JP4092601B2 - ポリイミド前駆体、感光性ポリイミド前駆体組成物及びそれを用いたパターン製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子の表面コート膜等の保護膜や薄膜多層配線基板の層間絶縁膜等の材料として好適なポリイミド前駆体、これを含む感光性ポリイミド前駆体組成物及びパターンの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、感光性ポリイミド前駆体組成物としては、特公平5−67026号に記載されている、芳香族テトラカルボン酸二無水物をオレフィン不飽和アルコールと反応させてオレフィン芳香族テトラカルボン酸ジエステルを合成し、この化合物とジアミンとをカルボジイミド類を用いた脱水縮合反応により重合させ、共有結合で感光基を導入したポリイミド前駆体を含むもの、特公昭63−31939号に記載されている、芳香族テトラカルボン酸二無水物を芳香族ジアミンと反応させて得られるポリアミド酸に、感光基を有するアミン化合物をイオン結合させ、感光基導入したものなどが知られている。
【0003】
これらはいずれも、適当な有機溶剤に溶解したワニス状態で基板に塗布し、乾燥して被膜とした後に、適当なフォトマスクを介して紫外線を照射して露光部を光硬化させるネガ型感光性組成物であり、有機溶媒を用いて現像およびリンスすることにより、レリーフ・パターンを得ているものである。
【0004】
しかしながら、パターン形成時に現像液として有機溶媒を使用すると現像時に露光部の膨潤が起こり易く、高解像度のパターンを得ることが困難である。また、有機溶媒を用いると、作業者の健康に悪影響があること、廃液処理に手間がかかること等の問題点もある。
【0005】
そこで、上記の問題点を解決する、水性の液により現像可能な材料として、例えば、ポリアミド酸のカルボキシル基に、ナフトキノンジアジドスルホニルアミド基を導入したポジ型のポリマが提案されている(特開平6−258835号公報)。このポリマは、光照射によりナフトキノンジアジドスルホニルアミド基がカルボキシル基に変化するため、露光部が塩基性水溶液に可溶化する特徴を有しており、ポジ型感光性ポリイミド前駆体として知られている。しかしながらこのような、ポジ型感光性ポリイミド前駆体では、高感度でパターン形状に優れ、実用に供する性能を有するものが得られていないのが現状である。
一方、ネガ型感光性ポリイミド前駆体組成物としても、高解像度のパターンが得られ、しかも塩基性水溶液で現像できるものが得られていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
請求項1記載の発明は、水性の液により現像可能で、高解像度でかつ現像後のパターン形状に優れる感光性ポリイミド前駆体組成物に好適なポリイミド前駆体を提供するものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の課題に加えて、より解像度に優れる感光性ポリイミド前駆体組成物に好適なポリイミド前駆体を提供するものである。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の課題に加えて、解像度と現像性のバランスに優れる感光性ポリイミド前駆体組成物に好適なポリイミド前駆体を提供するものである。
【0007】
請求項4記載の発明は、水性の液により現像可能で、高解像度でかつ現像後のパターン形状に優れるネガ型の感光性ポリイミド前駆体組成物に好適なポリイミド前駆体を提供するものである。
請求項5記載の発明は、水性の液により現像可能で、高解像度でかつ現像後のパターン形状に優れる感光性ポリイミド前駆体組成物を提供するものである。
【0008】
請求項6記載の発明は、水性現像液を用い、良好なポリイミドパターン形状が得られ、さらに製造工程の短縮が可能であり、製造コストが削減できるパターン製造法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般式(I)
【化5】
(式中、R1は4価の有機基、R2は3価又は4価の有機基、2つのR3は各々独立に1価の有機基、Aは酸性を示す基、nは1又は2を示す)で表される構成単位及び一般式(II)
【化6】
(式中、R4は4価の有機基、2つのR5は各々独立に1価の有機基、R6、R7、R8及びR9は各々独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であってこれら4つのうち少なくとも2つは炭素数1〜4のアルキル基を示す)で表される構成単位を有してなるポリイミド前駆体に関する。
【0010】
また本発明は、前記一般式(II)で表される構成単位において、R6、R7、R8及びR9の何れも炭素数1〜4のアルキル基であるポリイミド前駆体に関する。また本発明は、さらに一般式(III)
【化7】
(式中、R14は4価の有機基、R15は
【化8】
から選択される2価の有機基であり、2つのR16は各々独立に1価の有機基又は水素原子である)で表される構成単位を有するポリイミド前駆体に関する。
【0011】
また本発明は、前記R3及びR5の少なくとも一部の1価の有機基が、感光基であるポリイミド前駆体に関する。
また本発明は、前記ポリイミド前駆体と、増感剤又は光開始助剤を含有してなる感光性ポリイミド前駆体組成物に関する。
さらに本発明は、前記感光性ポリイミド前駆体組成物を用いて形成してなる被膜に、所定のパターンのマスクを介して光を照射した後、該被膜を塩基性水溶液を用いて現像することを特徴とするパターン製造法に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリイミド前駆体は、前記一般式(I)で示される構成単位及び一般式(II)で示される構成単位を有するものである。
