに対して、mRNAが磁気刺激により増加し、神経栄養因子群の産生命令を産生担当器官に伝達し、神経栄養因子群を産生(合成、及び細胞外への放出)するために要する時間は、約2時間である。この両者の時間差を利用することで、細胞内における神経栄養因子群の産生に関し、エキソサイトーシスによるプロセス(上記図6のS20→S30)と、mRNAの関与によるプロセス(S40〜S44)とが存在するか否かを確認できる。
そこで、本実験3では、上記実験1と同様にして、(1)細胞培養、(2)磁気刺激、(4)PC12細胞の培養、(5)神経突起の伸展度の判定を行った。ただし、実験3における(3)磁気刺激後のMB8細胞の培養では、磁気刺激後のMB8細胞を放置する時間(神経栄養因子群の産生時間)を、10分間とするもの(10分間放置群)と、3時間とするもの(3時間放置群)とを作成した。10分間という短時間では、MB8細胞において、エキソサイトーシスは生じるが、mRNAの増加に伴う神経栄養因子群の合成は生じない。このため、かかる実験3の結果、10分間放置群において、PC12細胞の神経突起が伸展していれば、MB8細胞でエキソサイトーシスが生じて神経栄養因子群が放出されたことを証明できる。
まず、本実験3における実験条件とその手順(1)〜(5)について説明する。
(1)細胞の培養
磁気刺激対象の細胞(神経栄養因子群の産生細胞)としてのMB8細胞と、神経突起伸展の確認用細胞としてのPC12細胞を、上記実験1の(1)と同様にして、それぞれ24時間培養した。
(2)磁気刺激
上記実験1の磁気刺激と同様な磁気刺激装置(図7参照)を用いて、上記培養プレート内のMB8細胞に対して、30分間磁気刺激を与えた後、30分間培養し(培養中は磁気刺激なし)、さらに、30分間磁気刺激を与えた。このとき、MB8細胞に作用させる高周波交番磁界の周波数は120MHzとした。
(3)磁気刺激後の細胞の静置
上記磁気刺激後のMB8細胞の培養プレートを、温度37℃、炭酸ガス濃度5%の炭酸ガス培養装置で10分間静置したものを10分間放置群とし、一方、3時間放置したものを3時間放置群とした。これにより、10分間放置群では、エキソサイトーシスにより、神経栄養因子群が培地中に放出される。一方、3時間放置群では、エキソサイトーシスによる神経栄養因子群の放出と、それ以外のプロセスによる神経栄養因子群の産生、放出(mRNAの増加による合成、放出)の両方が起こっている。この神経栄養因子群の産生後、上記10分間放置群と3時間放置群のMB8細胞の培地を全て吸引し、当該培地をマイクロフィルターで濾過し、PC12細胞に添加するための培地を得た。
(4)PC12細胞の培養
上記(1)で培養されたPC12細胞の培地を吸引して除去し、(3)で得た10分間放置群の培地と3時間放置群の培地とを、それぞれ添加した。その後、各培地が添加されたPC12細胞を、温度37℃、炭酸ガス濃度5%の炭酸ガス培養装置で、24時間、それぞれ培養した。
(5)PC12細胞における神経突起の伸展度の判定
上記(4)でPC12細胞に(3)で得た各培地を添加した時から24時間後に、上記実験1と同様にして、神経突起を伸展させているPC12細胞の陽性細胞数をカウントし、神経突起の伸展率(陽性細胞率)を算出した。
以上、実験3の実験条件及び実験手順について説明した。次に、かかる実験3の実験結果について表2を参照して説明する。
Figure 0004111995
表2に示すように、磁気刺激を与えていない非刺激群(対照)では、PC12細胞の神経突起の伸展率は7.4%であった。これに対し、磁気刺激後10分間放置群では、非刺激群の2.1倍の15.5%の伸展率であった。これにより、磁気刺激後のMB8細胞内では、10分間という短い時間内で、エキソサイトーシスが起こり、神経栄養因子群を産生したことが証明できたといえる。
また、磁気刺激後3時間放置群では、PC12細胞の神経突起の伸展率は27.9%であり、非刺激群の3.8倍、10分間放置群の1.8倍であった。これにより、磁気刺激後のMB8細胞内では、エキソサイトーシス以外のプロセスによる神経栄養因子群の産生が起こっていることが証明できたといえる。
<実験4>
次に、上記磁気治療器10による磁気刺激により、細胞内でカルシウムイオン濃度が上昇することを検証するために行った実験4について説明する。この実験4では、ウシの脳の各部位から細胞を採取し、この各細胞に対して、83.3MHz、2kHz、7.8Hzの磁気刺激を与え、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇が確認された脳内の細胞の部位とその反応陽性率を検証した。
まず、本実験4における実験条件とその手順(1)〜(5)について説明する。
(1)細胞の採取、培養
ウシの脳の各部位(大脳皮質前頭領域、大脳皮質側頭領域、小脳および延髄領域、海馬)から、解剖的に脳片を採取し、脳細胞の一般的な培養方法に従い初代培養して、被検細胞とした。
(2)カルシウム蛍光指示薬の負荷
細胞内のカルシウムイオン濃度を測定するために、カルシウム蛍光指示薬Fluo−3(同仁化学社製)を用いた。ガラスベースディッシュで培養した上記被検細胞に、カルシウム蛍光プローブ(Fluo−3)を最終濃度4μMとなるように加え、温度37℃で30分間負荷した後、標準溶液で3回洗浄し、測定に供した。この標準溶液の組成は、135mM NaCl、2.8mM KCl、1.8mM MgCl、10mM D−グルコース、10mM HEPES(pH=7.3)とした。
