JP4096768B2 - 回転精度測定方法及び回転精度測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸を中心として回転する回転体の回転精度を測定する回転精度測定方法及び回転精度測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
転がり軸受又は流体軸受等に支持されて回転する回転体(例えばモータによって回転するスピンドル等)の回転精度を測定する回転精度測定装置では、従来、回転体の変位を示す時系列データを、回転体の回転とは無関係に採取して大量の変位データを収集し、その大量の変位データに対して一括してデータ処理を行っていた。このデータ処理では、例えば、時系列的に得られた変位データ(以下「採取データ」と記述)に対して高速フーリエ変換(以下「FFT」と記述)を施すことにより、周波数スペクトルを示すデータ(以下「スペクトルデータ」と記述)を算出する。次に、そのスペクトルデータにおいて同期振れ誤差(RRO;Repeatable Run Out)を除去することにより、1回転毎に繰り返されない回転体の変位に相当する非同期振れ誤差(NRRO;Non Repeatable Run Out)を求めている。
【0003】
特許文献1には、簡単な操作により玉軸受単品のNRROが測定できる玉軸受の回転精度検査方法及び検査装置が開示されている。また、特許文献2には、ラジアル転がり軸受の回転非同期振れと動トルクとを、互いに関連付けて、正確に測定自在とするラジアル転がり軸受用回転精度及び動トルク測定装置が開示されている。また、特許文献3には、転がり軸受のラジアル、アキシアル両方向の回転非同期振れと動トルクとを、互いに関連付けて、正確に測定自在とする転がり軸受用回転精度及び動トルク測定装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−311588号公報
【特許文献2】
特開2000−155073号公報
【特許文献3】
特開2001−194270号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の回転精度測定装置では、回転体を回転させるモータ等の回転ムラが測定に大きな影響を与えていた。また、上記の採取データは、回転体の回転とは無関係に採取された時系列データであるので、上記データ処理においてFFTが施される際には、採取データが所定区間外で滑らかに0になるように、予め窓関数によって採取データに対して適当な重み付けがなされていた。一般に窓関数が使用されると、FFTによって得られるスペクトルが拡散するので、この関数の使用も、従来の回転精度測定装置による測定に大きな影響を与えることになる。このように、従来の測定装置では、モータの回転ムラや窓関数の影響が大きい為、回転精度についての高度な測定、即ちRRO,NRRO及び真円度等の正確な算出は困難であった。
【0006】
本願出願人は、上述したような事情に鑑みて、上記の時系列データを回転体の回転周期毎に分割してブロック化することにより、複数のデータブロックからなるブロック化データを作成し、作成したブロック化データに基づき、回転体の回転精度を示す指標を算出し、モータの回転ムラ等の影響及び上記窓関数の影響を小さく出来る回転精度測定装置を、特願2002−018402、特願2002−036777において提案している。
【0007】
この回転精度測定装置では、時系列データの同期成分が大きい場合、及び変位センサ上、回転体上のキズ等の為に時系列データが急峻に変動する場合に、算出する非同期振れの値の誤差が拡大するという問題がある。
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、時系列データの同期成分が大きい場合、及び変位センサ上、回転体上のキズ等の為に時系列データが急峻に変動する場合でも、算出する非同期振れの値の誤差を抑制することが出来る回転精度測定方法及び回転精度測定装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
同じ周期的な波形をサンプリングしたとき、あるサンプリング点における周期間の誤差は、サンプリング点間に変化する量によって決まる。サンプリング点間に変化する量が大きい程、誤差は大きくなる。この誤差を小さくする為に、本発明に係る回転精度測定方法及び回転精度測定装置では、回転体の1回転当たりに採取するデータ数を多くし、離散化時にサンプリング点間で変化する量を少なくすることにより、誤差を小さくする。
【0009】
第1発明に係る回転精度測定方法は、軸を中心として回転する回転体の半径方向又は軸方向の変位を示す所定周期の標本化値からなる時系列データを、前記回転体の回転周期毎に分割しブロック化して複数のデータブロックを作成し、作成した各データブロックの標本化値を再標本化することにより、各データブロックの標本化値の数を所定数に変換し、標本化値を所定数に変換した各データブロックに基づき、前記回転体の回転精度を示す指標を算出する回転精度測定方法であって、前記時系列データの各データブロック毎の標本化値の数は、前記所定数の2乃至16倍であることを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る回転精度測定装置は、軸を中心として回転する回転体の半径方向又は軸方向の変位を示す所定周期の標本化値からなる時系列データを取得する取得手段と、該手段が取得した時系列データを、前記回転体の回転周期毎に分割しブロック化して複数のデータブロックを作成する手段と、該手段が作成した各データブロックの標本化値を再標本化することにより、各データブロックの標本化値の数を所定数に変換する手段と、該手段が標本化値を所定数に変換した各データブロックに基づき、前記回転体の回転精度を示す指標を算出する手段とを備える回転精度測定装置であって、前記取得手段は、前記時系列データの各データブロック毎の標本化値の数が前記所定数の2乃至16倍になるように標本化値を取得すべくなしてあることを特徴とする。
【0011】
第1発明に係る回転精度測定方法及び第2発明に係る回転精度測定装置では、取得手段が、軸を中心として回転する回転体の半径方向又は軸方向の変位を示す所定周期の標本化値からなる時系列データを取得し、作成する手段が、その取得した時系列データを、回転体の回転周期毎に分割しブロック化して複数のデータブロックを作成する。変換する手段が、その作成した各データブロックの標本化値を再標本化することにより、各データブロックの標本化値の数を所定数に変換し、算出する手段が、その標本化値を所定数に変換した各データブロックに基づき、回転体の回転精度を示す指標を算出する。取得手段は、時系列データの各データブロック毎の標本化値の数が所定数の2乃至16倍になるように標本化値を取得する。
【0012】
これにより、回転体の1回転当たりに採取するデータ数を多くすることが出来、時系列データの同期成分が大きい場合、及び変位センサ上、回転体上のキズ等の為に時系列データが急峻に変動する場合でも、算出する非同期振れの値の誤差を抑制することが出来る回転精度測定方法及び回転精度測定装置を実現することが出来る。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を、その実施の形態を示す図面を参照しながら説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明に係る回転精度測定方法及び回転精度測定装置の実施の形態1の構成を模式的に示す説明図であり、図2は、この回転精度測定装置が回転体を測定するときの状態を示す平面図である。回転精度測定装置は、軸受により支持され、所定の回転軸11(軸)を中心としてモータ(図示せず)により回転する回転体10の回転精度を測定する測定装置であり、回転体10の半径方向の変位を検出する非接触式の変位センサ20と、変位センサ20の検出信号Sdに基づき回転体10の半径方向の変位を示す標本化値からなる時系列データを収集し、その時系列データである採取データを処理するデータ収集処理装置30とを備えている。
【0014】
変位センサ20は、回転体10の外周面近傍に配置され、その外周面と変位センサ20との距離を検出し、その検出結果を回転体10の半径方向の変位を示す検出信号Sdとして出力する。尚、回転体10の軸方向の変位を検出し、軸方向の変位についての回転精度を測定する場合には、図1において破線で示すように、回転体10の上面近傍に回転体10の軸方向の変位を検出する非接触式の変位センサ21を配置し、その変位センサ21から出力される信号、即ち回転体10の上面と変位センサ21との距離を示す信号を検出信号Sdとして使用すれば良い。
【0015】
データ収集処理装置30は、中央処理装置としてのCPU31、入力インタフェース部32、メモリ33及び表示制御部34をバスで接続した構成となっており、表示制御部34には表示部36が接続されている。変位センサ20からの検出信号Sdは、入力インタフェース部32に入力される。入力インタフェース部32はA/D変換器を有し、検出信号Sdは、これにより標本化されたディジタルデータとしてメモリ33に一時的に格納される(以下、このディジタルデータを「原データ」と記述)。入力インタフェース部32は、変位センサ20と共に、回転体10の変位を表す時系列データを取得する取得手段を構成する。
【0016】
CPU31は、予めメモリ33に格納された所定プログラムを実行することにより、原データに対し、後述するDCカット処理、周期分割処理、レート変換及びFFT等のデータ処理を順次施す。これにより、データ収集処理装置30は、図3に示すような、DCカット部111、周期分割部112(データブロックを作成する手段)、レート変換部113(変換する手段)及び信号処理部114(指標を算出する手段)を備える装置として作動する。
【0017】
DCカット部111は、変位センサ20から出力された検出信号Sdから直流成分を除去するものであり、具体的には、検出信号Sdを表すディジタルデータである原データに対する信号処理により、検出信号Sdから直流成分を除去した信号を表すディジタルデータを採取データDaとして作成する(この信号処理を「DCカット処理」という)。尚、DCカット部111は、ソフトウェア的に実現されているが、入力インタフェース部32に直流成分遮断回路を設け、これにより検出信号Sdから直流成分を除去した後に、A/D変換器により採取データDaを作成するようにしても良い。この場合、DCカット部111は、ハードウェアとして実現されることになり、入力インタフェース部32の一部を構成する。
【0018】
周期分割部112は、DCカット部111により作成された採取データDaを回転体10の回転周期毎に分割してブロック化することにより、複数のデータブロックからなるブロック化データDbを作成する(この処理を「周期分割処理」という)。具体的には、検出信号Sdを表すディジタルデータである採取データDaから、Sd=0に相当する時点であるゼロ点を求め、このゼロ点に基づき、採取データDaを回転周期毎に分割してブロック化データDbを得る。例えば、検出信号Sdの内、図4に示すような区間に相当する採取データDaがDCカット部111から得られた場合には、この採取データDaから検出されたゼロ点に基づき、図5に示すような4個のデータブロックDb1,Db2,Db3,Db4からなるブロック化データDbを得る。
【0019】
