JP4105828B2 - 船用プロペラ駆動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、主として漁船に適した船用プロペラ駆動装置に関し、特に、運転状況に応じて任意の減速手段に駆動状態を切り換えることができる船用プロペラ駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の船用プロペラ駆動装置は、特開平6−201029号のように固定減速比の減速ギヤ機構のみを内蔵した減速逆転機や、船体側方に補助プロペラを有するサイドスラスターのように、静油圧式トランスミッション(Hydro static transmission;以下「HST」という)のみを備えた減速逆転機を搭載しているものが殆どであるが、特開平5−77788号に記載されているように、減速ギヤ機構と静油圧式トランスミッションを組み合わせ、船舶の運転条件に応じて減速手段を切り換える減速逆転機を搭載したものも開発されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記特開平6−201029号公報に記載された直結駆動のみのプロペラ駆動装置は、漁労用トローリング機構を装備しており、減圧弁を利用してクラッチ摩擦板をスリップさせることにより、負荷に応じて一定の低速トローリング運転ができるようになっている。摩擦板をスリップさせる領域ではプロペラ回転を任意に設定しにくく、歯打音等捩り振動に伴う軸系としての不具合が生じ易い。
【0004】
また、エンジンの前部駆動が必要となる場合、たとえば、集魚灯を多数装備した漁り火漁船では、エンジンのクランク軸前部に連結した発電機により集魚灯を灯しながら運転することになるが、機関回転数は発電機の設定回転数に合わせておかなければならないため、船を一定位置に静止させたりあるいは一定低速運転する操作が一層複雑になり、各レバーの相対的な操作の順序を間違えたり、あるいは操作間隔がずれたりするため、操作に熟練性を要する。
【0005】
一方、HST駆動のみでは、直結駆動に比べて伝達効率が悪い。
【0006】
前記特開平5−77785号公報に記載されたプロペラ駆動装置は、前述のように運転条件にあわせて、機械式動力伝達経路と油圧式動力伝達経路とを切り換えて使用するようになっているが、単に運転条件に合わせて駆動状態の切り換えることを記載しているだけである。
【0007】
【発明の目的】
本願発明の目的は、減速手段の使い分けにより、運転条件に適した効率の良い運転が行なえるようにすると共に、複数の運転モードを設定することにより、各運転条件における操船を容易化することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1記載の発明は、減速ギヤ機構と静油圧式トランスミッション(HST)を有し、上記減速ギヤ機構のみを介してプロペラ軸に動力を伝達する直結駆動状態と静油圧式トランスミッションを介してプロペラ軸に動力を伝達するHST駆動状態とに切換自在な減速逆転機と、機関回転数を任意に設定できる機関回転数設定装置と、上記HST駆動状態と直結駆動状態とを予め設定されている切換機関回転数により自動的に切り換えて運転を行う航走モードと、HST駆動状態のみで運転を行うと共に前記機関回転数設定装置により機関回転数を任意設定する漁労モードとに、運転モードを切り換えるモード選定スイッチを備えていることを特徴とする船用プロペラ駆動装置である。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の船用プロペラ駆動装置において、航走モードでのHST駆動前進領域に対し、航走モードでのHST駆動後進領域は、機関回転数大側に拡大されていることを特徴とする船用プロペラ駆動装置である。
【0010】
【発明の実施の形態】
図4は本願発明を適用した船用プロペラ駆動装置の油圧回路図であり、エンジン1の出力軸2とプロペラ軸13間に減速逆転機15を配置している。該減速逆転機15は、減速逆転機入力軸6と減速逆転機出力軸7を内蔵すると共に、減速小ギヤ11とこれに噛み合う減速大ギヤ12からなる固定変速比の減速ギア機構を内蔵しており、かかる減速ギヤ機構に加え、静油圧式トランスミッション(再説明になるが、Hydro static transmission;以下「HST」という)9を切換自在に組み付けてあり、直結用油圧嵌脱クラッチ10と、HST用油圧嵌脱クラッチ33,34の嵌脱により、上記減速ギヤ機構のみを介して動力が伝達される直結駆動状態と、HST9を経由して動力が伝達されるHST駆動状態とに切り換えることができるようになっている。