一般式(I)で示される構成単位は、Aで示される酸性を示す基を有し、この構成単位により、塩基性水溶液に可溶な樹脂膜を形成することができる。
また、一般式(II)で示される構成単位は、特定の位置に置換基を有するビフェニレン基を有するものであり、これを前記一般式(I)で示される構成単位と共に有することにより、塩基性水溶液への可溶性を損なうことなく、パターン形状、解像度、感度等に優れ、現像時間も短い感光性ポリイミド前駆体組成物を与えるポリイミド前駆体とすることができるものである。
【0013】
一般式(I)におけるR1及び一般式(II)におけるR4としては、ジアミンと反応してポリイミド樹脂を形成することができるテトラカルボン酸又はその誘導体の残基であることが好ましく、硬化して得られるポリイミド膜の機械特性、耐熱性及び接着性の観点から、炭素数4以上の4価の有機基であることが好ましい。その好ましい例を、下記構造式群に挙げる。炭素数4以上の4価の有機基のなかでは、芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環等)を含む総炭素数6〜30の有機基であることがより好ましい。なお、ポリイミド前駆体分子中、複数存在する前記繰り返し単位において、全てのR1及びR4は、同じであってもよく異なっていてもよい。
【0014】
【化9】
【0015】
【化10】
【0016】
一般式(I)において、酸性を示す基Aとしては、特に制限されないが、スルホン酸基(−SO3H)、スルフィン酸基(−SO2H)、カルボキシル基(−COOH)及びフェノール性水酸基のいずれかであると良好な可溶性を示すので好ましい。これらの中で、カルボキシル基およびフェノール性水酸基は、ポリイミド前駆体の合成が容易なため、特に好ましい。
【0017】
一般式(I)において、酸性を示す基Aの結合しているジアミン残基R2は、テトラカルボン酸又はその誘導体と反応してポリイミド樹脂を形成することができるジアミンの残基であることが好ましく、硬化して得られるポリイミド膜の機械特性、耐熱性及び接着性の観点から、芳香族環を含む総炭素数6〜30の3価または4価の有機基であることが好ましい。その具体的に好ましい例を、下記構造式群に挙げる。なお、分子中のすべてのR2が同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0018】
【化11】
(但し、Zは
【化12】
を示す)
【0019】
一般式(I)におけるR3及び一般式(II)におけるR5は1価の有機基であり、それぞれの構成単位における2つのR3または2つのR5は同一であっても異なっていてもよく、また、分子中の複数の繰り返し単位においてすべてのR3またはR5が同じであっても異なっていてもよい。
R3及びR5で示される1価の有機基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基などの炭化水素基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキル基、ビニルエーテル基、グリシジル基、ヒドロキシフェニル基などが挙げられ、炭素数1〜20のものが好ましい。
【0020】
中でも、R3及びR5の一部または全部が感光基(例えば、光の照射により脱離する基、光の照射により二量化や共重合しうる基等)であると、ポリイミド前駆体自体に感光性を付与することができるため好ましく、中でも重合性不飽和二重結合を有する基であると容易に良好な感光性を付与できるので好ましい。R3及びR5の一部を感光基とする場合、R3及びR5の総計に対して10モル%以上が感光基であることが好ましい。
【0021】
重合性不飽和二重結合を有する基としては、例えば、下記一般式
【化13】
(但し、R10、R11及びR12は、水素、アルキル基、フェニル基、ビニル基及びプロペニル基からそれぞれ独立に選択された基であり、R13は2価の有機基を示す)
で表される有機基が高感度の感光性を付与できるため好ましい。前記アルキル基としては炭素原子数1〜4のものが好ましい。また、R13で示される2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素原子数1〜4のアルキレン基が好ましい。
【0022】
特に、メタクリロイルオキシアルキル基及びアクリロイルオキシアルキル基 (アルキルの炭素数が1〜4のもの)は、高い感度を実現するのみならず、合成も容易であるため本発明に好適である。
【0023】
一般式(II)で示される構成単位において、R6、R7、R8及びR9は、各々独立に、水素原子又は1価の有機基であってこれら4つのうち少なくとも2つは1価の有機基である。特に、2つの芳香環の各々に1価の有機基が存在するものが好ましい。1価の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基などが好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基がより好ましい。
【0024】
この構成単位におけるジアミン残基の好ましい例を下記に挙げる。
【化14】
これらの中で、R6、R7、R8及びR9の何れも1価の有機基であるものを用いると解像度が向上するので好ましく、中でも全てがメチル基であるものが特に好ましい。
【0025】
本発明におけるポリイミド前駆体においては、その他の構成単位を含んでいてもよい。この構成単位としては、下記一般式(III)
【化15】
