JP4093374B2 - 機能改変フェニルアラニン脱水素酵素を用いた生体試料中のl−メチオニンの分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、L-メチオニンに対して基質特異性をもつように改変されたフェニルアラニン脱水素酵素(EC 1.4.1.20)を用いて、生体試料中に含まれるL-メチオニンを選択的に分析する方法に関する。
先天性代謝異常症の早期発見を目的とする新生児マス・スクリーニングの世界的な普及は、フェニルケトン尿症(Phenylketonuria; PKU)の治療法の発見と、乾燥ろ紙血液中のL-フェニルアラニン(L-Phe)の半定量法がGuthrieら(Pediatrics, Vol. 32, p. 338-343 (1963)、非特許文献1)によって開発されたことに始まる。先天性代謝異常症は現在までに約500種類もの症例が報告されており、中でも特に治療法が確立され適切な治療が行われることによって正常な生育が期待される疾患6種について全国的に新生児に対してマス・スクリーニングが行われている。
フェニルケトン尿症のスクリーニングについては、酵素法(Screening, Vol. 1, p. 63 (1992)、非特許文献2、医学と薬学、Vol. 31, p. 1237 (1994)、非特許文献3)あるいはマイクロプレート蛍光法(Clinical Chemistry, Vol. 35, p. 1962 (1989)、非特許文献4)と呼ばれる酵素反応とそれに続く蛍光反応をマイクロプレートで行い、蛍光強度から被検試料中のL-フェニルアラニンを定量するキットが開発された(医学と薬学、Vol. 37, p. 1211 (1997)、非特許文献5)。また、メープルシロップ尿症のスクリーニングについても、前記フェニルケトン尿症のスクリーニング方法と同様にL-ロイシン特異的脱水素酵素を用いたマイクロプレート蛍光法が開発された。
一方、ホモシスチン尿症のスクリーニング方法については、メチオニンγ-リアーゼを用いるホモシスチン尿症のマス・スクリーニング法の開発(平成5年度厚生省心身障害研究「マス・スクリーニングシステムの評価方法に関する研究」pp. 237-240 (1993)、非特許文献6)が報告されている。本法は、L-メチオニンγ-リアーゼの酵素反応によってL-メチオニンから遊離されるアンモニア(NH3)を、o-フタルアルデヒド(OPA)と2-メルカプトエタノール(2ME)の中性域での特異蛍光を利用して測定する方法である。
これらのマイクロプレート蛍光定量法は、検体処理能力の高さに加え、従来法では困難とされていた検査結果の客観的判定である定量化や記録化が容易にできる利点を有している。さらに、検体の前処理を含めて3時間程度で検査結果を得ることが可能であり、迅速性や利便性、さらに作業効率などの点でも従来法に比べて大幅に改善されている。
Pediatrics, vol. 32, p. 338 (1963) Screening, vol. 1, p. 63 (1992) 医学と薬学、vol. 31, p. 1237 (1994) Clinical Chemistry, vol. 35, p. 1962 (1989) 医学と薬学、vol. 37, p. 1211 (1997) 平成5年度厚生省心身障害研究「マス・スクリーニングシステムの評価方法に関する研究」pp. 237-240 (1993)
ホモシスチン尿症以外の重要先天性代謝異常症疾患(フェニルケトン尿症、ガラクトース血症およびメープルシロップ尿症等)のマイクロプレートを用いた酵素蛍光法による新生児マス・スクリーニングでは、各測定項目に特異的な脱水素酵素を用い、測定の手順、試薬組成および検出蛍光波長等において共通しており、多検体同時測定が可能なシステムとなっている。
一方、前記ホモシスチン尿症のスクリーニング法、すなわちL-メチオニン γ-リアーゼを用いたアンモニアの蛍光定量による間接的血中メチオニンの定量法では、測定手順、試薬組成および検出蛍光波長等において他の先天性代謝異常症疾患の測定方法とは大きく異なっている。また、この方法では、測定従事者や測定実施環境由来のアンモニアとも非酵素的に反応し、蛍光色素を発色することも指摘されており、分析操作には細心の注意を払う必要があった。この事実は、新生児マス・スクリーニングにおいて新生児の擬陽性判定リスクを伴い、新生児およびその両親に与える精神的および身体的負担が懸念されていた。
いずれにしても、診断項目毎に検体を分別しなければならないことから、スクリーニングを行う際の作業効率を改善する必要性があった。
このような背景から、本発明者らは、ホモシスチン尿症以外の重要先天性代謝異常症疾患と同様の測定手順、試薬組成および検出蛍光波長等において、血液試料中のL-メチオニン濃度を酵素蛍光法により定量できるようにして、スクリーニング作業効率の大幅な改善することを目的として、L-メチオニン特異的な脱水素酵素を進化分子工学的手法により作出することを試みた。その結果、フェニルアラニン脱水素酵素(EC 1.4.1.20)のメチオニンに対する基質特異性を改善するように、少なくとも1つのアミノ酸が修飾された改変型酵素を取得し、上記目的を達成すべく検討した。その結果、L−フェニルアラニンに対する基質特異性が低下し、L-メチオニンに対する基質特異性が向上した改変型酵素が取得され、特許出願した(特願2006-57547号)。
しかし、得られたL−メチオニンに対する基質特異性が向上した改変型酵素は、L−メチオニン以外の基質、例えば、L−ロイシン、L−イソロイシン、およびL−バリンに対する基質特異性は依然として有しており、L−メチオニンのマイクロプレート蛍光定量法に利用するには、バックグランドが依然として高い場合があり、実用化するには、さらなる改良が必要であった。
そこで、本発明では、上記のようなL-メチオニン特異的なアミノ酸脱水素酵素を用いて、血液試料中のL-メチオニン濃度を定量できる方法であって、血液試料に存在するL-メチオニン以外のアミノ酸による測定誤差を抑制できる方法を提供することを解決すべき課題とする。
特に本発明では、L-メチオニン特異的なアミノ酸脱水素酵素として、L-メチオニンに対して基質特異性を有する改変型フェニルアラニン脱水素酵素を用いた、被検試料に含まれるL-メチオニンの高感度かつ簡便な分析方法を提供することを解決すべき課題とする。
さらに本発明は、血液試料に存在するL-メチオニン以外のアミノ酸による測定誤差を抑制できる方法を提供することも解決すべき課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、被検試料(血液試料)を予め分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを用いた前処理に付し、被検試料(血液試料)に含まれるL−ロイシン、L−イソロイシン、およびL−バリンのような分岐鎖アミノ酸の濃度を低減しておくことで、上記課題を解決できることを見いだして、本発明を完成させた。
上記課題を解決して、本発明の目的を達成するための本発明は以下のとおりである。
[1] 被検試料を、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによる処理に供する工程、
処理後の被検試料を、L-メチオニンに対する基質特異性が向上した改変型フェニルアラニン脱水素酵素と、レサズリン、ジアホラーゼ、および酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)または酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)を含む反応液とともにインキュベーションする工程、及び
インキュベーション後の反応液の発色を検出する工程
を含む、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析方法。
[2]発色は、レサズリン由来の蛍光色素の発色である[1]に記載の方法。
[3] 被検試料を、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによる処理に供する工程、
処理後の被検試料を、L-メチオニンに対する基質特異性が向上した改変型フェニルアラニン脱水素酵素と、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)または酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)と混合する工程、及び
生成するNADHまたはNADPHの吸収を測定する工程
を含む、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析方法。
[4] 被検試料を、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによる処理に供する工程、
処理後の被検試料を、L-メチオニンに対する基質特異性が向上した改変型フェニルアラニン脱水素酵素と、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)または酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、電子キャリヤー及び還元系発色試薬を含む反応液とともにインキュベーションする工程、
インキュベーション後の反応液のホルマザン色素発色を検出する工程
を含む、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析方法。
[5] 被検試料を、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによる処理に供する工程、
処理後の被検試料を、L-メチオニンに対する基質特異性が向上した改変型フェニルアラニン脱水素酵素と、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)または酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、電子キャリヤー、金属イオン及びキレート指示薬を含む反応液とともにインキュベーションする工程、
インキュベーション後の反応液の色素発色を検出する工程
を含む、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析方法。
[6] 分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによる処理は、被検試料を、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.42)、2-オキソグルタル酸及びピリドキサールリン酸を含む反応液とともにインキュベーションすることで行なう、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.42)は、分岐鎖アミノ酸に対して基質特異性をもつ古細菌、微生物または真核生物由来の酵素である[6]に記載の方法。
[8]分岐鎖アミノ酸は、L-ロイシン、L-イソロイシンおよびL-バリンから成る群から選ばれる少なくとも1種である[7]に記載の方法。
[]被検試料中のL-メチオニンを定量する方法である[1]〜[]に記載のいずれかに記載の方法。
[10] 分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによる処理の工程および発色工程はマイクロプレートのウェル中で行う[1]〜[]に記載のいずれかに記載の方法。
[11]被検試料が血液試料である[1]〜[10]に記載のいずれかに記載の方法。
[12]L-メチオニンを分析するための被検試料に含まれる可能性がある分岐鎖アミノ酸の少なくとも一部を分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによりオキソ酸に変換することを含む、L-メチオニン分析の阻害因子となる分岐鎖アミノ酸の被検試料中の量を低減する方法。
[13]分岐鎖アミノ酸の少なくとも一部のオキソ酸への変換は、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.42)を用い、2-オキソグルタル酸及びピリドキサールリン酸の存在下で行なう、[12]に記載の方法。
[14]分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.42)は、分岐鎖アミノ酸に対して基質特異性をもつ古細菌、微生物または真核生物由来の酵素である[13]に記載の方法。
[15]分岐鎖アミノ酸は、L-ロイシン、L-イソロイシンおよびL-バリンから成る群から選ばれる少なくとも1種である[14]に記載の方法。
[16]L-メチオニンの分析は、L-メチオニンに対する基質特異性が向上した改変型フェニルアラニン脱水素酵素を用いて行なわれる[12]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[17]被検試料が血液試料である[11]〜[15]のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、L-ロイシン、L-イソロイシンおよびL-バリンなどの分岐鎖アミノ酸に対して基質特異性をもつ分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを用いて被検試料に含まれる分岐鎖アミノ酸をグルタミン酸に変換する前処理工程を導入することによって、L-メチオニンに対して基質特異性を持つように機能改変されたフェニルアラニン脱水素酵素を用いるL-メチオニンの分析を、L-ロイシン、L-イソロイシンおよびL-バリンなどの共存アミノ酸の影響を低減して実施できる。特に、被検試料に含まれるL-メチオニン濃度をレサズリン、ジアホラーゼ、および酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)または酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)を用いる酵素蛍光発色法により高感度に検出することができる。
さらに、L-メチオニンに対して基質特異性を持つように機能改変されたフェニルアラニン脱水素酵素を用いるL-メチオニンの分析を酵素蛍光発色法により高感度に行うことができることで、ホモシスチン尿症以外の重要先天性代謝異常症疾患と同様の測定手順、試薬組成および検出蛍光波長等においてホモシスチン尿症の診断が可能になり、他の先天性代謝異常症疾患の診断キットと同様な仕様にすることでスクリーニング作業効率の大幅な改善を提供することができる。
本発明は、メチオニンに対する基質特異性を改善した改変型フェニルアラニン脱水素酵素(以下、改変型酵素とも言う)を用いて、被検試料に含まれるL-メチオニンを分析する方法に関する。
[前処理]
本発明のL-メチオニン分析法は、被検試料を、分岐鎖アミノ酸の少なくとも一部をオキソ酸に変換し得る処理に供する工程(前処理工程)を含む。この前処理工程は、被検試料を、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.42)、2-オキソグルタル酸及びピリドキサールリン酸を含む反応液とともにインキュベーションすることで行なう。分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.42)は、例えば、分岐鎖アミノ酸に対して基質特異性をもつ古細菌、微生物または真核生物由来、具体的には、大腸菌、乳酸菌、超好熱菌等由来の酵素であることができる。ここで、分岐鎖アミノ酸は、例えば、L-ロイシン、L-イソロイシンおよびL-バリンから成る群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明は、L-メチオニン分析の阻害因子となる分岐鎖アミノ酸の被検試料中の量を低減する方法を包含する。L-メチオニン分析の阻害因子となる分岐鎖アミノ酸の被検試料中の量を低減する方法は、L-メチオニンを分析するための被検試料に含まれる可能性がある分岐鎖アミノ酸の少なくとも一部をオキソ酸に変換することを含む。この方法における分岐鎖アミノ酸の被検試料中の量を低減する方法は、上記前処理と同一である。