【0011】
減速逆転機入力軸6は、エンジン出力軸2のフライホイール3にゴムダンパー継手5を介して連結しており、減速逆転機入力軸6には前記直結用油圧嵌脱クラッチ10のアウターケース10aが一体に固着されると共にインナーハブ10bが回転可能に嵌合し、該インナーハブ10bに前記減速小ギヤ11が一体に形成され、直結用油圧嵌脱クラッチ10を接続することにより減速逆転機入力軸6から減速小ギヤ11へと動力が伝達されるようになっている。
【0012】
HST9は、周知のようにアキシャルプランジャ型の入力側の油圧ポンプ20と、同様にアキシャルプランジャ型の出力側の油圧モータ21とを、油圧閉回路(油路24,25)によって流体的に接続したものであり、たとえば油圧ポンプ20から吐出される作動油の流れを変更することにより、前進(油圧モータ21の正転)、後進(油圧モータ21の逆転)及び中立状態に切り換えると共に、油圧ポンプ20(又は/及び油圧モータ21)の斜板角を変更することにより変速比を変更して、モータ回転数すなわちプロペラ回転数を調整し、設定することができようになっており、上記前後進及び中立の切換え並びにモータ回転数の調整設定を、HSTレバー87(図1)の回動操作により行うようになっている。油圧閉回路の各油路24,25は、それぞれチェック弁26,27を介してチャージング用分岐油路28に接続しており、該分岐通路28から油圧閉回路内へと作動油を補充する。
【0013】
油圧ポンプ20のポンプ軸30は、HSTポンプ用油圧嵌脱クラッチ33を介して減速逆転機入力軸6に断続切換可能に連結している。油圧モータ21のモータ軸31には、継手36を介してクラッチ軸37が連結されており、該クラッチ軸37には、前記減速大ギヤ12に常時噛み合う第2減速小ギヤ35が回転可能に嵌合すると共に、HSTモータ用油圧嵌脱クラッチ34が配置されている。該HSTモータ用油圧嵌脱クラッチ34は、アウターケース34aがクラッチ軸37に一体に固着され、インナーハブ34bが前記第2減速小ギヤ35と一体に形成されてクラッチ軸37に回転可能に嵌合しており、第2減速小ギヤ35とクラッチ軸37の間を断続切換自在に連結する。
【0014】
直結用及びHST用の各油圧嵌脱クラッチ10,33,34は湿式多板型の摩擦クラッチであり、直結用及びHST用の各油圧嵌脱クラッチ10,33,34内の作動油室はクラッチ作動油路38,39,40を介してそれぞれ電磁切換弁42,43,44の一方のポートに接続し、各電磁切換弁42,43,44の作動部はコントローラ69に接続している。
【0015】
各電磁切換弁42,43,44の他方のポートは、共通の作動油路45に集合すると共に、切換弁46及び作動油路47を介して作動油ポンプ51の吐出口に接続しており、該作動油ポンプ51の吸込み側油路56は油こし器55を介して油溜(オイルタンク)52に接続している。作動油ポンプ51のポンプ駆動軸57には、ドリブンギヤ60が固着された伝動軸59が連結しており、前記ドリブンギヤ60は直結用油圧嵌脱クラッチ10のアウターケース10aに固着されたドライブギヤ61に常時噛み合っており、エンジン運転中は、常時作動油ポンプ51が作動するようになっている。
【0016】
作動油ポンプ51は、前述のように各油圧嵌脱クラッチ10,33,34に対してクラッチ作動油を供給する本来の機能に加え、HST9のチャージングポンプとしての機能も兼用するように構成されており、作動油ポンプ51の吐出側作動油路47の途中(分岐点S)からチャージング油路54aが分岐し、ラインフィルター62及びチャージング油路54bを介してHST9のチャージング用分岐油路28に接続している。また、HST9の油圧閉回路内の漏油はドレン油路101を介して上記作動油ポンプ51の油溜52に戻るようになっている。すなわち、各油圧嵌脱クラッチ10,33,34の断続切換作動と、HST9への作動油のチャージングとを、共通の油溜52、共通の作動油、一部共通の油路47及び共通の作動油ポンプ51を利用して行うようになっている。
【0017】
作動油路47の分岐点Sからは潤滑油路63も分岐しており、該潤滑油路63には、作動油調圧弁65、潤滑油クーラ66及び潤滑油調圧弁(クラッチ用)67が設けられ、各油圧嵌脱クラッチ10,33,34の潤滑個所へ上記共通の作動油を、潤滑油として供給するようになっている。
【0018】
