JP4094088B2 - 車両用油圧緩衝器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動四輪車又は自動二輪車に使用される車両用油圧緩衝器に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動四輪車或いは自動二輪車に使用される車両用油圧緩衝器では、シリンダ内に作動油が充填されるとともに、ピストンが摺動自在に配設され、このピストンに、作動油の流体抵抗により減衰力を発生する減衰機構が設置されている。ピストンには、ピストンロッドの一端が結合され、このピストンロッドの他端側がシリンダ外部へ延出される。このピストンロッドと上記シリンダとの間に懸架ばねが介装され、油圧緩衝器は車体側と車軸側に配設される。懸架ばねにより路面からの衝撃が吸収され、上記油圧緩衝器の減衰機構により車体の振動が制振される。
【0003】
上述のような車両油圧緩衝器には、減衰機構にて発生する流体抵抗に基づく減衰力を変更して、車両の操縦安定性と乗り心地性を共に向上させるようにした減衰力可変の油圧緩衝器がある。つまり、この減衰力可変の油圧緩衝器は、シリンダに対するピストンの相対速度が遅い微低速域で、図5(A)の破線aに示すように、流体抵抗に基づく減衰力を高めて、車両の操縦安定性を向上させている(第1従来技術)。
【0004】
一方、緩衝器には、シリンダ(ハウジング)内にロッドを軸方向に相互移動自在に挿入し、これらのシリンダとロッドとを摩擦接触させて摩擦力を発生し、この摩擦力により減衰力を発生するようにした摩擦緩衝器がある。
【0005】
このような摩擦緩衝器には、実開平3-84447 号公報に示すように、シリンダの軸線に直交する方向の巻回軸線を持つ電磁コイルと、電磁コイルへの通電でロッド側に押圧される磁石からなるプランジャと、を有するアクチュエータを上記シリンダに取り付け、プランジャに取り付けたパッドをロッドに押し付けて、減衰力を可変するようにしたものが開示されている(第2従来技術)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、第1従来技術では、シリンダに対するピストンの相対速度が微低速域で上述のように流体抵抗に基づく減衰力を高めると、図5(B)の破線aに示すように、シリンダに対するピストンの相対速度が中・高速域でも流体抵抗に基づく減衰力が大幅に上昇してしまい、悪路や段差乗り越し時等に車両の乗り心地性が著しく低下してしまう。
【0007】
また、第2従来技術では、電磁コイルの巻回軸線の方向がシリンダの軸線に直交する方向である関係から、アクチュエータがシリンダの外方へ張り出して、緩衝器が大型化する不具合がある。
【0008】
本発明の課題は、上述の事情を考慮してなされたものであり、油圧緩衝器を大型化せず、車両の操縦安定性及び乗り心地性を共に向上させることができる車両用油圧緩衝器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、シリンダ内に作動油が充填されるとともに、この作動油の流体抵抗により減衰力を発生可能な減衰機構を備えたピストンが上記シリンダ内に摺動自在に配設され、上記ピストンは、一端が車体に連結されるピストンロッドの他端部に同軸で連結されたロッドエンドの一端に結合され、上記シリンダと上記ピストンロッドとの相対移動に伴い両者間に摩擦力を発生可能とするフリクション発生装置が設置された車両用油圧緩衝器において、上記ロッドエンドは、軸方向中央部分に磁性体部と、軸方向両端部分に非磁性体部を有し、上記フリクション発生装置は、上記ロッドエンドに配設された電磁コイルと磁化吸着部材とを有してなり、上記電磁コイルは、少なくとも両端部に磁性体を備えたボビンにワイヤを上記シリンダの軸線に平行に、該電磁コイルの軸線を構成するように巻きつけた構造を持ち、通電により磁束を発生可能とするとともに、上記ロッドエンドの磁性体部に設置され、上記磁化吸着部材は、上記電磁コイルの両側に配置され、上記電磁コイルからの磁束により磁化されて上記シリンダ内周面に吸着され、このシリンダ内周面との間に摩擦力を発生可能とするとともに、上記磁化吸着部材が、上記ロッドエンドの非磁性体部に設置され、上記電磁コイルの上記ボビンは磁性体の部分に突起を有し、上記突起を含む該ボビンの軸方向断面において、上記突起が、上記磁化吸着部材に対して、径方向外側に配置されるようにしたものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記電磁コイル及び上記磁化吸着部材に形成される磁束通過面、シリンダの軸線に対し傾斜するテーパ面に形成されているようにしたものである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、上記フリクション発生装置の電磁コイルと磁化吸着部材との間に形成されるエアギャップは、上記磁化吸着部材を上記電磁コイルへ接近又は離反可能とするシムの介在により調整可能に構成されたものである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、上記フリクション発生装置の電磁コイルへの通電は、制御装置が、各種センサからの出力信号に基づき車両の動作状況に応じて、この制御装置により実施されるものである。
【0013】
請求項1に記載の発明には、次の作用がある。
シリンダに対するピストンの相対速度が微低速域にあるときに、フリクション発生装置の磁化吸着部材によりシリンダ内周面との間に摩擦力が発生可能とされるので、ピストンの微低速域で油圧緩衝器の減衰力が増大し、油圧緩衝器がハードに(硬く)なって、車両の操縦安定性を向上させることができる。
