JP4109559B2 - オリゴヌクレオチドとポリエチレンオキシドのコンジュゲート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生化学、薬剤学の分野で有用なオリゴヌクレオチドの誘導体、より具体的には各種環境下で安定に存在しうるオリゴヌクレオチドのコンジュゲートに関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子を生体内の標的部位へ送達するためのキャリアとして、改変レトロウイルス、改変アデノウイルス等に加えて、安全性の観点から、合成キャリア、例えば、カチオニックリポソーム、膜融合リポソーム、ポリカチオン(例えば、DEAE−デキストラン、ポリ−L−リジン、キトサン)、ポリカチオン含有ブロックコポリマー等の使用が検討されてきた。就中、片岡を初めとする本発明者の一部により提案されたポリイオンコンプレックスミセル(PICミセル)を利用するDNAの送達系は、一般的に、薬物内包ミセルの安定性、標的細胞もしくは組織内への移行性、組織内での薬物の安定性が良く、期待されうる送達系である(例えば、非特許文献1、同2、特許文献1参照。)。より具体的には非特許文献1にはポリ(エチレンオキシド)−block−ポリリジンをプラスミドDNAのキャリアとして用いた場合の動物の組織または細胞への移行性等が、同2にはポリ(エチレンオキシド)−block−ポリ[メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノエチル)]がプラスミドDNAの好ましいキャリアになりうることが、そして特許文献1にはポリ(エチレンオキシド)−block−ポリ(エチレンイミン)も、上記のものと同様なキャリアとして機能することが記載されている。
【0003】
しかしながら、低分子DNAはPICミセルに内包した場合、DNAそれ自体または薬物内包ミセルの安定性が充分でないこともある。このようなミセルの安定化を図る目的で、ポリカチオン性ポリマー鎖間で−SS−結合を形成することも提案されている(特許文献2参照)。具体的には、特許文献2には非特許文献1に記載されているようなポリ(ポリエチレンオキシド)−block−ポリ(リジン)のリジン残基中にメルカプトアルキル基を導入し、かようなメルカプト基を介してポリマー鎖間でジスルフィド結合(−SS−)を形成することにより、PICミセルの安定化が図られている。なお、こうして形成された−SS−結合は、動物細胞中に存在することが知られているグルタチオン等により開裂されうることが記載されている。
【0004】
【非特許文献1】
Kataoka et al. Macromolecules 29(1996)8556〜8557
【0005】
【非特許文献2】
Kataoka et al. Macromolecules 32(1999)6892−6894
【0006】
【特許文献1】
特開2001−048978号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2001−146556号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、限定されるものでないが、特に、オリゴDNAを初めとする修飾されていてもよいオリゴヌクレオチドの安定な送達系を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、修飾されていてもよいオリゴヌクレオチドをポリ(エチレンオキシド)に共有結合させたコンジュゲートとすることにより、従来の高分子量DNAのキャリアとの複合体[コンプレックス(イオンコンプレックス、カチオニックリポソーム、PICミセル等)]として安定に存在し得、しかも、オリゴヌクレオチドそれ自体も動物の組織もしくは細胞内での安定性が向上することを見出した。また、このようなコンジュゲートは本発明者らの知る限り、文献未載の化合物である。
【0010】
したがって、本発明によれば、下記の一般式(I)で表されるオリゴヌクレオチドとポリエチレンオキシドのコンジュゲートが提供される。
【0011】
A−L1−L2−PEG (I)
式中、Aはリボースの3′もしくは5′ヒドロキシル基末端においてリン酸エステル結合を介して−L1−L2−PEGに結合した修飾されていてもよいオリゴヌクレオチドの残基を表し、
