JP4100801B2 - 有機性廃棄物の発酵処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機性廃棄物を微生物の能力を利用して発酵処理する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、生ゴミ、汚泥等の有機性廃棄物の一部は微生物による発酵処理を行って、堆肥、飼料あるいは土壌改良剤等としてリサイクルされている。これらの有機性廃棄物は一般的に含水率が70〜95%程度と高く、そのままでは良好な好気発酵が起こらないため、有機性廃棄物に、おがくず、もみがら、稲わら、木材チップ等を副資材として加えて含水率を40〜60%に調整した後、撹拌、通気を行うことにより微生物を増殖させて有機性廃棄物を発酵処理する方法が一般的に行われる。
【0003】
しかしながら、副資材として用いられるおがくず、もみがら、稲わら、木材チップ等は、微生物による分解が遅いため、堆肥化に要する時間を延長させると共に処理物の中に最後までこれらの副資材が残ることとなる。さらに、施肥した土壌中においてこれらの副資材の分解が進んだ場合には、土壌の窒素飢餓や発熱を引き起こす可能性があった。また、このような副資材は再利用が不可能なため、連続的に堆肥化処理を行う場合には、副資材の貯蔵場所が必要であり、特にもみがらや稲わらを使用する場合には、入手できる季節が限られているため、多量の副資材を貯蔵できる場所が必要であった。
【0004】
そのため、このような有機性の副資材の使用が困難な施設では、難分解性のプラスチックやゴムを副資材として用い、発酵処理後に副資材を回収して再利用することが試みられている。しかし、一般にこのような難分解性のプラスチックやゴムは、通気性の改良という面では有効であるものの、微生物の担体としては有機性の副資材に劣り、さらに、水分の吸出が少ないため、水分調整材として十分に機能しないという問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
また、特開平9−314199号公報には、汚泥を発酵処理する際の副資材として炭、木片、プラスチック多孔質材等の多孔性物質を用いることが提案されているが、これらの副資材も、処理物との分離が困難であったり、水分調整材としての能力が劣る等の問題点があった。
本発明は、有機性廃棄物を良好に発酵処理することができ、さらに副資材の再利用が可能である有機性廃棄物の発酵処理方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、有機性廃棄物を発酵処理する際の副資材として、生分解性を有する繊維の粒状物を用いることにより、良好に処理を行うことができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は有機性廃棄物を発酵処理するに際し、生分解性を有する繊維(以下、生分解性繊維という)で形成された粒状物の存在下で一次発酵処理を行った後、処理物から、生分解繊維で形成された粒状物を分離し、分離された該粒状物を再び一次発酵処理において利用するとともに、分離された処理物は二次発酵処理を行うことを特徴とする有機性廃棄物の発酵処理方法を要旨とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の処理対象となる有機性廃棄物としては、厨芥、残飯、食品加工工場や生鮮市場から発生する食品残滓、活性汚泥、剪定枝、落ち葉、廃棄生物(例えば、家畜、ペット、実験動物等の死体)等が挙げられる。
本発明でいう発酵処理とは、有機性廃棄物を微生物の作用によって分解することをいい、発酵処理物は堆肥あるいは飼料等として利用することができる。
【0008】
粒状物を形成する繊維としては、生分解性を有するものであれば特に限定されるものではなく、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、アルブミン、合成ポリペプチド、絹、羊毛等のポリペプチド、アミロース、デキストラン、アルギン酸、キチン、キトサン、木綿、麻、レーヨン、セルロース等の多糖類、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグラクチン、ポリリンゴ酸、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸、ポリ-3-ヒドロキシ吉草酸、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸、ポリ-6-ヒドロキシヘキサン酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等のポリエステルの繊維があげられる。これらの繊維は、単独で用いてもよいし、混合するか、または、共重合体として用いてもよい。共重合体として用いる場合には、生分解性が保持されていれば、他の如何なるユニットを共重合したものでも使用することが可能である。
