JP4108245B2 - 頭蓋内出血後の予後改善薬 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はリポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(以下においてL-PGDSということもある)を有効成分として含有することを特徴とする頭蓋内出血後の予後改善薬に関し、詳しくは、L-PGDSを投与することを特徴とする頭蓋内出血後の脳血管攣縮予防法及び予防薬に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
クモ膜下出血の原因のほとんどは脳動脈瘤の破裂によるもので、初回破裂時に約1/3は死に至り、1/3は後遺症を残す重篤な疾患である。一度破裂した動脈瘤は再破裂する危険性が高く、また一旦クモ膜下腔に出てしまった血液が遅発性の脳障害を引き起こすため、治療はこの2点に対して集中的に行われる。
【0003】
第1の再破裂に対しては、主に急性期に開頭して脳動脈瘤にクリップを施す、或いは血管内からカテーテルを介して動脈瘤の内側にコイルをつめてしまうことにより再出血を防止する方法があり、どちらもほぼ確立した技術として普及している。
【0004】
第2の遅発性の脳障害は、脳血管がクモ膜下出血発症後1〜2週間後に収縮してしまうことにより引き起こされ、脳は虚血状態となり脳梗塞に至る。これを脳血管攣縮と呼び、クモ膜下出血の予後を大きく左右する因子である。しかしながら多くの研究努力にもかかわらず、未だにこの脳血管攣縮の機序は完全に解明されず、大きな課題となっている。
【0005】
したがって現在行われている治療は、全てのはじまりであるクモ膜下腔にある血腫をできる限り早く除去しようとするもの(血腫の洗浄や血腫溶解剤の使用)、血管を収縮させないまたは拡張させようとするもの(血管拡張剤の投与)、脳血流を少しでも増加させようとするもの(血圧上昇剤、大量の輸液、輸血、血液粘稠度低下剤などの投与、血管拡張術)、脳血流低下から脳を守ろうとするもの(脳保護物質の投与、脳低温療法)、クモ膜下出血後に脳で誘導される種々の神経障害性物質の阻害剤の投与などを全て組み合わせて集学的に行われている。
【0006】
こうしてクモ膜下出血後の脳血管攣縮の治療成績は最近向上しつつあるが、まだ完全な予防法は見つかっていない。
【0007】
これまでの研究で、脳血管攣縮の発生機序には多くの因子が関与しており、何か一つの特効薬の開発を目標とするよりは、より低侵襲でかつ効果的な治療法・治療薬を開発し、従来の治療技術に付加して、総合的に治療成績を向上させようとするのが現実的である。また、起きてしまった脳血管攣縮を治療するより、脳血管攣縮の予防法の開発の方が重要であろう。
【0008】
プロスタグランジンD合成酵素(PGDS)には、主として脳に局在するリポカリン型と脾臓やマスト細胞に存在する造血器型があり、脳脊髄液中に見出されるタンパク質のPDGSはリポカリン型であると同定されている。リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)は種々の哺乳動物の中枢神経系(CNS)におけるプロスタグランジンD2の生合成を行う酵素である。この酵素は、脳の軟膜(leptomeninges)、クモ膜(arachnoid membrane)で主として産生され、脳脊髄液(cerebrospinal fluid:以下においてCSFということもある)に分泌される。近年、このL-PGDSが、CSF中に多量に存在することが知られていたβトレースと同一であることが明らかにされた(Hoffmann A et al., J. Neurochem., 61:451-456, 1993; Zahn M. et al., Neurosci. Let., 154:93-95, 1993; Watababe, K. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 203:1110-1116, 1994)。βトレースはヒトCSFタンパク質の主要な構成成分であるので、様々な中枢神経系疾患におけるこのタンパク質の臨床上の用途が研究されてきた。しかしながら、この点については相反する結果が出されており、未だに結論が出ていない。例えば、Melegosたちは、CSF中のPGDS濃度は脳血管性疾患などの中枢神経系疾患の診断に有用ではない、と結論した(Melegos et al., Prostaglandins, 54:463-474, 1997)が、一方Tunamiたちは、細菌性髄膜炎患者のCSF中のPGDS濃度が有意に低いことを報告している(Tunami et al., Neurosci. Lett., 242:5-8, 1998)。従って、中枢神経系疾患においてL-PGDSは重要と考えられるが、現在のところ、PGDSあるいはL-PGDSの種々の脳、神経疾患における関与及び役割は解明されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、頭蓋内出血手術、特にクモ膜下出血手術後におこる脳血管攣縮に関して有効な予防薬及び/又は治療薬を提供するものである。
