JP4097348B2 - 消臭剤 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、シート等に固定した際に脱落がない消臭剤及びその製造方法、並びに該消臭剤を有し、消臭剤粒子の脱落がない消臭シートに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
消臭剤としては、粒子状のものが提案されており、この粒子状の消臭剤は、使い捨ておむつの吸収体に含有させる等種々の分野において応用されている。
【0003】
しかし、従来の粒子状の消臭剤を吸収体に固定する際には、接着剤を散布し、消臭剤を固着させていたが、このように固着した場合には、吸収体から消臭剤が脱落することがあり、これにより使い捨ておむつの使用感が低下する等の問題を生じていた。
【0004】
従って、本発明の目的は、シート等に固定した際に脱落しない粒子状の消臭剤及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、消臭剤の脱落のない消臭シートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、粒子状の消臭成分と、該消臭成分を少なくともその一部が露出するように被覆してなる結合剤とからなる消臭剤において、前記結合剤は、ポリエステル類の熱溶融樹脂であり、前記消臭成分と前記結合剤との配合割合は、平均体積比で、前記消臭成分が10〜65体積%、前記結合剤が90〜35体積%である消臭剤により、前記目的を達成したものである。本発明は、前記消臭剤の製造方法であって、消臭成分の粒子と結合剤とを加熱混合し、固化させた後、固化された混合物を細分化する消臭剤の製造方法により、前記目的を達成したものである。本発明は、前記消臭剤をシートに固定してなる消臭シートにより、前記目的を達成したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の消臭剤の好ましい1実施形態について説明する。
本実施形態の消臭剤1は、図1に示すように、粒子状の消臭成分2と、該消臭成分2を少なくともその一部が露出するように被覆してなる結合剤3とからなる。即ち、本実施形態の消臭剤1は、消臭成分2の一部が結合剤3で被覆されて、一部に消臭成分が露出された1又は複数の露出部21が形成されている。
【0007】
本発明の消臭剤の粒径は、150μm〜500μmであるのが好ましい。
150μm以上とすることにより、各種のシートに用いた場合に消臭剤の抜け落ちを防止でき、500μm以下とすることにより、本品を吸収性物品に適用した時の風合いが損なわれることが少なくなる。
【0008】
本発明の消臭剤の接着強度は、消臭剤を2枚のシート材料にはさんで加熱接着し、この2枚のシート材料を剥離させることにより測定され、テンシロン剥離試験機における180°剥離試験において、シート側の材料の構造が一部破壊されることが確認できる程度、即ち、通常の不織布材料であれば材料破壊される程度であることが望ましい。
ここで、接着強度は、下記の測定法により測定される。
測定法;幅25mm、長さ70mmでサイド部分に約20mmの非接着部分を設け、残りの部分は前記消臭剤で接着した測定試料を作成し、該測定試料の非接着部分をテンシロン剥離試験機のチャックにはさみ、300mm/minの速度で剥離試験を行う。
【0009】
また、本発明の消臭剤の消臭性能は、速効性のある消臭粒子として使用する場合は、原料消臭剤のにおい物質吸収速度の50%以上を有するようにすることが好ましい。ただし、持続性を求める消臭粒子として利用する場合は、50%以下としても差し支えない。
ここで、消臭性能は、下記の測定法により測定される。
500mlの3角フラスコに消臭粒子成分が0.1gとなる様に消臭剤を投入し、におい物質0.4μlを注入した時のにおい物質濃度をガス検知管(ガステック社、商品名「GV−100S」)にて経時的に測定し、におい物質の減少速度を求める。但し、測定試料は経過時間毎に用意し、一度測定した試料は連続して測定しない。
【0010】
本発明の消臭剤において、消臭成分の露出される割合は、上述の消臭性能を満たす程度であれば特に制限されず、また、結合剤の被覆厚さや被覆割合は、上述の接着強度を満たせば特に制限されない。
