JP4100107B2 - 静電荷像現像用トナー、その製造方法、画像形成方法および画像形成装置 - Google Patents
静電荷像現像用トナー、その製造方法、画像形成方法および画像形成装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタ等に用いられる静電荷像現像用トナー、前記トナーの製造方法、および前記トナーを用いた画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
水系媒体中で重合の行われる懸濁重合法や乳化重合法により得られる重合トナーは、トナーの粒径や形状が制御可能であるため、小粒径で分布の揃った、粒子上に角のない丸みを有することが特開2000−214629号公報の段落0008〜0016に開示され、その細線再現性、高解像性からデジタル画像用の小さなドット画像の再現可能なトナーとして注目されている。
【0003】
また、重合トナーに関してもリサイクル使用する技術が適用され、リサイクル使用に耐える性能を有することが要求されている。
【0004】
しかしながら、現像器内における撹拌やリサイクル手段内の移動の際に生ずる機械的なせん断力の影響で、トナーは劣化して微粉を発生させる問題を有していた。特にリサイクル手段を有する画像形成装置では、トナーは長期にわたり、しかも頻繁に機械的なせん断力を受け続けるので、トナーの劣化は加速され、微粉を発生させ易い環境に置かれていた。
【0005】
また、画像形成の露光時に発生するオゾンが画像形成装置内に存在しているために、有機物を分解する性質を有するオゾンの作用により、トナー粒子表面に亀裂が発生して劣化や微粉化を更に悪化させた。そこで、画像形成装置においては露光によるオゾン発生量を抑制したり、発生したオゾンを効果的に装置外に放出させる機能を付与する等の対策が講じられているが、オゾンによるトナーの劣化や微粉化は十分に解決されていない。
【0006】
このように、現像器内やトナーリサイクル手段内で機械的なせん断力を受けて発生したトナー微粉は、飛散し易い性質を有するために、装置内の摩擦帯電部材や感光体を汚染したり、微粉化によりクリーニング部からトナーがすり抜け易くなるために、クリーニング不良等の問題を発生させる。さらに、飛散したトナー微粉は記録紙等の転写媒体上に付着して非画像白地部分におけるカブリの原因となる。また、転写極に付着し滞留したトナー微粉は転写不良を起こし、その結果ハーフトーン画像上に転写不良による汚染を起こしたり、クリーニング部からすり抜けたトナー微粉により転写紙上の白地部分を汚染したり、画像形成の繰り返しに伴って現像ローラ表面に付着したトナー微粉が融着してハーフトーン画像上にスジ状の汚れを発生させる問題が起きた。
【0007】
さらに、飛散したトナー微粉が定着部に蓄積して、定着性能を低下させる結果定着不良を誘発し、特に低温低湿の環境におかれた画像形成装置では大きな問題となった。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−214629号公報(段落0008〜0016)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の様な事情に基づいてなされたものである。すなわち、
本発明の第1の目的は、オゾンが発生する雰囲気下においても劣化、微粉を発生させない十分な耐オゾン耐久性を有する静電荷像現像用トナーを提供することである。
【0010】
また、本発明の第2の目的は、トナー粒子自体がオゾン耐性を有する静電荷像現像用トナーを提供することである。
【0011】
本発明の第3の目的は、トナーリサイクル機構を有する画像形成装置に供することの可能な静電荷像現像用トナーを提供することである。
【0012】
本発明の第4の目的は、白地部にカブリを発生させたり、ハーフトーン画像部にスジ状の汚れや濃度ムラを発生させたりしない美しい電子写真画像の得られる静電荷像現像用トナーを提供することである。
【0013】
本発明の第5の目的は、低温低湿環境下において画像形成を行っても定着不良を発生させない定着性に優れた静電荷像現像用トナーを提供することである。
【0014】
本発明の第6の目的は、常に文字潰れの発生しない現像性および細線再現性の優れた高画質画像を長期にわたり安定的に形成することのできる静電荷像現像用トナーを提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、トナー粒子を形成する樹脂がセル構造を有することによって、画像形成装置の現像器内の様にある程度の濃度を有するオゾンが存在する環境下で画像形成のために長期にわたり撹拌されても、トナー粒子が劣化や破砕せずに高耐久性能が得られることを見出した。
【0016】
本発明は以下に示す何れか1項の構成を採ることにより達成される。
〔1〕 少なくとも樹脂と着色剤とを含有する静電荷像現像用トナーにおいて、該トナー粒子を構成する樹脂がセル構造を有するもので、
該セルのフェレ水平径の平均値が20〜200nmであり、該フェレ水平径の変動係数が10〜35%であるとともに、
該セルの形状係数の平均値が120〜160で、その変動係数が30%以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0018】
〔2〕 少なくとも樹脂と着色剤と離型剤とを含有する静電荷像現像用トナーにおいて、該トナー粒子を構成する樹脂がセル構造を有するもので、該セルの形状係数の平均値が120〜160で、その変動係数が30%以下であることを特徴とする前記〔1〕に記載の静電荷像現像用トナー。
【0022】
〔3〕 トナー粒子の個数粒度分布における個数変動係数が27%以下であり、かつ、形状係数の変動係数が16%以下であることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の静電荷像現像用トナー。
【0023】
〔4〕 角がないトナー粒子の全トナー粒子における割合が50個数%以上であり、かつ、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下であることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の静電荷像現像用トナー。
【0024】
〔5〕 形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の全トナー粒子における割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下で、かつ、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下であること特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の静電荷像現像用トナー。
【0025】
〔6〕 トナー粒子の粒径をD(μm)とするときに、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおける最頻階級に含まれる該トナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれる前記トナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0026】
〔7〕 トナー粒子の個数平均粒径が2〜7μmであることを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0027】
〔8〕 前記〔1〕〜〔7〕の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーを製造するにあたり、水系媒体中で重合性単量体を重合して樹脂粒子を作製する工程を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0028】
〔9〕 樹脂粒子を水系媒体中で凝集、融着させる工程を有することを特徴とする前記〔8〕に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0029】
〔10〕 樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる工程を有することを特徴とする前記〔8〕又は〔9〕に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0030】
〔11〕 樹脂粒子が多段重合法によって得られたものであり、該樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる工程を有することを特徴とする前記〔8〕〜〔10〕の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0031】
〔12〕 着色剤粒子の表面に、塩析/融着により樹脂粒子を融着させて樹脂層を形成させる工程を有することを特徴とする前記〔8〕〜〔11〕の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0032】
〔13〕 感光体上に形成された静電潜像を前記〔1〕〜〔7〕の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーにより可視画像化する画像形成方法であって、該感光体上への照射がデジタル露光によって行われるものであることを特徴とする画像形成方法。
【0033】
〔14〕 感光体上に形成された静電潜像を前記〔1〕〜〔7〕の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーにより可視画像化する画像形成方法であって、該静電荷像現像用トナーをリサイクル使用することを特徴とする画像形成方法。
【0034】
〔15〕 感光体上に形成された静電潜像を前記〔1〕〜〔7〕の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーを用いて可視画像化する現像手段、該可視画像を転写媒体上に転写する転写手段、及び該転写媒体上に転写された該可視画像を加熱定着する加熱定着手段を有する画像形成装置であって、該感光体上への照射がデジタル露光によって行われるものであり、現像環境におけるオゾン濃度が0.1〜10ppmであることを特徴とする画像形成装置。
【0035】
〔16〕 感光体上に形成された静電潜像を前記〔1〕〜〔7〕の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーを用いて可視画像化する現像手段、該可視画像を転写媒体上に転写する転写手段、及び該転写媒体上に転写された該可視画像を加熱定着する加熱定着手段を有する画像形成装置であって、トナーリサイクル手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
【0037】
本発明は、トナー自体がオゾン耐性を有するトナー、その製造方法と、それを用いた画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【0038】
本発明のトナー粒子は、トナー粒子を構成する樹脂がセル構造を有し、セルのフェレ水平径の平均値が20〜200nmであり、フェレ水平径の変動係数が10〜35%であるとともに、セルの形状係数の平均値が120〜160で、その変動係数が30%以下である。セル構造を有する本発明のトナーは、現像器内での撹拌により生ずる機械的せん断力の作用や、あるいは画像形成装置内にオゾンが多く存在する環境下でも、微粉を発生しない性質を有することが見出された。
【0039】
ここで、セル構造について、トナー粒子の構造を生物の細胞構造に模して説明する。すなわち、セル構造を有するトナー粒子とは、細胞壁に対応する樹脂相であるセル壁と、それに包まれる細胞質に対応する樹脂相であるセルとから構成されている。但し、セルの一部が開口して隣接するセル壁とつながった構造を有していてもよい。本発明のトナーでは、後述するトナー断面に示すように、プラズマオゾン処理した後のトナー粒子を観察すると、トナー粒子を構成する樹脂がお互いに混和せずにセル壁を介して独立した複数のセルの集合体を有することが確認される。
【0040】
本発明は、トナー粒子を構成する樹脂がこのセル構造を有する。トナー粒子は、図1の模式図で示される断面を有する。図1に示される様に、本発明のトナー粒子は、各セルがセル壁と呼ばれる樹脂の相により隔てられた構造によってトナー粒子中においてセルの集合体を有する。
【0041】
ここで、セル及びセル壁を構成する樹脂は同組成であっても、例えば結晶化度、分子量、塩等の不純物量の違いにより、電子顕微鏡では双方の領域の輝度が異なって観察される。図1の模式図は後述する透過型電子顕微鏡写真の結果に基づいて作成したものであり、トナー粒子を薄片とし切断面を観察した図であり、このとき、セル壁の存在を観察しやすくするために、切断したトナー粒子はプラズマ処理を施される。また、図1の模式図は、本発明のトナー粒子を構成する樹脂がセルとセル壁とを有するものであることをより明瞭にするために、トナー粒子の粒径に対してセルの大きさを実際に観察される大きさよりも意図的に大きく示している。
【0042】
このセル構造が、トナーの耐久性に大きな効果を示す理由は明確ではないが、例えば、次の様に考えられる。
【0043】
