JP4102581B2 - ペプチドのc末端アミノ酸配列解析方法 - Google Patents

ペプチドのc末端アミノ酸配列解析方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4102581B2
JP4102581B2 JP2002083311A JP2002083311A JP4102581B2 JP 4102581 B2 JP4102581 B2 JP 4102581B2 JP 2002083311 A JP2002083311 A JP 2002083311A JP 2002083311 A JP2002083311 A JP 2002083311A JP 4102581 B2 JP4102581 B2 JP 4102581B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
acid
peptide
amino acid
terminal amino
alkanoic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2002083311A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2003279581A (ja
Inventor
賢司 宮崎
晧 次田
直行 高橋
卓司 鍋谷
敏正 山崎
憲一 上條
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NEC Corp
Original Assignee
NEC Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NEC Corp filed Critical NEC Corp
Priority to JP2002083311A priority Critical patent/JP4102581B2/ja
Priority to PCT/JP2003/003512 priority patent/WO2003081255A1/ja
Priority to CNA038011174A priority patent/CN1556925A/zh
Priority to EP03710459A priority patent/EP1489424A4/en
Priority to US10/489,198 priority patent/US7384790B2/en
Publication of JP2003279581A publication Critical patent/JP2003279581A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4102581B2 publication Critical patent/JP4102581B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/68Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
    • G01N33/6803General methods of protein analysis not limited to specific proteins or families of proteins
    • G01N33/6818Sequencing of polypeptides
    • G01N33/6821Sequencing of polypeptides involving C-terminal degradation
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/68Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
    • G01N33/6803General methods of protein analysis not limited to specific proteins or families of proteins
    • G01N33/6842Proteomic analysis of subsets of protein mixtures with reduced complexity, e.g. membrane proteins, phosphoproteins, organelle proteins

