JP4102281B2 - 耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板及びその製造方法 - Google Patents

耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、建材、家電製品、自動車などに適する溶接性および穴拡げ性に優れ、引張強度が800MPa以上の高強度鋼板において、特に問題となる、水素脆化、置き割れや遅れ破壊を抑制した高強度薄鋼板及びその製造方法に関するものである。
従来、ボルト、PC鋼線やラインパイプといった用途には高強度鋼が多く使われており、980MPa以上の引張強度になると、鋼中への水素の侵入により遅れ破壊が発生することが知られている。これに対し、薄鋼板は板厚が薄いため水素が侵入しても短時間で放出されることから、いわゆる遅れ破壊に対する問題意識は低かったと言える。しかし、最近では自動車の軽量化や衝突安全性の向上の必要性から、980MPa以上の超高強度鋼板にプレス成形、パイプ成形、曲げ加工、端面加工、穴拡げ加工などを施して、バンパーやインパクトビーム等の補強材やシートレール等に使用に供する場合が急速に増えてきている。したがって、耐遅れ破壊性を備えた超高強度薄鋼板の開発が急務である。
これまで、耐遅れ破壊を向上させる技術はほとんどがボルトや条鋼、厚板といった、製品のままでかつ耐力または降伏応力以下で使用されることの多い鋼材に対して開発されてきた。例えば条鋼・ボルト用鋼においては、焼き戻しマルテンサイトを中心に開発が行われ、非特許文献1{「遅れ破壊解明の新展開」(日本鉄鋼協会、1997年1月発行)}にCr, MoやVといった焼き戻し軟化抵抗性を示す添加元素が耐遅れ破壊性向上に有効であることが報告されている。これは、合金炭化物を析出させて、これを水素のトラップサイトに活用することで遅れ破壊形態を粒界から粒内破壊へと移行させる技術である。しかし、これらの鋼はC量0.4%以上で合金元素も多く含むことから、薄鋼板で要求される加工性や溶接性が劣悪で、さらに、合金炭化物析出には数時間以上という析出熱処理が必要なため、製造性にも問題がある。
また、特許文献1(特開平11−293383号公報)では、Ti、Mgを主体とする酸化物が水素性欠陥を防ぐことに効果があるとされている。しかし、これは対象が厚鋼板であり、特に大入熱の溶接後の遅れ破壊については考慮されている。しかしながら、薄鋼板の自動車に部品における使用環境を十分考慮したものは無い。一方、薄鋼板の遅れ破壊に関しては、例えば、非特許文献2(CAMP−ISIJ,vol.5 1839〜1842頁、山崎ら、1992年10、日本鉄鋼協会発行)に残留オーステナイト量の加工誘起変態に起因した遅れ破壊の助長について報告されている。これは、薄鋼板の成型加工を考慮したものであるが、耐遅れ破壊性を劣化させない残留オーステナイト量の規制について述べられている。すなわち、特定の組織を持つ高強度薄鋼板に関するものであり、根本的な耐遅れ破壊向上対策とは言えない。
さらに、このような高強度材を用いて部材を組みあげる時には、延性、曲げ性、穴拡げ性や溶接性などが、引張り強度で590MPa程度までの高強度鋼板以上に大きな問題となるため、これらに対する対策が必要となる。各特性に対して、以下のような対策が各々講じられている。たとえば、穴拡げ性については、非特許文献3(CAMP−ISIJ,vol.13(2000) p.395)にあるように、主相をベイナイトとして穴拡げ性を向上させ、さらには張り出し性形成性についても、第2相に残留オーステナイトを生成させることで現行の残留オーステナイト鋼並の張り出し性を示すことが開示されている。さらには、Ms温度以下でオーステンパ処理をすることで面積率2〜3%の残留オーステナイトを生成させると、引張り強度×穴拡率が最大となることも示されている。しかし、800MPaを超えて顕在化する溶接性および溶接熱影響部での軟化挙動については考慮されていない。
また、溶接性については、溶接熱影響部における軟化挙動(HAZ軟化挙動)が問題視されるケースが多い。これに対して、例えば、特許文献2(特開2000−87175号公報)にあるようにNbおよびMoの炭化物(Nb,Mo)Cの析出によりHAZ軟化挙動を抑制することが示されている。しかし、この技術は、疲労強度に関して考慮されているものの穴拡げ性等の加工性について十分な考慮はない。また、HAZ軟化挙動を抑制の効果も強度レベルが低く、800MPa以上の極めて高強度な材料における溶接性や加工性について十分とはいえない。特に、引張り強度が800MPa以上になると、溶接自体が困難になり、980MPa以上でさらに顕著となる。このため、スポット溶接等の従来の溶接方法に加えてレーザー溶接なども一部適用される例もある。しかし、高強度故母材は特に溶接部および熱影響部での材質変動が590MPaクラスの高強度材に比べ極めて顕著となる。また、高強度化にマルテンサイトの活用は穴拡げ性や延性低下が助長されてしまう。
また、高強度材の高延性化を図るために、複合組織化を積極的に活用することが一般的である。しかし、第2相にマルテンサイトや残留オーステナイトを活用した場合に、穴拡げ性が著しく低下してしまうという問題がある、例えば技術文献4(CAMP−ISIJ,vol.13(2000),p.391)。また、本文献中には、主相をフェライト、第2相をマルテンサイトとし、両者の硬度差を減少させることで穴拡げ率が向上することが開示されているが、穴拡げ率で70%未満と、著しく改善されているわけではない。