【0010】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するために、脳血管攣縮に代表される頭蓋内出血手術後の予後悪化現象とL-PGDSの関連性について鋭意検討し、クモ膜下出血手術後にL-PGDSを投与することにより脳血管攣縮を予防することができることを発見して本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、L-PGDSを有効成分として含有することを特徴とする頭蓋内出血後の予後改善薬を提供する。
【0012】
本発明の頭蓋内出血後の予後改善薬は、特に頭蓋内出血後の脳血管攣縮の予防薬又は治療薬として有用である。
【0013】
また、本発明の予後改善薬は、頭蓋内出血が脳内出血、クモ膜下出血、脳室内出血である場合、特にクモ膜下出血である場合の脳血管攣縮の予防薬又は治療薬として有用である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、予後改善薬とは頭蓋内出血が起きた後の経過において、あらゆる面での症状を軽減、改善し、あるいは続いて起こる脳血管攣縮などの予後悪化現象を予防又は治療する医薬をいう。
【0015】
本発明において、頭蓋内出血とは脳内出血、クモ膜下出血、脳室内出血を含むがこれに限定されず、頭蓋内に起きるあらゆる出血をいう。
【0016】
本発明者は、クモ膜下出血手術後の脳脊髄液(以下CSF)及び末梢血中のL-PGDS濃度を追跡し、脳血管攣縮との関係を検討した。
【0017】
その結果、クモ膜下出血手術後のCSF中L-PGDS濃度の変化は、術直後から術後3日目にかけて急激に上昇し、回復に伴い低下していくことを見出した(図1)。一方、血清中L-PGDS濃度(図2)はCSF中の濃度よりもはるかに低かった。また、血清中L-PGDS濃度は1日目から17日目まで徐々に上昇した。従って、クモ膜下出血後のCSF中のL-PGDS濃度の上昇は、脳動脈瘤破裂によってクモ膜下腔に血液が漏出したことによるものではないと思われた。次に、クモ膜下出血による脳損傷の指標として、CSF中のニューロン特異的エノラーゼ(NSE)濃度を測定した結果、CSF中L-PGDSの上昇は損傷した脳組織によるものではなく、クモ膜下出血後にL-PGDSの合成が増強したことによるものであることが示唆された(図3)。
【0018】
さらに、クモ膜下出血手術後に脳血管攣縮を起こした患者と起こさなかった患者を比較した。術後脳血管攣縮を生じなかった症例では、CSF中L-PGDS濃度の変化は、術直後から術後3日目にかけて急激に上昇し、回復に伴い低下していくことを見出した。一方、脳血管攣縮を生じた症例においては、脳血管攣縮を生じなかった症例に比べ上昇の度合いが有意に小さいことも見出した。また、その間のCSF中のビリルビン濃度は、L-PGDSと逆相関的に増減していくことも明らかとなった。ビリルビンはヘムタンパク質が分解されて生じるビリベルジンがさらに還元されて生成する有害な疎水性産物である。
【0019】
一方、術後経時的なサンプリングにより得られたCSF中L-PGDSを精製し、その吸収スペクトルを調査した結果、すべてのサンプリングポイントに共通して390nm付近にピークをもつ吸収曲線が得られた。この経時変化も濃度変化同様、3日目辺りをピークに徐々に下降していくことが明らかとなり、L-PGDSは頭蓋内出血により産生が亢進され、血液から派生したビリルビンと結合し、それを排除する役割を担っていることが示唆された。
【0020】
また一方、イヌ頭部からの摘出動脈を用いてビリルビン添加による収縮試験を行った結果、ビリルビンが血管を収縮させる作用を持つことも明らかとなった。また、ビリルビンによる血管収縮は、L-PGDSにより抑制されることも明らかとなった。
【0021】
以上の結果より、本発明者らは特定の機構に拘束されるものではないが、本発明の機構について以下のように推測している:
1)クモ膜下出血後、脳室内に残存した血液から派生するビリルビンはその後脳血管に対して攣縮を起こさせる作用に関与している。
2)一方、L-PGDSは頭蓋内出血をきっかけに産生が亢進され、CSF中に存在する多量のビリルビン、ビリベルジンと結合する。これらと結合したL-PGDSはその後血中に移行し、頭蓋内より排除される。
3)以上のような機作により脳血管攣縮を予防する機構が働いていると考えられる。
【0022】
本発明の予後改善薬に使用するL-PGDSは天然型、又は組換え体が挙げられるが、簡便に且つ多量のL-PGDSを確保する必要性からは組換え体を用いるのが好適である。
天然型
天然型L-PGDSを得るには、例えば脳脊髄液、血液、尿、精漿、羊水などからK. Watanabe et al., Biochemical and Biophysical Research Communications, 203(2):1994に記載の方法により得ることができる。
組換え型
組換え型L-PGDSは、L-PGDS遺伝子(Nagata et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4020-4024, 1991)を組み込んだベクターを宿主細胞にトランスフェクションして、L-PGDSタンパク質を発現させることにより得ることができる。
【0023】
当業界で公知の種々の形質転換方法、宿主細胞を使用することができる。例えば、L-PGDSをコードする遺伝子を適当なベクターに組み込むことにより、原核細胞または真核細胞の宿主細胞を形質転換することができる。
【0024】
さらに、これらのベクターに適当なプロモーターや形質発現にかかわる配列を導入することにより、それぞれの宿主細胞において遺伝子を発現することが可能である。また、目的とする遺伝子に他のポリペプチドをコードする遺伝子を連結して、融合タンパク質として発現させ、精製を容易にしたり、発現量を上げたり、また精製工程において適当な処理を施すことにより、目的タンパク質を切り出すことも可能である。
【0025】
一般に、真核生物の遺伝子はヒトインターフェロン遺伝子で知られているように、多形現象を示すと考えられ、この多形現象によって1個またはそれ以上のアミノ酸が置換される場合もあれば、塩基配列の変化はあってもアミノ酸は全く変わらない場合もある。
【0026】
また、L-PGDSを構成するアミノ酸配列中の1個またはそれ以上のアミノ酸を欠くかまたは付加したポリペプチド、あるいはアミノ酸が1個またはそれ以上のアミノ酸で置換されたポリペプチドでもL-PGDSと同様の頭蓋内出血後の予後改善活性を有することがある。例えば、ヒトインターロイキン2(IL−2)遺伝子のシステインに相当する塩基配列をセリンに相当する塩基配列に変換して得られたポリペプチドがIL−2活性を保持することも既に公知になっている(Wang et al., Science 224:1431, 1984)。これらのL-PGDSタンパク質をコードする遺伝子の改変体を作製する技術は当業者には公知である。
【0027】
従って、L-PGDSの例としては、K. Watanabe et al., Biochemical and Biophysical Research Communications, 203(2):1994に記載のタンパク質のアミノ酸の一部を欠失、置換、付加したものであって、L-PGDSと同様の頭蓋内出血後の予後改善活性を有するタンパク質、あるいはL-PGDSをコードするDNAとストリンジェント条件下(例えば、標準的な方法としては、文献(Molecular Cloning: A Laboratory Mannual, Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されているように、6xSSC, 0.5% SDS, 10mM EDTA, 5xDenhardt's solution, 10mg/ml denatured salmon sperm DNAの溶液中で68℃でハイブリダイゼーションを行う)でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列を有し、かつL-PGDSと同様の頭蓋内出血後の予後改善活性を有するタンパク質が挙げられるが、これに限定されない。
【0028】