(3)磁気刺激
上記(2)の負荷後の細胞の入ったガラスベースディッシュを、倒立顕微鏡に載置した。このガラスベースディッシュのフタの上に、上記図7で示した発振コイル50を置いて、細胞に磁気刺激を10分間与えた。この磁気刺激では、図4で示したような83.3MHzの高周波交番磁界と、2kHzの低周波交番磁界とを、7.8Hzで間欠的に細胞に照射した。
(4)細胞内蛍光強度分布の測定
倒立顕微鏡を用いて、上記蛍光色素で負荷染色した磁気刺激後の細胞を、室温(25℃)で観察した。20−40倍の対物レンズを用い、10個以上の細胞の蛍光強度を同時に測定できるようにした。励起光の照射による蛍光を、デジタルCCDカメラ(製品名:HiSCA、浜松ホトニクス社製)で検出した。細胞の蛍光強度比をタイムプラスシステム(製品名:AQUACOSMOS、浜松ホトニクス社製)で解析した。
上記(3)の磁気刺激を与える前に、細胞の蛍光強度の変化が1±0.05以内であることを5分以上、確認した。その後、上記(3)の磁気刺激を10分間与えた後、30分間、細胞内カルシウムイオン濃度の変化を観察した。さらに、600mMの塩化カリウムをガラスベースディッシュ内の液量の10分の1量だけ添加した。磁気刺激前、磁気刺激中、磁気刺激後、塩化カリウム添加後において、一連の反応として連続して、細胞内蛍光強度分布を測定観察した。
(5)実験成否の判断
細胞が、上記塩化カリウム添加に対して、カルシウムイオン濃度の急激な上昇を示す場合にのみ、その細胞の実験データを採用するようにした。塩化カリウム添加に対して、カルシウムイオン濃度の急激な上昇という正常反応がみられない細胞は、正常なカルシウム応答を示さないので、実験データとして採用しなかった。
(6)判定
磁気刺激後、細胞内の蛍光強度が刺激前よりも10%以上上昇した細胞が1個以上認められた場合、反応陽性(つまり、磁気刺激により細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇した)と判断した。
以上、実験4の実験条件及び実験手順について説明した。次に、かかる実験4の実験結果について表3を参照して説明する。
Figure 0004111995
表3に示すように、磁気刺激による細胞内のカルシウムイオン濃度の上昇度(反応陽性率)は、大脳皮質前頭領域では57.5%、大脳皮質側頭領域では45.4%と比較的高かった。従って、これらの脳内部位の細胞では、磁気刺激により、細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇することが実証されたといえる。このことは、磁気刺激により、細胞内カルシウムイオン濃度が上昇することで、当該細胞におけるエキソサイトーシスを誘発して神経栄養因子群の放出を促進できることを意味している。
一方、カルシウムイオン濃度の上昇度(反応陽性率)は、小脳および延髄領域では15.3%、海馬では5.2%と比較的低かった。これによれば、磁気刺激による細胞内のカルシウムイオン濃度の上昇度は、細胞を採取する脳内の部位によって異なることが判明したといえる。
<実験5>
次に、上記磁気治療器10による磁気刺激により、神経栄養因子以外の神経突起伸展作用を有する物質(即ち、神経栄養因子様物質)が産生されることを検証するために行った実験5について説明する。
神経系細胞の神経突起を伸展させる作用を有する物質としては、上述した各種の神経栄養因子以外にも、アデノシン、アデノシン1リン酸(AMP)、マンガンイオン、ゲニピン、lysophosphatidylethanolamine、Rho-kinase等が知られている。本実験5では、MB8細胞に対する磁気刺激により、神経栄養因子と、神経栄養因子以外の神経突起伸展作用を有する物質(神経栄養因子様物質)とが産生されるか否かの確認実験を行った。
神経栄養因子はタンパク質であるので、加熱により容易に変性し、神経突起伸展作用を喪失する。神経栄養因子様物質の中には、タンパク性の成分と非タンパク性の成分とがある。非タンパク性成分は、加熱により神経突起伸展作用を喪失しない。そこで、本実験5では、磁気刺激後のMB8細胞の培地を加熱したものと、加熱しないものを、それぞれPC12細胞に添加し、加熱された培地が添加されたPC12細胞(加熱群)の神経突起伸展度と、加熱されていない培地が添加されたPC12細胞(非加熱群)の神経突起伸展度とを比較することで、神経栄養因子、神経栄養因子様物質の存在を確認した。加熱した培地を添加したPC12細胞が神経突起を伸展していれば、神経栄養因子用物質の存在の証明になる。
(1)MB8細胞の培養
上記実験1と同様にして培養したMB8細胞の培地を抜き取り、無血清のRPMIを400μl添加した。
(2)MB8細胞に対する磁気刺激
上記実験1と同様な磁気刺激装置(図7参照。)を用いて、上記(1)のMB8細胞に対して、高周波交番磁界(135MHz)の磁気刺激を30分間与えた後、温度37℃、炭酸ガス濃度5%の環境で30分間培養し(培養中は磁気刺激なし)、さらに、30分間磁気刺激を与えた。