L1は酸素原子もしくは硫黄原子により1もしくは2以上の箇所で中断されていてもよい総原子数3〜30のアルキレン基を表し、そして
L2は連結基を表し、そして
PEGは末結合末端に、連結基を場合により介して、水素原子、アルキル基、アラルキル基、官能基もしくはリガンドの残基を担持するポリ(エチレンオキシ基)を表す。
【0012】
また、本発明によれば、このようなコンジュゲートの生体内送達内のキャリアに担持もしくは内包させるための使用、例えば、該コンジュゲートとポリカチオンの複合体も提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明にいうオリゴヌクレオチドは、所謂、「オリゴ」が意味する数個から10数個のヌクレオチドからなるものに限定されず、最大、100個までのヌクレオチドからなるものも包含する。
【0014】
また、各ヌクレオチド間のホスホジエステル結合の向きは、通常、3′→5′もしくは5′→3′であるが、ヌクレオチドの種類によっては、2′→5′もしくは5′→2′であってもよく、また、これらの結合様式が混在していてもよい。さらに、オリゴヌクレオチドを構成するヌクレオチドはDNAまたはRNAを構成するいずれのものであってもよい。
【0015】
「修飾されていてもよい」とは、天然のDNAまたはRNAにみられる各ヌクレオチドの塩基におけるアミノ基のアルキル化、アシル化、またはヒドロキシル基による置換、リン酸ジエステル結合に関与しないリボースのヒドロキシル基(例えば、2′−OH)のアルキル化等によって修飾されていてもよいことを意味する。さらに、糖残基またはペプチジル(アミノ酸残基)により、−L1−L2−PEGに結合した末端と反対側の末端のヒドロキシル基を介して、あるいは末端もしくはリン酸ジエステル結合を有するヌクレオチドの塩基もしくはリボース部位が修飾されているオリゴヌクレオチドも、本発明にいうオリゴヌクレオチドに包含される。限定されるものでないが、本発明で用いることを意図しているオリゴヌクレオチドの例としては、オリゴDNA、オリゴRNA、RNAアプタマー、3′末端をSH化したドーパミンD2受容体アンチセンスDNAが挙げられる。
【0016】
このようなオリゴヌクレオチドには、通常のDNAおよびRNAの方向付けに基づいて、3′末端側(すなわち、リボースの5′位はリン酸ジエステル結合に関与している。)の3′ヒドロキシル基か、または5′末端側(すなわち、リボースの3′位はリン酸ジエステル結合に関与している。)の5′ヒドロキシル基を介するリン酸エステル結合を形成するように式−L1−L2−PEGで表される基が結合している(なお、本発明において「結合」という場合、特記しない限り共有結合を意味する。)。
【0017】
該式中のL1は、酸素原子もしくは硫黄原子、好ましくは酸素原子により1もしくは2以上の箇所で中断されていてもよい総原子数3〜30のアルキレン基であることができる。このようなアルキレン基は、分岐していてもよく、したがって、限定されるものでないが、
【0018】
【化1】
【0019】
等が例示される。
【0020】
L2は連結基を表し、本発明の目的に沿う限り、A−L1部とPEG部とを連結しうるいかなる基、例えば、アルキレン基(上記の例示を参照。)、アリレン基、−O−、−S−、−NH−、−COO−、−SS−、−NHCO−、−NHCO−NH−、−SO−から選ばれる1種以上からなるものであってもよい。限定されるものでないが、L2の例としては、−SS−、−SCH2CH2−COO−、−OCH2CH2COO−、−NHCH2CH2COO−、−SCH2CH2−COOCH2−、−SOCH2CH2COO−が挙げられる。このような連結基のうち、生理学的条件下(動物の組織、細胞、体液等に含まれるペプチダーゼ、エステラーゼ、還元性物質等の存在下)で開裂されうる基、例えば−SS−基、−COO−もしくは−OCO−基を連結基内に少なくとも1個含むものが好ましい。
【0021】
−PEGは未結合末端(L2との結合末端のもう一方の末端)に連結基を場合により介して、水素原子、アルキル基、アラルキル基、官能基もしくはリガンドの残基を担持するポリ(エチレンオキシド)基を表す。具体的には、−PEGは、式(II)
−(CH2CH2O)n−L3−X (II)