被検試料は、例えば、血液試料であり、血液試料は、乾燥ろ紙血液であることができる。本発明における乾燥ろ紙血液は、例えば、新生児の踵から採取した血液を専用の採血ろ紙に十分量染み込ませたものである。採血を行う時期は、生後5〜7日目で、哺乳後2時間前後、出きれば沐浴後に採血が良い。ろ紙に染み込ませた血液は、ろ紙の裏側にも充分に浸透していることが望ましい。また、検査対象は、新生児の血液に限定されず、新生児以外の乾燥ろ紙血液も同様に、被検試料とすることができる。
乾燥ろ紙血液については、例えば、実施例に記載のように、固定化及び溶出の工程を経て、得られる抽出液を用いることができる。固定化及び溶出の工程は、例えば、ろ紙パンチャーで3mmのディスク状に打ち抜き、96穴マイクロプレートのウェルにそれぞれ1〜10枚、好ましくは2〜5枚ずつ入れ、固定化液(例えば、アセトン:エタノール:精製水=7:7:2)をウェルに加えてろ紙に染み込ませ、インキュベーター内で静置し、溶出液(例えば、0.1 M グリシン-KCl-KOH緩衝液、pH 9.6)をウェルに加えて抽出することで行われる。抽出液は、例えば、ブラック96穴プレート各ウェルに分注されて、上記前処理工程に供される。尚、溶出液には脱イオン水も使用可能である。試料中のヘモグロビン等を有機溶媒で固定化した後に水溶性の低分子成分を抽出することが目的であるため、水系の溶媒および脱イオン水であれば溶出液として使用可能である。上記で緩衝液を用いるのは、この後の酵素反応等に適したpHに調整するためである。
分岐鎖アミノ酸の少なくとも一部をオキソ酸に変換し得る前処理の工程および発色工程はマイクロプレートのウェル中で行うことが、一度の多量のサンプルを処理できるという観点から好ましい。
前処理工程は、具体的には、被検試料に含まれる分岐鎖アミノ酸を分岐鎖アミノ酸に対して基質特異性をもつトランスアミナーゼ(EC 2.6.1.42)で2-オキソグルタル酸とピリドキサールリン酸の存在下で反応せしめ、分岐鎖アミノ酸のアミノ基を転移させてグルタミン酸を生成させることにより、被検試料中の分岐鎖アミノ酸をオキソ酸へと変換させることで行う。反応温度は、トランスアミナーゼの最適温度等を考慮して適宜決定されるが、例えば、37℃で行うことができる。反応時間は、被検試料に含まれる分岐鎖アミノ酸のオキソ酸への変換の程度を考慮して適宜決定できる。トランスアミナーゼ、2-オキソグルタル酸及びピリドキサールリン酸の使用量は、例えば、以下の範囲にすることができる。
トランスアミナーゼの使用量:0.1 〜 10 U/ml
2-オキソグルタル酸の使用量:1 〜 100 mM
ピリドキサールリン酸の使用量:2 〜 100 μM
分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.42)は、分岐鎖アミノ酸(L-ロイシン、L-イソロイシン、L-バリン)と2-オキソグルタル酸の可逆的アミノ基転移反応を触媒する酵素である。ピリドキサールリン酸(PLP)を補酵素として必要とする。本酵素は、種々の微生物および動物で見出されており、ilvE遺伝子にコードされている。分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼの例としては、例えば、古細菌、微生物および真核生物由来、具体的には、大腸菌、乳酸菌、超好熱菌等由来の分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを挙げることができる。
特に上記分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼは、L-ロイシン、L-イソロイシンおよびL-バリンなどの分岐鎖アミノ酸に対して基質特異性が高いことが好ましく、且つこれらの基質に対するKm値がL-メチオニンやL-フェニルアラニンよりも低いことがより好ましい。
[発色工程]
本発明の第1の態様では、前処理後の被検試料を、改変型フェニルアラニン脱水素酵素を用いて、レサズリン、ジアホラーゼ、およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を含む反応液とともにインキュベーションする工程、及びインキュベーション後の反応液の発色を検出する工程により、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析を行う。発色は、レサズリン由来の蛍光色素の発色であることができる。あるいは、レサズリン由来の色素の吸光度を測定することもできる。被検試料とレサズリン、ジアホラーゼおよび酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)との混合は、前記のように、例えば、マイクロプレートのウェル中で行うことが出来る。酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)に代えて酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)を用いることもできる。反応温度は、改変型フェニルアラニン脱水素酵素の最適温度等を考慮して適宜決定されるが、例えば、37℃で行うことができる。反応時間は、蛍光発色の程度を考慮して適宜決定できる。蛍光発色の検出、測定は、例えば、マイクロプレートリーダーを用いて行うことができる。
本発明の第1の態様の反応スキームを以下に示す。
改変型フェニルアラニン脱水素酵素、レサズリン、ジアホラーゼ、および酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の使用量は、例えば、以下の範囲にすることができる。
改変型フェニルアラニン脱水素酵素の使用量:0.001 〜 1 U/ml
レサズリンの使用量:10 〜 100 μM
ジアホラーゼの使用量:10 mU/ml 〜 0.5 U/ml
酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の使用量:0.1 〜 10 mM
本発明の第2の態様では、前処理後の被検試料を改変型フェニルアラニン脱水素酵素と酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)と混合する工程、及び生成するNADHの吸収を測定する工程により、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析を行う。酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)に代えて酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)を用いることもできる。酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)を用いる場合には、生成するNADPHの吸収を測定する。反応温度は、改変型フェニルアラニン脱水素酵素の最適温度等を考慮して適宜決定されるが、例えば、37℃で行うことができる。反応時間は、NADH生成の程度を考慮して適宜決定できる。酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)は、改変型フェニルアラニン脱水素酵素により還元され、生成するNADHは、340 nmに吸収を有し、この吸光値の増加を測定することで、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析を行うことができる。340 nmの吸光値の測定は、例えば、マイクロプレートリーダーを用いて行うことができる。
本発明の第2の態様の反応スキームを以下に示す。
改変型フェニルアラニン脱水素酵素および酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の使用量は、例えば、以下の範囲にすることができる。
改変型フェニルアラニン脱水素酵素の使用量:0.001 〜 1 U/ml
酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の使用量:0.1 〜 10 mM
本発明の第3の態様では、前処理後の被検試料を、改変型フェニルアラニン脱水素酵素と、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)または酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、電子キャリヤー及び還元系発色試薬を含む反応液とともにインキュベーションする工程、及びインキュベーション後の反応液のホルマザン色素発色を検出する工程により、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析を行う。反応温度は、改変型フェニルアラニン脱水素酵素の最適温度等を考慮して適宜決定されるが、例えば、37℃で行うことができる。反応時間は、ホルマザン色素発色の程度を考慮して適宜決定できる。ホルマザン色素発色の検出、測定は、例えば、マイクロプレートリーダーを用いて行うことができる。
電子キャリヤーとしては、例えば、酵素反応の結果生成されたNADHもしくはNADPHにより電気化学的に還元され、還元系発色試薬を還元する物質であれば特に制限はない。例えば、キノン類、シトクロム類、ビオロゲン類、フェナジン類、フェノキサジン類、フェノチアジン類、フェリシアン化物、フェレドキシン類、フェロセンおよびその誘導体等を使用できる。その中でもフェナジン類、例えば、フェナジンメトスルフェート(PMS)や1-メトキシ-フェナジンメトスルフェート(1-Methoxy-PMS)等の電子キャリヤー(供与体)を挙げることができる。還元系発色試薬としては、例えば、イント(INT)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)あるいは臭化ジメチルモノテトラゾリウム(MTT)などを挙げることができる。ホルマザン色素の発色を測定することで、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析を行うことができる。
本発明の第3の態様の反応スキームを以下に示す。
改変型フェニルアラニン脱水素酵素、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、電子キャリヤー及び還元系発色試薬の使用量は、以下のようにすることができる。
改変型フェニルアラニン脱水素酵素の使用量:0.001 〜1 U/ml
酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の使用量:0.1 〜 10 mM
電子キャリヤーの使用量:0.1 〜 10 mM
還元系発色試薬の使用量:0.1 〜 10 mM
本発明の第4の態様では、前処理後の被検試料を、改変型フェニルアラニン脱水素酵素と、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)または酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、電子キャリヤー、金属イオン及びキレート指示薬を含む反応液とともにインキュベーションする工程、及びインキュベーション後の反応液の色素発色を検出する工程により、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析を行う。反応温度は、改変型フェニルアラニン脱水素酵素の最適温度等を考慮して適宜決定されるが、例えば、37℃で行うことができる。反応時間は、色素発色の程度を考慮して適宜決定できる。色素発色の検出、測定は、例えば、マイクロプレートリーダーを用いて行うことができる。
電子キャリヤーとしては、本発明の第2の態様で挙げたものを用いることができ、例えば、1-メトキシ-フェナジンメトスルフェート(1-Methoxy-PMS)等の電子キャリヤー(供与体であることができる。金属イオンとしては、例えばCo3+などを用いることができる。キレート指示薬としては、例えば、5-Br-PAPSなど用いることができる。反応により発色した色素の吸光値を測定して検出することで、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析を行うことができる。
本発明の第4の態様の反応スキームを以下に示す。
改変型フェニルアラニン脱水素酵素、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、電子キャリヤー、金属イオン及びキレート指示薬の使用量は、以下のようにすることができる。
改変型フェニルアラニン脱水素酵素の使用量:0.001 〜 1 U/ml
酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の使用量:0.1 〜 10 mM
電子キャリヤーの使用量:0.1 〜 10 mM
金属イオンの使用量:0.01 〜 1 mM
キレート指示薬の使用量:0.1 〜 10 mM
[改変型フェニルアラニン脱水素酵素]
以下に本発明に用いられる改変型フェニルアラニン脱水素酵素について以下に説明する。
改変型フェニルアラニン脱水素酵素(その1)
改変型フェニルアラニン脱水素酵素(その1)は、例えば、フェニルアラニン脱水素酵素(EC 1.4.1.20)のメチオニンに対する基質特異性を改善するように、少なくとも1箇所、好ましくは2箇所のアミノ酸が修飾された改変型酵素である。本発明で用いた改変型酵素はBacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素の124番目のアミノ酸をセリン(Ser)に置換し、且つ310番目のアミノ酸をセリン(Ser)に置換したタンパク質である。前記2つのアミノ酸をそれぞれセリン(Ser)に置換することにより、フェニルアラニン脱水素酵素の基質特異性はメチオニンと分岐鎖アミノ酸に対して特異性を有するように改変されている。前記改変型酵素は、酸化型NAD+を補酵素としてアミノ酸の酸化的脱アミノ化反応を触媒し、アンモニアを含む中性付近のpH領域においては、還元型NADHを補酵素として還元的アミノ化反応を触媒する。
改変型フェニルアラニン脱水素酵素(その1)について以下に詳細に説明する。
本発明において、改変の対象であるフェニルアラニン脱水素酵素(EC 1.4.1.20)は、L-フェニルアラニンのアミノ基に対して、特異的に酸化的脱アミノ化反応を触媒する酵素である。フェニルアラニン脱水素酵素の例としては、例えば、Bacillus badius IAM11059、Bacillus sphaericus R79a、Sporosarcina ureae R04、Bacillus halodurans、Geobacillus kaustophilus、Oceanobacillus iheyensis、Rhodococcus sp. M-4またはThermoactinomyces intermediusに由来するフェニルアラニン脱水素酵素を挙げることができる。
Bacillus badius IAM11059由来するフェニルアラニン脱水素酵素は、L-フェニルアラニンに対する基質特異性が極めて高く、フェニルケトン尿症の血中L-フェニルアラニン濃度の定量に最適な酵素として同疾患のマス・スクリーニングにおいてマイクロプレートを用いた酵素蛍光定量法の酵素剤として用いられている。また、本酵素は、補酵素としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(酸化型;NAD+)を要求する。本酵素による酸化反応は可逆的であり、中性付近から弱アルカリ性のpH領域においてアンモニウムイオンとニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(還元型;NADH)存在下で還元的アミノ化反応も触媒する酵素である。Bacillus badius IAM11059由来するフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、Yamada A, Dairi T, Ohno Y, Huang XL and Asano Y. Nucleotide sequencing of phenylalanine dehydrogenase gene from Bacillus badius IAM 11059 Biosci. Biotechnol. Biochem. 59(10). 1994-1995 (1995)に記載され、配列番号1および2として記載する。
Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素(EC 1.4.1.20)は、L-フェニルアラニンあるいはL-チロシンのアミノ基に対して、特異的に酸化的脱アミノ化反応を触媒する酵素である。本酵素は、L-フェニルアラニンとともにL-チロシンに対しても基質特異性が高く、L-アミノ酸の酵素的合成反応において利用されている。また、本酵素は、補酵素として前記B. badius IAM11059由来のフェニルアラニン脱水素酵素同様にニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を要求する。本酵素による酸化反応は可逆的であり、中性付近から弱アルカリ性のpH領域において前記Bacillus badius IAM11059由来のフェニルアラニン脱水素酵素と同様にアンモニウムイオンとニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(還元型;NADH)の存在下で還元的アミノ化反応も触媒する酵素である。Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、N. Okazaki, Y. Hibino, Y. Asano, M. Ohmori, N. Numao and K. Kondo. Cloning and nucleotide sequencing of phenylalanine dehydrogenase gene of Bacillus sphaericus. Gene. 63. 337-341 (1988) に記載され、配列番号3および4として記載する。
Sporosarcina ureae R04由来のフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、DDBJ/EMBL/GenBank databases(Accession No. AB001031)に記載され、配列番号5および6として記載する。
Bacillus haloduransに由来するフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、GenBank Database(Accession No. NC_002570)およびNCBI Protein Database(Accession No. NP_241084)に記載され、配列番号7および8として記載する。
Geobacillus kaustophilusに由来するフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、GenBank Database(Accession No. BA000043.1)およびNCBI Protein Database(Accession No. BAD76316)に記載され、配列番号9および10として記載する。
Oceanobacillus iheyensisに由来するフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、GenBank(Accession No. BA000028)およびNCBI Protein Database(Accession No. BAC14834)に記載され、配列番号11および12として記載する。
Rhodococcus sp. M-4に由来するフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、以下の文献に記載され、配列番号13および14として記載する。
Brunhuber N. M., Banerjee A., Jacobs W. R. Jr., Blanchard J. S. Cloning, sequencing, and expression of Rhodococcus L-phenylalanine dehydrogenase. Sequence comparisons to amino-acid dehydrogenases. J. Biol. Chem., 269. 16203-16211 (1994)
Thermoactinomyces intermediusに由来するフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、以下の文献に記載され、配列番号15および16として記載する。
Takada H., Yoshimura T., Ohshima T., Esaki N., Soda K. Thermostable phenylalanine dehydrogenase of Thermoactinomyces intermedius; cloning, expression, and sequencing of its gene. J. Biochem., 109. 371-376 (1991)
野生型のフェニルアラニン脱水素酵素は、L−フェニルアラニンに対する基質特異性が高い。図1にBacillus badius IAM11059、Bacillus sphaericus R79aおよびSporosarcina ureae R04に由来するフェニルアラニン脱水素酵素のL−トリプシン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−フェニルアラニン、L−メチオニンおよびL−バリンに対する基質特異性を相対活性によって示す。上記3つのフェニルアラニン脱水素酵素は、L−フェニルアラニンに対する相対活性を100とすると、L−フェニルアラニン以外のアミノ酸に対する相対活性は低く、特に、L−メチオニンに対する相対活性は10以下である。
本発明においては、上記のように、L−メチオニンに対する基質特異性が、L−フェニルアラニンに対する基質特異性に比べて格段に低いフェニルアラニン脱水素酵素を改変し、メチオニンに対する基質特異性を改善した改変型酵素(その1)を用いる。具体的には、野生型酵素の少なくとも1つのアミノ酸をメチオニンに対する基質特異性を改善するように修飾した改変型酵素である。基質特異性の改善は、例えば、フェニルアラニンに対する相対活性を100としたときにメチオニンに対する相対活性が50以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、500以上であることがさらに好ましい。
メチオニンに対する基質特異性を改善する修飾は、具体的には、野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の114〜125番目の範囲にあるスレオニン(Thr)グリシン(Gly)の連続した配列 (但し、前記グリシン(Gly)が114〜125番目の範囲にある)におけるグリシン(Gly)のセリン(Ser)への置換である。野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列中のスレオニン(Thr)グリシン(Gly)の連続した配列(グリシン(Gly)が114〜125番目の範囲にある)におけるグリシン(Gly)の位置は酵素の由来によって異なり、以下の表に示す位置にある。
*スレオニン(Thr)グリシン(Gly)の連続した配列におけるグリシン(Gly)の位置
**野生型酵素の配列
さらにメチオニンに対する基質特異性を改善する修飾は、具体的には、野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の297〜310番目の範囲にあるグルタミン(Gln)バリン(Val)の連続した配列 (但し、前記バリン(Val)が297〜310番目の範囲にある)におけるバリン(Val)のセリン(Ser)、スレオニン(Thr)あるいはアラニン(Ala)への置換である。野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列中のグルタミン(Gln)バリン(Val)の連続した配列(バリン(Val)が297〜310番目の範囲にある)におけるバリン(Val)の位置は酵素の由来によって異なり、以下の表に示す位置にある。
*グルタミン(Gln)バリン(Val)の連続した配列におけるバリン(Val)の位置
**野生型酵素の配列
改変型酵素(その1)の具体例は、
(1a)Bacillus badius IAM11059由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の123番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)に置換した改変型酵素、
(1b)Bacillus badius IAM11059由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の123番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、且つ309番目のアミノ酸がセリン(Ser)、スレオニン(Thr)あるいはアラニン(Ala)のいずれかに置換した改変型酵素、
(2a)Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の124番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)に置換した改変型酵素、
(2b)Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の124番目のアミノ酸残基をセリン(Ser))、且つ310番目のアミノ酸がセリン(Ser)、スレオニン(Thr)あるいはアラニン(Ala)のいずれかに置換した改変型酵素、
(3a)Sporosarcina ureae R04由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の125番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)に置換した改変型酵素、
(3b)Sporosarcina ureae R04由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の125番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、且つ308番目のアミノ酸がセリン(Ser)、スレオニン(Thr)あるいはアラニン(Ala)のいずれかに置換した改変型酵素、
(4a)Bacillus halodurans由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の122番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)に置換した改変型酵素、
(4b)Bacillus halodurans由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の122番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、且つ308番目のアミノ酸がセリン(Ser)、スレオニン(Thr)あるいはアラニン(Ala)のいずれかに置換した改変型酵素、
(5a)Geobacillus kaustophilus由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の123番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)に置換した改変型酵素、
(5b)Geobacillus kaustophilus由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の123番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、且つ309番目のアミノ酸がセリン(Ser)、スレオニン(Thr)あるいはアラニン(Ala)のいずれかに置換した改変型酵素、
(6a)Oceanobacillus iheyensis由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の122番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)に置換した改変型酵素、
(6b)Oceanobacillus iheyensis由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の122番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、且つ308番目のアミノ酸がセリン(Ser)、スレオニン(Thr)あるいはアラニン(Ala)のいずれかに置換した改変型酵素、
(7)Rhodococcus sp. M-4由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の117番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)に置換した改変型酵素、および
(8a)Thermoactinomyces intermedius由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の114番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)に置換した改変型酵素、
(8b)Thermoactinomyces intermedius由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の114番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、且つ297番目のアミノ酸がセリン(Ser)、スレオニン(Thr)あるいはアラニン(Ala)のいずれかに置換した改変型酵素である。
さらに、改変型酵素(その1)は、由来の異なる2つのフェニルアラニン脱水素酵素を、上記114〜125番目の範囲にあるスレオニン(Thr)グリシン(Gly)の連続した配列におけるグリシン(Gly)を境にして、組み換えたキメラ改変型酵素であることができる。具体的には、1つのフェニルアラニン脱水素酵素の上記範囲にあるグリシン(Gly)の直前までのアミノ酸配列とこのフェニルアラニン脱水素酵素とは由来が異なる別のフェニルアラニン脱水素酵素の上記範囲にあるグリシン(Gly)の直後から最後までのアミノ酸配列とをセリン(Ser)を介してこの順に連結したキメラ改変型酵素である。
キメラ改変型酵素は、下記(A)のグループのいずれか1つのアミノ酸配列と(B)のグループのいずれか1つのアミノ酸とを、 セリン(Ser)を介してこの順に連続したタンパク質である。但し、(B)は(A)とは異なる起源の酵素のアミノ酸配列から選択する。即ち、(A)と(B)の数字は異なる組み合せとする。
(A)のグループ
(A-1)Bacillus badius IAM11059由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列1〜122番目、
(A-2)Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列1〜123番目、
(A-3)Sporosarcina ureae R04由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の1〜124番目、
(A-4)Bacillus halodurans由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の1〜121番目、
(A-5)Geobacillus kaustophilus由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の1〜122番目、
(A-6)Oceanobacillus iheyensis由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の1〜121番目、
(A-7)Rhodococcus sp. M-4由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の1〜116番目、および
(A-8)Thermoactinomyces intermedius由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の1〜113番目
(B)のグループ
