JP4104857B2 - 防塵用ヘアキャップ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、作業対象に対して作業者の毛髪、ふけ、ほこり等が脱落することを防止する使い捨て用の防塵用ヘアキャップに関する。さらに詳しくは、その装着が簡便で、軽くて通気性、装着感に優れ、伸長時においても防塵性が高く、且つその生産性に優れ、低コストな使い捨て用に適した防塵用ヘアキャップに関する。
【0002】
【従来の技術】
食品製造分野や電子部品製造・取扱い分野、さらには医療分野や薬品製造・取扱分野などにおいては、作業者の頭部から発する毛髪やふけ、その他ほこり等を抑えるために、ヘアキャップを装着して作業が行われている。当然のことながらキャップは蒸れのないことが要求され、通常の編織物を用いて製作したものは通気性があり、またはそのための種々の工夫もなされているが、上記塵埃は細かくその脱落を防止できず防塵性が劣る。またこの種の素材のキャップは、該素材のキャップ形状への作製、該キャップが頭部から脱げることを防止するための紐、ゴム状ベルト、ファスナー、ホック等、それらを一体化してキャップに仕上げる縫製作業に時間とコストを要する。従って、可能な限り清潔なキャップとして使用せんとしても使い捨てできず、洗濯を繰り返して使用しようとすれば、その洗濯に伴う作業自体と、キャップ損傷部の点検、保守作業等々、それら作業に無視できない人件費、保守費にコストを要することとなるので、結局この種のキャップの製作、維持にはコストの高いものとなっている。
【0003】
このような問題に対して、特開平11−43814号公報において、熱可塑性エラストマーからなる伸縮性メルトブロー不織布と伸長性を有するシート状物との積層体からなる使い捨て防塵用ヘアキャップが開示されているが、かかるヘアキャップは着用時における伸長状態での防塵性は充分なものではなく、また着用感も良好なものではなかった。したがって、その製作が容易で、また使用に際して洗濯等が不要な、よりコストの低減でき、かつ着用時においても優れた防塵性を有し、着用感の良好なヘアキャップの実現が要請されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題を解消するものであり、その目的は、その生産性が優れ、コストが低減でき、その装着が簡便で、軽くて装着感が優れ、通気性を有し、伸長時においても防塵性が高い、使い捨て用途に適した防塵用ヘアキャップを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、熱可塑性エラストマー樹脂を主成分とする繊維不織布からなる防塵用ヘアキャップであって、該繊維不織布が下記(1)〜()を満たすことを特徴とする防塵用ヘアキャップである。
(1)該繊維不織布を構成する繊維の平均繊維径が10μm以下であること、(2)繊維本数の15〜80%が2本以上の束状に融着した繊維からなること、(3)50%伸長回復率が60%以上であること、(4)該繊維不織布の通気度が200cc/cm /秒以下であること、(5)少なくとも1方向に50%伸長した時の通気度が未伸長時の通気度の2倍以下であること
【0006】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の防塵用ヘアキャップに用いる繊維不織布を構成する樹脂について説明する。
該繊維不織布に用いる熱可塑性エラストマー樹脂は、本発明の目的を達成しうる限りいかなるものでも良く、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。しかしながら、その伸縮特性、ヒートシール加工性、コストの面から熱可塑性ポリウレタンあるいはポリスチレン系エラストマーを用いることが好ましい。
【0007】
このうち本発明に好適に用いられるポリウレタン樹脂としては、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系のものが好ましい。
【0008】
本発明にポリウレタンを用いる場合、該ポリウレタンを構成するポリオール成分は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、またはこれらの共縮合物などが挙げられ、特に限定されないが、その汎用性、コスト、性能の観点から、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。
上記ポリエステルポリオールとしてはエチレングルコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジオールなどの炭素数2〜10のアルカンのポリオールまたはこれらの混合物とグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の炭素数4〜12の脂肪族もしくは芳香族ジカルボン酸またはこれらの混合物とから得られる飽和ポリエステルポリオールである、あるいはポリカプロラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコール等のポリラクトンジオールが好ましく使用される。これらは、単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0009】
一方、ポリエーテルポリオールとしては、環状エーテルのプロピレンオキシドやテトラヒドロフランを開環重合して得られる、ポリプロピレンポリオール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)等を好ましく用いることができる。
【0010】