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Bioinformatics & Computational Biology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペプチドのC末端アミノ酸配列を解析する方法に関し、より具体的には、ペプチドに関して、化学的方法により該ペプチドのC末端アミノ酸を逐次的に分解して、その反応産物の分子量を質量分析により決定し、逐次的に除去される一連のアミノ酸に起因する分子量減少に基づき、C末端アミノ酸配列を解明する方法に関する。さらには、本発明は、かかる解析方法に専ら使用される、化学的方法によりペプチドのC末端アミノ酸を逐次的に分解処理し、質量分析に供する反応産物の調製用の処理キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
天然より採取されるペプチドやタンパク質に関して、そのアミノ酸配列の同定は、かかるペプチドやタンパク質の生物学的性質、機能を研究する際、不可欠な情報である。現在、ペプチドやタンパク質の全アミノ酸配列は、対応する遺伝子情報、すなわち、これらのペプチドをコードしているゲノム遺伝子やm−RNAより調製されたc−DNAの塩基配列に基づき、推断されるアミノ酸配列として決定されている。その際、該ペプチドをコードしているゲノム遺伝子やm−RNAより調製されたc−DNAを特定する上では、ペプチドの部分的なアミノ酸配列の知見は、依然として必要である。
【0003】
このペプチドの部分的なアミノ酸配列の知見としては、一般に、ペプチドのN末端アミノ酸配列とC末端アミノ酸配列とが、特に有用とされている。具体的には、例えば、多数のm−RNAより調製されたc−DNAライブラリーから、目的とするペプチドをコードしているc−DNAを選別する際、仮に、N末端アミノ酸配列とC末端アミノ酸配列とが判明していると、かかる両末端のアミノ酸配列に基づき、作製された核酸プローブを利用して、目標とするc−DNAを選別することが可能となる。あるいは、両末端のアミノ酸配列に基づき作製されたオリゴヌクレオチド・プライマーを利用して、PCR法を適用して、目標とするc−DNAを選択的に増幅することも可能となる。
【0004】
ペプチドのN末端アミノ酸配列を解析する手法としては、従来から、酸を作用させ、N末端アミノ酸を逐次的に加水分解しつつ、生成するアミノ酸を同定する手法が利用されている。一方、ペプチドのC末端アミノ酸配列を解析する手段として、化学的手法によりC末端アミノ酸を逐次的に分解し、その反応産物として得られる短縮されたペプチドと元のペプチドとの分子量差から、分解されたC末端アミノ酸を特定する方法が既に提案されている。例えば、化学的手法によりC末端アミノ酸を逐次的に分解する手段として、90℃に加熱しつつ、乾燥したペプチドにペンタフルオロプロパン酸(CF3CF2COOH)高濃度水溶液、あるいは、ヘプタフルオロブタン酸(CF3CF2CF2COOH)高濃度水溶液から発生した蒸気を作用させて、前記パーフルオロアルカン酸により促進される、C末端アミノ酸の選択的な加水分解を行わせる方法が提案されている(Tsugita, A. et al., Eur. J. Biochem. 206,691−696 (1992))。加えて、前記パーフルオロアルカン酸高濃度水溶液に代えて、無水ペンタフルオロプロパン酸((CF3CF2CO)2O)のアセトニトリル溶液、無水ヘプタフルオロブタン酸((CF3CF2CF2CO)2O)のアセトニトリル溶液を利用し、例えば、−18℃に冷却しつつ、この溶液から発生した蒸気を乾燥したペプチドに作用させて、前記パーフルオロアルカン酸無水物により促進される、C末端アミノ酸の選択的な分解を行わせる方法が提案されている(Tsugita, A. et al., Chem. Lett. 1992, 235−238; Takamoto K. et al., Eur. J. Biochem. 228, 362−372 (1995))。
【0005】
前記の乾燥したペプチドに、蒸気として供給されるパーフルオロアルカン酸、あるいは、パーフルオロアルカン酸無水物を作用させ、C末端アミノ酸の選択的な分解を行う手法では、下記する反応式(I)で表記される脱水反応:
【0006】
【化3】
Figure 0004102581
【0007】
により、C末端アミノ酸から反応中間体として、オキサゾロン環構造が一端形成され、次いで、パーフルオロアルカン酸がこのオキサゾロン環に作用し、次に示す反応式(II)で表記される反応:
【0008】
【化4】
Figure 0004102581
【0009】
が生じ、結果的に、C末端アミノ酸の選択的な分解反応が達成されると報告されている。
【0010】
上記のC末端アミノ酸の選択的な分解反応は逐次的に進み、所定の処理時間が経過した時点で、元のペプチドに対して、1〜10数アミノ酸残基がそのC末端からそれぞれ除去された一連の反応産物を含む混合物が得られる。この一連の反応産物を含む混合物に対して、質量分析法を適用して、各反応産物に由来するイオン種の質量を測定すると、C末端アミノ酸配列を反映した質量差を示す一連のピークが測定できる。具体的には、各反応産物は、元のペプチドから逐次的なC末端アミノ酸分解反応で生成される結果、例えば、元のペプチドから数アミノ酸残基が除去された反応産物までの、数種の一連の反応産物群に関して、質量分析法を利用することで、対応するイオン種の質量を一括して分析することができ、かかる数アミノ酸残基分のC末端アミノ酸配列を一括して決定できる。
【0011】
なお、例えば、核酸プローブやプライマーの作製に利用するC末端アミノ酸配列の情報は、通常、かかるアミノ酸配列をコードする塩基配列として、18塩基長〜24塩基長程度、従って、6アミノ酸〜8アミノ酸程度であってもよく、10数アミノ酸残基に達するC末端アミノ酸配列の解明を必要とするのは、極めて特殊な場合のみである。従って、上記のパーフルオロアルカン酸またはパーフルオロアルカン酸無水物の蒸気を気相から供給しつつ、乾燥したペプチドに作用させて、逐次的なC末端アミノ酸分解反応により、例えば、10アミノ酸残基の除去に達する一連の反応産物を同時に含有する処理試料を調製するこれらの手段は、前記の用途に適合したものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
これらパーフルオロアルカン酸またはパーフルオロアルカン酸無水物の蒸気を気相から供給しつつ、乾燥したペプチドに作用させる手法は、有用なC末端アミノ酸配列の解明手段ではあるものの、汎用の手段として利用を進める際、以下に記載する実用上の課題を残すことが判明した。
【0013】
上述するパーフルオロアルカン酸高濃度水溶液を利用し、例えば、90℃に加熱しつつ、乾燥したペプチドにパーフルオロアルカン酸蒸気を作用させる手法では、ペプチド中のセリン残基(−NH−CH(CH2OH)−CO−)において、α位のアミノ基(−NH−)とβ位のヒドロキシ基(−OH)の間で、N,O−アシル転位反応も進行し、引き続き、加水分解が進行し、セリン残基のN末側でペプチドの切断が生じるという副反応が存在する。また、条件に依っては、β位にヒドロキシ基(−OH)が存在しているトレオニン残基(−NH−CH(CH(CH3)OH)−CO−)においても、同様の機構による加水分解が進行し、トレオニン残基のN末側でペプチドの切断が生じるという副反応が存在する。さらには、ペプチド中のアスパラギン酸残基(−NH−CH(CH2COOH)−CO−)において、C末のカルボキシ基からβ位のカルボキシ基へのペプチド結合の転位と、それに引き続く加水分解が進行し、アスパラギン酸残基のC末側でペプチドの切断が生じるという副反応が存在する。
【0014】
これら副次反応によりペプチドの切断が生じると、そのN末側ペプチド断片に対しても、C末端アミノ酸の選択的な分解が同時に進行することになる。これらの副次反応に由来する反応産物が共存すると、場合によっては、目的とする反応産物の質量分析に際して、その測定を阻害する要因ともなる。
【0015】
さらには、ペプチドの切断に至らなくとも、β位のヒドロキシ基(−OH)へN末側部分ペプチドが連結された分岐型ペプチドとなると、その部位では、アミド結合が失われており、オキサゾロン環構造の形成がなされず、C末端アミノ酸の選択的な分解反応がそれ以上進行しないものとなる。
【0016】
それに対して、上述するパーフルオロアルカン酸無水物のアセトニトリル溶液を利用し、例えば、−18℃に冷却しつつ、この溶液から発生したパーフルオロアルカン酸無水物蒸気を乾燥したペプチドに作用させる手法は、系内に溶液から蒸発する水分子を含まないので、前記の副次的反応の発生を有効に回避できる利点を有している。ただし、利用しているパーフルオロアルカン酸無水物の反応性が高く、処理温度が上昇すると、不要な副次的反応を効果的に抑制することが困難となるため、処理温度を、例えば、−18℃のような低温に維持する必要がある。換言すれば、処理温度の調整が不十分であると、不要な副反応が進行する可能性が高く、その観点では、汎用性になお難点を残し、更なる改良の余地を有する手法ともいえる。加えて、冷却に伴って水分の結露を起こすと、かかる水分により、利用している試薬の劣化、すなわち、パーフルオロアルカン酸無水物の劣化が起こり、結果として、反応性の低下を引き起こすこともあり、実用上の問題になる懸念もある。
【0017】
本発明は前記の課題を解決するもので、本発明の目的は、上述するペプチドのC末端アミノ酸を、オキサゾロン環構造の形成を経由する反応機構を利用して、逐次的に分解する際、ペプチド途中におけるペプチド結合の断裂などの好ましくない副次反応を抑制でき、同時にかかる化学的な処理自体は、汎用性の富む条件で実施することが可能な、逐次的C末端アミノ酸の分解反応手段を提供することにある。より具体的には、本発明の目的は、C末端アミノ酸を逐次的に分解する際、ペプチド途中における切断などの副次反応を回避し、かつ、かかる化学的な処理自体は、加熱や冷却を伴う高い温度制御性を必要としない、室温近傍の穏和な条件で実施できる新規な逐次的C末端アミノ酸の分解反応手段を利用する、ペプチドC末端アミノ酸配列の解析方法を提供することにある。さらには、本発明の最終的な目的は、かかるペプチドC末端アミノ酸配列の解析方法の汎用化を図ることにあり、より具体的には、かかる解析方法に専ら利用される、新規な逐次的C末端アミノ酸の分解反応手法に従った、逐次的C末端アミノ酸の分解用処理キットを提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討と研究を繰り返したところ、パーフルオロアルカン酸高濃度水溶液を利用し、例えば、90℃に加熱しつつ、乾燥したペプチドにパーフルオロアルカン酸蒸気を作用させる手法における不要な副次的反応は、系内にパーフルオロアルカン酸高濃度水溶液から蒸発する、パーフルオロアルカン酸と水分子が存在するため、例えば、ペプチド中のセリン残基(−NH−CH(CH2OH)−CO−)において、α位のアミノ基(−NH−)とβ位のヒドロキシ基(−OH)の間で、N,O−アシル転位反応が前記加熱条件下で促進を受け、さらに、生成するエステルの加水分解も系内に存在する水分子により促進を受ける結果と結論された。一方、パーフルオロアルカン酸無水物のアセトニトリル溶液を利用し、例えば、−18℃に冷却しつつ、乾燥したペプチドにパーフルオロアルカン酸無水物蒸気を作用させる手法では、系内に水分子は存在しないものの、パーフルオロアルカン酸無水物自体の高い反応性に起因して、処理温度の上昇とともに、不要な副次的反応の頻度が急速に増すことが確認されている。
【0019】
以上の知見に基づき、本発明者らは、系内への水分子の供給源となる水溶媒を使用することなく、また、パーフルオロアルカン酸無水物の如く、高い反応性を示す試薬を使用することなく、C末端アミノ酸から反応中間体として、オキサゾロン環構造を形成し、引き続き、このオキサゾロン環の開裂に伴う、C末端アミノ酸の選択的な分解反応を行うことが可能な反応条件を探索したところ、少量のパーフルオロアルカン酸をアルカン酸無水物に添加した混合物を利用して、この混合物から供給される、蒸気状のパーフルオロアルカン酸とアルカン酸無水物とを乾燥したペプチドに作用させると、例えば、60℃以下の処理温度においても、オキサゾロン環構造の形成、引き続き、このオキサゾロン環の開裂に伴う、C末端アミノ酸の選択的な分解反応が進行することを見出した。加えて、アルカン酸無水物は、パーフルオロアルカン酸無水物と比較し、その反応性は大幅に穏やかであり、パーフルオロアルカン酸共存下においても、ペプチドの途中切断を引き起こすには至らないことをも見出した。具体的には、ペプチド中のセリン残基(−NH−CH(CH2OH)−CO−)やトレオニン残基(−NH−CH(CH(CH3)OH)−CO−)に存在するヒドロキシ基に対して、パーフルオロアルカン酸の共存下、アルカン酸無水物が作用して、O−アシル化反応が優先的に進行し、N,O−アシル転位反応を競争的に阻害する。同時に、N末端のアミノ基へのN−アシル化反応が進行し、また、リシン残基(−NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH2)−CO−)のε位のアミノ基へのN−アシル化反応、チロシン残基(−NH−CH(CH2−C64−OH)−CO−)のフェノール性ヒドロキシ基へのO−アシル化反応なども進行することも判明した。結果的に、ペプチドの途中切断を誘起する、N,O−アシル転位反応等の転位反応に関与する側鎖上のヒドロキシ基、アミノ基などの反応性官能基は、保護・修飾を受けるため、不要な副次反応は回避しつつ、目的とするC末端アミノ酸から反応中間体として、オキサゾロン環構造を形成し、引き続き、このオキサゾロン環の開裂に伴う、C末端アミノ酸の分解反応のみが、例えば、60℃以下の処理温度において選択的に進行することを見出した。すなわち、本発明者らは、以上の知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明にかかるペプチドのC末端アミノ酸配列解析方法は、
解析対象とするペプチドのC末端アミノ酸配列を解析する方法であって、
対象とするペプチドより、化学的手段によりC末端アミノ酸を逐次的に分解して得られる一連の反応生成物を含む混合物を調製する工程と、
前記一連の反応生成物と、元となるペプチドとを、質量分析法により分析し、かかるC末端アミノ酸の逐次的分解に伴う分子量減少を測定する工程と、
測定された一連の分子量減少量に基づき、逐次的分解された一連のアミノ酸を特定し、C末端より配列させて、C末端のアミノ酸配列情報を得る工程とを具え、
前記C末端アミノ酸を逐次的に分解する工程における処理方法は、
対象とするペプチドの乾燥試料に対して、乾燥雰囲気下、15℃〜60℃の範囲に選択される温度において、
アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物より供給される、蒸気状のアルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とを作用させ、