(B-1) Bacillus badius IAM11059由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列124〜380番目、
(B-2)Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列125〜381番目、
(B-3) Sporosarcina ureae R04由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の126〜379番目
(B-4) Bacillus halodurans由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の123〜379番目
(B-5) Geobacillus kaustophilus由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の124〜380番目
(B-6) Oceanobacillus iheyensis由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の123〜379番目
(B-7) Rhodococcus sp. M-4由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の118〜356番目
(B-8)Thermoactinomyces intermedius由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の115〜366番目
(B)のグループのアミノ酸は、以下のアミノ酸配列であっても良い。
(B-1)は、Bacillus badius IAM11059由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の309番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、スレオニン(Thr)またはアラニン(Ala)に置換したアミノ酸配列であり、
(B-2)は、Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の310番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、スレオニン(Thr)またはアラニン(Ala)に置換したアミノ酸配列であり、
(B-3)は、 Sporosarcina ureae R04由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の308番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、スレオニン(Thr)またはアラニン(Ala)に置換したアミノ酸配列であり、
(B-4) は、Bacillus halodurans由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の308番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、スレオニン(Thr)またはアラニン(Ala)に置換したアミノ酸配列であり、
(B-5) は、Geobacillus kaustophilus由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の309番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、スレオニン(Thr)またはアラニン(Ala)に置換したアミノ酸配列であり、
(B-6) は、 Oceanobacillus iheyensis由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の308番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、スレオニン(Thr)またはアラニン(Ala)に置換したアミノ酸配列であり、
(B-8) は、Thermoactinomyces intermedius由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の297番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、スレオニン(Thr)またはアラニン(Ala)に置換したアミノ酸配列。
キメラ改変型酵素の具体例としては、以下のものを挙げることができる。
(1)Bacillus badius IAM11059由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列1〜122番目にセリン(Ser)を介して、Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列125〜381番目をこの順に連結した改変型酵素、
(2)Bacillus badius IAM11059由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列1〜122番目にセリン(Ser)を介して、Sporosarcina ureae R04由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列126〜379番目をこの順に連結した改変型酵素、
(3)Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列1〜123番目にセリン(Ser)を介して、Bacillus badius IAM11059由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列124〜380番目をこの順に連結した改変型酵素、
(4)Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列1〜123番目にセリン(Ser)を介して、Sporosarcina ureae R04由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列126〜379番目をこの順に連結した改変型酵素、
(5)Sporosarcina ureae R04由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列1〜124番目にセリン(Ser)を介して、Bacillus badius IAM11059由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列124〜380番目をこの順に連結した改変型酵素、
(6)Sporosarcina ureae R04由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列1〜124番目にセリン(Ser)を介して、Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列125〜379番目をこの順に連結した改変型酵素。
上記以外も、上記表1または2に示した8種類のフェニルアラニン脱水素酵素のいずれかの2つを組み合わせることでキメラ改変型酵素を作製することができる。
さらには、上記改変型酵素(その1)のアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、メチオニンに対する基質特異性を改善したフェニルアラニン脱水素酵素活性を有するアミノ酸配列を有する改変型酵素であっても良い。但し、欠失及び/又は置換されるアミノ酸に、セリン(Ser)が114〜125番目の範囲にあるスレオニン(Thr) セリン(Ser)の連続した配列のセリン(Ser)は含まない)。あるいは、前記キメラ改変型酵素において、欠失及び/又は置換されるアミノ酸に(A)と(B)を連結するセリン(Ser)は含まない。置換、挿入または欠落をさらに有する改変型酵素は、野生型酵素に比べて、メチオニンに対する基質特異性を改善したものであり、基質特異性の改善は、例えば、フェニルアラニンに対する相対活性を100としたときにメチオニンに対する相対活性が50以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。
本明細書で言う「1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から40個、好ましくは1から30個、より好ましくは1から20個、より好ましくは1から10個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。以下においても同様である。
以下に改変型酵素(その1)の具体例の説明とフェニルアラニンに対する相対活性を100としたときにメチオニンに対する相対活性を一覧表にして示す。
改変型フェニルアラニン脱水素酵素(その2)
改変型フェニルアラニン脱水素酵素(その2)は、フェニルアラニン脱水素酵素のメチオニンに対する基質特異性を改善するように、少なくとも3箇所、好ましくは3〜5箇所のアミノ酸が修飾された改変型酵素である。本発明で用いた改変型酵素は、Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素の124番目のアミノ酸をセリン(Ser)、145番目のアミノ酸をメチオニン(Met)、66番目のアミノ酸をシステイン(Cys)、295番目のアミノ酸をアスパラギン(Asn)および310番目のアミノ酸をプロリン(Pro)に置換したタンパク質である。前記アミノ酸置換により、フェニルアラニン脱水素酵素の基質特異性は、メチオニンに対して特に高い特異性を有し、フェニルアラニンおよびロイシン、イソロイシンおよびバリンなどの天然分岐鎖アミノ酸に対する基質特異性がメチオニンの活性に比べて低くなるように改変された酵素である。前記改変型酵素もまた、酸化型NAD+を補酵素としてアミノ酸の酸化的脱アミノ化反応および還元的アミノ化反応を可逆的に触媒する酵素である。
以下、改変型フェニルアラニン脱水素酵素(その2)について詳細に説明する。
野生型のフェニルアラニン脱水素酵素は、前述のように、L-フェニルアラニンに対する基質特異性が極めて高く、Bacillus badius IAM 11059、Bacillus sphaericus R79aあるいはSporosarcina ureae R04由来の酵素などにおいてL-フェニルアラニンに対する相対活性を100とすると、L-メチオニンやL-ロイシン、L-イソロイシンあるいはL-バリンなどの天然アミノ酸の基質に対しての相対活性は10以下となっている。
改変型フェニルアラニン脱水素酵素(その2)は、上記のようにL-メチオニンに対する基質特異性が極めて低いフェニルアラニン脱水素酵素を改変し、L-メチオニンに対する基質特異性を格段に向上させた変異型酵素である。具体的には、野生型フェニルアラニン脱水素酵素の少なくとも3つのアミノ酸をL-メチオニンに対する基質特異性が向上するように修飾した改変型酵素である。基質特異性の改善は、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにL-フェニルアラニンに対する相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。さらには、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにロイシンに対する相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。さらには、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにバリンに対する相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。さらには、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにフェニルアラニン、ロイシンおよびバリンのいずれに対しても相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。
メチオニンに対する基質特異性を改善する修飾は、具体的には、野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の114〜125番目の範囲にあるスレオニン(Thr)グリシン(Gly)の連続した配列 (但し、前記グリシン(Gly)が114〜125番目の範囲にある)におけるグリシン(Gly)のセリン(Ser)への置換である。野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列中のスレオニン(Thr)グリシン(Gly)の連続した配列(グリシン(Gly)が114〜125番目の範囲にある)におけるグリシン(Gly)の位置は酵素の由来によって異なり、以下の表に示す位置にある。
*スレオニン(Thr)グリシン(Gly)の連続した配列におけるグリシン(Gly)の位置
**野生型酵素の配列
さらにメチオニンに対する基質特異性を改善する修飾は、具体的には、野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の297〜310番目の範囲にあるグルタミン(Gln)バリン(Val)の連続した配列(但し、前記バリン(Val)が297〜310番目の範囲にある)におけるバリン(Val)のアルギニン(Arg)、スレオニン(Thr)、グリシン(Gly)あるいはプロリン(Pro)への置換である。野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列中のグルタミン(Gln)バリン(Val)の連続した配列(バリン(Val)が297〜310番目の範囲にある)におけるバリン(Val)の位置は酵素の由来によって異なり、以下の表に示す位置にある。
*グルタミン(Gln)バリン(Val)の連続した配列におけるバリン(Val)の位置
**野生型酵素の配列
さらにメチオニンに対する基質特異性を改善する修飾は、具体的には、野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の135〜146番目の範囲にあるイソロイシン(Ile)、バリン(Val)/アスパラギン(Asn)/アラニン(Ala)およびグリシン(Gly)の連続した配列 (但し、前記バリン(Val)/アスパラギン(Asn)/アラニン(Ala)が135〜146番目の範囲にある)におけるバリン(Val)/アスパラギン(Asn)/アラニン(Ala)のアラニン(Alal)、ロイシン(Leu)あるいはメチオニン(Met)への置換である。野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列中のイソロイシン(Ile)、バリン(Val)/アスパラギン(Asn)/アラニン(Ala)およびグリシン(Gly)の連続した配列(バリン(Val)/アスパラギン(Asn)/アラニン(Ala)が135〜146番目の範囲にある)におけるバリン(Val)/アスパラギン(Asn)/アラニン(Ala)の位置は酵素の由来によって異なり、以下の表に示す位置にある。
*イソロイシン(Ile)、バリン(Val)/アスパラギン(Asn)/アラニン(Ala)およびグリシン(Gly)の連続した配列におけるバリン(Val)/アスパラギン(Asn)/アラニン(Ala)の位置
**野生型酵素の配列
改変型酵素(その2)は、野生型フェニルアラニン脱水素酵素の少なくとも3つのアミノ酸をL-メチオニンに対する基質特異性が向上するように修飾した改変型酵素であるが、この少なくとも3つのアミノ酸は、上記表1〜3に示されるアミノ酸であることが好ましい。以下の表7及び8に、さらに、修飾すべき野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸を示すが、これらのアミノ酸は、野生型フェニルアラニン脱水素酵素の由来によっては、修飾が不要な場合がある。修飾することが好ましい野生型フェニルアラニン脱水素酵素の由来を表7及び8に示す。