【0011】
本発明において用いられる消臭成分としては、下記するもの等が用いられる。
椰子殻活性炭、木質活性炭等の一般的な活性炭;ジビニルベンゼン−スチレン共重合体に代表される多孔質ポリマー;シリカゲル、ゼオライトに代表される無機多孔質、多孔性消臭材料等。
【0012】
本発明の消臭剤に用いられる消臭成分の粒径(後述する消臭成分の粒子の粒径)は、150〜700μmとするのが好ましく、150〜500μmとするのが更に好ましく、150〜350μmとするのが最も好ましい。
150μm以上とすることにより、消臭剤の粒径が150μm未満とならず、粒径が細かくなることによる上述の弊害が生じず、700μm以下とすることにより、消臭性能が低下することがなくなる。
即ち、本発明の消臭剤は、後述するように消臭成分の粒子と結合剤とを混合した後粉砕して得られるものが好ましく、この場合、消臭成分自体が粉砕されて、原料である消臭成分の粒子の粒径よりも消臭剤における消臭成分の粒径が小さくなる。このため、消臭剤の所望の粒径(即ち、150μm)以上の粒径を、原料としての消臭成分の粒子が有するのが好ましい。
なお、本明細書において「粒径」は、各粒子の粒径を意味し、標準ふるいにより測定される値である。
【0013】
また、本発明において用いられる結合剤としては、ガラス転移点温度が室温以上の熱溶融樹脂が好ましく用いられ、具体的には、ポリエステル類の熱溶融樹脂が用いられる。
【0014】
消臭成分と結合剤との配合割合は、平均体積比で、消臭成分を10〜65体積%とし、結合剤を90〜35体積%とし、好ましくは消臭成分15〜50体積%、結合剤85〜50体積%である。消臭成分の配合割合が、10体積%以上とすることにより、消臭性能の低下がなく、65体積 %以下とすることにより、固着性能が低下してシート等に用いた場合に抜け落ちが生じる場合ことが生じない。なお、前記「平均体積比」は、消臭成分の体積が充填密度から求められる見かけの体積と結合剤の体積が比重により求められる体積との比率とし、それぞれ充填密度は、JIS K1474の5.7に記載される測定法により測定されるものとし、比重は、JIS K0061の4.2もしくは4.3記載の測定法により測定される。
【0015】
本発明の消臭剤は、上述の如く構成された粒子状のものであるので、使い捨ておむつの吸収体等の各種のシート材等に好適に適用できる。
そして、本発明の消臭剤は、使い捨ておむつの吸収体等のシート材に用いた場合に、強固に接着されるため抜け落ちがなく、消臭剤の粒子が抜け落ちることにより生じる例えば使い捨ておむつにおける使用感の低下等の各種の問題が生じないものである。
【0016】
次に、本発明の消臭剤の好ましい製造方法について説明する。
本発明の消臭剤の製造方法は、消臭成分の粒子と結合剤とを加熱混合し、固化させた後、固化された混合物を粉砕することにより実施できる。
即ち、消臭成分の粒子と結合剤とを加熱混合し、固化させた後、固化された混合物を細分化してなるものであるのが好ましい。
【0017】
更に詳細には、前記消臭剤は、好ましくは、消臭成分の粒子と結合剤とを加熱混合した後、板状又はブロック状等の形状に押し出し成形し、固化させた後、粉砕し、分級することにより製造される。
【0018】
加熱混合する際の、加熱温度は、熱融着樹脂の軟化点+0〜20℃とするのが好ましい。
混合時間及び撹拌速度は、特に規定しないが、消臭剤粒子と結合剤がほぼ均一になるまで加熱混合する。目安は遊離している消臭剤がなくなってさらに5〜30分さらに撹拌するのが好ましい。
【0019】
押し出し成形の条件は、通常公知の条件を適宜採用することができ、押し出し成形する際の形状も、通常の板状やブロック状等特に制限されない。
【0020】
固化させるには、押し出し成形された混合物を、ガラス転移点以下の温度になるまで冷却するのが好ましい。
【0021】
細分化するには、ハンマーミル、カッターミル、ロールミル等を用いて、段階的に粉砕し、微粉(150μm以下)の発生をできるだけ抑える様に粉砕するのが好ましい。
【0022】
分級するには、粒径150μm以上を分別できるふるいを用いる等して分級するのが好ましい。なお、150μm未満は再成形するのが好ましい。