また、真核細胞で発現させた場合、その多くは糖鎖が付加され、アミノ酸を1個ないしそれ以上変換することにより糖鎖付加を調節することができるが、この場合でも頭蓋内出血後の予後改善活性を有することがある。それゆえ、本発明ではL-PGDSタンパク質をコードする遺伝子を人工的に改変したものを用いて、得られたポリペプチドが頭蓋内出血後の予後改善活性を有する限り、それらのポリペプチドをコードする遺伝子はすべて本発明に使用できる。
【0029】
発現ベクターは、複製起源、選択マーカー、プロモーター、RNAスプライス部位、ポリアデニル化シグナルなどを含むことができる。
【0030】
発現系に用いる宿主のうち原核生物宿主細胞としては、例えば、大腸菌、枯草菌などが挙げられる。また、真核生物のうち、真核微生物の宿主細胞としては、例えばイースト、粘菌が挙げられる。あるいは、Sf9などの昆虫細胞を宿主細胞として使用してもよい。さらに、動物細胞由来の宿主細胞としては、例えば、COS細胞、CHO細胞などが挙げられる。
【0031】
以上のようにしてL-PGDSタンパク質をコードする遺伝子で形質転換した形質転換体を培養することにより産生されたタンパク質は細胞内または細胞外から分離し、精製することができる。
【0032】
なお、L-PGDSタンパク質の分離、精製には通常のタンパク質で用いられる分離、精製方法を使用することができる。例えば、各種クロマトグラフィー、限外濾過、塩析、透析などを適宜選択、組み合わせて使用することができる。さらには、精製後のタンパク質を濾過滅菌、エンドトキシン除去などにより純化を行い、本発明の予後改善薬に使用することができる。
【0033】
本発明の予後改善薬の投与時期は、なるべく早期から血管攣縮原因物質を取り除くという観点から、発症後なるべく早期に、具体的には手術中、もしくは手術直後から投与を開始するのが好ましい。
【0034】
本発明の頭蓋内出血後の予後改善薬は、凍結乾燥したL-PGDS粉末とこれを溶解するための水溶性希釈液とを別途包装し、使用時に溶解する製剤形態で提供されるか、あるいは溶液製剤の形で提供されるのが好ましい。製剤には、安定化剤,等張化剤、界面活性剤、希釈剤、溶解補助剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、含硫還元剤、酸化防止剤等を含有してもよい。
【0035】
投与方法としては、例えば腰椎穿刺により行うことができるが、これに限定されず、脳槽内投与、静脈内投与などによって行うことも可能である。
【0036】
投与量は、治療すべき疾患の種類、重症度や患者の年齢、体重などを考慮して、具体的には医師により決定される。L-PGDSの場合には、一般的には1ng〜1000mg/日、好ましくは1mg〜200mg/日、より好ましくは3mg〜100mgである。
【0037】
なお、本発明の予後改善剤は単独で使用しても、あるいはその他の予防薬、治療薬、治療方法と組み合わせて使用してもよく、例えば、クモ膜下腔にある血腫をできる限り早く除去しようとするもの(血腫の洗浄や血腫溶解剤の使用)、血管を収縮させないまたは拡張させようとするもの(血管拡張剤の投与)、脳血流を少しでも増加させようとするもの(血圧上昇剤、大量の輸液、輸血、血液粘稠度低下剤などの投与、血管拡張術)、脳血流低下から脳を守ろうとするもの(脳保護物質の投与、脳低温療法)、クモ膜下出血後に脳で誘導される種々の神経障害性物質の阻害剤の投与などと組み合わせて用いることができる。
【0038】
以下本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に何等限定されるものではない。
【0039】
なお、以下の実施例で使用した、L-PGDS濃度の測定法、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)濃度の測定法、及びビリルビンの測定法を以下に記載する。
L-PGDS 濃度の測定法
(1) 標準曲線の作成
L-PGDSと結合可能な抗L-PGDSモノクローナル抗体(クローン:7F5)を50mM炭酸緩衝液(pH 9.6)に4.4μg/mlになるように希釈し、96ウエルマイクロタイタープレートに300μl/ウエルずつ加えて、4℃で一晩放置し固相化した。このプレートをリン酸緩衝生理食塩水(pH 7.4、以下PBS)で3回洗浄した後、0.2%カゼインを含むPBS(pH 7.4、以下ブロッキング液)を300μl/ウエル加えて30℃で90分インキュベートし、ブロッキングを行った。
【0040】