さらにメチオニンに対する基質特異性を改善する修飾は、具体的には、野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の281〜295番目の範囲にあるグリシン(Gly)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)、プロリン(Peo)およびアスパラギン酸(Asp)の連続した配列(但し、前記ロイシン(Leu)が281〜295番目の範囲にある)におけるロイシン(Leu)のアスパラギン(Asn)への置換である。野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列中のグリシン(Gly)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)、プロリン(Peo)およびアスパラギン酸(Asp)の連続した配列(ロイシン(Leu)が281〜295番目の範囲にある)におけるロイシン(Leu)の位置は酵素の由来によって異なり、以下の表に示す位置にある。
*グリシン(Gly)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)、プロリン(Peo)およびアスパラギン酸(Asp)の連続した配列におけるロイシン(Leu)の位置
**野生型酵素の配列
メチオニンに対する基質特異性を改善する修飾は、具体的には、野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の54〜67番目の範囲にあるアラニン(Ala)、ロイシン(Leu)の連続した配列 (但し、前記ロイシン(Leu)が54〜67番目の範囲にある)におけるロイシン(Leu)のシステイン(Cys)への置換である。野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列中のアラニン(Ala)、ロイシン(Leu)の連続した配列(ロイシン(Leu)が54〜67番目の範囲にある)におけるロイシン(Leu)の位置は酵素の由来によって異なり、以下の表に示す位置にある。
*アラニン(Ala)、ロイシン(Leu)の連続した配列におけるロイシン(Leu)の位置
**野生型酵素の配列
さらには、改変型酵素(その2)のアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、メチオニンに対する基質特異性を改善したフェニルアラニン脱水素酵素活性を有するアミノ酸配列を有する改変型酵素を包含する。但し、欠失及び/又は置換されるアミノ酸に、セリン(Ser)が114〜125番目の範囲にあるスレオニン(Thr)セリン(Ser)の連続した配列のセリン(Ser)は含まない。置換、挿入または欠落をさらに有する改変型酵素は、野生型酵素に比べて、メチオニンに対する基質特異性を改善したものであり、基質特異性の改善は、前記と同様である。
即ち、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにL-フェニルアラニンに対する相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。さらには、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにロイシンに対する相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。さらには、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにバリンに対する相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。さらには、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにフェニルアラニン、ロイシンおよびバリンのいずれに対しても相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。
以下に改変型酵素(その2)の具体例として、Bacillus sphaericus R79a由来酵素を例に、メチオニンに対する相対活性を100としたときのフェニルアラニンに対する相対活性を一覧表にして示す。
本発明で用いる改変型フェニルアラニン脱水素酵素(その1及びその2)の取得方法は特に制限されず、化学合成により合成したタンパク質でもよいし、遺伝子組み換え技術により作製した組み換えタンパク質でもよい。改変型酵素(組み換えタンパク質)を作製する場合には、先ず、後述するように、当該改変型酵素(タンパク質)をコードする遺伝子(DNA)を取得する。このDNAを適当な発現系に導入することにより、改変型酵素を産生することができる。発現系でのタンパク質の発現については本明細書中後記する。
上記改変型酵素は、酵素タンパク質のメチオニン残基(1番目のアミノ酸)のN末端側に位置する1〜12個、好ましくは6〜9個の連続したヒスチジン残基を含むことが望ましい。改変型酵素(タンパク質)のN末端側に連結したヒスチジン・タグは、組換え体培養物からの酵素の精製を容易にするとともに、ニッケル(Ni2+)等の2価金属イオンを介したタンパク質の固定化などに有効である。
改変型酵素のアミノ酸配列をコードするDNAの取得方法は特に限定されない。本明細書中の配列表の配列番号1から16に記載したアミノ酸配列及び塩基配列の情報に基づいて適当なブローブやプライマーを調製し、それらを用いて前記で挙げたフェニルアラニン脱水素酵素を含む菌のcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより本発明の遺伝子を単離することができる。cDNAライブラリーは、改変型酵素のアミノ酸配列をコードする遺伝子を発現している菌から常法により作製することができる。
PCR法により改変型酵素のアミノ酸配列をコードする遺伝子を取得することもできる。上記した菌由来のDNAライブラリー又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、配列番号1、3、5、7、9、11、13または15に記載した塩基配列を増幅できるように設計した1対のプライマーを用いてPCRを行う。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応工程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができる。次いで、増幅されたDNA断片を、大腸菌等の宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。
上記したプローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、並びに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989(以下、モレキュラークローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)等に記載の方法に準じて行うことができる。
また、配列表の配列番号2、4、6、8、10、12、14または16に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、配糖化酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;並びに配列表の配列番号5または6に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、配糖化酵素をコードする塩基配列を有する遺伝子(以下、これらの遺伝子を変異遺伝子と称する)については、配列番号1〜16に記載のアミノ酸配列および塩基配列の情報に基づいて、化学合成、遺伝子工学的手法又は突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法で作製することができる。
例えば、配列表の配列番号1、3、5、7、9、11、13または15に記載の塩基配列を有するDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法等を用いて行うことができる。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、モレキュラークローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載の方法に準じて行うことができる。
上記の改変型酵素のアミノ酸配列をコードするDNAを乗せるベクターは特に制限はないが、例えば、自立的に複製するベクター(例えばプラスミド等)でもよいし、あるいは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよい。好ましくは、本発明で用いるベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいて本発明の遺伝子は、転写に必要な要素(例えば、プロモーター等)が機能的に連結されている。プロモータは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。
細菌細胞で作動可能なプロモータとしては、バチルス・ステアロテルモフィルス・マルトジェニック・アミラーゼ遺伝子(Bacillus stearothermophilus maltogenic amylase gene)、バチルス・リケニホルミスαアミラーゼ遺伝子(Bacillus licheniformis alpha-amylase gene)、バチルス・アミロリケファチエンス・BANアミラーゼ遺伝子(Bacillus amyloliquefaciens BAN amylase gene)、バチルス・サブチリス・アルカリプロテアーゼ遺伝子(Bacillus Subtilis alkaline protease gene)もしくはバチルス・プミルス・キシロシダーゼ遺伝子(Bacillus pumilus xylosldase gene)のプロモータ、またはファージ・ラムダのPR若しくはPLプロモータ、大腸菌の lac、trp若しくはtacプロモータなどが挙げられる。
哺乳動物細胞で作動可能なプロモータの例としては、SV40プロモータ、MT−1(メタロチオネイン遺伝子)プロモータ、またはアデノウイルス2主後期プロモータなどがある。昆虫細胞で作動可能なプロモータの例としては、ポリヘドリンプロモータ、P10プロモータ、オートグラファ・カリホルニカ・ポリヘドロシス塩基性タンパクプロモータ、バキュウロウイルス即時型初期遺伝子1プロモータ、またはバキュウロウイルス39K遅延型初期遺伝子プロモータ等がある。酵母宿主細胞で作動可能なプロモータの例としては、酵母解糖系遺伝子由来のプロモータ、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモータ、TPI1プロモータ、ADH2-4cプロモータなどが挙げられる。糸状菌細胞で作動可能なプロモータの例としては、ADH3プロモータまたはtpiAプロモータなどがある。
また、改変型酵素のアミノ酸配列をコードするDNAは必要に応じて、適切なターミネータに機能的に結合されてもよい。本発明の組み換えベクターは更に、ポリアデニレーションシグナル(例えばSV40またはアデノウイルス5E1b領域由来のもの)、転写エンハンサ配列(例えばSV40エンハンサ)などの要素を有していてもよい。
本発明の組み換えベクターは更に、該ベクターが宿主細胞内で複製することを可能にするDNA配列を具備してもよく、その一例としてはSV40複製起点(宿主細胞が哺乳類細胞のとき)が挙げられる。
組み換えベクターはさらに選択マーカーを含有してもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)またはシゾサッカロマイセス・ポンベTPI遺伝子等のようなその補体が宿主細胞に欠けている遺伝子、または例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン若しくはヒグロマイシンのような薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。改変型酵素のアミノ酸配列をコードする遺伝子、プロモータ、および所望によりターミネータおよび/または分泌シグナル配列をそれぞれ連結し、これらを適切なベクターに挿入する方法は当業者に周知である。
改変型酵素のアミノ酸配列をコードするDNA(遺伝子)又は組み換えベクターを適当な宿主に導入することによって形質転換体を作製することができる。改変型酵素のアミノ酸配列をコードする遺伝子または組み換えベクターを導入される宿主細胞は、改変型酵素のアミノ酸配列をコードする遺伝子を発現できれば任意の細胞でよく、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられる。
細菌細胞の例としては、バチルスまたはストレプトマイセス等のグラム陽性菌又は大腸菌等のグラム陰性菌が挙げられる。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法、または公知の方法でコンピテント細胞を用いることにより行えばよい。
哺乳類細胞の例としては、HEK293細胞、HeLa細胞、COS細胞、BHK細胞、CHL細胞またはCHO細胞等が挙げられる。哺乳類細胞を形質転換し、該細胞に導入されたDNA配列を発現させる方法も公知であり、例えば、エレクトロポーレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を用いることができる。
酵母細胞の例としては、サッカロマイセスまたはシゾサッカロマイセスに属する細胞が挙げられ、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevis1ae)またはサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)等が挙げられる。酵母宿主への組み換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えばアスペルギルス、ニューロスポラ、フザリウム、またはトリコデルマに属する細胞である。宿主細胞として糸状菌を用いる場合、DNA構築物を宿主染色体に組み込んで組換え宿主細胞を得ることにより形質転換を行うことができる。DNA構築物の宿主染色体への組み込みは、公知の方法に従い、例えば相同組換えまたは異種組換えにより行うことができる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、タンパク質を発現させることができる(例えば、Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manua1;及びカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Bio/Technology, 6, 47(1988)等に記載)。
バキュロウイルスとしては、例えば、ヨトウガ科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21〔バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクターズ、ア・ラボラトリー・マニュアル、ダブリュー・エイチ・フリーマン・アンド・カンパニー(W. H. Freeman and Company)、ニューヨーク(New York)、(1992)〕、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHiFive(インビトロジェン社製)等を用いることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法又はリポフェクション法等を挙げることができる。
より具体的には、例えば、Bacillus badius IAM11059あるいはBacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素遺伝子(pdh)を鋳型として部位特異的変異プライマーを用いてPCR反応によって増幅された部位特異的変異導入遺伝子および/またはその相補配列を作製し、この部位特異的変異導入遺伝子および/またはその相補鎖を、例えば、大腸菌(Escherichia coli)あるいはその他の組換え可能な宿主細胞(例えば動物細胞、植物細胞、昆虫細胞など)で発現させて、改変型酵素を得ることができる。
