JP4096088B2 - 粒子分散アルミニウム合金材料の低圧鋳造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック粒子を分散させたアルミニウム合金等、粒子分散合金材料の低圧鋳造法に用いられる低圧鋳造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金鋳物は、鉄、鋼鋳物に比べて比重が小さいため、同一形状、同一寸法でも格段に軽いという特徴がある。このため、自動車、産業車両、鉄道等の材料をはじめ、電気、通信機器、日用品など材料として広く使用されている。近年は、例えばAl−Cu系、Al−Mg系、Al−Si系等を基本とするアルミニウム合金に、さらにセラミックスなどを配合した複合材として、特定の性質を一層強化して、特定の目的に供する開発も進んでいる。
【0003】
複合アルミニウム合金鋳物には、セラミックスなどの成形体(一般にはプリフォームと呼ばれる)をアルミニウム溶湯内に均一に分散して強化した粒子分散型アルミニウム合金鋳物がある。通常、繊維強化型アルミニウム合金鋳物は、個別に用意されたプリフォーム及びアルミニウムによって、あらかじめその複合化率は決定されて鋳造される。これに対し、粒子分散型アルミニウム合金鋳物は、あらかじめアルミニウム合金中に一定の粒子(例えばセラミック粒子等)が調整された原料を溶湯化して、粒子を均一分散させて鋳造するか、もしくは個別に用意されたアルミニウム合金溶湯に一定量の粒子を添加して鋳造するものである。粒子分散型アルミニウム合金鋳物の製造方法としては、2種のセラミックス粒子を均一分散させるもの(特開平4−297535号)や、粒子を最適分散させる装置及び方法(特開平7−90423号)等が知られている。これらの方法は、アルミニウム合金に一定の複合材を混入・分散させ、所望の完成品を製造することを主たる目的としたものである。
【0004】
粒子分散型アルミニウム合金鋳物の1例としては、自動車や鉄道車両のブレーキディスクへの適用がある。従来の鋳鉄材に代わり、高速化が一段と進むJR新幹線用の車両等は、摩擦特性のさらなる向上と車両の軽量化という命題に応えるべく、アルミニウム合金鋳物への材質転換が指向され、摩擦特性の一段の強化を目指して、アルミニウムベースの母合金にセラミックスを均等に分散強化する開発が進められている。例えば、Al−Mg合金にAl2 O3 粒子又はSiC粒子を分散させたもの(特開平3−47945号)や、Al−Si合金にSiC粒子を5〜30%均等に分散したブレーキディスクが提案されるなど、特定の部材に要求される特性を強化する有効な手段として注目を集める分野となっている。
【0005】
ところで、粒子分散型アルミニウム合金溶湯は、双方の溶融点の差、比重差、イオン化傾向、ぬれ性等、複雑な反応要素が絡み合って、物理的、化学的に特有の技術的困難性を伴うものである。また、特に鋳造品を製造するにあたっての造りやすさの指標となる流動性において、アルミニウム合金溶湯と比べて、粒子分散型アルミニウム合金溶湯の流動性は、前記のアルミニウム及び粒子双方の物理化学的特性が複雑に絡み合って、非常に悪いものである。このため、溶湯の流れが悪くなって、溶湯が金型内に十分に行き渡らず、鋳造品の表面にブローホールと呼ばれるいわゆる鋳造欠陥が現出することとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
鋳造メーカーが鋳造品を製作する場合には、その鋳造方法として、重力鋳造法、低圧鋳造法、高圧鋳造法、その他特殊な鋳造方法を採用する。これらの中で、自動車用アルミホイールの鋳造に多く採用される低圧鋳造法は、比較的経済的でかつ品質の高い鋳造方法として広く利用されている。しかしながら、粒子分散型アルミニウム合金溶湯の流動性は悪いため、通常の低圧鋳造法によって、粒子分散型アルミニウム合金溶湯によるアルミニウム合金鋳物を製作した場合、自動車用アルミホイールと同様な品質が保たれるか甚だ疑問である。
【0007】
粒子分散型アルミニウム合金溶湯を用い、低圧鋳造法によって高品質の鋳造品を製作するには、粒子分散アルミニウム合金溶湯の流動性を向上させる、ブローホールの原因を除去する、又はその双方の改善が必須条件となる。粒子分散型アルミニウム合金溶湯を通常のアルミニウム合金溶湯と同様の手段・方法で低圧鋳造すれば、ブローホールの現出率が増大することは必須であり、この点の改善は、経済性・工業化の点からも避けて通れない課題である。
【0008】
すなわち、前記低圧鋳造法では、溶湯液面上に圧力を加えることにより、ストークを通してアルミニウム溶湯を上昇させ、溶湯を金型へ注液する。図3、図4は従来の低圧鋳造装置を表すもので、上型1aと下型1bからなる金型1がパッキン7を介して金型台2上に載置されており、金型台2には下型1bの湯口に連通するスリーブ3が挿通されている。一方、溶解炉10の内部に、溶湯を収容保持する坩堝12が設けられ、該坩堝内には金型への溶湯の通路となるストーク5が設けられている。ストーク5の上端部にはフランジ5aが一体に設けられ、溶解炉の蓋11上に設けた複数のシリンダ13によって、パッキン7を介して金型台2の下面に押圧固定されている。
【0009】
ところで、上記従来の鋳造装置を用いる鋳造法では、鋳造終了時にアルミニウム合金溶湯の凝固収縮により、金型と製品(鋳造品)との間に負圧(真空状態)が発生する。この負圧のため、ストーク内の未凝固アルミニウム合金溶湯が吸引効果を受けて、即座に落下せず、落下に長時間を要している。
【0010】
このように、従来の低圧鋳造法では、未凝固溶湯が落下しにくいため、ストーク内で凝固して周囲に付着し、この付着物が次の鋳造時に湯の流れの妨げとなって溶湯に乱流を生じさせるので、溶湯中に空気を巻き込んで、製品中にブローホールが発生する原因となっている。また、この付着物は、鋳造を重ねる度に大きくなり、最終的には湯道を塞ぐことになるので、鋳造のたびに何らかの方法で取り除く必要があるが、これは煩雑な作業であり、作業工程の増加につながるという問題点がある。
【0011】
そこで本発明は、上記未凝固溶湯の落下を促進することにより、ストーク内における当該未凝固溶湯の凝固付着を防止し、作業工程を繁雑化することなく、高品質の製品を得ることができるようにすることを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用した。すなわち、本発明にかかる粒子分散アルミニウム合金材料の低圧鋳造装置は、溶解炉中の溶湯を加圧し、ストークを通して金型の湯口に導入する低圧鋳造法に用いられる鋳造装置であって、前記金型の湯口付近から金型の外部に連通する複数のベントホールを設け、金型内の溶湯が凝固したときに該凝固した溶湯とベントホールとの間に形成される隙間を通して外気が金型内に導入されるように構成したことを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。図1及び図2は本発明の低圧鋳造装置の1例を表す縦断面図であり、この低圧鋳造装置100は、上型1a,下型1bからなる金型1と、該金型を載置する金型台2と、溶解炉10を備えている。溶解炉10内には溶湯を収容保持する坩堝12が設けられ、該坩堝の開口部は溶解炉の蓋11によって覆蓋されている。なお、蓋11には、外部のガス供給装置から坩堝12内に加圧用の窒素ガス等の不活性ガス(又はエア)を導入するバルブ(図示を省略)付きの注入パイプ15が設けられている。
【0014】
坩堝12内にはストーク5が設けられている。ストーク5は、下端部が坩堝内の下部に位置し、上端部にはフランジ5aが設けられている。そして、このフランジ5aが、蓋11上に設置した複数の液圧シリンダ13によって上向きに押圧され、パッキン7を介して金型台2の下面に押し付けられている。このシリンダ13を収縮させることにより、金型台2からストーク5を分離させ、溶解炉10を横移動させることができる。このため、別の場所で合金を溶融・攪拌し、金型の直下部の鋳造位置に搬入して、上記シリンダで固定し、鋳造を行うことができるのである。
【0015】
一方、金型1は金型台2上に載置されているが、この金型には鋳造中に上向きの力が作用するので、金型の側部に設けたフレーム25をボルト26で金型台2に固定して、当該金型が持ち上がらないようにしている。金型台2には、上下方向の通孔が設けられ、この通孔にスリーブ3が嵌合した状態で取り付けられている。また、下型1bの底面部には凹部6が設けられ、この凹部にスリーブ3の上端部が嵌合している。スリーブ3の外径と凹部6の内径とはほぼ同一で、スリーブ3が隙間なく嵌合している。なお、スリーブ3の下面は前記金型台2の下面と同一平面となっている。
【0016】
この金型1の下型1bには、湯口1e付近に複数のベントホール40が設けられている。ベントホール40は、円柱状の部材に空気が流通できる上下方向の多数の細孔を穿孔した公知のもので、下型1bに設けた通孔41に嵌め込まれており、該通孔41は、金型台2に設けた上下方向の通孔42に連通している。このため、金型内部(キャビティ)と外部とが複数のベントホール40を通して連通している。
【0017】
この低圧鋳造装置100を用いて粒子分散アルミニウム合金の鋳造を行う場合は、溶湯Mを入れた坩堝12内に注入パイプ15から窒素ガス等の加圧された不活性ガスを導入する。このガスの圧力により、坩堝内の溶湯がストーク5を通って上昇し、スリーブ3と金型1の湯道1cを通って金型のキャビティ内に導入される。この時、金型内の空気は、金型の合わせ面1dを通って排気され、ストーク5内の空気は、金型の合わせ面及びストーク5と金型台2との隙間を通って排気される。なお、前記ベントホール40は、その上側に流入した溶湯によって閉塞されるため、このベントホールからは排気されない。溶湯の加圧が最高となり、溶湯が金型内に行き渡った状態で加圧用パイプ15のバルブを閉め、金型内の溶湯を凝固させる点は、従来技術と同様である。
【0018】
鋳造中に金型内の溶湯の凝固が進行すると、図2に示すように、凝固による収縮によって、製品である鋳造品Bと金型内面との間に隙間tが形成されるとともに、金型内が負圧になろうとする。しかしながら、この装置には、金型内部と外部を結ぶベントホール40が設けられているので、外部から空気が流入して、負圧になることが避けられる。このため、湯道付近で凝固体と縁の切れた溶湯が重力により即座に落下するので、該溶湯のストーク内での凝固付着が効果的に防止されるのである。
【0019】
金型内での凝固が終了すると、不活性ガスによる加圧を止め、図示しない排気バルブを開いて除圧した後、上型1aを持ち上げて鋳造品を取り出す。そして、金型を閉じ、再度鋳造を行う。なお、溶湯Mが少なくなったときや、攪拌の必要が生じたときは、シリンダ13を収縮させてストーク5を若干下降させることにより、溶解炉10と金型台2との連結を解除し、該溶解炉10を所定の溶解位置まで横移動させて、溶湯の補充や攪拌を行い、しかるのち再度金型1の直下部に設置して鋳造を行えばよい。
【0020】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明にかかる鋳造装置を使用すれば、金型内で溶湯の凝固が進行するときにも負圧とならないので、ストーク内の未凝固の溶湯が即座に落下する。このため、次回の鋳造に際して、ストーク内に溶湯の凝固物が付着せず、溶湯が円滑に上昇できるので、溶湯中に空気を巻き込むようなおそれがなくなり、ブローホールのない高品質の製品を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の低圧鋳造装置を表す断面図である。
【図2】その排気状態を表す拡大断面図である。
【図3】従来の低圧鋳造装置を表す断面図である。
【図4】その排気状態を表す拡大断面図である。
【符号の説明】
1 金型
2 金型台
3 スリーブ
5 ストーク
10 溶解炉
12 坩堝
11 蓋
13 油圧シリンダ
15 加圧ガスパイプ
40 ベントホール
100 低圧鋳造装置
Claims (2)
- 溶解炉中の溶湯を加圧し、ストークを通して金型の湯口に導入する低圧鋳造法に用いられる鋳造装置であって、前記金型の湯口付近から金型の外部に連通する複数のベントホールを設け、金型内の溶湯が凝固したときに該凝固した溶湯とベントホールとの間に形成される隙間を通して外気が金型内に導入されるように構成したことを特徴とする粒子分散アルミニウム合金材料の低圧鋳造装置。
- 前記ストークの上端部にフランジが設けられ、該フランジが溶解炉の蓋上に設置した複数の液圧シリンダでパッキンを介して金型台の下面に押し付けられるとともに、前記ベントホールが金型台に設けられた通孔を通して金型台の下側に連通している請求項1に記載の粒子分散アルミニウム合金材料の低圧鋳造装置。
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