「遅れ破壊解明の新展開」(日本鉄鋼協会、1997年1月発行) CAMP−ISIJ,vol.5 1839〜1842頁、山崎ら、1992年10、日本鉄鋼協会発行 CAMP−ISIJ,vol.13(2000) p.395 CAMP−ISIJ,vol.13(2000),p.391 特開平11−293383号公報 特開2000−87175号公報
上記のように、特に自動車用薄鋼板の使用環境を十分考慮して水素脆化型の遅れ破壊に対する対策を講じかつ使用特性である溶接性や穴広げ性等を十分考慮した開発事例はほとんどない。本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、引張り強度が800MPa以上の高強度鋼板の溶接性および穴拡げ性を同時に改善した高強度鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは、以上のような背景から、薄鋼板における使用環境を十分に考慮して、溶接性や加工性を確保したまま耐遅れ破壊性を向上させる方法を見出すに至った。すなわち、鋼板の組織および析出物制御に加えて鋼板中のトラップサイト制御および環境から侵入し得る水素量を低減することで水素起因の耐遅れ破壊性を向上させることが可能なことを見出した。詳細は以下の通りである。
(1)質量%にて、C:0.01〜0.25%、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.01〜3.05%、P:0.0001〜0.05%、S:0.0001〜0.05%、Al:0.01〜3.0%、N:0.0001〜0.01%、Nb:0.001〜1.0%、Mo:0.005〜5%を含有し、Ni:0.001〜5.5%、Cu:0.001〜3.0%、Cr:0.001〜5.0%のうち1種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、ミクロ組織が、面積率でベイナイト、ベイニティックフェライト、炭素量が0.1%未満若しくはビッカ―ス硬度が450以下であるマルテンサイトの一相又は二相以上を合計で70%以上含有し、残留オーステナイト(Vγ)を3%未満に制限し、引張強さ(TS)が800MPa以上であり、更に下記式(1−1)〜(1−3)を満たすことを特徴とする耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度鋼板。
(3.0Nb+2.5Mo+1/10Si+Mn)−(2C0.5+2)>0 … (1−1)
0≦0.8×{2Cu+20Mo+3Ni+Cr}−{0.1−3.5×107 ×(TS)-3.1}−0.3Vγ … (1−2)
0>Si+Al+7.67C−1.78 … (1−3)
ここで、TS:引張強さ(MPa)、
元素記号は鋼中に含まれる各元素の質量%を示す。
(2)質量%にて、C:0.01%〜0.25%、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.01〜3.05%、P:0.0001〜0.020%、S:0.0001〜0.020%、Al:0.01〜3.0%、N:0.0001〜0.01%、Nb:0.001〜1.0%、Mo:0.005〜5%を含有し、Ni:0.001〜5.5%、Cu:0.001〜3.0%、Cr:0.001〜5.0%のうち1種以上を含有し、更に、V:0.005〜1%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、ミクロ組織が、面積率でベイナイト、ベイニティックフェライト、炭素量が0.1%未満若しくはビッカ―ス硬度が450以下であるマルテンサイトの一相又は二相以上を合計で70%以上含有し、残留オーステナイト(Vγ)を3%未満に制限し、引張強さ(TS)が800MPa以上であり、更に下記(2−1)〜(2−3)式を満たすことを特徴とする耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度鋼板。
(3.0Nb+2.5Mo+1/10Si+Mn)−(2C0.5+2)>0 … (2−1)
0≦0.8×{2Cu+20Mo+3Ni+Cr+20V}−{0.1−V/5−3.5×107 ×(TS)-3.1}−0.3Vγ … (2−2)
0>Si+Al+7.67C−1.78 … (2−3)
ここで、TS:引張強さ(MPa)、
元素記号は鋼中に含まれる各元素の質量%を示す。
(3)更に、質量%にて、Se:0.0002〜0.05%、As:0.0002〜0.05%、Sb:0.0002〜0.05%、Pb:0.0002〜0.05%、Bi:0.0002〜0.05%、の1種または2種以上を含有し、かつ、それらの合計が0.05%以下を満たすことを特徴とする前記(1)又は(4)記載の耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板。
(4)更に、質量%にて、REM:0.0002〜0.10%、Ca:0.0002〜0.10%、Y:0.0002〜0.10%、Mg:0.0002〜0.10%の1種または2種以上を含むことを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか1項に記載の耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板。