また、本発明においては所望により適当な鎖伸長剤を使用しても良く、該鎖伸長剤としては、ポリウレタンにおける常用の連鎖成長剤、すなわち、イソシアネートと反応しうる水素原子を少なくとも2個有する分子量400以下の低分子化合物、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、キシリレングリコール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ネオペンチルグリコール、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ヒドラジン、ジヒドラジドトリメチロールプロパン、グリセリン、2−メチルプロパンジオール等が挙げられる。これらの中でも1,4−ブタンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、3−メチル−1,5−ペンタンジオールあるいはこれらの混合物が最も有効に使用できる。また場合によっては、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリマージオールを成形性を損なわない範囲で使用できる。
【0011】
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造するために使用される適当な有機ジイソシアネートとしてはイソシアネート基を分子中に2個以上含有する公知の脂肪族、脂環族、芳香族有機ジイソシアネート、特に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族または脂環族ジイソシアネートが挙げられる。これらの有機ジイソシアネートは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これら有機ジイソシアネートの中で最も好ましいのは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0012】
特に本発明においてポリウレタン樹脂を用いる場合は、その固有粘度は0.40dl/g以上が好ましく、より好ましくは、0.50〜1.50dl/gである。固有粘度が0.40未満の場合は、樹脂の分子量が低すぎて、繊維状になりにくく安定に繊維化することが困難であるばかりか、仮に繊維状になったとしても強度が低く、簡単に破断してしまう場合がある。一方、固有粘度が1.50を超える場合は樹脂の溶融粘度が高いため、10μm以下の繊維径を有する繊維不織布を製造することが難しくなる場合がある。
【0013】
また、該繊維不織布に用いることのできるポリスチレン系エラストマー樹脂は、スチレンを他のコモノマーと共重合したエラストマーを広く包含する。コモノマーとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のオレフィン、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルなどのスチレンと共重合しうるモノマーを用いることができる。これらの中ではハードセグメントとソフトセグメントのブロックから構成されるブロック共重合体型のものが好ましい。特に、スチレン−オレフィンブロック共重合体が、本発明の目的とする束状繊維の形成をコントロールしやすいため好ましい。スチレン−オレフィンブロック共重合体とは、1分子の両末端にポリスチレンブロック相をもち、中間相にオレフィン系エラストマー相を導入したものである。すなわち、中間相がポリブタジエン系であるスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、中間相がポリイソプレン系であるスチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、中間相が水素添加型のポリオレフィンであるスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)等が挙げられる。また、上記の如きスチレン−ポリオレフィン−スチレンのトリブロック構造の共重合体の他に、スチレン−エチレン・プロピレンのジブロック構造の共重合体(SEP)や水添ブタジエンラバー(HSBR)なども本発明の範囲に含まれる。
【0014】
次に、ポリエステル系エラストマーとしては、ハードセグメントにポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリテトラメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリヘキサメチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート等を用い、そしてソフトセグメントとして、炭素/酸素の比率が1.8/1〜4.5/1の脂肪族ポリエーテル類(例えばポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール)、あるいは、例えばアジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸の如き炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸と例えばエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコールの如き炭素数2〜12の脂肪族グリコールとのポリエステル類(例えばε−オキシカプロン酸の如き炭素数4〜12の脂肪族オキシカプロン酸の自己縮合したポリエステル類)などを挙げることができる。
【0015】
