JP4098899B2 - タイヤトレッド用ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物に関する。さらに詳しくは、シリカを配合することによって低燃費特性をよくし、かつ、加工性を改善したタイヤトレッド用ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
地球温暖化防止のための自動車の低燃費化に対応して、転がり抵抗を低減した低燃費タイヤの開発が進められており、転がり抵抗を低減するためにタイヤトレッド用ゴム組成物の補強剤であるカーボンブラックをシリカに置き換えることが行なわれている。
【0003】
しかし、カーボンブラックにかえてシリカを配合すると、ムーニー粘度が高くなって加工性がわるくなり、タイヤ製造工程で問題が生じやすくなる。
【0004】
対策として液状イソプレンゴムなどの比較的低分子量のポリマーを混入して加工性を改善しているが、低燃費特性や耐摩耗性が不充分である。
【0005】
また、特開平9−71687号公報には、たとえばピリジル基などのアミノ基含有ジエン系ゴムを少なくとも含むゴム成分100重量部(以下、部という)に対して、シリカ10〜120部、加硫剤0.1〜15部、およびN,N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドのようなスルフェンアミド系加硫促進剤0.1〜15部を含有し、発熱特性に優れ、引張特性および摩耗特性にも優れたゴム組成物が開示されている。
【0006】
しかしながら、前記公報に記載されているアミノ基含有ジエン系ゴムは、一般のジエン系ゴムのかわりに使用される高分子量のゴムであり、シリカを配合するとムーニー粘度が高くなって加工性がわるくなり、タイヤ製造工程で問題が生じやすくなることにはかわりがない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、カーボンブラックのかわりにシリカを配合して低燃費特性を改善したタイヤトレッド用ゴム組成物の加工性を改善し、低燃費特性と加工性とを両立させたタイヤトレッド用ゴム組成物を得るためになされたものであり、ジエン系ゴムを主成分とし、イソプレンに対しビニルピリジンの割合が3〜30重量%(以下、%という)で、数平均分子量が2千〜5万であるイソプレンとビニルピリジンとのブロック共重合体からなる液状イソプレン系ゴムを3〜40%含有するゴム成分100部およびシリカ20〜150部からなるタイヤトレッド用ゴム組成物に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では、ジエン系ゴムを主成分とし、イソプレンに対してビニルピリジンの割合が3〜30%で、数平均分子量が2千〜5万であるイソプレンとビニルピリジンとのブロック共重合体からなる液状イソプレン系ゴム(以下、液状IR系ゴムという)を3〜40%含有するゴム成分が使用される。
【0009】
前記ジエン系ゴムを主成分とするとは、タイヤトレッド用ゴム組成物の基体となるジエン系ゴムが、ゴム成分中に60〜97%、さらには70〜95%、とくには80〜95%含有されることを意味する。本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、ジエン系ゴムを主成分とする組成物であるため、加工性が良好で、低温特性および耐摩耗性が良好な組成物を得ることができる。ジエン系ゴムの割合が少なすぎる場合には、前記ジエン系ゴムを使用する場合の好ましい特性が充分発現せず、一方、多すぎる場合には、前記液状IR系ゴムの割合が少なくなり、液状IR系ゴムを用いることによる効果、すなわち、低燃費特性をよくし、かつ、加工性を改善することが困難になる。
【0010】
前記ジエン系ゴムは、一般にタイヤトレッドの製造に使用されるものであればとくに限定はないが、具体例としては天然ゴムや、ブタジエン、イソプレンなどのジエン系モノマー、好ましくはブタジエンを20〜100%と、これらと共重合性を有するモノマー、たとえばスチレン、イソブチレン、アクリロニトリルなど0〜80%との(共)重合体、たとえばポリブタジエン、SBR(とくにS−SBR(溶液重合SBR))、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴムなど、前記(共)重合体の部分水素添加(以下、部分水添という)物、たとえば部分水添SBRなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは天然ゴム、イソプレンゴムが前記液状IR系ゴムとの相溶性が良好である点から好ましい。
【0011】
前記ジエン系ゴムの分子量、分子量分布、Tgなどにもとくに限定はないが、重量平均分子量が10万〜500万、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜5、Tgが−50〜0℃のものが一般に使用される。
【0012】
前記液状IR系ゴムは、前述のごとくイソプレンに対してビニルピリジン(たとえば2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジンなど、好ましくは2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン)の割合が3〜30%、さらには5〜25%、とくには10〜25%であるイソプレンとビニルピリジンとのブロック共重合体である。ゴム成分の一部に液状IR系ゴムを使用するため、本発明の組成物の加工性を改善し、かつ転がり抵抗を低減(tanδを低減)させることができる。また、液状IR系ゴムがブロック共重合体であるため、前記ジエン系ゴムとの相溶性が良好となる。該液状IR系ゴムにおけるイソプレンに対するビニルピリジンの割合が3%未満ではtanδが上昇し低燃費特性が低下し、30%をこえるとジエン系ゴム成分が減少することにより組成物の引っ張り物性、耐摩耗性が低下する。