【0014】
また、フリクション発生装置の磁化吸着部材にて発生する摩擦力は、シリンダに対するピストンの相対速度に対し依存性が殆どないので、ピストンのシリンダに対する相対速度が中・高速域になっても増大しない。従って、この中・高速域で油圧緩衝器の減衰力(ピストンの減衰機構における作動油の流体抵抗による減衰力、及びフリクション発生装置の磁化吸着部材の摩擦力による減衰力)が過大とならないので、この減衰力により車両の振動を良好に減衰でき、車両の乗り心地性を向上させることができる。
【0015】
また、フリクション発生装置の磁化吸着部材がシリンダの内周面に吸着して摩擦力を発生するので、両者の接触面積を十分に確保でき、従って、摩擦力の可変幅を大きく設定することができる。
【0016】
また、フリクション発生装置の電磁コイルにて発生する磁束で磁化吸着部材を作動させるため、フリクション発生装置の応答性を良好にできる。
【0017】
更に、フリクション発生装置の電磁コイルが、ピストンロッド側の透磁率の高い磁性体部に設置されたので、この電磁コイルにて強い磁力を発生させることができる。
【0018】
また、フリクション発生装置の電磁コイルがピストンロッド側の磁性体部に設置され、磁化吸着部材がピストンロッド側の非磁性体部に設置されたので、電磁コイルにて発生した磁束は、一方の磁化吸着部材を経てシリンダへ流れ、他方の磁化吸着部材を経て電磁コイルへ戻る閉磁回路を構成し、電磁コイルからピストンロッド側へ漏れる磁束を極めて低減できる。この結果、磁化吸着部材を強く磁化させることができ、この磁化吸着部材のシリンダへの吸着力を増大でき、ひいては、磁化吸着部材とシリンダとの間に発生する摩擦力を増大させることができる。
【0019】
また、電磁コイルの巻回軸線がシリンダの軸線に平行であるため、電磁コイル及び磁化吸着部材をピストンロッド側の外周面にコンパクトに装着できる。このため、油圧緩衝器が大型化せず、コストも低減できる。
【0020】
また、フリクション発生装置が、ピストンロッド側の外周においてピストンとリバウンドストッパとの間に設置された場合には、フリクション発生装置が油圧緩衝器の伸縮運動に支障を与えることがないので、油圧緩衝器のシリンダを長大化させることなく、油圧緩衝器のストロークを適正に確保できる。
【0021】
請求項2に記載の発明には、次の作用がある。
電磁コイル及び磁化吸着部材の磁束通過面がシリンダの軸線に対し傾斜するテーパ面に形成されたので、これらの磁束通過面の面積を増大でき、従って電磁コイルからシリンダ側への漏れ磁束を減少させて、電磁コイルから磁化吸着部材へ流れる磁束の通過量を増大できる。この結果、磁化吸着部材のシリンダへの吸着力を増大できるので、これらの磁化吸着部材とシリンダとの間に発生する摩擦力を増大させることができる。
【0028】
請求項3に記載の発明には、次の作用がある。
電磁コイルと磁化吸着部材との間のエアギャップは、シムの厚さを変更することにより調整可能に構成されたので、このシムの厚さを変更させることにより、電磁コイルから磁化吸着部材へ流れる磁束の通過量を調整して、磁化吸着部材のシリンダへの吸着力を調整でき、この磁化吸着部材とシリンダとの間に発生する摩擦力を調整できる。
【0029】
請求項4に記載の発明には、次の作用がある。
制御装置が、各種センサからの出力信号に基づき、車両の動作状況に応じて、フリクション発生装置の電磁コイルへ通電して、磁化吸着部材とシリンダ内周面との間に摩擦力を発生させるので、車両の姿勢変化時に、上記摩擦力により油圧緩衝器の減衰力が増大してこの油圧緩衝器がハードに(硬く)なり、車両の操縦安定性が向上して、車両の姿勢を早期に安定させることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
(A) 第1の実施の形態
図1は、本発明に係る油圧緩衝器の第1の実施の形態を示す断面図である。図2は、図1の部分拡大断面図である。図3は、図2のIII 部拡大断面図である。図4(A)は、図2のA-A 線に沿う断面図であり、図4(B)は、図2のB-B 線に沿う断面図である。図5は、図1の油圧緩衝器の減衰力特性を示し、(A)がシリンダに対するピストンの相対速度が微低速域の場合を、(B)が同相対速度が中・高速域の場合をそれぞれ示す。
【0031】
図1に示すように、自動四輪車に使用される油圧緩衝器10は、懸架ばね11と一体化されてクッションユニットを構成し、このクッションユニットが車体側と車軸側に配置される。懸架ばね11が路面からの衝撃を吸収し、油圧緩衝器10がクッションユニットの振動を減衰して車体を制振させる。
【0032】
油圧緩衝器10は、インナチューブ12と一端閉塞構造のアウタチューブ13とによりシリンダ14が構成され、インナチューブ12内に作動油が充填されるとともに、ピストン15が摺動自在に配設される。このピストン15により、インナチューブ12内は、作動油を充填し且つ後述のピストンロッド18を収容するロッド側室16Bと、作動油を充填し且つピストンロッド18を収容しないピストン側室16Aとに区画される。
【0033】
また、インナチューブ12とアウタチューブ13とに囲まれて、作動油が充填され且つ気体が封入されたリザーバ室17が設けられる。このリザーバ室17は、油圧緩衝器10の圧縮行程又は伸長行程で、シリンダ14のインナチューブ12内へ侵入又は退出するピストンロッド18の体積変化分の作動油を補償する機能を有する。符号Hは、リザーバ室17内の作動油の油面を示す。
【0034】