ペプチドのC末端において、下記する一般式(III):
【0021】
【化5】
Figure 0004102581
【0022】
(式中、
R1は、ペプチドのC末端アミノ酸の側鎖を表し、
R2は、前記C末端アミノ酸の直前に位置するアミノ酸残基の側鎖を表す)で表記される5−オキサゾロン構造を経て、該5−オキサゾロン環の開裂に伴いC末端アミノ酸の分解を行う方法であることを特徴とする方法である。
【0023】
なお、前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物に含まれるアルカン酸無水物として、炭素数2〜4のアルカン酸の対称型酸無水物を用いることが好ましい。なかでも、前記対称型酸無水物として、炭素数2〜4の直鎖アルカン酸の対称型酸無水物を用いることがより好ましく、特には、無水酢酸が好適に利用できる。一方、前記パーフルオロアルカン酸として、当該パーフルオロアルカン酸の示すpKaは、0.3〜2.5の範囲であるパーフルオロアルカン酸を用いることが好ましい。例えば、前記パーフルオロアルカン酸として、炭素数2〜4のパーフルオロアルカン酸を好適に利用することができ、なかでも、炭素数2〜4の直鎖パーフルオロアルカン酸がより好適である。前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物中における、パーフルオロアルカン酸の含有比率は、アルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸との合計体積に対して、1〜20体積%の範囲に選択することが望ましい。
【0024】
前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物を利用する処理に際して、前記乾燥雰囲気は、水分に加えて、酸素も除去された状態であることが好ましい。特には、前記乾燥雰囲気は、気密容器内において、その内部の大気を真空排気することで、達成されていることがより好ましい。加えて、前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物を利用する処理に際して、その温度は、15℃〜50℃の範囲に選択される温度とすることがより好ましい。
【0025】
本発明の解析方法においては、
前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物を利用する処理の工程に加え、
前記C末端アミノ酸を逐次的に分解する工程で得られる一連の反応生成物を含む混合物に対して、
残余する前記アルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とを乾燥状態において除去する後処理を施し、
次いで、塩基性含窒素芳香環化合物または第三アミン化合物を溶解する水溶液を利用し、蒸気状の塩基性含窒素芳香環化合物または第三アミン化合物と水分子を供給して、
前記塩基性の窒素含有有機化合物の共存下、前記反応生成物ペプチドに水分子を作用させ、
前記の加水処理を施した後、かかる一連の反応生成物を含む混合物に残余する、前記塩基性の窒素含有有機化合物と水分子を除去、乾燥する再乾燥後処理を行うことからなる付加的な加水処理の工程を設けることもできる。
【0026】
更には、本発明の解析方法においては、
前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物を利用する処理の工程に加え、
かかるC末端アミノ酸を逐次的に分解する工程に先立って、
対象とするペプチドのN末端のアミノ基に、予め、前記アルカン酸無水物を構成するアルカン酸に由来するアシル基によるN−アシル化保護を施す前処理工程を設けることもできる。
【0027】
該N末端のアミノ基にN−アシル化保護を施す前処理工程は、
対象とする前記ペプチドの乾燥試料に対して、乾燥雰囲気下、10℃〜60℃の範囲に選択される温度において、
アルカン酸無水物にアルカン酸を少量添加してなる混合物より供給される、蒸気状のアルカン酸無水物とアルカン酸とを作用させ、
該ペプチドのアミノ基に対して、N−アシル化を行う方法を採用することができる。その際、該N末端に対するN−アシル化保護を施す前処理工程で利用する前記アルカン酸無水物と、その後に実施する前記C末端アミノ酸を逐次的に分解する工程で利用する前記アルカン酸無水物とに、同じアルカン酸無水物を用いることができる。
【0028】
また、本発明は、上述の本発明にかかるペプチドのC末端アミノ酸配列解析方法における、最も特徴的な工程に相当する、対象とするペプチドより、化学的手段によりC末端アミノ酸を逐次的に分解して得られる一連の反応生成物を含む混合物を調製する方法の発明をも提供しており、すなわち、本発明のペプチドより、化学的手段によりC末端アミノ酸を逐次的に分解して得られる一連の反応生成物を含む混合物を調製する方法は、
化学的手段により、対象とするペプチドからC末端アミノ酸を逐次的に分解して得られる一連の反応生成物を含む混合物を調製する方法であって、
対象とするペプチドの乾燥試料に対して、乾燥雰囲気下、15℃〜60℃の範囲に選択される温度において、
アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物より供給される、蒸気状のアルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とを作用させ、
ペプチドのC末端において、下記する一般式(III):
【0029】
【化6】
Figure 0004102581
【0030】
(式中、
R1は、ペプチドのC末端アミノ酸の側鎖を表し、
R2は、前記C末端アミノ酸の直前に位置するアミノ酸残基の側鎖を表す)で表記される5−オキサゾロン構造を経て、該5−オキサゾロン環の開裂に伴いC末端アミノ酸の分解を行うことを特徴とする方法である。
【0031】
加えて、本発明は、前記の本発明にかかるC末端アミノ酸を逐次的に分解する処理方法に専ら使用される処理用キットの発明をも提供し、すなわち、本発明のC末端アミノ酸を逐次的に分解する処理用キットは、
化学的手段により、対象とするペプチドからC末端アミノ酸を逐次的に分解する反応処理用のキットであって、
少なくとも、C末端アミノ酸を逐次的に分解する反応用の液状試薬として、アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物、または、該混合物の調製用に組み合わされた、アルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とを個別に含み、
処理する対象とするペプチド試料を保持する試料容器と、
前記反応用の液状試薬を収納でき、前記試料容器中に保持されるペプチド試料に対して、前記反応用の液状試薬が直接接触しない状態を維持可能な液状試薬の保持機構を具え、前記試料容器をその内部に収納可能な反応容器とを、前記反応用の液状試薬と組み合わせて構成されるキットであることを特徴とするキットである。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をより詳しく説明する。
【0033】
本発明にかかるペプチドのC末端アミノ酸配列解析方法は、基本的には、解析対象のペプチドに対して、そのペプチドのC末端アミノ酸を逐次的に分解除去して、ペプチドが短縮された一連の反応産物を作製し、この一連の反応産物の分子量と、元となるペプチドの分子量との差異に基づき、除去されたアミノ酸を特定する手法を採用している。より具体的には、この一連の反応産物の分子量と、元となるペプチドの分子量の測定手段として、質量分析法を利用するが、そのイオン化過程で、ペプチドを構成するアミノ酸残基から、一部に原子団の欠落を生じない条件での測定により適する、Time−of−Flight型質量分析装置、例えば、MALDI−TOF−MS装置などを利用することが好ましい。
【0034】
一方、本発明にかかる解析方法における最大の特徴は、ペプチドのC末端アミノ酸を逐次的に分解除去する工程において、
対象とするペプチドの乾燥試料に対して、乾燥雰囲気下、15℃〜60℃の範囲に選択される温度において、
アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物より供給される、蒸気状のアルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とを作用させ、
ペプチドのC末端において、下記する一般式(III):
【0035】
【化7】
Figure 0004102581
【0036】
(式中、
R1は、ペプチドのC末端アミノ酸の側鎖を表し、
R2は、前記C末端アミノ酸の直前に位置するアミノ酸残基の側鎖を表す)で表記される5−オキサゾロン構造を経て、該5−オキサゾロン環の開裂に伴いC末端アミノ酸の分解を行う方法を利用する点にある。
【0037】
かかる5−オキサゾロン環形成の反応は、全体として見ると、反応式(I):
【0038】
【化8】
Figure 0004102581
【0039】
として表記されるものの、本発明にかかるC末端アミノ酸の選択的な分解方法では、乾燥雰囲気下、15℃〜60℃の範囲に選択される温度において、アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物より供給される、蒸気状のアルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とを作用させることで、先ず、下記する反応式(Ia):
【0040】
【化9】
Figure 0004102581
【0041】
で示されるケト−エノール互換異性化の過程を、蒸気状のパーフルオロアルカン酸を乾燥したペプチドに対して、プロトン供与体として機能させることで、エノール型をとる比率を高めている。
【0042】
次いで、エノール型において、表出されているヒドロキシ基とC末端カルボキシ基の間で、分子内エステル結合を形成し、5−オキサゾロン環を完成させる。その際、従来の方法においては、パーフルオロアルカン酸の高濃度水溶液から、例えば、90℃に加熱することで生じる蒸気状のパーフルオロアルカン酸と水分子が共存している状態で、分子内エステル結合を形成している。恐らくは、蒸気状のパーフルオロアルカン酸は、このエステル化反応においても、プロトン・ドナーとして作用し、酸触媒下におけるエステル化反応を誘起していると推定される。しかし、かかる反応を、溶媒の存在しない固相で実施するため、反応温度を高く設定している。一方、本発明にかかるC末端アミノ酸の選択的な分解方法では、C末端カルボキシ基の活性化を行い試薬として、アルカン酸無水物を利用し、例えば、下記の反応式(Ib):
【0043】
【化10】
Figure 0004102581
【0044】
で例示されるような、非対称型酸無水物へと変換し、活性化されたC末端カルボキシ基が反応に関与するものとしている。その結果、かかる反応は、穏和な温度条件で進行でき、反応温度を15℃〜60℃の範囲に選択することが可能となっている。なお、かかる反応温度は、室温付近、あるいは、室温より僅かに高い範囲内に選択することが好ましく、より具体的には、15℃〜50℃の範囲に選択することがより好ましい。
【0045】
一方、本発明にかかるC末端アミノ酸の選択的な分解方法において、利用されるパーフルオロアルカン酸は、そのプロトン供与能を利用するものであり、該パーフルオロアルカン酸の示すpKaは、0.3〜2.5の範囲であるパーフルオロアルカン酸を用いることが好ましい。加えて、このパーフルオロアルカン酸は、蒸気状態として、乾燥ペプチド試料へ供給する必要があり、15℃〜60℃の範囲に選択する前記温度において、所望の蒸気圧を得られる揮発性に優れたパーフルオロアルカン酸であることが望ましい。その観点からも、炭素数2〜4のパーフルオロアルカン酸は、より適するものであり、さらには、直鎖状の炭素数2〜4のパーフルオロアルカン酸が、より適するものであり、具体的には、トリフルオロ酢酸(CF3COOH)、ペンタフルオロプロパン酸(CF3CF2COOH)、ヘプタフルオロブタン酸(CF3CF2COOH)を利用することがより望ましい。
【0046】
また、上記する活性化試薬として利用される、アルカン酸無水物は、反応に従って、消費されるため、蒸気状態として供給するアルカン酸無水物の蒸気圧を所定の範囲に維持しつつ反応を行うことが望ましい。例えば、その手段としては、反応を行う系を気密状態とし、系内に存在するアルカン酸無水物の蒸気圧を安定化する方法が挙げられる。より具体的には、気密状態とできる反応容器内に、アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加した液状混合物を入れ、この液状混合物を一旦冷却して、蒸気圧を低下した状態で、反応容器内を排気し、密閉して、反応温度まで昇温し、容器内にアルカン酸無水物を蒸発させる手法が挙げられる。かかる手順を採用すると、反応容器内への水分の混入を防止できる利点もある。加えて、反応系内に酸素が残留しないように、真空排気を行うと、例えば、対象とするペプチドを構成するアミノ酸残基のうち、メチオニンに存在するイオウが、酸素により酸化を受け、その式量が変化することを防止でき、分子量の測定を基礎とする本発明の方法においては、かかる酸化を抑制することは、より高い確度を達成する上で、より好ましいものとなる。
【0047】
なお、対象とするペプチドが、例えば、隣接するペプチドのシステインとの間で、酸化型の−S−S−結合を形成する、あるいは、同一分子内で−S−S−結合を形成しているシステインを含む場合には、予め常用の還元処理を施し、かかる架橋を解消し、還元型のシステインを含むペプチドに変換する。また、ペプチド中に存在する還元型のシステインに対しては、その側鎖のスルファニル基(−SH)にカルボキシメチル化やピリジルエチル化などを施し、予めその保護を行う。
【0048】
利用されるアルカン酸無水物は、反応温度まで昇温した際、適正な蒸気圧を生じる限り、種々のものが利用可能である。一方、反応温度を前記する好適な範囲、例えば、15℃〜50℃の範囲に選択する際に、十分な蒸気圧を与えるものが好ましく、従って、炭素数2〜4のアルカン酸の対称型酸無水物を用いることが好ましい。なかでも、前記対称型酸無水物として、炭素数2〜4の直鎖アルカン酸の対称型酸無水物を用いることがより好ましく、特には、炭素数2の直鎖アルカン酸の対称型酸無水物、すなわち、無水酢酸が好適に利用できる。かかるアルカン酸無水物は、C末端カルボキシ基の活性化に利用されるため、その際、立体障害を生じることの少ないものが好ましく、その点でも、前記例示の無水酢酸などがより好適である。
【0049】