また、ポリオレフィン系エラストマーとしては、ポリプロピレンにエチレン系エラストマー(EPDMまたはEPM)をブレンドしたものや、そのゴム弾性を向上させるために部分架橋を行ったもの、そしてエチレン−α−オレフィン共重合体などがある。中でも本発明においては、エチレン−α−オレフィン共重合体のタイプが好ましく用いられる。
このうちエチレンと共重合されるα−オレフィンとしては、一般に炭素数3〜10のα−オレフィン、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。このうち最も好ましいのは1−ブテンである。
【0016】
また、ポリアミド系エラストマーについても、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6,12、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミドからなるハードセグメントを有し、ポリエステル系エラストマーの場合と同様に、脂肪族ポリエーテル類やポリエステル類からなるソフトセグメントを有するものが好ましく用いられる。
【0017】
以下、本発明の防塵用ヘアキャップに用いる繊維不織布について説明する。
本発明に用いる繊維不織布は、良好な埃バリア性を確保するためにその構成繊維は平均繊維径10μm以下であることが肝要である。平均繊維径が10μmを超えると風合いが硬くなったり、地合が粗くなり、本発明の目的とする埃バリア性を確保できないケースが生ずるばかりか、繊維不織布の伸縮追従性および機械的強度が確保できなくなる。一方、平均繊維径が1μm未満の場合は、繊維不織布の強度が確保できなくなり、このようなシートは形態安定性が悪くなったり、シートの取扱が難しく操業性が低下するという問題が発生する場合もある。これらのことから、平均繊維径は1〜10μmが好ましい。
【0018】
また該繊維不織布は、強度と伸長時の埃バリア性確保を両立させるために、構成する繊維本数の15〜80%が束状に融着している点に特徴を有する。すなわち、構成繊維本数の15〜80%が2本以上の束状繊維を形成し、不織布内で補強材として働くことにより強度とバリア性の両方を維持するのである。また、かかる束状繊維の存在により、地合、風合を維持した上で、さらに強度を付与するのである。つまり、ヘアキャップとして使用した場合、良好な着用感を維持しつつ、この束状繊維が極細繊維の空隙を部分的に広げて一部の空隙が集中的に広がることのないように作用し、ウェブが伸長した状態でも埃バリア性が保持されるのである。束状繊維の割合が15%未満の場合には、強度が確保できず非常に加工しにくく、耐久性のない繊維不織布になる。一方、束状繊維の割合が80%を超えると、強度は確保できるものの、太い繊維からなる不織布と同様に風合いが硬くなったり、地合が粗くなるため、良好な埃バリア性や、機械的強度が確保できなくなるという問題が発生する。本発明のヘアキャップとした際に、より良好な埃バリア性、強度を確保するためには、束状繊維の割合は、20〜60%が好ましい。
【0019】
本発明に用いる繊維不織布は、熱可塑性エラストマーを主成分とするものであるが、該繊維不織布を構成する樹脂の80%以上が熱可塑性エラストマーであることが好ましく、より好ましくは90%以上である。エラストマー樹脂の含有率が80%未満であると伸縮性が低下してしまい、伸長回復率の低下および伸長時におけるピンホール発生の原因となってしまう場合がある。
【0020】
特に本発明において、より容易に本発明の束状繊維を確保するためには、原料となる熱可塑性エラストマー樹脂に重量平均分子量5,000以下のポリエチレン樹脂とポリオレフィンをブレンドすることで目的とする繊維不織布をより容易に製造できる。より良好な埃バリア性および平滑性を発現させるには、熱可塑性エラストマー樹脂を80〜99%、重量平均分子量が5,000以下のポリエチレン樹脂を1〜0.001%およびポリオレフィン樹脂を20%未満の比率でブレンドした樹脂を用いることが好ましく、より好ましくは、熱可塑性エラストマー樹脂を85〜95%、重量平均分子量が5,000以下のポリエチレン樹脂を1〜0.001%およびポリオレフィン樹脂を15%未満の比率でブレンドした樹脂を用いることが好ましい。なお本発明に適用されるポリオレフィン樹脂としては、特に限定はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテン等およびこれらの改質ポリマーあるいは混合物であってもよいが、中でもポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0021】
これらの樹脂のブレンドは、二軸押出機等で押出しながら、各成分を添加してもよいし、また、マスターバッチを用いてチップブレンドの後、押し出してもよい。これらをブレンドする際、例えば、ポリオレフィンとしてポリプロピレンを添加する場合等は、ポリプロピレン樹脂に分子量5,000以下のポリエチレン樹脂を練り込んだマスターバッチを原料とするエラストマー樹脂に0.1〜20%ブレンドすることで、より容易に本発明に適した繊維不織布を得ることができる。
なお、該繊維不織布の良好な肌触り、柔軟性、伸縮性等に影響を与えない程度に光安定剤、顔料、その他の添加物を添加することは可能である。
【0022】
さらに、このポリオレフィン混合により、他の素材への積層性が向上する。特にアミド系、エステル系樹脂繊維からなる繊維不織布を、より低コストなオレフィン系シートと積層する場合など、積層方法が、バインダー方式に限定されてしまう場合があるが、ポリオレフィンをブレンドした繊維不織布であれば、熱エンボスやピンソニック法など溶融接着方式を使用できる範囲が広がる。