次いで、ブロッキング後のプレートを0.05%Tween20を含むPBS(T-PBS)で3回洗浄した後、100μlの標準L-PGDS溶液(脳脊髄液より純化したL-PGDSをブロッキング液で段階希釈することにより調製)を各ウエルに加え、30℃で90分間インキュベートした。反応後、T-PBSで3回洗浄し、ブロッキング液で0.5μg/mlになるように希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ標識化抗PGDSモノクローナル抗体(クローン:1B7)100μlを各ウエルに加え、30℃で90分間インキュベートした。T-PBSで3回洗浄した後、発色液(ABTS solution:ベーリンガーマンハイム社製)100μlを各ウエルに加え、30℃で30分間インキュベートした後、停止液( 1.5%シュウ酸)を100μlずつウエルに加え、プレートミキサーで撹拌して反応を停止させた。市販のプレートリーダー(型番 Sk601、生化学工業社製)により405nmと490nmにおける吸光度の差(A405nm-A490nm)を測定し、標準曲線を作成した。
【0041】
上記サンドイッチELISA法に用いたモノクローナル抗体(クローン:1B7、7F5)は、マウス腹腔内にプリスタン1.0mlを注射し、その後2週間目にそれぞれの抗体産生細胞株を1×108個マウスの腹腔内に移植し、2週間後に腹水を採取し、得られた腹水をプロテインAアフィニティーカラムクロマトグラフィー操作にかけることにより得た(3〜10mg/ml)。
【0042】
尚、上記モノクローナル抗体を産生する細胞株(ハイブリドーマ)はそれぞれ上記モノクローナル抗体名に一致し、それぞれの細胞株は、工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、1B7についてはFERM BP-5709(原寄託日平成7年9月21日)、7F5についてはFERM BP-5711(原寄託日平成8年6月6日)として寄託されている。
(2)試料中のL-PGDS濃度の測定
CSF及び血液はブロッキング液で適宜希釈して、上記のサンドイッチELISA法に従ってL-PGDS濃度の測定を行った。
ニューロン特異的エノラーゼ( NSE )濃度
NSE濃度の測定は、「1ステップEIA法に基づく血中NSE測定系の基礎的検討とその臨床的評価」(土田貴子ら、臨床検査、32(2):329-333, 1988)に従って行った。
ビリルビンの測定法
ビリルビンは、安息香酸−カフェインを用い、ジアゾ反応後にフェーリング液を加えてアルカリアゾビリルビンの青色を比色定量するアルカリアゾビリルビン法(「今日の臨床検査」、南江堂)により測定した。
【0043】
【実施例】
実施例1:クモ膜下出血術後のCSF中L-PGDSの変化1
対象はクモ膜下出血発症後24時間以内に血管内手術によるコイルを用いた塞栓術が行われた破裂脳動脈瘤患者6例である。全例にルンバールドレナージを施行し、術後17日間にわたり採取したCSFと末梢血について、L-PGDSの濃度を上述の2抗体サンドイッチELISA法により測定した。
【0044】
なお、1例の患者で術後の脳血管攣縮が観察され、10日目に重症の脳虚血のために脳死に至った。従って、11日目以後のこの患者の試料はない。その他の患者は脳血管攣縮を起こさなかった。
【0045】
さらに、CSF中のニューロン特異的エノラーゼ(NSE)濃度をNSE測定キット(Eiken, Tokyo, Japan)を用いて測定した。
【0046】
CSF中のL-PGDS濃度を図1に示す。1日目に11.25±1.07(μg/ml、mean±SE)に比べ、3日目と5日目にはそれぞれ20.85±2.71、25.24±3.76と有意に上昇した。その後徐々に減少し、17日目には1日目とほぼ同じレベルとなった。一方、血清中L-PGDS濃度(図2)はCSF中の濃度よりもはるかに低かった。また、血清中L-PGDS濃度は1日目から17日目まで徐々に上昇した。
【0047】
これらの結果は、クモ膜下出血後のCSF中のL-PGDS濃度の上昇は、脳動脈瘤破裂によってクモ膜下腔に血液が漏出したことによるものではないことを示唆する。
【0048】
次に、クモ膜下出血による脳損傷の指標として、CSF中のNSE濃度を測定した結果を図3に示す。NSE濃度は1日目が最大であり、最初のクモ膜下出血による影響が最も激しい脳損傷をもたらすことが示唆された。NSE濃度はその後徐々に減少した。一方、CSF中のL-PGDS濃度は5日目まで上昇した(図1)。
【0049】
これらの知見から、CSF中L-PGDSの上昇は脳組織の損傷に由来するものではなく、クモ膜下出血後にL-PGDSの合成が増強したことによるものであることが示唆された。