(3)磁気刺激後のMB8細胞の培養、神経栄養因子群の産生
上記(2)の各周波数での磁気刺激を受けた磁気刺激群の各MB8細胞(神経栄養因子群の産生細胞)を、温度37℃、炭酸ガス濃度5%の環境で3時間培養した。
(4)培地の加熱
上記(3)の培養後、MB8細胞の培地(MB8細胞が産生した神経栄養因子群を含む。)を全量、マイクロチューブに取り、90℃のオイルバスで2分間加熱した。この2分間の加熱後、マイクロチューブを取り出し、氷水中で1分間、急冷した。この加熱処理により、培地中に含まれる神経栄養因子(タンパク質)の神経突起伸展作用が喪失される。
(5)培地の濾過
上記(4)で得られた培地にFBS(ウシ胎児血清)を濃度1%となるように添加し、培地をフィルターで濾過し、凝固物を除去した。
(6)PC12細胞への神経栄養因子群の供与、神経突起の伸展
上記実験1と同様にして培養したPC12細胞の培地を吸引し、(5)で濾過した培地をPC12細胞に添加した。その後、温度37℃、炭酸ガス濃度5%の環境で24時間、PC12細胞を培養した。
以上のようにして、磁気刺激群のうちで、MB8細胞の培地を加熱したものをPC12細胞に添加した加熱群サンプルを作成した。また、MB8細胞に磁気刺激を与えない非刺激群サンプルと、磁気刺激群のうち上記(4)の加熱を行わない非加熱群サンプルについては、上記実験1と同様にして作成した。
(7)PC12細胞における神経突起の伸展度の判定
上記非刺激群、加熱群、非加熱群それぞれについて、上記実験1と同様にして、神経突起を伸展させているPC12細胞の陽性細胞数をカウントし、神経突起の伸展率(陽性細胞率)を算出した。
以上、実験5の実験条件及び実験手順について説明した。次に、かかる実験5の実験結果について図10を参照して説明する。図10は、非刺激群、非加熱群、加熱群の神経突起の伸展率をそれぞれ示すグラフである。
図10に示すように、非刺激群、非加熱群、加熱群の神経突起の伸展率はそれぞれ、11.1%、34.4%、21.3%であった。まず、非刺激群と加熱群とを比較する。上記実験結果によれば、神経栄養因子が加熱により変質された加熱群であっても、非刺激群よりも神経突起の伸展率が約1.9倍(=21.3%/11.1%)程度、高いことが確認された。さらに、加熱群では、PC12細胞の形態が神経細胞状に変化したものも観察された。この実験結果により、神経栄養因子以外の神経突起伸展作用を有する物質の存在が、明らかに証明されたといえる。従って、MB8細胞は、磁気刺激により、タンパク質である神経栄養因子(易熱性成分)のみならず、それ以外の神経突起伸展作用を有する物質(即ち、神経栄養因子様物質:耐熱性成分を含む)を産生しており、この神経栄養因子様物質により、PC12細胞が神経突起を伸展したといえる。
次に、非加熱群と加熱群とを比較すると、加熱群の伸展率は、非加熱群の伸展率の約62%(=21.3%/34.4%)である。よって、磁気刺激による神経突起伸展の効果(非加熱群の伸展率)を100%とすると、加熱により、易熱性成分(即ち、神経栄養因子とタンパク性の神経栄養因子様物質)による神経突起伸展の効果が約38%減少したといえる。換言すると、加熱で変性しない成分(耐熱性成分の神経栄養因子様物質)による神経突起伸展の効果は、約62%であるといえる。従って、上記実験結果から、タンパク性成分(神経栄養因子とタンパク性の神経栄養因子様物質)を除外した非タンパク成分(例えば、神経栄養因子様物質)の存在の証明ができたといえる。ただし、加熱することにより、神経栄養因子だけでなく、神経栄養因子以外のタンパク性の物質や、神経突起形成阻害剤であるタンパク分解酵素も変性するので、加熱群での神経突起伸展効果の全てが、非タンパク性成分による効果であるとは断言できない。タンパク性の神経栄養因子以外の物質やタンパク分解酵素は多種多様なので、これらの効果を定量し、効果の算出に反映させることは非常に困難である。
以上の実験結果によれば、MB8細胞は、磁気刺激により、タンパクである神経栄養因子のみならず、神経栄養因子様物質も産生しており、この神経栄養因子様物質の作用により、PC12細胞が神経突起を伸展できるといえる。従って、グリア細胞等の神経栄養因子を産生する細胞は、磁気刺激を受けることにより、神経栄養因子以外にも、中枢神経系細胞又は脳脊髄神経系細胞の神経突起伸展作用を有する神経栄養因子様物質を産生することが証明されたといえる。
以上、本発明の実施例に係る実験1〜5について説明した。以上のような実験結果によれば、本実施形態にかかる磁気治療器10を用いて、患部の細胞に対して好適な周波数の高周波交番磁界を作用させることによって、細胞内のカルシウムイオン濃度を上昇させて、神経栄養因子群のエキソサイトーシスを誘発させるとともに、細胞内に神経栄養因子群のmRNAを増加させて、細胞内における神経栄養因子群の合成、放出を促進させることが実証された。さらに、このように神経栄養因子群の産生を促進することで、中枢神経系細胞又は脳脊髄神経系細胞の神経栄養因子群の産生を促進させ、当該細胞の修復、成長、分化、増殖を促し、脳疾患等の各種の疾患を治療できることが実証された。