【0009】
本発明に用いられる生分解性繊維で形成された粒状物としては、上記のような繊維で形成されており、粒状のものであれば特に限定されるものではなく、例えば、繊維を水撹拌等で絡めた粒状物、繊維束又はこれらを熱融着させたもの等があげられるが、一般に繊維で形成された粒状物は処理中に崩壊したり、糸抜けが起こることがあるので、繊維を熱融着させたものを用いることが好ましく、特に繊維束を熱融着させたものを用いることが好ましい。
【0010】
熱融着を行う場合には、粒状物が十分な嵩密度を有するように、例えば、特開平8−206675号公報に記載されているように熱収縮繊維と熱融着繊維を混合して使用したり、融点の異なる2種類以上の繊維又は融点の異なる2種類以上の重合体からなる熱融着性複合繊維を使用することが好ましい。具体的には、高融点繊維と熱融着させるための低融点繊維、外周に低融点成分、内周に高融点成分を配した芯鞘型の熱融着性複合繊維、断面の片側に低融点成分、反対側に高融点成分を配したサイドバイサイド型の熱融着複合繊維等の、いわゆるホットメルト型繊維を少なくとも30重量%以上、好ましくは50重量%以上用いることが好ましい。この場合には、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸、ポリ-3-ヒドロキシ吉草酸、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸、ポリ-6-ヒドロキシヘキサン酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等の低融点繊維をバインダーとして用いることにより良好な熱融着を行うことができる。
【0011】
粒状物の大きさとしては、2〜50mmが好ましく、5〜20mmがさらに好ましい。粒状物が2mmよりも小さいと発酵処理後に処理物と副資材との分離が困難になる傾向にあり、また50mmよりも大きいと、通気性の改良という面で良好ではないために好ましくない。また、粒状物の嵩密度としては、0.03〜0.3g/mlであることが好ましく、嵩密度が、大きすぎると処理物とうまく混合できないために好ましくない。
【0012】
副資材として使用する生分解性繊維で形成された粒状物としては、コンポスト化過程で急激な分解を受けると副資材としての役割を果たすことができず、また、頻繁な補充が必要となるので、少なくとも堆肥化条件下で2日以上、好ましくは1週間以上、さらに好ましくは1ヶ月以上、副資材としての機能を保つことができるものを用いることが好ましい。また、最終処理物に副資材が残留した場合、施肥した土壌中で問題とならないよう、好ましくは1年、遅くとも3年以内に分解消滅するものであることが望ましい。
【0013】
繊維で形成された粒状物の混合量としては、有機性廃棄物の含水率が20〜80%、好ましくは30〜70%となるように添加することが好ましい。本発明に使用する繊維で形成された粒状物は、水分の吸放出性に優れているため、含水率が30%以下あるいは70%以上でも良好に発酵は進行するが、連続して処理を行う場合には含水率を30〜70%としておくことが望ましい。
【0014】
発酵処理を行う発酵槽の形式としては、特に限定されるものではなく、野積、ロータリーキルン、オーガー、多段、サイロ、ビン式等の形式の堆肥化装置の他、小型の撹拌装置付きの堆肥化装置等が好適に使用できる。
【0015】
発酵処理に際しては、廃棄物中には、通常多量の微生物が付着しているため、種菌や種コンポストを加えなくても処理することができる。特に、副資材を繰り返し利用する場合には、副資材に付着した発酵菌によって速やかに処理が進む。しかし、副資材に発酵菌の付着が少ない初期の段階においては、種菌や種コンポストを加えることにより処理速度の向上が期待できる。
【0016】
発酵処理の条件としては、発酵槽内の含水率が極端に低くなると、後に処理物と生分解性繊維で形成された粒状物を分離することが困難となることがあるので、散水等をして発酵槽内の含水率を常に20〜80%に保っておくことが好ましい。
発酵が進行すると、処理物の温度上昇が起こり、50〜60℃前後にまで達し、一次発酵が終了すると、処理物の温度は徐々に下降してくる。
【0017】
本発明においては、この一次発酵が終了した時点で生分解性繊維で形成された粒状物を分離することが必要である。一次発酵の終了は、処理物の温度の下降が始まることや、発酵によって排出される二酸化炭素の発生が収まることによって確認することができる。
【0018】
処理物から生分解性繊維で形成された粒状物を分離する方法としては、特に限定されるものではないが、振動ふるいによって行うことが最も容易である。このとき、副資材として使用している生分解性繊維で形成された粒状物は、二次発酵により分解されるため、完全に分離しなくてもよいが、多量の粒状物が分離されなかった場合には、次に行なう二次発酵の期間が長くなったり、二次発酵で十分に分解されなかったりする可能性があるため、この時点でできるだけ分離しておくことが好ましい。分離された粒状物は、再び発酵処理の副資材として利用することができる。