すなわち、内部がセル構造となっていることにより、粒子内部に緩衝構造を保持させることができ、脆さのない、微小な弾性構造を有するものと推定される。その結果、機械的なストレスを受けた場合にトナー粒子内部にそのストレスを拡散させることができるため、微粉などを発生させずに、耐久性を維持することができると推定される。特にオゾンが発生している雰囲気下では樹脂が酸化され、分解しやすくなっているものと推定され、微粉も発生し易い状況となる。しかし、このセル構造とすることで、セルが一種のバリヤーとなり、オゾンの影響をトナー内部まで進行させることを制御し、オゾン分解の問題を解消することができるものと推定される。
【0044】
本発明のトナー粒子が、オゾンに対してバリヤー効果を発揮する理由は明確ではないが、トナー粒子を構成する樹脂にオゾン分解の影響を受けやすい領域と受けにくい領域とが混在することがその原因と推測される。すなわち、本発明のトナー粒子のセル構造は、オゾン分解の作用を受け易い領域が粒子状のセルとなりトナー粒子の中央付近に存在し、オゾン分解の作用を受けにくい領域がセル壁となっているものと推測される。
【0045】
本発明のトナー粒子は、セルを複数個有するもので、好ましくは10個以上のセルを有するものである。
【0046】
また、トナー粒子は、その周縁部にセルの存在の疎らな構造を有するものが好ましい。
【0047】
本発明のセル構造を有するトナー粒子においては、図1に示される様に着色剤粒子がセルとセルの間、すなわちセル間に分布している。この着色剤粒子は、トナー粒子中の着色剤粒子全体の60個数%以上がセル間に分布していることが好ましい。また、本発明のトナーでは着色剤粒子がセル間に分布している比率の高いものほど、高耐久性を有することが確認され、全着色剤粒子のうちの80個数%以上がセル間に存在するものが特に好ましい。
【0048】
このように、着色剤粒子がセル間に分布している比率の高いものほど高耐久性であるという明確な理由も明らかではないが、着色剤粒子自体がセル構造の壁として作用し、トナー内部の緩衝機能、オゾンに対するバリヤー機能を発揮するため、トナーの耐久性が維持されるものと推測される。
【0049】
また、本発明のトナー粒子は、着色剤粒子の他に凝集塩や離型剤の様なトナー含有成分もセル壁領域に多く含有するものが好ましい。
【0050】
本発明のセル構造を有するトナー粒子中のセルの大きさは、機械的なストレスを受けた場合や、あるいはオゾンの存在下でも微粉の発生が起こりにくく、好ましい耐久性を満足する観点から、セルのフェレ水平径の平均値が20〜200nmである。
【0051】
また、セルのフェレ水平径の平均値が20〜200nmのとき、セル壁を構成する樹脂がトナー粒子に付与される機械的な衝撃力を適度に吸収することや、セルがオゾンの影響を受けにくい構造であるため、微粉が発生せず、高耐久性が得られると推測される。
【0052】
なお、本発明のセル構造を有するトナー粒子では、セルのフェレ水平径の平均値は40〜160nmが好ましく、特に60〜120nmが好ましい。フェレ水平径とは、本発明のトナー粒子内にあるセルの大きさを特定するもので、任意の状態でトナー粒子を置いたときのトナー粒子断面図におけるセルの水平方向の長さ(最大長)をいう。
【0053】
また、トナー粒子内の各セルのフェレ水平径の大きさは、平均値に対してある程度バラツキを有するが、セルのフェレ水平径の変動係数は10〜35%であり、好ましくは10〜25%、特に好ましくは12〜16%である。
【0054】
トナー粒子内のセルのフェレ水平径の変動係数は、下記の式により得られる。
フェレ水平径の変動係数={S2/K2}×100(%)
〔式中、S2は任意に選ばれた100個のセルのフェレ水平径の標準偏差を示し、K2はフェレ水平径の平均値を示す。〕
この様に、セルのフェレ水平径の変動係数は、各セルのフェレ水平径の平均値に対してのバラツキを表すものである。本発明では、セルのフェレ水平径の変動係数が10〜35%であることが、このトナーを画像形成に用いたときに機械的なせん断力やオゾンの作用によって破砕されにくく、微粉の発生が抑制されるため好ましい。
【0055】
本発明のトナー粒子中に存在するセルの円形度係数は0.75〜0.98である。円形度係数は下記式により算出されるものである。
【0056】
円形度係数=(4π×(セルの面積の和))/(セルの周囲長の和)2
上記式は、セルが真円の時はその値が1となり、セルの形状が細長くなるほど円形度係数の値が0に近づく。本発明のトナーでは、前述の様にセルの形状は、真円ではなく多少真円よりも細長い形状であることにより、トナー粒子の強度が向上し、微粉の発生しないものとなる。
【0057】
本発明のトナー粒子のセル構造の平均径などは、透過型電子顕微鏡(TEMとも言う)により得られ、透過型電子顕微鏡によりトナー粒子を写真撮影し、撮影された写真を画像解析して算出された解析結果により、フェレ水平径をはじめとするセルに関する種々の特性が算出される。
【0058】
透過型電子顕微鏡の測定写真より、本発明のトナー粒子を構成する樹脂は、セル壁の領域とセルの領域とでは、双方の輝度が異なることから本発明のトナー粒子を構成する樹脂がセル構造を有することが確認される。
【0059】
前述の透過型電子顕微鏡における輝度とは、結着樹脂、着色剤等の各トナー構成要素の電子線透過率が各々異なるので、各電子線透過率の差を可視化した時に顕れるもので、一般に着色剤の電子線透過率は結着樹脂の電子線透過率が低いために低輝度すなわち高い濃度で表される。
【0060】
また、電子顕微鏡写真において、低輝度とは画素(ピクセル)の輝度信号を256階調に分割した際に0〜99階調にあるものをいい、中輝度とは80〜160階調の範囲にあるもの、高輝度とは127〜255階調にあるものをいうが、本発明でいう低輝度、高輝度とは、トナーの各構成要素が相対的に判別可能な状態にあればよいもので、必ずしも着色剤の輝度が上記の範囲で定義付けられる低輝度の範囲内にあることを必須要件とするものではない。
【0061】
本発明のトナー粒子の構造を観察することのできる透過型電子顕微鏡装置としては、通常当業者の間でよく知られた機種で十分観察されるもので、例えば「LEM−2000型(トプコン社製)」等が用いられる。本発明では、25,000倍の倍率で、1000個以上のトナー粒子の投影面から本発明で特徴とされるトナー粒子内におけるセルの個数等の透過型電子顕微鏡写真の結果より得られる値を算出したものである。
【0062】
透過型電子顕微鏡における具体的な撮影方法は、トナー粒子を測定する際に行う通常知られた方法で行われるものである。すなわち、トナーの断層面を測定する具体的方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナーを十分分散させた後、包埋し硬化させてもよく、粒径100nm程度のスチレン微粉末に分散させた後加圧成形した後、必要により得られたブロックを四三酸化ルテニウム、又は四三酸化オスミウムを併用し染色を施した後、ダイヤモンド刃を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。
【0063】
切り出されたサンプルより、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、トナーの断層形態を写真撮影する。当該写真からトナー粒子中における着色剤の領域の形状を目視で確認するとともに、本発明のトナー粒子中のセル構造を特定する数値は電子顕微鏡装置により観察された画像情報に基づいて電子顕微鏡装置に付設された画像解析装置「ルーゼックスF」(ニレコ(株)社製)を用いて、撮影された画像情報を演算処理して算出される。
【0064】
また、透過型電子顕微鏡の加速電圧は80〜200kVが好ましいが、得られる画像の高コントラストな電子顕微鏡画像を得る上では80kVで行うことが好ましい。
【0065】
上記測定でセル構造を評価する際、プラズマオゾン処理することで、セル構造を容易に観察することができ、好ましい。
【0066】
次に、本発明で行われるプラズマオゾン処理について説明する。
プラズマオゾン処理装置は、活性ガスを用いたプラズマ放電により試料表面の改質を行うものであって、分析用電子顕微鏡で無機材料等の試料観察を行う際に試料表面に存在する不純物除去やエッチング、アッシング、コーティングと云った試料表面の改質に用いられる。
【0067】
具体的な装置としては、PC−2000プラズマクリーナー(SOUTH BAY TECHNOLOGY社製)、プラズマプレップ5(Gala INSTRUMENT社製)が挙げられ、以下に性能の一例を示す。
【0068】
本発明では、上記条件中RFの出力100Wとし、使用ガスとして、Arとオゾンガスをガスフローメータ、及びニードルバルブ付きのガスサプライにより供給するもので、96リットル/minの真空ポンプによる真空条件下でアルゴンガスを5分、オゾンガスを5分供給しながら都合10分のプラズマ処理を行う。
【0069】
本発明に係るプラズマオゾン処理では、トナー粒子をアクリル樹脂で包埋した後、ウルトラミクロトームで切削し、処理装置内のチャンバー内に設置された銅メッシュ上に載せてプラズマオゾン処理を行う。
【0070】
また、上記プラズマオゾン処理において、真空条件下で活性ガスとして酸素ガスを用いる場合には、真空ポンプ用のオイルとしてはFomblinオイル等の合成オイルを用いることが好ましい。
【0071】
セル構造を確認するときに、トナー粒子は外添剤が混合されて完成された製品であってもトナー粒子のみであってもよい。
【0072】
図2に本発明で用いられるプラズマオゾン処理装置の構成概略側面図を示す。
次に、本発明で好ましく用いられるトナーについて説明する。
【0073】
本発明で用いられるトナー粒子は、形状係数の変動係数が16%以下であり、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下であるトナー粒子から構成されるトナーを使用することで、トナー表面における外添剤の存在状態が均一になり、帯電量分布がシャープになるとともに高い流動性が得られる。その結果、現像性、細線再現性に優れ、安定したクリーニング性を長期にわたって形成することができるとともに、オゾンの存在する画像形成装置内で機械的なせん断力を長期にわたり加えられても、劣化、粉砕してトナー微粉の発生しないものであることを見出した。
【0074】
更に本発明者等は、個々のトナー粒子の微小な形状に着目して検討を行った結果、現像装置内部において、トナー粒子の角部分の形状が変化して丸くなり、その部分が外添剤の埋没を促進させ、帯電量の変化、流動性、クリーニング性を低下させ、特に画像形成装置内におけるオゾンの存在がこれらの問題を促進させていることを見出し、形状を特定のものとすることで、この問題を解決することを見出した。
【0075】
また、摩擦帯電によってトナー粒子に電荷を付与する場合には、特に角部分では外添剤が埋没しやすくなり、トナー粒子の帯電が不均一になりやすいと推定される。即ち、角がないトナー粒子の割合を50個数%以上とし、個数粒度分布における個数変動係数を27%以下に制御されたトナー粒子から構成されるトナーを使用することによっても、現像性、細線再現性に優れ、高画質な画像を長期にわたって形成することが可能であるとともに、オゾンの存在する画像形成装置内において機械的なせん断力を長期にわたり加えられても劣化、粉砕によるトナー微粉の発生のないことを見出した。
【0076】
更に、トナーを特定の形状としてその形状を揃えた場合にも、外添剤の埋没が発生せず、且つ帯電量分布がシャープとなり、微粉の発生しないことが判明した。すなわち、形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下であるトナーを使用することでも、現像性、細線再現性に優れ、高画質な画像を長期にわたって形成するとともに、オゾンの存在する画像形成装置内で機械的なせん断力を長期にわたって加えられても、トナー粒子の形状が揃っているため、トナーの部分的な劣化を抑制することができ、微粉などの発生を抑制し、結果として長期にわたって安定した画像を形成することができることを見出した。
【0077】
ここで、本発明のトナーの個数粒度分布および個数変動係数について説明する。本発明のトナーの個数粒度分布および個数変動係数とは、コールターカウンターTA−IIあるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)で測定される。本発明においてはコールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェイス(日科機社製)、パーソナルコンピューターを接続して使用した。前記コールターマルチサイザーにおいて使用するアパーチャーとしては100μmのものを用いて2μm以上の体積径、個数径を測定して粒度分布および平均粒径を算出した。個数粒度分布とは、粒子径に対するトナー粒子の相対度数を表すものであり、個数平均粒径とは、個数粒度分布における累積50%の径、すなわちDn50を表す。
【0078】
トナーの個数粒度分布における個数変動係数は下記式から算出される。
個数変動係数=〔S/Dn〕×100(%)
〔式中、Sは個数粒度分布における標準偏差を示し、Dnは個数平均粒径(μm)を示す。〕
本発明のトナーの個数変動係数は27%以下であり、好ましくは25%以下である。個数変動係数が27%以下であることにより、転写されたトナー層の空隙が減少して定着性が向上し、オフセットが発生しにくくなる。また、帯電量分布がシャープとなり、転写効率が高くなって画質が向上する。