上記形質転換体を培養し、培養物からフェニルアラニン脱水素酵素(EC 1.4.1.20)のメチオニンに対する基質特異性を改善するように、少なくとも1つのアミノ酸が修飾された改変型酵素(その1)または少なくとも1つのアミノ酸が修飾された改変型酵素(その2)を採取することで、改変型酵素を調製することができる。
上記の形質転換体は、導入されたDNAの発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養する。形質転換体の培養物から、改変型酵素を単離精製するには、通常の改変型酵素の単離、精製法を用いればよい。
例えば、改変型酵素が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常のタンパク質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(ファルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィ一法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
以下の実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
[分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼの調製]
分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.42)(B2549-10MG, Branched-chain amino acid transaminase, form bacterial source、シグマ社製)10mgに対し0.1Mリン酸緩衝液(pH 7.3)3.6 mlを加えて溶解させたものを用いた(10 U/ml)。ここで、前記分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼは、L-ロイシン、L-イソロイシンおよびL-バリンなどの分岐鎖アミノ酸に対して基質特異性が高く、L-メチオニンに対する基質特異性が分岐鎖アミノ酸に比べて格段に低いトランスアミナーゼであればいずれの起源の酵素でも構わない。
[標準ろ紙血液中のメチオニン蛍光定量]
変異型フェニルアラニン脱水素酵素と分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを用いた乾燥ろ紙血液中のメチオニン蛍光定量の手順を以下に記述する。採血した血液に既知濃度のアミノ酸およびガラクトースを混合した標準乾燥ろ紙血液(Lot No.および各種添加濃度を表10に示す。)を3mmのディスク状にろ紙パンチャーで打ち抜き、96穴マイクロプレートのウェルにそれぞれ3枚ずつ入れた。固定化液(アセトン:エタノール:精製水=7:7:2)20μL/ウェルを加えてろ紙に染み込ませ、37℃のインキュベーター内で1時間静置した。溶出液(0.1 Mグリシン-KCl-KOH緩衝液、pH 9.6)150 μL/ウェルを加えて撹拌した後、室温にて1時間抽出した。
抽出液を30μL/ウェルずつブラック96穴プレートに分注し、トランスアミナーゼ溶液(10 U/ml分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ:0.2 ml、10 mM PLP:0.04 ml、1 M リン酸カリウム緩衝液(pH 7.8):0.4 ml、0.1 M 2-oxoglutarate:0.4 mlおよび精製水:2.96 ml)30μL/ウェルを加えて撹拌した後、37℃のインキュベーター内にて1時間反応させた。
前記マイクロプレートに対し100μL/ウェルのレサズリン緩衝液(40μMのレサズリンを含む50 mM のトリス塩酸緩衝液(pH 8.9))を加え、さらに変異型フェニルアラニン脱水素酵素溶液(80 mUの変異型フェニルアラニン脱水素酵素(pBS124S310S)、2 mM NAD+および0.02 mg/mlジアホラーゼ(オリエンタル酵母社製)となるように20 mMトリス塩酸緩衝液(pH 8.0)で調製した酵素溶液)を40μL/ウェルずつ分注した。前記マイクロプレートを撹拌した後、37℃のインキュベーター内にて1時間静置して酵素反応を行い、蛍光色素を発色させた。上記反応で得られた蛍光を励起波長545nm、蛍光波長590nmのフィルターを用いてマイクロプレートリーダー(GENios、テカン社製)にて測定した。
サンプル1の標準乾燥ろ紙血液は、未洗浄血液に対して上記アミノ酸を添加して作製しているため、一般検体に近い状態で他のアミノ酸が存在する。
サンプル2の標準乾燥ろ紙血液は、洗浄した血液に対して上記アミノ酸を添加して作製しているため、他のアミノ酸による影響は極めて低い。
サンプル1の標準乾燥ろ紙血液の調製
1:ヒト赤血球のパックをガーゼ及び脱脂綿でろ過し、凝集物を除去
2:ヘマトクリットを55%に調製
3:上記血液:添加標準溶液=9:1で混和
4:ろ紙に滴下し、乾燥させてろ紙血液とする。
前記前処理のトランスアミナーゼ溶液に含まれる分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼの添加量について条件検討を行った結果を図1に示す。その結果、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼの添加量は10 U/mlの酵素溶液を0.2 ml(0.5 U/ml)加えることが適当であることが分かった。
また、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ添加量を増加させても0.2 ml以上の添加効果は認められなかった。このときのロイシン添加標準乾燥ろ紙血液試料の蛍光強度の傾きは、L-メチオニン添加標準乾燥ろ紙血液試料の傾きの約18%程度であった。特に、高濃度(ロイシン添加濃度10 mg/dl以上)での影響が著しかった。
図1に示す結果から、L-ロイシン濃度が10 mg/dl以上の場合において1〜2.7 mg/dlの影響が確認された。10 mg/dl以下の濃度領域においては、L-ロイシンおよびL-フェニルアラニンなどのL-メチオニン以外のアミノ酸による影響は認められなかった。これらの結果より、血液試料に含まれるL-ロイシンおよびL-フェニルアラニンの濃度が10 mg/dl以下において、本発明による酵素蛍光定量法は有効であることが確認された。
実施例2
変異型フェニルアラニン脱水素酵素(pBS124S310S)を変異型フェニルアラニン脱水素酵素(BS124S145M66C295N310P)に代えた以外は実施例1と同様にL-メチオニンの蛍光定量を行った。結果を図2に示す。
図2に示す結果から、L-ロイシン濃度が10 mg/dl以上の場合において1〜2.7 mg/dlの影響が確認された。10 mg/dl以下の濃度領域においては、L-ロイシンおよびL-フェニルアラニンなどのL-メチオニン以外のアミノ酸による影響は認められなかった。これらの結果より、血液試料に含まれるL-ロイシンおよびL-フェニルアラニンの濃度が10 mg/dl以下において、本発明による酵素蛍光定量法は有効であることが確認された。
実施例3
[実験方法]
材料
Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus ATCC11842菌株および超好熱菌Thermus thermophilus HB27(ATCC BAA-163)染色体DNAはATCC社より入手した。組換え体の作出において、宿主大腸菌としてEscherichia coli JM109株(Invitrogen社製)を用い、ベクターDNAとしてpUC19を用いた。PCR法に用いたプライマーはすべて北海道システム・サイエンス(株)に合成を依頼した。その他の試薬は、いずれも分析グレードのものを用いた。
Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus ATCC11842由来の分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼの塩基配列およびアミノ酸配列は、Genbank Database (Accession No. CR954253)に記載され、配列表の配列番号31および32に記載する。
Themus thermophilusは、65〜85℃で生育可能な高度好熱菌である。Themus thermophilus HB27由来の分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼの塩基配列およびアミノ酸配列は、Genbank Database (Accession No. AE017221)に記載され、配列表の配列番号33および34に記載する。
培養および染色体DNAの精製
ATCC社より入手したLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus ATCC11842の凍結乾燥ペレットは、ATCC社プロトコールに基づき、MRS broth(DIFCO社製)にて懸濁し、5 mlのMRS brothに植菌した後、37℃にて30時間静置培養を行った。この細胞培養液5 mlより、染色体DNAを精製し、下記の実験に供した。
プラスミドの調製
pUC19ベクターを組込んだ組換え大腸菌(Escherichia coli JM109)培養液より、Invisorb Spin Plasmid Mini Kit(Invitek社製)を用い、pUC19プラスミドの精製を行った。L. delbrueckii ilvE遺伝子組換え体作出用ベクタープラスミドとして、精製プラスミドpUC19ベクターDNAを7μl、10×H buffer(タカラバイオ(株)社製)を2.5μl、PstIおμよびEcoRIをそれぞれ0.8μlを加え、滅菌超純水で反応液総量を25μlとし、37℃にて3時間制限酵素処理した。T. thermophilus ilvE遺伝子組換え体作出用ベクタープラスミドとして、精製プラスミドpUC19ベクターDNAを7μl、10×K buffer(タカラバイオ(株)社製)を2.5μl、PstIおよびBamHIをそれぞれ0.8μlを加え、滅菌超純水で反応液総量を25μlとし、37℃にて3時間制限酵素処理した。
上記のベクタープラスミド反応液25μlに、それぞれシュリンプ由来アルカリフォスファターゼ(Roche社製)を2μl、×10アルカリフォスファターゼバッファーを5μl加え、滅菌超純水にて反応液総量を50μlとし、37℃にて1時間反応させた。反応液はフェノール・クロロホルム抽出およびエタノール沈殿により精製し、TE溶液に溶解して脱リン酸化pUC19ベクターDNA 20μlを得た。
ilvE遺伝子の増幅
L. delbrueckii染色体DNAの増幅では、L. delbrueckii染色体DNA(塩基配列2)を鋳型として、PstI認識部位配列を含む(下線表記)を含む合成オリゴヌクレオチドプライマー1:5'- ctagtgactgcagtttaaggaaatagcatggcaaaaaaagatctc-3' (北海道システム・サイエンス(株)社製、配列番号35)およびEcoRI認識部位配列を含む(下線表記)を含む合成オリゴヌクレオチドプライマー2:5'- cttcttctcgaattcgatttttacacgtggtgg-3' (北海道システム・サイエンス(株)社製、配列番号36)を用いた。T. thermophilus ilvE遺伝子の増幅では、PstI認識部位配列を含む(下線表記)を含む合成オリゴヌクレオチドプライマー: 5'- aaagcgctctgcaggaaggaggaataggccatgaccaaggctgaggcc -3'(北海道システム・サイエンス(株)社製、配列番号37)およびBamHI認識部位配列を含む(下線表記)を含む合成オリゴヌクレオチドプライマー:5'- cctggtgctcgcggatccgcgcctggtagc -3'(北海道システム・サイエンス(株)社製、配列番号38)を用いた。PCR反応液組成を50 ngの染色体DNA,100 pmol/μlの合成ヌクレオチドプライマーをそれぞれ1μl,ExTaq×10 buffer(タカラバイオ(株)社製)を5μl、2.5mM dNTP mixture(タカラバイオ(株)社製)を5μl、TaKaRa ExTaq DNA Polymerase(タカラバイオ(株)社製)を1μl加え、滅菌超純水で反応液総量を50μlとした。PCRはPTC-200ペルチェ・サーマルサイクラー(MJリサーチ・ジャパン(株)社製)を用い、反応条件は、94℃30秒、55℃30秒、72℃2分の反応サイクルを30回繰り返した。PCR産物を電気泳動し、紫外線照射下において切り出した増幅目的産物(約1 kb)を、ゲル抽出キットGel-MTM Gel Extraction Kit(VIOGENE社製)にて抽出、精製して、50μlの精製産物を得た。精製産物41μlに対し、10×H buffer(タカラバイオ(株)社製)を6μl、PstIおよびEcoRIをそれぞれ1μlずつ加え、滅菌超純水で反応液総量を60μlとし、37℃にて3時間反応させ、精製PCR産物両端の制限酵素処理を行った。反応液は、60℃にて15分インキュベートし、制限酵素を失活させた後、エタノール沈殿を行い、精製挿入断片を得た。
ライゲーションおよび形質転換
上記で得られた脱リン酸化プラスミドを1μl、精製挿入断片を5μl、Ligation mix(タカラバイオ(株)社製)6μlを混合し、反応液総量を12μlとして16℃にて一晩ライゲーション反応を行った後、反応液6μlをE. coli JM109に形質転換し、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して37℃で10時間培養した。得られたコロニーをマスタープレートに植菌し、コロニーを形成したものを、50μg/mlのアンピシリンを含む5 mLのLB培地に植菌し、一晩培養した。培養液からプラスミドDNAを精製し、ABI PRISM 310 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)を用いて塩基配列解析を行い、L. delbrueckiiおよびT. thermophilus ilvE遺伝子の正しい配列が確認されたクローンを、それぞれE. coli JM109/pUCLDBおよびE. coli JM109/pUCTTHとして以下の実験に使用した。
分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ活性測定
酵素精製中の分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼの活性測定は、Collierらの方法(J. Bacteriol, 112, 365 (1972))に従ってダブルビーム分光光度計(PharmaSpec UV-1700、島津社製)を用い、光路長1 cmのPMMA製キュベット(BRAND社製)で測定した。反応液の組成は以下のとおりとした。1 M Tris-HCl buffer, pH8.0を0.1 ml、0.5 M NH4Cl溶液を0.1 ml、2.5 mM ピリドキサール5'リン酸(PLP)溶液を0.1 ml、0.2 M L-グルタミン酸(日本理化学薬品社製)溶液を0.2 ml、1 mM NADH(オリエンタル酵母社製)を0.1 mlに0.1 Mの-keto isocaproic acidおよび適量の酵素溶液を加え、反応総液量を1.0 mlとした。NADHの分子吸光係数(ε)は6,220 l・mol-1・cm-1とし、340 nmにおける吸光度の減少から単位時間(分)あたりの吸光度の変化率((340 nm / min)を求め、活性を算出した。酵素精製中における酵素活性1単位(U)は、1分間に1μmolのNADHを酸化する酵素量とした。また、比活性(U / mg)は、タンパク質1 mgあたりの酵素活性(U)として定義した。
L. delbrueckii由来分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼの精製