図4は直結駆動状態を示しており、減速ギヤ11、12のみを介して減速逆転機入力軸6と減速逆転機出力軸7とを連結した状態である。すなわち、HST用両電磁切換弁43,44をオフとし、直結用電磁切換弁42をオンとすることにより、HSTポンプ用及びHSTモータ用両油圧嵌脱クラッチ33,34を切り、直結用油圧嵌脱クラッチ10を接続しており、これにより、エンジン出力軸2からの動力は、フライホイール3、継手5、減速逆転機入力軸6、減速小ギヤ11、減速大ギヤ12及び減速逆転機出力軸7を介してプロペラ軸13へと伝達され、プロペラ14を回転する。この場合、上記減速小ギヤ11と減速大ギヤ12の間で、固定減速比により減速される。
【0019】
図5はHST駆動状態を示しており、HST用両電磁切換弁43,44をオンとし、直結用電磁切換弁42をオフとすることにより、HSTポンプ用及びHSTモータ用両油圧嵌脱クラッチ33,34を接続し、直結用油圧嵌脱クラッチ10を切っており、これにより、エンジン出力軸2の動力は、フライホイール3、継手5、減速逆転機入力軸6、HSTポンプ用油圧嵌脱クラッチ33及びポンプ軸30を介してHST9に伝達され、HST9内で所望の設定変速比に減速され、モータ軸31、クラッチ軸37、HSTモータ用油圧嵌脱クラッチ34、第2減速小ギヤ35、減速大ギヤ12及び減速逆転機出力軸7を介してプロペラ軸13へと伝達され、プロペラ14を回転する。
【0020】
図1は使用制御機器の構成を示す配線略図であり、前記コントローラ69に対し、入力用の操作機器としては、前後進及び中立の切換え、駆動状態の切換え及び設定プロペラ回転数の各信号を入力するリモコンヘッド71と、航走モード及び漁労モードの各運転モードを選択して入力するモード選定スイッチ72と、漁労モード時の設定機関回転数を入力する機関回転数設定装置として機関回転数設定ダイヤル73とを備えている。検出機構としては、機関回転数センサー75とプロペラ回転数センサー76とを備え、それぞれ検出回転数信号を入力するようになっている。上記リモコンヘッド71と機関回転数設定ダイヤル73はそれぞれ位置検出装置(ポテンショメータ)80,81を介してコントローラ69に接続しており、モード選定スイッチ72には、航走モードボタン78と漁労モードボタン79を設けてある。
【0021】
コントローラ69の出力側には、前述のようにHSTポンプ用油圧嵌脱クラッチ33の電磁切換弁43と、HSTモータ用油圧嵌脱クラッチ34の電磁切換弁44と、直結用油圧嵌脱クラッチ10の電磁切換弁42が接続すると共に、ガバナ装置82のレギュレータレバー84と、HST9のHSTレバー87が接続している。
【0022】
リモコンヘッド71には単一のコントロールレバー70が回動操作可能に備えられており、コントロールレバー70の回動操作位置を位置検出装置80で検出し、コントローラ69に入力することにより、予めコントローラ69に記憶された各運転モードの制御パターンに従い、各電磁切換弁42,43,44と、ガバナ装置82と、HSTレバー87の総ての駆動部又は選択された一部の駆動部にそれぞれ所定の制御信号を送るようになっている。すなわち、単一のコントロールレバー70の回動操作により、各運転モードにおいて、各油圧嵌脱クラッチ10,33,34の嵌脱と、レギュレータレバー84による機関回転数の調節設定と、HSTレバー87による前後進及び中立位置の切換え並びにプロペラ回転数(モータ回転数)設定に関する総ての操作、あるいは選択された一部の操作を行えるようになっている。
【0023】
図2は航走モードにおけるコントロールレバー70の制御パターンを示しており、各油圧嵌脱クラッチ10,33,34の電磁切換弁42,43,44の切換え操作、HSTレバー87の回動操作及びガバナ装置82のレギュレータレバー84の操作は、すべてコントロールレバー70の回動操作のみが有効となり、一方、機関回転数設定ダイヤル73による機関回転数の設定操作は無効となっている。
【0024】
航走モードにおけるコントロールレバー70の制御パターンを具体的に説明すると、前進側において、中立レバー位置P0から前進側切換位置P1までの前進低速領域W1はHST駆動状態となるように設定され、前進側切換位置P1から前進全速レバー位置P2までの前進高速領域W2は直結駆動状態となるように設定されている。後進側は中立レバー位置P0から後進全速レバー位置P3までの全後進領域W3が、HST駆動状態となるように設定されている。上記各速度領域W1、W2、W3では、コントロールレバー70の回動量に応じて、機関回転数及び/又はHST9の減速比を変更することにより、無段階でプロペラ回転数を設定できるようになっている。