【0079】
本発明の個数変動係数を制御する方法は特に限定されるものではない。例えば、トナー粒子を風力により分級する方法も使用できるが、個数変動係数をより小さくするためには液中での分級が効果的である。この液中で分級する方法としては、遠心分離機を用い、回転数を制御してトナー粒子径の違いにより生じる沈降速度差に応じてトナー粒子を分別回収し調整する方法がある。
【0080】
次に、本発明のトナーの形状係数について説明する。本発明のトナーは、形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下で、かつ、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下である。ここで、本発明のトナーの形状係数は、下記式により示されるものであり、トナー粒子の丸さの度合いを示す。
【0081】
形状係数=((最大径/2)2×π)/投影面積
ここで、最大径とは、トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線で挟んだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。また、投影面積とは、トナー粒子の平面上への投影像の面積をいう。本発明では、この形状係数は、走査型電子顕微鏡により2000倍にトナー粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、100個のトナー粒子を使用して本発明の形状係数を上記算出式にて測定した。
【0082】
次に、本発明のトナーについて、角がないトナー粒子について説明する。ここで角がないトナー粒子とは、電荷の集中するような突部又はストレスにより摩耗し易い様な突部を実質的に有しないトナー粒子を云い、すなわち、図7(a)に示す様に、トナー粒子Tの長径をLとするときに、半径(L/10)の円Cで、トナー粒子Tの周囲線に対し1点で内側に接しつつ内側を転がした場合に、当該円CがトナーTの外側に実質的にはみ出さない場合を「角がないトナー粒子」という。「実質的にはみ出さない場合」とは、はみ出す円が存在する突起が1箇所以下である場合をいう。
【0083】
また、「トナー粒子の長径」とは、当該トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線で挟んだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。なお、図7(b)及び(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示している。
【0084】
角がないトナーの測定は、次のようにして行った。先ず、走査型電子顕微鏡によりトナー粒子を拡大した写真を撮影し、更に拡大して15,000倍の写真像を得る。次いでこの写真像について前記の角の有無を測定する。この測定を1000個のトナー粒子について行った。
【0085】
本発明のトナーにおいて、角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であり、好ましくは70個数%以上である。角がないトナー粒子の割合が50個数%以上であることにより、現像剤搬送部材などとのストレスにより微細な粒子の発生などがおこりにくくなり、いわゆる現像剤搬送部材表面に対する汚染を抑制することができ、帯電量分布がシャープとなって、帯電性も安定し、良好な画質を長期にわたって形成できるとともに、トナー粒子に機械的なせん断力が加えられても破砕しにくい構造を有するので、微粉の発生防止に寄与する構造を有する。
【0086】
角がないトナーを得る方法は、特に限定されるものではない。例えば、形状係数を制御する方法として前述したように、トナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、またはトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、あるいはトナーを溶解しない溶媒中に添加し、旋回流を付与することによって得ることができる。
【0087】
また、本発明のトナーとしては、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおいて、最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であるトナーであることが好ましい。
【0088】
相対度数(m1)と相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることにより、トナー粒子の粒度分布の分散が狭くなるので、当該トナーを画像形成工程に用いることにより選択現像の発生を確実に抑制することができる。
【0089】
本発明において、前記の個数基準の粒度分布を示すヒストグラムは、自然対数lnD(D:個々のトナー粒子の粒径)を0.23間隔で複数の階級(0〜0.23:0.23〜0.46:0.46〜0.69:0.69〜0.92:0.92〜1.15:1.15〜1.38:1.38〜1.61:1.61〜1.84:1.84〜2.07:2.07〜2.30:2.30〜2.53:2.53〜2.76・・・)に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムであり、このヒストグラムは、下記の条件に従って、コールターマルチサイザーにより測定されたサンプルの粒径データを、I/Oユニットを介してコンピュータに転送し、当該コンピュータにおいて、粒度分布分析プログラムにより作成されたものである。
【0090】
〔測定条件〕
1:アパーチャー:100μm
2:サンプル調製法:電解液〔ISOTON II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)〕50〜100mlに界面活性剤(中性洗剤)を適量加えて攪拌し、これに測定試料10〜20mgを加える。この系を超音波分散機にて1分間分散処理することにより調製する。
【0091】
本発明のトナー粒子の粒径は、個数平均粒径が2〜7μmで、3〜6.5μmであることが好ましく、更に好ましくは3.5〜6μmである。この粒径はトナーの製造方法において、凝集剤(塩析剤)の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成により制御可能なもので、更に、個数平均粒径が2〜7μmという小径化されたものであることにより、転写効率を高めハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質向上に寄与するだけではなく、セル構造を有する本発明のトナーは、トナーが小径化されていることにより、オゾンの暴露された環境下や機械的なせん断力が長期にわたり繰り返し付与される環境下にあっても、単位体積当たりに加わるトナー粒子への負荷が小さくなり、トナーの破砕により発生する微粉が発生しにくい構造を有する。
【0092】
トナーの粒度分布の算出、個数平均粒径の測定は、コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザー(いずれもコールター社製)、SLAD1100(島津製作所社製レーザ回折式粒径測定装置)等を用いて測定することができる。本発明においては、コールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機社製)、パーソナルコンピュータを接続し測定、算出したものである。
【0093】
この様に、本発明のトナー粒子は、その形状が特定範囲内にあることにより、機械的なせん断力、あるいはオゾン分解等によるトナー粒子の破砕に対しても有利であることが見出されている。
【0094】
次に本発明のトナーの製造方法について説明する。
樹脂粒子の接着性を向上させる方法としては、樹脂粒子を単一構成の粒子とせず、表面に粒子間の接着性が向上できる様に、表面に低分子量成分を積層した構造の複合樹脂粒子(詳細は後述する)とすることで粒子間の接着性を向上することができる。
【0095】
さらに、会合時点で着色剤を樹脂粒子と同等以下の粒径に分散させることで、粒子間の会合段階で樹脂粒子間に着色剤を存在させることができる。また、セル壁間に金属塩を含有させることも好ましい方法である。
【0096】
この方法では、樹脂粒子と着色剤粒子の会合時点で、過剰の塩析剤を添加することで、会合型トナー内部に多量の金属塩を含有させることができ、粒子の耐久性も上げることができる。
〈乳化重合法〉
本発明のトナーを製造する方法として樹脂粒子を水系媒体中で塩析/融着させて調製する方法も挙げることができる。ここで「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいう。この方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開平5−265252号公報や特開平6−329947号公報、特開平9−15904号公報に示す方法を挙げることができる。すなわち、樹脂粒子と着色剤などの構成材料の分散粒子、あるいは樹脂および着色剤等より構成される微粒子を複数以上塩析、凝集、融着させる方法、特に水中にてこれらを乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止し、さらに加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することにより、本発明のトナーを形成することができる。なお、ここにおいて凝集剤と同時にアルコールなど水に対して無限溶解する溶媒を加えてもよい。
【0097】
本発明のトナーの製造方法においては、少なくとも重合性単量体に離型剤を溶かした後、重合性単量体を重合せしめる工程を経て形成した複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させて得られるものである。本発明のトナーは、重合性単量体に離型剤を溶かすものであるが、これは溶解させて溶かすものでも、溶融して溶かすものであってもよい。
【0098】
また、本発明のトナーの製造方法は、多段重合法によって得られる複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させるものが好ましいが、多段重合法について以下に説明する。
〈多段重合法により得られる複合樹脂粒子の製造方法〉
〔多段重合工程〕
多段重合工程とは、1つの樹脂粒子において異なる分子量分布を有する相を形成するために重合反応を多段階に分けて行うものであって、得られた樹脂粒子がその粒子の中心より表層に向かって分子量勾配を形成させる様に意図して行うものである。例えば、はじめに高分子量の樹脂粒子分散液を得た後、新たに重合性単量体と連鎖移動剤を加えることによって低分子量の表層を形成する方法が採られている。
【0099】
本発明では、セル構造を安定に形成することができる観点から、二段重合以上の多段重合法を採用することが好ましい。以下に、多段重合法の代表例である二段重合法および三段重合法について説明する。この様な多段階重合反応によって得られたトナーでは破砕強度の観点から表層程低分子量のものが好ましい。
【0100】
〈二段重合法〉
二段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)と、低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
【0101】
この方法を具体的に説明すると、先ず、単量体溶液を水系媒体(例えば、界面活性剤水溶液)中に油滴分散させた後、この系を重合処理(第一段重合)することにより、高分子量の樹脂粒子の分散液を調製するものである。
【0102】
次いで、この樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第二段重合)を行うことにより、樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する方法である。ここで、中心部の核となる高分子量成分中に離型剤などの機能性材料を添加してもよい。
【0103】
〈三段重合法〉
三段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)、中間層及び低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
【0104】
この方法を具体的に説明すると、先ず、常法に従った重合処理(第一段重合)により得られた樹脂粒子の分散液を、水系媒体(例えば、界面活性剤水溶液)に添加するとともに、上記水系媒体中に、単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)することにより、樹脂粒子(核粒子)の表面に、樹脂からなる被覆層(中間層)を形成して、複合樹脂粒子(高分子量樹脂−中間分子量樹脂)の分散液を調製する。
【0105】