大腸菌組換え体E. coli JM109/ pUCLDBは、それぞれ50μg/mlのアンピシリンを含むLB培地5 mlにて37℃で12時間培養した後、50μg/mlのアンピシリンおよび0.1 mMのIPTGを含むLB培地 500 mlに植菌し、37℃で12時間培養した。遠心分離(6,000x g、10分、4℃)で集菌し、0.85%の生理的食塩水で菌体を洗浄した後、菌体湿重量に対して5倍容量の1 mM EDTA、0.1 mM PLP、0.1 mMジチオスレイトール(DTT)、1 mM 2-オキソグルタル酸および10%グリセロールを含む0.1M KPB,pH7.4に懸濁した。細胞懸濁液を超音波破砕機(KUBOTA INSONATOR model210、19 kHz、10分、4℃)にて破砕し、遠心分離(28,000 x g、20分、4℃)により残渣を除去して、無細胞抽出液を調製した。この無細胞抽出液を1 mM EDTA、0.1 mM PLP、0.1 mM DTT、1 mM 2-オキソグルタル酸および10%グリセロールを含む50 mM KPB,pH7.4(Buffer A)中で一晩透析した後、予めBuffer Aで平衡化したDEAEトヨパールカラム(φ5.5 cm x 11 cm)に添加し、0.5M 塩化ナトリウムを含むBuffer Aにて直線濃度勾配により増加させて吸着酵素タンパク質を溶出して、活性画分を回収した。この粗酵素液をBuffer Aにて一晩透析した後、予め20%硫安飽和させたbuffer Aにて平衡化したButylトヨパールカラムに添加し、同Buffer A中の硫安飽和度を直線濃度勾配により減少させて吸着酵素タンパク質を溶出した。活性画分をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により純度を確認し、酵素溶液とした。酵素溶液は、Buffer Aにて透析し、50%グリセロール溶液にして30℃にて保存した。メチオニン定量実験では、これらの分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを1 mM EDTA、0.1 mM PLPを含む50 mM KPB,pH7.4中で透析したものを使用した。
T. thermophilus由来分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼの精製
E. coli JM109/ pUCTTHは、E. coli JM109/ pUCLDBと同様の方法で培養、集菌、洗浄を行った後、菌体湿重量に対して5倍容量の1 mM EDTA、0.1 mM PLPを含む0.1M KPB,pH7.4に懸濁した。細胞懸濁液を超音波破砕機(19 kHz、10分、4℃)にて破砕し、遠心分離(28,000 x g、20分、4℃)により残渣を除去して調製した無細胞抽出液を、70℃にて10分間インキュベートした後、遠心分離(6,000x g、10分、4℃)で変性タンパク質を除去した。この上清を、1 mM EDTA、0.1 mM PLPを含む50 mM KPB,pH7.4(Buffer B)中で一晩透析した後、予めBuffer Bで平衡化したDEAEトヨパールカラム(φ2.5 cm x 30 cm)に添加し、0.5M 塩化ナトリウムを含むBuffer Bにて直線濃度勾配により増加させて吸着酵素タンパク質を溶出して、活性画分を回収した。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により純度を確認し、酵素溶液とした。酵素溶液は、Buffer Bにて透析し、50%グリセロール溶液にして-30℃にて保存した。
SIGMA社供給分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼの調整
分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ(B2549-10MG,Branched-chain amino acid transaminase, from bacterial source,SIGMA社製)10 mgに対し0.1Mリン酸緩衝液(pH7.3)3.6 mlを加えて溶解させた(ラベル表示10 U/ml)。
分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼの基質特異性
分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼの基質特異性は、Yvonらの方法(Appl. Environ. Microbiol, 33, 414 (1997))に従って測定した。本酵素活性1単位(U)は、1分間に1μmolのL-グルタミン酸生成を触媒する酵素量として定義した。反応液は、1 M トリス塩酸緩衝液(pH 8.0)を17.5μl、100 mM 2-オキソグルタル酸を25μl、0.5 mM ピリドキサールリン酸を25μl、30 mMの各種アミノ酸を25μlおよび適量の酵素溶液を加えて反応液総量を250μlとした。これを、37℃で5分間酵素反応を行った後、反応液と同量のエタノールを加えて反応を停止し、反応系中に生成したグルタミン酸濃度をHPLC(SUMICHIRAI OA5000カラム;住友化学工業株式会社製)で定量した。L-ロイシンに対する相対活性を100としたときの各基質に対する相対活性を表11に示す。
メチオニン脱水素酵素の精製
改変型フェニルアラニン脱水素酵素(BS124S145M66C295N310P)遺伝子を組換えた大腸菌JM109/pUCHis BS124S145M66C295N310Pを50μg/mlのアンピシリンを含むLB培地 500 mlで37℃12時間培養し、終濃度0.1 mMとなるようにIPTGを添加して30℃で4時間培養した。遠心分離(6,000x g、10分、4℃)で集菌し、0.85%の生理的食塩水で菌体を洗浄した後、菌体湿重量に対して5倍容量の300 mM NaCl、20 mM イミダゾールおよび5 mM 2-メルカプトエタノールを含む20 mM Tris-HCl buffer, pH 8.0に懸濁した。懸濁液を超音波破砕機(KUBOTA INSONATOR model210、19 kHz、20分、4℃)にて破砕し、遠心分離(28,000 x g、20分、4℃)により残渣を除去し、無細胞抽出液を調製した。
無細胞抽出液を予め同上緩衝液で平衡化したNi-Chelating Sepharose FFカラム(樹脂量約10 ml)に添加し、カラム体積に対して10倍容量の75 mMのイミダゾールを含む同上緩衝液にて洗浄した後、500 mMのイミダゾールを含む同上緩衝液にて吸着した酵素タンパク質の溶出を行った。固形硫酸アンモニウムによる分画を氷冷水中にて行い、活性画分を回収し、0.1 mM EDTAおよび5 mM 2-メルカプトエタノールを含む20 mM Tris-HCl buffer, pH 8.0にて透析した。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により純度を確認し、50%グリセロール溶液にして-30℃にて保存した。
変異酵素(BS124S145M66C295N310P)の標準活性測定は光路長1 cmのPMMA製ディスポーザブルキュベットを用い、340 nmにおけるNAD+の還元を25℃で測定することにより行った。酵素反応液は、100μmolのグリシン-KCl-KOH緩衝液(pH 10.4)、2.5μmolのβ-NAD+、10μmolの各種L-アミノ酸および適当量の酵素液を含む総量1.0 mlの反応液とした。酵素活性1ユニットは、酸化的脱アミノ化反応において1分間に1μmolのNADH生成を触媒する酵素量として定義した。比活性(U/mg)は、タンパク質1 mgあたりの酵素量として定義した。
[試験例1]
L. delbrueckii由来分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを使用した標準ろ紙血液中のメチオニン蛍光定量
変異型フェニルアラニン脱水素酵素(BS124S145M66C295N310P)とL. delbrueckii subsp. bulgaricus由来分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを用いた乾燥ろ紙血液中のメチオニン蛍光定量の手順を以下のように行った。採血した血液に既知濃度のアミノ酸およびガラクトースを混合した標準乾燥ろ紙血液(サンプルNo.および各種添加濃度を表12に示す。)を3mmのディスク状にろ紙パンチャーで打ち抜き、96穴マイクロプレートのウェルにそれぞれ3枚ずつ入れた。固定化液(アセトン:エタノール:精製水=7:7:2)20μL/ウェルを加えてろ紙に染み込ませ、37℃のインキュベーター内で1時間乾燥した。乾燥したろ紙に溶出液(0.1 M グリシン-KCl-KOH緩衝液、pH 9.6)150μL/ウェルを加えて撹拌した後、25℃にて1時間抽出した。
抽出液を30μL/ウェルずつブラック96穴プレートに分注し、10 mU/ml L. delbrueckii由来分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ酵素溶液(4.0 U/ml 分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ:0.01 ml、10 mM PLP:0.04 ml、1 M リン酸カリウム緩衝液(pH 7.8):0.4 ml、0.1 M 2-オキソグルタル酸:0.4 mlおよび精製水:3.15 ml)あるいはSIGMA社製分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ酵素溶液(ラベル表示 10 U/ml 分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ:0.2 ml、10 mM PLP:0.04 ml、1 M リン酸カリウム緩衝液(pH 7.8):0.4 ml、0.1 M 2-オキソグルタル酸:0.4 mlおよび精製水:2.96 ml)を、それぞれ30μL/ウェルずつを加えて撹拌した後、37℃にて1時間反応させた。
前記マイクロプレートに対し100μL/ウェルのレサズリン緩衝液(40μMのレサズリンを含む50 mM のトリス塩酸緩衝液(pH 8.9)を加え、さらに変異型フェニルアラニン脱水素酵素溶液(9.5 U/ml 変異型フェニルアラニン脱水素酵素:0.1 ml、25 mM NAD+:0.4 ml、0.2 mg/ml ジアホラーゼ(Clostridium由来、オリエンタル酵母社製):0.5 ml、20 mM トリス塩酸緩衝液(pH 8.0):4.0 ml)を40μL/ウェルずつ分注した。前記マイクロプレートを撹拌した後、37℃にて1時間静置して酵素反応を行い、蛍光色素を発色させた。上記反応で得られた蛍光をマイクロプレートリーダー(Infinite M200、テカン社製)を用い、励起波長545 nm、蛍光波長590 nmにて蛍光強度を測定した。
SIGMA社供給分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼおよびL. delbrueckii由来分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを使用したメチオニン添加標準ろ紙血液試料、L-ロイシンおよびL-フェニルアラニン添加標準試料に対する蛍光強度をそれぞれ図3および図4に示す。SIGMA社供給分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを使用した場合、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによるL-メチオニンの減少を抑えつつ蛍光強度を測定する必要があるため、サンプル中のL-フェニルアラニンやL-ロイシンの影響を完全に除去することができない(図3)。しかし、L. delbrueckii由来BCATを用いた場合、いずれの濃度領域においても、L-ロイシンやL-フェニルアラニンなどのアミノ酸の影響は1.2 mg/dl以下となり、ろ紙血液試料中のメチオニン定量法として有効であることが示された。
また、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ酵素溶液を5 mU/ml以下とした場合、ろ紙血液サンプル1の測定においてろ紙血液中のL-ロイシンを完全に除去することができず、蛍光強度が増大したため定量ができなかったが、10 mU/ml以上としてもさらなる効果は認められず、10 mU/mlの分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ酵素溶液を添加するのが適切であることがわかった。
[試験例2]
T. thermophilus由来分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを使用した標準ろ紙血液中のメチオニン蛍光定量
変異型フェニルアラニン脱水素酵素(BS124S145M66C295N310P)とT. thermophilus由来分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを用いた乾燥ろ紙血液中のメチオニン蛍光定量の手順を実施例1と同様にして行った。ただし、T. thermophilus由来分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ酵素溶液は、8.0 U/ml 分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ:0.005 ml、10 mM PLP:0.04 ml、1 M リン酸カリウム緩衝液(pH 7.8):0.4 ml、0.1 M 2-オキソグルタル酸:0.4 mlおよび精製水:3.155 mlを含む10 mU/ml分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ酵素溶液とし、これを30μL/ウェルを加えて分岐鎖アミノ酸の除去反応を行なった。
メチオニン添加標準ろ紙血液試料、L-ロイシンおよびL-フェニルアラニン添加標準試料に対する蛍光強度を図5に示す。ろ紙血液サンプル2においては、L-ロイシンおよびL-フェニルアラニンが高濃度の場合であっても、その影響はほとんど確認されなかった。サンプル1においては、いずれの濃度領域においてもL-ロイシンやL-フェニルアラニンなどのアミノ酸の影響は0.8 mg/ml以下となり、ろ紙血液試料中のメチオニン定量法として有効であることが確認された。
参考例1
変異型フェニルアラニン脱水素酵素pBS124S310S及びBS124S145M66C295N310Pの調製方法
(2;ベクターの調製pUC18His)
本発明で用いたベクターは、pRSET-BベクターDNA(インビトロジェン社製)のリボゾーム結合配列部位の上流にEcoRIの制限酵素認識配列を合成プライマー(北海道システムサイエンス社製)で付加し、BamHIの制限酵素認識配列までの配列をPCRで増幅させ、pUC18ベクターDNA(タカラバイオ株式会社製)のマルチクローニングサイトEcoRIおよびBamHIのそれぞれの制限酵素認識部位に挿入したものを用いた。本ベクターはpUC18ベクターDNAのもつlacプロモーターにて目的遺伝子を誘導し、pRSET-B由来の6個の連続したヒスチジン配列を発現タンパク質のN末端側に融合させた状態でタンパク質を発現する。なお、本発明において調製された機能改変アミノ酸脱水素酵素遺伝子の組換えおよび発現に関しては、前記調製ベクターDNAに限定することなく行える。例えば、pRSET-BベクターDNA、pUC18ベクターDNA、pET21(+)ベクターDNAなど一般に市販されているベクターDNAであっても構わない。
以下に使用したベクターDNAの調製手順を示す。
pRSET-BおよびpUC18ベクターDNAを組込んだ組換え大腸菌(Escherichia coli JM109)培養液より定法に従ってpRSET-BおよびpUC18ベクターDNAを調製し、フェノール・クロロホルム抽出およびPEG沈澱法によりベクターDNAプラスミドの精製を行った。
(2−1;pRSET-BのPCR)