式中、L3は上記のL2について定義したのと同様な連結基または単結合であり、Xは水素原子もしくは、アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル等)、アラルキル基(例、ベンジル、フェネチル等)、ヒドロキシル基、アルデヒド(もしくはホルミル基:−CHO)、アセタール化ホルミル基、アミノ基、保護されたアミノ基、マレイミド基、カルボキシル基および保護されたカルボキシル基(なお、「保護された」と称する場合の保護基は、限定されるものでないが、ペプチド合成で慣用されるアミノ基およびカルボキシル基に対する保護基を意味する。)からなる群より選ばれる官能基または該官能基を介して結合したリガンド(例、ビオチン、ハプテン、ホルモン、酵素の基質等)の残基であり、
nは5〜500の整数である、
で表されるポリ(エチレンオキシド)基である。
【0022】
式(II)または−L2−(CH2CH2O)n−L3−Xをもたらすポリ(エチレンオキシド)誘導体は、本発明者らの一部によって提案されたヘテロテレケリック親疎水性ブロックコポリマーを製造する際の、中間段階である、ポリ(エチレンオキシド)セグメントの形成に従って(例えば、WO 96/33233、WO 96/32434、WO 97/06202、前述の特許文献1および2参照。)、または必要により、それらに当業技術分野で周知の技法を加えて製造することができる。
【0023】
限定されるものでないが、典型的なポリ(エチレンオキシド)誘導体の製造法は次に示す反応スキームに従って実施できる。
スキーム1:
【0024】
【化2】
【0025】
スキーム2:
【0026】
【化3】
【0027】
なお、以上の反応スキームに示す各反応段階の条件は、前述の特許文献1および国際公開パンフレットを参照できる。
【0028】
次に、一般式(I)におけるL2に−SS−結合または−COO−結合を有するオリゴヌクレオチドとポリエチレンオキシドのコンジュゲートは、例えば、次に示す反応スキームに従って製造できる。
スキーム3:
【0029】
【化4】
【0030】
スキーム4:
【0031】
【化5】
【0032】
oligo−NT:
【0033】
【化6】
【0034】
X:水素またはヒドロキシル基
B:各種塩基の残基
R:水素または修飾基
m:10〜100
こうして製造される本発明に従うコンジュゲートは、必要により、さらにリガンドを付する反応に供してもよい。例えば、(f)または(g)で表されるコンジュゲートのアセタール化ホルミル基[(CH3CH2O)CH−]を酸加水分解に供してホルミル基(−CHO)に転化し、次いで、必要によりアミノ基を導入したリガンドとの反応により、リガンドを導入することもできる。
【0035】
以上に従って提供されるコンジュゲートは、例えば、非特許文献1または2、特許文献1に記載されるようなポリ(エチレンオキシド)−block−ポリ(リジン)、ポリ(エチレンオキシド)−block−ポリ[メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノエチル)]、ポリ[エチレンオキシド)−block−ポリ(エチレンイミン)等を用い、それらに記載されたDNAの内包PICミセルの形成法に従って、該コンジュゲート内包PICミセルを提供できる。また、本発明に従うコンジュゲートは、上記のようなブロックコポリマーのみならず、ポリカチオン(例えば、上記のブロックコポリマーのカチオン形成可能なセグメント、またはオリゴーもしくはポリアルギニン、tat、KALAを含有するオリゴマーまたはホモポリマー)との複合体またはイオンコンプレックス、カチオニックリポソーム内へ封入したコンプレックとしても提供できる。
【0036】
かようなコンジュゲート内包PICミセルは、ミセルも比較的安定である。
【0037】
【実施例】
本発明を具体例を挙げてさらに具体的に説明する。
製造例1:アセタール−PEO−アクリレートの製造
【0038】
【化7】
【0039】
アルゴン下、ナスフラスコ中、室温において、開始剤3,3−ジエトキシ−1−プロパノール1.0mmol(0.16ml)を溶媒テトラヒドロフラン(THF)25mlにマイクロシリンジで加え、K−ナフタレン1.0mmol(0.325mol/1−THF溶液、3.1ml)を加えて10分間メタル化を施した。次いで、エチレンオキシド110mmol(5.5ml)を加えて水冷下で2日間撹拌し、アニオン開環重合を行った。その後、トリエチルアミンを3倍モル量3.0mmol(0.42ml)と停止剤としてアクリロイルクロライドを3倍モル量3.0mmol(0.24ml)を順次加え、室温において1日停止反応を行った。その後、2−プロパノール沈澱(2l)、遠心分離(5000×g、45分間)、減圧乾燥、ベンゼン凍結乾燥により精製を行った。この生成物の収量は5.0g(98%)であった。