【0013】
前記液状とは、25℃の粘度が1万P(ポアズ)以下、さらには8千P以下の状態を有することを意味する。
【0014】
前記イソプレンとビニルピリジンとのブロック共重合体は、特開昭49−86494号公報に記載されているようなラジカル重合や、一般的な有機金属類を開始剤としたアニオンリビング重合によって製造したブロック共重合体のいずれでもよい。
【0015】
前記ブロック共重合体の分子量は、数平均分子量で2千〜5万、さらには5千〜4万であるのが、液状になり、かつ、得られる組成物の成形加工性がよくなる点から好ましい。該数平均分子量が2千未満だと組成物の引っ張り物性、耐摩耗性が低下し、5万をこえると組成物の粘度が増大し、加工性が低下する傾向がある。
【0016】
前記ブロック共重合体は、前記ゴム成分中に3〜40%、さらには5〜30%、とくには5〜20%含有される。前記ゴム成分中におけるブロック共重合体の割合が3%未満だと、ムーニー粘度を低下させる効果が小さく、40%をこえると、粘度が低くなりすぎ組成物の粘着性が上がりすぎて成形加工が困難になる。
【0017】
本発明に使用されるシリカは、補強剤として使用される成分である。数ある補強剤のうちでもとくにシリカを使用するのは、タイヤにした場合の転がり抵抗を低くすることができるためである。
【0018】
前記シリカとしては、汎用ゴムの配合用に一般に用いられるものが使用される。具体的には、一般に補強剤として使用される乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、および特開昭62−62838号公報に開示される沈降シリカなどが例示される。これらのシリカは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
前記シリカの比表面積にはとくに制限はないが、たとえばCTAB吸着比表面積(以下、CTABという)が100〜200m2/g、BETチッ素吸着比表面積(以下、BETという)が100〜250m2/gのものが使用される。
【0020】
前記シリカの具体例としては、たとえばニプシルVN3(日本シリカ(株)製、CTAB 144m2/g、BET 210m2/g)、ニプシルAQ(日本シリカ(株)製、CTAB 150m2/g、BET 227m2/g)などがあげられる。
【0021】
前記シリカの使用量は、前記ゴム成分100部に対して20〜150部、好ましくは40〜100部である。該使用量が20部未満だと、充分に転がり抵抗を低くすることができず、また、補強性が不足し、耐摩耗性、強度が低下する。逆に、150部をこえると組成物の粘度があがりすぎて加工性が低下する。
【0022】
本発明の組成物は、前記ゴム成分およびシリカからなり、必要により、一般にタイヤトレッド用ゴム組成物の添加剤として使用される添加剤を一般に使用される範囲で添加してもよい。
【0023】
前記添加剤として、加工性を向上させることができる補強剤としてカーボンブラックを併用してもよい。
【0024】
前記カーボンブラックにはとくに制限はないが、たとえば、汎用ゴムの配合用に一般に用いられるものが使用される。具体的には、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどが例示される。
【0025】
前記カーボンブラックの使用量は、前記ゴム成分100部に対して50部以下、さらには30部以下が好ましい。該使用量が50部をこえるとゴム成分とシリカとの相互作用がうすめられ、低燃費特性が低下する傾向が生じやすい。なお、カーボンブラックを使用して加工性を向上させるためには5部以上使用するのが好ましい。
【0026】
また、前記添加剤として、通常シリカ配合で使用されているようなシランカップリング剤を併用してもよい。
【0027】
前記シランカップリング剤にはとくに限定はないが、たとえばビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシ−エトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランや、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、特開平6−248116号公報に記載されるγ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどのテトラスルフィド類などがあげられる。これらのうちでは、ビス−(3−(トリエトキシシリル)−プロピル)−テトラスルフィドが好ましい。
【0028】
前記シランカップリング剤を使用する場合の使用量は、前記使用するシリカ成分100部に対して5〜15部、さらには7〜10部が好ましい。該使用量が、使用するシリカ成分100部に対して5部未満になると、補強効果が充分でなく、一方、15部をこえて添加しても効果があがらず、不経済である。
【0029】
前記添加剤のそのほかの具体例としては、たとえばプロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル)、加硫剤(イオウ、塩化イオウ化合物、有機イオウ化合物など)、加硫促進剤(グアジニン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンデート系の化合物など)、架橋剤(有機パーオキサイド化合物、アゾ化合物などのラジカル発生剤や、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物など)、補強剤(ハイスチレン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂など)、酸化防止剤ないし老化防止剤(ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系などのアミン誘導体、キノリン誘導体、ハイドロキノン誘導体、モノフェノール類、ジフェノール類、チオビスフェノール類、ヒンダードフェノール類、亜リン酸エステル類など)、ワックス、ステアリン酸、酸化亜鉛などがあげられる。