この分解反応に利用される、アルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とは、ともに蒸気状として、乾燥ペプチド試料に対して作用させ、一旦形成された5−オキサゾロン環が、系外から進入した水分により、加水されて、元に戻ることを回避するため、反応は乾燥雰囲気下で行う。その観点から、一般に、密閉された反応容器内でかかる反応を行うことが望ましい。なお、反応容器内に当初供給される、アルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸との混合物は、室温では液状混合物とし、アルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とが均一に混合された状態とする。このアルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物は、触媒として利用するパーフルオロアルカン酸は、反応の間、原則的に消費されないので、少量とすることができる。より具体的には、気相中に蒸気として存在するパーフルオロアルカン酸は、同じく、蒸気として存在するアルカン酸無水物と対比して、相対的に低い濃度とすることができることを意味する。逆には、利用するアルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸の種類によって、例えば、反応温度における、その飽和蒸気圧に応じて、目的とする気相中の分圧比(気相濃度比)を達成できる混合比率の液状混合物を適宜利用する。例えば、前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物中における、パーフルオロアルカン酸の含有比率は、アルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸との合計体積に対して、1〜20体積%の範囲、より好ましくは、3〜10体積%の範囲に選択することが望ましい。
【0050】
また、本発明にかかるC末端アミノ酸の選択的な分解方法においては、一旦形成された5−オキサゾロン環から、例えば、反応式(II’)で表記される反応:
【0051】
【化11】
Figure 0004102581
【0052】
等の反応を経て、C末端のアミノ酸の離脱と、次段の反応中間体の形成を進行して、逐次的なC末端アミノ酸の選択的な分解が進むと推断される。従って、かかる反応を終えた後、得られる反応産物は、上述する反応式(II)に示される、C末端にカルボキシ基が表出されているもの以外に、中間産物である5−オキサゾロン環構造に留まるもの、あるいは、反応中間体の一形態として、C末端が非対称型酸無水物に至ったものも混入したものとなる。
【0053】
かかる逐次的なC末端アミノ酸の選択的な分解処理工程における反応は、少なくとも、反応式(Ib)で例示される5−オキサゾロン環構造の形成過程と、反応式(II’)で例示される5−オキサゾロン環構造の開裂による末端アミノ酸の分離過程との二段階の素反応から構成される。そのため、全体の反応速度は、これら各過程の反応速度の双方に依存するものの、主に、利用するアルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸の蒸気分圧(気相濃度)ならびに反応温度に依存している。加えて、一連の反応産物は、逐次的な反応で形成されるため、得られる一連の反応産物において達成される、短縮されるC末端アミノ酸配列の最大長は、処理時間が長くなるとともに、延長される。従って、かかる逐次的なC末端アミノ酸の選択的な分解処理工程における処理時間は、主に、利用するアルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸の蒸気分圧(気相濃度)ならびに反応温度に応じて、また、解析すべきC末端アミノ酸配列の目標とするアミノ酸長をも考慮して、適宜選択するものである。
【0054】
また、逐次的なC末端アミノ酸の選択的な分解処理工程において生成される、上記反応式(II’)に例示されるC末端にカルボキシ基が表出されていない反応中間体の形態をとるものをも、C末端にカルボキシ基が表出されている形態に復する目的で、付加的な加水処理を設けることができる。すなわち、本発明にかかるC末端アミノ酸の選択的な分解方法においては、
前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物を利用する処理の工程に加え、
前記C末端アミノ酸を逐次的に分解する工程で得られる一連の反応生成物を含む混合物に対して、
残余する前記アルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とを乾燥状態において除去する後処理を施し、
次いで、塩基性含窒素芳香環化合物または第三アミン化合物を溶解する水溶液を利用し、蒸気状の塩基性含窒素芳香環化合物または第三アミン化合物と水分子を供給して、
前記塩基性の窒素含有有機化合物の共存下、前記反応生成物ペプチドに水分子を作用させ、
前記の加水処理を施した後、かかる一連の反応生成物を含む混合物に残余する、前記塩基性の窒素含有有機化合物と水分子を除去、乾燥する再乾燥後処理を行うことからなる付加的な加水処理の工程を設けることが好ましい。この後処理を施すことで、反応産物は、C末端にカルボキシ基は表出した形態となり、かかる形態が、その後、質量分析法により分析した際、主要なピークを与えるものとなり、ピーク強度をも参考として、一連の反応産物に対応する分子量を示すピークの特定作業をより容易とすることができる。
【0055】
かかる加水処理に利用する、蒸気状の塩基性含窒素芳香環化合物または第三アミン化合物は、例えば、残留しているC末端が非対称型酸無水物に至ったものと反応して、アミド結合を形成することがなく、また、水溶液とした際、均一な溶液とできるので、好ましいものである。利用可能な、塩基性含窒素芳香環化合物としては、適用な蒸気圧を与えることができる、単環式の含窒素芳香環化合物が好ましく、例えば、ピリジンはより好適に利用できる。また、利用可能な第三アミン化合物は、前記ピリジン塩基が示す比較的に弱い塩基性と同程度の塩基性を有するものが好ましく、例えば、DMAE((CH32N−CH2CH2OH)などが好適に利用できる。例えば、ピリジンを利用する際には、水溶液全体の体積に対して、ピリジンを、5〜15体積%の範囲、より具体的には、10体積%に選択することが好ましい。また、(ジメチルアミノ)エタノール(DMAE)を利用する際には、水溶液全体の体積に対して、DMAEを、1〜20体積%の範囲、より具体的には、10体積%に選択することが好ましい。
【0056】
これら単環式の含窒素芳香環化合物や第三アミン化合物は、水分子とともに、蒸気として、上記反応産物を含む乾燥混合試料に作用させる。この後処理も、一般に、密閉された反応容器内でかかる反応を行うことが望ましい。また、かかる後処理では、水分子を利用するため、その蒸気圧を一定以上とすることが必要となるので、例えば、60℃以上の温度、但し、反応容器内の機械的強度を考慮すると、100℃以下の範囲に選択することは望ましい。速やかに、加水処理を完了するためには、100℃または、それより若干低い温度を選択することが望ましい。
【0057】
さらには、本発明にかかるC末端アミノ酸の選択的な分解方法においては、前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物を利用する処理の工程に加え、
かかるC末端アミノ酸を逐次的に分解する工程に先立って、
対象とするペプチドのN末端のアミノ基に、予め、前記アルカン酸無水物を構成するアルカン酸に由来するアシル基によるN−アシル化保護を施す前処理工程を設けることもできる。具体的には、前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物を利用する処理の過程で、ペプチドのC末端カルボキシ基の活性化がなされる反応中間体が形成されると推察される。この反応中間体が、隣接するペプチドのN末端のアミノ基と反応し、アミド結合を形成すると、目的とするペプチドの短縮された反応産物が得られないことになる。反応自体は、固相で実施するため、かかる偶発的な副次反応の頻度は高くないものの、予め、N−アシル化保護を施すことがより望ましい。
【0058】
加えて、前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物を利用する処理の間に、ペプチドのN末端のアミノ基に対して、前記アルカン酸無水物によって、N−アシル化が通常起こるため、系内において、N−アシル化保護がなされるものの、予め、N−アシル化保護を目的とする前処理を施す方がより望ましい。
【0059】
このN末端のアミノ基にN−アシル化保護を施す前処理工程は、
対象とするペプチドの乾燥試料に対して、乾燥雰囲気下、10℃〜60℃の範囲に選択される温度において、
アルカン酸無水物にアルカン酸を少量添加してなる混合物より供給される、蒸気状のアルカン酸無水物とアルカン酸とを作用させ、
該ペプチドのアミノ基に対して、N−アシル化を行う方法を採用することができる。その際、該N末端に対するN−アシル化保護を施す前処理工程で利用する前記アルカン酸無水物と、その後に実施する前記C末端アミノ酸を逐次的に分解する工程で利用する前記アルカン酸無水物とに、同じアルカン酸無水物を用いることが好ましい。具体的には、かかるN末端のアミノ基にN−アシル化保護を施す前処理反応も、アルカン酸無水物とアルカン酸とを蒸気として、ペプチドの乾燥試料に供給して、反応を進めるため、適正な蒸気圧を得る上では、その後に実施する前記C末端アミノ酸を逐次的に分解する工程で利用する前記アルカン酸無水物とに、同じアルカン酸無水物は好適に利用できる。加えて、このアルカン酸無水物は、乾燥雰囲気下、10℃〜60℃の範囲に選択される温度では、ペプチドの切断等の不要な副次反応を引き起こすには、その反応性は十分に低いので、かかる前処理においては、共存させるアルカン酸は、パーフルオロアルカン酸と比較して、その酸触媒作用は格段に劣るので、さらに、不要な副次反応を引き起こすことなく、N末端のアミノ基にN−アシル化保護を施すことが可能となる。
【0060】
加えて、ペプチドのN末端のアミノ基をN−アシル化保護する際には、ペプチド中に存在するリシン残基側鎖のアミノ基に対しても、N−アシル化保護が同時に進行する。さらには、ペプチド中に存在するセリン残基ならびにトレオニン残基側鎖のヒドロキシ基においてもO−アシル化反応が進み、その保護がなされる。その他、ペプチド中に存在するチロシン残基側鎖のフェノール性ヒドロキシ基も、その反応性は相違するものの、部分的にO−アシル化がなされる。これらの複数のアシル化保護もなされる前処理工程を設ける結果として、リシン残基側鎖のアミノ基、セリン残基ならびにトレオニン残基側鎖のヒドロキシ基は、何れも保護修飾を受けたものとなり、最早不要な副次反応に関与できないものとなる。その観点からも、かかるペプチドのN末端のアミノ基をN−アシル化保護する前処理工程をも実施することが、通常好ましい。
【0061】
なお、この前処理工程で使用する、アルカン酸無水物とアルカン酸との組み合わせは、不要な副次反応、例えば、ペプチドの途中での切断を生じる懸念はほとんどないものであるが、その反応温度は、10℃〜60℃の範囲に選択される温度、より好ましくは、かかる反応温度は、室温付近、あるいは、室温より僅かに高い範囲内に選択することが好ましく、より具体的には、15℃〜50℃の範囲に選択することが好ましい。また、前記アルカン酸無水物にアルカン酸を少量添加してなる混合物中における、アルカン酸の添加比率は、アルカン酸無水物とアルカン酸との合計した体積に対して、2〜10体積%の範囲、具体的には、5体積%に選択することが好ましい。
【0062】
その他、かかる前処理工程における反応手順は、上で説明したC末端アミノ酸の選択的な分解工程における操作の手順に準じて実施することが好ましい。すなわち、上で説明したC末端アミノ酸の選択的な分解工程における操作の手順、条件として、好適なものは、かかる前処理工程における反応工程においても、同様に好適なものである。なお、この前処理工程におけるN−アシル化反応の反応速度は、利用されるアルカン酸無水物とアルカン酸の分圧(気相濃度)ならびに反応温度に依存するため、かかる前処理工程の反応時間は、主に反応温度に応じて、適宜選択することが望ましい。例えば、反応温度を50℃に選択する際には、反応時間を1時間以内、例えば、30分間に選択することで、ペプチドのN末端アミノ基に対するN−アシル化を完了することも可能である。その際、アルカン酸無水物とアルカン酸とによるアシル化反応を促進する目的で、触媒量のピリジン、例えば、アルカン酸無水物とアルカン酸の合計に対して、0.1〜1.0体積%のピリジンを添加することがより好ましい。かかるピリジン塩基はプロトン受容体として機能するため、例えば、アミノ基へのアシル化に伴い離脱すべきプロトンの除去がより速やかになされる。
【0063】
例えば、本発明にかかるC末端アミノ酸の選択的な分解方法を、前処理工程、C末端アミノ酸の選択的な分解反応工程、後処理工程を全て備えた形態で実施することが、一層好ましいものである。かかる工程のフローの一例を、図1に例示する。各工程を終えた段階で、ペプチド試料に、その工程で利用した試薬の残留を回避するため、それぞれ、ドライ・アップ操作を設けている。このドライ・アップ操作は、減圧留去でなされるのが一般的であり、その際、反応により派生する分解された末端アミノ酸等の除去を同時に実施できる場合もある。図1に例示する工程フローでは、利用するアルカン酸無水物として、極めて高い純度のものが容易に入手可能な無水酢酸を利用する事例を示している。
【0064】
一方、図1に例示する工程フローでは、C末端アミノ酸の選択的な分解反応工程における処理時間は、かかる工程中に短縮されるC末端アミノ酸配列のアミノ酸長として、最長の場合、10数アミノ酸長、最小では、3アミノ酸長を目標とする際、利用する無水酢酸とフルオロアルカン酸の比率、ならびに処理温度に応じて、選択される処理時間の範囲を例示している。一般に、フルオロアルカン酸の比率を増し、かつ処理温度をより高く設定すると、反応速度は増し、より短い処理時間で、目標とする最長のアミノ酸配列短縮量を達成した一連の反応産物の調製が可能となる。
【0065】
また、前処理工程においては、蒸気状の無水酢酸と酢酸を利用して、ペプチドのN末端のアミノ基へのN−アセチル化を実施しているが、この無水酢酸と酢酸の組み合わせにおいても、場合によっては、極僅かでであるが、上記反応式(Ia)で表記されるC末端カルボキシ基の活性化反応、それに起因する副次反応が誘起されることが懸念される。この副次的な反応を抑制する目的で、少量のピリジン蒸気を共存させ、ペプチドのC末端カルボキシ基に対して、ピリジン塩基が弱い付加塩を形成させることで、不要な副次反応に対する保護効果を持たせることが可能である。この付加塩型の保護は、かかる前処理工程を終える際、ドライ・アップ操作を設けて、減圧下、ピリジン塩基の留去を行うことで、簡便に脱保護され、次段のC末端アミノ酸の選択的な分解反応工程において、問題を生じることはない。これらの観点から、この付加塩型の保護には、ピリジン塩基など、減圧下に簡単に留去可能で、塩基性も弱い、含窒素複素芳香環化合物を少量添加することが好ましい。また、この付加塩型の保護は、アミノ酸側鎖のカルボキシ基に対する保護機能を有するため、アミノ酸側鎖のカルボキシ基に起因する、不要な副次反応をも同時に効果的に抑制することが可能となる。