【0025】
図6は、航走モードにおける機関回転数Nとプロペラ回転数Npの関係を示しており、領域W1は前述のようにHST駆動状態の前進低速領域、領域W2は直結駆動状態の前進高速領域、W3はHST駆動状態の後進領域、N0は機関のアイドリング回転数である。HST駆動前進低速領域W1と、直結駆動前進高速領域W2とは、前記図2の切換位置P1に対応する切換機関回転数N1(プロペラ回転数Np1)で自動的に切り換わるようになっている。すなわち機関回転数が増加側に上記切換機関回転数N1を経過する場合は、HST駆動から直結駆動へ、反対に機関回転数が減少側に上記切換機関回転数N1を経過する場合には、直結駆動からHST駆動へと切り換るように設定されている。
【0026】
また、HST駆動前進低速領域W1の最大機関回転数値、すなわち上記切換機関回転数N1に対し、HST駆動後進領域W3での最大機関回転数N3(プロペラ回転数Np3)が大きく設定されている。すなわち、航走モードでは、前進時よりも後進時の方が、高い機関回転数までHST駆動が行なえるように設定されている。
【0027】
図3は漁労モードにおける制御パターンを示しており、各油圧嵌脱クラッチ10,33,34の電磁切換弁42,43,44の切換え操作及びHSTレバー87の回動操作は、コントロールレバー70により有効となるが、機関回転数については機関回転数設定ダイヤル73により所望の値に固定(設定)される。
【0028】
漁労モードにおけるコントロールレバー70の制御パターンを具体的に説明すると、前進側において、中立レバー位置P0から漁労前進全速レバー位置P4までの漁労前進領域W4は、すべてHST駆動状態となるように設定されており、後進側も中立レバー位置P0から後進全速レバー位置P5までの漁労後進領域W5はすべてHST駆動状態となるように設定されている。上記各HST駆動前後進領域W4、W5内では、コントロールレバー70の回動量に応じて、HST9の減速比を変更することにより、無段階でプロペラ回転数を設定できるようになっている。
【0029】
図7は、漁労モードにおける機関回転数Nとプロペラ回転数Npの関係を示しており、W4は前述のようにHST駆動漁労前進領域、W5はHST駆動漁労後進領域である。プロペラ回転数Npは、前進側も後進側もその最大回転数が一定の回転数Np4,Np5に制限されており、したがって、ある機関回転数N6以上では、機関回転数の増加に関らず、プロペラ回転数は常に一定値Np4又はNp5に保たれる。すなわち、上記機関回転数N6以上では、前記機関回転数設定ダイヤル73により固定した機関回転数に関らず、プロペラ回転数を一定値Np4又はNp5に保つことができるのである。
【0030】
【作用】
1.航走モード選定時の場合
図1において、モード選定スイッチ72の航走モードボタン78を選定する。これにより、ガバナ装置82、各電磁切換弁42,43,44及びHSTレバー87に対してコントロールレバー70の操作のみが有効となり、図2に示す制御パターンにしたがって、以下のように駆動状態の切換え、前後進及び中立の切換え並びにプロペラ回転数の設定を行うことができる。
【0031】
[前進低速領域での運転]
図2の航走モードにおいて、コントロールレバー70を前進低速領域W1内にセットする。そうすると、直結用油圧嵌脱クラッチ10が切れると共にHST用油圧嵌脱クラッチ33,34が接続し、それと同時にHSTレバー87は、作動モータ等のアクチュエータによりコントロールレバー70の回動量に対応した量だけ前進側に回動し、所望の変速比に設定される。これにより、HST駆動状態で、かつ、所望のプロペラ回転数での前進低速運転となる。
【0032】
運転中、コントロールレバー70の位置は位置検出装置80で判別され、該位置に対応する設定プロペラ回転数と、プロペラ回転数センサー76(図1)により検出した実際のプロペラ回転数を比較し、差がある場合には、HSTレバー87及び/又はガバナ装置82のレギュレータレバー84が自動的に回動して、HST9の減速比及び/又は機関回転数を調節し、実際のプロペラ回転数を設定プロペラ回転数に近付ける。
【0033】
[前進高速領域での転]
図2の航走モードにおいて、コントロールレバー70を前進高速領域W2内にセットする。立ち上がり時は前進低速領域W1での運転と同様にHST駆動状態であるが、機関回転数が上昇し、図6の切換機関回転数N1を越えると、直結駆動状態に自動的に切り換わり、ガバナ装置82のレギュレータレバー84を作動して、コントロールレバー70のセット位置に対応する機関回転数まで機関回転数を上げ、プロペラ回転数を上げる。