【0023】
また、特にスチレン系エラストマー樹脂に関しては、ポリオレフィンを添加した場合、束状繊維の比率コントロ−ルが容易になるとともに不織布の膠着性も改善することができる。
【0024】
該繊維不織布を製造する方法は、スパンボンド法やメルトブロー法、フラッシュ紡糸法などの直接法や短繊維からカードウェブを得、これを水流絡合、エンボスあるいはニードルパンチなどの繊維固定方法により複合する方法があり、これら不織布化の方法については特に限定されないが、中でも特にメルトブロー法が好ましく、この方法は、樹脂のもつ曳糸性をあまり強く要求しないので、極めて細い繊維径を有する繊維不織布が容易に製造可能である。
【0025】
これらメルトブロー法で得られる極細繊維からなる不織布は、フィルター用途をはじめ多くの用途が開発されてきており、メルトブロー法による重合体の紡糸方法については、インダストリアル・アンド・エンジニアリング・ケミストリー(Industrial and Engineering Chemistry)48巻、第8号(p1342〜1346)、1956年に基本的な装置および方法が開示されている。本発明においても、基本的に同様の手法で不織布製造が可能である。
【0026】
とりわけ、該繊維不織布をメルトブロー法にて製造する場合、良好なシート形態を保ちかつ良好な触感と柔軟性、通気性および伸縮性を有するようにするために必要な2本以上の束状繊維を15〜80%確保するためには、いくつかのブローン条件をバランスさせることが肝要である。すなわち、熱可塑性エラストマー樹脂を220℃以上の温度で溶融押出し、樹脂溶融温度+0℃〜20℃かつ、圧力1〜30kPaの噴射気流で加速することで細化紡糸し、次いでこれをシート状に捕集する際、ノズル近傍雰囲気温度を5℃〜40℃の範囲でコントロールし、溶融温度、熱風温度、圧力とのバランス点を見いだすことで、束状繊維の割合を調整するのである。この場合の各温度や圧力は紡糸条件や樹脂の特性に依存するため、それぞれ個別に設定する必要がある。ここで、ノズル近傍温度とは、ダイ幅方向中央において、ノズル先端吐出部からブローン繊維流に平行に捕集面側へ5cm、かつウェブ走行方向下流側へブローン繊維流に対して垂直に10cm離れたところの温度をいう。ノズル近傍温度をコントロールすることで、束状繊維の割合をコントロール可能になるのである。ノズル部近傍の温度を低く保ち、ノズルからの樹脂や熱風の温度や吐出量を低く抑えることで、繊維同士の融着は抑えられ、束状繊維の少ない繊維不織布が得られ、逆にこれらを高くすることで繊維同士の融着が多くなる。そして、これらの温度バランスを調整することで、不織布内の束状繊維の比率を任意に調整するのである。一方、このノズル下の温度の調節は、好ましくはノズル周辺の部屋の温度を調節することで行うが、この場合、比較的大がかりな温調設備が必要となる。しかしながら、この温調設備およびその運転コストを抑える場合には、ノズル直下に温調空気を吹き込む方法を採ることも可能であり、必要に応じて選択できるが、この場合吹き込む空気の量、速度は、ブローン繊維の乱れを生じないようできるだけ少量、低速であることが肝要である。
【0027】
そして、ウェブの均一性を確保するために、紡糸ノズルとコンベアネット間の距離を10〜50cmに設定するのがよい。そして、紡糸ノズルとコンベアネット間の距離は、これが50cm以上大きく離れるとシート形態を保つことが困難となる場合がある。また、10cmより小さくなると、繊維同士の膠着が激しく、繊維不織布の良好な触感がそこなわれる場合がある。
【0028】
さらに、この時に使用するノズルについて、平均繊維径10μm以下の極細繊維を形成するためには、0.1〜0.5mmφの孔径であることが好ましく、また本発明の束状繊維を発生させやすくするために孔ピッチを0.5mm〜1.5mmに設定することが好ましい。孔径が0.1mmφ以下では、樹脂圧が高くなりすぎて運転性に支障をきたすことになり、また、0.5mmφ以上では細い繊維が確保できない場合がある。また、孔ピッチについては、これが0.5mmφ以下では束状繊維が発生しすぎて不織布の地合が低下してしまうため、本発明の防塵用ヘアキャップとした場合に捕集効率が確保できない場合がある。また、1.5mmφ以上では、束状繊維の比率が減ってしまい、ウェブ内でのテンションメンバーとしての働きが期待できなくなってしまう。
【0029】
特に、該繊維不織布を製造するに当たって繊維同士の膠着が激しくなるような場合には、ブロッキング防止剤を使用することで繊維の膠着を防ぎ、良好な肌触り、十分な柔軟性や伸縮性を確保することができる。かかるブロッキング防止剤としては、有機物、無機物あるいはその混合物等、ブロッキング防止効果を発揮するもので有れば特に限定は無い。しかしながら、ポリウレタン樹脂に練混んで使用する場合には、熱可塑性であることが好ましく、高級脂肪酸ビスアミドやモンタン酸エステル、あるいはモンタン酸エステルとモンタン酸金属塩との混合物が好適である。このブロッキング防止剤は、用いる熱可塑性エラストマー樹脂に対して0.1〜5.0質量%使用することで、所望の効果を得ることができる。
【0030】