【0066】
本発明にかかるペプチドのC末端アミノ酸配列解析方法では、上記のC末端アミノ酸の逐次的な除去により調製される一連の反応産物の分子量と、元のペプチドの分子量を、質量分析法による測定結果を利用して決定し、その分子量差に相当するアミノ酸を特定する。従って、通常、かかる質量分析法による測定に供する混合物中に、元のペプチドも、その分子量の特定が可能な程度残存する状態とすることが望ましい。
【0067】
具体的には、本発明にかかるペプチドのC末端アミノ酸配列解析方法は、C末端アミノ酸配列として、最大10数アミノ酸長程度までの解析に適用するが、その際、対応する最大10数種に及ぶ一連の反応産物の含有比率は、その最小の含有比率のものは、最大含有比率のものの、少なくとも、1/10程度を下回らない状態とすることが望ましい。また、元のペプチドの残存量も、最大含有比率の反応産物に対して、少なくとも、1/10程度を下回らない状態とすることが望ましい。一方、必要とするC末端アミノ酸配列情報は、10アミノ酸以内となることが多く、10アミノ酸程度の分解が進む程度に処理時間を選択すると、前記の含有比率に関する条件を満足することができる。
【0068】
一方、分子量の測定に、質量分析法を利用するが、そのイオン化過程で、ペプチドを構成するアミノ酸残基から、一部に原子団の欠落を生じる、フラグメンテーションを抑制した条件でイオン化手段を具えた質量分析装置を利用する測定がより適している。また、ペプチドなどは高分子量であり、かかる高い分子量の測定に適する、Time−of−Flight型質量分析装置、例えば、MALDI−TOF−MS装置などを利用することが好ましい。但し、これらの質量分析装置を利用しても、有効にイオン化を達成できる分子量には、自ずから上限があり、測定可能なペプチドのアミノ酸長の最大は、20〜30アミノ酸を超えないことが望ましい。加えて、分子量差に基づき、対応するアミノ酸の特定を行うので、例えば、AsnとAsp、GlnとGluの如く、式量の差異が1のアミノ酸残基相互の区別を高い精度で行う上では、基準となる、最長のペプチド、すなわち、C末端アミノ酸の除去がなされていないペプチドの分子量は、3000を超えない範囲、より好ましくは、2000を超えない範囲であることがより好ましい。これをアミノ酸長に換算すると、長くとも、30アミノ酸、より好ましくは、20アミノ酸を超えない範囲とすることが好ましい。
【0069】
本発明にかかるペプチドのC末端アミノ酸配列解析方法を、前記のアミノ酸長を遥かに超えるタンパク質などのペプチドへ適用する際には、質量分析の実施に先立ち、例えば、切断アミノ酸配列部位の特異性を有するプロテアーゼなどを利用して、ペプチドの特異的な分断処理を行い、C末端ペプチド断片として、上記のアミノ酸長範囲とすることが望ましい。すなわち、元となるペプチド、ならびに、調製された一連の反応産物に対して、同じ部位特異的な分断処理を施すと、得られるC末端ペプチド断片は、そのN末端アミノ酸は同じであり、C末端アミノ酸部分に差異を有する一連のペプチド断片となる。その一連のペプチド断片を含む混合物を利用して、それらの分子量を質量分析法により特定することで、本発明にかかるペプチドのC末端アミノ酸配列解析方法を適用することができる。
【0070】
但し、タンパク質などの長いペプチドへ適用する際、長いペプチド中において、タンパク質フォールディングのため、システイン残基相互間で−S−S−結合を形成する場合には、予め、かかる−S−S−結合を還元し、システイン残基間の架橋を解消する必要があり、加えて、還元型のシステインに対して、カルボキシメチル化などの修飾を施し、側鎖のスルファニル基(−SH)の保護を図る。加えて、タンパク質フォールディングに伴い、α−へリックス等の二次構造を構成する部分では、アミノ酸残基のアミド結合を構成するカルボニル基(C=O)とイミノ基(−NH−)は、分子内で水素結合を形成した状態となっている。この分子内で水素結合を形成した状態を保持したままであると、本発明で利用する反応の進行を抑制することもある。その点を考慮すると、少なくとも、ペプチドのC末端部分に関しては、二次構造を構成しない状態、例えば、デフォールディング処理が施された状態とした上で、かかるペプチド試料を乾燥して、上述する化学的処理を実施することが望ましい。加えて、デフォールディング処理が施された状態とすることで、例えば、一連の化学的処理工程を終え、質量分析に先立ち、プロテアーゼなどを利用して、ペプチドの特異的な分断処理を行う必要がある場合にも、得られるC末ペプチド断片の分離が一般に容易となる利点もある。
【0071】
本発明にかかるペプチドのC末端アミノ酸配列解析方法では、分子量の差異に基づき、逐次的に除去されたアミノ酸を特定するため、同一の式量を有する、ロイシン(Leu)残基とイソロイシン(Ile)残基とを弁別することは原理的に不可能であり、この点は、従来の質量分析法を利用するC末端アミノ酸配列解析手法と同様である。また、C末端アミノ酸を除去する反応では、反応式(Ib)に例示するように、アミド結合のエノール型への変換と、それに続く、5−オキサゾロン環構造の形成が必須であり、アミド結合を構成するカルボニル基(C=O)とイミノ基(−NH−)が存在しない環状アミノ酸プロリン(Pro)がC末端アミノ酸となった時点で、それ以上の分解反応は進行しない。逆には、処理時間を延長した際、それ以上のC末端アミノ酸の除去が起きないことを確認することで、その要因となるアミノ酸残基は、環状アミノ酸プロリン(Pro)と推定することが可能である。
【0072】
本発明にかかるペプチドより化学的手段によりC末端アミノ酸を逐次的に分解して得られる一連の反応生成物を含む混合物を調製する方法は、既に説明した、本発明にかかるペプチドのC末端アミノ酸配列解析方法における、C末端アミノ酸の選択的な分解反応工程に利用される手法に相当する。従って、その好ましい実施の形態は、既に説明した通りである。なお、かかる手法は、鎖状ペプチドのC末端アミノ酸配列決定用試料の調製だけでなく、例えば、環状ペプチドに関して、そのアミノ酸配列を決定するため、かかる環状ペプチドを予め開き、鎖状ペプチド化して、そのC末端アミノ酸配列決定用試料の調製に適用することもできる。より具体的には、種々の微生物等は、生物学的活性を有する環状ペプチド型化合物を産生しており、その構造決定用の試料の調製に利用できる。
【0073】
かかる本発明にかかるペプチドより化学的手段によりC末端アミノ酸を逐次的に分解して得られる一連の反応生成物を含む混合物を調製する方法でも、例えば、ペプチド中のセリン残基(−NH−CH(CH2OH)−CO−)やトレオニン残基(−NH−CH(CH(CH3)OH)−CO−)に存在するヒドロキシ基に対して、N,O−アシル転位反応が起きて、分岐が生じると、そのエステル結合は、アミド結合と比較して、より容易に開裂を受けるものの、蒸気状態のアルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸を作用させることで、これら側鎖のヒドロキシ基に対するO−アルカノイル化が優先的に進行するため、N,O−アシル転位反応に対して、効果的に競争的な阻害が達成される。なお、後処理工程を実施する際、かかるアルコール型ヒドロキシ基に対するエステル結合は、フェノール型ヒドロキシ基に対するエステル結合と比較して、より速やかに加水分解がなされ、最終的に得られる反応産物においては、より高い選択性を持って、N末端のアミノ基に対するN−アルカノイル化、リシン残基(−NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH2)−CO−)のε位のアミノ基へのN−アルカノイル化、ならびに、場合によっては、チロシン残基(−NH−CH(CH2−C64−OH)−CO−)のフェノール性ヒドロキシ基へのO−アルカノイル化のみが残るものとなる。
【0074】
例えば、最終的に得られる反応産物において、セリン残基やトレオニン残基にアセチル化がなされたものが多数混入していると、かかる多アセチル化体と、脱アセチルがなされたものとの分子量差は、式量42の整数倍、具体的には、84、126、168は、セリン残基(−NH−CH(CH2OH)−CO−)の式量87、グルタミン残基(−NH−CH(CH2CH2−CONH2)−CO−)の式量128、グルタミン酸残基(−NH−CH(CH2CH2−COOH)−CO−)の式量129、N−アセチルリシン残基(−NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH−COCH3)−CO−)の式量170と類似しており、場合によっては、多アセチル化体を主なビークと誤認し、脱アセチルがなされたものを、前記するアミノ酸の除去がなされたものとする懸念がある。実際には、式量差が1であるグルタミン残基とグルタミン酸残基との弁別が可能な分析精度の測定がなされ、上述する残留しているアセチル基数の差と、類似する式量を示すアミノ酸残基の間では、式量差が2〜3であり、多くの場合、かかる誤認を生じる可能性は高くない。しかしながら、後処理工程を実施し、不要なアルカノイル基の残留を排除することが、より好ましいものである。
【0075】
さらには、本発明にかかるC末端アミノ酸を逐次的に分解する処理用キットは、上述する本発明にかかるペプチドより化学的手段によりC末端アミノ酸を逐次的に分解して得られる一連の反応生成物を含む混合物を調製する方法に専ら使用される、反応に利用される反応容器と、かかる反応容器に適合する反応条件で使用される試薬との組み合わせで構成されるキットである。前記、反応試薬部分は、少なくとも、C末端アミノ酸を逐次的に分解する反応用の液状試薬として、アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物、または、該混合物の調製用に組み合わされた、アルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とを個別に含むものである。加えて、上述する前処理工程、ならびに、後処理工程にも、同様の反応容器を利用できるので、これらの前処理工程ならびに後処理工程に利用される試薬をも含めて、キット化することができる。これら試薬の組成、使用量は、上述する反応条件に対応させて、選択することが該キットにおいても好適である。
【0076】
処理する対象とするペプチド試料を保持する試料容器としては、ペプチド試料を含む溶液を分注した後、乾燥処理を施した後、実際の処理に供するため、凍結乾燥処理をする際、利用されるマイクロ・バイアル型、あるいは、複数のペプチド試料の同時処理に利用される、マルチ・ウエル・プレ−ト型の形状とすることができる。
【0077】
前記反応用の液状試薬、あるいはそのコンポーネント・キットの液状試薬それぞれを収納でき、前記試料容器中に保持されるペプチド試料に対して、前記反応用の液状試薬を一定量づつ加え、しかもそれらを直接接触しない状態を維持可能な液状試薬の保持機構を具え、前記試料容器をその内部に収納可能な反応容器は、その内部を真空排気でき、また、反応終了後、残余する反応用の液状試薬を、減圧下、留去することができ、反応時には、気密構造とできる形態とすることが好ましい。また、かかる反応容器内で、試薬の蒸気を発生する際、容器壁と反応を生じることのない材質とすることが必要である。従って、化学反応の反応容器に利用されるガラス材料を利用したものが好適である。また、密閉操作に利用されるコック類は、テフロンなどの材質のものが好適に利用される。
【0078】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、かかる実施例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はかかる具体例の形態により限定を受けるものではない。
【0079】
(実施例1)
本発明にかかるペプチドのC末端アミノ酸配列解析方法の有効性を検証する目的で、10アミノ酸からなるペプチド、ヒト・アンジオテンシン Iについて、そのC末端アミノ酸配列の解析を行った。
【0080】
本実施例で利用する、解析対象試料となるペプチド、ヒト・アンジオテンシンIは、そのアミノ酸配列は、Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe−His−Leuと既に判明しており、本発明にかかる解析方法で特定されるC末端アミノ酸配列の特定精度を検証した。
【0081】
(前処理操作)
先ず、市販されているヒト・アンジオテンシン Iを10pmol含有するペプチド溶液を、マイクロ・バイアル中に分注し、凍結乾燥処理を施す。この乾燥ペプチド試料を収納したバイアルを、テフロン製コックバルブ封止される真空排気用のポートを具えた、共栓付き気密試験管型のガラス製反応容器内に装着し、このガラス製反応容器内に別途、下記する液状試薬を所定量入れる。
【0082】
前処理用の試薬として、酢酸を5体積%添加した無水酢酸(300μl)を用い、前記ガラス製反応容器内に乾燥ペプチド試料を収納したバイアルを収納した後、冷却下、反応容器内を真空排気し、気密状態に封止する。
【0083】
この気密状態の反応容器全体を、50℃、1時間保温して、容器内の液状試薬から供給される、蒸気状の無水酢酸と酢酸を、乾燥ペプチド試料に作用させる。このアシル化試薬として、無水酢酸を酢酸共存下で、乾燥ペプチド試料に作用させることで、ペプチドのN末端アミノ基に選択的なアセチル化反応が進行する。従って、N−アセチル化 ヒト・アンジオテンシン Iへと変換される。かかる前処理を終えた後、反応容器内に残留する、未反応の無水酢酸や酢酸等を減圧留去するとともに、得られるN−アセチル化 ヒト・アンジオテンシン Iの乾燥を行う。
【0084】
(C末端アミノ酸分解除去反応の操作)
次いで、得られるN−アセチル化 ヒト・アンジオテンシン Iの乾燥試料を保持しているバイアルを、同じく共栓付き気密試験管型のガラス製反応容器内に装着した状態で、このガラス製反応容器内に別途、下記する液状試薬を所定量入れる。
【0085】
このC末端アミノ酸の選択的分解反応用の液状試薬として、トリフルオロ酢酸を5体積%添加した無水酢酸(300μl)を用い、前記ガラス製反応容器内に乾燥試料を収納したバイアルを収納した後、冷却下、反応容器内を真空排気し、気密状態に封止する。
【0086】
この気密状態の反応容器全体を、40℃、16時間保温して、容器内の液状試薬から供給される、蒸気状の無水酢酸とトリフルオロ酢酸を、乾燥試料に作用させる。その際、トリフルオロ酢酸の共存下、無水酢酸はアシル化試薬として機能するため、チロシン(Tyr)側鎖のフェノール性ヒドロキシ基に対して、O−アセチル化が進行する。一方、ペプチドのC末端においては、プロトン・ドナーとして機能するトリフルオロ酢酸により促進される、下記する反応式(Ia):
【0087】
【化12】
Figure 0004102581
【0088】