【0034】
運転中、コントロールレバー70の位置は位置検出装置80で判別され、該位置に対応する設定プロペラ回転数と、プロペラ回転数センサー76により検出した実際のプロペラ回転を比較し、差がある場合には、ガバナ装置82のレギュレータレバー84が自動的に作動し、機関回転数を調節して、プロペラ回転数を設定プロペラ回転数に近付ける。
【0035】
[後進での運転]
図2の航走モードにおいて、コントロールレバー70を後進領域W3内にセットする。立ち上がりからHST駆動状態となり、HSTレバー87は、コントロールレバー70の回動量に対応した量だけ後進側に回動し、所望の変速比に設定される。これにより、HST駆動状態で、かつ、所望のプロペラ回転数での後進運転となる。
【0036】
運転中、コントロールレバー70の位置は位置検出装置80で判別され、該位置に対応する設定プロペラ回転数と、プロペラ回転数センサー76により検出した実際のプロペラ回転を比較し、差がある場合には、HSTレバー87及び/又はガバナ装置82のレギュレータレバー84が自動的に回動してHST9の減速比及び/又は機関回転数を調節し、実際のプロペラ回転数を設定プロペラ回転数に近付ける。
【0037】
2.漁労モード選択時の場合
図1において、モード選定スイッチ72の漁労モードボタン79を選定する。この場合、コントロールレバー70による操作は、各嵌油圧嵌脱クラッチ10,33,34の電磁切換弁42,43,44及びHSTレバー87に対しては有効であるが、ガバナ装置82のレギュレータレバー84に対しては無効状態となり、機関回転数については、機関回転数設定ダイヤル73により、発電機等の前部駆動装置に対応した値に設定(固定)する。そうして、図3に示すレバー操作範囲での回動操作により、以下のように前後進の切換え及びプロペラ回転数の設定を行うことができる。
【0038】
[漁労前進運転]
図3の漁労モードにおいて、コントロールレバー70を漁労前進領域W4内にセットする。そうすると、直結用油圧嵌脱クラッチ10が切れると共にHST用油圧嵌脱クラッチ33,34が接続し、それと同時にHSTレバー87は、作動モータ等のアクチュエータによりコントロールレバーの回動量に対応した量だけ前進側に回動し、所望の変速比に設定される。これにより、HST駆動状態で、かつ、所望のプロペラ回転数での前進漁労運転となる。
【0039】
運転中、コントロールレバー70の位置は位置検出装置80で判別され、該位置に対応する設定プロペラ回転数と、プロペラ回転数センサー76により検出した実際のプロペラ回転を比較し、差がある場合には、HSTレバー87が自動的に回動してHST9の減速比を調節し、実際のプロペラ回転数を設定プロペラ回転数に近付ける。なお、機関回転数は前述のように機関回転数設定ダイヤル73により発電機等前部駆動装置に対応させて固定しているので、プロペラ回転数の変化によって前部駆動装置が影響を受けることは殆どない。
【0040】
[漁労後進運転]
コントロールレバー70を漁労後進領域W5内にセットする。そうすると、直結用油圧嵌脱クラッチ10が切れると共にHST用油圧嵌脱クラッチ33,34が接続し、それと同時にHSTレバー87は、作動モータ等のアクチュエータによりコントロールレバー70の回動量に対応した量だけ後進側に回動し、所望の変速比に設定される。これにより、HST駆動状態で、かつ、所望のプロペラ回転速度での漁労後進運転となる。
【0041】
運転中、コントロールレバー70の位置は位置検出装置80で判別され、該位置に対応する設定プロペラ回転数と、プロペラ回転数センサー76により検出した実際のプロペラ回転を比較し、差がある場合には、HSTレバー87が自動的に回動してHST9の減速比を調節し、実際のプロペラ回転数を設定プロペラ回転数に近付ける。
【0042】
【その他の実施の形態】
(1)HSTポンプ用及びHSTモータ用両油圧嵌脱クラッチ33,34を共通のHST用電磁切換弁42又は43で切換できるように構成することもできる。
【0043】
(2)運転モードとして、図2に示す航走モードでは、後進をHST駆動のみに設定しているが、直結駆動の後進高速領域を有する制御パターンとすることもできる。
【0044】