(5)更に、質量%にて、Ti:0.002〜1%、Zr:0.005〜1%、Hf:0.005〜1%、Ta: 0.005〜1%、の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(4)の何れか1項に記載の耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板。
(6)更に、質量%にて、W:0.005〜5%、Co:0.005〜2.0%、の1種または2種を含有することを特徴とする前記(1)〜(5)の何れか1項に記載の耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板。
(7)更に、質量%にて、B:0.0002〜0.1%、を含有することを特徴とする前記(1)〜(6)の何れか1項に記載の耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板
)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の組成からなる鋳片を1100℃以上に加熱し、Ar3点+30℃以上の仕上温度で熱間圧延を施し、400〜650℃の温度域に30℃/s以上で冷却して、同温度域で捲取り、次いで酸洗の後、圧下率を10〜80%として冷間圧延後、その後焼鈍時の最高温度が0.8×(Ac3−Ac1)+Ac1(℃)以上、Ac3+30(℃)以下で焼鈍した後に、1〜150℃/秒の冷却速度で350〜500℃の温度域に冷却し、引き続いて同温度域で1秒〜3000秒保持することを特徴とする耐水素脆化、溶接性、穴拡げ性および延性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
)焼鈍した後に、1〜150℃/秒の冷却速度でMf+10℃以下の温度域に冷却し、引き続いてMf〜450℃の温度域で1秒〜3000秒保持することを特徴とする前記()記載の耐水素脆化、溶接性、穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板の製造方法である。 ここで、Mf(℃)=361−474×C(質量%)−33×Mn(質量%)−17×Ni(質量%)−17×Cr(質量%)−21×Mo(質量%)
本発明により、引張り強度が800MPa以上の高強度鋼板の溶接性、穴拡げ性を同時に改善し、さらに、耐遅れ破壊性を向上させた高強度高延性鋼板およびその製造方法を得ることができる。
これまでの高強度鋼材である焼き戻しマルテンサイト鋼では、水素起因の遅れ破壊は旧オーステナイト粒界等に水素が集積することにより、ボイド等が形成して、その部分が起点となって破壊を生じると考えられている。そこで、水素のトラップサイトを均等かつ微細に分散させて、その部分に水素をトラップさせると、拡散性水素濃度が下がり、遅れ破壊の感受性が下がる。前出の特許文献1にあるように、MgおよびTiを複合添加した厚鋼板における酸化物の分散形態制御で、水素起因の耐遅れ破壊性が向上することが分かっている。しかし、環境から来る水素量が局部的にでも大量である場合を考えると、いくら鋼材内に水素のトラップサイトを分散させても必然的に水素起因の遅れ破壊は発生してしまう。このため、まず(イ)鋼材内にトラップサイトを分散させて鋼材自体の許容水素量を高めておくこと、および残留オーステナイトの抑制に加えて、(ロ)置かれた環境から侵入し得る水素量を低減することが重要である。
本発明者らは、上述の背景を踏まえて、薄鋼板の使用環境において、耐遅れ破壊性を確保・向上させるため、種々の晶出物、析出物のトラップサイトの分散や鋼板の強度の影響に加えて、環境から入り得る水素量の低減について検討した。その結果、薄鋼板の使用環境下(例えばプレス加工後の設計応力相当付加下)で、水素起因の耐遅れ破壊性を向上・確保するための技術を見出した。すなわち、
(イ)鋼板の強度と成分による析出物および残留オーステナイト量の制御。
(ロ)鋼板の成分による耐侵入水素特性の制御。
をそれぞれ行うことで、自動車用薄鋼板の使用環境下での耐水素脆化を向上させることが出きる。これを満たすための条件として、式(1−2)および(2−2)を規定した。
本式を満たすことで、高強度薄鋼板の対遅れ破壊性が確保できる。
次に、(ロ)鋼材の成分による水素侵入特性の制御、について述べる。水素侵入の過程は、腐食や酸洗などによって、水分子(中性またはアルカリ性環境の場合)または水素イオン(酸性環境の場合)の還元反応が鋼板表面で生じると、鋼板表面に水素原子が生成、吸着する。この吸着水素原子は、(1)再結合して水素分子としてガス化するか、鋼板内部に侵入する。本発明者らはこれらの過程を鋭意研究した結果、水素侵入速度を低減するには、耐食性を向上させるほかに、(1)腐食反応の進行に伴う環境のpH(水素イオン濃度)低下を極力抑えて、表面の吸着水素原子濃度を低くする、(2)再結合反応(水素発生反応)を加速することが有効であることを見出した。
(1)については、鋼中へのREM,Ca,Mg添加が有効であることを見出した。ここでREMは、Rare Earth Metalの略でLaから始まるランタノイド系元素の総称である。工業的な添加としてはミッシュメタルの形で添加する場合が多く、この場合にはLaやCeの添加量が多くなる。腐食反応でREM、Ca,Y、Mgが溶出すると、水酸化物の平衡反応により、雰囲気をアルカリ化、すなわち腐食反応によるpHの低下を抑制する。