(式中、R14は4価の有機基、R15は2価の有機基、2つのR16は各々独立に1価の有機基又は水素原子であり、一般式(I)及び一般式(II)で示される構成単位を含まない)
で表される構成単位がある。
【0026】
R14で示される4価の有機基の具体例としては前記R1で示される有機基と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様であり、R16で示される1価の有機基の具体例としてはR3で示される有機基と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
R15は2価の有機基であり、硬化して得られるポリイミド膜の機械特性、耐熱性、接着性等の観点から芳香環又はケイ素を含むものが好ましく、芳香環を含むものの場合、炭素数が6〜30のものが好ましく、ケイ素を含むものの場合、ケイ素原子が1〜10の(ポリ)シロキサン結合を有するものが好ましい。一般式(III)で示される構成単位が分子中に複数存在する場合、複数のR15は同一でも異なっていてもよい。
【0027】
R15の好ましい例を下記する。
【0028】
【化16】
【0029】
【化17】
【0030】
【化18】
【0031】
これらの中で
【化19】
で例示されるものを用いると、解像度と現像性のバランスに優れるので好ましい。
【0032】
本発明のポリイミド前駆体において、一般式(I)、(II)及び(III)で示される構成単位の割合としては、各構成単位のモル百分率で、(I)が5〜95モル%、(II)が95〜5モル%、(III)が0〜50モル%であることが、塩基性水溶液での現像性及び良好なパターン形状のバランスに優れるので好ましく、(I)が20〜90モル%、(II)が70〜5モル%、(III)が0〜30モル%であることがより好ましく、解像度と現像性のバランスの点からは(I)が20〜90モル%、(II)が70〜5モル%、(III)が5〜30モル%であることがさらに好ましい。
【0033】
また、ポリイミド前駆体側鎖、即ち、R3、R5及びR16で示される基の総計において、10〜100モル%を感光性基とすることが好ましい。感光性基以外の基を合わせ持つ場合、膜特性の点から、炭素数4以下のアルキル基とすることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基が、特に好ましい。
本発明におけるポリイミド前駆体の分子量としては、現像性及び膜質の点から、重量平均分子量で、1万〜20万が好ましく、2万〜6万がより好ましい。重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定し、ポリスチレン換算で算出することができる。
【0034】
本発明のポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とヒドロキシ基含有化合物を混合して反応させ、テトラカルボン酸のハーフエステルを製造した後、塩化チオニルにより酸クロリド化し、ついで、ジアミンと反応させる方法や、前記テトラカルボン酸ハーフエステルをカルボジイミド類を縮合剤としてジアミンと反応させる方法等により合成することができる。
【0035】
前記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、オキシジフタル酸、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、スルホニルジフタル酸、m−ターフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸、p−ターフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス {4′−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス{4′−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン、下記一般式(IV)
【化20】
(式中、R17及びR18は一価の炭化水素基を示し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、sは1以上の整数である)
で表されるテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸などのテトラカルボン酸の二無水物が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
中でも前記一般式(I)におけるR1の好ましい例として示した構造を与えるテトラカルボン酸が好ましい。
【0036】
一般式(I)で示される構成単位におけるジアミン残基R2を与えるジアミンとしては、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジアミノビフェニル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル−2−カルボン酸、4,4′−ジアミノ−3,3′−カルボキシビフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、2,2′−ビス(3−アミノ−4−ハイドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0037】
一般式(II)で示される構成単位におけるジアミン残基R3を与えるジアミンとしては、2,2′−ジアルキル−4,4′―ジアミノベンジジン、2,2′,6,6′−テトラアルキル−4,4′―ジアミノベンジジン(前記アルキル基は、メチル基、エチル基またはイソプロピル基)が好ましいものとして挙げられる。