ピストン15にはその中央位置に、ピストンロッド18の一端に螺着されたロッドエンド19が挿通される。このピストン15には、圧側流路20と伸側流路21とが交互に穿設される。更に、ピストン15の一側面に、圧側流路20を閉止可能とする圧側減衰バルブ22が配設され、ピストン15の他側面に、伸側流路21を閉止可能とする伸側減衰バルブ23が配設される。ピストン15、圧側減衰バルブ22及び伸側減衰バルブ23は、ナット24にてロッドエンド19に一体化される。
【0035】
一方、インナチューブ12の他端側開口部にロッドガイド25が嵌装される。ピストンロッド18は、このロッドガイド25に摺動自在に貫通され、他端側がシリンダ14外に突設される。ロッドガイド25には、ピストンロッド18の外周面に摺接して作動油の漏洩を防止するオイルシール26が配設される。また、このロッドガイド25を覆うようにして、シリンダ14のアウタチューブ13にシリンダキャップ27が装着される。
【0036】
インナチューブ12の一端側にはベースバルブ機構28が設置される。このベースバルブ機構28は、バルブ機構本体29に圧側減衰バルブ30及び伸側チェックバルブ31が装着されたものであり、バルブ機構本体29がインナチューブ12の一端開口部に嵌装される。更に、このバルブ機構本体29に、ピストン側室16Aとリザーバ室17とを連通する図示しない流路が形成される。上述の圧側減衰バルブ22、伸側減衰バルブ23及び圧側減衰バルブ30が油圧緩衝器10の減衰機構を構成する。
【0037】
従って、油圧緩衝器10の圧縮行程では、ピストン側室16A内の作動油がピストン15の圧側流路20を通り圧側減衰バルブ22を撓み変形してロッド側室16B内へ流入し、このときの流体抵抗により圧側減衰力を発生させる。更に、この圧縮行程で、ピストンロッド18のインナチューブ12内への侵入体積相当分の作動油が、ピストン側室16A内からベースバルブ機構28の圧側減衰バルブ30を撓み変形させ、このときの流体抵抗により圧側減衰力を発生させ、リザーバ室17内へ流入する。このように、圧側減衰バルブ22及び30により、油圧緩衝器10の圧縮行程において圧側減衰力が発生する。
【0038】
油圧緩衝器10の伸長行程では、ロッド側室16B内の作動油が、ピストン15の伸側流路21を通り伸側減衰バルブ23を撓み変形させ、このときの流体抵抗により伸側減衰力を発生させ、ピストン側室16A内へ流れる。また、この伸長行程で、ピストンロッド18のインナチューブ12内からの退出体積相当分の作動油がリザーバ室17からベースバルブ機構28の伸側チェックバルブ31を開弁させてピストン側室16A内へ流入し、このピストン側室16A内の体積を補償する。
【0039】
この油圧緩衝器10は、アウタチューブ13の閉塞端部に不図示の車軸ブラケットが固着され、この車軸ブラケットを介して車軸を支持する。また、ピストンロッド18の他端部が、後述のように車体(不図示)に支持される。
【0040】
つまり、ピストンロッド18の上端部には、ジョイントカラー32にて受座33及び34が位置決めされ、これらの受座33、34間にマウントラバー35A、35Bが配設され、このマウントラバー35A、35B間に車体取付ブラケット37が挟持された状態で、上記ピストンロッド18の上端部に取付ナット38が螺装され、ピストンロッド18の上端部は車体取付ブラケット37に弾性的に取付けられる。この車体取付ブラケット37が、車体取付ブラケット37に設置された取付ボルト39を用いて、車体の車体プレート(不図示)に取付けられて、油圧緩衝器10におけるピストンロッド18の上端部は、マウントラバー35A及び35B並びに車体取付ブラケット37を介し車体に弾性支持される。
【0041】
また、このピストンロッド18の他端側には、受座33をピストンロッド18に支持する受座ストッパ40と上記受座33との間に筒体41が挟持される。この筒体41は、シリンダ14のロッドガイド25配置側近傍まで延び、ピストンロッド18の他端側で受座ストッパ40に当接して装着されたバンパストッパラバー42を囲むようにして構成される。このバンパストッパラバー42は、油圧緩衝器10の最圧縮時に、シリンダ14の他端部に設置のバンパプレート43に当接して圧縮変形され、直径方向外方へ膨出して、油圧緩衝器10の最圧縮ストロークを規制するものである。上記筒体41は、このバンパストッパ42が圧縮されて外方へ膨出変形した時に、この膨出変形を規制可能として、油圧緩衝器10の最圧縮時のばね特性を大きく設定する。
【0042】
また、油圧緩衝器10のインナチューブ12内には、リバウンドストッパラバー44がピストンロッド18に装着され、このリバウンドストッパラバー44がリバウンドストッパ45によりピストンロッド18に支持される。油圧緩衝器10の最伸長時に、リバウンドストッパラバー44がロッドガイド25に当接して、油圧緩衝器10の最伸長ストロークが規制される。
【0043】
一方、前記懸架ばね11は、一端が、ロッド側スプリングシートを兼ねる車体取付ブラケット37にラバー46を介して支持され、他端がシリンダ14のアウタチューブ13外周に固着されたシリンダ側スプリングシート47に支持される。この懸架ばね11は取付状態で、初期ばね荷重が一定となるように保持される。
【0044】
さて、上記油圧緩衝器10には、図1及び図2に示すように、その内部にフリクション発生装置50が配置される。このフリクション発生装置50は、電磁コイル51及び磁化吸着部材52、53を有してなり、これらの電磁コイル51及び磁化吸着部材52、53がインナチューブ12内で、ピストン18に連結されたロッドエンド19の外周に設置される。電磁コイル51にて発生した磁束により磁化吸着部材52及び53が磁化され、これにより、磁化吸着部材52及び53が拡径してインナチューブ12の内周面12Aに吸着され、シリンダ12のインナチューブ12とピストンロッド18及びロッドエンド19との相対移動に伴い、インナチューブ12の内周面12Aと磁化吸着部材52及び53との間に摩擦力が発生可能に構成される。