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、高周波及び低周波電磁波発生手段は、電磁波を放射するアンテナとして、高周波用コイル30または低周波用コイル40等のコイルを備えていたが、本発明はかかる例に限定されない。電磁波を放射するアンテナは、例えば、コイル等のループアンテナ以外にも、ロッドアンテナ、ヘルツダイポールアンテナ、ショートアンテナ、半波長ダイポールアンテナ、ヘリカルアンテナ、モノポールアンテナ、ひし形アンテナ、アレーアンテナ、ホーンアンテナ、パラボラアンテナ、又はスロットアンテナ等の各種アンテナなどで構成されてもよい。また、当該アンテナとして用いられるコイルは、ソレノイドコイル、ヘルムホルツアンテナ、ロータリーコイル、スプリットペアコイル、シムコイル、又は鞍型コイルなどで構成できる。また、高周波用コイル30及び低周波用コイル40の材質、形状、大きさ、巻き数、軸芯の有無、配置なども、上記実施形態の例(図2A、図2B)に限定されず、適宜に設計変更可能である。
また、上記実施形態では、高周波用コイル30または低周波用コイル40に、高周波電流または低周波電流を印加する高周波発振手段および低周波発振手段として、図3に示すような制御ブロック20の回路構成を採用したが、本発明はかかる例に限定されない。制御ブロック20の回路構成は、例えば、所定の産生促進用高周波数の範囲内の高周波が発振可能であれば、多様に設計変更可能である。例えば、必ずしもマイクロコンピュータ等からなる主制御回路を設けずに、上記高周波を発振可能な高周波発振手段24と、所定の低周波(例えば、2.0kHz、7.81Hz等)を発振可能な低周波発振手段25を具備するようにしてもよい。
また、上記実施形態および実施例では、高周波電磁波(高周波交番磁界)の産生促進用高周波数として、主に、83.3MHzや135MHzの例を挙げて説明したが、本発明はかかる例に限定されず、産生促進用高周波数は、20〜180MHz、280〜600MHz、700〜1000MHzの範囲(第4の好適な範囲)内の所定の周波数であればよい。また、低周波電磁波の産生促進用低周波数として、例えば2.0kHzの例を挙げて説明したが、かかる例に限定されず、産生促進用低周波数は、約2.0±10%kHzの範囲内の所定の周波数であってもよいし、それ以外の範囲の任意の周波数であってもよい。
また、上記実施形態では、高周波電磁波は、略正弦波であったが、かかる例に限定されず、例えば、略矩形波、ノコギリ波などであってもよい。また、低周波電磁波は、略矩形波であったが、かかる例に限定されず、例えば、略正弦波、ノコギリ波などであってもよい。また、上記低周波電磁波は、プラスの所定値とゼロ値の2値をとる略矩形波であったが、この2値は、かかる例に限定されず、例えば、ともにプラス値、ともにマイナス値、或いは、一方がプラス値で他方がマイナス値など、であってもよい。
また、上記実施形態では、高周波電磁波発生手段は、高周波電磁波を、約2.0kHzおよび約7.81Hzの双方の周波数で複合的に間欠して発生させたが、本発明はかかる例に限定されない。高周波電磁波発生手段は、例えば、約2.0±10%kHzの周波数、あるいは約7.81±10%Hzのいずれかの周波数のみで、高周波電磁波を間欠的に発生させてもよく、また、例えば、上記周波数以外の1又は2以上の周波数で間欠的に、高周波電磁波を発生させてもよい。また、高周波電磁波発生手段は、高周波電磁波を、間欠することなく連続的に発生させてもよい。
また、高周波電磁波発生手段は、上記のように高周波電磁波を完全に間欠的に発生させるのではなく、例えば、高周波電磁波を、その電磁波強度が所定の1又は2以上の周波数(例えば、約2.0±10%kHzおよび約7.81±10%Hzなど)で例えば略正弦波的に増減するように、発生させてもよい。これによっても、被治療体に作用する高周波交番磁界の強度を周期的に増減させて、交番磁界刺激に変化を与えることができるので、磁気治療効果が高まる。さらに、かかる高周波電磁波強度の周期的な増減に同期させて、例えば、低周波電磁波発生手段が発生させる低周波電磁波を、周期的に増減あるいは断続させてもよい。
また、上記実施形態では、低周波電磁波発生手段は、低周波電磁波を約7.81Hzの周期で間欠的に発生させたが、本発明はかかる例に限定されない。低周波電磁波発生手段は、例えば、上記周波数以外の1又は2以上の周波数で低周波電磁波を間欠的に発生してもよい。また、低周波電磁波発生手段は、低周波電磁波を間欠することなく連続的に発生させてもよい。
また、上記実施形態にかかる磁気治療器10は、高周波発振手段24および低周波発振手段25の双方を備えることにより、高周波電磁波および低周波電磁波の双方を発生可能に構成したが、本発明は、かかる例に限定されない。磁気治療器10は、上記低周波発振手段25を具備せずに、上記高周波電磁波のみを発生する構成であってもよい。また、磁気治療器10は、上記高周波発振手段24及び/又は低周波発振手段25以外にも、新たな1又は2以上の電磁波発生手段(例えば、別のコイルなど)を追加して具備してもよい。さらに、この追加された電磁波発生手段が発生する電磁波は、例えば、長波、中波、短波、超短波、マイクロ波など任意の周波数の電磁波であってもよい。