(2)については、二つの方法が見出された。第一の方法は、水素イオンまたは水の還元反応の交換電流密度を上昇させる方法である。Cu,Ni,Cr,Moが有効であり、0.1≦2Cu+20Mo+3Ni+Cr+20Vを満足した場合、水素透過速度は著しく抑制される。第二の方法は、上記の交換電流密度を低下させる。または水素発生過電圧を著しく上昇させる不純物元素を制限する方法である。該当する不純物元素として、Se、As,Sb,Pb,Biを制限すれば、水素透過速度の増加を抑制できる。
自動車用薄鋼板の使用において、水素侵入は次の過程で生じる。第一に、プレス加工などの加工工程、第二に、酸洗、脱脂、水洗、塗装などの防食被覆工程、第三に使用環境での腐食である。いずれの環境でも、上記に述べた鋼材の成分による水素侵入特性の制御は有効である。自動車用鋼板の裸耐食性を向上させて水素侵入を抑制するには、高価な元素を大量に添加する必要があるが、これらの(1)および(2)の方法では、いずれも微量添加で顕著な効果が得られるという利点がある。
さらに、溶接性、穴広げおよび延性の確保については、ミクロ組織およびを成分範囲や(1−1)および(2−1)式による限定を行うことで、800MPa以上の高強度を保ちつつ溶接熱影響部の軟化挙動を抑制して、さらには、穴拡げ率:(穴拡げ試験前の穴の内径/穴拡げ試験前の穴径−1)×100が70%以上の穴拡げ性を確保できることを見出した。穴拡げ性を十分に確保するためにはベイナイト、ベイニティックフェライトの一方又は双方とするのが有効で、面積率で70%以上含むこととした。この様な組織を形成させるためには式(1−3)および(2−3)を満たす必要がある。
また、ここで言うベイナイトはラス境界に炭化物が生成している上部ベイナイトおよびラス内に微細炭化物が生成している下部ベイナイトの双方を含む。また、ベイニティックフェライトは炭化物のないベイナイトを意味し、例えばアキュラーフェライトがその1例である。穴拡げ性向上には、炭化物が微細分散している下部ベイナイトもしくは炭化物の無いベイニティックフェライトが主相で、面積率が97%を超えることが望ましい。一方、溶接熱影響部での軟化防止が問題となる。これに対しては、後述するように成分を規定した(1−1)および(2−1)式を満たすことで、引張り強度が800MPa以上の高強度材の溶接性を確保するものとした。
また、硬質のマルテンサイトが共存すると溶接時の耐軟化抵抗性確保等が困難になるが、そのマルテンサイト中の炭素量が質量%で0.1%未満またはビッカ―ス硬度が450以下である場合には、溶接性の低下の程度は大きくない(ただし、溶接性の観点からはより低炭素および低硬度が望ましい)。したがって、低炭素または比較的低硬度のマルテンサイトであれば主相として十分機能する。一般に、この種の低温変態生成物を区別することは難しい。しかし、レペラ―液によるエッチングや膨張・収縮曲線を採取する事で区別可能である。例えば、冷却時の収縮曲線にて観察される変曲点の違いにより区別可能である。
具体的には、Ms(℃)=561−474×C(mass%)−33×Mn(mass%)−17×Ni(mass%)−17×Cr(mass%)−21×Mo(mass%)であらわされる温度以下で変態が観察される場合には、その低温変態生成物はマルテンサイトであり、Ms以上Bs(℃)=830−270×C(mass%)−90×Mn(mass%)−37×Ni(mass%)−70×Cr(mass%)−83×Mo(mass%)以下での温度域で観察される変態生成物はベイナイトである。さらに、硬度については、荷重100g以下のマイクロビッカ―ス硬度測定で求めることが出来る。通常マルテンサイトは非常に微細な組織単位からなっているが、ここでは主相としてのマルテンサイト相の硬度を既定するもので圧痕の大きさとして数十ミクロン程度以下の測定条件で求める事が望ましい。
延性確保や高強度化の観点からすると、面積率で30%未満のフェライトを含んでも良い。一方、オーステナイトおよび/または硬質のマルテンサイトを含むことは穴拡げ加工性や溶接熱影響部の軟化挙動の点から望ましくないが、面積率3%未満程度であれば、顕著な特性劣化が認められないことから、面積率で3%未満含んでも良い。さらに、酸化物や硫化物等の介在物を不可避的に含んでも良い。
また、式(1−1)及び式(1−2)を満足しない場合には、引張り強度で800MPa以上を確保できなかったり、溶接熱影響部分の軟化を抑制できないことに加えて穴拡げ性の確保も困難となる。
(3.0Nb+2.5Mo+1/10Si+Mn)−(2C0.5+2)>0 … (1−1) (2−1)
また、上記の他にミクロ組織の残部組織として、炭化物、窒化物、硫化物、酸化物の1又は2以上を面積率1%以下で含有する場合も本発明で用いることができ、これらは主相の面積率に含めた。なお、上記ミクロ組織の各相、フェライト(ベイニティックフェライト)、ベイナイト、オーステナイト、マルテンサイト、界面酸化相および残部組織の同定、存在位置の観察および面積率の測定は、ナイタール試薬および特開昭59−219473号公報に開示された試薬により鋼板圧延方向断面または圧延直角方向断面を腐食して500倍〜1000倍の光学顕微鏡観察および1000〜100000倍の電子顕微鏡(走査型および透過型)により定量化が可能である。各20視野以上の観察を行い、ポイントカウント法や画像解析により各組織の面積率を求める事ができる。