【0023】
次に、本発明の消臭シートについて説明する。
本発明の消臭シートは、前記の本発明の消臭剤をシートに溶融固定してなる。
ここで用いられるシートとしては、各種の紙、不織布シート等が挙げられ、これらの原料は特に制限されない。
また、溶融固定する際の溶融温度は、結合剤の樹脂軟化点温度以上の温度であれば特に制限されない。また、溶融固定手段は、特に制限されないが、ヒートロールにより加熱圧着する方法等が好適に用いられる。
本発明の消臭シートにおける消臭剤の使用量は、消臭シートの用途等により任意であるが、坪量で、1〜100g/m2 とするのが好ましい。
【0024】
本発明の消臭シートの実施形態(消臭剤をシートに溶融固定する形態)としては、図2(a)〜(d)の形態等が挙げられる。
図2(a)の実施形態の消臭シート100は、シート101上に消臭剤1を散布した後、溶融固定してなる。
図2(b)の実施形態の消臭シート100は、繊維シート102中に消臭剤1を分散して、溶融固定してなる。
図2(c)の実施形態の消臭シート100は、2枚のシート101で消臭剤1を狭持して、溶融固定してなる。
図2(d)の実施形態の消臭シート100は、3枚のシート101で消臭剤1を狭持して、溶融固定してなり、消臭剤1の層110が2層形成されている。
【0025】
上述の各実施形態におけるシート101及び繊維シート102としては、それぞれ通常のものを特に制限なく用いることができるし、厚さ等も消臭シートの用途等に応じて任意である。
【0026】
本発明の消臭シートは、使い捨ておむつの吸収体、生理用ナプキンの吸収体、及び使い捨てシーツ等に好適に用いられる。
本発明の消臭シートは、前記の本発明の消臭剤を溶融固定されているので、消臭剤の抜け落ちがなく、使い捨ておむつの吸収体等に適用した場合に、使用感の低下等の弊害が生じない。
【0027】
なお、消臭シートの実施形態は上述の例に制限されず、例えば、図2(c)に示す実施形態において、上層又は下層のいずれか一方の層の厚さ、繊維密度や親水性を他方の層と異なるものとしたり、他の粒子、例えば吸水ポリマーを含む形態とすることができる。
【0028】
【実施例】
〔実施例1〜3及び比較例1〜4〕
〔表1〕に示す上層シート及び下層シートを用いて、図2(c)に示す形態の消臭シートをそれぞれ作成した。なお、比較例1は、消臭剤を用いていないシートのみの例である。また、実施例1〜3の消臭シートは、下記する本発明の消臭剤を用いて、該消臭剤を坪量20g/m2 で散布し、通常のヒートロールを用いて、200℃で上下層を圧着すると共に消臭剤を溶融固定してなるものである。
比較例2及び3の消臭シートは、吸水ポリマーとしてポリアクリル酸Na架橋物を、シート上に坪量20g/m2 で散布し、その後粒径150〜350μmの椰子殻活性炭を坪量20g/m2 で散布して、水を散布して上下層を接着してなるものであり、比較例4の消臭シートは、シート上に坪量10g/m2 で粘着剤(具体的にはポリエステル系熱融着樹脂)を散布し、その後粒径250μmの椰子殻活性炭を坪量20g/m2 で散布し、通常のヒートロールを用いて、200℃で上下層を圧着すると共に消臭剤を溶融固定してなるものである。
消臭剤:粒径180μm以上の椰子殻活性炭49.3体積%とポリエステル系熱溶融樹脂、50.7体積%とを加熱混合した後、板状に押し出し成形した後、ハンマーミルを用い、ガラス転移点以下の温度での条件で粉砕し、更にメッシュ30及び100のふるいを用いて粒径150μm以上500μm以下に分級してなる消臭剤。
また、NBKP製紙としては、化学パルプ100wt%の湿式抄紙シートを用い、拡散紙としては、マーセル化パルプ95wt%、化学パルプ5wt%の湿式抄紙シートを用いた。
【0029】
表中、各測定は、下記のようにして行った。
消臭性能;500ml3角フラスコに50×50mmに調整したシートを入れ、におい物質0.4μlを注入した時のにおい物質濃度をガス検知管(ガステック社製、「GV−100S」)にて経時的に測定し、におい物質の減少速度を求めた。そして、比較として、シート中に含まれる消臭原料粒子と同量の消臭原料粒子を3角フラスコに入れ同様に、消臭原料粒子のにおい物質の減少速度を求め、両者を比較して、特に良好なものを◎、良好なものを○、ほとんどないものを×とした。