【0045】
上記ロッドエンド19は、軸方向中央部分が鉄等の磁性体からなる磁性体部19Aであり、軸方向両端部分がステンレス鋼(SUS)等の非磁性体からなる非磁性体部19B、19Cであり、これらの磁性体部19Aと非磁性体部19B及び19Cとが、例えばフリクション溶接等の溶接により接合されて構成される。
【0046】
一方の非磁性体部19Bに、ピストンロッド18の一端部の雄ねじ部49に螺合するための雌ねじ部54が刻設されるとともに、段部55が形成される。また、他方の非磁性体部19Cに、ピストン15、圧側減衰バルブ22及び伸側減衰バルブ23等がナット24にて一体化されるとともに、雄ねじ部56が刻設される。非磁性体部19Bに磁化吸着部材52が、非磁性体部19Cに磁化吸着部材53がそれぞれ配置され、磁性体部19Aに電磁コイル51が配置される。つまり、磁化吸着部材52、電磁コイル51、磁化吸着部材53を順次ロッドエンド19に挿入し、磁化吸着部材52をロッドエンド19の非磁性体部19Bにおける段部55に当接させ、非磁性体部19Cの雄ねじ部56にナット57を螺動させて、電磁コイル51、磁化吸着部材52及び53がロッドエンド19に固定される。
【0047】
上記電磁コイル51は、全体が鉄製の磁性体からなるボビン58にマグネットワイヤ59が巻き付けられて構成され、このマグネットワイヤ59の巻回軸線がシリンダ14の軸線Oと平行になるよう設けられる。マグネットワイヤ59には、リード線60が接続される。このリード線60は、電磁コイル51のマグネットワイヤ59から、ロッドエンド19の非磁性体部19Bにおける通孔72及び中空部78、並びにピストンロッド18の中空部79内を経て、油圧緩衝器10の外部に設置された制御装置61に接続される。従って、電磁コイル51は、リード線60を介し制御装置61により通電が制御されて、磁束を発生可能に構成される。
【0048】
上記磁化吸着部材52及び53は、それぞれ、リング形状の支持板62に弾性体63の基端面を焼き付け、この弾性体63の先端面に摺動部材64を同様に焼き付けて、弾性体63及び摺動部材64が支持板62に対し片持ち状態で固着されたものである。これらの弾性体63及び摺動部材64は、図4(B)に示すように、支持板62の周方向に複数分割、例えば 4分割状態で配置されて、インナチューブ12の内周面12A方向に拡径可能に構成されるとともに、 4分割された弾性体63及び摺動部材64間の隙間が流路84として構成される。
【0049】
ここで、支持板62は、ステンレス鋼(SUS)等の非磁性体で構成され、弾性体63は、耐油性ラバー(NBR)等のゴムで構成され、摺動部材64は、鉄等の磁性体にて構成される。
【0050】
従って、電磁コイル51にて発生した磁束により磁化吸着部材52及び53の摺動部材64が磁化され、これらの摺動部材64は、弾性体63の弾性変形により拡径されてインナチューブ12の内周面12Aに吸着され、シリンダ14のインナチューブ12とピストンロッド18及びロッドエンド19との相対移動に伴い、インナチューブ12の内周面12Aとの間に摩擦力を発生可能とする。
【0051】
上記摺動部材64の外周面には、摩擦材65が薄くコーティング又は焼き付けられるのが好ましい。この摩擦材65は、摩擦係数が大きく且つ耐摩耗性に優れた材質であり、例えば、ガラス繊維及び摩耗調整材を樹脂やゴムで均質に混合し、加熱成形したモールド材が望ましい。上記摺動部材64は、摩擦材65をインナチューブ12の内周面12Aに接触させた状態で、インナチューブ12の内周面12Aに吸着可能に設けられる。
【0052】
また、前記電磁コイル51におけるボビン58の軸方向両端部は、図4(A)に示すように、ボビン58の周方向に複数分割、例えば 4分割された突起66を有する。この突起66は、前述の磁化吸着部材52及び53における摺動部材64に対応して設けられる。この電磁コイル51のボビン58の突起66と磁化吸着部材52及び53の摺動部材64との対向する面が、図3に示すように、それぞれ磁束通過面67、68として構成される。これらの磁束通過面67、68を通過して、電磁コイル58のボビン58から磁化吸着部材52、53の摺動部材64へ磁束が流れる。
【0053】
電磁コイル51におけるボビン58の磁束通過面67は、シリンダ14の軸線Oに対し傾斜するテーパ磁束通過面67Aと、シリンダ14の軸線Oに垂直な垂直磁束通過面67Bとが連設されたものである。また、磁化吸着部材52、53における摺動部材64の磁束通過面68は、シリンダ14の軸線Oに対しテーパ磁束通過面67Aと同一角度で傾斜するテーパ磁束通過面68Aと、シリンダ14の軸線Oに垂直な垂直磁束通過面68Bとが連設されたものである。テーパ磁束通過面67Aとテーパ磁束通過面68Aとが互いに対向して両者間にエアギャップ69A(隙間)を形成し、垂直磁束通過面67Bと垂直磁束通過面68Bとが互いに対向して両者間にエアギャップ(隙間)69Bが形成される。
【0054】
エアギャップ69A及び69Bが、電磁コイル51のボビン58における突起66の外周面とインナチューブ12の内周面12Aとの距離よりも小さいので、電磁コイル51にて発生した磁束は、その大部分が図3の実線矢印に示す如く、テーパ磁束通過面67Aからエアギャップ69Aを経てテーパ磁束通過面68Aへ流れ、テーパ磁束通過面67Bからエアギャップ69Bを経て垂直磁束通過面68Bへ流れて、図3の破線に示すようなボビン58からシリンダ12への漏れ磁束が少なくなる。特に、ボビン58のテーパ磁束通過面67A及び摺動部材64のテーパ磁束通過面68Aがテーパ面形状に形成されて、後述の第2の実施の形態における平行磁束通過面91A及び92A(図7)よりも磁束通過面積が増大していることからも、電磁コイル51のボビン58からインナチューブ12への磁束の漏れ量が低減されている。
