JP4111839B2 - プロペラシャフト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両のプロペラシャフトに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の衝突等による衝撃荷重を吸収するプロペラシャフトとして、特許文献1、2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1のプロペラシャフトは、相互にスプライン嵌合された外側軸と内側軸を有し、外側軸の延出部で内側軸の先端をかしめるものにした。衝突等による過大な衝撃荷重が作用すると、かしめ部が塑性変形し、内側軸の先端がかしめ部から抜け出ることにより、内側軸と外側軸が収縮し、この過程で衝撃荷重を吸収緩和する。
【0004】
また、特許文献1のプロペラシャフトでは、内側軸が外側軸に対して抜け出ることを防止しながら、外側軸に対する内側軸の突出位置を定めるスナップリングを内側軸の端部に設けた溝に係着している。
【0005】
特許文献2のプロペラシャフトは、相互にスプライン嵌合された外側軸と内側軸を有し、内側軸の自由端部に形成したテーパ部を外側軸の内周のテーパ部に対し軸方向嵌合したものである。衝突等による過大な衝撃荷重が作用すると、テーパ部の軸方向嵌合が外れることにより、内側軸と外側軸が収縮し、この過程で衝撃荷重を吸収緩和する。
【0006】
【特許文献1】
特開平11-303846([0021]、[0022]、図1)
【0007】
【特許文献2】
特開平7-305715([0011]、[0014]、図1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1のプロペラシャフトは、外側軸の先端をかしめ加工することにて衝撃吸収部を構成するものであり、加工複雑でコスト高になる。
【0009】
また、特許文献1のプロペラシャフトでは、内側軸の端部にスナップリングを係着する溝を設け、この内側軸の端部を外側軸の延出部でかしめるものであり、内側軸の端部に及ぶかしめ荷重が上述の溝をつぶし、スナップリングを外れ易くするおそれがある。
【0010】
特許文献2のプロペラシャフトは、外側軸に対する内側軸の軸方向嵌合部(テーパ部)が、その自由端部に設けられるとはいっても、そのスプライン部と部材的に一体であり、外側軸と内側軸のスプライン嵌合の回転方向のがたの影響がこの軸方向嵌合部に及ぶ。このため、外側軸と内側軸の軸方向嵌合部の嵌合強度を衝撃荷重に対し長期安定して高精度に設定することができない。
【0011】
本発明の課題は、プロペラシャフトにおいて、簡易かつ高精度に衝撃吸収部を構成し、衝撃吸収性能の安定を図ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、相互にスプライン嵌合された外側軸と内側軸を衝撃荷重により収縮し得るように連結する衝撃吸収部を有するプロペラシャフトにおいて、前記衝撃吸収部が、外側軸の内径に環状支持部材の外周を圧入し、前記外側軸が、支持部材のための圧入内径部よりスプライン部を小径にし、圧入内径部とスプライン部との間に環状段差部を設け、前記内側軸のスプライン部に対する外端側の端部に設けた環状溝に係着した止め輪を外側軸に圧入した支持部材の押当て部により上記段差部に対して軸方向に押当て保持するようにしたものである。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、複数の前記衝撃吸収部を軸方向に並置してなるようにしたものである。
【0014】
支持部材は、環状カラー、円盤ディスク等、外側軸の内径に圧入されるものであれば、いかなる形態でも良い。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1はプロペラシャフトを示す平面図、図2は図1の要部を一部破断して示す拡大図、図3は第1衝撃吸収部を示す断面図、図4は第2衝撃吸収部を示す断面図である。
【0016】
自動車のプロペラシャフト10は、図1に示す如く、前側シャフト11と後側シャフト12に分割された2本のシャフト部材からなり、両シャフト11、12を自在継手13により連結して構成される。前側シャフト11の前端部は、自在継手14を介して、エンジン側のトランスミッションの出力軸に接続される連結ヨーク15に連結される。後側シャフト12の後端部には、自在継手16を介して、デファレンシャルギヤに接続される連結ヨーク17に連結される。尚、前側シャフト11の後述する第2内側軸22は、センタベアリング18、ゴム状弾性部材18Aを介してセンタブラケット19に支持される。