で示されるケト−エノール互換異性化、ならびに、C末端のカルボキシ基に無水酢酸が作用し、例えば、下記する反応式(Ib):
【0089】
【化13】
Figure 0004102581
【0090】
で示される、非対称型酸無水物への変換と環状エステル化が進行し、5−オキサゾロン構造へと一端変換される。さらに、前記の反応において副生する酢酸(CH3COOH)あるいは、共存しているトリフルオロ酢酸により、オキサゾロン環の開裂がなされ、C末端のアミノ酸は、N−アシル化アミノ酸(Ac−NH−CH(R1)−COOH)として脱離し、直前のアミノ酸残基(−NH−CH(R2)−CO−)から末端カルボキシ基が表出される。さらに、次の段の反応へと進行し、C末端に表出された直前のアミノ酸も、5−オキサゾロン構造へと変換される。
【0091】
従って、ヒト・アンジオテンシン IのペプチドC末端から、ロイシン(Leu)、ヒスチジン(His)、フェニルアラニン(Phe)が逐次的に分解され、C末端にプロリン(Pro)が表出する反応生成物に至る。プロリンは、アミノ窒素は環構造に含まれるため、ペプチド結合を形成した際、上記の反応式(Ia)で表記されるケト−エノール互換異性化は生じない。従って、それ以降の反応式(Ib)で表記される5−オキサゾロン構造への変換へと進行できない結果、トリフルオロ酢酸の共存下、蒸気状の無水酢酸を作用させる条件では、C末端に存在するプロリン(Pro)の選択的な分解は行われない。つまり、本実施例において、得られる反応産物は、ロイシン(Leu)、ヒスチジン(His)、フェニルアラニン(Phe)が逐次的に分解された、三種の短縮されたペプチドのみとなる。なお、前記の三種の短縮されたペプチドのC末端は、カルボキシ基に変換されたもの以外に、5−オキサゾロン構造に留まったもの、あるいは、非対称型酸無水物への変換まで進行したものも、含まれた混合物状態となっている。
【0092】
かかるC末端アミノ酸の選択的分解処理を終えた後、反応容器内に残留する、未反応の無水酢酸やトリフルオロ酢酸等を減圧留去するとともに、残余するN−アセチル化 ヒト・アンジオテンシン Iと得られる反応産物との混合物の乾燥を行う。
【0093】
(後処理操作)
次いで、N−アセチル化 ヒト・アンジオテンシン Iと得られる反応産物が含まれる混合物の乾燥試料を保持しているバイアルを、同じく共栓付き気密試験管型のガラス製反応容器内に装着した状態で、このガラス製反応容器内に別途、下記する液状試薬を所定量入れる。
【0094】
この後処理は、主に、前記混合物中では、反応産物ペプチドのC末端は、カルボキシ基に変換されたもの以外に、5−オキサゾロン構造に留まったもの、あるいは、非対称型酸無水物への変換まで進行したものも、含まれた混合物状態となっているため、これらに加水処理を施し、ペプチドのC末端は、カルボキシ基となった状態へと変換する処理である。すなわち、後処理用の液状試薬として、塩基性窒素含有有機化合物の水溶液を利用し、かかる水溶液から発生する、蒸気状の塩基性窒素含有有機化合物と水分子を、予め乾燥してある前記混合物に作用させる。本実施例では、この加水後処理の液状試薬として、ピリジンを10体積%溶解した水溶液(300μl)を用い、前記ガラス製反応容器内に乾燥試料を収納したバイアルを収納した後、冷却下、反応容器内を真空排気し、気密状態に封止する。
【0095】
この気密状態の反応容器全体を、100℃、30分間加熱して、容器内の液状試薬から供給される、蒸気状のピリジンと水分子を、乾燥試料に作用させる。非対称型酸無水物ならびに5−オキサゾロン構造は、ピリジン塩基の共存下、水分子を作用することで、加水がなされ、C末端にカルボキシ基を有する形状に変換される。加えて、O−アセチル化がなされている、チロシン(Tyr)側鎖のフェノール性ヒドロキシ基に対しても、エステル結合の加水分解が進行し、部分的に脱アセチル化(脱保護)がなされる。一方、N−アセチル化、すなわち、N末端アミノ基上に置換するアセチル基に対しては、前記の条件では、かかるアミド結合に対する加水分解は起こらないため、得られる後処理済みの反応産物は、ペプチドのN末端にアセチル基が修飾されたN−アセチル化体となる。結果的に、後処理に伴い、反応産物は、ペプチドのN末端にアセチル基が修飾され、C末端はカルボキシ基が表出し、一部には、チロシン(Tyr)側鎖にO−アセチル化を受けたものが残留した状態となる。
【0096】
かかる後処理を終えた後、反応容器内に残留する、残余している水分子やピリジン等を減圧留去するとともに、N−アセチル化 ヒト・アンジオテンシン Iと得られる後処理済みの反応産物との混合物の乾燥を行う。
【0097】
(後処理済みの反応産物の特定)
以上の一連の化学的処理を施して得られる、後処理済みの反応産物とN−アセチル化 ヒト・アンジオテンシン Iとの混合物について、質量分析法により、含有される各ペプチドの分子量の測定を行う。
【0098】
本実施例では、乾燥処理を行った混合物試料(C1/3分析)に対して、Time−of−Flight型質量分析装置、具体的には、MALDI−TOF−MS装置を利用し、各ペプチドの分子量を反映する主イオン種ピークの質量と、その相対的な信号強度の測定、比較を行う。また、前記の前処理のみを行って得られる、N−アセチル化 ヒト・アンジオテンシン I乾燥済み試料に関しても、同一条件で質量分析を行い、参照すべき、N−アセチル化 ヒト・アンジオテンシン Iの主イオン種ピークの質量を別途特定する。
【0099】
図2は、上述する本実施例の化学的処理法で、C末端アミノ酸の逐次的分解処理を施した反応産物を含む混合物について、測定された質量分析スペクトルを示す。別途、N−アセチル化 ヒト・アンジオテンシン Iの主イオン種ピークの質量を測定してあり、そのピークの質量値を参照して、図2に示す測定された質量分析スペクトル中の主要なピークに相当する反応産物の特定を行う。表1に、測定されたピークの質量値、元のN−アセチル化 ヒト・アンジオテンシン Iに起因するピークの質量値との差異、ならびに、それから特定される、各反応産物において除去されているアミノ酸、および、各反応産物の形態を示す。
【0100】
【表1】
Figure 0004102581
【0101】
元のN−アセチル化 ヒト・アンジオテンシン Iに起因するピークよりも、質量が42大きなピークが付随しており、これは、余分なアセチル基の修飾がなされたものと判断され、すなわち、チロシン(Tyr)側鎖にO−アセチル化を受けたものと特定される。質量が42大きなピークをそれぞれ付随した、残る三種のピークは、C末端から、アミノ酸が逐次的に除去されたものと仮定して、その質量差を与える天然アミノ酸を特定する。なお、これらC末端から3アミノ酸の除去された後、さらなる除去が進行していないことから、C末端から4番目のアミノ酸残基は、プロリンと判断される。なお、ロイシン(Leu)とイソロイシン(Ile)とは、その式量は等しく、質量分析法では、両者の区別はなされないが、表1においては、ロイシン(Leu)として記載している。
【0102】
以上の検証実験によって、本発明にかかるC末端アミノ酸の選択的分解処理を行うことで、元のペプチドから、逐次的にC末端アミノ酸の除去がなされた一連の反応産物が、穏和な処理条件で得られ、C末端アミノ酸配列が高い確度で解析されることが確認される。
【0103】
(実施例2)
本発明にかかるC末端アミノ酸の選択的分解処理手法においては、穏和な処理条件を採用するので、仮に、逐次的なC末端アミノ酸の分解反応時の、反応温度に若干の変動が生じた際にも、特段、問題となるような副次反応の進行の無いことを検証した。具体的には、前記の実施例1に記載する一連の化学的処理中、C末端アミノ酸分解除去反応の処理温度を、40℃から50℃に変更して、その間に生成する反応産物の比較を行った。
【0104】
このトリフルオロ酢酸を5体積%添加した無水酢酸を用いた、分解反応の温度以外、各操作の手順、条件は、前記実施例1に記載した操作の手順、条件を選択した。
【0105】
図3に、上述する本実施例の化学的処理法で、C末端アミノ酸の逐次的分解処理を施した反応産物を含む混合物について、測定された質量分析スペクトルを示す。表2に、図3に示す測定された質量分析スペクトル中の主要なピークに相当する反応産物の特定結果をまとめる。図3と図2のスペクトルを対比させると、分解処理温度を40℃から50℃に上昇させた際にも、C末端から3アミノ酸の除去された後、さらなる除去が進行していなく、また、ペプチドの途中での断裂などの副次反応も生じていないことが確認される。
【0106】
【表2】
Figure 0004102581
【0107】
(実施例3)
加えて、上記する実施例1、実施例2の事例においては、ペプチドのN末端のアミノ基を保護、修飾する目的で、前処理操作を実施しているが、本発明にかかる化学的処理法においては、C末端アミノ酸の逐次的分解処理を施す際、ペプチド試料は、予め乾燥を施した固相状態とし、反応に利用される無水酢酸ならびにトリフルオロ酢酸を蒸気として、供給しつつ反応を進めるため、仮に、かかる前処理を実施しなくとも、特に問題となる副次反応は生じないことを検証した。
【0108】
具体的には、上記実施例1に記載する前処理を省き、ヒト・アンジオテンシンIの乾燥試料に対して、C末端アミノ酸分解除去反応の操作、その後の後処理操作を施した。その際、C末端アミノ酸分解除去反応の操作は、前記実施例2と同じく、処理温度とし50℃を選択した。
【0109】
この場合、無水酢酸ならびにトリフルオロ酢酸を蒸気として、供給しつつ反応を進めると、C末端アミノ酸の分解反応に加えて、ペプチドのN末端のアミノ基に対するN−アセチル化、ならびに、チロシン側鎖のフェノール性ヒドロキシ基に対するO−アセチル化も同時に進行する。さらに、無水酢酸とトリフルオロ酢酸とを同時に作用する間、その間での交換反応に起因すると推察される、ペプチドのN末端のアミノ基や、チロシン側鎖のフェノール性ヒドロキシ基にトリフルオロアセチル基が修飾されたものも副生する。
【0110】
図4に、上述する本実施例の化学的処理法で、C末端アミノ酸の逐次的分解処理を施した反応産物を含む混合物について、測定された質量分析スペクトルを示す。表3に、図4に示す測定された質量分析スペクトル中の主要なピークに相当する反応産物の特定結果をまとめる。図4と図3のスペクトルを対比させると、前処理を施してなくとも、ペプチドのN末端のアミノ基に対するN−アセチル化も同時に進行し、勿論、C末端から3アミノ酸の除去された後、さらなる除去が進行していなく、また、ペプチドの途中での断裂などの副次反応も生じていないことが確認される。なお、一部、N末端のアミノ基にトリフルオロアセチル基が修飾したものでは、後処理の際、アセチル基が修飾する場合よりも、遥かに容易に、アミド結合の加水分解が進行するため、若干、N末端のアミノ基にN−アシル化がなされていないものに相当する、質量が42小さな付随ピークも観測されている。すなわち、前記実施例1、実施例2では、前処理工程において、予めN末端のアミノ基にアセチル基の修飾を施す結果、アセチル基に代えて、トリフルオロアセチル基がN末端のアミノ基に修飾したものは存在しないが、本実施例では、かかる前処理工程を設けていないため、部分的にN末端のアミノ基にトリフルオロアセチル基が修飾したものも生成する。実際に、図4に示すスペクトル中には、N末端のアミノ基にトリフルオロアセチル基が修飾したものに起因する、N末端のアミノ基にアセチル基が修飾したものに起因するピークより質量が54大きな付随ピークも観測されている。
【0111】
【表3】
Figure 0004102581
【0112】
加えて、前記ペプチドのN末端のアミノ基に対するN−アセチル化に加えて、チロシン側鎖のフェノール性ヒドロキシ基に対するO−アセチル化も同時に進行していることは、明確に確認される。一方、C末端アミノ酸の逐次的分解反応の間で生じる活性化された反応中間体、例えば、非対称型酸無水物が、ペプチドのN末端のアミノ基や、チロシン側鎖のフェノール性ヒドロキシ基に作用するなどの、不要な反応も、固相状態として反応を行うことで、有効に回避されている。それに対して、蒸気状として供給される無水酢酸とトリフルオロ酢酸により進行する、N−アセチル化やO−アセチル化は、速やかに進行する結果、系内で保護、修飾がなされた状態で、C末端アミノ酸の逐次的分解反応が進むことも確認される。
【0113】
【発明の効果】
本発明にかかるペプチドのC末端アミノ酸配列解析方法は、ペプチドのC末端アミノ酸を逐次的に分解除去する手段として、対象とするペプチドに対して、乾燥した固相状態で、乾燥雰囲気下、10℃〜60℃の範囲に選択される温度において、アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物より供給される、蒸気状のアルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とを作用させ、5−オキサゾロン構造を経て、該5−オキサゾロン環の開裂に伴いC末端アミノ酸の分解を行って、一連の反応産物を調製する手法を採用している。かかる手法では、利用するアルカン酸無水物自体、反応性が低いため、ペプチドの途中におけるアミド結合の分断等の不要な副次反応を引き起こすことなく、15℃〜60℃の範囲に選択される温度、より好ましくは、室温またはそれより若干高い温度、例えば、15℃〜50℃の範囲に選択される温度のような穏和な条件で、ペプチドのC末端アミノ酸を逐次的に分解除去することが可能となる。付随して、ペプチドの途中におけるアミド結合の分断が無いので、得られる反応産物中に、前記アミド結合の分断により派生するペプチド断片、ならびに、そのペプチド断片を起源とする反応産物が混入することも回避できる。さらには、かかる穏和な条件での反応を利用することで、得られる一連の反応産物において達成される、短縮されるC末端アミノ酸配列の最大アミノ酸長の調節、制御性もより優れたものとできる。従って、このペプチドのC末端アミノ酸を逐次的に分解除去する際の優れた制御性、ならびに、穏和な反応条件、例えば、反応温度の許容される変動幅の広さの利点から、本発明にかかるペプチドのC末端アミノ酸配列解析方法は、より汎用性に富む解析方法となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるペプチドからC末端アミノ酸を逐次的に分解する処理における、詳細操作手順の一例を例示する工程フローを示す図である。
【図2】本発明にかかるペプチドからC末端アミノ酸を逐次的に分解する処理方法に従って、アンジオテンシンI ペプチドのC末端アミノ酸を逐次的に分解して得られる反応産物混合物の質量分析スペクトルの一例を示す図である。
【図3】本発明にかかるペプチドからC末端アミノ酸を逐次的に分解する処理方法に従って、アンジオテンシンI ペプチドのC末端アミノ酸を逐次的に分解して得られる反応産物混合物の質量分析スペクトルの他の一例を示す図である。
【図4】本発明にかかるペプチドからC末端アミノ酸を逐次的に分解する処理方法に従って、アンジオテンシンI ペプチドのC末端アミノ酸を逐次的に分解して得られる反応産物混合物の質量分析スペクトルの更なる一例を示す図である。