【0040】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定により、得られたポリマーは単峰性であり、その数平均分子量は4830であり、仕込み分子量5080とほぼ一致していた。
【0041】
同様にMALDI−TOF−MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計)の測定においても、得られたポリマーは単峰性であり、その数平均分子量は4460であった。また、これらのピークの測定値と計算値を比較した結果、このポリマーはエチレンオキシド骨格を主鎖に有し、α−末端にアセタール基、ω−末端にアクリレート基を有するヘテロテレケリックポリエチレンオキシドであることが確認された。
【0042】
さらに、得られたポリマーの重DMSO中での 1H−NMR(プロトン核磁気共鳴)スペクトルより、このポリマーの平均分子量は4870と計算された。またこのポリマーはエチレンオキシド骨格を主鎖に有し、α−末端にアセタール基、ω−末端にアクリレート基を有するヘテロテレケリックポリエチレンオキシドであることが確認された。
【0043】
実施例1:オリゴDNA−PEOコンジュゲートの製造
【0044】
【化8】
【0045】
オリゴDNA−CH2CH2CH2SH 1.34μmol(8.1mg)と30倍モル量のアセタール−PEO−アクリレート40.2μmol(194.8mg)を試験管に加え、アルゴン置換を行った。次いで、pH8に調整した蒸留水300μlをマイクロシリンジで加え室温において6時間撹拌し、マイケル付加反応を行った。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、オリゴDNAの消費とオリゴDNA−PEOコンジュゲートの生成を確認し、凍結乾燥により粗生成物を203.2mg得た。その後、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(Mono Q HR 10/10)による分取、純水に対する透析(区画分子量3500、1、2、4、6、8、12時間後に水を交換)を1日行うことで精製を行った。この生成物の収量は6.1mg(42%)であった。
【0046】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定により、得られたポリマーは単峰性であり、その数平均分子量は9910であり、理論分子量10860とほぼ一致していた(図1参照)。
【0047】
さらに、得られたポリマーのD2O中での 1H−NMR(プロトン核磁気共鳴)スペクトルより、α−末端にアセタール基を有し、主鎖がエステル結合を介しエチレンオキシド骨格と核酸骨格からなるオリゴDNA−PEOコンジュゲートであることが確認された(図2参照)。
製造例2:アセタール−PEG−OSO2CH3の製造
アルゴン下、ナスフラスコ中において、脱水溶媒THF30mLに開始剤3,3−ジエトキシ−1−プロピルアルコール0.16mL(1mmol)を加えた。そして、カリウムナフタレン等モル量を用いてアルコキシドを形成させた後、エチレンオキシド7.0mL(140mmol)を加え2日間室温下で重合した。そして、トリエチルアミン1.25mL(9mmol)とカリウムナフタレン0.5mmolをポリマー溶液に加えた。さらに、停止反応として、メタンスルホニルクロリド0.54mL(7mmol)を脱水THFに溶解させたところへ、このポリマー溶液を滴下することによって、停止末端へのメタンスルホニル基の導入を行った。その後、クロロホルムと飽和食塩水にて抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて脱水した。ロータリーエバポレーターにて濃縮後、エーテル再沈、吸引ろ過にてポリマーを回収し、最後にベンゼン凍結乾燥にて白色のポリマーを得た。