【0017】
プロペラシャフト10は、衝突等による衝撃荷重を吸収するため、第1と第2の衝撃吸収部30、40を前側シャフト11の中間部の軸方向に並置して備える。即ち、前側シャフト11は、中空外側軸20の両端部に第1内側軸21と第2内側軸22のそれぞれをスプライン嵌合し、外側軸20と第1内側軸21を衝撃荷重により収縮し得るように連結する第1衝撃吸収部30と、外側軸20と第2内側軸22を衝撃荷重により収縮し得るように連結する第2衝撃吸収部40を以下の如くに有する。
【0018】
尚、外側軸20は、図2に示す如く、鋼管20Aの一端に第1スリーブ20Bを溶接するとともに、鋼管20Aの他端に第2スリーブ20Cを溶接し、第1スリーブ20Bと第2スリーブ20Cの内周面に軸方向に延びるスプライン歯20D、20Eを形成している。第1内側軸21は、一端21Aを自在継手14の取付部とし、他端21Bを中抜き軸部とし、他端21Bの外周面に軸方向に延びるスプライン歯21Cを形成している。スプライン歯21Cは第1スリーブ20Bのスプライン歯20Dに軽圧入されてスプライン嵌合する。第2内側軸22は、一端22Aを自在継手(等速ジョイント)13のインナー軸取付部とし、他端22Bの外周面に軸方向に延びるスプライン歯22Cを形成している。スプライン歯22Cは第2スリーブ20Cのスプライン歯20Eに軽圧入されてスプライン嵌合する。
【0019】
(第1衝撃吸収部30)(図3)
第1衝撃吸収部30は、外側軸20の一端の第1スリーブ20Bに設けた圧入内径部20Fに、環状カラーからなる支持部材31の外周を圧入する。支持部材31は内周に段差を設け、小内径部の側を第1内側軸21のための支持部31Aとし、大内径部の側を後述する止め輪32のための押当て部31Bとする。
【0020】
第1衝撃吸収部30では、第1内側軸21の端面を外側軸20に対する収縮方向(第1内側軸21が外側軸20の中空部に入って収縮する方向、図3の右向き方向)で支持部材31の支持部31Aの端面に当接させる。
【0021】
外側軸20の一端の第1スリーブ20Bは、支持部材31のための圧入内径部20Fよりスプライン歯20Dを小径にし、圧入内径部20Fとスプライン歯20Dとの間に環状段差部20Gを設ける。そして、第1内側軸21の他端21Bのスプライン歯21Cに対する外端側の側傍に設けた環状溝21Dに係着した止め輪32をその段差部20Gに係止する。このとき、支持部材31の押当て部31Bの端面は、止め輪32の側面に当接し、止め輪32を段差部20Gに押当て保持する。これにより、外側軸20と第1内側軸21とは軸方向にがたなく一体組付けされ、外側軸20に対する第1内側軸21の突出位置(組付位置)を定める。この組付状態で、支持部材31の支持部31Aの端面31C(支持部31Aと押当て部31Bの段差面)、及び押当て部31Bの径方向内周面との対向面間とは、第1内側軸21の端面、及び外側面との間に隙間を介して遊嵌しても良いし、第1内側軸21の端面、及び外側面に隙間なく当接していても良い。
【0022】
第1衝撃吸収部30の組付け手順は以下の如くなされる。
(1)外側軸20の第1スリーブ20Bに設けたスプライン歯20Dと、第1内側軸21の他端21Bに設けたスプライン歯21Cを軽圧入する。外側軸20と第1内側軸21を、第1内側軸21の環状溝21Dが外方に突出するまで軸方向にスライド(短縮)させ、環状溝21Dに止め輪32を係着する。
【0023】
(2)外側軸20と第1内側軸21を、第1内側軸21に係着した止め輪32が外側軸20の第1スリーブ20Bの段差部20Gに当接して係止するまで軸方向にスライド(伸長)させる。これにより、外側軸20に対する第1内側軸21の突出位置(組付位置)が定まる。
【0024】
(3)外側軸20の第1スリーブ20Bの圧入内径部20Fに支持部材31を圧入する。この際、止め輪32が第1スリーブ20Bの段差部20Gに係止する状態を確保しつつ、第1内側軸21の環状溝21Dに係着してある止め輪32に、支持部材31の押当て部31Bの端面を当接させる。尚、上記の(2)、(3)の工程は支持部材31の圧入と同時に適宜組合わせて実施しても良い。
(4)外側軸20の第1スリーブ20Bに鋼管20Aの一端を溶接する。
【0025】
(第2衝撃吸収部40)(図4)