Claims (17)

  1. 解析対象とするペプチドのC末端アミノ酸配列を解析する方法であって、
    対象とするペプチドより、化学的手段によりC末端アミノ酸を逐次的に分解して得られる一連の反応生成物を含む混合物を調製する工程と、
    前記一連の反応生成物と、元となるペプチドとを、質量分析法により分析し、かかるC末端アミノ酸の逐次的分解に伴う分子量減少を測定する工程と、
    測定された一連の分子量減少量に基づき、逐次的分解された一連のアミノ酸を特定し、C末端より配列させて、C末端のアミノ酸配列情報を得る工程とを具え、
    前記C末端アミノ酸を逐次的に分解する工程における処理方法は、
    対象とするペプチドの乾燥試料に対して、乾燥雰囲気下、15℃〜60℃の範囲に選択される温度において、
    アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物より供給される、蒸気状のアルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とを作用させ、
    ペプチドのC末端において、下記する一般式(III):
    Figure 0004102581
    (式中、
    R1は、ペプチドのC末端アミノ酸の側鎖を表し、
    R2は、前記C末端アミノ酸の直前に位置するアミノ酸残基の側鎖を表す)で表記される5−オキサゾロン構造を経て、該5−オキサゾロン環の開裂に伴いC末端アミノ酸の分解を行う方法であることを特徴とするペプチドのC末端アミノ酸配列解析方法。
  2. 前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物に含まれるアルカン酸無水物として、炭素数2〜4のアルカン酸の対称型酸無水物を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記炭素数2〜4のアルカン酸の対称型酸無水物として、炭素数2〜4の直鎖アルカン酸の対称型酸無水物を用いることを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物に含まれるアルカン酸無水物として、無水酢酸を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  5. 前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物に含まれるパーフルオロアルカン酸として、当該パーフルオロアルカン酸の示すpKaは、0.3〜2.5の範囲であるパーフルオロアルカン酸を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  6. 前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物に含まれるパーフルオロアルカン酸として、炭素数2〜4のパーフルオロアルカン酸を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  7. 前記炭素数2〜4のパーフルオロアルカン酸として、炭素数2〜4の直鎖パーフルオロアルカン酸を用いることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物中における、パーフルオロアルカン酸の含有比率は、アルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸との合計体積に対して、1〜20体積%の範囲に選択することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  9. 前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物を利用する処理に際して、
    前記乾燥雰囲気は、水分に加えて、酸素も除去された状態であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  10. 前記乾燥雰囲気は、気密容器内において、その内部の大気を真空排気することで、達成されていることを特徴とする請求項9に記載の方法。
  11. 前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物を利用する処理に際して、その温度は、15℃〜50℃の範囲に選択される温度とすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  12. 前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物を利用する処理の工程に加え、
    前記C末端アミノ酸を逐次的に分解する工程で得られる一連の反応生成物を含む混合物に対して、
    残余する前記アルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とを乾燥状態において除去する後処理を施し、
    次いで、塩基性含窒素芳香環化合物または第三アミン化合物を溶解する水溶液を利用し、蒸気状の塩基性含窒素芳香環化合物または第三アミン化合物と水分子を供給して、
    前記塩基性の窒素含有有機化合物の共存下、前記反応生成物ペプチドに水分子を作用させ、
    前記の加水処理を施した後、かかる一連の反応生成物を含む混合物に残余する、前記塩基性の窒素含有有機化合物と水分子を除去、乾燥する再乾燥後処理を行うことからなる付加的な加水処理の工程を設けることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  13. 前記アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物を利用する処理の工程に加え、
    かかるC末端アミノ酸を逐次的に分解する工程に先立って、
    対象とするペプチドのN末端のアミノ基に、予め、前記アルカン酸無水物を構成するアルカン酸に由来するアシル基によるN−アシル化保護を施す前処理工程を設けることを特徴とする請求項1または12に記載の方法。
  14. 前記N末端のアミノ基にN−アシル化保護を施す前処理工程には、
    対象とする前記ペプチドの乾燥試料に対して、乾燥雰囲気下、10℃〜60℃の範囲に選択される温度において、
    アルカン酸無水物にアルカン酸を少量添加してなる混合物より供給される、蒸気状のアルカン酸無水物とアルカン酸とを作用させ、
    該ペプチドのアミノ基に対して、N−アシル化を行う方法を採用することを特徴とする請求項13に記載の方法。
  15. 該N末端に対するN−アシル化保護を施す前処理工程で利用する前記アルカン酸無水物と、その後に実施する前記C末端アミノ酸を逐次的に分解する工程で利用する前記アルカン酸無水物とに、同じアルカン酸無水物を用いることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. 化学的手段により、対象とするペプチドからC末端アミノ酸を逐次的に分解して得られる一連の反応生成物を含む混合物を調製する方法であって、
    対象とするペプチドの乾燥試料に対して、乾燥雰囲気下、15℃〜60℃の範囲に選択される温度において、
    アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物より供給される、蒸気状のアルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とを作用させ、
    ペプチドのC末端において、下記する一般式(III):
    Figure 0004102581
    (式中、
    R1は、ペプチドのC末端アミノ酸の側鎖を表し、
    R2は、前記C末端アミノ酸の直前に位置するアミノ酸残基の側鎖を表す)で表記される5−オキサゾロン構造を経て、該5−オキサゾロン環の開裂に伴いC末端アミノ酸の分解を行うことを特徴とする、ペプチドより化学的手段によりC末端アミノ酸を逐次的に分解して得られる一連の反応生成物を含む混合物を調製する方法。
  17. 化学的手段により、対象とするペプチドからC末端アミノ酸を逐次的に分解する反応処理用のキットであって、
    少なくとも、C末端アミノ酸を逐次的に分解する反応用の液状試薬として、アルカン酸無水物にパーフルオロアルカン酸を少量添加してなる混合物、または、該混合物の調製用に組み合わされた、アルカン酸無水物とパーフルオロアルカン酸とを個別に含み、
    処理する対象とするペプチド試料を保持する試料容器と、
    前記反応用の液状試薬を収納でき、前記試料容器中に保持されるペプチド試料に対して、前記反応用の液状試薬が直接接触しない状態を維持可能な液状試薬の保持機構を具え、前記試料容器をその内部に収納可能な反応容器とを、前記反応用の液状試薬と組み合わせて構成されるキットであることを特徴とするC末端アミノ酸を逐次的に分解する処理用キット。
JP2002083311A 2002-03-25 2002-03-25 ペプチドのc末端アミノ酸配列解析方法 Expired - Fee Related JP4102581B2 (ja)