【0055】
また、図2に示すように、磁化吸着部材52の内側でロッドエンド19の非磁性体部19Bの外周にカラー70が、磁化吸着部材53の内側で非磁性体部19Cの外周にカラー71がそれぞれ嵌装されている。これらのカラー70、71は、ステンレス鋼(SUS)等の非磁性体にて構成される。図3に示すように、カラー71の一端面は磁化吸着部材53の支持板62に当接し、他端面は、シム81を介して電磁コイル51のボビン58における磁化吸着部材53側の端面に当接する。また、図2に示すように、カラー70の一端面は、電磁コイル51のボビン58における磁化吸着部材52側端面に当接し、他端面はシム80を介して磁化吸着部材52の支持板62に当接する。
【0056】
従って、シム80の厚さを調整することにより、磁化吸着部材52が電磁コイル51のボビン58へ接近或いは離反して、前記ボビン58のテーパ磁束通過面67Aと磁化吸着部材52の摺動部材64におけるテーパ磁束通過面68Aとのエアギャップ69A、並びにボビン58の垂直磁束通過面67Bと磁化吸着部材52における摺動部材64の垂直磁束通過面68Bとのエアギャップ69Bが調整可能とされる。同様に、シム81の厚さを調整することにより、磁化吸着部材53が電磁コイル51のボビン58へ接近或いは離反して、ボビン58のテーパ磁束通過面67Aと磁化吸着部材53における摺動部材64のテーパ磁束通過面68Aとのエアギャップ69A、並びにボビン58の垂直磁束通過面67Bと磁化吸着部材53における摺動部材64の垂直磁束通過面68Bとのエアギャップ69Bが調整可能とされる。これらのエアギャップ69A、69Bの調整により、電磁コイル51のボビン58と磁化吸着部材52、53の摺動部材64との間を流れる磁束の通過量が調整されて、つまり、電磁コイルから揺動部材への磁束の通過し易さが調整されて、摺動部材64のインナチューブ12への吸着力が調整される。
【0057】
上述の電磁コイル51にて発生した磁束は、図2の実線矢印に示すように、例えばボビン58の磁化吸着部材53側端部から、テーパ磁束通過面67A及び垂直磁束通過面67Bを通り、磁化吸着部材53側のエアギャップ69A及び69Bを飛び越えて、磁化吸着部材53における摺動部材64のテーパ磁束通過面68A及び垂直磁束通過面68Bを通り、この磁化吸着部材53の摺動部材64に至る。この摺動部材64は上述の磁束により磁化されてインナチューブ12の内周面12Aに吸着されるので、この磁化吸着部材53の摺動部材64からの磁束はインナチューブ12に漏れなく流れ、このインナチューブ12から磁化吸着部材52の摺動部材64へ至る。この磁化吸着部材52の摺動部材64に至った磁束は、磁化吸着部材52の摺動部材64のテーパ磁束通過面68A及び垂直磁束通過面68Bを通り、磁化吸着部材52側のエアギャップ69A及び69Bを飛び越えて、電磁コイル51におけるボビン58の磁化吸着部材52側端部のテーパ磁束通過面67A及び垂直磁束通過面67Bを通りボビン58の磁化吸着部材52側端部へ至り電磁コイル51に戻る。このように、電磁コイル51にて発生した磁束は、電磁コイル51から磁化吸着部材53、インナチューブ12及び磁化吸着部材52を経て電磁コイル51へ戻る閉磁回路を流れ、電磁コイル51からピストンロッド18へ漏れる磁束が減少して、磁化吸着部材52及び53の摺動部材64が強く磁化可能とされる。
【0058】
尚、インナチューブ12内における作動油は、図2の破線矢印に示すように、磁化吸着部材52、53における分割された弾性体63及び摺動部材64間の流路84と、電磁コイル51のボビン58において同様に 4分割された突起66間の流路82と、電磁コイル51とインナチューブ12の内周面12Aとの間の流路83と、を流れることにより、フリクション発生装置50の存在に拘らずインナチューブ12内を流動する。
【0059】
ところで、前述のように電磁コイル51への通電を制御する制御装置61は、図1に示すように、車速センサ73、舵角センサ74、スロットルセンサ75、ブレーキセンサ76及び加速度センサ77の各種センサに接続される。この制御装置61は、CPU(中央処理演算装置)であり、各種センサ73〜77からの出力信号を入力して、車両の動作状況に応じて、フリクション発生装置50の電磁コイル51への通電を制御する。つまり、制御装置61は、車速センサ73及び舵角センサ74からの出力信号に基づき、車速が設定車速α以上であり且つ舵角及び舵角速度が所定値以上であるときに、車両にロール現象が発生すると判定して、リード線60を介し電磁コイル51へ通電する。
【0060】
また、制御部72は、車速センサ73及びスロットルセンサ75からの出力信号に基づき、車速が設定車速β、γ間にあり且つスロットル開度及びスロットル開速度が所定値以上であるときに、車両前方が上動するスクォート現象が発生すると判定して、リード線60を介し電磁コイル51へ通電する。
【0061】
また、制御部72は、車速センサ73、ブレーキセンサ76及び加速度センサ77からの出力信号に基づいて、車速が設定車速δ以上であり且つブレーキが作動したとき、或いは車速が設定車速δ以上であり且つ加速度が所定値以上となったとき、車両前方が下動するダイブ現象が発生すると判定して、リード線60を介し電磁コイル51へ通電する。
【0062】