第2衝撃吸収部40は、外側軸20の他端の第2スリーブ20Cに設けた圧入内径部20Hに、環状カラーからなる支持部材41の外周を圧入する。支持部材41は内周に段差を設け、小内径部の側を第2内側軸22のための支持部41Aとし、大内径部の側を後述する止め輪42のための押当て部41Bとする。
【0026】
第2衝撃吸収部40では、第2内側軸22の端面を外側軸20に対する収縮方向(第2内側軸22が外側軸20の中空部に入って収縮する方向、図4の左向き方向)で支持部材41の支持部41Aの端面に当接させる。
【0027】
外側軸20の他端の第2スリーブ20Cは、支持部材41のための圧入内径部20Hよりスプライン歯20Eを小径にし、圧入内径部20Hとスプライン歯20Eとの間に環状段差部20Iを設ける。そして、第1内側軸22の他端22Bのスプライン歯22Cに対する外端側の側傍に設けた環状溝22Dに係着した止め輪42をその段差部20Iに係止する。このとき、支持部材41の押当て部41Bの端面は、止め輪42の側面に当接し、止め輪42を段差部20Iに押当て保持する。これにより、外側軸20と第2内側軸22とは軸方向にがたなく一体組付けされ、外側軸20に対する第2内側軸22の突出位置(組付位置)を定める。この組付状態で、支持部材41の支持部41Aの端面41C(支持部41Aと押当て部41Bの段差面)は、第2内側軸22の端面との間に隙間を介しても良いし、第2内側軸22の端面に隙間なく当接していても良い。
【0028】
第2衝撃吸収部40の組付け手順は以下の如くなされる。
(1)外側軸20の第2スリーブ20Cに設けたスプライン歯20Eと、第2内側軸22の他端22Bに設けたスプライン歯22Cを軽圧入する。外側軸20と第2内側軸22を、第2内側軸22の環状溝22Dが外方に突出するまで軸方向にスライド(短縮)させ、環状溝22Dに止め輪42を係着する。
【0029】
(2)外側軸20と第2内側軸22を、第2内側軸22に係着した止め輪42が外側軸20の第2スリーブ20Cの段差部20Iに当接して係止するまで軸方向にスライド(伸長)させる。これにより、外側軸20に対する第2内側軸22の突出位置(組付位置)が定まる。
【0030】
(3)外側軸20の第2スリーブ20Cの圧入内径部20Hに支持部材41を圧入する。止め輪42が第2スリーブ20Cの段差部20Iに係止する状態を確保しつつ、第2内側軸22の環状溝22Dに係着してある止め輪42に、支持部材41の押当て部41Bの端面を当接させる。尚、上記の(2)、(3)の工程は支持部材41の圧入と同時に適宜組合わせて実施しても良い。
(4)外側軸20の第2スリーブ20Cに鋼管20Aの他端を溶接する。
【0031】
次に、プロペラシャフト10の作動について説明する。
車両の前方から衝撃荷重が、車体のエンジンルーム等のクラッシャブルゾーンを変形させた後、エンジンに作用すると、この衝撃荷重がトランスミッションからプロペラシャフト10の前側シャフト11に及び、前側シャフト11の第1衝撃吸収部30と第2衝撃吸収部40で順に吸収緩和される。
【0032】
即ち、第1衝撃吸収部30にあっては、衝撃荷重が外側軸20の第1スリーブ20Bのスプライン歯20Dと第1内側軸21の他端21Bのスプライン歯21Cとのスプライン嵌合を外すとともに、外側軸20の第1スリーブ20Bの圧入内径部20Fに圧入してある支持部材31を抜き外し、第1内側軸21の他端21Bを外側軸20の鋼管20A内部に侵入させ、外側軸20と第1内側軸21を相対収縮させる。衝撃荷重は、支持部材31を第1スリーブ20Bの圧入内径部20Fから抜き外すエネルギーとその相対変位とにより効率的に吸収緩和されることになる。第1内側軸21の移動は、第1内側軸21の一端21A側のストッパ部21E(フランジ)(図1)が外側軸20の第1スリーブ20Bの端面に当接することで停止する。
【0033】
第1衝撃吸収部30で衝撃荷重が吸収しきれない場合には、第1内側軸21の一端21A側のストッパ部21Eが外側軸20の第1スリーブ20Bの端面に当接することで、衝撃荷重が外側軸20を介して第2衝撃吸収部40の側に及び、第2衝撃吸収部40が第1衝撃吸収部30と同様にして衝撃荷重を更に吸収する。即ち、衝撃荷重が外側軸20の第2スリーブ20Cのスプライン歯20Eと第2内側軸22の他端22Bのスプライン歯22Cとのスプライン嵌合を外すと共に、外側軸20の第2スリーブ20Cの圧入内径部20Hに圧入してある支持部材41を抜き外し、外側軸20の鋼管20Aの内部に第2内側軸22の他端22Bを侵入させ、外側軸20と第2内側軸22を相対収縮させる。このとき、外側軸20の鋼管20A、第2スリーブ20Cはセンタブラケット19のゴム状弾性部材18Aを突き破って移動する。衝撃荷重は、支持部材41を第2スリーブ20Cの圧入内径部20Hから抜き外すエネルギーとその相対変位とにより効率的に吸収緩和されることになる。外側軸20の移動は、外側軸20の第2スリーブ20Cの端面が第2内側軸22の一端22A側のストッパ部22E(図1)に当接することで停止する。