次いで、得られた複合樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、複合樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第三段重合)することにより、複合樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する。上記方法において、中間層中に離型剤などの機能性物質を含有させることで、離型剤などを微細かつ均一に分散することができ、より好ましい。
【0106】
本発明でいう水系媒体とは、水50〜100質量%と水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等を例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0107】
なお、離型剤などの機能性物質を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するために好適な重合法としては、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、離型剤を単量体に溶解した単量体溶液を、機械的エネルギーを利用して油滴分散させて分散液を調製し、得られた分散液に水溶性重合開始剤を添加して、油滴内でラジカル重合させる方法(以下、本発明では「ミニエマルジョン法」という。)を挙げることができ、本発明の効果をより発揮することができ好ましい。なお、上記方法において、水溶性重合開始剤に代えて、あるいは水溶性重合開始剤と共に、油溶性重合開始剤を用いても良い。
【0108】
機械的に油滴を形成するミニエマルジョン法によれば、通常の乳化重合法とは異なり、油相に溶解させた離型剤などの機能性物質の脱離が少なく、形成される樹脂粒子または被覆層内に十分な量の離型剤などの機能性物質を導入することができる。
【0109】
ここで、機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、例えば、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、分散粒子径としては、10〜1000nmとされ、好ましくは30〜1000nm、更に好ましくは50〜300nmである。
【0110】
この重合工程で得られる複合樹脂粒子の粒子径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される質量平均粒径で10〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
【0111】
また、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は48〜74℃の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは52〜64℃である。
【0112】
また、樹脂粒子の軟化点は95〜140℃の範囲にあることが好ましい。
本発明のトナーは、樹脂および着色粒子の表面に、塩析/融着法によって樹脂粒子を融着させてなる樹脂層を形成させて得られるものであるが、このことについて以下に説明する。
〔着色剤粒子〕
本発明のトナーを得るために使用する着色剤粒子は、界面活性剤を含有する水系媒体中で着色剤粒子を微分散させるための分散装置を用いて形成される。
【0113】
ここで着色剤粒子を分散させる水系媒体中に含有される界面活性剤は臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度で溶解しているものであり、使用される界面活性剤は、前記重合工程で使用するものと同一のものを使用することができる。
【0114】
着色剤粒子の分散処理に使用する分散機は、特に限定されないが、好ましくは、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、ゲッツマンミル、ダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
〔塩析/融着工程〕
この塩析/融着工程は、樹脂粒子と前記の様に分散して得られた着色剤粒子とを塩析/融着させる(塩析と融着とを同時に起こさせる)ことによって、不定形(非球形)のトナー粒子を得る工程である。
【0115】
本発明でいう塩析/融着とは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを同時に起こさせる行為をいう。塩析と融着とを同時に行わせるためには、樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下で粒子(樹脂粒子、着色剤粒子)を凝集させる必要がある。
【0116】
この塩析/融着工程では、樹脂粒子および着色剤粒子とともに、荷電制御剤などの内添剤粒子(数平均一次粒子径が10〜1000nm程度の微粒子)を塩析/融着させてもよい。また、着色剤粒子は、表面改質されていてもよく、表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができる。
【0117】
樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させるためには、樹脂粒子および着色剤粒子が分散している分散液中に、臨界凝集濃度以上の塩析剤(凝集剤)を添加するとともに、この分散液を、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以上に加熱することが必要である。
【0118】
塩析/融着させるために好適な温度範囲としては、(Tg+10)〜(Tg+50℃)であり、特に好ましくは(Tg+15)〜(Tg+40℃)である。また、融着を効果的に行なわせるために、水に無限溶解する有機溶媒を添加してもよい。
【0119】
また、本発明においては樹脂粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で塩析、凝集、融着させて着色粒子(本発明では、トナー粒子と呼ぶ)を得た後、前記トナー粒子を水系媒体から分離するときに、水系媒体中に存在している界面活性剤のクラフト点以上の温度で行うことが好ましく、更に好ましくは、クラフト点〜(クラフト点+20℃)の温度範囲で行うことである。
【0120】
上記のクラフト点とは、界面活性剤を含有した水溶液が白濁化しはじめる温度であり、クラフト点の測定は下記のように行われる。
【0121】
《クラフト点の測定》
塩析、凝集、融着する工程で用いる水系媒体すなわち界面活性剤溶液に、実際に使用する量の凝集剤を加えた溶液を調製し、この溶液を1℃で5日間貯蔵した。次いで、この溶液を攪拌しながら透明になるまで徐々に加熱した。溶液が透明になった温度をクラフト点として定義する。
【0122】
本発明に係るセル構造を形成するために本発明の静電荷像現像用トナーは、金属元素(形態として、金属、金属イオン等が挙げられる)をトナー中に350〜35000ppm含有することが好ましく、更に好ましくは500〜30000ppmである。
【0123】
トナー中の金属イオン残存量の測定は、蛍光X線分析装置「システム3270型」〔理学電気工業(株)製〕を用いて、凝集剤として用いられる金属塩の金属種(例えば、塩化カルシウムに由来するカルシウム等)から発する蛍光X線強度を測定することによって求めることができる。具体的な測定法としては、凝集剤金属塩の含有割合が既知のトナーを複数用意し、各トナー5gをペレット化し、凝集剤金属塩の含有割合(質量ppm)と、当該金属塩の金属種からの蛍光X線強度(ピーク強度)との関係(検量線)を測定する。次いで、凝集剤金属塩の含有割合を測定すべきトナー(試料)を同様にペレット化し、凝集剤金属塩の金属種からの蛍光X線強度を測定し、含有割合すなわち「トナー中の金属イオン残存量」を求めることができる。
【0124】
本発明のトナーは、塩析/融着する樹脂粒子表面に塩を多めに吸着させながら、更に塩析/融着を継続させることで、セル構造化することができる。
【0125】
本発明のトナーでは、塩を多く残存させるために界面活性剤の代わりに高分子分散剤を使用したり、あるいは界面活性剤と高分子分散剤を併用することで塩の残存量を制御することが好ましい。
【0126】
高分子分散剤とは、具体的にはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸が挙げられ、分子量は3000〜10000のものが好ましく用いられる。
【0127】
〔熟成工程〕
熟成工程は、塩析/融着工程に後続する工程であり、樹脂粒子の融着後も温度を樹脂Tg+15〜Tg+40℃に保ち、一定の強度で攪拌を継続することにより、樹脂粒子と着色剤粒子を融着させ、トナー粒子中にセル構造を形成することができる。
【0128】
〔濾過・洗浄工程〕
濾過・洗浄工程は、上記の工程で得られたトナー粒子の分散系から当該トナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とを施す工程である。濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0129】
〔乾燥工程〕
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程である。
【0130】
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0131】
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。
【0132】
次に、トナー製造工程で用いられる各構成因子について、詳細に説明する。
(重合性単量体)
本発明に用いられる樹脂(バインダー)を造るための重合性単量体としては、疎水性単量体を必須の構成成分とし、必要に応じて架橋性単量体が用いられる。また、下記の様に構造中に酸性極性基を有する単量体又は塩基性極性基を有する単量体を少なくとも1種類含有するのが望ましい。
(1)疎水性単量体
単量体成分を構成する疎水性単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0133】
具体的には、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0134】
ビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
【0135】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0136】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられ、ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0137】
又、モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
(2)架橋性単量体
樹脂粒子の特性を改良するために架橋性単量体を添加しても良い。架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
(3)酸性極性基を有する単量体
酸性極性基を有する単量体としては、(a)カルボキシル基(−COOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物、及び、(b)スルホン基(−SO3H)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。
【0138】
(a)のカルボキシル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル、およびこれらのNa、Zn等の金属塩類等を挙げることができる。
【0139】
(b)のスルホン基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、スルホン化スチレン、及びそのNa塩、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル、及びこれらのNa塩等を挙げることができる。
(4)塩基性極性基を有するモノマー
塩基性極性基を有するモノマーとしては、(a)アミン基或いは4級アンモニウム基を有する炭素原子数1〜12、好ましくは2〜8、特に好ましくは2の脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、(b)(メタ)アクリル酸アミドあるいは、随意N上で炭素原子数1〜18のアルキル基でモノ又はジ置換された(メタ)アクリル酸アミド、(c)Nを環員として有する複素環基で置換されたビニール化合物及び(d)N,N−ジアリル−アルキルアミン或いはその四級アンモニウム塩を例示することができる。中でも、(a)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルが塩基性極性基を有するモノマーとして好ましい。
【0140】
(a)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルの例としては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、上記4化合物の四級アンモニウム塩、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0141】