以下に本発明を更に詳細に説明する。まず、本発明における鋼の化学成分の限定理由について説明する。
Cは、良好な強度−穴拡げ性バランスを確保するための主相および第2相の率を制御する目的で添加する元素である。素地の微細均一化についても影響を与える。強度および各第2相の面積率を確保するために下限を0.01%とし、逆に多く含有すると、脆性破壊の起点となるセメンタイトを増加させるため、水素脆性や穴拡げ性の劣化を生じ易くする。従って、上限を0.25%とした。また、残留オーステナイトやマルテンサイトの生成を抑制して優れた穴拡げ性の確保の観点から式(1−3)および(2−3)の範囲を満たすこととした。
Siは、材質を大きく硬質化する置換型固溶体強化元素であり、0.01%以上含有することにより鋼板の強度を上昇させることに有効なうえ、セメンタイト析出を抑制する元素であるが、3.0%を超えると鋼材の靭性自体に悪影響を及ぼすため、3.0%を上限とする。
Mnは、鋼板の強度上昇に有効な元素である。また、フェライト変態を抑制して、主相をベイナイト、ベイニティックフェライトの一方又は双方にするのに有効である。さらに、強度低下と穴拡げ性劣化の1つの原因である炭化物析出や、パーライト生成を抑制する目的で添加する。しかし、0.01%未満ではこの効果が得られないので、下限値を0.01%とした。逆に多いと偏析が顕著となり、加工性が劣化する場合があるため4.0%を上限値とする。なお、Mnの上限値は、本発明の実施例の表1の鋼種No.20のMn量が3.05%であることに基づいて、3.05%とする。
Pは、粒界偏析による粒界破壊の助長をする元素であり、低い方が望ましいが、極低下は製造コスト上好ましくないため、下限を0.0001%ととした。また、耐食性を劣化させる元素であるため、上限を0.05%とする。
Sは、腐食環境下での水素吸収を助長する元素であり、低い方が望ましいため上限を0.05%とする。一方、極低下は製造コスト上好ましくないため、下限を0.0001%とした。
Alは、脱酸のために0.01%以上を添加するが、添加量が増加するとアルミナ等の介在物が増加し、加工性が劣化するため3.0%を上限とする。
Nは、加工性劣化や溶接時のブローホール発生にも寄与するため少ない方が良い。0.01%を越えると加工性が劣化してくるので、0.01%を上限とする。また、極低下は経済的に不利なため下限を、0.0001%とする。
Niは、水素侵入を抑制し遅れ破壊特性を向上させる効果や、鋼板の焼入れ性を高めることにより鋼板の強度を確保する効果がある。しかし、0.001%未満ではこれらの効果が得られないため下限値を0.001%とした。逆に、5.5%超では加工性が悪くなるため、上限値を5.5%とした。
Cuは、水素侵入を抑制し遅れ破壊特性を向上させる効果や、強化に有効である上、自信の微細析出は遅れ破壊の向上にも寄与するため、0.001%以上の添加とした。また、過剰添加は加工性の劣化を招くことから、上限を3.0%とした。
Crは、水素侵入を抑制し遅れ破壊特性を向上させる効果や、鋼板の強度上昇に有効な元素である。しかし、0.001%未満ではこれらの効果が得られないため、下限値を0.001%とした。逆に、5%超含有すると加工性低下が生じるため、上限値を5%とした。
Moは、水素侵入を抑制し遅れ破壊特性を向上させる効果や、鋼板の焼入れ性を高め連続焼鈍設備で安定してマルテンサイトを得るために有効な元素であるだけでなく、粒界を強化して水素脆性の発生を抑制する効果がある。また、強度−穴拡げ性バランスを劣化させる炭化物やパーライトの生成を抑制する。さらには、フェライト変態を抑制して、主相をベイナイトまたはベイニティックフェライトにするのに有効であり、強度−穴拡げ性−溶接性の極めて良好なバランスを得るために重要な添加元素である。しかし、0.005%未満ではこれらの効果が得られないため、下限値を0.005%とした。また、5%超ではこれらの効果が飽和するため、上限値を5%とした。
Nbは、鋼板の強度上昇及び細粒化に有効な元素である。微細な炭化物、窒化物または炭窒化物を形成して、鋼板の強化に極めて有効である。また、フェライト変態を遅滞させ、ベイナイトおよびベイニティックフェライトの生成を助長する。さらには、溶接熱影響部の軟化抑制にも効果的である。しかし、0.001%未満ではこれらの効果が得られないため、下限値を0.001%とした。逆に、1%超含有すると、炭窒化物の析出が多くなり加工性および耐遅れ破壊性低下が生じるため、上限値を1%とした。
Vは、水素侵入を抑制し遅れ破壊特性を向上させる効果や鋼板の強度上昇及び粒径の微細化に加えて炭窒化物の形態制御により水素のトラップサイトととして活用可能であることからも耐水素脆化向上のための重要な添加元素である。しかし、0.005%未満ではこの効果が得られないために、下限値を0.005%とした。逆に、1%超含有すると炭窒化物の析出が顕著になり、延性低下が著しくなる。このため上限値を1%とした。
Se,As,Sb,Sn,Pb,Biは、単独で0.05%を超えて含有または合計で0.05%を超えて含有すると、耐遅れ破壊特性を著しく阻害するため、各々の元素について上限を0.05%とし、かつ、元素の合計について上限を0.05%とした。一方で、極低化はリサイクル上の制限を狭める理由から、それぞれ0.0002%を下限とした。