更に、制御部72は、車速センサ73からの出力信号に基づき、車速が設定車速ε以上となったときに、高速走行時の、例えば車線変更時における車両姿勢を安定化させるべく、リード線60を介し電磁コイル51へ通電する。
【0063】
また、制御部72は、車速センサ73及び加速度センサ77からの出力信号に基づき、車速が設定車速ζ以上であり且つ加速度が所定値以上となったときに、悪路でのあおり現象が車両に発生すると判定して、リード線60を介し電磁コイル51へ通電する。
【0064】
上述のように、制御装置61が車両の姿勢変化を判定して電磁コイル51へ通電すると、この電磁コイル51が磁束を発生して磁化吸着部材52及び53の摺動部材64を磁化させ、この摺動部材64が拡径して、摩擦材65を介しインナチューブ12の内周面12Aに吸着する。これにより、インナチューブ12と磁化吸着部材52及び53の相対移動に際し、インナチューブ12の内周面12Aと磁化吸着部材52及び53の摺動部材64の摩擦材65との間に摩擦力が発生する。
【0065】
この摩擦力は、図5(A)の実線b及びcに示すように、油圧緩衝器10におけるピストン15のシリンダ14に対する相対速度が微低速域(0.01〜0.03m/s )から発生し、このため、ピストン15の上記微低速域で油圧緩衝器10の減衰力が増大し、油圧緩衝器10が硬く(ハードに)なって、車両の操縦安定性が向上し、車両の姿勢を早期に安定化できる。
【0066】
また、上述の摩擦材62とインナチューブ12の内周面12Aとの間に発生する摩擦力は、ピストン15のシリンダ14に対する相対速度が中・高速域になっても増大しない(つまり速度依存性がない)ので、図5(A)及び(B)の実線b及びcに示すように、ピストン15の上記中・高速域で減衰力(ピストン15の減衰機構22、23、30における作動油の流体抵抗による減衰力、及びフリクション発生装置50の磁化吸着部材52、53の摩擦力による減衰力)が過大とならない。このため、この減衰力により、悪路走行時又は段差乗り越し時等の車両姿勢の振動を良好に制振でき、車両の乗り心地性を向上させることができる。
【0067】
また、制御装置61からフリクション発生装置50の電磁コイル51へ通電がなされないときには、磁化吸着部材52及び53における摺動部材64の摩擦材65とインナチューブ12の内周面12Aとの間に摩擦力が発生せず、油圧緩衝器10は、圧側減衰バルブ22、伸側減衰バルブ23及び圧側減衰バルブ30によって図5(A)及び(B)の実線d、eに示す流体抵抗のみによる減衰力を発生し、車両を制振させる。
【0068】
従って、上記実施の形態によれば、次の(1) 〜(12)の効果を奏する。
(1) 油圧緩衝器10のシリンダ14に対するピストン15の相対速度が微低速域にあるときに、フリクション発生装置50の磁化吸着部材52及び53における摺動部材64の摩擦材65によりインナチューブ12の内周面12Aとの間に摩擦力を発生可能とするので、ピストン15の微低速域で油圧緩衝器10の減衰力が増大し、油圧緩衝器10が硬く(ハードに)なって、車両安定性を向上させることができる。
【0069】
(2) フリクション発生装置50の磁化吸着部材52及び53にてインナチューブ12の内周面12Aとの間に発生する摩擦力は、シリンダ14に対するピストン15の相対速度に対し依存性が殆どないので、このピストン15のシリンダ14に対する相対速度が中・高速域になっても摩擦力が増大しない。従って、この中・高速域で油圧緩衝器10の減衰力(ピストン15の減衰機構22、23及び30における作動油の流体抵抗による減衰力、及び磁化吸着部材52及び53の摩擦力による減衰力)が過大とならないので、この減衰力により車両の振動を良好に減衰でき、車両の乗り心地性を向上させることができる。
【0070】
(3) フリクション発生装置50の磁化吸着部材52及び53における摺動部材64の摩擦材65がインナチューブ12の内周面12Aに接触して摩擦力を発生するので、摩擦材65、インナチューブ12の接触面積を十分に確保でき、従って摩擦力の可変幅を大きく設定できる。
【0071】
(4) フリクション発生装置50の電磁コイル51にて発生する磁束で磁化吸着部材52及び53を作動させるため、フリクション発生装置50の応答性を良好にできる。
【0072】
(5) フリクション発生装置50の電磁コイル51が、ロッドエンド19の透磁率の高い磁性体部19Aに設置されたので、この電磁コイル51にて強い磁力を発生させることができる。
【0073】
(6) フリクション発生装置50の電磁コイル51がロッドエンド19の磁性体部19Aに設置され、磁化吸着部材52、53がロッドエンド19の非磁性体部19B、19Cにそれぞれ設置されたので、電磁コイル51にて発生した磁束は、一方の磁化吸着部材53の摺動部材64を経てシリンダ14のインナチューブ12へ流れ、他方の磁化吸着部材52の摺動部材64を経て電磁コイル51へ戻る閉磁回路を構成し、電磁コイル51からロッドエンド19へ漏れる磁束を極めて低減できる。この結果、磁化吸着部材52、53の摺動部材64を強く磁化させることができ、この磁化吸着部材52、53の摺動部材64におけるインナチューブ12の内周面12Aへの吸着力を増大でき、ひいては、磁化吸着部材52、53の摺動部材64とインナチューブ12の内周面12Aとの間に発生する摩擦力を増大させることができる。
【0074】
(7) 電磁コイル51の巻回軸線がシリンダ14の軸線Oに平行であるため、電磁コイル51及び磁化吸着部材52、53をロッドエンド19の外周面にコンパクトに装着できる。このため、油圧緩衝器10が大型化せず、コストも低減できる。
【0075】