【0038】
一般式(III)で示される構成単位におけるジアミン残基R15を与えるジアミンとしては、4,4′−(又は3,4′−、3,3′−、2,4′−、2,2′−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−(又は3,4′−、3,3′−、2,4′−、2,2′−)ジアミノジフェニルメタン、4,4′−(又は3,4′−、3,3′−、2,4′−、2,2′−)ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−(又は3,4′−、3,3′−、2,4′−、2,2′−)ジアミノジフェニルスルフィド、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、o−トリジン、o−トリジンスルホン、4,4′−メチレン−ビス−(2,6−ジエチルアニリン)、4,4′−メチレン−ビス−(2,6−ジイソプロピルアニリン)、2,4−ジアミノメシチレン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4′−ベンゾフェノンジアミン、ビス−{4−(4′−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス{4−(4′−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、ビス{4−(3′−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0039】
その他、一般式(III)で示される構成単位におけるジアミン残基R15を与えるジアミンとして、接着性向上のために、下記一般式(V)
【化21】
(式中、R19及びR20は二価の炭化水素基を示し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R21及びR22は一価の炭化水素基を示し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、tは1以上、好ましくは1〜10の整数である)
で表されるジアミノポリシロキサン等のジアミンを使用することもできる。R19及びR20としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、それらの結合基などが挙げられ、R21及びR22としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基などが挙げられる。これらを用いる場合、全アミン成分に対して、1〜30モル%用いることが好ましい。
【0040】
また、一般式(III)で示される構成単位におけるジアミン残基R15を与えるジアミンの全部又は一部として、耐熱性向上のために、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル−3−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−4−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−3′−スルホンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル−4−スルホンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル−3−カルボキサミド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−4−カルボキサミド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−3′−カルボキサミド、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル−4−カルボキサミド等のスルホンアミド基又はカルボキサミド基を有するジアミン化合物を使用することもできる。これらを用いる場合、全アミン成分に対して、1〜30モル%用いることが好ましい。
これらの、一般式(III)で示される構成単位におけるジアミン残基R15を与えるジアミンは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0041】
次に本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物について説明する。
本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物は、露光部分が硬化するネガ型感光性材料として用いられる。従って、本発明のポリイミド前駆体を含む感光性ポリイミド前駆体組成物は、前記一般式(I)におけるR3及び一般式(II)におけるR5のうち少なくとも一方が、感光基であるポリイミド前駆体を含有する。
【0042】
本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物においては、実用に供しうる感光感度を達成するため、増感剤又は光開始助剤を含む。
【0043】