(b)の(メタ)アクリル酸アミド或いはN上で随意モノ又はジアルキル置換された(メタ)アクリル酸アミドとしては、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド等を挙げることができる。
【0142】
(c)のNを環員として有する複素環基で置換されたビニル化合物としては、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル−N−メチルピリジニウムクロリド、ビニル−N−エチルピリジニウムクロリド等を挙げることができる。
【0143】
(d)のN,N−ジアリル−アルキルアミンの例としては、N,N−ジアリルメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジアリルエチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
【0144】
(重合開始剤)
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は、水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(例えば、4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物等が挙げられる。更に、上記ラジカル重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合せレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いることにより、重合活性を上昇させ、重合温度の低下が図れ、更に、重合時間の短縮が達成できる等好ましい面を有している。
【0145】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であれば、特に限定されるものではないが例えば50℃から90℃の範囲である。但し、過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)を組み合わせた常温開始の重合開始剤を用いることで、室温またはそれ以上の温度で重合することも可能である。
【0146】
(連鎖移動剤)
分子量を調整することを目的として、公知の連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのメルカプト基を有する化合物、を挙げることができる。このうち、トナー加熱定着時の臭気を抑制する観点で、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、n−オクチルメルカプタンが、特に好ましい。
【0147】
(界面活性剤)
前述の重合性単量体を使用して、特にミニエマルジョン重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行うことが好ましい。この際に使用することのできる界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適な化合物の例として挙げることができる。
【0148】
イオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0149】
本発明は、下記一般式(1)、(2)の界面活性剤が特に好ましく用いられる。
一般式(1) R1(OR2)nOSO3M
一般式(2) R1(OR2)nSO3M
一般式(1)、(2)において、R1は炭素数6〜22のアルキル基またはアリールアルキル基を表すが、好ましくは炭素数8〜20のアルキル基またはアリールアルキル基であり、更に好ましくは炭素数9〜16のアルキル基またはアリールアルキル基である。
【0150】
R1で表される炭素数6〜22のアルキル基としては、例えば、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、R2で表されるアリールアルキル基としては、ベンジル基、ジフェニルメチル基、シンナミル基、スチリル基、トリチル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0151】
一般式(1)、(2)において、R2は炭素数2〜6のアルキレン基を表すが、好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基である。R2で表される炭素数2〜6のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基等が挙げられる。
【0152】
一般式(1)、(2)において、nは1〜11の整数であるが、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜5であり、特に好ましくは2〜3である。
【0153】
一般式(1)、(2)において、Mで表される1価の金属元素としてはナトリウム、カリウム、リチウムが挙げられる。中でも、ナトリウムが好ましく用いられる。
【0154】
以下に、一般式(1)、(2)で表される界面活性剤の具体例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0155】
化合物(101):C10H21(OCH2CH2)2OSO3Na
化合物(102):C10H21(OCH2CH2)3OSO3Na
化合物(103):C10H21(OCH2CH2)2SO3Na
化合物(104):C10H21(OCH2CH2)3SO3Na
化合物(105):C8H17(OCH2CH(CH3))2OSO3Na
化合物(106):C18H37(OCH2CH2)2OSO3Na
(樹脂粒子、トナーの分子量分布)
本発明のトナーは、その分子量分布のピーク又は肩が、100,000〜1,000,000、及び1,000〜50,000に存在することが好ましく、更に分子量分布のピーク又は肩が、100,000〜1,000,000、25,000〜150,000及び1,000〜50,000に存在するものであることが好ましい。
【0156】
樹脂粒子の分子量は、100,000〜1,000,000の領域にピークもしくは肩を有する高分子量成分と、1,000から50,000未満の領域にピークもしくは肩を有する低分子量成分の両成分を少なくとも含有する樹脂が好ましく、更に好ましくは、15,000〜100,000の部分にピーク又は肩を有する中間分子量体の樹脂を使用することが好ましい。
【0157】
前述のトナーあるいは樹脂の分子量測定方法は、THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定がよい。すなわち、測定試料0.5〜5mg、より具体的には1mgに対してTHFを1.0ml加え、室温にてマグネチックスターラーなどを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。次いで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCへ注入する。GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1.0mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムは、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard columnの組合せなどを挙げることができる。又、検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)、あるいはUV検出器を用いるとよい。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いるとよい。
【0158】
(凝集剤)
本発明では、水系媒体中で調製した樹脂粒子の分散液から、樹脂粒子を塩析、凝集、融着する工程において、金属塩を凝集剤として好ましく用いることができるが、2価または3価の金属塩を凝集剤として用いることが更に好ましい。その理由は、1価の金属塩よりも2価、3価の金属塩の方が臨界凝集濃度(凝析値あるいは凝析点)が小さいため好ましい。さらに、前述のセル構造を形成するためにも多価金属塩が好ましい。
【0159】
本発明で用いられる凝集剤は、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩である1価の金属塩、例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩やマンガン、銅等の2価の金属塩、鉄やアルミニウム等の3価の金属塩等が挙げられる。
【0160】
これら金属塩の具体的な例を以下に示す。1価の金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、2価の金属塩としては、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、3価の金属塩としては、塩化アルミニウム、塩化鉄等が挙げられる。これらは、目的に応じて適宜選択されるが臨界凝集濃度の小さい2価や3価の金属塩が好ましい。
【0161】
本発明で云う臨界凝集濃度とは、水性分散液中の分散物の安定性に関する指標であり、凝集剤を添加し、凝集が起こるときの凝集剤の添加濃度を示すものである。この臨界凝集濃度は、ラテックス自身及び分散剤により大きく変化する。例えば、岡村誠三他著 高分子化学17,601(1960)等に記述されており、これらの記載に従えば、その値を知ることが出来る。又、別の方法として、目的とする粒子分散液に所望の塩を濃度を変えて添加し、その分散液のζ電位を測定し、ζ電位が変化し出す点の塩濃度を臨界凝集濃度とすることも可能である。
【0162】
本発明では、金属塩を用いて臨界凝集濃度以上の濃度になるように重合体微粒子分散液を処理する。この時、当然の事ながら、金属塩を直接加えるか、水溶液として加えるかは、その目的に応じて任意に選択される。水溶液として加える場合には、重合体粒子分散液の容量と金属塩水溶液の総容量に対し、添加した金属塩が重合体粒子の臨界凝集濃度以上になる必要がある。
【0163】
本発明では、金属塩の濃度は、臨界凝集濃度以上であれば良いが、セル構造を形成させる必要もあり、臨界凝集濃度の1.5倍以上、さらに好ましくは2.0倍以上添加するとよい。
【0164】
(着色剤)
本発明のトナーは、上記の複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着して得られるものである。本発明のトナーを構成する着色剤(複合樹脂粒子との塩析/融着に供される着色剤粒子)としては、各種の無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0165】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0166】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0167】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
【0168】
有機顔料及び染料も従来公知のものを用いることができ、具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
【0169】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0170】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156等が挙げられる。
【0171】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0172】
また、染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いることができ、またこれらの混合物も用いることができる。
【0173】
これらの有機顔料及び染料は、単独または複数を選択併用することが可能である。また、顔料の添加量は、重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%である。
【0174】
本発明のトナーを構成する着色剤(着色剤粒子)は、表面改質されていてもよい。表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を好ましく用いることができる。シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。チタンカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクト」と称する商品名で市販されているTTS、9S、38S、41B、46B、55、138S、238S等、日本曹達社製の市販品A−1、B−1、TOT、TST、TAA、TAT、TLA、TOG、TBSTA、A−10、TBT、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA−400、TTS、TOA−30、TSDMA、TTAB、TTOP等が挙げられる。アルミニウムカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクトAL−M」等が挙げられる。