(3)図1ではモード選定スイッチ72を押しボタン型であらわしているが、回動レバー型等を採用することも可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本願発明は、固定減速比の減速ギヤ機構による直結駆動と、無段変速が可能なHST駆動とを切換自在に組み合わせることにより、運転条件に応じて減速手段を変更できるようにしているのに加え、運転モードとして、HST駆動と直結駆動とを機関回転数により切り換えて運転する航走モードと、HST駆動のみで運転を行うと共に機関回転数を任意設定できる漁労モードとを設定し、目的に応じてモード選択できるようにしているので、次のような利点がある。
【0046】
(1)漁労作業に適した漁労モードと、通常の高速運転に適した航走モードとを目的に応じて選択することができるので、モード選択することによって、各運転条件においてそれぞれ操船が容易化できる。
【0047】
(2)漁労モードにおいては、総てHST駆動とし、かつ、機関回転数は機関回転数設定ダイヤル(機関回転数設定装置)により、任意に設定可能としているので、たとえばエンジンの前部駆動を利用して発電機等を回転させながらトローリング操業を行なう場合、機関回転数は発電機の定格回転数に合わせて設定し、HSTによりプロペラ回転を制御するので、発電機作動並びに船舶のトローリング操業のいずれをも、安定して行なうことができる。また、低速の漁労運転において、歯車の打音等を無くすことができると共にプロペラ回転数の設定も容易に行なえる。
【0048】
(3)航走モードでは、直結駆動とHST駆動とを組み合わせ、機関回転数により自動的に切り換わるようにしているので、たとえば低速運転ではHST駆動状態として、歯車の打音等を無くすことができると共にプロペラ回転数の設定も容易に行なえ、高速運転では直結駆動状態として、高い機械効率を保つようにすることができる。
【0049】
(4)航走モードでのHST駆動前進領域に対し、航走モードでのHST駆動後進領域を、機関回転数大側に拡大していると、前進時では、立ち上がりから高速までの一連の加速運転において、加速時のHST駆動から速やかに直結駆動へと切り換わり、円滑に上記一連の加速運転が行なえ、かつ、機関効率のよい直結駆動を十分に利用することができ、一方、後進では、プロペラ回転数の無段変速可能なHST駆動による範囲が広いので、着岸操作等を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明を適用した舶用プロペラ駆動装置の制御機器の配線略図である。
【図2】 航走モード時のコントロールレバーの制御パターンを示す配線略図である。
【図3】 漁労モード時のコントロールレバーの制御パターンを示す配線略図である。
【図4】 本願発明を適用した船用プロペラ駆動装置の油圧回路図であって、直結駆動状態を示している。
【図5】 本願発明を適用した船用プロペラ駆動装置の油圧回路図であって、HST駆動状態を示している。
【図6】 航走モード時の各駆動領域を、プロペラ回転数と機関回転数との関係で示す図である。
【図7】 漁労モード時の各駆動領域を、プロペラ回転数と機関回転数との関係で示す図である。
【符号の説明】
9 静油圧式トランスミッション(HST)
10 直結用油圧嵌脱クラッチ
13 プロペラ軸
15 減速逆転機
20 HST用油圧ポンプ
21 HST用油圧モータ
33 HSTポンプ用油圧嵌脱クラッチ
34 HSTモータ用油圧嵌脱クラッチ
69 コントローラ
70 コントロールレバー
72 モード選定スイッチ
73 機関回転数設定ダイヤル(機関回転数設定装置)
82 ガバナ装置
84 レギュレータレバー
87 HSTレバー

Claims (2)

  1. 減速ギヤ機構と静油圧式トランスミッション(HST)を有し、上記減速ギヤ機構のみを介してプロペラ軸に動力を伝達する直結駆動状態と静油圧式トランスミッションを介してプロペラ軸に動力を伝達するHST駆動状態とに切換自在な減速逆転機と、
    機関回転数を任意に設定できる機関回転数設定装置と、
    上記HST駆動状態と直結駆動状態とを予め設定されている切換機関回転数により自動的に切り換えて運転を行う航走モードと、HST駆動状態のみで運転を行うと共に前記機関回転数設定装置により機関回転数を任意設定する漁労モードとに、運転モードを切り換えるモード選定スイッチを備えていることを特徴とする船用プロペラ駆動装置。
  2. 請求項1記載の船用プロペラ駆動装置において、航走モードでのHST駆動前進領域に対し、航走モードでのHST駆動後進領域は、機関回転数大側に拡大されていることを特徴とする船用プロペラ駆動装置。
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