増感剤の好ましい例としては、ミヒラケトン、ビス−4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾフェノン、3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ビス(ジメチルアミノベンジリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−エチル−4−ピペリドン、3,3′−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、リボフラビンテトラブチレート、2−メチル−1−[4− (メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、3,5−ジメチルチオキサントン、3,5−ジイソプロピルチオキサントン、1−フェニル−2−(エトキシカルボニル)オキシイミノプロパン−1−オン、ベンゾインエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンズアントロン、5−ニトロアセナフテン、2−ニトロフルオレン、アントロン、1,2−ベンズアントラキノン、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、チオキサンテン−9−オン、10−チオキサンテノン、3−アセチルインドール、2,6−ジ(p−ジメチルアミノベンザル)−4−カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−ジメチルアミノベンザル)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−ジエチルアミノベンザル)−4−カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−ジエチルアミノベンザル)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、4,6−ジメチル−7−エチルアミノクマリン、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジエチルアミノ−3−(1−メチルベンゾイミダゾリル)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、4−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−3,3−ジメチル−3H−インドール等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0044】
増感剤は、ポリイミド前駆体100重量部に対して、0.1〜50重量部配合すること好ましく、0.3〜20重量部とすることがさらに好ましい。0.1〜50重量部の範囲を逸脱すると、増感効果が得られなかったり、現像性に好ましくない影響を及ぼす傾向がある。なお、増感剤として、1種類の化合物を用いても良いし、数種を混合して用いてもよい。
【0045】
また、光重合助剤としては、例えば、4−ジエチルアミノエチルベンゾエート、4−ジメチルアミノエチルベンゾエート、4−ジエチルアミノプロピルベンゾエート、4−ジメチルアミノプロピルベンゾエート、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエート、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−(4−シアノフェニル)グリシン、4−ジメチルアミノベンゾニトリル、エチレングリコールジチオグリコレート、エチレングリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンチオグリコレート、トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールエタントリ(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)、チオグリコール酸、α−メルカプトプロピオン酸、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシメトキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシニトロベンゾエート、t−ブチルペルオキシエチルベンゾエート、フェニルイソプロピルペルオキシベンゾエート、ジt−ブチルジペルオキシイソフタレート、トリt−ブチルトリペルオキシトリメリテート、トリt−ブチルトリペルオキシトリメシテート、テトラt−ブチルテトラペルオキシピロメリテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−アミルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−メトキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−ヒドロキシメチルシクロヘキサノン、3,5−ジ(p−アジドベンザル)−1−メチル−4−ピペリドン、3,5−ジ(p−アジドベンザル)−4−ピペリドン、3,5−ジ(p−アジドベンザル)−N−アセチル−4−ピペリドン、3,5−ジ(p−アジドベンザル)−N−メトキシカルボニル−4−ピペリドン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(m−アジドベンザル)−4−カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(m−アジドベンザル)−4−メトキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(m−アジドベンザル)−4−ヒドロキシメチルシクロヘキサノン、3,5−ジ(m−アジドベンザル)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ジ(m−アジドベンザル)−4−ピペリドン、3,5−ジ(m