(8) 電磁コイル51のテーパ磁束通過面67Aと磁化吸着部材52、53のテーパ磁束通過面68Aとの間のエアギャップ69A、並びに電磁コイル51の垂直磁束通過面67Bと磁化吸着部材52、53の垂直磁束通過面68Bとの間のエアギャップ69Bは、それぞれシム80、81の厚さを変更することにより調整可能に構成されたので、このシム80、81の厚さを変更させることにより、電磁コイル51から磁化吸着部材52、53の摺動部材64へ流れる磁束の通過量を調整して、磁化吸着部材52、53の摺動部材64のインナチューブ12への吸着力を調整でき、この摺動部材64の摩擦材65とインナチューブ12の内周面12Aとの間に発生する摩擦力を調整できる。
【0076】
(9) 電磁コイル51のテーパ磁束通過面67Aと磁化吸着部材52、53のテーパ磁束通過面68Aがシリンダ14の軸線Oに対し傾斜するテーパ面に形成されたので、これらのテーパ磁束通過面67A及び68Aの面積を増大でき、従って、電磁コイル51からインナチューブ12側への漏れ磁束を減少させて、電磁コイル51から磁化吸着部材52、53の摺動部材64へ流れる磁束の通過量を増大できる。この結果、磁化吸着部材52、53の摺動部材64のシリンダ12への吸着力を増大できるので、これらの磁化吸着部材52、53の摺動部材64の摩擦材65とインナチューブ12の内周面12Aとの間に発生する摩擦力を増大させることができる。
【0077】
(10)制御装置61が、各種センサ73〜77からの出力信号に基づき、車両の動作状況に応じて、フリクション発生装置50の電磁コイル51へ通電して、磁化吸着部材52、53における摺動部材64の摩擦材65とシリンダ14におけるインナチューブ12の内周面12Aとの間に摩擦力を発生させるので、車両の姿勢変化時に、上記摩擦力により油圧緩衝器10の減衰力が増大してこの油圧緩衝器10がハードに(硬く)なり、車両の操縦安定性が向上して、車両の姿勢を早期に安定させることができる。
【0078】
(11)油圧緩衝器10内における磁化吸着部材52及び53の摺動部材64の外周に摩擦材65が配設され、この摩擦材65が対摩耗性に優れたものであることから、フリクション発生装置50の耐久性を向上させることができる。
【0079】
(12)フリクション発生装置50が、ロッドエンド19の外周においてピストン15とリバウンドストッパ45との間に設置されたので、フリクション発生装置50が油圧緩衝器10の伸縮運動に支障を与えることがないので、油圧緩衝器のシリンダ14を長大化させることなく、油圧緩衝器10のストロークを適正に確保できる。
【0080】
(B) 第2の実施の形態
図6は、本発明に係る車両用油圧緩衝器の第2の実施の形態を示す部分拡大断面図である。図7は、図6のVII 部拡大断面図である。この第2の実施の形態において、前記第1の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0081】
この実施の形態の油圧緩衝器90では、電磁コイル51のボビン58における磁束通過面91と、磁化吸着部材52、53の摺動部材64における磁束通過面92との形状が異なる。つまり、図7に示すように、磁束通過面91は、シリンダ14の軸線Oに平行な平行磁束通過面91Aと、シリンダ14の軸線Oに垂直な垂直磁束通過面91Bとが連設されたものである。また、磁化吸着部材52、53の摺動部材64における磁束通過面92は、シリンダ14の軸線Oに平行な平行磁束通過面92Aと、シリンダ14の軸線Oに垂直な垂直磁束通過面92Bとが連設されたものである。ボビン58の平行磁束通過面91Aと摺動部材64の平行磁束通過面92Aとが互いに対向し、両者間にエアギャップ(隙間)93Aが形成される。また、ボビン58の垂直磁束通過面91Bと摺動部材64の垂直磁束通過面92Bとが互いに対向し、両者間にエアギャップ(隙間)93Bが形成される。
【0082】
電磁コイル51にて発生した磁束は、例えばボビン58の磁化吸着部材53側端部の平行磁束通過面91A及び垂直磁束通過面91Bを通り、エアギャップ93A及び93Bを飛び越えて、磁化吸着部材53の摺動部材64における平行磁束通過面92A及び垂直磁束通過面92Bを通りこの摺動部材64へ流れる。この磁化吸着部材53の摺動部材64の磁束はインナチューブ12へ漏れなく流れて、このインナチューブ12から磁化吸着部材52の摺動部材64へ至り、この磁化吸着部材52の摺動部材64における平行磁束通過面92A及び垂直磁束通過面92Bを通過し、磁化吸着部材52側のエアギャップ93A及び93Bを飛び越えて、電磁コイル51におけるボビン58の磁化吸着部材52側の端部の平行磁束通過面91A及び垂直磁束通過面91Bを通過して、ボビン58の磁化吸着部材52側端部に至り、電磁コイル51に戻る。このように、この実施の形態の油圧緩衝器90でも、電磁コイル51にて発生した磁束は、磁化吸着部材53の摺動部材64、シリンダ12及び磁化吸着部材52の摺動部材64を通る閉磁回路を構成する。
【0083】
この油圧緩衝器90では、電磁コイル51のボビン58における平行磁束通過面91Aと磁化吸着部材52及び53の摺動部材64における平行磁束通過面92Aとがシリンダ14の軸線Oに平行であるため、これらを通過する磁束が、前記油圧緩衝器10の電磁コイル51のボビン58におけるテーパ磁束通過面67A及び磁化吸着部材52、53の摺動部材64におけるテーパ磁束通過面68Aの場合に比べ少ない点と、シム80及び81の厚さを調整することにより、ボビン58の垂直磁束通過面91Bと磁化吸着部材52、53の垂直磁束通過面92Bとのエアギャップ93Bのみが調整される点とが、前記油圧緩衝器10と異なる。従って、この実施の形態の油圧緩衝器90においても、前記油圧緩衝器10の(1) 〜(8) 及び(10)〜(12)の効果を奏する。