【0034】
衝撃吸収部30、40において、衝撃荷重に対する支持部材31、41の圧入強度は、衝撃荷重の入力時に、キャビンの乗員に対して致命的な衝撃となる基準衝撃を発生させない程度に設定する。
【0035】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(請求項1に対応する作用効果)
▲1▼衝撃吸収部30、40が外側軸20の内径に支持部材31、41を圧入することにより構成されるから、加工、組付簡易でコスト低減できる。
【0036】
▲2▼外側軸20に圧入される支持部材31、41が、内側軸21、22と別体であり、外側軸20と内側軸21、22のスプライン嵌合の回転方向のがたの影響がこの支持部材31、41の圧入部に及ばない。このため、外側軸20に対する支持部材31、41の圧入強度を衝撃荷重に対し高精度に設定できると共に耐久性が良い。
【0037】
▲3▼内側軸21、22の端面を外側軸20に対する収縮方向で支持部材31、41に当接し、かつ内側軸21、22の端部に係着した止め輪32、42を、外側軸20における支持部材31、41の圧入内径部20F、20Hとスプライン歯20D、20Eの間の段差部20G、20Iに係止した。従って、内側軸21、22が外側軸20に対して抜け出ることを防止しながら、外側軸20に対する内側軸21、22の突出位置を定め、衝撃吸収時の内側軸21、22の移動量(衝撃吸収ストローク)を定めることができる。
【0038】
▲4▼内側軸21、22の端部に止め輪32、42を係着する溝21D、22Dを設け、支持部材31、41の押当て部31B、41Bによりその止め輪32、42を上述▲3▼の段差部20G、20Iに押当て保持する。従って、支持部材31、41に加える圧入荷重は押当て部31B、41Bから止め輪32、42を介して上述▲3▼の段差部20G、20Iにて担持され、内側軸21、22の端部に設けた止め輪32、42のための溝21D、22Dをつぶして傷つけたり、損傷のおそれがなく、止め輪32、42を安定的に設けることができる。
【0039】
(請求項2に対応する作用効果)
▲5▼複数の衝撃吸収部30、40を軸方向に並置することにより、衝撃荷重を各衝撃吸収部30、40により順次吸収でき、プロペラシャフト10の衝撃吸収性能を向上できる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態を図面により記述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、プロペラシャフトにおいて、簡易かつ高精度に衝撃吸収部を構成し、衝撃吸収性能の安定を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はプロペラシャフトを示す平面図である。
【図2】図2は図1の要部を一部破断して示す拡大図である。
【図3】図3は第1衝撃吸収部を示す断面図である。
【図4】図4は第2衝撃吸収部を示す断面図である。
【符号の説明】
10 プロペラシャフト
20 外側軸
20D、20E スプライン歯
20F、20H 圧入内径部
20G、20I 段差部
21、22 内側軸
30、40 衝撃吸収部
31、41 支持部材
31A、41A 支持部
31B、41B 押当て部
32、42 止め輪
Claims (2)
- 相互にスプライン嵌合された外側軸と内側軸を衝撃荷重により収縮し得るように連結する衝撃吸収部を有するプロペラシャフトにおいて、
前記衝撃吸収部が、外側軸の内径に環状支持部材の外周を圧入し、
前記外側軸が、支持部材のための圧入内径部よりスプライン部を小径にし、圧入内径部とスプライン部との間に環状段差部を設け、
前記内側軸のスプライン部に対する外端側の端部に設けた環状溝に係着した止め輪を外側軸に圧入した支持部材の押当て部により上記段差部に対して軸方向に押当て保持することを特徴とするプロペラシャフト。 - 複数の前記衝撃吸収部を軸方向に並置してなる請求項1に記載のプロペラシャフト。
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