【0050】
実施例2:クモ膜下出血術後のCSF中L-PGDSの変化2
対象はクモ膜下出血発症後24時間以内に血管内手術によるGDC(Guglielm's detachable coil)を用いた塞栓術が行われた破裂脳動脈瘤患者5例である。全例にルンバールドレナージを施行し、術後17日間にわたり採取したCSFと末梢血について、L-PGDSの濃度を上述の2抗体サンドイッチELISA法により測定した。
【0051】
尚、いずれの症例も、術後の脳血管攣縮は観察されなかった。
また、5例中2例について、CSF中の総ビリルビン量(T-Bill)(直接ジアゾ試薬と反応して呈色する分画である直接ビリルビンと、ジアゾ試薬と直接反応せずにアルコールなどの促進剤添加により初めて呈色する分画である間接ビリルビンとの和をいう)をアルカリアゾビリルビン法で測定した。
【0052】
術後の経日的変化を図4に示す。CSF中L-PGDS濃度は1日目の11.51±0.85(μg/ml、mean±SE)に比べ、3日目と5日目にはそれぞれ22.67±1.95、25.12±4.56と有意に上昇した。その後徐々に減少し、17日目には1日目とほぼ同じレベルとなった。一方、血清中L-PGDS濃度は1日目から17日目まで徐々に上昇した。
【0053】
このように、CSF中L-PGDSはクモ膜下出血直後より急激に上昇し、症状の改善とともに下降する傾向が認められ、クモ膜下出血後の予後に関与している可能性が示唆された。
【0054】
また、CSF中総ビリルビンを測定した2例について、個々にCSF中L-PGDSと総ビリルビンをプロットした図を示す。(図5)
このように、いずれもCSF中L-PGDSの上昇に伴い、出血後のヘモグロビンの分解によって生じたCSF中ビリルビンの減少が観察された。このことから、クモ膜下出血後の脳血管攣縮の一要因とされているビリルビンに対して、L-PGDSが能動的に働いている可能性が示唆された。
【0055】
実施例3:クモ膜下出血術後のCSF中L-PGDSの変化3
対象は発症後24時間以内に開頭、clipping 術法が行われた破裂脳動脈瘤患者5例である。全例にルンバールドレナージを施行し、術後17日間にわたり採取したCSFと末梢血について、L-PGDSの濃度を上述の2抗体サンドイッチELISA法により測定した。
【0056】
尚、いずれの症例も、術後に脳血管攣縮が観察された。
術後の経日的変化は、CSF中L-PGDS濃度、血清中L-PGDS濃度ともに実施例2と同様の経過を辿った。また、脳血管攣縮のない場合(実施例2)と、脳血管攣縮のある場合(本実施例)のCSF中のL-PGDS濃度を比較して図6に示す。CSF中L-PGDS濃度に関しては、脳血管攣縮のない場合(実施例2)と比較すると、3日目までの上昇が有意に低く、また、それ以降の濃度も有意に低いことが明らかとなった。
【0057】
以上のことから、CSF中L-PGDSはクモ膜下出血予後におこる脳血管攣縮に関して予防的に働いていることが示唆された。
【0058】
実施例4:クモ膜下出血術後のCSF中L-PGDSの変化4
発症後24時間以内に血管内手術によるGDCを用いた塞栓術が行われた破裂脳動脈瘤患者1例に関して術直後よりルンバールドレナージを施行し16日間連続的にCSFを採取した。採取したCSFより抗体カラムを用いてL-PGDSの精製を行った。なお、抗体カラムは、ファルマシア社製HiTrapアフィニティーカラムを用いて以下のようにして作製した。まず、カラム内のゲルを氷冷した1mM HCl 10mlで3回洗浄する。モノクローナル抗体(クローン:1B7)はPBSに溶けているためファルマシア社製カラム、PD-10を用いてカップリングバッファー(0.2M NaHCO3, 0.5M NaCl, pH8.3)に置換する。カップリングバッファーに置換した抗体溶液9mlをカラムに添加し、室温で8時間インキュベートする。バッファーA(0.5M エタノールアミン、0.5M NaCl, pH8.3)10mlで3回洗浄、続いてバッファーB(0.1M 酢酸、0.5M NaCl, pH4)10mlで洗浄する。再びバッファーA10mlで3回洗浄した後、1時間室温でインキュベートする。バッファーB10mlで3回、バッファーA10mlで3回、バッファーB10mlで3回洗浄した後、最後にPBS 10mlで2回洗浄する。
【0059】
このようにして精製されたL-PGDSの吸収スペクトルを調べた結果、すべてのサンプリングポイントにおいて、390nm付近にピークを持つ吸収曲線が得られた(図7)。また、これら390nm付近の吸収の経時変化を調べると、術後から3日目にピークを持ち、その後16日目にかけて徐々に低下していくことが観察された(図8)。