【0175】
これらの表面改質剤の添加量は、着色剤に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜5質量%である。また、着色剤粒子の表面改質法としては、着色剤粒子の分散液中に表面改質剤を添加し、この系を加熱して反応させる方法が挙げられる。この様にして表面改質された着色剤粒子は、濾過により採取され、同一の溶媒による洗浄処理と濾過処理が繰り返された後、乾燥処理されて得られるものである。
【0176】
(離型剤)
本発明に使用されるトナーは、離型剤を含有した樹脂粒子を水系媒体中において融着させ、熟成工程により離型剤を適度に凝集させてセル構造を形成させたトナーであることが好ましい。この様に樹脂粒子中に離型剤を含有させた樹脂粒子を着色剤粒子と水系媒体中で塩析/融着させることで、微細に離型剤が分散されたトナーを得ることができる。ここで、熟成工程とは、樹脂粒子の融着後も温度を離型剤の融点±20℃の範囲で攪拌を継続する工程をいうものである。
【0177】
本発明のトナーでは、離型剤として、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等が好ましく、特に好ましくは、下記式で表されるエステル系化合物である。
【0178】
R1−(OCO−R2)n
式中、nは1〜4の整数で、好ましくは2〜4、更に好ましくは3〜4、特に好ましくは4である。R1、R2は、各々置換基を有しても良い炭化水素基を示す。R1は、炭素数1〜40、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5がよい。R2は、炭素数1〜40、好ましくは16〜30、更に好ましくは18〜26がよい。
【0179】
次に代表的な化合物の例を以下に示す。
【0180】
【化1】
【0181】
【化2】
【0182】
また、本発明では離型剤に加えて、結晶性ポリエステルを用いることができるものであるが、結晶性ポリエステルとしては、脂肪族ジオールと、脂肪族ジカルボン酸(酸無水物および酸塩化物を含む)とを反応させて得られるポリエステルが好ましい。
【0183】
結晶性ポリエステルを得るために使用されるジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA等を挙げることができる。
【0184】
結晶性ポリエステルを得るために使用されるジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコ酸、イタコン酸、グルタコ酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、これらの酸無水物あるいは酸塩化物を挙げることができる。
【0185】
特に好ましい結晶性ポリエステルとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステル、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとコハク酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを反応して得られるポリエステルを挙げることができ、これらのうち、1,4−シクロヘキサンジメタノールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステルが最も好ましい。
【0186】
上記化合物の添加量は、トナー全体に対し1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%である。
【0187】
(現像剤)
本発明のトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよく、一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させた磁性一成分現像剤が挙げられいずれも使用できる。
【0188】
また、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることもでき、この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0189】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0190】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0191】
次に本発明のトナーを用いる画像形成方法に用いる画像形成装置について説明する。
【0192】
図3は本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。34は被帯電体である感光体ドラムであり、アルミニウム製のドラム基体の外周面に感光体層である有機光導電体(OPC)を形成してなるもので矢印方向に所定の速度で回転する。
【0193】
本発明の画像形成装置内のオゾン濃度は0.1〜10ppmであるが、現像装置内のオゾン濃度は図3で示される帯電極35と現像器36の間のエアーを所定量サンプリングし、検知管式気体測定器により測定されるものである。測定に必要なエアーの量はオゾン検知用の検知管の大きさ等により決まっているので、使用する測定器に記された条件に基づいてエアーのサンプリングを行うことが必要である。検知管式気体測定器は、具体的にはガステック社製のものが好ましく用いられる。本発明では、オゾン濃度の具体的な測定方法としては前述の検知管式気体測定器に限定されるものではなく、JISにより規定されるオゾン濃度測定法に基づいて測定するものであってもよい。
【0194】
図3において、図示しない原稿読み取り装置にて読み取った情報に基づき、半導体レーザ光源31から露光光が発せられる。これをポリゴンミラー32により、図3の紙面と垂直方向に振り分け、画像の歪みを補正するfθレンズ33を介して、感光体面上に照射され静電潜像を形成する。感光体ドラム34は、予め帯電器35により一様帯電され、像露光のタイミングにあわせて時計方向に回転を開始している。
【0195】
感光体ドラム面上の静電潜像は、現像器36により現像され、形成された現像像はタイミングを合わせて搬送されてきた転写材38に転写器37の作用により転写される。更に感光体ドラム34と転写材38は分離器(分離極)39により分離されるが、現像像は転写材38に転写担持されて、定着器40へと導かれ定着される。
【0196】
感光体面に残留した未転写のトナー等は、クリーニングブレード方式のクリーニング器41にて清掃され、帯電前露光(PCL)42にて残留電荷を除き、次の画像形成のため再び帯電器35により、一様帯電される。
【0197】
なお、前記露光は、本発明ではデジタル像露光が特に好ましいものであるが、アナログによる像露光を行うものであってもよい。
【0198】
本発明は、電子写真法による画像形成装置、特にコンピュータ等からのデジタル画像データで変調した変調ビームにより感光体上に静電潜像を形成する装置に使用することもできる。図4は、本発明のトナーに適用されるデジタル画像形成装置を示す概略構成図である。
【0199】
図4において、画像形成装置101は、自動原稿搬送装置(通称ADF)Aと、自動原稿搬送装置により搬送される原稿の画像を読み取るための原稿画像読取部Bと、読み取った原稿画像を処理する画像制御基板Cと、画像処理後のデータに従って像担持体としての感光体ドラム34上に書き込みを行う書き込みユニット112を含む書き込み部Dと、感光体ドラム34及びその周囲に帯電器35、磁気ブラシ型現像装置からなる現像器36、転写器37、分離器39、クリーニング器41等の画像形成手段を含む画像形成部Eと、記録紙Pを収納する給紙トレイ122、124のための収納部Fを有している。
【0200】
自動原稿搬送装置Aは、原稿載置台126と、ローラR1を含むローラ群および原稿の移動通路を適宜切り替えるための切換手段等(参照記号なし)を含む原稿搬送処理部128とを主要素とする。
【0201】
原稿画像読取部Bは、プラテンガラスGの下にあり、光路長を保って往復移動できる2つのミラーユニット130、131、固定の結像レンズ(以下、単にレンズという)133、ライン状の撮像素子(以下、CCDという)135等からなり、書き込み部Dは、レーザ光源31、ポリゴンミラー(偏光器)32等からなる。
【0202】
転写材としての記録紙Pの移動方向からみて、転写器37の手前側に示すR10はレジストローラであり、分離器39の下流側にHで示してあるのは定着手段である。
【0203】
定着手段Hは、実施の形態においては、加熱源を内蔵するローラと、当該ローラに圧接しながら回転する圧接ローラとで構成してある。
【0204】
また、Zは定着手段Hのためのクリーニング手段で、巻き取り可能に設けたクリーニングウェブを主要素とする。
【0205】
原稿載置台126上に載置される原稿(図示せず)の1枚が原稿搬送処理部128によって搬送され、ローラR1の下を通過中に、露光手段Lによる露光が行われる。
【0206】
原稿からの反射光は、固定位置にあるミラーユニット130、131およびレンズ133を経てCCD135上に結像され、読み取られる。
【0207】
原稿画像読取部Bで読み取られた画像情報は、画像処理手段により処理され、符号化されて画像制御基板C上に設けてあるメモリーに格納される。
【0208】
また、画像データは画像形成に応じて呼び出され、当該画像データに従って、書き込み部Dにおけるレーザ光源31が駆動され、感光体ドラム34上に露光が行われる。
【0209】
近年、感光体上に静電潜像を形成し、この潜像を現像して可視画像を得る電子写真等の分野において、画質の改善、変換、編集等が容易で高品質の画像形成が可能なデジタル方式を採用した画像形成方法の研究開発が盛んになされている。
【0210】
この画像形成方法及び装置に採用されるコンピュータまたは複写原稿からのデジタル画像信号により光変調する走査光学系として、レーザ光学系に音響光学変調器を介在させ、当該音響光学変調器により光変調する装置、半導体レーザを用い、レーザ強度を直接変調する装置があり、これらの走査光学系から一様に帯電した感光体上にスポット露光してドット状の画像を形成する。
【0211】
前述の走査光学系から照射されるビームは、裾が左右に広がった正規分布状に近似した丸状や楕円状の輝度分布となり、例えばレーザビームの場合、通常、感光体上で主走査方向あるいは副走査方向の一方あるいは両者が20〜100μmという極めて狭い丸状あるいは楕円状である。
【0212】
本発明では、モノクロ画像だけではなく、カラー画像を得るための画像形成にも適用されるもので、例えば複数個の画像形成ユニットを備え、各画像形成ユニットにてそれぞれ色の異なる可視画像(トナー画像)を形成してトナー画像を形成する画像形成方法である。
【0213】
本発明のトナーは、トナー像が形成された画像形成支持体を、定着装置を構成する加熱ローラーと加圧ローラーとの間に通過させて定着する工程を含む画像形成方法に好適に使用される。
【0214】
図5は、本発明のトナーを用いた画像形成方法において使用する定着装置の一例を示す断面図であり、図5に示す定着装置40は、加熱ローラー71と、これに当接する加圧ローラー72とを備えている。なお、図5において、Tは転写紙(画像形成支持体)上に形成されたトナー像である。
【0215】
加熱ローラー71は、フッ素樹脂または弾性体からなる被覆層82が芯金81の表面に形成されてなり、線状ヒーターよりなる加熱部材75を内包している。
【0216】
芯金81は、金属から構成され、その内径は10〜70mmである。芯金81を構成する金属としては特に限定されるものではないが、例えば鉄、アルミニウム、銅等の金属あるいはこれらの合金を挙げることができる。
【0217】
芯金81の肉厚は0.1〜15mmであり、省エネルギーの要請(薄肉化)と、強度(構成材料に依存)とのバランスを考慮して決定される。例えば、0.57mmの鉄よりなる芯金と同等の強度を、アルミニウムよりなる芯金で保持するためには、その肉厚を0.8mmとする必要がある。
【0218】
被覆層82を構成するフッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)およびPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などを例示することができる。
【0219】
フッ素樹脂からなる被覆層82の厚みは10〜500μmであり、好ましくは20〜400μmである。
【0220】
また、被覆層82を構成する弾性体としては、LTV、RTV、HTVなどの耐熱性の良好なシリコーンゴムおよびシリコーンスポンジゴムなどを用いることが好ましい。
【0221】
被覆層82を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満であり、好ましくは60°未満である。
【0222】
また、弾性体からなる被覆層82の厚みは0.1〜30mmであり、好ましくは0.1〜20mmである。
【0223】
加熱部材75としては、ハロゲンヒーターを好適に使用することができる。
加圧ローラー72は、弾性体からなる被覆層84が芯金83の表面に形成されてなる。被覆層84を構成する弾性体としては特に限定されるものではなく、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの各種軟質ゴムおよびスポンジゴムを挙げることができ、被覆層84を構成するものとして例示したシリコーンゴムおよびシリコーンスポンジゴムを用いることが好ましい。