【0019】
本発明においては次に、分離された処理物をさらに発酵させることが必要である。このとき、分離された処理物は含水率を40〜60%に調整することが好ましい。
このようにして発酵処理して得られる処理物は、堆肥、飼料あるいは土壌改良剤として利用することができる。
【0020】
以下、本発明の実施態様の一例を図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の有機性廃棄物の発酵処理方法のプロセスの一例を示す図である。
まず、有機性廃棄物4を、第一発酵槽1に導入し、繊維で形成された粒状物6と混合して含水率を40〜80%に調整して一次発酵を行う。第一発酵槽1においては、常に含水率を40〜80%に保って好気発酵を行い、一次発酵がほぼ終了した時点で、(生分解性繊維で形成された粒状物を含む)処理物5を分離槽2に導入し、分離槽2において、振動ふるいで処理物7と生分解性繊維で形成された粒状物6に分離する。分離した生分解性繊維で形成された粒状物6は、再び第一発酵槽1に戻し、発酵の副資材として使用する。また、分離した処理物7は第二発酵槽3に導入して二次発酵を行う。
【0021】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0022】
実施例1
おから(含水率約80%)5kgと種堆肥1kgに、生分解性繊維で形成された粒状物として、ポリ乳酸繊維(繊維長約6mm、繊維径約0.5mm)を熱融着して形成した粒状物(直径約6mm)を10リットル加え、含水率を70%に調整した。これを、家庭用生ゴミ処理機(三洋電気社製、商品名:ゴミナイス)を用いて24時間発酵処理した。
処理物を投入後、温度の上昇が起こり、8時間後に最大62℃にまで達し、良好な発酵が進行した。温度はその後下降し、24時間後には40℃となった。
【0023】
24時間後、生分解性繊維で形成された粒状物を含む処理物全量を生ゴミ処理機から取り出し、4mm径のふるいにて生分解性繊維で形成された粒状物と処理物を完全に分離した。分離した粒状物は生ゴミ処理機内に戻し、処理物はさらに1Lの容器内(二次発酵槽)で下部より通気を行い、発酵処理を行った。なお、小型の処理容器を用いて発酵処理を行った場合には外部への熱放散が大きく、発酵熱によって起こる温度上昇を検知することが困難であるため、発酵処理は、処理容器を恒温槽に入れ、恒温層の温度を処理容器内の温度よりも常に1℃低くなるように調節して行った。
処理物の温度は、1日後には最大温度である63℃となり、その後徐々に低下して2日後には32℃となった。
また、分離された生分解性繊維で形成された粒状物を用いて再度おからの処理を行ったところ、1回目と同様に良好に処理を行うことが可能であった。
【0024】
上記の操作を10回連続(10日間)して行った後、生分解性繊維で形成された粒状物を良く洗浄・乾燥して、観察および重量測定を行った。試験開始前に比べて、試験後には、かなりの粒状物が崩壊しており、12%の重量減少が認められた。さらにこの粒状物を土中約10cmのところに埋めたところ、6ヶ月後にはほぼ形状が無くなり、1年後には消滅した。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、有機性廃棄物を良好に発酵処理することができ、さらに副資材の再利用が可能であるため、副資材の貯蔵所を設ける必要もなく、費用の削減が可能となる。さらに、最終処理物中に副資材が残留した場合でも、処理物中で分解が進むために、良質の堆肥や肥料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機性廃棄物の発酵処理方法のプロセスの一例を示す図である。
【符号の説明】
1 第一発酵槽
2 分離槽
3 第二発酵槽
4 有機性廃棄物
5 (生分解性繊維で形成された粒状物を含む)処理物
6 生分解性繊維で形成された粒状物
7 処理物
8 堆肥あるいは肥料
Claims (1)
- 有機性廃棄物を発酵処理するに際し、生分解性を有する繊維で形成された粒状物の存在下で一次発酵処理を行った後、処理物から、生分解性を有する繊維で形成された粒状物を分離し、分離された該粒状物を再び一次発酵処理において利用するとともに、分離された処理物は二次発酵処理を行うことを特徴とする有機性廃棄物の発酵処理方法。
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JP01976599A JP4100801B2 (ja) | 1999-01-28 | 1999-01-28 | 有機性廃棄物の発酵処理方法 |
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