該繊維不織布は、通気度1〜200cc/cm/秒という良好な通気性を有し、平均ポアサイズが1μm〜100μmであるようなち密な構造を有する繊維不織布とすることがより好ましい。すなわち、通気度が200cc/cm/秒を超える場合、あるいは平均ポアサイズが100μmを超えるような繊維不織布は地合が粗くなるため、防塵用ヘアキャップとして場合に品質の安定性、形態安定性に欠けるという問題点が発生する場合がある。逆に、通気度が1cc/cm/秒未満の場合、あるいは平均ポアサイズが1μm未満の場合においては、シートとしては均一なものであり外観上は好ましいものの、十分な繊維強度を確保できなくなる場合がある。さらに該繊維不織布は、少なくとも1方向に50%伸長した時の通気度が未伸長時の通気度の2倍以下であることが必要である。かかる構成とすることで、伸長による繊維空隙の広がりが小さい構造とすることができ、優れた埃バリア性が奏される。繊維不織布の目付としては、10〜50g/m程度のものが好ましく用いられる。目付が10g/m未満の場合、その製造に関しては何ら問題ないが、薄く弱いためその取扱性が悪いものとなってしまう。また、目付50g/mを超えるものはそれ自体が嵩高のものとなり、また、過剰品質ともなり、好ましくない。
【0031】
また、該繊維不織布は、伸縮性が必要であり、50%伸長回復率が60%以上であり、好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。50%伸長回復率が60%未満では、ヘアキャップが頭部へ固定されるための力が弱く、容易に脱落してしまう心配がある。
【0032】
次に本発明の防塵用ヘアキャップについて説明する。
本発明の防塵用ヘアキャップは、既に述べたような繊維不織布を原材料として使用しているので、その構成繊維の繊度が細く、その開孔が細かいので、頭部からの細かい発塵を十分に捕捉することができ、塵埃や毛髪の脱落を十分に阻止する優れた効果を発揮できるものである。しかも熱可塑性エラストマーからなるため、伸縮性に加え、該ポリマー特有のタック性があり、そのためヘアキャップは頭部(毛髪部)からズレることがなく、時間の経過とともにズレ落ちると言うことも全くない。また繊維不織布自体が適度な通気性を有するため蒸れることもない。また該ヘアキャップは、素材自体が伸縮性で、キャップの全方向に伸縮が可能であるので、加工時にはシートの方向を合わせる必要が無く、使用時には使用者個々の頭部の形および大きさに容易に追随、保持できるという基本的な特徴点を有し、したがって種々のサイズのキャップを用意する必要がない。さらに本発明の防塵用ヘアキャップは、その構成と形態が簡潔であり、縫製加工を必要とせず、またキャップ本体を使用者頭部に保持させるための紐、ゴム紐や、ファスナー、ホック等をキャップ本体に設ける必要も全くないので、その製作が全く容易であり、従ってその製作コストも低下させることができる特徴をも有する。
【0033】
さらにまた、本発明の防塵用ヘアキャップを着用した場合、ヘアキャップに使用している繊維不織布が一部伸長状態で使用されることになるが、該繊維不織布はすでに述べたように、伸長状態においても繊維空隙を小さく保ち、従来の伸縮性不織布で課題とされていた伸長により形成される繊維空隙から毛髪、ふけ、その他の塵等が脱落するという問題を回避できる。
【0034】
本発明の防塵用ヘアキャップの製造方法としては、2枚の繊維不織布を積層し、キャップに製造する加工手段は、融着と切断を同時に行うことができる、いわゆる高周波ウェルダー手段を好ましく用いることができるが、本発明においては、この手段に限られるものではなく、該繊維不織布2枚をあらかじめキャップ型に切断し、その後、両者を熱融着手段により結合してもよく、また熱融着に替えて接着剤を使用して結合しても良い。
【0035】
以下、図面を用いて本発明の防塵用ヘアキャップをより詳細に説明する。
図1は本発明の防塵用ヘアキャップの一例を示す平面図で、繊維不織布2枚を重ね合わせ、頭を挿入する開口部側となる辺1を残して高周波ウェルダー等により、キャップ形状にその周縁部2側を融着切断したものである。図1に示される本発明の防塵用ヘアキャップは、全方向に伸縮性があるので、使用者は、その開口部側となる辺1を拡げ頭部を挿入し、手を離せば該キャップは収縮するので、そのまま頭部にフィットし保持でき、外れることがなく、図2のように着用できる。
【0036】
本発明の防塵用ヘアキャップは、直接人の肌に触れるため1つには肌触りが良好であることが必要である。本発明の防塵用ヘアキャップは、良好な平滑性を示す点にも特徴を有するものであり、非常に凹凸の少ない表面を有しているため、肌に触れてもザラツキ等を感じることなく、非常に心地よく着用できるのである。
【0037】
本発明における平滑性は、表面粗さを示す値として、「中心線平均粗さ(Ra)」という値を用いて表現できる。本発明の防塵用ヘアキャップに用いる繊維不織布は、少なくとも一方の面における長さ方向と幅方向の中心線平均粗さ(Ra)が15μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは4.5〜10μmである。
中心線平均粗さ(Ra)が15μmを超えると、繊維不織布に平滑性が無いため、肌に触れたときのザラツキ感が著しく、着用者に不快感をもたらすことになる。さらには不織布表面の凹凸が大きいことにより、ウェブと人体の接触部空隙から塵が放出される原因にもなりかねない。なお、本発明に規定する中心線平均粗さ(Ra)は後述する方法により求めることができる。
【0038】
また、熱可塑性エラストマーからなる不織布全般に言えることであるが、不織布の摩擦係数が高く肌とのスベリが悪いと着脱時に違和感を感じるケースが多い。この点、本発明の防塵用ヘアキャップを構成する繊維不織布は、既に述べた束状繊維の存在によりヘアキャップとしての強度とウェブ表面平滑性のバランスを高次元で両立できるため、必要以上にスベリ抵抗を大きくしないで済むという点が最大のメリットとして挙げられる。
【0039】