−アジドベンザル)−N−アセチル−4−ピペリドン、3,5−ジ(m−アジドベンザル)−N−メトキシカルボニル−4−ピペリドン、2,6−ジ(p−アジドシンナミリデン)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドシンナミリデン)−4−カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドシンナミリデン)−4−ヒドロキシメチルシクロヘキサノン、3,5−ジ(p−アジドシンナミリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、4,4′−ジアジドカルコン、3,3′−ジアジドカルコン、3,4′−ジアジドカルコン、4,3′−ジアジドカルコン、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−アセチル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−n−プロピルカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−フェニルオキシカルボニル)オキシム、1,3−ビス(p−メチルフェニル)−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、1,3−ビス(p−メトキシフェニル)−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−(p−メトキシフェニル)−3−(p−ニトロフェニル)−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−フェニルオキシカルボニル)オキシム等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0046】
光重合助剤は、本発明のポリイミド前駆体100重量部に対して、0.1〜50重量部配合されることが好ましく、0.3〜20重量部の範囲がさらに好ましい。0.1〜50重量部の範囲を逸脱すると、目的とする増感効果が得られなかったり、現像性に好ましくない影響を及ぼす傾向がある。なお、光重合助剤として、1種類の化合物を用いても良いし、数種を混合して用いてもよい。
【0047】
また、本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物は、実用に供しうる感光感度を達成するため、上述の増感剤又は光重合助剤に加えて、さらに、共重合モノマーを含んでもよい。共重合モノマーは、炭素−炭素二重結合を有する化合物であり光重合反応を容易にする。
【0048】
共重合モノマーとしては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート等が好ましいが、これらに限定されない。
【0049】
これらの共重合モノマーは、本発明のポリイミド前駆体100重量部に対し、1〜100重量部配合することが好ましく、3〜50重量部の範囲がさらに好ましい。1〜100重量部の範囲を逸脱すると、目的とする効果が低下する傾向があり、また、現像性に好ましくない影響をおよぼす傾向がある。なお、共重合モノマーとして、1種類の化合物を用いても良いし、数種を混合して用いてもよい。
【0050】
本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物は、適当な有機溶媒を含んでいてもよい。適当な有機溶媒に溶解した状態であれば、溶液(ワニス)状態で使用に供することができ、成膜する際便利である。この場合に用いる溶媒としては、溶解性の観点から非プロトン性極性溶媒が望ましく、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N−ベンジル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−アセチル−ε−カプロラクタム、ジメチルイミダゾリジノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチロラクトンなどが好適な例としてあげられる。これらは単独で用いても良いし、混合系として用いることも可能である。この有機溶媒は、ポリイミド前駆体の合成反応で用いた溶媒をそのまま残留させたものでもよく、単離後のポリイミド前駆体に新たに添加したものでもよい。また、塗布性を改善するために、トルエン、キシレン、ジエチルケトン、メトキシベンゼン等の溶媒をポリマーの溶解性に悪影響を及ぼさない範囲で混合しても差し支えない。
有機溶媒の量は特に制限されないが、一般にポリイミド前駆体100重量部に対して100〜200重量部用いることが好ましい。
【0051】
本発明のパターン製造法は、以上のようにして得られる本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物を用いて、フォトリソグラフィ技術により該組成物の硬化物からなるポリイミド膜を形成するものである。
本発明のパターン製造法では、まず、支持基板表面に本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物からなる被膜が形成される。ここで、被膜または加熱硬化後のポリイミド被膜と支持基板との接着性を向上させるため、あらかじめ支持基板表面を接着助剤で処理しておいてもよい。
【0052】