【0224】
被覆層84を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満であり、好ましくは70°未満、更に好ましくは60°未満である。
【0225】
また、被覆層84の厚みは0.1〜30mmであり、好ましくは0.1〜20mmである。
【0226】
芯金83を構成する材料としては特に限定されるものではないが、アルミニウム、鉄、銅などの金属またはそれらの合金を挙げることができる。
【0227】
加熱ローラー71と加圧ローラー72との当接荷重(総荷重)としては、通常40〜350Nであり、好ましくは50〜300N、さらに好ましくは50〜250Nである。この当接荷重は、加熱ローラー71の強度(芯金81の肉厚)を考慮して規定され、例えば0.3mmの鉄よりなる芯金を有する加熱ローラーにあっては、250N以下とすることが好ましい。
【0228】
また、耐オフセット性および定着性の観点から、ニップ幅としては4〜10mmであることが好ましく、当該ニップの面圧は0.6×105Pa〜1.5×105Paであることが好ましい。
【0229】
図5に示した定着装置による定着条件の一例を示せば、定着温度(加熱ローラー71の表面温度)が150〜210℃であり、定着線速が230〜900mm/secである。
【0230】
上記定着器にはクリーニング機構を付与して使用してもよい。クリーニング方式としては、各種シリコーンオイルを定着用フィルムに供給する方式や各種シリコーンオイルを含浸させたパッド、ローラー、ウェッブ等でクリーニングする方式が用いられる。
【0231】
なお、シリコーンオイルとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等を使用することが出来る。更に、フッ素を含有するシロキサンも好適に使用することが出来る。
【0232】
また、本発明で用いられる画像形成装置では、感光体表面に残留した未転写トナーをリサイクル使用するトナーリサイクルを行う機構を有するものであってもよい。トナーリサイクルを行うための方式としては特に限定されるものではないが、たとえばクリーニング部で回収されたトナーを搬送コンベアあるいは搬送スクリューにより補給用トナーホッパー、現像器あるいは補給用トナーと中間室によって混合して現像器へ供給する方法等を挙げることができる。好ましくは現像器へ直接戻す方式あるいは中間室にて補給用トナーとリサイクルトナーを混合して供給する方式を挙げることができる。
【0233】
次に図6において、トナーリサイクル機構を有するプロセスカートリッジの斜視図の一例を挙げる。この方式は現像器へリサイクルトナーを直接戻す方式である。
【0234】
トナークリーニング器41で回収された未転写トナーはトナークリーニング器41内の搬送スクリュー42によってトナーリサイクルパイプ44に集められ、更にこのリサイクルパイプの受け口45から現像器36に戻され、再び現像剤として使用される。
【0235】
この図6では斜視構造を判りやすくするため感光体ユニットと現像剤ユニットを分離した図面になっているが、これを全部一体化したユニットとして着脱自在に画像形成装置に搭載できる。この場合、感光体34、現像器36、クリーニング器41及びリサイクル部材42、44、45が一体となりプロセスカートリッジを構成している。
【0236】
また、上記画像形成装置は、感光体ドラムと、帯電器、現像器、クリーニング器あるいはリサイクル部材等の少なくとも一つを含むプロセスカートリッジを搭載する形態にすることもできる。
【0237】
又、クリーニングブレード41は、厚さ1〜30mm程度のゴム状弾性体を用い、材質としてはウレタンゴムが最も良く用いられる。これは感光体に圧接して用いられるため熱を伝え易く、本発明においては解除機構を設け、画像形成動作を行っていない時には感光体から離しておくのが望ましい。
【0238】
本発明で用いられる転写紙は、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着画像を転写可能なものであれば、特に限定されるものではなく、OHP用のPETベース等も含まれるものである。
【0239】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、文中「部」とは「質量部」を表す。
【0240】
トナー用樹脂粒子の製造例
〔樹脂粒子1HML〕
(1)核粒子の調製(第一段重合):
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコにポリビニルアルコール30.0gをイオン交換水3010gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、フラスコ内の温度を80℃に昇温させた。
【0241】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)9.2gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン70.1g、n−ブチルアクリレート19.9g、メタクリル酸10.9gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合(第一段重合)を行い、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の分散液)を調製した。これを「樹脂粒子(1H)」とする。
(2)中間層の形成(第二段重合):
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン105.6g、n−ブチルアクリレート30.0g、メタクリル酸6.2g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル5.6gからなる単量体混合液に、離型剤として、上記式19)で表される化合物(以下、「例示化合物(19)」という。)98.0gを添加し、90℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。
【0242】
一方、アニオン系界面活性剤(ドデシルスルホン酸ナトリウム)1.6gをイオン交換水2700mlに溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、核粒子の分散液である前記樹脂粒子(1H)を固形分換算で28g添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により、前記例示化合物(19)の単量体溶液を8時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
【0243】
次いで、この分散液(乳化液)に、重合開始剤(KPS)5.1gをイオン交換水240mlに溶解させた開始剤溶液と、イオン交換水750mlとを添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第二段重合)を行い、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の表面が中間分子量樹脂により被覆された構造の複合樹脂粒子の分散液)を得た。これを「樹脂粒子(1HM)」とする。
(3)外層の形成(第三段重合):
上記の様にして得られた樹脂粒子(1HM)に、重合開始剤(KPS)7.4gをイオン交換水200mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン300g、n−ブチルアクリレート95g、メタクリル酸15.3g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル10.4gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第三段重合)を行った後、28℃まで冷却し樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有し、前記中間層に例示化合物(19)が含有されている複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(1HML)」とする。
【0244】
この樹脂粒子(1HML)を構成する複合樹脂粒子は、138,000、80,000および13,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は142nmであった。
〔樹脂粒子2HML〕
ポリビニルアルコール30gを54gとしたこと以外は、樹脂粒子1HMLと同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(2HML)」とする。
【0245】
この樹脂粒子(2HML)を構成する複合樹脂粒子は、188,000、78,000および11,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は112nmであった。
〔樹脂粒子3HML〕
ポリビニルアルコール30gを22gとしたこと以外は、樹脂粒子1HMLと同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(3HML)」とする。
【0246】
この樹脂粒子(3HML)を構成する複合樹脂粒子は、111,000、54,000および17,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は164nmであった。
〔樹脂粒子4HML〕
ポリビニルアルコール30gの代わりにポリビニルピロリドン40gを使用したこと以外は、樹脂粒子1HMLと同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(4HML)」とする。
【0247】
この樹脂粒子(4HML)を構成する複合樹脂粒子は、171,000、67,000および16,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は127nmであった。
〔樹脂粒子5HML〕
ポリビニルアルコール30gの代わりにポリビニルピロリドンを20g使用したこと以外は、樹脂粒子1HMLと同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子(5HML)」とする。
【0248】
この樹脂粒子(5HML)を構成する複合樹脂粒子は、162,000、82,000および18,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は82nmであった。
〔比較用樹脂粒子1HML〕
ポリビニルアルコール30gの代わりにアニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:SDS)7.08gを使用したこと以外は、樹脂粒子1HMLと同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「比較用樹脂粒子(比較1HML)」とする。
【0249】
この樹脂粒子(比較1HML)を構成する複合樹脂粒子は、121,000、74,000および15,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は124nmであった。
〔比較用樹脂粒子2HML〕
ポリビニルアルコール30gの代わりにポリビニルアルコール8gおよびアニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:SDS)0.8gを使用したこと以外は、樹脂粒子1HMLと同様にして、樹脂粒子(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。この樹脂粒子を「比較用樹脂粒子(比較2HML)」とする。
【0250】
この樹脂粒子(比較2HML)を構成する複合樹脂粒子は、121,000、74,000および15,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は124nmであった。
〔トナー1〜5及び比較トナー1〜2の製造〕
アニオン系界面活性剤(101)59.0gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解し、この溶液を攪拌しながら、カーボンブラック「リーガル330」(キャボット社製)420.0gを徐々に添加し、次いで「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液(以下「着色剤分散液1」という。)を調製した。この着色剤分散液における着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、重量平均粒径で89nmであった。
【0251】
樹脂粒子1HML420.7g(固形分換算)と、イオン交換水900gと、着色剤分散液1 166gとを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた反応容器(四つ口フラスコ)に入れ攪拌した。容器内の温度を30℃に調製した後、この溶液に5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8.0〜10.0に調製した。