本発明の防塵用ヘアキャップは、手触り感の向上、加工性向上そして強度の向上を目的として該繊維不織布に他のシートを積層した複合シートを用いてもよい。他のシートとしては、不織布または織編布等が挙げられるが、中でも不織布が好ましい。繊維不織布に積層するシートは、着用性確保の目的から、少なくとも一方向に伸長可能であり、通気性を有するものが好ましい。積層方法は、特に限定はなく、熱エンボス法、ピンソニック、バインダー接着、ホットメルト、水流絡合あるいはニードルパンチ法等が使用可能であるが、コスト、作業性および複合後の柔軟性確保等の目的から、エンボス加工による積層が好ましい。
【0040】
複合するシートは、該繊維不織布の支持材としての機能を果たすものであるが、かかるシートとしては、機械方向(MD)あるいは幅方向(CD)のいずれか一方に伸長可能であれば、他のもう一方へ伸長不能であってもかまわない。したがって、複合相手としては、スパンレース不織布、熱可塑性フィルムを一方向にスプリットした網状布、スパンボンド不織布を一方向に延伸しその直交方向に伸縮性を付与したスパンボンド不織布、トウ状繊維群をその単繊維間で互いに部分的に接着してなるトウ状布、さらには少なくともMDまたはCD方向に伸長可能な編物等も使用可能であるが、製造上並びにコスト上の総合的な点でスパンレース不織布の使用が好ましい。
【0041】
スパンレース不織布は、良く知られているように、ウェブに高速ジェット水流を当て、ウェブ中の繊維を交絡させて製造するが、本発明では、カード法により繊維の配向性を有するウェブを用い、これに水流交絡処理を行って製造すればよい。このスパンレース不織布は、繊維を機械的に交絡させる点で同種のニードルパンチ法での場合に比べて低目付で交絡密度の高いものが得られ、得られる不織布はしなやかで風合いの優れたものとなり、またその製法故に交絡繊維からの毛羽落ちが少ない点で好ましい。
【0042】
スパンレース不織布を構成する素材としては、これまで不織布素材として知られている合成繊維を用いることができ、制限するものではないが、その内ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨンが代表的であり、またその単独繊維使いばかりでなく、その付加目的のために、例えばポリプロピレンとレーヨンとの混合といったように混合素材を用いることもできる。
【0043】
複合シートの製造は、上記の繊維不織布と、一例として長さ方向あるいは幅方向あるいはその両方に伸長性を有するスパンレース不織布とを積層し、その両者の伸縮性が事実上阻害されないように接合されればよく、その接合は、熱による融着接合であっても、また接着剤による接合であっても良い。特に、繊維不織布としてメルトブロー不織布を用いる場合、紡糸の際、あらかじめ作製したスパンレース不織布をいわば下敷き材として成形コンベア上に供給し、該スパンレース不織布上に直接、弾性重合体をメルトブローン紡糸し、両者の複合体とする方法がある。
【0044】
該複合シートにスパンレース不織布を用いる場合、目付は、10〜30g/mのものが用いられる。目付10g/m未満のものは、支持材としての強力が不足する場合がある。また、目付が30g/mを超えるものとなるとそれ自体嵩高のものとなり、最終複合シートとして厚く、装着感が悪くなる場合がある。一方、スパンレース不織布を用いずに、前記の如きシートを用いる場合も上記スパンレース不織布の場合の目付あるいは厚さに準ずればよい。
なお、該複合シートを用いて本発明の防塵用ヘアキャップを製造する場合は、上述した方法と同様の手法により製造することができる。
【0045】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。本実施例における各物性値は、以下の方法により測定した。
【0046】
1.熱可塑性ポリウレタンの固有粘度
樹脂をN,N’−メチルホルムアミドに溶解し、毛細管粘度計を用いて温度30℃で測定し、固有粘度[η]を下記式により求めた。
【数1】
Figure 0004104857
【0047】
2.平均繊維径
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、不織布の表面を1000倍に拡大した写真を撮影し、この写真に2本の対角線を引き、この対角線と交わった繊維の太さを倍率換算した値を用いた。そしてそれらの繊維の100本の平均値を平均繊維径として用いた。
ただし、2本以上が束状に融着している繊維、あるいは、異常な形態の繊維については、その1本1本の太さを測定できないため、測定対象から除外した。
【0048】
3.目付・厚さ
JIS L1906「一般長繊維不織布試験方法」に準拠して測定した。
【0049】
4.強度・伸度
JIS L1906「一般長繊維不織布試験方法」に準拠して測定した。
【0050】
5.通気度
JIS L1906「一般長繊維不織布試験方法」のフラジール法に準拠して測定した。
【0051】
6.50%伸長時通気度
サンプルを1方向に50%伸長した状態で測定器に取付け、JIS L1906「一般長繊維不織布試験方法」のフラジール法に準拠して測定した。
【0052】
7.平均ポアサイズ
Porous Materials,Inc社製Automated Perm Porometerを用いてバブルポイント法により測定した。
【0053】
8.伸長回復率
JIS L1096「一般織物試験方法」に準拠して測定した。ただし、本発明における評価は、一律、伸度50%での回復率とし、また、50%伸長後、クロスヘッドを伸長時と同じ速さで元の位置に戻し、待ち時間無しに再度伸長した。
【0054】
9.束状繊維の割合