また、磁気治療器10は、上記以外の構成要素以外にも、例えば、被治療体に振動を与えるための振動発生手段、作用させる電磁波(交番磁界)の周波数若しくは強度、室温、体温、電池残量、などを計測する各種の計測装置、交番磁界の照射継続時間(動作時間)を計測および制御して、動作の自動オン/オフ等を行うタイマー装置、ユーザに対して予定治療時間の終了や電源消耗などを音声により通知するためのブザー装置などの発音装置、治療器本体を患部に装着するためのベルトまたは粘着剤等の装着手段、などを適宜設けてもよい。
また、上記実施形態にかかる磁気治療器10は、20〜180MHz、280〜600MHz、700〜1000MHzの範囲から選択された産生促進用高周波数の高周波電磁波を発生させる構成であったが、本発明はかかる例に限定されない。
例えば、上記産生促進用高周波数の範囲内の任意の周波数を任意の正の整数で除算した周波数(例えば、150MHzを正の整数2、3、4、5、・・・で除算した約75MHz、50MHz、37.5MHz、30MHz、・・・など)を発振するように、磁気治療器10を構成し、この周波数の電磁波を発生させる際に付随的に生じる高調波を用いて、上記産生促進用高周波数の高周波電磁波をも発生させるように構成してもよい。
つまり、一般的には、発生させる高周波電磁波の基本波が完全な正弦波でなければ、その基本波の整数倍の周波数も高調波が必然的に発生する。図11は、上記実施形態にかかる磁気治療器10において、発生させる高周波電磁波の周波数を80MHzに設定したときに、磁気治療器10から実際に発生される周波数の分布を測定したグラフである。この図11に示すように、80MHzに設定した磁気治療器10では、この80MHzの整数倍(2倍、3倍、4倍、・・・)の周波数の高周波電磁波(160MHz、240MHz、320MHz、400MHz、480MHz、・・・)が高調波として発生する。
このように発生する高調波の周波数が、上記本実施形態にかかる好適な産生促進用高周波数の範囲、例えば、20〜180MHz、280〜600MHz、700〜1000MHz(第4の好適な範囲内)にあれば、当該高調波を被治療体に作用させることによって磁気治療効果が生じると考えられる。よって、当該高調波の発生源となる基本波を発生させる磁気治療器及び神経栄養因子産生促進装置は、本願発明の技術的範囲に含まれる。
また、磁気治療器10は、上記第1〜4の好適な範囲より大きい周波数(1000MHzより大)の高周波電磁波を、上記第1〜4の好適な範囲内の周波数で間欠的に発生させることによって、上記第1〜4の好適な範囲内の産生促進用高周波数の高周波電磁波を発生させるようにしてもよい。
つまり、人体などの生体細胞は、過度に高周波の周波数帯の電磁波の照射を受けても、当該高周波の交番磁界の変化に反応しない場合がある。かかる生体細胞の鈍感さを利用して、上記第1〜4の好適な範囲より大きい周波数の高周波電磁波(例えば1GHz)を搬送波として、当該搬送波を、上記産生促進用高周波数である上記第1〜4の好適な範囲(例えば150MHz)内の周波数に対応する周期でオン/オフして出力することで、生体細胞は、あたかも当該産生促進用高周波数の電磁波のみが照射されているかのように反応することとなる。よって、当該高周波の発生源となる搬送波を間欠的に発生させる磁気治療器及び神経栄養因子産生促進装置は、本願発明の技術的範囲に含まれる。
また、上記産生促進用高周波数は、上記第1〜4の好適な範囲内の固定値であってもよい。しかし、患部の細胞に対して、同一の産生促進用高周波数の高周波交番磁界を継続的に作用させたときには、患部の細胞が当該周波数に慣れてしまい、磁気治療効果が低減する可能性がある、そこで、上記磁気治療器10を用いた治療中(患部に対する高周波交番磁界の照射中)に、上記産生促進用高周波数を、上記第1〜4の好適な範囲内で、変化させてもよい。これにより、磁気治療中に、患部の細胞に対して、異なる産生促進用高周波数の高周波交番磁界を作用させることができるので、患部の細胞が受ける磁気刺激に変化を与えて、磁気治療効果を向上させることができる。なお、このような産生促進用高周波数の変化は、例えば、高周波発振手段が、高周波用コイル30に印加する高周波電流の周波数を、上記範囲内で変化させることによって実現できる。
また、上記実施形態では、神経栄養因子産生促進装置を、生体の患部に磁気刺激を与えるための磁気治療器10として利用する例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の神経栄養因子産生促進装置は、細胞に対して磁気刺激を与えて神経栄養因子群の産生を促進させる装置であれば、例えば、被治療体(人体、動物等)から分離された細胞に磁気刺激を与える試験装置など、各種の装置にも適用できる。
また、神経栄養因子及び神経栄養因子様物質としては、上記実施形態で例示した物質に限定されない。本発明の神経栄養因子及び神経栄養因子様物質は、中枢神経系細胞又は脳脊髄神経系細胞などの修復、成長、分化又は増殖に寄与する物質であれば、上記以外にも、現在既知の物質、及び、将来発見されうる物質の全てを含むものである。
本発明は、細胞内における神経栄養因子群の産生促進装置に適用可能であり、特に、アルツハイマー型痴呆等の神経変性疾患やうつ病などを治療するための磁気治療器に適用可能である。