REM,Ca,Mgは、鋼板表面の腐食に伴う界面雰囲気の水素イオン濃度の上昇を抑制する、すなわちpHの低下を抑制するのに有効な元素である。しかし、それぞれ0.0002%未満ではこれらの効果が得られないため、下限値を0.0002%とした。逆に、それぞれ0.1%超含有すると加工性が劣化するため、上限値を0.1%とした。
Yは、介在物の形態制御に有効で、耐遅れ破壊性に寄与することから、0.0002%以上の添加とした。一方、過剰添加は熱間加工性を劣化させるため、0.1%以下の添加とした。
Tiは、析出物や介在物を生成するために必要な元素である。しかし、0.002%未満では析出物を活用できないため、下限値を0.002%とした。逆に、1%超では粗大析出または出物が生成するために加工性および耐遅れ破壊性が低下する。このため、上限値を1%とした。
Zrは、鋼板の強度上昇及び細粒化に有効な元素である。しかし、0.005%未満ではこれらの効果が得られないため、下限値を0.005%とした。逆に、1%超含有すると、炭窒化物の析出が多くなり加工性および耐遅れ破壊性低下が生じるため、上限値を1%とした。
Hfは、鋼板の強度上昇及び細粒化に有効な元素である。しかし、0.005%未満ではこれらの効果が得られないため、下限値を0.005%とした。逆に、1%超含有すると、炭窒化物の析出が多くなり加工性および耐遅れ破壊性低下が生じるため、上限値を1%とした。
Taは、鋼板の強度上昇及び細粒化に有効な元素である。しかし、0.005%未満ではこれらの効果が得られないため、下限値を0.005%とした。逆に、1%超含有すると、炭窒化物の析出が多くなり加工性および耐遅れ破壊性低下が生じるため、上限値を1%とした。
Wは、鋼板の強度上昇に有効な元素である。しかし、0.005%未満ではこれらの効果が得られないため、下限値を0.005%とした。逆に、5%超含有すると加工性低下が生じるため、上限値を5%とした。
Coは、強化に有効であるため、0.005%以上の添加とした。また、過剰添加は加工性の劣化を招くことから、上限を2.0%ととした。
Bは、鋼板の強度上昇に有効な元素である。しかし、0.0002%未満ではこれらの効果が得られないため、下限値を0.0002%とした。逆に、0.1%超含有すると熱間加工性が劣化するため、上限値を0.1%とした。
次に製造方法について説明する。特に製品板での表面状態を確保するために、製造工程における酸化スケールの形成およびデスケを十分に行う観点から下記のような製造方法とするのが望ましい。
まず、熱延時の加熱温度は変形抵抗の観点から1100℃以上とした、また、高温すぎると粒粗大化やスケール形成の増大などの問題があるため1300℃以下とすることが望ましい。熱間圧延ではフェライト粒にひずみが過度に加わり加工性が低下するのを防ぐために熱間圧延をAr3 +30℃以上で行い、また、高温すぎても焼鈍後の再結晶粒径が必要以上に粗大化するため、仕上温度は940℃以下が望ましい。
仕上げ後はスケール形成を出来るだけ防止する観点から、冷速を30℃/sとし、巻き取り温度については、高温にすれば再結晶や粒成長が促進され、加工性の向上が望まれるが、熱間圧延時に発生するスケール生成も促進され酸洗性が低下するので、650℃以下とする。一方で低温になりすぎると硬化するため、冷間圧延時での負荷が高くなる。このため、400℃以上とする。ここで、トラップサイトである微細析出物を巻き取り時に積極的に析出させるためには550〜650℃の巻き取り処理が望ましい。
酸洗後の冷間圧延は、圧下率が低いと鋼板の形状矯正が難しくなるため下限値を10%とする。また、80%を超える圧下率で圧延すると、鋼板のエッジ部に割れの発生及び形状の乱れのため上限値を80%とする。
冷延後焼鈍する際に、焼鈍温度が鋼の化学成分によって決まる温度Ac1 およびAc3 温度(例えば「鉄鋼材料学」:W.C.Leslie著、幸田成康監訳、丸善P273)で、表現される0.8×(Ac3 −Ac1 )+Ac1 (℃)未満の場合には、焼鈍温度で得られるオーステナイト量が少ないので、最終的な鋼板中に主にベイナイト、ベイニティックフェライトの一方又は双方を生成させることができない。また、焼鈍温度が高温となるほど結晶粒の粗大化や表面酸化が促進されるうえ、製造コストの上昇をまねくために、焼鈍温度の上限をAc3 +30(℃)とした。この温度域での焼鈍時間は鋼板の温度均一化とオーステナイトの確保のために10秒以上が好ましい。しかし、30分超では、粒界酸化相生成が促進されるうえ、コストの上昇を招く。
その後の一次冷却はオーステナイト相からフェライト相への変態をある程度抑しつつ、ベイナイト、ベイニティックフェライトの一方又は双方を生成させるのに重要である。この冷却速度を1℃/秒未満にすることは、フェライトやパーライトの生成を促進して強度低下を招く懸念があることから、冷却速度の下限を1℃/秒とした。一方、冷却速度が150℃/秒超の場合には最終的な鋼板中のマルテンサイト相などの硬質相が多量になってしまうことや、操業上困難なため、これを上限とした。