シート接着力は、上述の接着強度と同様にして行った。
【0030】
切断試験;得られた消臭シートを10cm×10cmに切り出してこれをサンプルとした。得られたサンプルについて、押し切りカッター(商品名「A4ペーパーカッター」内田洋行株式会社製)で切断した際の消臭剤の脱落量を測定した。150μ以上の粒子が脱落した場合は×、150μm以下の粒子の脱落が確認できた場合を○、視覚的に脱落を確認できない場合を◎とした。
振動試験;切断試験で使用した同じサイズに消臭シートを切り出し、これをサンプルとした。得られたサンプルを16mesh(目開き1mm)の金網に挟み、30秒間バイブレーター(商品名「パナブレーターEV255」松下電工株式会社製)で振動させた際の脱落量を測定し、切断試験と同様に評価した。
吸水速度;パルプ9g(坪量300g/m2 )、吸水ポリマー3g(坪量100g/m2 )を含む20cm×15cmの吸収体上に20×15cmに切り出した消臭シートを載せ、さらに20×15cmに切り出した坪量25g/m2 の不織布材料からなるトップシートを載せた構成物をサンプルとした。得られたサンプルに100mlの人工尿をシャーレ(開孔杯φ3mm×5)で注入した際の吸水時間を測定し、これを吸水速度とした。
液戻り量;吸水速度の測定において人工尿を吸水させたサンプルに、3分間45g/cm 2の荷重をかけた後、サンプル上に濾紙を載せ、濾紙の上から再度同じ荷重を2分間かけた後、濾紙の重量を測定し、初期の重量からの増加分を液戻り量とした。
【0031】
【表1】
【0032】
〔表1〕に示す結果から明らかなように、本発明の消臭剤を用いてなる本発明の消臭シート(実施例1〜3)は、いずれも、十分な接着力を有すると共に、切断や振動により脱落の生じないものであり、本発明の消臭剤が各種シート材に用いた際に脱落を生じないものであることが判る。
また、実施例1〜3及び比較例1〜4に係る消臭シートは、何れも吸収体として用い得るものであるが、〔表1〕に示す結果から明らかなように、本発明の消臭剤を用いてなる本発明の消臭シート(実施例1〜3)は、いずれも、吸水ポリマーを用いていないにも拘わらず、消臭剤を用いていない単層の吸水紙(比較例1)よりも高い吸水性能を示し、従来の粘着剤樹脂を散布した後従来の消臭剤を散布してなる消臭シートよりも高い吸水性能を示している。このことから、本発明の消臭剤は、特に吸収体に用いた際に吸収体の吸収性能をも向上させる効果があることが判る。
【0033】
【発明の効果】
本発明の消臭剤は、シート等に固定した際に脱落しないものである。
また、本発明の消臭剤の製造方法によれば、前記消臭剤を簡便に製造できる。
また、本発明の消臭シートは、消臭剤の脱落のないものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の消臭剤の1実施形態に係る粒子の任意の断面を模式的に示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(d)は、それぞれ、本発明の消臭シートの実施形態を模式的に示すシートの幅方向断面図である。
【符号の説明】
1 消臭剤
2 消臭成分
3 結合剤
Claims (5)
- 粒子状の消臭成分と、該消臭成分を少なくともその一部が露出するように被覆してなる結合剤とからなる消臭剤において、
前記結合剤は、ポリエステル類の熱溶融樹脂であり、
前記消臭成分と前記結合剤との配合割合は、平均体積比で、前記消臭成分が10〜65体積%、前記結合剤が90〜35体積%である消臭剤。 - 消臭成分の粒子と結合剤とを加熱混合し、固化させた後、固化された混合物を粉砕してなる請求項1記載の消臭剤。
- 請求項1記載の消臭剤の製造方法であって、消臭成分の粒子と結合剤とを加熱混合し、固化させた後、固化された混合物を細分化することを特徴とする消臭剤の製造方法。
- 請求項1記載の消臭剤をシートに固定してなる消臭シート。
- 前記消臭剤を前記シートに溶融固定してなる請求項4記載の消臭シート。
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