Priority Applications (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002083311A JP4102581B2 (ja) 2002-03-25 2002-03-25 ペプチドのc末端アミノ酸配列解析方法
PCT/JP2003/003512 WO2003081255A1 (fr) 2002-03-25 2003-03-24 Procede d'analyse d'un peptide visant a determiner une sequence d'acides amines c-terminaux
CNA038011174A CN1556925A (zh) 2002-03-25 2003-03-24 分析肽的c-末端氨基酸序列的方法
EP03710459A EP1489424A4 (en) 2002-03-25 2003-03-24 METHOD FOR ANALYZING A PEPTIDE TO DETERMINE A C-TERMINAL AMINO ACID SEQUENCE
US10/489,198 US7384790B2 (en) 2002-03-25 2003-03-24 Method of analyzing peptide for determining C-terminal amino acid sequence

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002083311A JP4102581B2 (ja) 2002-03-25 2002-03-25 ペプチドのc末端アミノ酸配列解析方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003279581A JP2003279581A (ja) 2003-10-02
JP4102581B2 true JP4102581B2 (ja) 2008-06-18

Family

ID=28449174

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002083311A Expired - Fee Related JP4102581B2 (ja) 2002-03-25 2002-03-25 ペプチドのc末端アミノ酸配列解析方法

Country Status (5)

Country Link
US (1) US7384790B2 (ja)
EP (1) EP1489424A4 (ja)
JP (1) JP4102581B2 (ja)
CN (1) CN1556925A (ja)
WO (1) WO2003081255A1 (ja)

Families Citing this family (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4257492B2 (ja) * 2002-11-29 2009-04-22 日本電気株式会社 ペプチドのc末端アミノ酸配列解析方法
JP4086642B2 (ja) 2002-12-10 2008-05-14 日本電気株式会社 ペプチドのc末端アミノ酸配列解析方法
JP3534191B1 (ja) * 2002-12-26 2004-06-07 日本電気株式会社 質量分析法を利用するペプチドc末端アミノ酸配列解析方法
US20070148720A1 (en) * 2003-12-19 2007-06-28 Hiroaki Torii Method of identifying protein with the use of mass spectometry
US7588944B2 (en) 2004-02-17 2009-09-15 Nec Corporation Method of analyzing C-terminal amino acid sequence of peptide
JP4543929B2 (ja) * 2005-01-04 2010-09-15 日本電気株式会社 タンパク質の解析方法
US20100167326A1 (en) * 2006-02-08 2010-07-01 Nec Corporation Method for cleavage of peptidic bond at c terminal of peptide and a method for determination of c terminal amino acid sequence of peptide
US20110053196A1 (en) * 2006-02-08 2011-03-03 Nec Corporation Method for modifying a peptide and a method for identifying a peptide
WO2017145496A1 (ja) * 2016-02-22 2017-08-31 株式会社島津製作所 シアリル糖鎖解析方法
JP6348193B1 (ja) * 2017-02-06 2018-06-27 日清食品ホールディングス株式会社 アミノ酸の由来判別方法
CA3117743A1 (en) * 2018-12-20 2020-06-25 Rapid Novor Inc. A labelling method to distinguish isobaric amino acids and amino acid combinations

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5521097A (en) * 1991-08-28 1996-05-28 Seiko Instruments Inc. Method of determining amino acid sequence of protein or peptide from carboxy-terminal
JP2686505B2 (ja) * 1991-08-28 1997-12-08 セイコーインスツルメンツ株式会社 タンパク質あるいはペプチドのカルボキシ末端からのアミノ酸配列を決定する方法
JP3124507B2 (ja) * 1996-05-24 2001-01-15 セイコーインスツルメンツ株式会社 タンパク質あるいはペプチドのカルボキシ末端からのアミノ酸配列を決定する方法
DE69733349T2 (de) * 1997-09-08 2006-03-23 Seiko Instruments Inc. Verfahren zur Bestimmung der Sequenz von Aminosäuren von Proteinen oder Peptiden, beginnend mit dem Carboxylende

Also Published As

Publication number Publication date
US20050074832A1 (en) 2005-04-07
CN1556925A (zh) 2004-12-22
EP1489424A4 (en) 2008-09-10
US7384790B2 (en) 2008-06-10
JP2003279581A (ja) 2003-10-02
EP1489424A1 (en) 2004-12-22
WO2003081255A1 (fr) 2003-10-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1425586B1 (en) Mass labels
Toews et al. Mass spectrometric identification of formaldehyde-induced peptide modifications under in vivo protein cross-linking conditions
JP4102581B2 (ja) ペプチドのc末端アミノ酸配列解析方法
US8119411B2 (en) Method for analyzing C-terminal amino acid sequence of peptide using mass spectrometry
Moyer et al. Leveraging orthogonal mass spectrometry based strategies for comprehensive sequencing and characterization of ribosomal antimicrobial peptide natural products
JP4086642B2 (ja) ペプチドのc末端アミノ酸配列解析方法
JP4257492B2 (ja) ペプチドのc末端アミノ酸配列解析方法
JP4289355B2 (ja) ペプチドのc末端アミノ酸配列の分析方法
Parker et al. A sensitive quantitative analysis of abiotically synthesized short homopeptides using ultraperformance liquid chromatography and time-of-flight mass spectrometry
Thiede et al. C‐terminal ladder sequencing by an approach combining chemical degradation with analysis by matrix‐assisted‐laser‐desorption ionization mass spectrometry
JP2686505B2 (ja) タンパク質あるいはペプチドのカルボキシ末端からのアミノ酸配列を決定する方法
Chen et al. Mass spectrometry analysis of synthetically myristoylated peptides
Trapp et al. Peptide formation as on the early Earth: from amino acid mixtures to peptides in sulphur dioxide
JP2008232915A (ja) C末端逐次分解反応に由来する塩形成回避法
AU2002331952B2 (en) Mass labels
Claude et al. 1Waters Corporation, Manchester, UK 2Waters Corporation, Milford, MA, USA
AU2002331952A1 (en) Mass labels

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050217

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20050217

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20050217

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20050217

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20060227

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080305

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080324

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110328

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110328

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110328

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110328

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120328

Year of fee payment: 4

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees