JP4095311B2 - 弾性表面波フィルタ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、移動体通信機器等で利用される弾性表面波フィルタ装置に関し、特に、弾性表面波素子を構成する櫛歯状電極のパターンに関する。
【0002】
【従来の技術】
弾性表面波フィルタ装置は、圧電体上に設けられた薄膜金属からなるインターデジタル変換器:IDTにより電気信号と弾性表面波(SAW)との変換を行って信号を送受信するデバイスであり、弾性表面波フィルタ、弾性表面波共振子、遅延回路等に用いられる。この弾性表面波フィルタ装置は、薄型化・小型化が可能であるというメリットにより、携帯電話などの移動体通信の分野で広く用いられるようになっている。
【0003】
近年の移動体通信分野の進歩はめざましいものがあり、それに利用される弾性表面波フィルタ装置に求められる性能も、年々高いものが要求されている。
【0004】
弾性表面波フィルタ装置に要求される特性は、大きく分けると帯域内減衰量が小さいことと、帯域外減衰量が大きいことの二つが挙げられる。移動体通信機器に用いられるRF弾性表面波フィルタ装置には、縦モードの多重結合を用いた多重モード共振子フィルタすなわちLMMS(Longitudinal Multi Mode SAW)型や、共振子を直並列に配置したラダー型などが一般的である。
【0005】
その中でも、多重モード共振子フィルタは、平衡不平衡出力が容易であることから、近年この構造を用いた弾性表面波フィルタ装置が頻繁に利用されている。例えば、特開2001−308672号公報によれば、不平衡−平衡変換機能を有する弾性表面波フィルタ装置が開示されている。
【0006】
弾性表面波フィルタとしては、帯域内減衰量を小さくすることと帯域外減衰を大きくすることはトレードオフの関係にあり、帯域外減衰量を大きくすると、結果として帯域内減衰量を犠牲にしなくてはならない。したがって、フィルタ設計の際には、これらのことを踏まえて、希望のフィルタ特性を設計することになる。
【0007】
また、帯域外減衰量を小さくしてしまう原因は、他にもいくつか挙げることができる。その中の一つとして、電気的な結合がある。弾性表面波フィルタは、入力、出力、接地端子が音響的な結合のみで結びついていることになっているが、実際は、各端子間には電気的な結合が必ず存在する。一般に、この結合が大きければ大きいほど、弾性表面波フィルタの帯域外減衰量は小さくなる。そのため、通常は、この結合をできるかぎり小さくするように配線することで、全体の帯域外減衰量を大きくしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
通常の弾性表面波フィルタにおいては、入力端子に接続する電極指(以下、入力用電極指)及び出力端子に接続する電極指(以下、出力用電極指)は、周期的に配置される。そのため、入力用電極指と出力用電極指との間には、必ず1本の接地端子に接続する電極指(以下、接地用電極指)が配置される。ところが、この構造では、入力用電極指と出力用電極指との間に電気的な結合が発生し、結果として帯域外、特に高域側の減衰量が小さくなるといった問題がある。
【0009】
また、特開2001−308672号公報に記載の弾性表面波フィルタ装置によれば、入力用電極指と出力用電極指との間に2本の接地用電極指を配置した構造を開示しているが、これら電極指が不均一な間隔で配置されているため、帯域内減衰量を小さくする(あるいは帯域内の周波数特性を平坦にする)ことは困難である。
【0010】
つまり、従来技術では、帯域内減衰量を小さくしつつ(あるいは帯域内の周波数特性を平坦にしつつ)、帯域外(特に高域側)減衰量を大きくすることは困難であるといった問題が生ずる。
【0011】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、フィルタ特性を改善することが可能な弾性表面波フィルタ装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明の様態による弾性表面波フィルタ装置は、
圧電性基板と、前記圧電性基板上に形成された弾性表面波素子とを備え、
前記弾性表面波素子は、少なくとも、入力端子に接続された櫛歯状電極と接地端子に接続された櫛歯状電極とを組み合わせた入力側インターデジタル変換器と、出力端子に接続された櫛歯状電極と接地端子に接続された櫛歯状電極とを組み合わせた出力側インターデジタル変換器とを有し、
前記入力端子に接続された櫛歯状電極の入力用電極指、前記出力端子に接続された櫛歯状電極の出力用電極指、及び、前記接地端子に接続された櫛歯状電極の接地用電極指は、実質的に等間隔に配置され、
且つ、前記入力用電極指と前記出力用電極指との間の所定間隔に少なくとも2本の前記接地用電極指を配置したことを特徴とする。
【0013】
この弾性表面波フィルタ装置によれば、入力用電極指、出力用電極指、及び、接地用電極指が実質的に等間隔に配置されている。このため、帯域内減衰量を小さくする(あるいは帯域内の周波数特性を平坦にする)ことができる。また、この弾性表面波フィルタ装置によれば、入力用電極指と出力用電極指との間に少なくとも2本の接地用電極指が配置されている。このため、入力用電極指と出力用電極指との間に電気的な結合を小さくすることができる。結果として、帯域外全体、特に高域側の減衰量を大きくすることができる。したがって、フィルタ特性を大幅に改善することができ、所望のフィルタ特性を得ることが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態に係る弾性表面波フィルタ装置について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、この発明の一実施の形態に係る弾性表面波フィルタ装置100の構造を概略的に示す断面図である。また、図2は、この弾性表面波フィルタ装置100に適用されるデバイスチップ1の構造を概略的に示す平面図である。
【0016】
この弾性表面波フィルタ装置100は、デバイスチップ1と、樹脂またはセラミックスで構成された基板(弾性表面波フィルタ装置100のパッケージ)3と、を備えている。基板3の上面の所定位置には、配線パターン4が形成されている。この配線パターン4は、ビアホール31を介して基板3の下面におけるリードパターン41などに接続されている。また、デバイスチップ1上の所定位置には、所定の機能を有する機能部8が形成されている。弾性表面波フィルタ装置の場合で言えば、圧電性基板1上に形成されたインターデジタル変換器:IDTを有する弾性表面波素子が、所定の機能を有する機能部8に対応する。
【0017】
機能部8には、引き出し配線パターン81を介して複数のボンディングパッドが接続されている。なお、図1及び図2に示した例では、ボンディングパッドは4つ配置されている。これらの4つのボンディングパッドと、基板3上の引き出し配線パターン81の所定箇所(4箇所)とは、それぞれ、例えば金あるいは金合金を用いた導電性の金属バンプ2を介して対向配置される。このとき、デバイスチップ1の機能部8は、基板3の上面に対向し、且つ、この上面とほぼ平行に配置される。
【0018】
ここで、デバイスチップ1の機能部8と、基板3との対向面間には、中空部(空間部)7が設けられる。これは、弾性表面波フィルタ装置の場合で言えば、その機能上、弾性表面波を伝搬するという属性をもち、相互の対向面を密着できないことによるものである。
【0019】
この中空部7は、以下のようにして形成される。すなわち、基板3の一主面、すなわち配線パターン4を備えた面、または、デバイスチップ1の一主面、すなわち機能部8を備えた面には、機能部8を囲むように設けられた枠体72が形成されている。デバイスチップ1の一主面に枠体72を形成した場合、この枠体72を基板3の一主面に当接することにより、枠体72の内部に中空部7が形成される。なお、空間部7が形成される構成であれば枠体72を使用しなくても何ら構わない。
【0020】
このようなデバイスチップ1と基板3とは、金属バンプ2を介して接続される。すなわち、デバイスチップ1と基板3との間の金属バンプ2は、加圧され、加熱され、超音波印加されて部分的に溶融する(フリップチップボンディングあるいはフェイスダウンボンディング)。この加圧/加熱/超音波印加が終了すると、金属バンプ2の溶融した部分は、冷えて固化する。これにより、機能部8に接続された4つのボンディングパッドと、基板3上の配線パターン4の所定の4箇所とがそれぞれ4つの金属バンプ2を介して電気的且つ機械的に接続される。
【0021】
この後、図1に示すように、デバイスチップ1全体を、適度な粘性を有する封止樹脂(保護材)5で包覆する。そして、封止樹脂5の硬化処理を行う。この封止樹脂5は、エポキシ系樹脂などによって形成される。
【0022】
ところで、図1及び図2に示した機能部8は、以下のように構成されている。すなわち、機能部としての多重モード共振子フィルタとしての弾性表面波素子8は、図3に示すように、例えば四ほう酸リチウムあるいはタンタル酸リチウムで作られた圧電性基板1上に形成されている。
【0023】
図1及び図2においては、フリップチップボンディングあるいはフェイスダウンボンディングされ、樹脂により封止された弾性表面波フィルタ装置100について説明したが、本発明の機能部(弾性表面波素子)8は、何らこの弾性表面波フィルタ装置100の構成に限らず、金属キャップあるいはセラミックキャップなどで封着されて構成されるような他の構成の弾性表面波フィルタ装置にも適用できることは説明するまでもない。
【0024】
弾性表面波素子8は、一列に並んだIDT15〜17と、このIDT15〜17の並び方向の両端に設けられた反射器11、12と、で構成される。
【0025】
図3に示した例では、IDT15は、IDT17と同じ電極パターンを有している。IDT16は、IDT15と図中において上下反対の電極パターンを有している。なお、IDT15〜17及び反射器11〜12の電極パターンは、例えばアルミニウム合金あるいは銅合金により構成されている。
【0026】
IDT15及びIDT17に挟まれたIDT16の図中の上側櫛歯状電極16Aは、信号ポート20に接続され、その下側櫛歯状電極16Bは、電気回路的に接地される。IDT15の上側櫛歯状電極15Aは、接地され、その下側櫛歯状電極15Bは、信号ポート21−1に接続される。IDT17の上側櫛歯状電極17Aは、接地され、その下側櫛歯状電極17Bは、信号ポート21−2に接続される。
【0027】
ここでは、例えば信号ポート20は、入力端子として機能し、その場合、信号ポート21−1及び21−2は、出力端子として機能する。(逆に、信号ポート21−1及び21−2が入力端子として機能する場合は、信号ポート20が出力端子として機能する。)
各IDT15〜17及び反射器11〜12は、互いにほぼ平行に配置された複数の電極指、及び、複数の電極指を共通に接続するバスバーを備えている。例えば、反射器11は、複数の電極指11ELと、バスバー11BBとによって構成されている。同様に、反射器12は、複数の電極指12ELと、バスバー12BBとによって構成されている。この実施の形態では、反射器11及び12は、それぞれ例えば100本の電極指11EL及び12ELを備えている。
【0028】
IDT15の上側櫛歯状電極15Aは、複数の電極指15A−ELとバスバー15A−BBとによって構成されている。IDT15の下側櫛歯状電極15Bは、複数の電極指15B−ELとバスバー15B−BBとによって構成されている。この実施の形態では、上側櫛歯状電極15Aは、例えば12本の電極指15A−ELを備え、下側櫛歯状電極15Bは、例えば13本の電極指15B−ELを備えている。また、この実施の形態では、上側櫛歯状電極15Aの電極指15A−ELは、接地端子に接続された接地用電極指として機能し、下側櫛歯状電極15Bの電極指15B−ELは、出力端子21−1に接続された出力用電極指として機能する。
【0029】
IDT16の上側櫛歯状電極16Aは、複数の電極指16A−ELとバスバー16A−BBとによって構成されている。IDT16の下側櫛歯状電極16Bは、複数の電極指16B−ELとバスバー16B−BBとによって構成されている。この実施の形態では、上側櫛歯状電極16Aは、例えば16本の電極指16A−ELを備え、下側櫛歯状電極16Bは、例えば15本の電極指16B−ELを備えている。また、この実施の形態では、上側櫛歯状電極16Aの電極指16A−ELは、入力端子20に接続された入力用電極指として機能し、下側櫛歯状電極16Bの電極指16B−ELは、接地端子に接続された接地用電極指として機能する。
【0030】
IDT17の上側櫛歯状電極17Aは、複数の電極指17A−ELとバスバー17A−BBとによって構成されている。IDT17の下側櫛歯状電極17Bは、複数の電極指17B−ELとバスバー17B−BBとによって構成されている。この実施の形態では、上側櫛歯状電極17Aは、例えば12本の電極指17A−ELを備え、下側櫛歯状電極17Bは、例えば13本の電極指17B−ELを備えている。また、この実施の形態では、上側櫛歯状電極17Aの電極指17A−ELは、接地端子に接続された接地用電極指として機能し、下側櫛歯状電極17Bの電極指17B−ELは、出力端子21−2に接続された出力用電極指として機能する。
【0031】
入力用電極指16A−EL、出力用電極指15B−EL及び17B−EL、及び、接地用電極指15A−EL、16B−EL及び17A−ELは、実質的に等しい幅で、且つ、等しい長さに形成されている。すなわち、これらの電極指は、弾性表面波の波長をλとしたとき、例えばλ/4の幅を有している。この実施の形態では、各電極指は、約1.15μmの幅を有するとともに、約0.2mmの長さを有している。
【0032】
また、各IDT15〜17を構成する各電極指は、実質的に等間隔に配置されている。すなわち、各IDTを構成する上側櫛歯状電極の電極指と下側櫛歯状電極の電極指との間隔は、いずれも等しい。例えば、IDT15において、上側櫛歯状電極15Aの電極指15A−ELの中心と、下側櫛歯状電極15Bの電極指15B−ELの中心との間隔は、いずれもλ/2に設定されている。
【0033】
また、各IDT15〜17も、実質的に等間隔に配置されている。すなわち、IDT15‐IDT16間の間隔、及び、IDT16‐IDT17間の間隔は、いずれも等しい。例えば、IDT15‐IDT16間の間隔、すなわちIDT15の最もIDT16に近接した位置に配置された電極指15A−ELの中心と、IDT16の最もIDT15に近接した位置に配置された電極指16B−ELの中心との間隔は、λ/2に設定されている。同様に、IDT16‐IDT17間の間隔、すなわちIDT16の最もIDT17に近接した位置に配置された電極指16A−ELの中心と、IDT17の最もIDT16に近接した位置に配置された電極指17B−ELの中心との間隔も、λ/2に設定されている。
【0034】
このように、各電極指の幅及び長さを等しくするとともに、各電極指を実質的に等間隔に配置することにより、所定帯域内において減衰量を小さくでき(あるいは所定帯域内の周波数特性を平坦化でき)、フィルタ特性を改善することが可能となる。
【0035】
この実施の形態に係る弾性表面波フィルタ装置100では、入力用電極指と出力用電極指との間の所定間隔に少なくとも2本の接地用電極指が配置されている。図3に示した例では、IDT16の最もIDT15に近接した入力用電極指16A−ELと、IDT15の最もIDT16に近接した出力用電極指15B−ELとの間に、2本の接地用電極指15A−EL及び16B−ELが配置されている。また、IDT16の最もIDT17に近接した入力用電極指16A−ELと、IDT17の最もIDT16に近接した出力用電極指17B−ELとの間に、2本の接地用電極指17A−EL及び16B−ELが配置されている。
【0036】
この入力用電極指と出力用電極指との間の間隔は、これらの間に配置される接地用電極指の本数をnとし(nは2以上の整数)、弾性表面波の波長をλとしたとき、各電極指の間隔をλ/2に設定したことから、
(n+1)×λ/2
となる。図3に示した例では、接地用電極指の本数nは2本であることから、入力用電極指と出力用電極指との間隔は、1.5λとなる。
【0037】
このように、入力用電極指と出力用電極指との間に少なくとも2本の接地用電極指を配置したことにより、入力用電極指と出力用電極指との間に電気的な結合を小さくすることができる。結果として、帯域外全体、特に高域側で減衰量を大きくすることができ、フィルタ特性を改善することが可能となる。
【0038】
なお、図3に示した例では、入力用電極指と出力用電極指との間には、入力用電極指16A−ELに対向する下側櫛歯状電極16Bの電極指16B−ELと、出力用電極指15B−EL(または17B−EL)に対向する上側櫛歯状電極15A(または17A)の電極指15A−EL(または17A−EL)との2本の接地用電極指が配置されたが、種々変更可能である。
【0039】
例えば、図4に示すように、入力用電極指16A−ELと出力用電極指17B−ELとの間には、入力用電極指16A−ELに対向する下側櫛歯状電極16Bの電極指16B−ELを2本の接地用電極指として配置しても良い。
【0040】
また、図5に示すように、入力用電極指16A−ELと出力用電極指17B−ELとの間には、出力用電極指17B−ELに対向する上側櫛歯状電極17Aの電極指17A−ELを2本の接地用電極指として配置しても良い。
【0041】
次に、上述した構造を用いて試作した弾性表面波フィルタ装置の周波数特性について説明する。
【0042】
なお、ここでは、入出力50Ω終端の条件で、ヒューレットパッカード社製ネットワークアナライザを用いて周波数特性を測定した。また、比較例として、図6に示したように、入力端子20に接続された入力用電極指と出力端子21−1(または21−2)に接続された出力用電極指との間に接地端子に接続された1本の接地用電極指を配置した構造を用いて試作した弾性表面波フィルタ装置の周波数特性も同一条件で測定した。図6に示した構造も、各電極指の形状及び電極指間の間隔は、図3に示した構造と同様である。
【0043】
図8には、周波数特性の測定結果の一例を示している。実線(1)は、図3に示した構造の弾性表面波フィルタ装置の周波数特性であり、破線(2)は、図6に示した構造の弾性表面波フィルタ装置の周波数特性である。また、図9には、図8に示した測定結果の約881.5MHzを中心とした所定帯域付近を拡大した周波数特性の測定結果を示している。
【0044】
図3に示した構造では、入力用電極指と出力用電極指との間に2本の接地用電極指を配置したことにより、接地用電極指が1本のときに比べて入出力間の電気的な結合が小さくなる。その結果、図8及び図9に示したように、図3に示したような構造では、図6に示したような構造と比較して、帯域内の減衰量(または平坦性)をほぼ同等に維持しつつ、帯域外、特に高域側の減衰量を大きくすることができた。この測定結果では、図3に示した構造では、図6に示した構造と比較して、広帯域にわたって帯域外減衰量が約5dB大きくなっていることがわかる。
【0045】
また、同様にして、図7に示したように、入力端子20に接続された入力用電極指と出力端子21−1(または21−2)に接続された出力用電極指との間に接地端子に接続された3本の接地用電極指を配置した構造を用いて試作した弾性表面波フィルタ装置の周波数特性も同一条件で測定した。図7に示した構造も、各電極指の形状及び電極指間の間隔は、図3に示した構造と同様である。
【0046】
図9に破線(3)で示したように、帯域内の高周波数側で若干減衰量が大きくなるが、帯域外の高周波数成分の減衰量をさらに大きくすることができ、必要なフィルタ特性によっては入力用電極指と出力用電極指との間に2本以上の接地用電極指を配置することが有効であることがわかる。
【0047】
以上の結果から、帯域内減衰量を小さくしつつ帯域外減衰量を大きくするためには、入力用電極指の中心と出力用電極指の中心との間の所定間隔は、1.5μm以上であることが望ましく、1.5λ以下であることが望ましい。
【0048】
上述したように、この実施の形態によれば、入力用電極指、出力用電極指、及び、接地用電極指が実質的に等間隔に配置され、しかも、入力用電極指と出力用電極指との間に少なくとも2本の接地用電極指が配置されている。これにより、弾性表面波フィルタの帯域内減衰量を大きくすることなく(あるいは帯域内周波数特性の平坦性を損なうことなく)、帯域外減衰量、特に高域側の減衰量を大きくすることができ、フィルタ特性を大幅に向上することが可能となる。その結果、これまでの以上に高性能且つ良好なフィルタ特性の弾性表面波フィルタ装置を提供することが可能となる。
【0049】
なお、この発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々な変形・変更が可能である。また、各実施の形態は可能な限り適宜組み合わせて実施されてもよく、その場合組み合わせによる効果が得られる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、フィルタ特性を改善することが可能な弾性表面波フィルタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る弾性表面波フィルタ装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示した弾性表面波フィルタ装置に適用されるデバイスチップの構造を概略的に示す平面図である。
【図3】図3は、図1に示した弾性表面波フィルタ装置に適用される弾性表面波素子の構造を概略的に示す図である。
【図4】図4は、図1に示した弾性表面波フィルタ装置に適用可能な弾性表面波素子の他の構造を概略的に示す図である。
【図5】図5は、図1に示した弾性表面波フィルタ装置に適用可能な弾性表面波素子の他の構造を概略的に示す図である。
【図6】図6は、入力用電極指と出力用電極指との間に1本の接地用電極指を配置した弾性表面波素子の構造を概略的に示す図である。
【図7】図7は、入力用電極指と出力用電極指との間に3本の接地用電極指を配置した弾性表面波素子の構造を概略的に示す図である。
【図8】図8は、各種構造の弾性表面波フィルタ装置の周波数特性を測定した時の測定結果の一例を示す図である。
【図9】図9は、図8に示した測定結果の所定周波数を中心とした所定帯域付近を拡大した周波数特性の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
1…デバイスチップ(圧電性基板)
3…基板
8…機能部(弾性表面波素子)
15、16、17…IDT
15B−EL…出力用電極指
16A−EL…入力用電極指
17B−EL…出力用電極指
15A−EL…接地用電極指
16B−EL…接地用電極指
17A−EL…接地用電極指
20…入力端子
21−1、2…出力端子
100…弾性表面波フィルタ装置

Claims (3)

  1. 圧電性基板と、前記圧電性基板上に形成された弾性表面波素子とを備え、
    前記弾性表面波素子は、少なくとも、入力端子に接続された櫛歯状電極と接地端子に接続された櫛歯状電極とを組み合わせた入力側インターデジタル変換器と、出力端子に接続された櫛歯状電極と接地端子に接続された櫛歯状電極とを組み合わせた出力側インターデジタル変換器とを有し、
    前記入力端子に接続された櫛歯状電極の入力用電極指、前記出力端子に接続された櫛歯状電極の出力用電極指、及び、前記接地端子に接続された櫛歯状電極の接地用電極指は、前記入力用電極指の中心と前記入力用電極指と組み合わされた前記接地用電極指の中心との間隔、前記出力用電極指の中心と前記出力用電極指と組み合わされた前記接地用電極指の中心との間隔、及び、前記入力側インターデジタル変換器前記出力側インターデジタル変換器と近接した位置に配置された電極指の中心と前記出力側インターデジタル変換の前記入力側インターデジタル変換器と近接した位置に配置された電極指の中心との間隔が実質的に等間隔に配置され、
    且つ、前記入力用電極指と前記出力用電極指との間の所定間隔に少なくとも2本の前記接地用電極指を配置したことを特徴とする弾性表面波フィルタ装置。
  2. 前記入力用電極指の中心と前記出力用電極指の中心との間の所定間隔は、この間に配置される前記接地用電極指の本数をnとし(nは2以上の整数)、弾性表面波の波長をλとしたとき、
    (n+1)×λ/2
    であることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波フィルタ装置。
  3. 多重モード共振子フィルタであることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波フィルタ装置。
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