Claims (22)

  1. 細胞に対して磁気刺激を与えることにより神経栄養因子又は神経栄養因子様物質の産生を促進させる神経栄養因子産生促進装置であって:
    所定の産生促進用高周波数の高周波交番磁界を所定の磁束密度で前記細胞に対して作用させるため、前記産生促進用高周波数の高周波電磁波を発生させる高周波電磁波発生手段と、
    前記産生促進用高周波数の高周波交番磁界による磁気刺激により、前記細胞内のカルシウムイオン濃度を上昇させ、前記神経栄養因子又は前記神経栄養因子様物質のエキソサイトーシスを誘発させるとともに、前記磁気刺激により前記細胞内における前記神経栄養因子又は前記神経栄養因子様物質の転写因子(mRNA)を増加させて、前記神経栄養因子又は前記神経栄養因子様物質の合成及び前記細胞外への放出を促進させるように、前記高周波電磁波発生手段で発生される前記高周波電磁波の前記産生促進用高周波数を、20〜180MHzに制御する周波数制御手段と、
    を備えることを特徴とする、神経栄養因子産生促進装置。
  2. 前記細胞は、前記神経栄養因子及び/又は前記神経栄養因子様物質を産生可能な細胞であって、グリア細胞、神経細胞、繊維芽細胞、血管内皮細胞、表皮細胞、角化細胞、免疫細胞又は筋肉細胞を含むことを特徴とする、請求項1に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  3. 前記神経栄養因子は、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF−2)又はグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする、請求項1に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  4. 前記神経栄養因子様物質は、アデノシン、アデノシン1リン酸(AMP)、マンガンイオン、ゲニピン、lysophosphatidylethanolamine、ガングリオシド又はRho-kinaseのうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする、請求項1に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  5. 前記神経栄養因子産生促進装置は、中枢神経系又は脳脊髄神経系の細胞の脆弱化、損傷又は細胞数の減少が原因で生じる疾患を治療するために用いられる治療器であることを特徴とする、請求項1に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  6. 前記疾患は、神経変性疾患、うつ病、脳血管疾患又は脊髄損傷のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする、請求項5に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  7. 前記産生促進用高周波数は、60〜180MHzの範囲から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  8. 前記産生促進用高周波数は、100〜160MHzの範囲から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  9. 前記産生促進用高周波数は、120〜160MHzの範囲から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  10. 前記高周波電磁波発生手段は、
    高周波電流を出力する高周波発振手段と;
    前記高周波発振手段から高周波電流が印加されることによって、前記産生促進用高周波数の高周波電磁波を発生させる高周波用アンテナと;
    を備えることを特徴とする、請求項1に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  11. 前記高周波電磁波発生手段は、前記高周波電磁波を発生させるオン期間と、前記高周波電磁波を発生させないオフ期間を所定の周期で繰り返して、前記高周波電磁波を間欠的に発生させることを特徴とする、請求項1に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  12. 前記高周波電磁波発生手段は、前記高周波電磁波を発生させる第1のオン期間と、前記高周波電磁波を発生させない第1のオフ期間を、2.0±10%kHzに対応する周期で繰り返して、前記高周波電磁波を間欠的に発生させることを特徴とする、請求項11に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  13. 前記高周波電磁波発生手段は、前記高周波電磁波を発生させる第2のオン期間と、前記高周波電磁波を発生させない第2のオフ期間を、7.8±10%Hzに対応する周期で繰り返して、前記高周波電磁波を間欠的に発生させることを特徴とする、請求項11に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  14. 2.0±10%kHzの範囲から選択される産生促進用低周波数の低周波交番磁界を前記細胞に対して作用させるため、前記産生促進用低周波数の低周波電磁波を発生させる低周波電磁波発生手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  15. 前記低周波電磁波発生手段は、
    低周波電流を出力する低周波発振手段と;
    前記低周波発振手段から低周波電流が印加されることによって、前記産生促進用低周波数の低周波電磁波を発生させる低周波用アンテナと;
    を備えることを特徴とする、請求項14に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  16. 前記低周波用アンテナに印加される前記低周波電流の立ち上がり時間は、0.1μ秒以下であることを特徴とする、請求項15に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  17. 前記低周波電磁波発生手段は、前記低周波電磁波を発生させるオン期間と、前記低周波電磁波を発生させないオフ期間を所定の周期で繰り返して、前記低周波電磁波を間欠的に発生させることを特徴とする、請求項14に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  18. 前記低周波電磁波発生手段は、前記低周波電磁波を発生させる第3のオン期間と、前記低周波電磁波を発生させない第3のオフ期間を、7.8±10%Hzに対応する周期で繰り返して、前記低周波電磁波を間欠的に発生させることを特徴とする、請求項17に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  19. 前記高周波電磁波発生手段は、前記高周波電磁波を発生させるオン期間と、前記高周波電磁波を発生させないオフ期間を所定の周期で繰り返して、前記高周波電磁波を間欠的に発生させ、
    前記高周波電磁波のオン期間と、前記低周波電磁波のオン期間とは、同期していることを特徴とする、請求項17に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  20. 前記高周波電磁波発生手段は、前記産生促進用高周波数より大きい周波数の高周波電磁波を、前記産生促進用高周波数に対応する周期で間欠的に発生させることによって、前記産生促進用高周波数の高周波電磁波を発生させることを特徴とする、請求項1に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  21. 前記高周波電磁波発生手段が発生させる前記産生促進用高周波数の高周波電磁波は、前記産生促進用高周波数未満の高周波電磁波を発生させる際に生じる高調波を含むことを特徴とする、請求項1に記載の神経栄養因子産生促進装置。
  22. 前記所定の磁束密度は、50nT〜0.01Tであることを特徴とする、請求項1に記載の神経栄養因子産生促進装置。
JP2007550625A 2006-11-08 2006-11-08 神経栄養因子産生促進装置 Active JP4111995B1 (ja)