この一次冷却が350℃未満まで行われると、冷却中にマルテンサイトが多量に生成して、穴拡げ性や遅れ破壊を助長するため、冷却停止温度は350〜500℃とした。また、冷却停止温度が500℃を超えると、その後の保持時に炭化物が短時間で生成してしまい、強度低下を招くため、これを上限とした。また、次にベイナイト変態の進行を促すため、この温度域での保持を行う。この停留時間が長時間になると生産性上好ましくないうえ、炭化物が生成してしまうことから3000秒以内とすることが望ましい。また、ベイナイト変態を進行させるため、1秒以上保持し、好ましくは15秒から20分保持することが望ましい。200℃未満ではベイナイト変態が起こりにくく、500℃を超えると炭化物が生じる
また、比較的低炭素または低硬度のマルテンサイト相を主相とするまたは主相の一部として活用する場合には、特にベイナイト変態を促進する必要はない。したがって、一次冷却の停止温度の上限をMf+10℃とし、低炭素または低硬度のマルテンサイト相を確保する事とした。その後硬度の調整のためMf以上450℃以下での保持を行うことも出来る。この保持温度が450℃超になると炭化物等の析出が生じ、穴拡げ性劣化や強度低下につながるため450℃を上限とした。ここで、Mf温度は、Mf(℃)=361−474×C(mass%)−33×Mn(mass%)−17×Ni(mass%)−17×Cr(mass%)−21×Mo(mass%)で経験的にあらわされる。また、溶接方法については、通常行われる溶接方法、たとえばアーク、TIG、MIG、マッシュおよびレーザー等の溶接を行っても本発明の範囲とする。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
表1に示すような組成の鋼板を、1150〜1250℃に加熱し、Ar3 +30℃変態温度以上で熱延を完了し、冷却後巻き取った鋼帯を酸洗後、冷延して1.2mm厚とした。これらのAc1 およびAc3 変態温度から計算される焼鈍温度に10%H2 −N2 雰囲気中で昇温・保定したのち、3〜150℃/秒の冷却速度で200〜450℃まで冷却し、引き続いて1〜3000秒保持した後、冷却した。鋼種No.18〜21は、焼鈍した後、1〜150℃/秒の冷却速度でMf+10℃以下の温度域に冷却し、引き続いてMf〜450℃の温度域で1秒〜3000秒保持した。これらの鋼板からJIS5号引張り試験片を採取して、機械的性質を測定した。さらに、鉄鋼連盟規格に準拠して穴拡げ試験を行い、穴拡げ率を求めた。溶接性については鋼板をつきあわせた各種溶接を行い、テフロン(登録商標)潤滑にて球頭張り出し試験を行い、母材に対する張り出し高さおよび破断位置を測定した。
Figure 0004102281
鋼板の耐遅れ破壊性の評価方法の詳細は以下の通りである。
(1)調質圧延後、プレス時の歪を模擬する目的で2%歪を鋼板に与える。
(2)鋼板より応力集中率3.2の切欠き板状引張り試験片を採取する。
(3)3%NaCl−3g/1NH4 SCN水溶液中で0.01〜0.025mA/cm2 で定電流陰極チャージを施す。
(4)Cdめっきを行う。
(5)引張り強度の0.8倍の一定荷重を付加する。
(6)100hまで試験を行い、破断か未破断を判断する。
表2に各鋼のミクロ組織と各材質について、また、表3、表4に各製造条件と材質について示す。本発明の要件を満たす発明鋼は、溶接性、強度(引張り強度で800MPa以上)、穴拡げ性に優れていることがわかる。特に、穴広げ性については80%と優れた値を示す。一方、本発明の条件から外れる比較例は、溶接部の球頭張り出し高さ、引っ張り強度および穴拡げ性、遅れ破壊評価の何れかが劣勢である。
また、低炭素・低硬度マルテンサイト相を主相とする鋼種No.18〜21の本発明の要件を満たす発明鋼は、溶接性、強度(引張り強度で800MPa以上)、穴拡げ性に優れていることがわかる。一方、同じように主相をマルテンサイトの場合でも要件を満たさない鋼種No−処理Noの6−1および17−2は、強度は高いものの、遅れ破壊、溶接性および穴拡げ性のいずれも劣る。
Figure 0004102281
Figure 0004102281
Figure 0004102281


特許出願人 新日本製鐵株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1

Claims (9)

  1. 質量%にて、
    C :0.01〜0.25%、
    Si:0.01〜3.0%、
    Mn:0.01〜3.05%、
    P :0.0001〜0.05%、
    S :0.0001〜0.05%、
    Al:0.01〜3.0%、
    N :0.0001〜0.01%、
    Nb:0.001〜1.0%
    Mo:0.005〜5%
    を含有し、
    Ni:0.001〜5.5%、
    Cu:0.001〜3.0%、
    Cr:0.001〜5.0
    うち1種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、ミクロ組織が、面積率でベイナイト、ベイニティックフェライト、炭素量が0.1%未満若しくはビッカ―ス硬度が450以下であるマルテンサイトの一相又は二相以上を合計で70%以上含有し、残留オーステナイト(Vγ)を3%未満に制限し、引張強さ(TS)が800MPa以上であり、更に下記式(1−1)〜(1−3)を満たすことを特徴とする耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度鋼板。