感光性ポリイミド前駆体組成物からなる被膜は、例えば、感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスの膜を形成した後、これを乾燥させることにより形成することができる。ワニスの膜の形成は、ワニスの粘度などに応じて、スピンナーを用いた回転塗布、浸漬、噴霧印刷、スクリーン印刷などの手段から適宜選択された手段により行うことができる。なお、被膜の膜厚は、塗布条件、本組成物の固形分濃度等によって調節できる。また、あらかじめ支持体上に形成した被膜を支持体から剥離してポリイミド前駆体組成物からなるシートを形成しておき、このシートを上記支持基板の表面に貼り付けることにより、上述の被膜を形成してもよい。
【0053】
つぎに、この被膜に、所定のパターンのフォトマスクを介して光(通常は紫外線を用いる)を照射する。この露光工程は、超高圧水銀灯を用いるコンタクト/プロキシミテイ露光機、ミラープロジェクション露光機、g−線ステッパ、i線ステッパ、その他の紫外線、可視光源、X線、電子線等を用いて行うことができる。特に本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物は、i線に対する光透過性に優れるので、i線ステッパ用として好適である。
【0054】
ついで、塩基性水溶液により未露光部を溶解除去して、所望のレリーフ・パターンを得る。この現像工程は、通常のフォトレジスト現像装置などを用いて行うことができる。本発明のパターン形成法では、現像液として、塩基性水溶液を用いる。なお、現像液は、塩基性を呈する水溶液であれば、一つの化合物の水溶液でもよく、2以上の化合物の水溶液でもよい。塩基性水溶液は、通常、塩基性化合物を水に溶解した溶液である。塩基性化合物の濃度は、通常0.1〜50重量%とするが、支持基板等への影響などから好ましく、0.1〜30重量%とすることがより好ましい。なお、現像液は、ポリイミド前駆体の溶解性を改善するため、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の水溶性有機溶媒を、さらに含有していてもよい。
【0055】
上記塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムイオンの、水酸化物または炭酸塩や、アミン化合物などが挙げられ、具体的には、2−ジメチルアミノエタノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、4−ジメチルアミノ−1−ブタノ−ル、5−ジメチルアミノ−1−ペンタノ−ル、6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノ−ル、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノ−ル、3−ジメチルアミノ−2,2−ジメチル−1−プロパノ−ル、2−ジエチルアミノエタノ−ル、3−ジエチルアミノ−1−プロパノ−ル、2−ジイソプロピルアミノエタノ−ル、2−ジ−n−ブチルアミノエタノ−ル、N,N−ジベンジル−2−アミノエタノ−ル、2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノ−ル、2−(2−ジエチルアミノエトキシ)エタノ−ル、1−ジメチルアミノ−2−プロパノ−ル、1−ジエチルアミノ−2−プロパノ−ル、N−メチルジエタノ−ルアミン、N−エチルジエタノ−ルアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−t−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、3−ジエチルアミノ−1,2−プロパンジオール、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−t−ブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、6−アミノ−1−ヘキサノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−アミノブタノール、2−アミノ−1−ブタノール、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、テトラメチルアンモニムウヒドロキシド、テトラエチルアンモニムウヒドロキシド、テトラプロピルアンモニムウヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニムウヒドロキシド、アミノメタノ−ル、2−アミノエタノ−ル、3−アミノプロパノ−ル、2−アミノプロパノ−ル、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミンなどを用いることが好ましいが、水に可溶であり、水溶液が塩基性を呈するものであれば、これら以外の化合物を用いても構わない。
【0056】
現像によって形成したレリーフ・パターンは、次いでリンス液により洗浄して、現像溶剤を除去する。リンス液には、現像液との混和性の良いメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、水などが好適な例としてあげられる。
上述の処理によって得られたレリーフ・パターンは、本発明のポリイミド前駆体が一部イミド化しているものもある。このレリーフ・パターンを、150℃から450℃までの範囲から選ばれた温度で加熱処理することにより、ポリイミドからなる樹脂パターンが高解像度で得られる。この樹脂パターンは、耐熱性が高く、機械特性に優れるので、半導体素子の表面保護膜、薄層多層配線基板の層間絶縁膜等等として用いられる。
【0057】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
実施例1