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2006/322295 WO2008056414A1 (fr) 2006-11-08 2006-11-08 Appareil accélérant la production de facteur neurotrophique

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP4111995B1 true JP4111995B1 (ja) 2008-07-02
JPWO2008056414A1 JPWO2008056414A1 (ja) 2010-02-25

Family

ID=39364243

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007550625A Active JP4111995B1 (ja) 2006-11-08 2006-11-08 神経栄養因子産生促進装置

Country Status (7)

Country Link
US (2) US8562506B2 (ja)
EP (2) EP2081645B8 (ja)
JP (1) JP4111995B1 (ja)
CN (1) CN101534903B (ja)
ES (2) ES2407413T3 (ja)
HK (1) HK1185577A1 (ja)
WO (1) WO2008056414A1 (ja)

Families Citing this family (24)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8961385B2 (en) 2003-12-05 2015-02-24 Ivivi Health Sciences, Llc Devices and method for treatment of degenerative joint diseases with electromagnetic fields
US9656096B2 (en) 2003-12-05 2017-05-23 Rio Grande Neurosciences, Inc. Method and apparatus for electromagnetic enhancement of biochemical signaling pathways for therapeutics and prophylaxis in plants, animals and humans
US10350428B2 (en) 2014-11-04 2019-07-16 Endonovo Therapetics, Inc. Method and apparatus for electromagnetic treatment of living systems
US9433797B2 (en) * 2003-12-05 2016-09-06 Rio Grande Neurosciences, Inc. Apparatus and method for electromagnetic treatment of neurodegenerative conditions
US9415233B2 (en) 2003-12-05 2016-08-16 Rio Grande Neurosciences, Inc. Apparatus and method for electromagnetic treatment of neurological pain
US9440089B2 (en) 2003-12-05 2016-09-13 Rio Grande Neurosciences, Inc. Apparatus and method for electromagnetic treatment of neurological injury or condition caused by a stroke
WO2008056414A1 (fr) * 2006-11-08 2008-05-15 Medical Appliance Co., Ltd. Appareil accélérant la production de facteur neurotrophique
US10149982B2 (en) 2009-03-11 2018-12-11 University Of South Florida Prevention and treatment of brain diseases and disorders related to abnormal protein aggregation through electromagnetic field treatment
WO2010105035A2 (en) * 2009-03-11 2010-09-16 University Of South Florida Prevention, treatment, and diagnosis of alzheimer's disease through electromagnetic field exposure
ES2371820B1 (es) * 2010-02-10 2013-01-30 Pneuma Research, S.L. Dispositivo transductor digital portátil programable con alta discriminación en baja frecuencia y de baja intensidad.
CA2813036A1 (en) 2010-10-01 2012-04-05 Ivivi Health Sciences, Llc Method and apparatus for electromagnetic treatment of head, cerebral and neural injury in animals and humans
GB2486400B (en) * 2010-11-20 2016-02-10 Pulse Medical Technologies Ltd Device for generating magnetic fields
ITNA20110019A1 (it) * 2011-04-28 2012-10-29 Attilio Grattacaso Apparecchiatura, sistema e metodo per la contrazione e la congiunta diatermia mediante modulazione e radiofrequenza
US11759650B2 (en) * 2013-03-11 2023-09-19 NeuroEM Therapeutics, Inc. Immunoregulation, brain detoxification, and cognitive protection by electromagnetic treatment
US9739734B2 (en) 2013-05-13 2017-08-22 The Marine Biological Laboratory Methods and systems of detecting exocytosis of a target molecule from a population of cells
TWI586400B (zh) * 2014-03-04 2017-06-11 Bioelectromagnetic circuit device
WO2015161063A1 (en) 2014-04-16 2015-10-22 Iviv Health Sciences, Llc A two-part pulsed electromagnetic field applicator for application of therapeutic energy
KR102156527B1 (ko) 2016-05-26 2020-09-16 아이에프지 코포레이션 배양액 중의 세포의 비접촉 전기 자극 장치와 비접촉 전기 자극 방법
US10806942B2 (en) 2016-11-10 2020-10-20 Qoravita LLC System and method for applying a low frequency magnetic field to biological tissues
JP7039192B2 (ja) * 2017-06-23 2022-03-22 ニプロ株式会社 生体刺激用信号波生成装置
IT201800004007A1 (it) * 2018-03-27 2019-09-27 Gabriele Alberton Dispositivo magnetoterapico ad efficacia potenziata
US20210121694A1 (en) * 2019-10-28 2021-04-29 Carnegie Mellon University Non-invasive method for suppressing spreading depolarization in human brains
US20230149729A1 (en) * 2020-04-03 2023-05-18 Regents Of The University Of Minnesota Spintronic nanodevice for low-power, cellular-level, magnetic neurostimulation
WO2023218813A1 (ja) * 2022-05-11 2023-11-16 ニプロ株式会社 炎症性サイトカイン産生抑制装置