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、不織布の表面を1000倍に拡大した写真を撮影し、この写真に2本の対角線を引き、この対角線と交わった繊維について、繊維束状態の繊維と単繊維状態の繊維とに分けて数え、単繊維数100本以上になる枚数の写真を撮影し、そこに写っている繊維全数について数えて、次式により算出した。なお束状繊維は、2本以上の繊維が100μm以上の長さにわたって2本以上の繊維が融着した形態になっているものとした。1つの束を1本とカウントした。
束状繊維の割合=繊維束状態の繊維本数/(繊維束状態の繊維本数+単繊維状態の繊維本数)×100(%)
【0055】
10.表面粗さ
JIS B0601「表面粗さの定義と表示」に準拠し、(株)ミツトヨ社製「サーフテスト501」にて測定した。
本発明における表面粗さは、不織布の長さ方向(RaMD)と幅方向の中心線平均粗さの値(RaCD)の平均値とした。
表面粗さ(Ra)=(RaMD+RaCD)/2
この時、カットオフ値=0.8mm、測定長さ=2.4mmで測定した。
なお、本測定は、繊維不織布の両面について測定を行い、繊維不織布製造時の捕集成形面と接する側を捕集面、ブローノズル側をブローン面とした。
【0056】
実施例1
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とからなる平均分子量1500のポリエステルジオールと分子量500未満の1、4−ブタンジオールおよび4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートからなる、ポリマー中の窒素含有量が3.8%のポリウレタン樹脂を得た。
このポリウレタン樹脂を260℃にて溶融混練しながら押出し、該溶融ポリマー流をダイヘッドに導き、ギヤポンプで計量し、直径0.3mmφの孔を1.0mmピッチで一列に並べたメルトブローンノズルから吐出させ、同時にこの樹脂に260℃の熱風を噴射して吐出した繊維を成形コンベア上に捕集し、繊維不織布として目付25.3g/mのメルトブローン不織布を得た。この時の樹脂の単孔吐出量は0.5g/分/孔であり、熱風圧力は22kPa、ノズルと捕集コンベア間の距離は15cmであった。
【0057】
得られた繊維不織布を各々2枚を重ねて超音波ウェルダーに導き、図1に示される形状に融着と切断を行って、防塵用ヘアキャップを製造した。
得られたヘアキャップはその全方向に伸縮可能であるため、それを被って手を離せば自ずと頭部にフィットして頭部を覆うことができるものであり、手間が要らず、また軽くて肌触りも良好なもので、防塵用ヘアキャップとして極めて好ましいものであった。結果を表1に示す。
【0058】
実施例2
攪拌機付き耐圧容器中にシクロヘキサン3000質量部、充分に脱水したスチレン55質量部およびn−ブチルリチウム0.7重量部を加え、60℃で60分間重合し、次いでイソプレン300質量部を加えて60分間、次いでスチレン55質量部を加えて60分間重合し、スチレン−イソプレン−スチレン型ブロック共重合体を合成した。得られたポリマーのスチレン含有量は27質量%であった。
このポリマー溶液のポリマー濃度を10%とするようにシクロヘキサンを加え、減圧脱気後水素置換し、さらに0.5%/ポリマーのパラジウム触媒を加え10kg/cmの水素雰囲気下で水添反応を行い、水素添加率98%の水添ブロック共重合体(SEPS)を得た。
次に、上記SEPSのペレットと230℃、2160gでのMFRが200のポリプロピレン樹脂を20%混合し、混合ペレットとした。このペレットを用いてダイ温度を300℃、熱風温度を310℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で繊維不織布を製造し、得られた繊維不織布を用いて実施例1と同様の方法により防塵用ヘアキャップを製造した。(表1)
【0059】
実施例3
硬度38D(ASTM D2240)、結晶融点172℃、MFR10(190℃ ASTM D1238)のポリエステル系エラストマー樹脂(ペルプレンP40H 東洋紡績社製)を用いて、ダイ温度を300℃、熱風温度を310℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で繊維不織布を製造し、得られた繊維不織布を用いて実施例1と同様の方法により防塵用ヘアキャップを製造した。(表1)
【0060】
実施例4
硬度35D(ASTM D2240)、結晶融点152℃、MFR7(ASTM D1238準拠;235℃、1kg荷重)のポリアミド系エラストマー樹脂(ペバックス3533SD01 東レ社製)を用いて、ダイ温度を300℃、熱風温度を310℃とし、さらに熱風圧力を20kPaとしたこと以外は実施例1と同様の方法で繊維不織布を製造し、得られた繊維不織布を用いて実施例1と同様の方法により防塵用ヘアキャップを製造した。(表1)
【0061】
実施例5
MFR100(JIS K 6758に準拠;230℃、2.16kg荷重)のポリプロピレン樹脂と重量平均分子量1700のポリエチレンを二軸押出機にて溶融混練した後、ダイスより押出し、ポリエチレンが10%混練されたポリプロピレンマスターバッチを得た。
実施例1で用いたポリウレタン樹脂に、このマスターバッチを5%ブレンドし、実施例1と同様の方法で繊維不織布を製造し、得られた繊維不織布を用いて実施例1と同様の方法により防塵用ヘアキャップを製造した。(表1)
【0062】
上記実施例で得られた防塵用ヘアキャップは、通気度が200cc/cm2/秒以下であり、かつ50%伸長時の通気度が、未伸長時の2倍以下であり、頭部への着用により、伸長状態で使用しても、頭部からの塵埃、毛髪の脱落を充分に防ぐ性能を有しているといえる。
【0063】
比較例1