製造例3:アセタール−PEG−S(C=S)OCH2CH3の製造
減圧乾燥したO−エチルジチオ炭酸カリウムに脱水THF75mLとDMF1.5mLを加え撹拌した。そして、この溶液を同じく減圧乾燥させたアセタール−PEG−OSO2CH3 1.55g(Mn6100)に加えて、室温にて4時間反応させた。その後、クロロホルムと飽和食塩水にて抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて脱水した。ロータリーエバポレーターにて濃縮後、エーテル再沈、吸引ろ過にてポリマーを回収し、最後にベンゼン凍結乾燥にて白色のポリマーを得た。
製造例4:アセタール−PEG−SSpylの合成
脱水THF中にアセタール−PEG−S(C=S)OCH2CH3 160mgと2−ピリジルジスルフィド586mg(100倍モル量)を溶解させたところへ、n−プロピルアミン3.5mL(1.4mM)を加えて室温下3時間反応させた。そして、上記の精製法を二回繰り返してベンゼン凍結乾燥させた。
【0048】
実施例2:
(1) オリゴDNA−PEOコンジュゲートと直鎖状ポリエチレンイミン(PEI)からなるポリイオンコンプレックス(PIC)ミセルの製造。
【0049】
オリゴDNA−PEOコンジュゲート3.0mgを、10mMトリス−HCl酸緩衝液(pH7.4)に溶解させた後、0.1・mのフィルターで濾過しゴミを除いた。次に、この溶液をExGen500(直鎖状PEI)の正電荷とオリゴDNA−PEOコンジュゲートの負電荷の比が1となるように添加した。さらに、10mMトリス−HCl酸緩衝液(pH7.4、0.3M Nacl)を混合溶液と同量加え、6時間静置しPICミセルを形成させた。
【0050】
得られたPICミセルの粒径および粒径分布は、動的光散乱測定法(DLS)によって評価した。DLS測定より、PICミセルの粒径の分布は単峰性であり、分布の程度も比較的狭いことが示された(dw/dn=1.13)。また、PICミセルの平均粒径は102.5nmであった(図3参照)。
(2) 弱酸性条件下におけるPICミセルの加水分解(エステル結合の切断)上記で得られたPICミセルをpH5.5に調整し、所定時間ごとにサンプリングしゲルろ過クロマトグラフィー(Superose 6 HR)を測定した(図4参照)。pH5.5の酸性条件下におけるゲルろ過クロマトグラフィーは、時間経過と共にPICミセルのピークが底分子量側にシフトし、それに伴いPEOのピークが現れた。また、4時間後には沈殿物が系内に確認された。一方、pH7.4の条件下では、PICミセルは安定に存在していることが明らかとなった。このように、オリゴDNAとPEOのつなぎ目にあるエステル結合がpHの変化により切断されることが明らかとなった。
製造例5:オリゴDNA−CH2CH2CH2SHの製造
実施例1で用いたオリゴDNA−CH2CH2CH2SHは、次のような機器、操作を用いることにより製造できる。
(a) DNA/RNA合成機:Applied biosystem 394 DNA/RNA
Synthesizer
(b) 合成プロトコール:2−N−イソブチリルデオキシグアノシン、6−N−ベンゾイルデオキシアデノシン、4−N−ベンゾイルデオキシシチジン、およびデオキシチミジンの5′−O−ジメチルトリチル、3′−O−(N,N−ジイソプロピル−β−シアノエチルホオスホロアミダイト)体を利用する標準プロトコール
(c) 合成カラム:3′−thiolmodifierC3−SSCPGカラム(GlenResea rch 社)1マイクロモルカラム
なお、オリゴヌクレオチドのカラムからの切り出しと脱保護は、該CPGカラムから固相単体を取り出し、密閉容器中、28%アンモニア水中55℃で約4時間加熱し、合成オリゴヌクレオチドのカラムからの切り出しとアミノ基の脱保護を行った。こうして得られたオリゴヌクレオチドの精製は、下記のHPLC条件で行い、保持時間約20分付近のピークを単離した。単離された画分を凍結乾燥に供し溶媒を留去した。
【0051】
カラム:nacalai tesque COSMOSIL 5C18−MS(4.6×250mm)
溶 媒:A:O.1MTEAAバッファー B:CH3CN
B1O%→40%/20分、40%→100%/30分[直線的濃度勾配(linear gradient)]
流 速:1.0ml/分
UV−検出:254nm