これら4個のデータブロックDb1,Db2,Db3,Db4のそれぞれを構成するディジタル信号値(回転体10の変位を示す標本化値)の数(以下「データ数」と記述、1回転周期のサンプリング点数に相当)は、モータの回転ムラ等の為、通常、全て等しくはならず、例えば、図6に示すように、データブロックDb1,Db2,Db3,Db4のデータ数は、それぞれn1個、n2個、n3個、n4個となる。尚、回転体10を回転させるモータを含む駆動部(図示せず)から回転周期に同期した信号(例えば1回転毎に1個パルスが現れる信号)がインデックスパルスSipとして出力される場合には、上述したゼロ点検出に代えて、そのインデックスパルスSipに基づき周期分割処理を行うようにしても良い。
【0020】
レート変換部113は、上述したようにデータ数がばらつく複数のデータブロックからなるブロック化データDbに対して再サンプリング処理(再標本化処理)を行うことにより、各データブロックのデータ数を同一(所定数)に変換する。即ち、レート変換により各データブロックのサンプリング点数を同一にする。このとき、信号処理部114で実行されるFFT(高速フーリエ変換)を考慮して、各データブロックのデータ数を2のべき乗とする。例えば、図6に示すようなブロック化データDb(Dc)に対してレート変換を施すことにより、データ数が全て2m であるデータブロックからなるブロック化データDdが得られる。
【0021】
また、入力インタフェース部32が、変位センサ20からの検出信号Sdをサンプリングする際の、回転体1回転当たりのサンプリング点数は、レート変換部113が再サンプリングする際の各データブロックのサンプリング点数nの2乃至16倍となるように設定されている。
図7は、複数の回転体についての、回転体1回転当たりのサンプリング点数と後述するようにして求めたNRROとの関係を示すグラフである。これにより、上述したように設定しておくことによって、NRROを抑制出来ることが判る。また、これにより、測定時の潜在的な誤差の量が少なくなり、測定対象である非同期振れの算出精度を向上させることが出来る。
【0022】
信号処理部114は、回転精度を示す指標を算出する手段であって、レート変換後のブロック化データDdに対して、窓関数を使用することなくFFTを施すことにより、スペクトルデータを算出する。そして、算出したスペクトルデータに基づき、従来と同様の手法により、RRO,NRRO及び真円度等を求める。このようにして得られたRRO,NRRO及び真円度等、回転体10の回転精度を示す指標は、測定結果としてメモリ33に格納されると共に、他の所定プログラムに基づき、表示制御部34に送られ、表示制御部34により表示部36に表示される。
【0023】
【発明の効果】
本発明に係る回転精度測定方法及び回転精度測定装置によれば、回転体の1回転当たりに採取するデータ数を多くすることが出来、時系列データの同期成分が大きい場合、及び変位センサ上、回転体上のキズ等の為に時系列データが急峻に変動する場合でも、算出する非同期振れの値の誤差を抑制することが出来る回転精度測定方法及び回転精度測定装置を実現することが出来る。また、測定時の潜在的な誤差の量が少なくなり、測定対象である非同期振れの算出精度を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る回転精度測定方法及び回転精度測定装置の実施の形態の構成を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明に係る回転精度測定装置が回転体を測定するときの状態を示す平面図である。
【図3】本発明に係る回転精度測定装置のデータ収集処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る回転精度測定装置の採取データの例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る回転精度測定装置の動作を示す説明図である。
【図6】本発明に係る回転精度測定装置の動作を示す説明図である。
【図7】本発明に係る回転精度測定装置における複数の回転体についての、回転体1回転当たりのサンプリング点数と求めたNRROとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 回転体
11 回転軸(軸)
20,21 変位センサ(取得手段)
30 データ収集処理装置
31 CPU
32 入力インタフェース部(取得手段)
33 メモリ
36 表示部
111 DCカット部
112 周期分割部(データブロックを作成する手段)
113 レート変換部(変換する手段)
114 信号処理部(指標を算出する手段)
Claims (2)
- 軸を中心として回転する回転体の半径方向又は軸方向の変位を示す所定周期の標本化値からなる時系列データを、前記回転体の回転周期毎に分割しブロック化して複数のデータブロックを作成し、作成した各データブロックの標本化値を再標本化することにより、各データブロックの標本化値の数を所定数に変換し、標本化値を所定数に変換した各データブロックに基づき、前記回転体の回転精度を示す指標を算出する回転精度測定方法であって、
前記時系列データの各データブロック毎の標本化値の数は、前記所定数の2乃至16倍であることを特徴とする回転精度測定方法。 - 軸を中心として回転する回転体の半径方向又は軸方向の変位を示す所定周期の標本化値からなる時系列データを取得する取得手段と、該手段が取得した時系列データを、前記回転体の回転周期毎に分割しブロック化して複数のデータブロックを作成する手段と、該手段が作成した各データブロックの標本化値を再標本化することにより、各データブロックの標本化値の数を所定数に変換する手段と、該手段が標本化値を所定数に変換した各データブロックに基づき、前記回転体の回転精度を示す指標を算出する手段とを備える回転精度測定装置であって、
前記取得手段は、前記時系列データの各データブロック毎の標本化値の数が前記所定数の2乃至16倍になるように標本化値を取得すべくなしてあることを特徴とする回転精度測定装置。
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