ノズル孔径0.65mmφ、ピッチ2.5mmのノズルを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、不織布を製造し、得られた不織布を用いて実施例1と同様の方法により防塵用ヘアキャップを製造した。(表1)
得られたヘアキャップは、着用時に繊維間の隙間から毛髪が飛び出してしまい、毛髪脱落の懸念が非常に大きいものであった。
【0064】
【表1】
Figure 0004104857
【0065】
実施例6
カード法によりポリエステル繊維(1.4dtex、繊維長51mm)80質量%とポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンの芯鞘型熱融着性複合繊維(2dtex、繊維長51mm)20質量%からなるセミランダムウェブを用い、常法により水流交絡処理を行って得られた目付25g/mのスパンレース不織布を用い、圧着面積率20%、接合点密度25ドット/cmの円形エンボスパターンを有するエンボスロールとフラットロールとの組み合わせでエンボス加工を行った。エンボスロール側にスパンレース不織布、フラットロール側に実施例5のメルトブローン不織布を配し、柄ロール/フラットロール共に135℃、線圧35kg/cm・L、速度15m/分で接合一体化した。
得られた積層不織布は、エンボス加工により圧着された部分が生じたため、通気度が47cc/cm2/秒に低下したものの、ヘアキャップとして使用するには充分な通気度を有していた。
また、水流絡合不織布がCD方向にのみ大きな伸長性を示すため、複合シートも、CD方向のみ伸長し、MD方向の伸度は極端に低下した。このため、2つの複合シートの伸縮方向が同方向になるよう重ね、頭部周長方向に伸縮するよう方向を合わせて、これを高周波ウェルダーに導き、図1で示される形状に融着と切断を行って、防塵用ヘアキャップを得た。結果を表2に示す。
【0066】
得られたヘアキャップはその左右横方向において全体的に伸縮できるものであるため、それを被って手を離せば横方向に収縮し頭部にフィットして頭部を覆うことができるものであり、手間が要らず、また軽くて肌触りも良好なもので、防塵用ヘアキャップとして極めて好ましいものであった。また、このヘアキャップは、頭部からの塵埃を充分に抑えうるものであった。
【0067】
比較例2
比較例1で用いたメルトブロー不織布と実施例6で用いたスパンレース不織布を、実施例6と同様の方法で積層し、複合シートを得た。
得られた複合シートを用いて、実施例6と同様の方法で防塵用ヘアキャップを得たが、着用時に繊維隙間から毛髪が飛び出してしまい、毛髪脱落の懸念が非常に大きいものであった。(表2)
【0068】
【表2】
Figure 0004104857
【0069】
【発明の効果】
本発明により、良好な伸縮性を有し、かつ伸長時の埃バリア性に優れ、さらには平滑な表面を有する繊維不織布からなる防塵用ヘアキャップを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の防塵用ヘアキャップの一例を示す平面図
【図2】 本発明の防塵用へアキャップの着用形態を示す側面図
【符号の説明】
1:開口部側となる辺
2:周縁部

Claims (7)

  1. 熱可塑性エラストマー樹脂を主成分とする繊維不織布からなる防塵用ヘアキャップであって、該繊維不織布が下記(1)〜(3)を満たすことを特徴とする防塵用ヘアキャップ。
    (1)該繊維不織布を構成する繊維の平均繊維径が10μm以下であること、(2)繊維本数の15〜80%が2本以上の束状に融着した繊維からなること、(3)50%伸長回復率が60%以上であること、(4)該繊維不織布の通気度が200cc/cm /秒以下であること、(5)少なくとも1方向に50%伸長した時の通気度が未伸長時の通気度の2倍以下であること
  2. 熱可塑性エラストマー樹脂が、ポリウレタン、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーまたはポリアミド系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性エラストマー樹脂である請求項1に記載の防塵用ヘアキャップ。
  3. 該繊維不織布の少なくとも一方の面における長さ方向と幅方向の中心線平均粗さ(Ra)が15μm以下である請求項1または2に記載の防塵用ヘアキャップ。
  4. 該繊維不織布を構成する樹脂が、熱可塑性エラストマー樹脂を80〜99%、重量平均分子量が5,000以下のポリエチレン樹脂を1〜0.001%およびポリオレフィン樹脂を20%未満の比率でブレンドした樹脂からなる請求項1〜のいずれか1項に記載の防塵用ヘアキャップ。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の繊維不織布の少なくとも一方の面に、少なくとも1方向に伸長可能な不織布または編織布を積層した複合シートからなる防塵用ヘアキャップ。
  6. 請求項1〜に記載の繊維不織布の少なくとも2枚を、頭部を挿入する開口部側となる辺と、少なくとも頭頂部を含むほぼ半円もしくはその類似形状の辺とからなる形状に、該開口部側辺を残して周縁部を融着または接着し切断してなり、全方向への収縮性で頭部を被覆するように構成したことを特徴とする防塵用ヘアキャップ。
  7. 請求項に記載の複合シートの少なくとも2枚を、頭部を挿入する開口部側となる辺と、少なくとも頭頂部を含むほぼ半円もしくはその類似形状の辺とからなる形状に、該開口部側辺を残して周縁部を融着または接着し切断してなり、全方向への収縮性で頭部を被覆するように構成したことを特徴とする防塵用ヘアキャップ。
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