【0252】
次いで、塩化アルミニウム12.1gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を6〜60分間かけて90℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った。その状態で、「コールターカウンター TA−II」にて会合粒子の粒径を測定し、個数平均粒径が2〜7μmになった時点で、塩化ナトリウム80.4gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、更に熟成処理として液温度98℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより、樹脂粒子の融着継続させた(熟成工程)。
【0253】
その後、30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2.0に調整し、攪拌を停止した。生成した会合粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄を行い、その後、40℃の温風で乾燥してトナー1を得た。
【0254】
トナー1と同様に表1の組み合せで樹脂粒子を選択し、熟成処理工程の温度、熟成時間、攪拌強度を制御することにより、トナーの形状および形状係数の変動係数を制御し、更に、液中分級により、トナー粒径および粒度分布の変動係数を調整して、表1及び表2に示す形状特性、粒度分布特性、及びセル構造の特性を有するトナー1〜5および比較トナー1、2を得た。ただし表2では現像剤1〜5、比較用現像剤1、2と表しているが、これはトナー1〜5、比較トナー1、2に以下に記載の外添剤添加を行うことで得られる。
【0255】
【表1】
【0256】
【表2】
【0257】
外添剤の添加は、トナー1〜5及び比較トナー1、2の各々に、疎水性シリカ0.8質量部、疎水性酸化チタン1.0質量部を添加し、10リットルのヘンシェルミキサーの回転翼の周速を30m/sに設定し25分間混合した。なお、これらのトナーについて、外部添加剤の添加によってその形状や粒径は変化しない。
【0258】
評価機として、図4に記載の画像形成プロセスを有するデジタル複写機(コロナ帯電、レーザ露光、非磁性一成分反転現像、静電転写、爪分離、クリーニングブレードを有する)にて評価した。上記デジタル複写機は以下の条件に設定し評価を行った。なお、帯電器〜現像器間のエアーをサンプリングし、ガステック社製の検知管式気体測定器を用いてオゾン濃度を測定したところ、オゾン濃度が5.5ppmだった。
【0259】
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器、初期帯電電位を−750V
露光条件
露光部電位を−50Vにする露光量に設定した
現像条件
DCバイアス;−550V
転写極;コロナ帯電方式
また、定着装置としては、芯金として鉄を使用し、表面を厚さ25μmのPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)で被覆された表面粗さRaが0.8μmの加熱ローラーを使用し、加圧ローラーとして鉄の芯金を使用し、HTVシリコーンゴムの上に厚み120μmのPFAチューブを被覆した表面粗さRaが0.8μmの加圧ローラーを用いた。なお、ニップ幅は3.8mmであり、線速は420mm/secである。
【0260】
なお、定着装置のクリーニング機構及びシリコンオイル供給機構は装着していない。定着の温度は加熱ローラーの表面温度で制御し、165℃の設定温度とした。
【0261】
複写条件は、低温低湿環境(10℃、20%RH)にて連続90万プリント行い、1μm以下の微粉量、カブリ、トナー飛散発生枚数、現像ローラーへの融着発生枚数、クリーニング不良発生枚数、画像の定着性について以下の評価基準にて評価を行った。
《1μm以下の微粉量》
現像ローラー上のトナーをサンプリングし、コールターマルチサイザーにアパーチャー径1μmのアパーチャーを取り付け、1μm以下の微粉について個数基準の比率を測定した。測定は、プリント開始前の「初期」と20万プリント時の2回行った。
《カブリ》
マクベス濃度計を用いて比画像部白地部分の未使用転写シートに対する相対濃度を測定した。
《トナー飛散発生枚数》
転写極に溜まった飛散トナー汚れによる転写不良がハーフートーン画像に現れ始めた枚数で評価した。
《クリーニング不良》
クリーニング部からトナーがすり抜けて白地部分を汚染し始めた枚数で評価した。
《現像ローラーへの融着発生枚数》
現像ローラー表面を1万プリント毎に観察しながら、現像ローラーの融着によるハーフトーンすじ状汚れが発生した枚数で評価した。
《定着性》
熱ロール温度を130℃〜240℃まで10℃刻みで変更しつつ定着画像を作製した。なお、定着画像の出力に当たっては、A4サイズの普通紙(坪量64g/m2)を使用した。
【0262】
得られた定着画像の定着強度を、「電子写真技術の基礎と応用:電子写真学会編」第9章1.4項に記載のメンディングテープ剥離法に準じた方法を用いて定着率により評価した。具体的には、トナー付着量が0.6mg/cm2である2.54cm角のベタ定着画像を作製した後、スコッチメンディングテープ(住友3M社製)で剥離する前後の画像濃度を測定し、画像濃度の残存率を定着率として求めた。画像濃度の測定にはマクベス反射濃度計RD−918を使用し、定着率が95%以上得られた定着温度を定着可能温度とする。
【0263】
ここで、定着可能温度領域の評価は下記のようにランク評価した。
◎:100℃以上ある場合(優良)
○:70℃以上の場合(良好)
△:40℃以上の場合(実用可能)
×:40℃未満の場合(不良)
上記評価結果を表3に示す。
【0264】
【表3】
【0265】
上記表3の結果から明らかな様に、本発明に係る静電荷像現像用トナーである実施例1〜4を用いることにより、1μm以下の微粉量、カブリ、トナー飛散発生枚数、現像ローラーへの融着発生枚数、クリーニング不良発生枚数、画像の定着性について良好な結果が得られた。これに対して、比較例1と2ではいずれも本発明で見出された効果を有さないことが確認された。
【0266】
【発明の効果】
前記実施例の結果からも明らかな様に、本発明のトナーでは、オゾンの存在する画像形成装置内で撹拌による機械的せん断力を受ける状態にあっても、トナー微粉を発生することがないために、微粉による画像形成装置内の摩擦帯電部材の汚染、感光体汚染、クリーニング不良等の問題が解決されて、良好な定着性や帯電性を維持することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で見出されるセル構造を有するトナー粒子の模式図である。なお、(B)はトナー中に離型剤を含有するものである。
【図2】本発明で用いられるプラズマオゾン処理装置の構成概略側面図である。
【図3】本発明で用いられる画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の一実施態様例を示したデジタル露光を有する画像形成装置の概略構成図である。
【図5】本発明において使用される定着器の一例を示す断面図である。
【図6】本発明において使用されるトナーリサイクル機構を有するプロセスカートリッジの斜視図である。
【図7】(a)は、角がないトナー粒子の投影像を示す模式図であり、(b)および(c)は、それぞれ角があるトナー粒子の投影像を示す模式図である。
【符号の説明】
a セル
b セル壁
c 着色剤粒子
d 離型剤
1 円筒状チャンバー
2 試料台
3 試料
4 ガス、プラズマ切替ユニット
5 オゾンガス、プラズマ発生ユニット
6 アルゴンガス、プラズマ発生ユニット
7 ベンチレーション
8 酸素ガスボンベ
9 アルゴンガスボンベ
10 真空ポンプ
11 チューブ
Claims (16)
- 少なくとも樹脂と着色剤とを含有する静電荷像現像用トナーにおいて、該トナー粒子を構成する樹脂がセル構造を有するもので、
該セルのフェレ水平径の平均値が20〜200nmであり、該フェレ水平径の変動係数が10〜35%であるとともに、
該セルの形状係数の平均値が120〜160で、その変動係数が30%以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。 - 少なくとも樹脂と着色剤と離型剤とを含有する静電荷像現像用トナーにおいて、該トナー粒子を構成する樹脂がセル構造を有するもので、該セルの形状係数の平均値が120〜160で、その変動係数が30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- トナー粒子の個数粒度分布における個数変動係数が27%以下であり、かつ、形状係数の変動係数が16%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
- 角がないトナー粒子の全トナー粒子における割合が50個数%以上であり、かつ、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
- 形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の全トナー粒子における割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下で、かつ、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下であること特徴とする請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
- トナー粒子の粒径をD(μm)とするときに、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおける最頻階級に含まれる該トナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれる前記トナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
- トナー粒子の個数平均粒径が2〜7μmであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 請求項1〜7の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーを製造するにあたり、水系媒体中で重合性単量体を重合して樹脂粒子を作製する工程を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 樹脂粒子を水系媒体中で凝集、融着させる工程を有することを特徴とする請求項8に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる工程を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 樹脂粒子が多段重合法によって得られたものであり、該樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる工程を有することを特徴とする請求項8〜10の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 着色剤粒子の表面に、塩析/融着により樹脂粒子を融着させて樹脂層を形成させる工程を有することを特徴とする請求項8〜11の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 感光体上に形成された静電潜像を請求項1〜7の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーにより可視画像化する画像形成方法であって、該感光体上への照射がデジタル露光によって行われるものであることを特徴とする画像形成方法。
- 感光体上に形成された静電潜像を請求項1〜7の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーにより可視画像化する画像形成方法であって、該静電荷像現像用トナーをリサイクル使用することを特徴とする画像形成方法。
- 感光体上に形成された静電潜像を請求項1〜7の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーを用いて可視画像化する現像手段、該可視画像を転写媒体上に転写する転写手段、及び該転写媒体上に転写された該可視画像を加熱定着する加熱定着手段 を有する画像形成装置であって、該感光体上への照射がデジタル露光によって行われるものであり、現像環境におけるオゾン濃度が0.1〜10ppmであることを特徴とする画像形成装置。
- 感光体上に形成された静電潜像を請求項1〜7の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーを用いて可視画像化する現像手段、該可視画像を転写媒体上に転写する転写手段、及び該転写媒体上に転写された該可視画像を加熱定着する加熱定着手段を有する画像形成装置であって、トナーリサイクル手段を有することを特徴とする画像形成装置。
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