前記で得られたpRSET-BベクターDNAを鋳型DNAとしてEcoRI認識部位(一重下線表記)を含む合成オリゴヌクレオチドプライマー1:5'- gccgaattcttaagaaggagatatacata -3'(北海道システムサイエンス社製)(配列番号21)およびBamHI認識部位(一重下線表記)を含む合成オリゴヌクレオチドプライマー2:5'- gctcggatccttatcgtcatcgtc -3'(北海道システムサイエンス社製)(配列番号22)を用いてPCR(Polymerase Chain Reaction)を行い約0.1 kbの断片を得た。前記PCRは以下に示す反応液組成にて行った。10ngの鋳型DNAプラスミド(精製pRSET-BベクターDNA)、100 pmol /μlの前記合成オリゴヌクレオチドプライマーを各々0.5μl、10×KOD PCR buffer(TOYOBO社製)を2.5μl、2.5 mM dNTP mixture(タカラバイオ株式会社製)を2.5μl、およびKOD-Plus-DNAポリメラーゼ(TOYOBO社製)0.5μlを加えて反応液量を総量25μlとした。PCRの反応条件は、94℃15秒、55℃30秒、68℃20秒の反応サイクルを35回繰り返した。PCRはPTC-200ペルチェ・サーマルサイクラー(MJリサーチ・ジャパン(株)社製)を用いて行った。前記PCR反応液を泳動し、得られた増幅目的産物(約0.1 kb)を紫外線照射下において切り出し、ゲル抽出キットGel-MTM Gel Extraction Kit(VIOGENE社製)にて抽出、精製し30μlの精製産物を得た。前記精製産物29μlに対して10×K buffer(タカラバイオ社製)を3.5μl、EcoRIおよびBamHIを各0.8μlおよび滅菌超純水0.9μlを加えて総量35μlとして37℃にて3時間反応させて精製PCR産物両端の制限酵素処理を行った。前記反応液を泳動し、目的の断片(約0.1 kb)のバンドをゲル抽出キットGel-MTM Gel Extraction Kit(VIOGENE社製)にて抽出、精製し30μlのHis-tag配列を含む精製挿入断片を得た。
(2−2;pUC18ベクターDNAの調製)
上記プラスミド抽出において得られた精製pUC18ベクターDNAを 10μg、10×K buffer(タカラバイオ社製)を2μl、EcoRIおよびBamHIを各1μlおよび滅菌超純水を加えて総量20μlとして37℃にて3時間反応させた。反応液20μlに10×SAP buffer(ベーリンガーマンハイム社製)5μl、シュリンプ由来アルカリフォスファターゼ(ベーリンガーマンハイム社製)2μlおよび滅菌超純水23μlを加えて総量50μlとして50で1時間反応させた後、さらにアルカリフォスファターゼ1μlを加えて50℃にて30分間反応させた。反応液はフェノール・クロロホルム抽出およびエタノール沈澱等の定法により精製し、TE溶液に溶解した脱リン酸化pUC18ベクターDNAを30μl調製した。
(2−3;ライゲーション反応)
上記(2−1および2−2)で得られた精製挿入断片およびベクターDNAを下記の手順に従って連結させた。1μlの脱リン酸化pUC18ベクターDNA、5μlの前記精製挿入断片、1μlの10×Reaction buffer(New England Biolabs社製)および0.5μlのT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs社製)を混合し総量10μlとして16℃にて10時間連結反応を行った。
(2−4;大腸菌Escherichia coli JM109の形質転換)
前記反応液の一部をEscherichia coli JM109に形質転換した。生育した大腸菌のコロニーをアンピシリン塩を含むLB液体培地に植菌し、37℃12時間振とう培養した。培養液から定法にしたがってプラスミドDNAの精製を行った。前記精製プラスミドDNAの塩基配列解析は、LI-COR dNA Sequencer model 4000L(アロカ社製)を用いて行った。解析試料は、Thermo Sequenase Cycle Sequencing Kit(usb社製)を用いて同社プロトコルにしたがってPCRにより調製した。挿入断片の正しい配列が確認されたクローンをEscherichia coli JM109 / pUC18Hisとして本発明実験において使用した。
(Bacillus sphaericus R79a由来pdh遺伝子の部位特異的変異導入酵素の作出)
[部位特異的変異酵素pBS124S310Sの作製]
Bacillus sphaericus R79aのpdh遺伝子を含むpPDH-DBLプラスミドを鋳型DNAとして用いた。前記鋳型DNAを基にセンスプライマー5'- aaggatccgatggcaaaacagcttgaaaag-3'(配列番号23)とアンチセンスプライマー5'- ccgctgcagttactcttttatg-3'(配列番号24)を用いてpdh遺伝子の増幅を定法に従ってPCR法により行った。前記で得られたpdh遺伝子をpUC18HisベクターのBamHI-PstIサイトに連結して鋳型プラスミドDNAとして用いた。前記プラスミドDNAを鋳型として、QuikChange(R)Multi Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE(R)社製)を用いてPCR反応により同社プロトコルに従って部位特異的変異の導入を行った。変異導入に用いた合成オリゴヌクレオチドプライマーは、124番目のアミノ酸置換において5'- cgattttacacaagtactgacatgggg-3'(配列番号25)を用い、310番目のアミノ酸置換に対しては5'-ggcttgatccagwsngctgacgaactttatggg-3'(配列番号26)(wはアデニン(a)またはチミン(t)、sはシトシン(c)またはグアニン(g)、nはアデニン(a)あるいはシトシン(c)あるいはグアニン(g)あるいはチミン(t)のいずれかの塩基である。)をそれぞれ用いた。挿入断片の正しい配列が確認されたクローンをEscherichia coli JM109 /pBS124S310Sとして本発明実験において使用した。
[部位特異的変異酵素BS124S145M66C295N310Pの作製]
先述pBS124S310Sの作製と同様にpUC18Hisベクターに組み込んだBacillus sphaericus R79a由来フェニルアラニン脱水素酵素遺伝子pdhを鋳型プラスミドDNAとして用いた。QuikChange(R) Multi Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE(R)社製)を用いてPCR反応により同社プロトコルに従って部位特異的変異の導入を行った。変異導入に用いた合成オリゴヌクレオチドプライマーは、124番目のアミノ酸置換に対して5'- cgattttacacaagtactgacatgggg-3'(配列番号25)、145番目のアミノ酸置換に対して5'-gagacgaatttcattatgggaattcctgag-3'(配列番号27)、66番目のアミノ酸置換に対して5'-gtggatgaagcttgygaagatgtgcttcgc-3'(配列番号28)(yはシトシン(c)またはチミン(t)のいずれかの塩基である。)、295番目のアミノ酸置換に対して5'-gaaaagggaattaaytatgcacccgattatatc-3'(配列番号29)(yはシトシン(c)またはチミン(t)のいずれかの塩基である。)、および310番目のアミノ酸置換に対して5'-ggcttgatccagccngctgacgaactttatggg-3'(配列番号30)(nはアデニン(a)またはシトシン(c)またはチミン(t)またはグアニン(g)のいずれかの塩基である。)をそれぞれ用いた。挿入断片の正しい配列が確認されたクローンをEscherichia coli JM109 /pBS124S145M66C295N310Pとして本発明実験において使用した。
(3;変異株の発現と酵素タンパク質の精製)
本発明で得られた部位特異的変異株遺伝子の発現と発現酵素タンパク質は先述の方法に従って行った。精製酵素はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動により純度の確認を行った。得られた精製酵素を前述の実施例1及び2に使用した。
本発明における被検試料中分岐鎖アミノ酸の除去工程を用いることで、生体試料に含まれるL-メチオニンの高感度かつ迅速な酵素蛍光定量が可能となる。このことは、先天性アミノ酸代謝異常症であるホモシスチン尿症疾患の早期発見につながる新生児マス・スクリーニングにおいてこれまでにない感度、精度および利便性を生み出すとともに、患児や両親への身体的かつ精神的な負担を飛躍的に軽減することが可能となる。
本発明によれば、特に、先天性アミノ酸代謝異常症であるホモシスチン尿症、フェニルケトン尿症およびメープルシロップ尿症等の疾患において、早期発見のための新生児マス・スクリーニング、あるいは当該患者の定期健康診断について利用可能な検査方法を提供できる。さらに、本発明の分析方法は、食品あるいは環境中に含まれるL-メチオニンの検出、定量に用いることもできる。
分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ添加濃度の影響(A)L-メチオニン添加ろ紙血液、(B)L-メチオニン無添加ろ紙血液 分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを用いた前処理の効果(5点変異酵素を用いたメチオニンの蛍光定量)(A)L-メチオニン添加ろ紙血液、(B)L-メチオニン無添加ろ紙血液機能改変フェニルアラニン脱水素酵素を用いた生体試料中のL-メチオニンの分析方法 SIGMA社供給分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを使用したメチオニン添加標準ろ紙血液試料、L-ロイシンおよびL-フェニルアラニン添加標準試料に対する蛍光強度を示す。 L. delbrueckii由来分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを使用したメチオニン添加標準ろ紙血液試料、L-ロイシンおよびL-フェニルアラニン添加標準試料に対する蛍光強度を示す。 T. thermophilus由来分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼを使用したメチオニン添加標準ろ紙血液試料、L-ロイシンおよびL-フェニルアラニン添加標準試料に対する蛍光強度を示す。

Claims (17)

  1. 被検試料を、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによる処理に供する工程、
    処理後の被検試料を、L-メチオニンに対する基質特異性が向上した改変型フェニルアラニン脱水素酵素と、レサズリン、ジアホラーゼ、および酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)または酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)を含む反応液とともにインキュベーションする工程、及び
    インキュベーション後の反応液の発色を検出する工程
    を含む、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析方法。
  2. 発色は、レサズリン由来の蛍光色素の発色である請求項1に記載の方法。
  3. 被検試料を、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによる処理に供する工程、
    処理後の被検試料を、L-メチオニンに対する基質特異性が向上した改変型フェニルアラニン脱水素酵素と、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)または酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)と混合する工程、及び
    生成するNADHまたはNADPHの吸収を測定する工程
    を含む、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析方法。
  4. 被検試料を、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによる処理に供する工程、
    処理後の被検試料を、L-メチオニンに対する基質特異性が向上した改変型フェニルアラニン脱水素酵素と、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)または酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、電子キャリヤー及び還元系発色試薬を含む反応液とともにインキュベーションする工程、
    インキュベーション後の反応液のホルマザン色素発色を検出する工程
    を含む、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析方法。
  5. 被検試料を、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによる処理に供する工程、
    処理後の被検試料を、L-メチオニンに対する基質特異性が向上した改変型フェニルアラニン脱水素酵素と、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)または酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、電子キャリヤー、金属イオン及びキレート指示薬を含む反応液とともにインキュベーションする工程、
    インキュベーション後の反応液の色素発色を検出する工程
    を含む、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析方法。
  6. 分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによる処理は、被検試料を、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.42)、2-オキソグルタル酸及びピリドキサールリン酸を含む反応液とともにインキュベーションすることで行なう、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.42)は、分岐鎖アミノ酸に対して基質特異性をもつ古細菌、微生物または真核生物由来の酵素である請求項6に記載の方法。
  8. 分岐鎖アミノ酸は、L-ロイシン、L-イソロイシンおよびL-バリンから成る群から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載の方法。
  9. 被検試料中のL-メチオニンを定量する方法である請求項1〜に記載のいずれか1項に記載の方法。
  10. 分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによる処理の工程および発色工程はマイクロプレートのウェル中で行う請求項1〜に記載のいずれか1項に記載の方法。
  11. 被検試料が血液試料である請求項1〜10に記載のいずれか1項に記載の方法。
  12. L-メチオニンを分析するための被検試料に含まれる可能性がある分岐鎖アミノ酸の少なくとも一部を分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼによりオキソ酸に変換することを含む、L-メチオニン分析の阻害因子となる分岐鎖アミノ酸の被検試料中の量を低減する方法。
  13. 分岐鎖アミノ酸の少なくとも一部のオキソ酸への変換は、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.42)を用い、2-オキソグルタル酸及びピリドキサールリン酸の存在下で行なう、請求項12に記載の方法。
  14. 分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.42)は、分岐鎖アミノ酸に対して基質特異性をもつ古細菌、微生物または真核生物由来の酵素である請求項13に記載の方法。
  15. 分岐鎖アミノ酸は、L-ロイシン、L-イソロイシンおよびL-バリンから成る群から選ばれる少なくとも1種である請求項14に記載の方法。
  16. L-メチオニンの分析は、L-メチオニンに対する基質特異性が向上した改変型フェニルアラニン脱水素酵素を用いて行なわれる請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 被検試料が血液試料である請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
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