【0030】
本発明の組成物の製造方法にはとくに限定はなく、前記ゴム成分およびシリカを用い、常法にしたがって製造すればよい。
【0031】
製造されたゴム組成物は、良好な加工性を有し、タイヤのトレッド部分の形成に使用され、製造されたタイヤは、ゴム成分とシリカとを配合した組成物からのトレッドを有することにより、低燃費特性の良好なものとなる。
【0032】
【実施例】
つぎに本発明の組成物を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
なお、実施例および比較例で使用する原料および評価方法を以下にまとめて示す。
【0034】
NR
一般に使用されているRSSの#3グレードのもの
S−SBR
SL574:ジェーエスアール(株)製
液状イソプレンゴム
LI−50:(株)クラレ製
液状IR系ゴム
LIR系ゴム(1):アニオンリビング重合によりイソプレン/ビニルピリジン=100/5(重量比)でブロック共重合させた数平均分子量が36000の液状IR系ゴム
LIR系ゴム(2):アニオンリビング重合によりイソプレン/ビニルピリジン=100/10(重量比)でブロック共重合させた数平均分子量が36000の液状IR系ゴム
LIR系ゴム(3):アニオンリビング重合によりイソプレン/ビニルピリジン=100/25(重量比)でブロック共重合させた数平均分子量が36000の液状IR系ゴム
LIR系ゴム(4):末端にピリジンを導入した数平均分子量が36000の液状IR系ゴム
LIR系ゴム(5):アニオンリビング重合によりイソプレン/ビニルピリジン=100/2(重量比)でブロック共重合させた数平均分子量が36000の液状IR系ゴム
LIR系ゴム(6):アニオンリビング重合によりイソプレン/ビニルピリジン=100/35(重量比)でブロック共重合させた数平均分子量が36000の液状IR系ゴム
LIR系ゴム(7):アニオンリビング重合によりイソプレン/ビニルピリジン=100/10(重量比)でブロック共重合させた数平均分子量が1800の液状IR系ゴム
LIR系ゴム(8):アニオンリビング重合によりイソプレン/ビニルピリジン=100/10(重量比)でブロック共重合させた数平均分子量が72000の液状IR系ゴム
シリカ
ウルトラシールVN3:デグッサ社製、CTAB 165m2/g、BET 172m2/g
カーボンブラック
N351:三菱化学(株)製
シランカップリング剤
Si69:デグッサ社製
ワックス
サンノックワックスN:大内新興化学(株)製
老化防止剤
オゾノン6C:精工化学(株)製
ステアリン酸
桐:日本油脂(株)製
酸化亜鉛
酸化亜鉛2種:三井金属鉱業(株)製
硫黄
粉末硫黄:軽井沢硫黄(株)製
加硫促進剤NS
ノクセラーNS:大内新興化学(株)製
加硫促進剤DPG
ソクシノールD:住友化学工業(株)製
【0035】
(成形加工性)
所定のタイヤトレッド用ゴム組成物になるように配合したものを、一般的に用いられている工業用バンバリーミキサーで混練した混練物(タイヤトレッド用ゴム組成物)を調製し、トレッドの押出成形加工性(トレッドを押出成形加工するときの予備加熱の熱まわりと、押出安定性)を下記の基準で評価した。予備加熱の熱まわりがよく、押出安定性がよい場合、意図する寸法・重量のトレッドを製造しやすくなる。
○:予備加熱が容易で、押出安定性が良好で、タイヤの成形加工がしやすい
△:予備加熱がやや困難または押出安定性がやや低下した状態
×:予備加熱が困難または押出安定性が低下した状態
【0036】
(転がり抵抗)
成形加工性の場合と同様にして製造した混練物(タイヤトレッド用ゴム組成物)を押出成形加工したものをトレッドとした185/65R14サイズのタイヤを製造し、(株)神戸製鋼所製の試験機を用い、荷重345kg、内圧200kPa、速度80km/hで走行させて、転がり抵抗を測定した。測定値を指数化し、比較例1の性能を100とした指数で示した。指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費特性が良好であることを示す。
【0037】
(耐摩耗性)
転がり抵抗の場合と同様にして製造したタイヤを装着した車を、高速道路と一般道路とが約1:3になるように交え、合計3万km走行した時点でトレッドの残溝を調べ、摩耗度合を評価した。測定値を指数化し、比較例1の性能を100とした指数で示した。指数が大きいほど耐摩耗性にすぐれることを示す。
【0038】
実施例1〜6および比較例1〜9
表1記載の成分(ただし、硫黄および加硫促進剤を除く)を表1記載の割合で配合した組成物を(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーで3分間混練した。得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を表1記載の割合で加えて2軸ローラーにより90℃で約3分間練り込んだ組成物を、170℃で12分間加硫することによりタイヤトレッド用ゴム組成物を調製した。
【0039】
得られた組成物をトレッドに用いたタイヤを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物を使用することにより、低燃費特性と加工性とを両立させることができる。
Claims (1)
- ジエン系ゴムを主成分とし、イソプレンに対しビニルピリジンの割合が3〜30重量%で、数平均分子量が2千〜5万であるイソプレンとビニルピリジンとのブロック共重合体からなる液状イソプレン系ゴムを3〜40重量%含有するゴム成分100重量部およびシリカ20〜150重量部からなるタイヤトレッド用ゴム組成物。
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