次に、オリゴヌクレオチドの5′−O−ジメトキシトリチル基の脱保護は、10%酢酸水溶液に精製オリゴヌクレオチドを溶解し、室温で約1時間放置後することにより実施し、次いで上記のHPLC条件で保持時間約14分のピークを単離し精製した。
【0052】
精製後凍結乾燥により溶媒を留去した。
【0053】
最後に、チオール基保護基の脱保護は、60mMジチオスレイトールの100mMリン酸緩衝液(pH8.0)に精製オリゴヌクレオチドを溶解し、室温で約1時間放置することにより実施した。上記のHPLC条件で保持時間約14分のピークを単離し精製した。次いで、精製後凍結乾燥により溶媒を留去することにより目的のオリゴヌクレオチドを得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】オリゴDNAとアセタール−PEO−アクリレートの反応溶液(a:反応前、b:反応後)およびオリゴDNA−PEO−コンジュゲート(c)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定結果である。
【図2】オリゴDNA−PEOコンジュゲートの 1H−NMRによる測定結果である。
【図3】オリゴDNA−PEOコンジュゲートと直鎖状PEIとからなるPICミセルのDLSによる測定結果である。
【図4】pH5.5と7.4におけるPICミセルの時間経過ごとのゲルろ過クロマトグラフィーの結果である。(A)および(B)はそれそれpH5.5およびpH7.4におけるPICミセルの加水分解の経時的変化を示す。
Claims (10)
- 一般式(I)
A−L1−L2−PEG (I)
式中、Aはリボースの3′もしくは5′ヒドロキシル基末端においてリン酸エステル結合を介してL1−L2−PEGに結合した修飾されていてもよいオリゴヌクレオチドの残基を表し、
L1は酸素原子もしくは硫黄原子により1もしくは2以上の箇所で中断されていてもよい総原子数3〜30のアルキレン基を表し、
L2は連結基を表し、そして
PEGは未結合末端に、連結基を場合により介して、水素原子、アルキル基、アラルキル基、官能基もしくはリガンドの残基を担持するポリ(エチレンオキシ)基を表し、かつ、L2が主鎖に生理学的条件下で開裂しうる結合を有する連結基である、
で表されるオリゴヌクレオチドとポリエチレンオキシドのコンジュゲート。 - L1が−CH2CH2CH2−、−CH 2 (CH 3 )CH−、−CH2(CH2)2CH2−、−CH2CH2−O−CH2CH2−、−CH2CH2−S−CH2CH2−および−CH2CH2(OCH2CH2)2−からなる群より選ばれる請求項1記載のコンジュゲート。
- L2の連結基が主鎖にエステル結合(−COO−)またはジスルフィド結合(−SS−)を有する請求項1または2記載のコンジュゲート。
- L2の連結基が主鎖にジスルフィド結合(−SS−)を有する請求項1記載のコンジュゲート。
- −PEGが式(II)
−(CH2CH2O)n−L3−X
式中、L3は単結合またはL2について定義したのと同様な連結基であり、
Xは水素原子もしくは、アルキル基、アラルキル基、ヒドロキシル基、ホルミル基、アセタール化されたホルミル基、アミノ基、保護されたアミノ基、マレイミド基、カルボキシル基および保護されたカルボキシル基からなる群より選ばれる官能基または該官能基を介して結合したリガンドを表し、nが5〜500の整数である請求項1〜4のいずれかに記載のコンジュゲート。 - オリゴヌクレオチドが最大100個までのヌクレオチドからなる請求項1〜5のいずれかに記載のコンジュゲート。
- オリゴヌクレオチドがオリゴDNA、オリゴRNA、RNAアプタマーからなる群より選ばれる請求項1〜5のいずれかに記載のコンジュゲート。
- ポリカチオン性セグメントを含むホモポリマーと請求項1〜7のいずれかに記載のコンジュゲートを含有する複合体。
- ポリカチオン性セグメントがポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリメタクリル酸ジ−C1-3アルキルアミノエチル、オリゴアルギニン、tatおよびKALAからなる群より選ばれる請求項8記載の複合体。
- 水溶液中でポリイオンコンプレックスミセルを形成するための請求項8または9記載の複合体。
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