A.ポリイミド前駆体の合成
(1)酸クロライドの合成
200mlの四つ口フラスコに、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)8.83g(0.03モル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)7.81g(0.06モル)、ピリジン4.75g(0.06モル)、ヒドロキノン0.01g、N、N′−ジメチルアセトアミド(DMAc)70mlを入れ60℃で撹拌すると、2時間で透明な溶液になった。この溶液を室温でその後7時間撹拌した後、フラスコを氷で冷却し、塩化チオニル8.57g(0.072モル)を10分で滴下した。その後室温で1時間撹拌し、酸クロライドを含む溶液を得た。
【0058】
(2)ポリイミド前駆体(ポリアミド酸エステル)の合成
別の200mlの四つ口フラスコに、3,5−ジアミノ安息香酸3.20g(0.021モル)、2,2′−ジメチルベンジジン(DMAP)1.91g(0.009モル)、ピリジン5.06g(0.064モル)、ヒドロキノン0.01g、N、N′−ジメチルアセトアミド(DMAc)50mlを入れフラスコを氷で冷却し撹拌しながら(10℃以下を保って)、上記(1)で得た酸クロライド溶液を1時間かけてゆっくりと滴下した。その後室温で1時間撹拌し、1リットルの水へ投入して、析出したポリマを濾取して水で2度洗い、真空乾燥した。このポリアミド酸エステルの重量平均分子量をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定したところ、ポリスチレン換算で20000であった。
また、得られたポリイミド前駆体の溶液を乾燥させたものを、KBr法により、赤外吸収スペクトル(日本電子(株)製、JIR−100型)を測定したところ、いずれも、1600cm-1付近にアミド基のC=Oの吸収と、3300cm-1付近にN−Hの吸収が確認された。
【0059】
B.感光性ポリイミド前駆体組成物の調製
得られたポリマ10gを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)7.5gおよびN,N−ジメチルアセトアミド7.5gの混合溶液に溶解し、ミヒラケトン100mgと1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム200mgおよびエチレングリコールジアクリレート2.0gを加えて溶解後、5μm孔のフィルタを用いて加圧濾過して、溶液状の感光性ポリイミド前駆体組成物を得た。
【0060】
C.ポリイミド膜の評価
得られた溶液をスピンナでシリコンウエハ上に回転塗布し、次いで90℃のホットプレートで3分間乾燥して15μm厚の塗膜を得た。この塗膜をフォトマスクを通してi線ステッパを用いて露光した。露光後、20℃の2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(現像液)に1分間浸漬して現像し、ついで水でリンスした。これにより、シャープな端面を持つ10μm幅のレリーフパターンが得られた。
【0061】
実施例2〜6および比較例1〜3
表1に示したテトラカルボン酸二無水物、アルコール及びジアミンを用いた他は実施例1と同様にポリイミド前駆体及び感光性ポリイミド前駆体組成物を調製し、評価した。
【0062】
【表1】
【0063】
なお、現像時間は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38重量%水溶液から成る現像液で1分以下で現像可能なものを良好とした。解像度は、現像後、形状良く開口している最小パターンで表した。また、形状は現像残りがなく、パターン断面が矩形になったものを良好とした。
【0064】
【発明の効果】
請求項1記載のポリイミド前駆体は、水性の液により現像可能で、高解像度でかつ現像後のパターン形状に優れる感光性ポリイミド前駆体組成物に好適なものである。
請求項2記載のポリイミド前駆体は、請求項1記載の発明の効果を奏し、より解像度に優れる感光性ポリイミド前駆体組成物に好適なを提供するものである。
【0065】
請求項3記載のポリイミド前駆体は、請求項2記載の発明の効果を奏し、さらに、解像度と現像性のバランスに優れる感光性ポリイミド前駆体組成物に好適なを提供するものである。
請求項4記載のポリイミド前駆体は、水性の液により現像可能で、高解像度でかつ現像後のパターン形状に優れるネガ型感光性ポリイミド前駆体組成物に好適なものである。
請求項5記載の感光性ポリイミド前駆体組成物は、水性の液により現像可能で、高解像度でかつ現像後のパターン形状に優れるネガ型の組成物であり、半導体素子用表面保護膜に好適である。
【0066】
請求項6記載のパターン製造法は、水性現像液を用い、良好なポリイミドパターン形状が得られ、さらに製造工程の短縮が可能であり、製造コストが削減できるものである。
Claims (6)
- 一般式(II)で表される構成単位において、R6、R7、R8及びR9の何れも炭素数1〜4のアルキル基である請求項1記載のポリイミド前駆体。
- R3及びR5の少なくとも一部の1価の有機基が、感光基である請求項1、2又は3記載のポリイミド前駆体。
- 請求項1、2、3又は4記載のポリイミド前駆体と、増感剤又は光開始助剤を含有してなる感光性ポリイミド前駆体組成物。
- 請求項5記載の感光性ポリイミド前駆体組成物を用いて形成してなる被膜に、所定のパターンのマスクを介して光を照射した後、該被膜を塩基性水溶液を用いて現像することを特徴とするパターン製造法。
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