【0060】
また、L-PGDS蛋白当たりの390nm付近の吸収(各精製標品の390nm付近における吸光度をL-PGDSタンパク量で割って算出した)は7日目をピークとして16日目まで徐々に低下していくことが観察された(図9)。
【0061】
この結果より、L-PGDSはクモ膜下出血後、390nm付近に吸収を持つ物質と結合し、且つ、経時的に結合量が増加していることが示唆された。
【0062】
実施例5:摘出動脈へのビリルビン添加試験及びL-PGDSによる抑制試験
イヌ頭部より摘出した脳底動脈をKrebs液中に95%O2、5%CO2、37℃で曝気した。セルフィンにより標本の一端を固定し、他端を張力トランスデューサーに連結した。加えた静止張力は1.0gで、30mM KClによる収縮を100%とし、ビリルビンの濃度を変えて添加していった。結果を図10に示す。このようにビリルビン濃度が上がるにつれ、血管の収縮が強くなっていくのが観察された。
【0063】
この結果は、クモ膜下出血後の脳血管攣縮にビリルビンが関与していることを示唆している。
【0064】
また、ブタ後交通動脈を用いて、ビリルビンにより誘導される血管収縮に対するL-PGDSの効果を検討した。前述の試験と同様、摘出血管に対し30nMビリルビンを添加し、その張力変化を測定した。一方、L-PGDS 3mg存在下で同濃度のビリルビンを添加し、ビリルビン誘導性筋収縮におけるL-PGDSの効果を調べた。結果を図11に示す。このように、ビリルビンにより誘導される血管収縮は、L-PGDSの添加により顕著に抑制されることが明らかとなった。
【0065】
この結果は、L-PGDSが血管収縮に対して抑制的に働いていることを示唆している。
【0066】
【発明の効果】
本発明のL-PGDSを有効成分として含有することを特徴とする頭蓋内出血後の予後改善薬は、頭蓋内出血手術、特にクモ膜下出血手術後におこる脳血管攣縮に関して有効な予防薬及び/又は治療薬として使用することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】クモ膜下出血発症後24時間以内に血管内手術によるコイルを用いた塞栓術が行われた破裂脳動脈瘤患者のCSF中のL-PGDS濃度を示すグラフである。3日目及び5日目のL-PGDS濃度は1日目よりも有意に高かった(*P=0.025)。7,9及び11日目のL-PGDS濃度は5日目よりも有意に低かった(#P<0.05)が、1日目よりは高かった。棒は平均±SEを表す。
【図2】クモ膜下出血発症後24時間以内に血管内手術によるコイルを用いた塞栓術が行われた破裂脳動脈瘤患者の血清中のL-PGDS濃度を示すグラフである。
【図3】クモ膜下出血発症後24時間以内に血管内手術によるコイルを用いた塞栓術が行われた破裂脳動脈瘤患者のCSF中のNSE濃度を示すグラフである。
【図4】クモ膜下出血発症後24時間以内に血管内手術によるGDCを用いた塞栓術が行われた破裂脳動脈瘤患者のCSFと血清中のL-PGDS濃度を示すグラフである。
【図5】 CSF中総ビリルビンを測定した2例について、個々にCSF中L-PGDSと総ビリルビンをプロットしたグラフである。
【図6】クモ膜下出血後に脳血管攣縮を起こさなかった場合と、脳血管攣縮を起こした場合のCSF中のL-PGDS濃度を比較して示したグラフである。
【図7】クモ膜下出血術後のCSF中から採取し、抗体カラムを用いて精製したPGDSの吸収スペクトルを示す図である。
【図8】クモ膜下出血後のL-PGDSの390nm付近における吸収の変化を示すグラフである。
【図9】精製したL-PGDSの390nm付近における吸収の経時変化を示すグラフである。
【図10】イヌ脳底動脈収縮のビリルビン濃度依存性を示すグラフである。
【図11】ビリルビン誘導性筋収縮におけるL-PGDSの効果を調べた結果を示すグラフである。
Claims (3)
- リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)を有効成分として含有することを特徴とする頭蓋内出血後の脳血管攣縮の予防薬又は治療薬。
- L-PGDSが組換え体である請求項1記載の予防薬又は治療薬。
- 頭蓋内出血が脳内出血、クモ膜下出血又は脳室内出血である請求項1または2に記載の予防薬又は治療薬。
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