【0084】
尚、上記両実施の形態の油圧緩衝器10、90においては、制御装置61は電磁コイル51へ一定値の電流を供給するものを述べたが、制御装置61が各種センサ73〜77からの出力信号値の大小に応じて供給電流値を変更させ、電磁コイル51にて発生する磁束を変化させて、磁化吸着部材52及び53の摺動部材64の磁化の程度を変化させ、この摺動部材64の摩擦材65とインナチューブ12の内周面12Aとの間に発生する摩擦力の大きさを制御してもよい。例えば、制御装置61は、車速センサ73及び舵角センサ74からの出力信号に基づき、車速が設定車速α以上であるとき、舵角及び舵角速度の大きさに応じて電磁コイル51への供給電流値を変化させ、磁化吸着部材52及び53の摺動部材64における摩擦材65とインナチューブ12の内周面12Aとの間に発生する摩擦力を制御してもよい。
【0085】
また、上記実施の形態の油圧緩衝器10、90では、電磁コイル51のボビン58の全体が磁性体にて構成されるものを述べたが、図3の一点鎖線に示すように、ボビン58の両端部を除く部分でマグネットコイル59が巻き付けられる部分を樹脂等の非磁性体94にて構成し、ボビン58の両端部のみを鉄等の磁性体95で構成して、電磁コイル51の重量及びコストを低減してもよい。
【0087】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る車両用油圧緩衝器によれば、油圧緩衝器を大型化せず、車両の操縦安定性及び乗り心地性を共に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る油圧緩衝器の第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】 図2は、図1の部分拡大断面図である。
【図3】 図3は、図2のIII部拡大断面図である。
【図4】 図4(A)は、図2のA-A線に沿う断面図であり、図4(B)は、図2のB-B線に沿う断面図である。
【図5】 図5は、図1の油圧緩衝器の減衰力特性を示し、(A)がシリンダに対するピストンの相対速度が微低速域の場合を、(B)が同相対速度が中・高速域の場合をそれぞれ示す。
【図6】 図6は、本発明に係る車両用油圧緩衝器の第2の実施の形態を示す部分拡大断面図である。
【図7】 図7は、図6のVII部拡大断面図である。
【符号の説明】
10 油圧緩衝器
12 インナチューブ
14 シリンダ
15 ピストン
18 ピストンロッド
19 ロッドエンド
19A ロッドエンドの磁性体部
19B、19C ロッドエンドの非磁性体部
22 圧側減衰バルブ
23 伸側減衰バルブ
30 圧側減衰バルブ
50 フリクション発生装置
51 電磁コイル
52、53 磁化吸着部材
58 ボビン
59 マグネットワイヤ
61 制御装置
64 摺動部材
66 突起
67 電磁コイルの磁束通過面
67A テーパ磁束通過面
68 磁化吸着部材の磁束通過面
68A テーパ磁束通過面
69A エアギャップ
73 車速センサ
74 舵角センサ
75 スロットルセンサ
76 ブレーキセンサ
77 加速度センサ
80、81 シム
O シリンダの軸線

Claims (4)

  1. シリンダ内に作動油が充填されるとともに、この作動油の流体抵抗により減衰力を発生可能な減衰機構を備えたピストンが上記シリンダ内に摺動自在に配設され、
    上記ピストンは、一端が車体に連結されるピストンロッドの他端部に同軸で連結されたロッドエンドの一端に結合され、
    上記シリンダと上記ピストンロッドとの相対移動に伴い両者間に摩擦力を発生可能とするフリクション発生装置が設置された車両用油圧緩衝器において、
    上記ロッドエンドは、軸方向中央部分に磁性体部と、軸方向両端部分に非磁性体部を有し、
    上記フリクション発生装置は、上記ロッドエンドに配設された電磁コイルと磁化吸着部材とを有してなり、
    上記電磁コイルは、少なくとも両端部に磁性体を備えたボビンにワイヤを上記シリンダの軸線に平行に、該電磁コイルの軸線を構成するように巻きつけた構造を持ち、通電により磁束を発生可能とするとともに、上記ロッドエンドの磁性体部に設置され、
    上記磁化吸着部材は、上記電磁コイルの両側に配置され、上記電磁コイルからの磁束により磁化されて上記シリンダ内周面に吸着され、このシリンダ内周面との間に摩擦力を発生可能とするとともに、上記磁化吸着部材が、上記ロッドエンドの非磁性体部に設置され、
    上記電磁コイルの上記ボビンは磁性体の部分に突起を有し、上記突起を含む該ボビンの軸方向断面において、上記突起が、上記磁化吸着部材に対して、径方向外側に配置されることを特徴とする車両用油圧緩衝器。
  2. 上記電磁コイル及び上記磁化吸着部材に形成される磁束通過面は、シリンダの軸線に対し傾斜するテーパ面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用油圧緩衝器。
  3. 上記フリクション発生装置の電磁コイルと磁化吸着部材との間に形成されるエアギャップは、上記磁化吸着部材を上記電磁コイルへ接近又は離反可能とするシムの介在により調整可能に構成された請求項1又は2に記載の車両用油圧緩衝器。
  4. 上記フリクション発生装置の電磁コイルへの通電は、制御装置が、各種センサからの出力信号に基づき車両の動作状況に応じて、この制御装置により実施される請求項1〜3のいずれかに記載の車両用油圧緩衝器。
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