    (3.0Nb+2.5Mo+1/10Si+Mn)−(2C0.5+2)>0 … (1−1)
    0≦0.8×{2Cu+20Mo+3Ni+Cr}−{0.1−3.5×107 ×(TS)-3.1}−0.3Vγ … (1−2)
    0>Si+Al+7.67C−1.78 … (1−3)
    ここで、TS:引張強さ(MPa)、
    元素記号は鋼中に含まれる各元素の質量%を示す。
  2. 質量%にて、
    C :0.01%〜0.25%、
    Si:0.01〜3.0%、
    Mn:0.01〜3.05%、
    P :0.0001〜0.020%、
    S :0.0001〜0.020%、
    Al:0.01〜3.0%、
    N :0.0001〜0.01%、
    Nb:0.001〜1.0%
    Mo:0.005〜5%
    を含有し、
    Ni:0.001〜5.5%、
    Cu:0.001〜3.0%、
    Cr:0.001〜5.0
    うち1種以上を含有し、更に、V:0.005〜1%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、ミクロ組織が、面積率でベイナイト、ベイニティックフェライト、炭素量が0.1%未満若しくはビッカ―ス硬度が450以下であるマルテンサイトの一相又は二相以上を合計で70%以上含有し、残留オーステナイト(Vγ)を3%未満に制限し、引張強さ(TS)が800MPa以上であり、更に下記(2−1)〜(2−3)式を満たすことを特徴とする耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度鋼板。
    (3.0Nb+2.5Mo+1/10Si+Mn)−(2C0.5+2)>0 … (2−1)
    0≦0.8×{2Cu+20Mo+3Ni+Cr+20V}−{0.1−V/5−3.5×107 ×(TS)-3.1}−0.3Vγ … (2−2)
    0>Si+Al+7.67C−1.78 … (2−3)
    ここで、TS:引張強さ(MPa)、
    元素記号は鋼中に含まれる各元素の質量%を示す。
  3. 更に、質量%にて、
    Se:0.0002〜0.05%、
    As:0.0002〜0.05%、
    Sb:0.0002〜0.05%
    b:0.0002〜0.05%、
    Bi:0.0002〜0.05%、
    の1種または2種以上を含有し、かつ、それらの合計が0.05%以下を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載の耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板。
  4. 更に、質量%にて、
    REM:0.0002〜0.10%、
    Ca:0.0002〜0.10%、
    Y :0.0002〜0.10%、
    Mg:0.0002〜0.10%
    の1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板。
  5. 更に、質量%にて
    Ti:0.002〜1%、
    Zr:0.005〜1%、
    Hf:0.005〜1%、
    Ta: 0.005〜1%、
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板。
  6. 更に、質量%にて
    W :0.005〜5%、
    Co:0.005〜2.0%、
    の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板。
  7. 更に、質量%にて、
    B :0.0002〜0.1%、
    を含有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の耐水素脆化、溶接性および穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の組成からなる鋳片を1100℃以上に加熱し、Ar3点+30℃以上の仕上温度で熱間圧延を施し、400〜650℃の温度域に30℃/s以上で冷却して、同温度域で捲取り、次いで酸洗の後、圧下率を10〜80%として冷間圧延後、その後焼鈍時の最高温度が0.8×(Ac3−Ac1)+Ac1(℃)以上、Ac3+30(℃)以下で焼鈍した後に、1〜150℃/秒の冷却速度で350〜500℃の温度域に冷却し、引き続いて同温度域で1秒〜3000秒保持することを特徴とする耐水素脆化、溶接性、穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
  9. 焼鈍した後に、1〜150℃/秒の冷却速度でMf+10℃以下の温度域に冷却し、引き続いてMf〜450℃の温度域で1秒〜3000秒保持することを特徴とする請求項記載の耐水素脆化、溶接性、穴拡げ性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
    ここで、Mf(℃)=361−474×C(質量%)−33×Mn(質量%)−17×Ni(質量%)−17×Cr(質量%)−21×Mo(質量%)
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