Family Cites Families (24)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2387526A2 (fr) 1977-01-25 1978-11-10 Fellus Marcel Appareil electrique et electromagnetique implantable a usage medical
US4932951A (en) 1988-03-23 1990-06-12 Life Resonances, Inc. Method and apparatus for controlling tissue growth and an applied fluctuating magnetic field
ATE125455T1 (de) * 1991-02-28 1995-08-15 Medi Line Gmbh Bestrahlungsvorrichtung zur behandlung von lebendem gewebe mit elektromagnetischen wellen.
DE4309395A1 (de) 1992-03-24 1993-09-30 Melitta Schneidawind Gerät zur Verhinderung oder zum Abtragen von Ablagerungen
US6277828B1 (en) * 1993-08-20 2001-08-21 Syntex (U.S.A.) Inc. Pharmaceutical formulations of nerve growth factor
US6425852B1 (en) * 1994-11-28 2002-07-30 Emory University Apparatus and method for transcranial magnetic brain stimulation, including the treatment of depression and the localization and characterization of speech arrest
US6132361A (en) * 1994-11-28 2000-10-17 Neotonus, Inc. Transcranial brain stimulation
IT1280961B1 (it) 1995-10-10 1998-02-11 Istituto Deanna M Lanfranco Pe Dispositivo e metodo per la modulazione delle funzioni biologiche.
JP2000504966A (ja) 1996-08-15 2000-04-25 ニュートナス,インコーポレーテッド 径頭蓋骨脳刺激
DE19752934A1 (de) 1997-05-23 1998-12-03 Siegfried Dr Kiontke Gerät zum Aufschwingen physiologischer Signale auf einen Trägerstoff
UA29798A (uk) 1997-07-01 2000-11-15 Олег Олександрович Бородюк Спосіб покращення імунного статусу людини
US6425851B1 (en) * 1997-10-23 2002-07-30 Siegfried Kiontke Device and process for activating objects
JP2004511314A (ja) 2000-10-20 2004-04-15 アメリカ合衆国 磁気刺激のためのコイルおよびそれを用いる方法
US7074175B2 (en) * 2001-07-25 2006-07-11 Erik Schroeder Handy Thermotherapy via targeted delivery of nanoscale magnetic particles
US7951061B2 (en) * 2001-07-25 2011-05-31 Allan Foreman Devices for targeted delivery of thermotherapy, and methods related thereto
US7967839B2 (en) * 2002-05-20 2011-06-28 Rocky Mountain Biosystems, Inc. Electromagnetic treatment of tissues and cells
US6899667B2 (en) * 2002-10-21 2005-05-31 Paul F. Becker Method and apparatus for the treatment of physical and mental disorders with low frequency, low flux density magnetic fields
CN1548148A (zh) * 2003-05-16 2004-11-24 珠海亿胜生物制药有限公司 一种重组人碱性成纤维细胞生长因子胶囊剂及其制备方法
DE10357265A1 (de) 2003-12-03 2005-07-07 Graviton Gmbh Verfahren zur Wirkverstärkung von Therapeutika, insbesondere antimikrobiellen Chemotherapeutika, Antimykotika und Antibiotika
US20060212077A1 (en) * 2005-03-07 2006-09-21 Pilla Arthur A Electromagnetic treatment apparatus for augmenting wound repair and method for using same
JP4613285B2 (ja) * 2004-09-28 2011-01-12 財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 生体内局所膜電位制御装置及び神経機能回復装置
US20060021077A1 (en) 2005-07-11 2006-01-26 Van Schijndel Johannes T Lettuce variety nascent
WO2007141874A1 (ja) 2006-06-09 2007-12-13 Medical Appliance Co., Ltd. 疼痛治療器,高周波治療器
WO2008056414A1 (fr) * 2006-11-08 2008-05-15 Medical Appliance Co., Ltd. Appareil accélérant la production de facteur neurotrophique

Also Published As

Publication number Publication date
US20140081073A1 (en) 2014-03-20
EP2596833B1 (en) 2015-09-02
EP2081645B8 (en) 2013-07-10
JPWO2008056414A1 (ja) 2010-02-25
CN101534903B (zh) 2011-02-09
US8951183B2 (en) 2015-02-10
US20090326315A1 (en) 2009-12-31
WO2008056414A1 (fr) 2008-05-15
HK1185577A1 (en) 2014-02-21
EP2081645A1 (en) 2009-07-29
EP2596833A1 (en) 2013-05-29
CN101534903A (zh) 2009-09-16
US8562506B2 (en) 2013-10-22
ES2549790T3 (es) 2015-11-02
EP2081645B1 (en) 2013-02-20
ES2407413T3 (es) 2013-06-12
EP2081645A4 (en) 2011-09-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4111995B1 (ja) 神経栄養因子産生促進装置
KR101324824B1 (ko) 특이적이고 선택적인 전기 신호 및 전자기 신호에 의해생성된 장의 적용을 통해 골 세포에서의 골 형태형성단백질 (bmp) 유전자 발현을 상향-조절하는 시스템 및방법
EP1894600B1 (en) Magnetic stimulating circuit for central nervous system
CN101415462A (zh) 自容式电磁脑面部区域治疗设备及其使用方法
US7465546B2 (en) Regulation of transforming growth factor-beta (TGF-β) gene expression in living cells via the application of specific and selective electric and electromagnetic fields
US8415123B2 (en) Electromagnetic treatment apparatus and method for angiogenesis modulation of living tissues and cells
US5106361A (en) Method and apparatus for controlling the growth of non-osseous non-cartilaginous solid connective tissue
WO2008127011A3 (en) A low frequency magnetic physical treatment device using shumann resonance frequency, water molecule resonance frequency and brain waves as the important treatment information
CN102008782B (zh) 神经营养因子产生促进装置
Rahbek et al. Interactions of low frequency, pulsed electromagnetic fields with living tissue: biochemical responses and clinical results
AU2009212561B2 (en) Regulation of Fibroblastic Growth Factor-2 (FGF-2) gene expression in living cells with the application of specific and selective electric an electromagnetic fields
Choi et al. Combined effect of pulsed electromagnetic field and sound wave on In vitro and In vivo neural differentiation of human mesenchymal stem cells
WO2007141874A1 (ja) 疼痛治療器,高周波治療器
WO2005071057A1 (ja) 磁場又は電場刺激装置及びその磁場又は電場刺激装置を用いた生体細胞若しくは生体組織の成長及び機能の促進、抑制又は障害方法
JP2006311970A (ja) 高周波治療器
ZA200605544B (en) Electromagnetic treatment apparatus and method
Lin et al. Differential intensity-dependent effects of magnetic stimulation on the longest neurites and shorter dendrites in neuroscreen-1 cells

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080401

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080408

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4111995

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110418

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140418

Year of fee payment: 6

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140418

Year of fee payment: 6

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250